JP4144985B2 - 可変動弁エンジンの制御装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電磁駆動式などの任意の開閉時期に可変制御できる吸気弁及び排気弁(以下吸・排気弁という) を備えた可変動弁エンジンのトルクを調整する制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来一般のエンジンでは、スロットル弁の開度によって吸入空気量を制御するが、近年、電磁駆動式の吸・排気弁を備え、主として吸気弁の開閉時期の制御によって吸入空気量を制御するようにしたものが提案されている(特開平8−200025号公報参照) 。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
この種の吸気弁の開閉時期で吸入空気量を制御するものでは、開閉時期の作動バラツキにより吸気体積効率ηvが変動するため、燃焼変動(トルク変動) が発生することがあった。
【0004】
本発明は、このような従来の課題に着目してなされたもので、吸・排気弁の開閉時期のバラツキによるトルク変動を速やかに収束でき、安定した運転性能が得られるようにした可変動弁エンジンの制御装置を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
このため、請求項1に係る発明は、図1に示すように、
任意の開閉時期に可変制御できる吸・排気弁を備えた可変動弁エンジンにおいて、
エンジン運転条件に基づいて目標トルクが得られる吸・排気弁の目標開閉時期を設定する目標開閉時期設定手段と、
吸・排気弁の開閉時期を検出する実開閉時期検出手段と、
吸気弁の閉時期に基づいてシリンダ吸入空気量を算出し、吸・排気弁の開オーバラップ量及び開オーバラップの中心時期に基づいてシリンダ内の残留既燃ガス量を算出し、これらシリンダ吸入空気量及び残留既燃ガス量の吸・排気弁目標開閉時期における目標値に対する変化量に応じて、吸・排気弁の開閉時期の検出直後に当該気筒の点火時期を調整すると共に、当該気筒の次回のサイクルにおいて燃料噴射量の調整を追加し、点火時期と燃料噴射量の調整により、前記変化量に見合ったトルク補正を行う調整手段と、
を含んで構成したことを特徴とする。
【0006】
請求項1に係る発明によると、
目標開閉時期設定手段は、エンジンの運転条件に基づいて目標トルクを発生する吸・排気弁の目標開閉時期を設定し、実開閉時期検出手段は、吸・排気弁の実際の開閉時期を検出する。
【0007】
そして、調整手段により、設定された目標開閉時期と検出された実際の開閉時期とのズレに基づいて、目標トルクが得られるよう点火時期を調整する。
【0008】
これにより、吸・排気弁の開閉時期にバラツキがあっても、目標トルクが得られるように、点火時期の調整によってフィードバック制御される。
また、請求項2に係る発明は、
前記調整手段は、吸・排気弁の開閉時期の検出直後に目標開閉時期とのズレに基づいて当該気筒の点火時期を調整することを特徴とする。
【0009】
請求項2に係る発明によると、
吸・排気弁の開閉時期の検出直後に点火が行われるので、該検出直後の点火時期を調整することにより、応答性良く速やかにトルクを調整することができる。
【0010】
また、請求項3に係る発明は、
任意の開閉時期に可変制御できる吸・排気弁を備えた可変動弁エンジンにおいて、
エンジン運転条件に基づいて目標トルクが得られる吸・排気弁の目標開閉時期を設定する目標開閉時期設定手段と、
吸・排気弁の開閉時期を検出する実開閉時期検出手段と、
前記設定された吸・排気弁の目標開閉時期に対し、前記検出された吸・排気弁の開閉時期が、目標トルクよりトルクを減少させる方向にズレている場合は、燃料噴射量を増量側に調整し、目標トルクよりトルクを増大させる方向にズレている場合は、燃料噴射量を減量側に調整する調整手段と、
を含んで構成したことを特徴とする。
これにより、吸・排気弁の開閉時期にバラツキがあっても、目標トルクが得られるように、燃料噴射量の調整によってフィードバック制御される。
また、請求項 4 に係る発明は、
前記調整手段は、吸・排気弁の目標開閉時期と検出された開閉時期とのズレに基づいて当該気筒の次回のサイクルにおける燃料噴射量を調整することを特徴とする。
【0011】
請求項4に係る発明によると、
吸・排気弁の開閉直後の燃焼行程には間に合わないが、次のサイクルで燃料噴射量を調整することにより、トルク調整を行うことができる。
【0012】
また、請求項5に係る発明は、前記調整手段は、吸・排気弁の目標開閉時期と検出された開閉時期とのズレに基づいて当該気筒の次回のサイクルにおける吸・排気弁の開閉時期を調整する機能を含んでいることを特徴とする。
【0013】
吸・排気弁の開閉直後の燃焼行程には間に合わないが、次のサイクルで吸・排気弁の開閉時期をを調整することにより、トルク調整を行うことができる。
また、請求項6に係る発明は、
任意の開閉時期に可変制御できる吸・排気弁を備えた可変動弁エンジンにおいて、
エンジン運転条件に基づいて目標トルクが得られる吸・排気弁の目標開閉時期を設定する目標開閉時期設定手段と、
吸・排気弁の開閉時期を検出する実開閉時期検出手段と、
吸気弁の閉時期に基づいてシリンダ吸入空気量を算出し、吸・排気弁の開オーバラップ量及び開オーバラップの中心時期に基づいてシリンダ内の残留既燃ガス量を算出し、これらシリンダ吸入空気量及び残留既燃ガス量に応じて少なくとも吸・排気弁の開閉時期制御以外のパラメータを調整することを特徴とする。
【0014】
請求項6に係る発明によると、
エンジンの発生トルクは吸入空気量の他、残留既燃ガス量によっても影響されるので、これらとで決定されるので、これらを算出した結果に基づいて、高精度な調整を行うことができる。
また、請求項7に係る発明は、前記調整手段は、吸・排気弁の開閉時期の検出直後に目標開閉時期とのズレに基づいて当該気筒の点火時期を調整する機能を含み、請求項8に係る発明は、前記調整手段は、吸・排気弁の目標開閉時期と検出された開閉時期とのズレに基づいて当該気筒の次回のサイクルにおける燃料噴射量を調整する機能を含み、請求項9に係る発明は、前記調整手段は、吸・排気弁の目標開閉時期と検出された開閉時期とのズレに基づいて当該気筒の次回のサイクルにおける吸・排気弁の開閉時期を調整する機能を含んでいることを特徴とする。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施の形態について説明する。
図2は本発明の一実施形態を示す可変動弁エンジンのシステム図である。
【0016】
エンジン1の各気筒のピストン2により画成される燃焼室3には、点火栓4を囲むように、電磁駆動式の吸気弁5及び排気弁6を備えている。7は吸気通路、8は排気通路である。
【0017】
吸気弁5及び排気弁6の電磁駆動装置の基本構造を図3に示す。弁体20の弁軸21にプレート状の可動子22が取付けられており、この可動子22はスプリング23,24により中立位置に付勢されている。そして、この可動子22の下側に開弁用電磁コイル25が配置され、上側に閉弁用電磁コイル26が配置されている。
【0018】
従って、開弁させる際は、上側の閉弁用電磁コイル26への通電を停止した後、下側の開弁用電磁コイル25に通電して、可動子22を下側へ吸着することにより、弁体20をリフトさせて開弁させる。逆に、閉弁させる際は、下側の開弁用電磁コイル25への通電を停止した後、上側の閉弁用電磁コイル26に通電して、可動子22を上側へ吸着することにより、弁体20をシート部に着座させて閉弁させる。
【0019】
また、吸気弁5,排気弁6の弁軸21の上端に検出ロッド31を係合させてハウジングの上端にリフトセンサ32が配置される。該リフトセンサ32は、検出ロッドの移動量を、弁体20のリフト量として検出する。リフトセンサとしてはこの他、赤外線,超音波等による無接点方式の距離測定センサ等も使用できる。また、吸・排気弁のリフト量自体の検出は行なわなくてもよく、開閉時期を検出して、圧電ピックアップのように開閉時に可動子22の着座振動音を検出するものを使用することもできる。
【0020】
図2に戻って、吸気通路7には、各気筒毎の吸気ポート部分に、電磁式の燃料噴射弁9が設けられている。
ここにおいて、吸気弁5、排気弁6、燃料噴射弁9及び点火栓4の作動は、コントロールユニット10により制御され、このコントロールユニット10には、エンジン回転に同期してクランク角信号を出力しこれによりエンジン回転速度を検出可能なクランク角センサ11、アクセル開度(アクセルペダルの踏込み量)を検出するアクセルペダルセンサ12の他、前記吸気弁5,排気弁6の開閉時期を検出するリフトセンサ32等から、信号が入力されている。
【0021】
そして、エンジンの運転条件に基づいて設定される吸気弁5と排気弁5の目標開閉時期と前記リフトセンサ32で検出される実際の開閉時期とを比較し、それらのズレに基づいて、点火時期、燃料噴射量、吸気弁5及び排気弁6の開閉時期を調整する。
【0022】
以下に、前記調整について、図4のフローチャートに従って詳細に説明する。ステップ1では、アクセルペダルセンサ12によんて検出されたアクセル開度及びクランク角センサ11によって検出されたエンジン回転速度を読み込む。
【0023】
ステップ2では、前記アクセル開度,エンジン回転速度に応じた各運転状態毎の目標トルクを発生する吸気弁5と排気弁5の目標開閉時期をマップ(図5参照) から検索する。
【0024】
ステップ3では、リフトセンサ32によって検出された吸気弁5及び排気弁6の実際の開閉時期を読み込む。
ステップ4では、ステップ2で検索された目標開閉時期とステップ3で読み込まれた実際の開閉時期とのズレ、即ち、吸気弁5の開時期のズレA、閉時期のズレB、排気弁6の開時期のズレC、閉時期のズレDを算出する(図6参照) 。
【0025】
ステップ5以下では、前記各ズレの量,方向(進み,遅れ) に基づいて、吸入空気量及び残留既燃ガス量を算出し、これらの目標トルク発生時の値に対する変化量に基づいて、目標トルクに近づけるように各種調整量を設定する。
【0026】
まず、ステップ5では、吸・排気弁の開閉直後の燃焼行程で直ちにトルクを変化し得る調整として、点火時期の調整を行う。
具体的には、吸気弁5の閉時期(吸気下死点前の早閉じ制御の場合) が目標の閉時期より進角側にズレている場合は、目標トルクに対してトルクが減少している場合であるから、そのズレ量に応じて点火時期を進角側に調整し、逆に吸気弁5の閉時期が遅角側にズレている場合は、目標トルクよりトルクが増大している場合であるから、ズレ量に応じて点火時期を遅角側に調整する。
【0027】
また、排気弁6の閉時期と吸気弁5の開時期とで求められる吸・排気弁の開オーバラップ期間の中心位置と目標開閉時期で決定されるオーバーラップ期間の目標中心位置とを比較すると共に、実際の開オーバラップ期間と目標の開オーバラップ期間とを比較する。
【0028】
そして、開オーバラップ期間の中心位置が目標中心位置より進角側にあるとき、及び、開オーバラップ期間が目標の開オーバラップ期間より大きいときは、残留既燃ガス量が目標値より多いときであり、トルク減少方向に作用するので、それぞれ点火時期を進角側に補正し、逆の場合はトルク増大方向に作用するので点火時期を遅角側に補正する(図7参照) 。
【0029】
このようにして吸・排気弁の開閉時期のズレに基づいて吸入空気量や残留既燃ガス量の目標値に対する変化量を算出し、該算出結果に基づいて目標トルクと実トルクとのズレを無くすように点火時期が調整される。
【0030】
ここで、点火時期の調整により吸・排気弁の開閉時期の検出直後の燃焼行程でトルク補正を行うことができ、応答性良く速やかにトルクの調整を行える。
また、前記点火時期の調整に加えて燃料噴射量や吸・排気弁の開閉時期の調整を行う。
【0031】
即ち、ステップ6では、吸気弁の閉時期が目標値より進角側の場合、開オーバラップ期間の中心位置が目標中心位置より進角側にあるとき、開オーバラップ期間が目標の開オーバラップ期間より大きいときは、それぞれ燃料噴射量を増量調整し、吸気弁の閉時期が目標値より遅角側の場合、開オーバラップ期間の中心位置が目標中心位置より遅角側にあるとき、開オーバラップ期間が目標の開オーバラップ期間より小さいときは、それぞれ燃料噴射量を減量調整する。
【0032】
また、ステップ7では、吸・排気弁の開閉時期をそれぞれ目標開閉時期に近づけて、吸入空気量,残留既燃ガス量を適正値となるように調整して目標トルクに近づける調整を行う。
【0033】
ただし、燃料噴射量や吸・排気弁の開閉時期の調整は、該開閉時期の検出が終わって、次のサイクルで行われることになるから、点火時期の調整に比較して応答性に劣る。したがって、点火時期の調整でトルク補正が不足する部分を次回のサイクルで燃料噴射量や開閉時期の調整で行うようにすればよい。
【0034】
また、吸・排気弁の開閉時期のズレが小さく、点火時期の調整のみで十分に目標トルクに近づけることが可能な場合には、燃料噴射量や吸・排気弁の開閉時期の調整を行わなくともトルク調整は満たされるが、燃焼性の観点からは、点火時期を余り大きく変更せず、燃料噴射量,吸入空気量を調整するのがよい。したがって、応答性の良い調整は点火時期で行うが、徐々に燃料噴射量,吸入空気量の調整に移行させるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の構成を示す機能ブロック図。
【図2】 本発明の一実施形態を示す可変動弁エンジンのシステム図。
【図3】 吸排気弁の電磁駆動装置の基本構造図。
【図4】 トルク調整ルーチンのフローチャート。
【図5】 吸・排気弁の目標開閉時期マップを示す図。
【図6】吸・排気弁の目標開閉時期と実開閉時期とのズレを示す図。
【図7】点火時期調整方法を示すマップ。
【符号の説明】
1 エンジン
2 ピストン
3 燃焼室
4 点火栓
5 電磁駆動式の吸気弁
6 電磁駆動式の排気弁
7 吸気通路
8 排気通路
9 燃料噴射弁
10 コントロールユニット
11 クランク角センサ
12 アクセルペダルセンサ
31 検出ロッド
32 リフトセンサ
Claims (2)
- 任意の開閉時期に可変制御できる吸・排気弁を備えた可変動弁エンジンにおいて、
エンジン運転条件に基づいて目標トルクが得られる吸・排気弁の目標開閉時期を設定する目標開閉時期設定手段と、
吸・排気弁の開閉時期を検出する実開閉時期検出手段と、
吸気弁の閉時期に基づいてシリンダ吸入空気量を算出し、吸・排気弁の開オーバラップ量及び開オーバラップの中心時期に基づいてシリンダ内の残留既燃ガス量を算出し、これらシリンダ吸入空気量及び残留既燃ガス量の吸・排気弁目標開閉時期における目標値に対する変化量に応じて、吸・排気弁の開閉時期の検出直後に当該気筒の点火時期を調整すると共に、当該気筒の次回のサイクルにおいて燃料噴射量の調整を追加し、点火時期と燃料噴射量の調整により、前記変化量に見合ったトルク補正を行う調整手段と、
を含んで構成したことを特徴とする可変動弁エンジンの制御装置。 - 任意の開閉時期に可変制御できる吸・排気弁を備えた可変動弁エンジンにおいて、
エンジン運転条件に基づいて目標トルクが得られる吸・排気弁の目標開閉時期を設定する目標開閉時期設定手段と、
吸・排気弁の開閉時期を検出する実開閉時期検出手段と、
吸気弁の閉時期に基づいてシリンダ吸入空気量を算出し、吸・排気弁の開オーバラップ量及び開オーバラップの中心時期に基づいてシリンダ内の残留既燃ガス量を算出し、これらシリンダ吸入空気量及び残留既燃ガス量の吸・排気弁目標開閉時期における目標値に対する変化量に応じて、吸・排気弁の開閉時期の検出直後に当該気筒の点火時期を調整すると共に、当該気筒の次回のサイクルにおいて吸・排気弁の開閉時期の調整を追加し、点火時期と吸・排気弁の開閉時期の調整により、前記変化量に見合ったトルク補正を行うを調整する調整手段と、
を含んで構成したことを特徴とする可変動弁エンジンの制御装置。
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