JP4139707B2 - 調理器用の加熱量設定装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、正転方向及び逆転方向の回転操作に伴って調理用の加熱手段の加熱量の増大及び減少を指令する回転操作部と、その回転操作部の一方向への回転操作に伴って2つのパルス信号のうちの一方のパルス信号が他方のパルス信号より位相が進み、前記回転操作部の他方向への回転操作に伴って前記他方のパルス信号が前記一方のパルス信号より位相が進む状態で、前記回転操作部の回転操作に伴って互いに異なる位相の2つのパルス信号を出力するように構成されたエンコーダと、そのエンコーダから出力される前記パルス信号に基づいて、前記回転操作部の回転操作方向並びに回転操作量を判別するとともに、その判別した回転操作方向並びに回転操作量に対応させて前記加熱手段の加熱量を調整する制御手段とが備えられている調理器用の加熱量設定装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
上記構成の調理器用の加熱量設定装置は、例えば、回転操作部にて操作される可変抵抗器を備えて電圧値などで得られる可変抵抗器の出力をA/D変換器にてデジタル信号に変換して制御手段として用いられるマイクロコンピュータに入力するような構成のものに比べて、A/D変換器を用いることなく簡素な構成で、しかも、調整範囲が広い状態で調理用の加熱手段の加熱量を設定できるようにしたものである。
【0003】
ところで、このような構成の調理器用の加熱量設定装置において、従来では、前記回転操作部としてのダイヤルが操作パネルにて回転操作自在に設けられて、そのダイヤルを回転操作するとそれに伴ってエンコーダにおける一方の端子からパルス信号が出力された後、一定時間遅れて他の端子からパルス信号が出力されるように構成され、そのエンコーダから出力されるパルス信号の位相に基づいて回転方向を判別するとともに、パルス数に基づいてダイヤルの回転操作量を判別して、その情報から加熱手段としての誘導加熱部の加熱量を調整するようにしたものがあった(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
ところで、このようなエンコーダにおいて、前記一対のパルス信号に基づいて、回転操作部の回転操作方向並びに回転操作量を判別するための具体的な構成としては、従来より一般的に行われている構成として、制御手段として用いられるマイクロコンピュータが備える外部割込み機能を利用して次のように処理する構成のものがあった。
【0005】
つまり、一方のパルス信号がローレベルからハイレベルに変化する立ち上がり、又は、ハイレベルからローレベルに変化する立ち下がりのエッジを検出すると、そのタイミングに合わせて上記したような外部割り込み処理によって他方のパルス信号のデータを読み込んでどのような情報であるかを検出して回転方向を判別する処理を実行するようにしたものがあった(例えば、特許文献2参照。)。
【0006】
【特許文献1】
特開平11−2412号公報(第4−6頁、図1、図4−図6)
【特許文献2】
特開平6−223687号公報(第2−4頁、図5、図6)
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
最近では、制御手段として利用されるマイクロコンピュータ等の処理速度が向上しているので、上述したようなデータの読み込みによる判別処理等は数十マイクロ秒程度という非常に短い時間で処理することが可能となっている。従って、このような高速処理が可能な制御手段を用いて処理することで、上記したような構成において回転操作部が例えば手動操作にて素早く操作されても十分に追従することができるものである。
【0008】
しかしながら、上記従来構成においては、人為操作される回転操作部の回転操作に伴って発生するパルス信号の立ち上がりや立ち下がりのエッジ検出に伴う外部割込みに基づいて処理が実行されるものであるため、その外部割込みが発生する毎にその都度、マイクロコンピュータなどの制御手段はその他の処理を一時停止させる必要があるので、他の処理に悪い影響を与えて、そのような他の処理が適正に実行できないものとなるおそれがある。
【0009】
具体例を用いて説明を加えると、例えば、1回のエッジ検出に伴う外部割込みに基づく処理を実行するのに30μs(マイクロ秒)程度かかるものとすると、前記一対のパルス信号の夫々についてそのようなエッジ検出に伴う処理を行う必要があるから、割り込み処理を実行するために少なくとも60μsの処理時間がかかることになる。又、手動操作にて実際に回転操作部が操作される場合には、1パルス分だけではなく、複数パルス分操作されることも多く、その場合、割り込みによる処理時間がそれだけ長くかかるものとなる。
【0010】
そうすると、その外部割込みによる処理とは別の処理、すなわち、制御手段としてのマイクロコンピュータが例えば制御プログラムに従って調理用の時間をタイマーにて管理しながら処理を実行している別の処理として、別途設けられたスイッチの状態を所定のサンプリング時間毎に読み込む処理を行っていたり、表示装置を設定周期でオンオフを繰り返すような処理を行っているような場合には、外部割込みによって制御プログラムに従って管理される時間管理用のタイマーが一時停止され外部割込み処理を優先して実行するので、上記したようなスイッチの状態を読み込む処理が所定タイミングで適切に行えないものとなったり、あるいは、タイマー動作を行っているような場合には、割り込み処理の分だけタイマーの精度が悪くなる等の不利がある。
【0011】
本発明はかかる点に着目してなされたものであり、その目的は、上述したような回転操作に伴って一対のパルス信号を出力するエンコーダを用いて加熱量を調整するようにしたものでありながら、加熱量調整用の処理を実行することによって他の処理に悪影響を与える不利を回避して、他の処理を適正に実行することが可能となる調理器用の加熱量設定装置を提供する点にある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の調理器用の加熱量設定装置は、正転方向及び逆転方向の回転操作に伴って調理用の加熱手段の加熱量の増大及び減少を指令する回転操作部と、その回転操作部の一方向への回転操作に伴って2つのパルス信号のうちの一方のパルス信号が他方のパルス信号より位相が進み、前記回転操作部の他方向への回転操作に伴って前記他方のパルス信号が前記一方のパルス信号より位相が進む状態で、前記回転操作部の回転操作に伴って互いに異なる位相の2つのパルス信号を出力するように構成されたエンコーダと、そのエンコーダから出力される前記パルス信号に基づいて、前記回転操作部の回転操作方向並びに回転操作量を判別するとともに、その判別した回転操作方向並びに回転操作量に対応させて前記加熱手段の加熱量を調整する制御手段とが備えられている調理器用の加熱量設定装置であって、前記制御手段が、前記エンコーダから出力される前記2つのパルス信号のデータを予め定めた設定単位時間毎に繰り返し読み込み、その読み込まれた前記2つのパルス信号のデータにおけるデータパターンに基づいて、前記回転操作部の回転操作方向並びに回転操作量を判別するように構成されていることを特徴とする。
【0013】
すなわち、回転操作部が正転方向又は逆転方向のいずれかの方向に回転操作すると、エンコーダが一方のパルス信号が他方のパルス信号より位相が進む状態で異なる位相の2つのパルス信号を出力する。制御手段はそのエンコーダから出力されるパルス信号に基づいて回転操作部の回転操作方向並びに回転操作量を判別するのであるが、そのとき、制御手段は、エンコーダから出力される2つのパルス信号のデータを予め定めた設定単位時間毎に繰り返し読み込み、その読み込まれた2つのパルス信号のデータにおけるデータパターンに基づいて、回転操作部の回転操作方向並びに回転操作量を判別するのである。
【0014】
このデータパターンによる回転操作方向並びに回転操作量を判別する場合の具体的な処理構成としては、例えば、次のような構成のものがある。
図11に回転操作部を正転方向に回転操作させた状態と逆転方向に操作した場合の夫々におけるエンコーダから出力される2つのパルス信号の波形の例を示している。そして、制御手段は2つのパルス信号のデータを設定単位時間毎(図では矢印で示している)に繰り返し読み込むのであるが、そのとき図に示すように回転操作部を正転方向に回転させた場合2つのパルス信号のうちA相のものが位相が進みB相のものが位相が遅れる状態とすると、回転操作部を正転方向に回転させた場合には図中の▲1▼〜▲5▼の読み込みタイミングにおけるデータパターンは図12(イ)に示すようになる。一方、回転操作部を逆転方向に回転させた場合には、図中の▲1▼〜▲5▼の読み込みタイミングにおけるデータパターンは図12(ロ)に示すようになる。従って、制御手段はこのようなデータパターンの違いに基づいて、回転操作部の回転操作方向が正転方向か逆転方向かを判別することができる。又、A相又はB相のパルス信号のパルス数をカウントすることで、回転操作部の回転操作量がどの程度であるかを判別することができる。
尚、前記設定単位時間としては、通常の手動操作によって回転操作部が回転操作される速度であればデータパターンを検出することが可能な程度に短い時間、例えば数ms程度に設定すればよいが、それに限定されず制御手段の処理能力等に応じて適宜設定することができる。
【0015】
上記したような設定単位時間毎に繰り返しパルス信号のデータを読み込む処理は、例えばマイクロコンピュータ等からなる制御手段が制御プログラムに従って時間管理用のタイマーによって管理される処理であって、外部割込み処理のときのように、制御プログラムに従って管理される時間管理用のタイマーを一時停止させることはなく、制御手段がそのような制御プログラムに従って処理を実行している別の処理が時間遅れを起こすことはない。
【0016】
従って、回転操作に伴って一対のパルス信号を出力するエンコーダを用いて加熱量を調整するようにしたものでありながら、加熱量調整用の処理を実行することによって他の処理に悪影響を与える不利を回避して、他の処理を適正に実行することが可能となる調理器用の加熱量設定装置を提供できるに至った。
【0017】
請求項2に記載の調理器用の加熱量設定装置は、請求項1において、前記制御手段が、前記回転方向を判別する処理においてパターン判別用設定回数分の前記2つのパルス信号のデータにより前記回転操作部がいずれの方向に操作されたかを判別することができないときは、前記2つのパルス信号のデータにおけるデータパターンに基づく前記加熱量の調整を実行しないように構成されていることを特徴とする。
【0018】
すなわち、パターン判別用設定回数分の2つのパルス信号のデータによりいずれの方向に操作されたかを判別することができないときは前記加熱量の調整を行わないようにしている。このような判別が行えない場合としては、例えば、一対のパルス信号のうちのいずれか一方又は両方が回転操作に伴う適切なパルス信号を出力していないような場合、あるいは、前記データパターンが判別できない程度に高速回転しているような場合等がある。又、このような異常な入力であるときにパターン判別用設定回数分のパルス信号のデータに基づいて迅速に判断することになるので、判断の遅れにより誤った情報で加熱量の調整を行うことを極力迅速に停止させることで使用上の安全性を向上することができる。
【0019】
請求項3記載の調理器用の加熱量設定装置は、請求項2において、音声情報又は表示情報によって異常が発生したことを報知する報知手段が備えられ、前記制御手段が、前記パターン判別用設定回数分の前記2つのパルス信号のデータにより前記回転操作部がいずれの方向に操作されたかを判別することができないことが、異常判別用設定回数以上連続して繰り返して発生するか、又は、設定時間内に異常判別用設定回数以上発生した場合には、前記報知手段を作動させるように構成されていることを特徴とする。
【0020】
すなわち、前記パターン判別用設定回数分の2つのパルス信号のデータにより回転操作部がいずれの方向に操作されたかを判別することができないことが、異常判別用設定回数以上連続して繰り返して発生した場合、又は、設定時間内に異常判別用設定回数以上発生した場合には、報知手段を作動させて音声情報又は表示情報によって異常が発生したことを報知するのである。
【0021】
つまり、前記データにより回転操作部がいずれの方向に操作されたかを判別することができないことが、異常判別用設定回数以上連続して繰り返して発生したり、設定時間内に異常判別用設定回数以上発生するような状況としては、例えばエンコーダの故障等に起因して一対のパルス信号のうちのいずれか一方又は両方が回転操作に伴う適切なパルス信号を出力しない状態が継続して発生するか頻繁に発生しているような異常な状態、あるいは、前記データパターンが判別できない程度に高速回転しているような異常な状態であるから、音声情報又は表示情報によって異常が発生したことを報知することで、操作者にそのことを認識させることにより修理交換等の対策を取ることや適正な速度での回転操作を促すことが可能となるのである。
【0022】
請求項4記載の調理器用の加熱量設定装置は、請求項1〜3のいずれかにおいて、前記調理用の加熱手段が、燃料ガスを燃焼させて調理用加熱を行うガス燃焼式の加熱手段であり、前記制御手段が、前記ガス燃焼式の加熱手段に対する燃料供給量を変更調整することにより、加熱量を調整するように構成されていることを特徴とする。
【0023】
すなわち、制御手段は、回転操作部の回転操作方向並びに回転操作量を判別するとともに、その判別検出に基づいてガス燃焼式の加熱手段に対する燃料供給量を変更調整することによって加熱手段の加熱量を調整するのである。従って、回転操作に伴って一対のパルス信号を出力するエンコーダを用いて、ガス燃焼式の加熱手段に対する燃料供給量を適正に変更調整することが可能となり、ガス燃焼式の加熱手段を備えた調理器において、エンコーダの出力の判別処理の他に高速処理を必要とし、その処理が遅れると性能に影響が出るような制御を同時に行う必要がある場合には特に有効である。例えば、高速処理が必要な場合としては、燃料供給量を変更調整するために高速パルスで駆動するステッピングモータ等を制御するような場合があり、その処理が遅れると点火の時に開弁動作が遅れて使用者が違和感を覚える等の性能に影響が出る場合がある。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る調理器用の加熱量設定装置を調理器の一例としてガスコンロに適用した場合について図面に基づいて説明する。
【0025】
図1に示すように、このガスコンロは、2つのコンロバーナ1a,1b、および、グリルバーナ2を備えたグリル部3を備えてテーブル式ガスコンロにて構成されている。そして、グリル部3の燃焼排ガスを排気するためのグリル排気口4が形成され、トッププレート5にてガスコンロ上面が覆われており、このトッププレート5の上部に、各コンロバーナ1a,1bに対する被加熱物(鍋など)を受け止め支持するための五徳6が載置支持されている。また、ガスコンロ前側面には、各コンロバーナ1a,1b及びグリルバーナ2の点火及び消火や火力調節を指令する手動操作部Sが設けられ、マイクロコンピュータを備えて各種の制御を実行するように構成された制御部Hが、その手動操作部Sにて指令された運転状態に基づいて、コンロバーナ1a,1bおよびグリルバーナ2を制御するように構成されている。つまり、この実施形態ではコンロバーナ1a,1bおよびグリルバーナ2が夫々、調理用のガス燃焼式の加熱手段Kを構成する。
【0026】
図2に示すように、2つのコンロバーナ1a,1bの夫々には、点火手段としての点火プラグ7及び着火状態を検出する熱電対8が設けられおり、グリルバーナ2は上面バーナ2aと左右一対の下面バーナ2b,2cとを備えた両面バーナにて構成されて、上面バーナ2a及び左右一対の下面バーナ2b,2cの夫々にも点火手段としての点火プラグ7及び着火状態を検出するための熱電対8が備えられている。又、右側に位置する右側コンロバーナ1aには、五徳6にて載置支持された被加熱物の底面部に接触して、被加熱物の温度を検出する温度センサ10が設けられている。
【0027】
前記2つのコンロバーナ1a,1bおよびグリルバーナ2へのガス供給構成について説明すると、元ガス供給路11には元ガス電磁弁12が設けられ、この元ガス供給路11から、右側バーナ用分岐路13a、左側バーナ用分岐路13b、グリルバーナ用分岐路13cの3系統に分岐しており、グリルバーナ2へのグリルバーナ用分岐路13cは、さらに、上面バーナ用の分岐路と下面バーナ用分岐路とに分岐し、それらの分岐路には夫々、オリフィスof付きの流路15と開閉式電磁弁16を備えたバイパス路17とが設けられている。そして、右側バーナ用分岐路13a、左側バーナ用分岐路13b、および、グリルバーナ用分岐路13cの夫々には、ステッピングモータの駆動によってガス流量を調整して前記各バーナの加熱量を調整する流量制御弁18が備えられている。
【0028】
この流量制御弁18は、図3に示すように、駆動源としてのステッピングモータ19と、このステッピングモータ19の回転操作力をスライド移動力に変更させるネジ送り式の移動操作機構20と、ガス通過用の挿通孔21が形成されたスライド閉子22と、複数のガス通過用の調整孔23を形成した流量調整板24等を備えて構成されている。そして、前記スライド閉子22と流量調整板24とによってガス流量を変更可能な流量調整部25が構成されている。つまり、図3に示すようにガス流路を遮蔽する状態でスライド閉子22と流量調整板24とがバネ26によって圧接される状態で相対的にスライド自在に設けられ、ステッピングモータ19を駆動することでスライド閉子22をスライド移動させながら、図4に示すように、スライド閉子22に形成された挿通孔21が重なり合う流量調整板24の調整孔23の個数を変更させることで、ガス供給量を変更調整自在な構成となっている。尚、前記スライド閉子22にスライド移動量はスライド移動検出センサ27によって検出される構成となっている。
【0029】
次に、前記手動操作部Sの構成について説明する。ガスコンロ前側面には、手動操作部Sとして、2つのコンロバーナ1a,1bおよびグリルバーナ2の夫々に対して各別に点火及び消火や火力調節を指令するための3つの加熱状態調節部28が設けられている。これら3つの加熱状態調節部28は同じ構成であるから、そのうちの左側コンロバーナ1bに対する加熱状態調節部28を代表として構成を説明し、他のものについては説明は省略する。
【0030】
図5に示すように、ガスコンロの前面パネル29に形成した挿通孔30を通して裏面側から挿通する状態で円筒状の回転操作部31が設けられ、この回転操作部31は、図示しない位置保持機構によって押圧操作する毎に前面パネル29とほぼ面一になる非作用状態と前方に突出する作用状態とに切り換え自在に構成され、回転操作部31が前記作用状態に切り換えられているときに、正転方向及び逆転方向の夫々に回動操作可能となるように構成されている。前面パネル29の内部には、回転操作部31が非作用状態にあるとオフ状態となり作用状態にあるとオン状態となる点火スイッチ32が設けられている。この点火スイッチ32の切り換え信号は制御部Hに入力されており、制御部Hはこの点火スイッチ32がオン状態に切り換わると左側コンロバーナ1bに対する点火作動を開始し、オフ状態に切り換わると左側コンロバーナ1bの燃焼作動を停止するように構成されている。
【0031】
又、前記前面パネル29の内部には、回転操作部31の回転操作に伴ってパルス信号を出力するエンコーダとしてのロータリーエンコーダ33が設けられている。つまり、このロータリーエンコーダ33の操作軸34に前記回転操作部31が一体回動自在に且つ軸芯方向での相対移動を許容する状態で接続されている。このロータリーエンコーダ33は、回転操作部31の一方向への回転操作に伴って2つのパルス信号のうちの一方のパルス信号が他方のパルス信号より位相が進み、回転操作部31の他方向への回転操作に伴って前記他方のパルス信号が前記一方のパルス信号より位相が進む状態で、回転操作部31の回転操作に伴って互いに異なる位相の2つのパルス信号を出力するように構成されている。つまり、このロータリーエンコーダ33は、2つの出力端子を備えており、その2つの出力端子から上述したような位相の異なるパルス信号が出力される構成である。このようなロータリーエンコーダ33は周知のものであるから詳細な構成については説明は省略する。
従って、回転操作部31、点火スイッチ32、ロータリーエンコーダ33によって加熱状態調節部28が構成されている。
【0032】
図7に示すように、前記前面パネル29の外面側において前記各回転操作部31の周囲には加熱量を表示する複数のLEDランプ35を並べる状態で火力表示部36が設けられている。この火力表示部36は複数のLEDランプ35をレベルメータとして用いて回転操作部31にて設定された火力(加熱量)の大きさをいずれかのLEDランプ35を点灯させて表示する構成となっている。
【0033】
そして、制御部Hは、前記ロータリーエンコーダ33から出力される前記パルス信号に基づいて、回転操作部31の回転操作方向並びに回転操作量を判別するとともに、その判別した回転操作方向並びに回転操作量に対応させて左側コンロバーナ1bの加熱量を調整することになるが、そのとき、ロータリーエンコーダ33から出力される2つのパルス信号のデータを予め定めた設定単位時間毎に繰り返し読み込み、その読み込まれた前記2つのパルス信号のデータにおけるデータパターンに基づいて、回転操作部31の回転操作方向並びに回転操作量を判別するように構成されている。
【0034】
又、制御部Hは、回転方向を判別する処理においてパターン判別用設定回数分の2つのパルス信号のデータにより回転操作部31がいずれの方向に操作されたかを判別することができないときは、2つのパルス信号のデータにおけるデータパターンに基づく前記加熱量の調整を実行しないように構成されている。
【0035】
更に、このガスコンロには音声情報によって異常が発生したことを報知する報知手段としてのブザー37が備えられており、制御部Hは、前記パターン判別用設定回数分の2つのパルス信号のデータにより回転操作部31がいずれの方向に操作されたかを判別することができないことが、異常判別用設定回数以上連続して繰り返して発生した場合には、このブザー37を作動させて異常が発生していることを報知するようになっている。
【0036】
次に、手動操作部Sの指令に基づく制御部Hの制御動作について図8、図9、図10のフローチャートに基づいて説明する。尚、2つのコンロバーナ1a,1bおよびグリルバーナ2のうち左側コンロバーナ1bに対する加熱状態調節部28を代表として説明し、他のものについては説明は省略する。
【0037】
先ず、点火スイッチ32がオンであるか否かを判別し、オンであれば、左側コンロバーナ1bが燃焼中であるか否かを判別する(ステップ1、2)。燃焼中でなければ点火処理を実行する(ステップ3)。この点火処理について説明を加えると、図9に示すように、処理開始すると流量制御弁18による調節流量が点火用ガス流量に対応する流量になるように流量調整を行う(ステップ31、32)。すなわち、スライド移動検出センサ27にて検出される調整位置が点火用ガス流量に対応する位置になるようにステッピングモータ19を回動操作させるのである。尚、説明は省略しているが、このとき元ガス電磁弁12が閉じていれば開作動させることになる。点火用ガス流量に対応する流量になると点火プラグ7による点火作動を開始し(ステップ33)、熱電対8の出力によって着火を確認する(ステップ34)。着火が確認されていないときは、エラータイマーを作動させてエラータイマーのカウント値が設定時間を超えると着火エラーであるとしてブザー37を鳴らして報知し燃焼作動を停止する(ステップ35〜39)。着火が確認されると、エラータイマーをリセットして点火プラグ7による点火作動を停止して(ステップ40、41)、通常のガス燃焼による加熱作動状態になる。
【0038】
ステップ2において燃焼中であることが判別されていれば、予め定めた設定単位時間としての設定時間(5ms)が経過する毎に火力目標設定処理を実行する(ステップ5)。この火力目標設定処理について説明を加えると、図10に示すように、回転操作部31の回動操作に伴ってロータリーエンコーダ33の2つの出力端子(A端子及びB端子)から出力される2つのパルス信号のその時点での出力、具体的にはハイレベルであるかローレベルであるかについてのデータを読み込む(ステップ50)。そして、前回の読み込んだデータと対比して出力の状態が変化していれば、A端子及びB端子夫々についてパターン判別用設定回数として5回分の過去のデータを更新する(ステップ51、52、53)。
【0039】
具体的に説明すると、A端子のデータについては過去の5回分のデータを夫々データバッファに記憶するようにしておき、図13に示すように、現在保存中の(n―3)番目からn番目までのバッファデータを夫々、(n―4)番目から(n―1)番目までのデータに置き換えて、読み取った新たなデータをn番目のデータバッファに記憶する。B端子のデータについても同様に過去の5回分のデータを夫々データバッファに記憶するようにしておき、図14に示すように、データバッファを置き換えて新たなデータをn番目のデータバッファに記憶する。
【0040】
そして、A端子及びB端子の夫々のデータの推移が予め設定してあるデータパターンと同じであるか否を判別する(ステップ54)。つまり、(n―4)番目のデータがA端子B端子共にローレベル、(n―3)番目のデータがA端子がハイレベルでB端子がローレベル、(n―2)番目のデータがA端子B端子共にハイレベル、(n―1)番目のデータがA端子がローレベルでB端子がハイレベル、n番目のデータがA端子B端子共にローレベルであることを検出すると、正転用パターンであって、回転操作部31が正転方向、つまり、右回りで火力を増大させる指令を与える方向に回転操作されたものと判別する。そのときのデータパターンの具体例を図11のパルス信号波形と、図12(イ)のデータ変化一覧表で示している。
【0041】
又、(n―4)番目のデータがA端子B端子共にローレベル、(n―3)番目のデータがA端子がローレベルでB端子がハイレベル、(n―2)番目のデータがA端子B端子共にハイレベル、(n―1)番目のデータがA端子がハイレベルでB端子がローレベル、n番目のデータがA端子B端子共にローレベルであることを検出すると、逆転用パターンであって、回転操作部31が逆転方向、つまり、左回りで火力を減少させる指令を与える方向に回転操作されたものと判別する。そのときのデータパターンの具体例を図11のパルス信号波形と、図12(ロ)のデータ変化一覧表で示している。
【0042】
正転用パターンであると判別すると、現在の火力調整状態が最大火力でなければ火力目標を1段階大側へ変更させ(ステップ55、56、57)、又、逆転用パターンであると判別すると火力目標を1段階小側へ変更させる(ステップ58、59、60)。従って、このように設定個数分のデータパターンによる1回の判別により1段階づつ火力目標が増減変更されることになる。
【0043】
正転用パターンや逆転用パターンのいずれも判別されず、しかも、パターン判別を行っている途中でもないときは、そのときに記憶されているデータは無効であると判定してこれらのデータをキャンセルし、又、このような無効判定が異常判別用設定回数M(例えば、3回)連続して発生していれば、動作異常であるとしてブザー37を作動させるための報知条件を設定する(ステップ61〜64)。ここでは、設定時間だけブザー37を作動させる条件が設定される。
従って、設定単位時間(5ms)が経過する毎にロータリーエンコーダ33から出力される2つのパルス信号のデータを繰り返し読み込み、その読み込まれた前記2つのパルス信号のデータにおけるデータパターンに基づいて、前記回転操作部の回転操作方向並びに回転操作量を判別することになる。
【0044】
このような火力目標設定処理が終了すると、次に報知処理を実行する(ステップ6)。つまり、ステップ64にて設定された条件としてステップ63の判断がイエスであれば設定時間ブザー37を鳴らして異常を報知する。又、火力表示部36における火力表示の値、具体的には点灯するLEDランプの位置を現在の設定状態から火力目標設定処理にて設定された火力目標に合わせる処理を実行する(ステップ7)。次に、火力表示部36にて表示される火力表示の値すなわち設定された火力目標と流量制御弁18の実際に調整されているガス流量に対応する値とが一致するように流量制御弁18の作動を制御してガス量を調整する(ステップ8、9、10)。
調理が終了して回転操作部31が非作用位置に押し込み操作されて点火スイッチ32がオフ状態に切り換わると、流量制御弁18によるガス流量を零に調整して左側コンロバーナ1bの消火処理を行う(ステップ11、12)。
【0045】
この制御処理においては、点火スイッチ32がオンしており、しかも、左側コンロバーナ1bが燃焼中であることを判別している間は、ステップ1からステップ9又はステップ10までの処理が繰り返し実行されるのであり、設定時間(5ms)が経過する毎に火力目標設定処理が繰り返し行われることになる。又、ステップ6の報知処理としては報知条件に応じてブザー37に対する起動や停止を指令する処理が行われ、ステップ9のガス流量調整としては流量調整方向の判別処理や判別した流量調整方向へのステッピングモータ19の起動指令等の処理が行われ、ステップ10の流量調整停止としてはステッピングモータ19の作動停止の処理が行われることになる。
【0046】
又、この実施形態では前記設定単位時間として5msに設定したがこれに限るものではなく、前記設定単位時間はマイクロコンピュータの処理能力に応じて適宜変更して実施することができる。
【0047】
〔別実施形態〕
以下、別実施形態を列記する。
【0048】
(1)上記実施形態では、前記回転操作部がその回転軸芯方向に沿ってスライド移動自在に設けられて、そのスライド操作によって点火スイッチをオンオフさせるようにして、点火操作具を兼用する構成としたが、このような構成に代えて、図15に示すように、前記各コンロバーナ及びグリルバーナの夫々に対応させて夫々専用の点火スイッチ40を備える構成として、前記回転操作部31が回転操作による火力調整だけを行うように構成するものでもよい。
【0049】
(2)上記実施形態では、音声によって異常が発生したことを報知する報知手段としてのブザーが備えられ、前記パターン判別用設定回数分の2つのパルス信号のデータにより回転操作部がいずれの方向に操作されたかを判別することができないことが、異常判別用設定回数以上連続して繰り返して発生した場合に、ブザーを作動させるように構成したが、このような構成に代えて次のように構成してもよい。
報知手段として音声情報により報知するものに代えて表示情報によって異常を報知するようにしてもよい。例えば、LEDランプを点滅表示したり、グラフィック表示器を用いて文字情報で表示するようにしてもよい。
又、前記パターン判別用設定回数分の2つのパルス信号のデータにより回転操作部がいずれの方向に操作されたかを判別することができないことが、設定時間内に異常判別用設定回数以上発生した場合に、上記したような報知手段を作動させるように構成してもよい。
【0050】
(3)上記実施形態では、前記パターン判別用設定回数として5回を設定したが5回に限らずそれ以外の回数、4回以下あるは6回以上の回数に適宜変更して実行してもよい。又、異常判別用設定回数についても3回に限らず2回以上の回数にて適宜変更して実行してもよい。
【0051】
(4)上記実施形態では、前記調理用の加熱手段が、燃料ガスを燃焼させて調理用加熱を行うガス燃焼式の加熱手段としてのコンロバーナやグリルバーナを例示したが、本発明はこのようなガス燃焼式の加熱手段に限らず、調理用の加熱手段として電気ヒータや誘導加熱コイルにて加熱するような構成の調理器にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】ガスコンロの斜視図
【図2】概略構成図
【図3】流量制御弁の構成を示す図
【図4】流量調整状態を示す図
【図5】加熱状態調整部の構成を示す側面図
【図6】加熱状態調整部の操作状態を示す図
【図7】火力表示部を示す図
【図8】制御動作のフローチャート
【図9】制御動作のフローチャート
【図10】制御動作のフローチャート
【図11】パルス信号を示すタイムチャート
【図12】データパターンを示す図
【図13】データ更新状態を示す図
【図14】データ更新状態を示す図
【図15】別実施形態のガスコンロの斜視図
【符号の説明】
31 回転操作部
33 エンコーダ
37 報知手段
H 制御手段
K 加熱手段
Claims (4)
- 正転方向及び逆転方向の回転操作に伴って調理用の加熱手段の加熱量の増大及び減少を指令する回転操作部と、
その回転操作部の一方向への回転操作に伴って2つのパルス信号のうちの一方のパルス信号が他方のパルス信号より位相が進み、前記回転操作部の他方向への回転操作に伴って前記他方のパルス信号が前記一方のパルス信号より位相が進む状態で、前記回転操作部の回転操作に伴って互いに異なる位相の2つのパルス信号を出力するように構成されたエンコーダと、
そのエンコーダから出力される前記パルス信号に基づいて、前記回転操作部の回転操作方向並びに回転操作量を判別するとともに、その判別した回転操作方向並びに回転操作量に対応させて前記加熱手段の加熱量を調整する制御手段とが備えられている調理器用の加熱量設定装置であって、
前記制御手段が、
前記エンコーダから出力される前記2つのパルス信号のデータを予め定めた設定単位時間毎に繰り返し読み込み、その読み込まれた前記2つのパルス信号のデータにおけるデータパターンに基づいて、前記回転操作部の回転操作方向並びに回転操作量を判別するように構成されている調理器用の加熱量設定装置。 - 前記制御手段が、
前記回転方向を判別する処理においてパターン判別用設定回数分の前記2つのパルス信号のデータにより前記回転操作部がいずれの方向に操作されたかを判別することができないときは、前記2つのパルス信号のデータにおけるデータパターンに基づく前記加熱量の調整を実行しないように構成されている請求項1記載の調理器用の加熱量設定装置。 - 音声情報又は表示情報によって異常が発生したことを報知する報知手段が備えられ、
前記制御手段が、
前記パターン判別用設定回数分の前記2つのパルス信号のデータにより前記回転操作部がいずれの方向に操作されたかを判別することができないことが、異常判別用設定回数以上連続して繰り返して発生するか、又は、設定時間内に異常判別用設定回数以上発生した場合には、前記報知手段を作動させるように構成されている請求項2記載の調理器用の加熱量設定装置。 - 前記調理用の加熱手段が、燃料ガスを燃焼させて調理用加熱を行うガス燃焼式の加熱手段であり、
前記制御手段が、前記ガス燃焼式の加熱手段に対する燃料供給量を変更調整することにより、加熱量を調整するように構成されている請求項1〜3のうちのいずれか1項に記載の調理器用の加熱量設定装置。
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