JP4140274B2 - 走行制御装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両の走行状態を制御する走行制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、車両の走行状態を制御する走行制御装置として、車両の駆動・制動系の一構成要素である制御対象(例えば、ブレーキ装置、自動変速機など)で発生すべき目標駆動制動トルクを表す指令値を上位の制御装置から受けて、この指令値を制御対象の制御量に変換し、変換した制御量で制御対象を制御するように構成されたものがある。
【0003】
この種の走行制御装置においては、車両をシミュレーションして求められた変換特性(例えば、指令値から制御量を演算する手順を示す式、指令値と指令値に対応する制御量で構成されるテーブルなど)に従って、指令値を制御量に変換していた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上述の走行制御装置においては、車両が走行中であるか停止中であるかに拘わらず、常に同一の変換特性に従って指令値が制御量に変換されていた。そのため、変換特性が走行(または停止)中の車両をシミュレーションしたものであれば車両が停止(または走行中)中である場合に、制御対象が実際に発生する駆動制動トルクと、指令値で示される目標駆動制動トルクとの誤差が大きくなってしまい、車両の挙動を不安定にしてしまう恐れがあった。
【0005】
例えば、ブレーキ装置を制御する走行制御装置では、指令値である目標制動トルクを、制御量であるブレーキシリンダの油圧値に変換することになるが、このような走行制御装置においては、従来、走行中の車両をシミュレーションした変換特性に従って、目標制動トルクが油圧値に変換されていた。
【0006】
このようなブレーキ装置におけるブレーキパッドの摩擦係数(または摩擦抵抗)は、車両が走行中であるときよりも停止中であるときの方が大きくなるため、停止中の車両におけるブレーキ装置に走行中と同じ制動トルクを発生させるには、ブレーキパッドの摩擦係数が大きい分だけ変換後の油圧値は小さくてよいことになる。ところが、上述の走行制御装置では、車両が走行中であるか停止中であるかに拘わらず、常に走行中の車両をシミュレーションした変換特性に従って目標制動トルクを油圧値に変換してしまうため、車両が停止中である場合には、摩擦係数が大きくなっている分だけブレーキ装置が実際に発生する制動トルクが大きくなってしまう。
【0007】
このように、ブレーキ装置が目標制動トルクよりも大きな制動トルクを発生している状態で車両の走行を開始させる場合、ブレーキ装置が発生している制動トルクが充分に小さくなる前に車両の走行が開始されることがあり、これによって、車両のスムーズな発進が妨げられる恐れがある。
【0008】
本発明は、指令値で示される目標駆動制動トルクと制御対象が実際に発生する駆動制動トルクとの誤差が大きくなることを防止することによって、車両の挙動を安定させることのできる走行制御装置を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段および発明の効果】
上記問題を解決するため請求項1に記載の走行制御装置は、まず、車両の駆動・制動系の一構成要素である制御対象で発生すべき駆動制動トルクを表す指令値を上位の制御装置から受ける。次に、変換手段によって、指令値を制御対象の制御量に変換する。そして、制御手段によって、変換手段により変換された制御量で制御対象を制御する。
【0010】
この走行制御装置における変換手段は、上位の制御対象からの指令値を変換特性に従って制御対象の制御量に変換する。この変換特性は、切替手段によって、走行検出手段による検出結果で車両が走行中であれば走行中の車両に対応する変換特性に切り替えられ、停止中であれば停止中の車両に対応する変換特性に切り替えられる。
【0011】
このように構成された走行制御装置によれば、車両が走行中であるか停止中であるかによって、それぞれに対応する変換特性に従って指令値が制御量に変換される。そのため、車両が走行中であるか停止中であるかに拘わらず同一の変換特性に従って指令値が制御量に変換される構成のように、制御対象が実際に発生する駆動制動トルクと指令値で示される駆動制動トルクとの誤差が大きくなることがなく、車両の挙動を安定させることができる。
【0012】
なお、上述の切替手段は、指令値を制御対象の制御量に変換する際に利用する変換特性を切り替えるための手段であって、走行検出手段による検出結果に応じて、走行中の車両に対応する変換特性と停止中の車両に対応する変換特性とを切り替える手段である。ここでいう変換特性とは、走行中および停止中の車両をシミュレーションして求められた式(指令値から制御量を演算する手順)やテーブル(指令値と指令値に対応する制御量で構成される)などで示される特性のことである。
【0013】
例えば、式で示される変換特性であれば、変換手段は、この式に従って指令値から制御量を演算することによって、指令値を制御量に変換する。また、テーブルで示される変換特性であれば、変換手段は、このテーブルから指令値に対応する制御量を抽出することによって、指令値を制御量に変換する。
【0014】
また、このような変換特性を、車両が走行中である場合と停止中である場合とで切り替えるためには、例えば、指令値を制御量に変換する際に利用する式やテーブルを、走行検出手段による検出結果で走行中であれば走行中の車両をシミュレーションして求められた式やテーブルに切り替え、停止中であれば停止中の車両をシミュレーションして求められた式やテーブルに切り替えるように構成すればよい。
【0015】
特に、変換特性が、指令値と所定のパラメータとに基づいて制御量を演算する式で示される場合には、このパラメータを走行中の車両に対応するパラメータと停止中の車両に対応するパラメータとに切り替えるように構成すればよい。パラメータとしては、例えば、制御対象の摩擦係数に対応するパラメータを利用することができる。具体的な構成としては、請求項2に記載のような構成を考えることができる。
【0016】
それは、切替手段が、変換手段が制御対象の制御量を演算する際に利用するパラメータを、走行検出手段による検出結果で走行中であれば動摩擦係数に対応するパラメータに切り替え、停止中であれば静止摩擦係数に対応するパラメータに切り替えることによって変換特性を切り替える、といった構成である。
【0017】
このように構成された走行制御装置によれば、制御対象の摩擦係数に対応するパラメータを切り替えることによって、変換特性を切り替えることができる。
ブレーキ装置や自動変速機などの制御対象は、車両が走行中であるときと停止中であるときとで動作時に発生する摩擦抵抗(摩擦係数)が異なり、通常、停止中であるときの方が動作時に発生する摩擦抵抗が大きくなる。そのため、このような制御対象の摩擦係数に対応するパラメータを、車両が走行中であるときと停止中であるときとで切り替えることは、車両の挙動を安定させるためには好適である。
【0018】
なお、上述の動摩擦係数または静止摩擦係数に対応するパラメータとは、例えば、動摩擦係数または静止摩擦係数に基づいて算出されたパラメータ、動摩擦係数または静止摩擦係数を含むパラメータなどのことである。また、車両が走行中または停止中である場合の制御対象における摩擦抵抗に基づいて算出されたパラメータ、摩擦係数を含むパラメータなどのことである。
【0019】
また、上述の走行検出手段によって、車両が走行していることを検出するための構成としては、例えば、請求項に記載のように、走行検出手段が、車両の走行速度を検出可能であって、走行速度が検出されている状態を、車両が走行していることとして検出する、といった構成を考えることができる。
【0020】
このように構成された走行制御装置によれば、車両の走行速度に基づいて、車両が走行していることを検出できる。
また、走行検出手段によって、車両が走行していることを検出するための別の構成として、請求項に記載のように、走行検出手段が、車両の走行速度および車両に加わる加速度を検出可能であって、走行速度が検出されていなくて、かつ、加速度の変化が所定のしきい値以上となった以後の状態を、車両が走行していることとして検出する、といった構成を考えることもできる。
【0021】
このように構成された走行制御装置によれば、車両の走行速度および車両に加わる加速度の変化に基づいて、車両が走行していることを検出できる。
なお、車両の走行速度および車両に加わる加速度を検出可能な走行制御手段は、車両の走行速度を検出する手段および加速度を検出する手段が別々の手段で構成されていてもよい。
【0022】
また、上述の走行検出手段によって、車両が停止していることを検出するための構成としては、例えば、請求項に記載のように、走行検出手段が、車両の走行速度を検出可能であって、走行速度が検出されていない状態を、車両が停止していることとして検出する、といった構成を考えることができる。
【0023】
このように構成された走行制御装置によれば、車両の走行速度に基づいて、車両が停止していることを検出できる。
なお、上述の切替手段が、制御量を演算する際に利用するパラメータを切り換えるタイミングは、走行検出手段による検出結果で車両が走行中または停止中となった以降であればよい。
【0024】
特に、制御対象がブレーキ装置である場合には、動摩擦係数に対応するパラメータから静止摩擦係数に対応するパラメータに切り替えるタイミングを、停止中の車両が走行を開始する直前とすることが望ましい。このタイミングでパラメータを切り替えると、車両が走行を開始する直前を除いては、車両が停止中であるにも拘わらず、動摩擦係数に対応するパラメータに基づいて制御量を演算されることになる。車両が停止中である場合に動摩擦係数に対応するパラメータに基づいて制御量を演算すると、動摩擦係数が静止摩擦係数よりも小さいことから、演算後の制御量は静止摩擦係数に対応するパラメータに基づいて演算した制御量よりも大きくなってしまう。そのため、ブレーキ装置が実際に発生する制動トルクも、指令値で示される制動トルクよりも大きくなってしまう。このように、ブレーキ装置が指令値で示される制動トルクよりも大きな制動トルクを発生している状態で車両の走行を開始させるとき、ブレーキ装置が発生している制動トルクが充分に小さくなる前に車両の走行が開始され、車両のスムーズな発進が妨げられる恐れがある。
【0025】
しかし、停止中の車両が走行を開始する直前に、制御量を演算する際に利用されるパラメータを、動摩擦係数に対応するパラメータから静止摩擦係数に対応するパラメータに切り替えることによって、車両が走行を開始する前にはブレーキ装置が発生している制動トルクを充分に小さくしておくことができるため、車両のスムーズな発進が妨げられることはない。さらに、車両が走行を開始する直前を除き、車両が停止中である場合には、ブレーキ装置が実際に発生する制動トルクが指令値で示される制動トルクよりも大きくなることから、車両を確実に停止させておくことができるため好適である。
【0026】
このように、停止中の車両が走行を開始する直前に、動摩擦係数に対応するパラメータから静止摩擦係数に対応するパラメータに切り替える具体的な構成としては、例えば、請求項に記載のような構成を考えることができる。
請求項に記載の走行制御装置は、運転者による車両の操作状態を操作検出手段によって検出しており、この操作状態に基づいて車両の走行開始が第1予測手段によって予測される。そして、車両の走行開始が予測されてから所定期間が経過するまでの間だけ、変換手段が制御対象の制御量を演算する際に利用するパラメータが、切替手段によって静止摩擦係数に対応するパラメータに切り替えられるように構成されている。
【0027】
このように構成された走行制御装置によれば、第1予測手段により車両の走行開始を予測したとき、つまり、停止中の車両が走行を開始する直前に、制御量を演算する際に利用されるパラメータを、動摩擦係数に対応するパラメータから静止摩擦係数に対応するパラメータに切り替えることができる。
【0028】
なお、上述の第1予測手段は、車両が実際に走行を開始する前に車両の走行開始を予測する手段であって、例えば、車両が停止している状態(走行検出手段により検出)で、運転者により操作されるアクセルペダルやブレーキペダルの踏込量が所定の踏込量以上(または以下)となったことを、車両が走行を開始することとして予測するように構成すればよい。
【0029】
また、停止中の車両が走行を開始する直前に、動摩擦係数に対応するパラメータから静止摩擦係数に対応するパラメータに切り替える別の構成として、請求項に記載のような構成を考えることもできる。
請求項に記載の走行制御装置は、上位の制御装置により演算された目標駆動制動トルクを取得手段により取得可能であって、この目標駆動制動トルクと走行検出手段による検出結果とに基づいて車両の走行開始が第2予測手段によって予測される。そして、車両の走行開始が予測されてから所定期間が経過するまでの間だけ、変換手段が制御対象の制御量を演算する際に利用するパラメータが、切替手段によって静止摩擦係数に対応するパラメータに切り替えられるように構成されている。
【0030】
また、この走行制御装置が指令値を受ける上位の制御装置は、車両を所定の走行状態に制御するのに必要な目標駆動制動トルクを演算すると共に、この目標駆動制動トルクを、車両の駆動・制動系を構成する複数の構成要素を用いて発生させるために、目標駆動制動トルクに基づいて複数の構成要素を制御する各制御装置に対する指令値を設定し、この設定した各指令値を、当該走行制御装置を含む複数の制御装置それぞれに出力するものである。
【0031】
このように構成された走行制御装置によれば、第2予測手段により車両の走行開始を予測したとき、つまり、停止中の車両が走行を開始する直前に、制御量を演算する際に利用されるパラメータを、動摩擦係数に対応するパラメータから静止摩擦係数に対応するパラメータに切り替えることができる。
【0032】
なお、上述の第2予測手段は、車両が実際に走行する前に走行開始を予測する手段であって、例えば、取得手段により取得された目標駆動制動トルクが車両を加速させるための正の値(駆動トルク)となったことを、車両が走行を開始することとして予測するように構成すればよい。
【0033】
また、上述の切替手段は、車両の走行開始が予測されてから所定期間が経過するまでの間だけ、制御量を演算する際に利用するパラメータを、静止摩擦係数に対応するパラメータに切り替える。ここで、『所定期間が経過するまでの間』とは、車両の走行開始が予測されてから実際に車両の走行が開始されるまでの期間であって、例えば、車両の走行開始が予測されてから実際に車両が走行を開始すると推定される時間が経過するまでの間とすればよい。この場合、実際に車両が走行を開始すると推定される時間を、あらかじめ実験的または理論的に求めておけばよい。
【0034】
このように、実際に車両が走行を開始すると推定される時間が経過するまでの間だけ、静止摩擦係数に対応するパラメータに切り替えるための構成としては、例えば、請求項に記載のような構成を考えることができる。
請求項に記載の走行制御装置は、切替手段が、車両の走行開始が予測されてから所定の時間が経過するまでの間だけ、静止摩擦係数に対応するパラメータに切り替えるように構成されている。
【0035】
このように構成された走行制御装置によれば、車両の走行開始が予測されてから所定の時間が経過するまでの間だけ、制御量を演算する際に利用するパラメータを静止摩擦係数に対応するパラメータに切り替えることができる。
また、『所定期間が経過するまでの間』は、走行検出手段による検出結果で走行中となるまでの間であってもよい。このように、走行検出手段による検出結果で走行中となるまでの間だけ、静止摩擦係数に対応するパラメータに切り替えるための構成としては、例えば、請求項に記載のような構成を考えることができる。
【0036】
請求項に記載の走行制御装置は、切替手段が、車両の走行開始が予測されてから走行検出手段による検出結果で走行中となるまでの間だけ、静止摩擦係数に対応するパラメータに切り替えるように構成されている。
このように構成された走行制御装置によれば、車両の走行開始が予測されてから走行検出手段による検出結果で走行中となるまでの間だけ、制御量を演算する際に利用するパラメータを静止摩擦係数に対応するパラメータに切り替えることができる。
【0037】
ところで、切替手段により変換特性が切り替えられたとき、静止摩擦係数に対応するパラメータおよび動摩擦係数に対応するパラメータは値が異なるため、切り替えられた後に演算される制御量が、切り替えられる前に演算された制御量から大きく外れた値となってしまう恐れがある。このような場合、変換特性が切り替えられた以降に続けて演算される制御量間に大きな差が生じてしまい、これに伴って、制御対象の発生する駆動制動トルクが急激に変化して、車両の挙動を不安定にすることがあるため好ましくない。そこで、変換特性が切り替えられた以降に続けて演算される制御量間に大きな差が生じることがないように制御量を補正することが望ましい。制御量を補正するための具体的な構成としては、例えば、請求項に記載のような構成を考えることができる。
【0038】
請求項に記載の走行制御装置は、切替手段が、変換手段が制御対象の制御量を演算する際に利用するパラメータを、このパラメータで示される値が一方のパラメータから他方のパラメータまで連続的に変化するように切り替えるように構成されている。
【0039】
このように構成された走行制御装置によれば、パラメータが切り替えられた前後で、パラメータで示される値を一方のパラメータ(静止摩擦係数または動摩擦係数に対応するパラメータ)から他方のパラメータ(動摩擦係数または静止摩擦係数に対応するパラメータ)までが連続的に変化する。そのため、パラメータが切り替えられる過程においては、続けて演算される制御量が連続的に変化するように補正される。このように、パラメータが切り替えられる過程では、パラメータを補正しない構成と比べて、続けて演算される制御量間に大きな差が生じにくい。よって、制御対象の制動駆動トルクが急激に変化することを防止することができ、これに伴い車両の挙動が不安定になることを防止できる。
【0040】
なお、制御対象の制御量を演算する際に利用するパラメータは、静止摩擦係数(または動摩擦係数)に対応するパラメータから動摩擦係数(または静止摩擦係数)に対応するパラメータに切り替えられるときのみ、連続的に変化するように構成してもよい。
【0041】
特に、制御対象がブレーキ装置である場合には、静止摩擦係数に対応するパラメータから動摩擦係数に対応するパラメータに切り替えられるときのみ、パラメータで示される値が連続的に変化するように構成することが望ましい。このような構成においては、動摩擦係数に対応するパラメータから静止摩擦係数に対応するパラメータに切り替えるときに、パラメータで示される値が連続的に変化しないことになる。動摩擦係数に対応するパラメータから静止摩擦係数に対応するパラメータに切り替えることは、走行中の車両が停止して車輪が回転しなくなった以後に行われる。そのため、切り替えられた後に演算された制御量が、切り替えられる前に演算された制御量から大きく外れた値となって、ブレーキ装置の発生する制動トルクが急激に変化したとしても、車両の挙動に大きな影響を与えることはない。
【0042】
このようなことから、動摩擦係数に対応するパラメータから静止摩擦係数に対応するパラメータに切り替えるときに、パラメータで示される値を連続的に変化させなくても問題はない。むしろ、動摩擦係数に対応するパラメータから静止摩擦係数に対応するパラメータへの切り替えを行う際には、パラメータで示される値を連続的に変化させない分だけ、パラメータの切り替えを速く行うことができ、また、パラメータで示される値を連続的に変化させるための処理に関わる負荷を軽減することができるため好適である。
【0043】
このように、静止摩擦係数に対応するパラメータから動摩擦係数に対応するパラメータに切り替えられるときのみ、パラメータで示される値を連続的に変化させる具体的な構成としては、例えば、請求項1に記載のような構成を考えることができる。
【0044】
請求項1に記載の走行制御装置は、切替手段が、変換手段が制御対象の制御量を演算する際に利用するパラメータを、静止摩擦係数に対応するパラメータから動摩擦係数に対応するパラメータに切り替える場合のみ、このパラメータで示される値が静止摩擦係数に対応するパラメータから動摩擦係数に対応するパラメータまで連続的に変化するように切り替えるように構成されている。
【0045】
このように構成された走行制御装置によれば、静止摩擦係数に対応するパラメータから動摩擦係数に対応するパラメータに切り替える場合のみ、パラメータで示される値を連続的に変化させることができる。
【0046】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の構成を、車両の走行状態をトルクベースで統合制御する車両統合制御システムの一部であるブレーキECUに採用した例を説明する。
[第1実施形態]
本第1実施形態における車両統合制御システムは、車両の駆動・制動系の構成要素である複数の制御対象(ブレーキ装置100、エンジン200および自動変速機300)を統合制御するためのシステムであって、図1に示すように、ブレーキアクチュエータ(以降、ブレーキACTとする)110経由でブレーキ装置100を制御するブレーキECU10、エンジン200を制御するエンジンECU20、自動変速機300を制御するATECU30、各ECU10、20、30を制御するマネージャECU40などにより構成されている。これら各ECU10、20、30、40は、各種演算処理を行う演算処理部10a、20a、30a、40a、車内LAN回線Lを介して他のECUとデータ通信を行う通信部10b、20b、30b、40b、各種信号を入出力する信号入出力部10c、20c、30c、40cなどで構成される。
【0047】
ブレーキECU10は、信号入出力部10cを介して、車両の走行速度を検出する車速センサ400、車両に加わる加減速度を検出する加減速度センサ(以降、Gセンサとする)410、アクセルペダルの踏込量を検出するアクセルペダル開度センサ420といったセンサ類からの検出信号を入力し、また、通信部10bを介して、マネージャECU40からの指令値を入力する。そして、後述する処理(図2参照)に基づいて、指令値に従ってブレーキ装置100を動作させるための制御信号を生成し、この制御信号を、信号入出力部10cを介してブレーキACT110に出力することによってブレーキ装置100を制御する。
【0048】
エンジンECU20は、アクセルペダル開度センサ420、吸気量を検出するエアフローメータ、吸入空気の温度を検出する吸気温センサ、スロットルバルブの開度を検出するスロットル開度センサ、排気中の酸素濃度を検出する酸素濃度センサ、ノッキングを検出するノックセンサ、冷却水温を検出する水温センサ、クランク軸の回転角度や回転速度を検出するためのクランク角センサ、イグニッションスイッチといったセンサ類からの検出信号を、信号入出力部20cを介して入力し、また、通信部20bを介して、マネージャECU40から指令値を入力する。そして、後述する処理(図2参照)に基づいて、指令値に従ってエンジン200を動作させるための制御信号を生成し、この制御信号を、信号入出力部20cを介してエンジン200に出力することによってエンジン200を制御する。
【0049】
ATECU30は、信号入出力部30cを介して、車速センサ400、自動変速機300内の作動油の温度を検出する油温センサ、シフトレバーの操作位置(シフト位置)を検出するシフトポジションスイッチ、ブレーキ操作によって点燈するストップランプの状態(運転者のブレーキ操作)を検出するストップランプスイッチといったセンサ類からの検出信号を入力し、また、通信部30bを介して、マネージャECU40からの指令値を入力する。そして、後述する処理(図2参照)に基づいて、指令値に従って自動変速機300を動作させるための制御信号を生成し、この制御信号を、信号入出力部30cを介して自動変速機300に出力することによって自動変速機300を制御する。
【0050】
マネージャECU40は、信号入出力部40cを介して、車速センサ400、Gセンサ410、アクセルペダル開度センサ420、ヨーレート(旋回時に車両に加わる角速度)を検出するヨーレートセンサ430、自車両と先行車両との車間距離を検出する前方認識センサ440といったセンサ類からの検出信号を入力する。そして、後述する処理(図2参照)に基づいて指令値を演算し、この指令値を、通信部40bを介して各ECU10、20、30に出力する。
・車両の走行状態を制御するための処理
上述の各ECU10、20、30、40により車両の走行状態を制御するための処理を、図2に示す機能ブロック図に基づいて説明する。
【0051】
(1)マネージャECU40
マネージャECU40は、信号入出力部40cを介して入力した各種センサ類からの検出信号に基づいて指令値を演算し、この指令値を各ECU10、20、30に出力する。この処理を以下に説明する。
【0052】
まず、マネージャECU40は、各種センサからの検出信号に基づく車両の目標駆動制動トルクを、トルク演算部41、42、43、44、45によって演算する。
これらトルク演算部のうち、ドライバ要求トルク演算部41は、車速センサ400により検出された車両の走行速度、および、アクセルペダル開度センサ420により検出されたアクセルペダルの操作量に基づいて、運転者により要求されている駆動制動トルクを目標駆動制動トルクとして演算する。また、VSCトルク演算部42は、車両走行安定制御(VSC:Vehicle Stability Control)のための目標駆動制動トルクを演算する。また、ABS・TRCトルク演算部43は、車両の制動時および加速時に車輪がスリップすることを抑制するスリップ制御(ABS:Antilock Brake System、TRC:TRaction Control)のための目標駆動制動トルクを演算する。また、定速CCトルク演算部44は、定速制御(定速CC:Cruise Control)のための目標駆動制動トルクを演算する。また、ACCトルク演算部45は、自車両を先行車両に追従させる追従制御(ACC:Adaptive Cruise Control)のための目標駆動制動トルクを演算する。
【0053】
次に、マネージャECU40は、トルク選択部46によって、各トルク演算部により演算された目標駆動制動トルクの中から、あらかじめ設定された条件に従って車両の走行条件で最も優先順位の高い目標駆動制動トルクを、走行制御に用いる目標駆動制動トルクとして選択する。
【0054】
次に、マネージャECU40は、トルク変換部47によって、トルク選択部46により選択された目標駆動制動トルクを、タイヤの発生する目標駆動制動トルクである目標タイヤ駆動制動トルクに変換する。
次に、マネージャECU40は、制御対象選択部48によって、トルク変換部47により演算された目標タイヤ駆動制動トルクにタイヤを制御するために用いる制御対象を、ブレーキ装置100、エンジン200、自動変速機300の中から選択すると共に、選択した制御対象に対応する制御目標演算部(エンジン制御目標演算部49、AT制御目標演算部50、ブレーキ制御目標演算部51)に対して制御目標演算指令を出力する。
【0055】
ここで、目標タイヤ駆動制動トルクが車両を加速させる正の値(駆動トルク)であれば、走行制御に用いる制御対象としてエンジン200および自動変速機300が選択される。こうして選択された制御対象のうち、エンジン200に対応するエンジン制御目標演算部49には、エンジン200を用いて目標タイヤ駆動制動トルクを発生させるための制御目標演算指令が出力され、自動変速機300に対応するAT制御目標演算部50には、シフトダウンなどを指令するための制御目標演算指令が出力される。
【0056】
一方、目標タイヤ駆動制動トルクが車両を減速させる負の値(制動トルク)であれば、ブレーキ装置100により制動トルクを発生させるか、エンジンブレーキにより制動トルクを発生させるか、自動変速機300を含め上述した組合せで制動トルクを発生させるかが総合的に決定され、走行制御に用いる制御対象が選択される。こうして選択された制御対象のうち、ブレーキ装置100に対応するブレーキ制御目標演算部51には、ブレーキ装置100を用いて目標タイヤ駆動制動トルクを発生させるための制御目標演算指令が出力され、エンジン制御目標演算部49には、エンジン200を用いて目標タイヤ駆動制動トルクを発生させるための制御目標演算指令が出力され、AT制御目標演算部50には、シフトダウンなどを指令するための制御目標演算指令が出力される。
【0057】
そして、マネージャECU40は、制御目標演算部49、50、51によって、制御対象選択部48から入力した制御目標演算指令に基づき各ECU10、20、30への指令値を演算し、この指令値を通信部40bを介して各ECU10、20、30に出力する。
【0058】
これら制御目標演算部のうち、エンジン制御目標演算部49は、制御対象選択部48から入力した制御目標演算指令に基づいて、この制御目標演算指令で示される目標タイヤ駆動制動トルクをエンジン制御で実現するのに必要な目標エンジントルクおよび目標エンジン回転数を、指令値として演算する。
【0059】
また、AT制御目標演算部50は、制御対象選択部48から出力された制御目標演算指令、および、エンジン制御目標演算部49により演算された目標エンジン回転数や目標エンジントルクを示すデータに基づいて、自動変速機300の目標変速段、変速時の目標変速時間、ロックアップクラッチの解放・締結またはロックアップスリップ制御のための目標スリップ量を、指令値として演算する。
【0060】
また、ブレーキ制御目標演算部51は、制御対象選択部48から出力された制御目標演算指令に基づいて、この制御目標演算指令で示される目標タイヤ駆動制動トルクをブレーキ装置100を用いて実現するためにブレーキ装置100に発生させるべき目標制動トルクを、指令値として演算する。
【0061】
(2)ブレーキECU10
ブレーキECU10は、通信部10bを介して入力した指令値に基づいてブレーキ装置100を制御するための制御信号を生成し、この制御信号を、信号入出力部10cを介してブレーキACT110に出力する。この処理を以下に説明する。
【0062】
まず、ブレーキECU10は、ブレーキ制御量演算部12によって、指令値で示される目標制動トルクをブレーキ装置100に発生させるために必要なブレーキ制御量(ブレーキ装置100の備えるマスタシリンダの油圧値)を、後述する「ブレーキ制御量演算部12によるブレーキ制御量の演算」(図3参照)に示す手順によって演算する。
【0063】
そして、ブレーキECU10は、ブレーキACT指令出力部14によって、ブレーキ制御量演算部12により演算されたブレーキ制御量にブレーキ装置100を制御するための制御信号を生成し、この制御信号をブレーキACT110に出力する。
【0064】
この制御信号を入力したブレーキACT110は、制御信号で示されるブレーキ制御量でブレーキ装置100を制御する。
(3)エンジンECU20
エンジンECU20は、通信部20bを介して入力した指令値に基づいてエンジン200を制御するための制御信号を生成し、この制御信号を、信号入出力部20cを介してエンジン200に出力する。この処理を以下に説明する。
【0065】
まず、エンジンECU20は、エンジン制御量演算部22によって、エンジン200のエンジントルクおよびエンジン回転数を、指令値で示される目標エンジントルクおよび目標エンジン回転数とするために必要なエンジン制御量(例えば、目標スロットル開度)を演算する。
【0066】
そして、エンジンECU20は、アクチュエータ指令出力部24によって、エンジン制御量演算部22により演算されたエンジン制御量にエンジン200を制御するための制御信号を生成し、この制御信号をエンジン200の備えるアクチュエータ類に出力する。なお、エンジン200の備えるアクチュエータには、気筒毎に設けられたインジェクタ、点火用高電圧を発生するイグナイタ、燃料タンクから燃料を汲み上げインジェクタに供給する燃料ポンプ、吸気管に設けられたスロットルバルブを開閉するためのスロットル駆動モータなどがある。
【0067】
この制御信号を入力したアクチュエータ類は、制御信号で示されるエンジン制御量でエンジン200を制御する。
(4)ATECU30
ATECU30は、通信部30bを介して入力した指令値に基づいて自動変速機300を制御するための制御信号を生成し、この制御信号を、信号入出力部30cを介して自動変速機300に出力する。この処理を以下に説明する。
【0068】
ATECU30は、ソレノイド指令出力部32によって、指令値で示される目標変速段、目標変速時間、目標スリップ量に基づいて、自動変速機300を制御するための制御信号を生成し、この制御信号を自動変速機300の備えるアクチュエータ類に出力する。なお、自動変速機300の備えるアクチュエータには、変速段を切り替えるためのシフトソレノイド、変速クラッチの係合力を操作するためのライン圧ソレノイド、ロックアップクラッチの締結力を操作するためのロックアップ圧ソレノイドなどがある。
・ブレーキ制御量演算部12によるブレーキ制御量の演算
以下に、ブレーキECU10のブレーキ制御量演算部12によりブレーキ制御量を演算する手順を図3に基づいて説明する。本手順は、イグニッションスイッチがON側に切り換えられている間、繰り返し実行される。
【0069】
まず、車速センサ400からの検出信号に基づいて、車両が停止中であるか否かをチェックする(s110)。ここでは、車速センサ400により車両の走行速度が検出されていない状態を車両が停止中であると判定し、車両の走行速度が検出されている状態を車両が走行中であると判定する。
【0070】
このs110の手順で、車両が停止中であれば(s110:YES)、ブレーキ制御量を演算する際に利用するパラメータαを静止摩擦係数に対応するパラメータαsに決定(αs→α)する(s120)。静止摩擦係数に対応するパラメータαsは、停止中の車両におけるブレーキ装置100をシミュレーションして求められたパラメータであって、パラメータαsに目標制動トルクxを積算することによってブレーキ制御量ys(=αs*x)が演算可能な式に含まれたパラメータである。なお、パラメータαsは、車輪120が回転していない状態のブレーキ装置100をシミュレーションして求められているため、ブレーキ装置100の備えるブレーキパッドの静止摩擦係数μsを含むパラメータとなっている(αs=ks/μs、ks=定数)。
【0071】
また、s110の手順で、車両が走行中であれば(s110:NO)、ブレーキ制御量を演算する際に利用するパラメータαを動摩擦係数に対応するパラメータαmに決定(αm→α)する(s130)。動摩擦係数に対応するパラメータαmは、走行中の車両におけるブレーキ装置100をシミュレーションして求められたパラメータであって、パラメータαmに目標制動トルクxを積算することによってブレーキ制御量y(=αm*x)が演算可能な式に含まれたパラメータである。なお、パラメータαmは、車輪120が回転している状態のブレーキ装置100をシミュレーションして求められているため、ブレーキ装置100の備えるブレーキパッドの動摩擦係数μmを含むパラメータとなっている(αm=km/μm、km=定数)。
【0072】
こうして、s120またはs130の手順を終えた後、パラメータαを補正する(s140)。ここでは、ブレーキ制御量を演算する際に利用されるパラメータαが、静止摩擦係数に対応するパラメータαsから動摩擦係数に対応するパラメータαmに切り替えられた以降、本「ブレーキ制御量の演算」手順においてパラメータαsによりブレーキ制御量を演算する間は、このs140の手順でパラメータαが補正される。
【0073】
ブレーキ制御量を演算する際に利用するパラメータαがパラメータαsからパラメータαmに切り替えられたとき、各パラメータαs、αmの値が異なっていることから、切り替えられた後に演算されたブレーキ制御量が、切り替えられる前に演算されたブレーキ制御量から大きく外れた値となってしまう恐れがある。このような場合、パラメータが切り替えられた以降に続けて演算されるブレーキ制御量間に大きな差が生じてしまい、これに伴って、ブレーキ装置100の発生する制動トルクが急激に変化して、車両の挙動を不安定にすることがあるため好ましくない。そのため、このs140の手順では、パラメータが切り替えられた以降に続けて演算されるブレーキ制御量間に大きな差が生じることがないようにパラメータαを補正している。なお、このs140の手順によりパラメータαを補正する具体的な手順については、後述する「ブレーキ制御量演算部12によるパラメータαの補正」(図4参照)において説明する。
【0074】
そして、ブレーキ制御量を演算する(s150)。このs150の手順では、指令値で示される目標制動トルクxにパラメータαを積算することによって、ブレーキ制御量y(=α*x)が演算される。
こうして、s150の手順を終えた後、s110の手順に戻る。
・ブレーキ制御量演算部12によるパラメータαの補正
以下に、ブレーキECU10のブレーキ制御量演算部12によりパラメータαを補正する手順を図4に基づいて説明する。なお、本手順は、図3におけるs140の手順の具体的な説明である。
【0075】
まず、ブレーキ制御量を演算する際に利用するパラメータαをチェックする(s210)。ここでは、図3におけるs120またはs130の手順のいずれの手順によってパラメータαが決定されたかをチェックすることによって、ブレーキ制御量を演算する際に利用するパラメータ(αsまたはαm)がチェックされる。
【0076】
このs210の手順で、パラメータαが動摩擦係数に対応するパラメータαmである場合(s210:YES)、カウンタフラグF1に「0」がセット(F1=0)されているか否かをチェックする(s220)。カウンタフラグF1は、初期値として「0」がセットされており、以降の処理(s240からs280の処理)でタイマーT1によるカウントが行われている間だけ「1」がセットされるフラグである。
【0077】
このs220の手順で、カウンタフラグF1に「0」がセットされている場合(s220:YES)、カウンタフラグF1に「1」をセット(1→F1)し直した後(s230)、タイマーT1をスタートさせる(s240)。
なお、s220の手順でカウンタフラグF1に「0」がセットされている状態は、直前に実行された「ブレーキ制御量の演算」(図3)で示される手順において静止摩擦係数に対応するパラメータαsを利用してブレーキ制御量が演算(s150の手順)された後、次に実行される「ブレーキ制御量の演算」で示される手順において動摩擦係数に対応するパラメータαmを利用してブレーキ制御量が演算される状態である。これは、ブレーキ制御量を演算する際に利用されるパラメータが、静止摩擦係数に対応するパラメータαsから動摩擦係数に対応するパラメータαmに切り替えられたことを示している。つまり、このs230およびs240の手順は、ブレーキ制御量を演算する際に利用されるパラメータが、静止摩擦係数に対応するパラメータαsから動摩擦係数に対応するパラメータαmに切り替えられたときのみに行われることになる。
【0078】
こうして、s240の手順を終えた後、または、s220の手順でカウンタフラグF1に「1」がセットされている場合(s220:NO)、タイマーT1によるカウント値t1が所定のしきい値t0(本実施形態においては1秒)に到達(t0≦t1)したか否かをチェックする(s250)。しきい値t0は、ブレーキ制御量を演算する際に利用されるパラメータがパラメータαsからパラメータαmに切り替えられて以降に、パラメータαを補正すべき時間を示す値である。
【0079】
このs250の手順で、カウント値t1がしきい値t0に到達していなければ(s250:NO)、パラメータαを補正する(s260)。ここでは、各パラメータαs、αm、およびタイマーT1のカウント値t1に基づく式により算出されたパラメータα0(=((αm−αs)/t0)*t1+αs)が新たなパラメータαとして決定される(α0→α)。なお、パラメータαを修正する際に利用される式は、α0の値が、タイマーT1のカウント値t1(経過時間)に応じてαs(t1=0のとき)からαm(t1=t0のとき)まで連続的に増加する式としてあらかじめ求められたものである。こうして、パラメータαは、パラメータαsからパラメータαmまでが連続的に増加するように切り替えられていくことになる。
【0080】
また、s210の手順でパラメータαが静止摩擦係数に対応するパラメータαsである場合(s210:NO)、または、s250の手順でカウント値t1がしきい値t0に到達していれば(s250:YES)、カウンタフラグF1に「0」をセット(0→F1)し直した後(s270)、タイマーT1をストップおよびリセットする(s280)。
【0081】
こうして、s260またはs280の手順を終えた後、図3におけるs150の処理に戻る。
[第1実施形態の効果]
このように構成された走行統合制御システムによれば、図3におけるs120またはs130の手順で、車両が停止中であるか走行中であるかによって、それぞれに対応するパラメータ(パラメータαsまたはαm)に基づいて、目標制動トルクをブレーキ制御量に変換することができる。そのため、車両が走行中であるか停止中であるかに拘わらず同一のパラメータに基づいて目標制動トルクをブレーキ制御量に変換する構成のように、ブレーキ装置100が実際に発生する制動トルクと目標制動トルクとの誤差が大きくなることがなく、車両の挙動を安定させることができる。
【0082】
また、図4におけるs260の手順において、パラメータαがカウント値t1と共にパラメータαsからパラメータαmまで連続的に変化するように補正される。そのため、パラメータが連続的に変化する過程においては、s260の手順のようにパラメータαを補正しない構成と比べて、続けて演算されるブレーキ制御量間に大きな差が生じにくい。よって、ブレーキ装置100の発生する制動トルクが急激に変化することを防止することができ、これに伴い車両の挙動が不安定になることを防止できる。
【0083】
特に、s260の手順では、パラメータαsからパラメータαmに切り替えられるときのみ、パラメータαがカウント値t1に応じて連続的に変化するように補正される。このような構成において、パラメータαmからパラメータαsに切り替えるときには、パラメータαが連続的に変化しないことになる。パラメータαmからパラメータαsに切り替えることは、走行中の車両が停止して車輪120が回転しなくなった以後に行われる。そのため、切り替えられた後に演算されたブレーキ制御量が、切り替えられる前に演算されたブレーキ制御量から大きく外れた値となって、ブレーキ装置100の発生する制動トルクが急激に変化したとしても、車両の挙動に大きな影響を与えることはない。このようなことから、動摩擦係数に対応するパラメータαmから静止摩擦係数に対応するパラメータαsに切り替えるときに、パラメータで示される値を連続的に変化させなくても問題はない。むしろ、パラメータαmからパラメータαsへの切り替えを行う際には、パラメータαを連続的に変化させない分だけ、パラメータの切り替えを速く行うことができ、また、パラメータαを連続的に変化させるための処理に関わる負荷を軽減することができるため好適である。
【0084】
また、ブレーキ制御量を演算する際に利用されるパラメータを、車両が停止中である場合には静止摩擦係数に対応するパラメータαsに切り替え、車両が走行中である場合には動摩擦係数に対応するパラメータαmに切り替えることによって、目標制動トルクをブレーキ制御量に変換する際の変換特性を、走行中または停止中の車両に対応する変換特性に切り換えることができる。
【0085】
ブレーキ装置100(の備えるブレーキパッド)は、車両が走行中であるときと停止中であるときとで動作時に発生する摩擦抵抗(摩擦係数)が異なり、通常、停止中であるときの方が動作時に発生する摩擦抵抗が大きくなる。そのため、このような制御対象の摩擦係数に対応するパラメータを、車両が走行中であるときと停止中であるときとで切り替えることは、車両の挙動を安定させるためには好適である。
【0086】
また、図3におけるs110の手順では、車速センサ400によって、走行速度が検出されていない状態を車両が停止中である状態として判定(検出)し、走行速度が検出されている状態を車両が走行中である状態として判定(検出)することができる。
【0087】
[第2実施形態]
本第2実施形態における車両統合制御システムは、第1実施形態における車両統合制御システムと同様の構成であって、一部処理内容が異なるため、この相違点についてのみ詳述する。
・ブレーキ制御量演算部12によるブレーキ制御量の演算
以下に、ブレーキECU10のブレーキ制御量演算部12によりブレーキ制御量を演算する手順を図5に基づいて説明する。本手順は、イグニッションスイッチがON側に切り換えられている間、繰り返し実行される。
【0088】
まず、車速センサ400からの検出信号に基づいて、車両が停止中であるか否かをチェックする(s310)。ここでは、車速センサ400により車両の走行速度が検出されていない状態を車両が停止中であると判定する。また、車両が停止している状態から、Gセンサ410により検出されている加速度が所定のしきい値以上の変化を示した状態を車両が実際に走行を開始したと判定し、車両が走行を開始してから、車速センサ400により走行速度が検出されている状態となった後、車両の走行速度が検出されていない状態となるまでの期間を、車両が走行中であると判定する。なお、Gセンサ410は、車両が傾斜している場合に、この傾斜角に応じた一定値の加速度を常時検出してしまうことが知られている。そのため、加速度の大きさではなく、加速度の変化によって車両の走行開始を判定することは、車両が実際に走行を開始したことを正確に検出するためには好適である。
【0089】
このs310の手順で、車両が停止中である場合(s310:YES)、車両が走行を開始する直前であるか否かをチェックする(s320)。ここでは、アクセルペダル開度センサ420により検出されているアクセルペダルの踏込量が所定の踏込量以上となった状態を車両が走行を開始する直前であると判定し、踏込量が所定の踏込量より小さい状態を車両が走行を開始する直前ではないと判定する。このように、車両が停止していて、かつ、アクセルペダルが所定の踏込量以上となった状態は、運転者が実際に車両の走行を開始させようとしている状態であり、このような状態を検出することによって、車両が走行を開始することを予測できる。
【0090】
このs320の手順で、車両が走行を開始する直前である場合(s320:YES)、ブレーキ制御量を演算する際に利用するパラメータαを静止摩擦係数に対応するパラメータαsに決定(αs→α)する(s330)。この手順は、第1実施形態の図3におけるs120の手順と同様の手順である。
【0091】
また、s310の手順で車両が走行中である場合(s310:NO)、または、s320の手順で車両が走行を開始する直前でない場合(s320:NO)、ブレーキ制御量を演算する際に利用するパラメータαを動摩擦係数に対応するパラメータαmに決定(αm→α)する(s340)。この手順は、第1実施形態の図3におけるs130の手順と同様の手順である。
【0092】
こうして、s330またはs340の手順を終えた後、パラメータαを補正する(s350)。この手順は、第1実施形態の図3におけるs140の手順と同様の手順である。
そして、ブレーキ制御量を演算する(s360)。この手順は、第1実施形態の図3におけるs150の手順と同様の手順である。
【0093】
こうして、s360の手順を終えた後、s310の手順に戻る。
[第2実施形態の効果]
このように構成された車両統合制御システムによれば、図5におけるs320の手順で車両が走行を開始する直前である場合のみ、ブレーキ制御量を演算する際に利用されるパラメータを、s330の手順で静止摩擦係数に対応するパラメータαsに切り替えることができる。
【0094】
なお、このような構成においては、車両が走行を開始する直前となってから実際に走行を開始するまでの期間(図5におけるs310およびs320の手順で共にYESとなる期間)を除いては、車両が停止中であるにも拘わらず、動摩擦係数に対応するパラメータαmに基づいてブレーキ制御量が演算されることがある。車両が停止中であるにも拘わらずパラメータαmに基づいてブレーキ制御量ymを演算すると(ym=αm*x、αm=km/μm)、動摩擦係数μmが静止摩擦係数μsよりも小さいことから、演算後のブレーキ制御量ymは静止摩擦係数μsに対応するパラメータαsに基づいて演算したブレーキ制御量ys(ys=αs*x、αs=ks/μs)よりも大きくなる(ys<ym)。そのため、ブレーキ装置100が実際に発生する制動トルクも、目標制動トルクよりも大きくなってしまう。このように、ブレーキ装置100が目標制動トルクよりも大きな制動トルクを発生している状態で車両の走行を開始させるとき、ブレーキ装置100が発生している制動トルクが充分に小さくなる前に車両の走行が開始され、車両のスムーズな発進が妨げられてしまう恐れがある。しかし、車両が走行を開始する直前となってから実際に走行を開始するまでの期間には、パラメータαsによりブレーキ制御量が演算されるようになる。これによって、車両が走行を開始する前にはブレーキ装置100が発生している制動トルクを充分に小さくしておくことができるため、車両のスムーズな発進が妨げられることはない。さらに、車両が走行を開始する直前を除き、車両が停止中である場合には、ブレーキ装置100が実際に発生する制動トルクが目標制動トルクよりも大きくなることから、車両を確実に停止させておくことができる。
【0095】
また、車両が停止中であると判定されている状態で、Gセンサ410により検出された加速度の変化が所定のしきい値以上となったことを、車両が走行を開始したと判定(検出)することができる。
また、車両が停止していて、かつ、アクセルペダルが所定の踏込量以上となった状態を検出することによって、車両が走行を開始することを予測することができる。
【0096】
[第3実施形態]
本第3実施形態における車両統合制御システムは、第2実施形態における車両統合制御システムと一部構成および一部処理内容が異なっているため、この相違点についてのみ詳述する。
【0097】
ブレーキECU10は、信号入出力部10cを介して、マネージャECU40のトルク選択部46により選択された目標駆動制動トルクを示すデータを取得することができるように構成されている。
・ブレーキ制御量演算部12によるブレーキ制御量の演算
以下に、ブレーキECU10のブレーキ制御量演算部12によりブレーキ制御量を演算する手順を説明する。なお、本手順は、第2実施形態における「ブレーキ制御量演算部12によるブレーキ制御量の演算」(図5)と一部内容が異なっているため、図5に基づいて、この相違点についてのみ詳述する。
【0098】
まず、車速センサ400からの検出信号に基づいて、車両が停止中であるか否かをチェックする(s310)。
このs310の手順で、車両が停止中である場合(s310:YES)、車両が走行を開始する直前であるか否かをチェックする(s320)。ここでは、マネージャECU40のトルク選択部46により選択された目標駆動制動トルクが車両を加速させるための正の値(駆動トルク)となったことを検出した際に、車両が走行を開始する直前であると判定し、目標駆動制動トルクが「0」または車両を減速させるための負の値(制動トルク)となったことを検出した際に、車両が走行を開始する直前でないと判定する。このように、車両が停止していて、かつ、目標駆動制動トルクが正の値(制動トルク)となった状態は、マネージャECU40が車両全体を駆動トルクで制御しようとしている状態であり、このような状態を検出することによって、車両が走行を開始することを予測できる。
【0099】
このs320の手順で、車両が走行を開始する直前である場合(s320:YES)、ブレーキ制御量を演算する際に利用するパラメータαを静止摩擦係数に対応するパラメータαsに決定(αs→α)する(s330)。
また、s310の手順で車両が走行中である場合(s310:NO)、または、s320の手順で車両が走行を開始する直前でない場合(s320:NO)、ブレーキ制御量を演算する際に利用するパラメータαを動摩擦係数に対応するパラメータαmに決定(αm→α)する(s340)。
【0100】
こうして、s330またはs340の手順を終えた後、パラメータαを補正する(s350)。
そして、ブレーキ制御量を演算する(s360)。
こうして、s360の手順を終えた後、s310の手順に戻る。
【0101】
[第3実施形態の効果]
このように構成された車両統合制御システムによれば、車両が停止していて、かつ、目標駆動制動トルクが正の値(制動トルク)となった状態を検出することによって、車両が走行を開始することを予測できる。
【0102】
[本発明との対応関係]
上述した第1、第2、第3実施形態におけるブレーキECU10は、本発明における走行制御装置である。
また、マネージャECU40は、本発明における上位の制御装置である。
【0103】
また、ブレーキECU10のブレーキ制御量演算部12は、本発明における変換手段である。このブレーキ制御量演算部12は、図3に示す手順によってブレーキ制御量を演算することによって、指令値をブレーキ制御量に変換している。
また、ブレーキACT110は、本発明における制御手段である。
【0104】
また、図3におけるs110の手順、図5におけるs310の手順は、本発明における走行検出手段である。これらの手順および処理では、車速センサ400およびGセンサ410からの検出信号に基づいて、車両が走行または停止していることを検出している。
【0105】
また、図3におけるs120およびs130の手順は、本発明における切替手段である。このs120およびs130の手順では、車両が停止中であるか走行中であるかによって、ブレーキ制御量を演算する際に利用するパラメータを、静止摩擦係数に対応するパラメータαsまたは走行中の車両に対応するパラメータαmに切り換えることによって、変換特性を切り換えている。また、図4におけるs260の手順も本発明における切替手段である。このs260の手順では、パラメータαsからパラメータαmまで連続的に増加する式によって、パラメータで示される値を時間経過と共に連続的に変化するように、パラメータαを補正している。
【0106】
また、第2実施形態の図5におけるs320の手順は、本発明における操作検出手段である。この手順では、アクセルペダル開度センサ420によって、運転者によるアクセルペダルの踏込量を検出している。また、このs320の手順は、本発明における第1予測手段である。この手順では、車両が停止しているときに、アクセルペダルの踏込量が所定の踏込量以上となったことを、車両の走行が開始されることとして予測している。
【0107】
また、第3実施形態において、信号入出力部10cを介して、マネージャECU40のトルク選択部46により選択された目標駆動制動トルクを示すデータを取得するブレーキECU10は、本発明における取得手段である。
また、図5におけるs320の手順は、本発明における第2予測手段である。この手順では、車両が停止しているときに、目標駆動制動トルクが正の値(駆動トルク)となったことを、車両の走行が開始されることとして予測している。
【0108】
[変形例]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記の具体的な実施形態に限定されず、このほかにも様々な形態で実施することができる。
例えば、上記実施形態においては、車両統合制御システムの一部であるブレーキECU10に本発明の構成を採用したものを例示した。しかし、本発明の構成を他の制御対象を制御するECU(例えば、ATECU30)に採用することもできる。
【0109】
また、上記実施形態においては、図4における260の手順で、α0の値が経過時間に応じてαsからαmまで連続的に変化する式をパラメータを補正するために利用しているものを例示したが、パラメータを補正するために他の式を利用してもよいし、式以外の方法を利用してもよい。
【0110】
また、図3におけるs150の手順では、静止摩擦係数または動摩擦係数に対応するパラメータに基づきブレーキ制御量を演算することによって、目標制動トルクをブレーキ制御量に変換するように構成されたものを例示した。しかし、目標制動トルクをブレーキ制御量に変換するための構成としては、例えば、走行中および停止中の車両をシミュレーションして求められたテーブル(目標制動トルクと目標制動トルクに対応するブレーキ制御量で構成されるデータテーブル)を利用する構成を採用することもできる。この場合、s150の手順で、目標制動トルクに対応するブレーキ制御量を、テーブルから抽出するように構成すればよい。
【0111】
また、図3におけるs150の手順で、静止摩擦係数に対応するパラメータαsと動摩擦係数に対応するパラメータαmとを切り替えることによって、目標制動トルクをブレーキ制御量に変換する際の変換特性を切り替えるように構成されたものを例示した。しかし、変換特性を切り替えるための構成としては、例えば、走行中および停止中の車両をシミュレーションして求められたテーブルを、車両が走行中である場合と停止中である場合とで切り替えることによって、変換特性を切り替えるように構成してもよい。具体的には、s150の手順で、車両が停止中であれば停止中の車両をシミュレーションして求められたテーブルから目標制動トルクに対応するブレーキ制御量を抽出して、車両が走行中であれば走行中の車両をシミュレーションして求められたテーブルから目標制動トルクに対応するブレーキ制御量を抽出するように構成すればよい。
【0112】
また、図3におけるs150の手順で、ブレーキ制御量を演算する際に利用されるパラメータαが静止摩擦係数または動摩擦係数を含むパラメータαs、αmであるものを例示した。しかし、ブレーキ制御量を演算する際に利用されるパラメータとしては、例えば、車両が走行中または停止中である場合にブレーキ装置100が発生する摩擦抵抗を示す値を含むパラメータであってもよい。
【0113】
また、上記第2、第3実施形態においては、図5におけるs320の処理で、車両が停止している状態から、Gセンサ410により検出されている加速度が所定のしきい値以上の変化を示した状態を車両が実際に走行を開始したと判定するように構成されたものを例示した。しかし、車両が停止している状態から、Gセンサ410により検出されている加速度が所定のしきい値以上の変化を示した後、車両が実際に走行を開始すると推定される時間を経過した以降の状態を、車両が実際に走行を開始したと判定するように構成してもよい。
【0114】
具体的な構成としては、図5におけるs310からs350の手順を、以下に示すような手順を行うように構成すればよい(図6参照)。なお、図5における手順と異なる手順についてのみ詳述する(同様の手順は同一の添え字とする)。
まず、車速センサ400からの検出信号に基づいて、車両が停止中であるか否かをチェックする(s310)。
【0115】
このs310の手順で、車両が停止中である場合(s310:YES)、車両が走行を開始する直前であるか否かをチェックする(s320)。
このs320の手順で、車両が走行を開始する直前である場合(s320:YES)、走行開始フラグF2に「0」がセット(F2=0)されているか否かをチェックする(s321)。走行開始フラグF2は、初期値として「0」がセットされており、以降の処理(s323からs326の処理)でタイマーT2によるカウントが行われている間だけ「1」がセットされるフラグである。
【0116】
このs321の手順で、走行開始フラグF2に「0」がセットされている場合(s321:YES)、走行開始フラグF2に「1」をセット(1→F2)し直した後(s322)、タイマーT2をスタートさせる(s323)。
こうして、s323の手順を終えた後、または、s321の手順で走行開始フラグF2に「1」がセットされている場合(s321:NO)、タイマーT2によるカウント値t2が所定のしきい値ts(本実施形態においては1秒)に到達(ts≦t2)したか否かをチェックする(s324)。しきい値tsは、Gセンサ410により検出されている加速度が所定のしきい値以上の変化を示した後、つまり、車両の走行開始を予測した後、車両が実際に走行を開始すると推定される時間として、あらかじめ求められた値である。
【0117】
このs324の手順で、カウント値t2が所定のしきい値tsに到達していない場合(s324:NO)、ブレーキ制御量を演算する際に利用するパラメータαを静止摩擦係数に対応するパラメータαsに決定(αs→α)する(s330)。こうして、カウント値t2がしきい値tsに到達するまでの間は、ブレーキ制御量を演算する際に利用するパラメータαは静止摩擦係数に対応するパラメータαsとなる。
【0118】
また、s310の手順で車両が走行中である場合(s310:NO)、または、s324の手順でカウント値t2が所定のしきい値tsに到達している場合(s324:YES)、走行開始フラグF2に「0」をセット(0→F2)し直した後(s325)、タイマーT2をストップおよびリセットする(s326)。
【0119】
次に、ブレーキ制御量を演算する際に利用するパラメータαを動摩擦係数に対応するパラメータαmに決定(αm→α)する(s340)。
こうして、s330またはs340の手順を終えた後、パラメータαを補正する(s350)。
【0120】
また、上記第3実施形態の図5におけるs320の手順で、マネージャECU40のトルク選択部46により選択された目標駆動制動トルクが制動トルクとなったことを、車両の走行が開始されることとして予測するように構成されたものを例示した。しかし、車両の走行開始を予測するためには、例えば、マネージャECU40のトルク変換部47により変換されたタイヤ目標駆動制動トルクが駆動トルクとなったことを、車両の走行が開始されることとして予測するように構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】走行制御装置の構成を示すブロック図
【図2】各ECUにより実行される制御処理を示す機能ブロック図
【図3】第1実施形態において、ブレーキ制御量の演算手順を示すフローチャート
【図4】第1、第2、第3実施形態において、パラメータを補正する手順を示すフローチャート
【図5】第2、第3実施形態において、ブレーキ制御量の演算手順を示すフローチャート
【図6】別の実施形態において、ブレーキ制御量の演算手順を示すフローチャート
【符号の説明】
10・・・ブレーキECU、10a・・・演算処理部、10b・・・通信部、10c・・・信号入出力部、12・・・ブレーキ制御量演算部、14・・・指令出力部、16・・・走行状態検出部、20・・・エンジンECU、20a・・・演算処理部、20b・・・通信部、20c・・・信号入出力部、22・・・エンジン制御量演算部、24・・・アクチュエータ指令出力部、30・・・ATECU30、30a・・・演算処理部、30b・・・通信部、30c・・・信号入出力部、32・・・ソレノイド指令出力部、41・・・ドライバ要求トルク演算部、42・・・VSCトルク演算部、43・・・ABS・TRCトルク演算部、44・・・定速CCトルク演算部、45・・・ACCトルク演算部、46・・・トルク選択部、47・・・トルク変換部、48・・・制御対象選択部、49・・・エンジン制御目標演算部、50・・・AT制御目標演算部、51・・・ブレーキ制御目標演算部。

Claims (10)

  1. 車両の駆動・制動系の一構成要素である制御対象で発生すべき駆動制動トルクを表す指令値を上位の制御装置から受けて、当該指令値に基づいて制御対象であるブレーキ装置を制御する走行制御装置であって、
    前記上位の制御装置から受けた前記指令値を、制御対象の制御量に変換する変換手段と、
    該変換手段により変換された制御量で制御対象を制御する制御手段と、
    車両が走行または停止していることを検出する走行検出手段と、
    前記変換手段が前記指令値を制御対象の制御量に変換する際に利用する変換特性を、前記走行検出手段による検出結果で車両が走行中であれば走行中の車両に対応する変換特性に切り替え、停止中であれば停止中の車両に対応する変換特性に切り替える切替手段と、を備えており、
    前記変換手段は、前記指令値と制御対象の摩擦係数に対応するパラメータとに基づいて制御対象の制御量を演算するように構成されており、
    前記切替手段は、前記変換手段が制御対象の制御量を演算する際に利用するパラメータを、前記走行検出手段による検出結果で走行中であれば動摩擦係数に対応するパラメータに切り替え、停止中であれば静止摩擦係数に対応するパラメータに切り替えることによって変換特性を切り替えるように構成されている
    ことを特徴とする走行制御装置。
  2. 前記走行検出手段は、車両の走行速度を検出可能であって、走行速度が検出されている状態を、車両が走行していることとして検出する
    ことを特徴とする請求項1に記載の走行制御装置。
  3. 前記走行検出手段は、車両の走行速度および車両に加わる加速度を検出可能であって、走行速度が検出されていなくて、かつ、加速度の変化が所定のしきい値以上となった以後の状態を、車両が走行していることとして検出する
    ことを特徴とする請求項1に記載の走行制御装置。
  4. 前記走行検出手段は、車両の走行速度を検出可能であって、走行速度が検出されていない状態を、車両が停止していることとして検出する
    ことを特徴とする請求項1から請求項のいずれかに記載の走行制御装置。
  5. 運転者による車両の操作状態を検出する操作検出手段と、
    該操作検出手段により検出された操作状態に基づいて、車両の走行開始を予測する第1予測手段とを備えており、
    前記切替手段は、前記変換手段が制御対象の制御量を演算する際に利用するパラメータを、前記第1予測手段により車両の走行開始が予測されてから所定期間が経過するまでの間だけ、静止摩擦係数に対応するパラメータに切り替える
    ことを特徴とする請求項から請求項のいずれかに記載の走行制御装置。
  6. 前記上位の制御装置は、車両を所定の走行状態に制御するのに必要な目標駆動制動トルクを演算すると共に、該目標駆動制動トルクを、車両の駆動・制動系を構成する複数の構成要素を用いて発生させるために、前記目標駆動制動トルクに基づいて前記複数の構成要素を制御する各制御装置に対する指令値を設定し、該設定した各指令値を、当該走行制御装置を含む複数の制御装置それぞれに出力するように構成され、
    当該走行制御装置は、
    前記上位の制御装置により演算された前記目標駆動制動トルクを取得する取得手段と、
    前記走行検出手段による検出結果と前記取得手段により取得された前記目標駆動制動トルクとに基づいて、車両の走行開始を予測する第2予測手段と
    を備えており、
    前記切替手段は、前記変換手段が制御対象の制御量を演算する際に利用するパラメータを、前記第2予測手段により車両の走行開始が予測されてから所定期間が経過するまでの間だけ、静止摩擦係数に対応するパラメータに切り替える
    ことを特徴とする請求項から請求項のいずれかに記載の走行制御装置。
  7. 前記切替手段は、車両の走行開始が予測されてから所定の時間が経過するまでの間だけ、静止摩擦係数に対応するパラメータに切り替える
    ことを特徴とする請求項または請求項に記載の走行制御装置。
  8. 前記切替手段は、車両の走行開始が予測されてから前記走行検出手段による検出結果で走行中となるまでの間だけ、静止摩擦係数に対応するパラメータに切り替える
    ことを特徴とする請求項または請求項に記載の走行制御装置。
  9. 前記切替手段は、前記変換手段が制御対象の制御量を演算する際に利用するパラメータを、該パラメータで示される値が一方のパラメータから他方のパラメータまで連続的に変化するように切り替える
    ことを特徴とする請求項から請求項のいずれかに記載の走行制御装置。
  10. 前記切替手段は、前記変換手段が制御対象の制御量を演算する際に利用するパラメータを、静止摩擦係数に対応するパラメータから動摩擦係数に対応するパラメータに切り替える場合のみ、該パラメータで示される値が静止摩擦係数に対応するパラメータから動摩擦係数に対応するパラメータまで連続的に変化するように切り替える
    ことを特徴とする請求項に記載の走行制御装置。
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