JP4136369B2 - 半導体発光素子の製造方法および面発光型半導体レーザ素子の製造方法 - Google Patents

半導体発光素子の製造方法および面発光型半導体レーザ素子の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、半導体発光素子の製造方法および面発光型半導体レーザ素子の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、インターネットの爆発的普及に見られるように、扱われる情報量が飛躍的に増大しており、今後さらに加速すると考えられる。このため、幹線系のみならず、各家庭やオフィスといった加入者系やLAN(Local Area Network)などのユーザに近い伝送路、さらには各機器間や機器内の配線へも光ファイバーが導入され、光による大容量情報伝送技術が極めて重要となる。
【0003】
そして、安価で距離を気にしないで光ネットワーク,光配線の大容量化を図るためには、光源として、シリカファイバーの伝送ロスが小さく整合性の良い1.3μm帯,1.55μm帯の面発光型半導体レーザ素子(VCSEL: Vertical Cavity Surface Emitting Laser:垂直空洞面発光型半導体レーザ素子)が極めて有望である。
【0004】
面発光型半導体レーザ素子は、端面発光型レーザに比べて、低価格化,低消費電力化,小型化,2次元集積化に向き、実際にGaAs基板上に形成できる0.85μm帯では、すでに高速LANである1Gbit/sのイーサネットなどで実用化されている。
【0005】
一方、1.3μm帯では、InP基板上の材料系が一般的であり、端面発光型レーザでは実績がある。しかし、この従来の長波長帯半導体レーザでは、環境温度が室温から80℃になると動作電流が3倍にも増加する大きな欠点を持っている。また、面発光型半導体レーザ素子においては反射鏡に適した材料がないため高性能化は困難であり、実用レベルの特性が得られていないのが現状である。
【0006】
このため、InP基板上の活性層とGaAs基板上のAlGaAs/GaAs反射鏡を直接接合で張り合わせた構造により、現状での最高性能が得られている(文献「V. Jayaraman, J.C. Geske, M.H. MacDougal F.H. Peters, T.D. Lowes, and T.T. Char, Electron. Lett., 34, (14), pp. 1405-1406, 1998.」を参照)。
【0007】
しかし、この方法はコスト上昇を避けられないので量産性の点で問題があると考えられる。そこで、最近、GaAs基板上に1.3μm帯を形成できる材料系が注目され、(Ga)InAs量子ドット、GaAsSbやGaInNAs(例えば、特開平6−37355号公報参照)が研究されている。新材料であるGaInNAsはレーザ特性の温度依存性を極めて小さくすることができる材料として注目されている。
【0008】
GaAs基板上のGaInNAs系半導体レーザは、窒素添加によりバンドギャップが小さくなるので、GaAs基板上に1.3μm帯など長波長帯を形成できるようになる。In組成10%のとき窒素組成が約3%で1.3μm帯を形成できるが、窒素組成が大きいほどしきい値電流密度が急激に上昇するという問題がある。
【0009】
図1は、本願の発明者が実験的に求めたしきい値電流密度の窒素組成依存性を示す図であり、横軸は窒素組成割合(%)を示し、縦軸はしきい値電流密度を示している。図1から、窒素組成が大きいほどしきい値電流密度が急激に上昇することがわかる。このように、しきい値電流密度が窒素組成が大きくなるに伴って急激に上昇する理由は、GaInNAs層の結晶性が窒素組成増加に伴い劣化するためである。
【0010】
このため、いかにGaInNAsを高品質に成長するかが課題となる。このようなGaInNAsの結晶成長方法には、MOCVD法(Metal Organic Chemical Vapor Deposition;有機金属化学気相成長法)やMBE法(Molecular Beam Epitaxy;分子線エピタキシャル成長法)が試みられている。
【0011】
MOCVD法は、MBE法のような高真空を必要とせず、また、MBE法では原料供給をセルの温度を変えて制御するのに対して、MOCVD法は原料ガス流量を制御するだけでよく、また成長速度を高くすることができ、容易にスループットを上げられることから、極めて量産に適した成長方法である。実際に実用化されている0.85μm帯面発光型半導体レーザ素子の生産には全て(ほとんどの場合)MOCVD法が用いられている。
【0012】
最近、この新規なGaInNAs系材料を用いた半導体レーザの報告が多数報告されるようになった。しかし、これらのほとんどの場合はMBE法によるものであった。また、特開平9−237942号には、GaInNAs系材料を用いた面発光レーザの提案がされている。ごく最近には、実際に、GaInNAs系材料を用いた面発光型半導体レーザ素子動作についても報告されるようになった。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、この新規なGaInNAs系面発光型半導体レーザ素子の報告のほとんどは、MBE法によって成長されたものであり、十分な特性を有するものとなっていない。そして、従来では、量産に適したMOCVD法によるGaInNAs系面発光型半導体レーザ素子の製造方法,製造装置は未だ確立されていない。
【0014】
本発明は、MOCVD法によって作製可能な高品質で実用レベルのGaInNAs系半導体発光素子を製造可能な半導体発光素子の製造方法および面発光型半導体レーザ素子の製造方法を提供することを目的としている。
【0015】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項1記載の発明は、基板と窒素を含む活性層との間にAlを含む半導体層を設ける半導体発光素子の製造方法において、
前記窒素を含む活性層は、GaInNAs系材料、GaNAs、InNAs、GaAsNSb、GaInNAsSbのいずれかからなる半導体層で構成され、
Alを含む半導体層を成長した後であって、前記窒素を含む活性層の成長を開始させる前に、エッチングガスとして塩素系化合物ガスを成長室内に供給し、成長室内に残留したAl原料、または、Al反応物、または、Al化合物、または、Alを除去する工程を設けたことを特徴としている。
【0016】
また、請求項2記載の発明は、請求項1記載の半導体発光素子の製造方法において、前記成長室内に残留したAl原料、または、Al反応物、または、Al化合物、または、Alを除去する工程は、半導体発光素子の成長を中断して、半導体発光素子の被成長基板を成長室から別室に移動させてから、または、一度外部に取り出してから行うことを特徴としている。
【0017】
また、請求項3記載の発明は、請求項1記載の半導体発光素子の製造方法において、前記成長室内に残留したAl原料、または、Al反応物、または、Al化合物、または、Alをエッチングガスとしての塩素系化合物ガスで除去する工程を行った後であって、窒素を含む活性層を成長させる前に、GaInP層、または、GaPAs層、または、GaInPAs層を形成することを特徴としている。
【0019】
また、請求項4記載の発明は、半導体基板上に、レーザ光を発生する少なくとも1層の窒素を含んだ活性層を含む活性領域と、レーザ光を得るために活性層の上部および下部に設けられた上部反射鏡および下部反射鏡と、上部反射鏡と下部反射鏡とに挟まれた共振器構造とを有する面発光型半導体レーザ素子の製造方法において、
前記活性層は、GaInNAs系材料、GaNAs、InNAs、GaAsNSb、GaInNAsSbのいずれかからなる半導体層で構成され、
前記下部反射鏡は、屈折率が周期的に変化し入射光を光波干渉によって反射する半導体分布ブラッグ反射鏡を有し、該半導体分布ブラッグ反射鏡の屈折率が小さい層はAlxGa1-xAs(0<x≦1)からなり、半導体分布ブラッグ反射鏡の屈折率が大きい層はAlyGa1-yAs(0≦y<x≦1)からなり、前記Alを含んだ下部反射鏡を成長した後、前記窒素を含んだ活性層を成長する前に、エッチングガスとして塩素系化合物ガスを成長室内に供給し、成長室内に残留したAl原料、または、Al反応物、または、Al化合物、または、Alを除去することを特徴としている。
【0020】
また、請求項5記載の発明は、請求項4記載の面発光型半導体レーザ素子の製造方法において、前記成長室内に残留したAl原料、または、Al反応物、または、Al化合物、または、Alをエッチングガスとしての塩素系化合物ガスで除去する工程を行った後であって、窒素を含む活性層を成長する前に、GaInP層、または、GaPAs層、または、GaInPAs層を設け、また、前記エッチングガスで除去する工程は、半導体分布ブラッグ反射鏡を成長しているときに行なうことを特徴としている。
【0021】
また、請求項6記載の発明は、請求項4記載の面発光型半導体レーザ素子の製造方法において、前記成長室内に残留したAl原料、または、Al反応物、または、Al化合物、または、Alをエッチングガスとしての塩素系化合物ガスで除去する工程を行った後であって、窒素を含む活性層を成長する前に、GaInP層、または、GaPAs層、または、GaInPAs層を設け、また、前記エッチングガスで除去する工程は、共振器構造を成長しているときに行なうことを特徴としている。
【0026】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0027】
まず、MOCVD法によるGaInNAs系面発光型半導体レーザ素子の高性能化を阻んでいる原因を、本願の発明者の実験結果に基づいて述べる。
【0028】
図2は一般的なMOCVD装置の概略を示す図である。MOCVD法は、少なくとも有機金属原料を一部に用い、原料ガスの熱分解と被成長基板との表面反応により結晶成長させる気相成長方法である。MOCVD装置は、図2に示すように、原料ガスが供給される原料ガス供給部と、被成長基板を加熱するための加熱手段(図示せず)と、加熱部(加熱体)と、反応済みのガスを排気するための排気部(排気ポンプなど)とを有している。通常、基板は、空気が成長室(反応室)に入らないように基板出し入れ口から入れ、排気部による真空引き後に成長室(反応室)に搬送される。なお、反応室(成長室)内の圧力は50Torr〜100Torr程度の減圧がよく用いられる。また、原料ガス供給部は、通常、III族ガスラインとV族ガスラインとに分けられている。図2では、反応室入り口手前でIII族ガスラインとV族ガスラインとが合流している。
【0029】
ここで、III族原料としては、Ga:TMG(トリメチルガリウム),TEG(トリエチルガリウム)、Al:TMA(トリメチルアルミニウム)、In:TMI(トリメチルインジウム)などの有機金属が用いられる。また、V族原料には、AsH3(アルシン),TBA(ターシャルブチルアルシン)、PH3(フォスフィン),TBP(ターシャルブチルアルシン)などの水素化物ガスや有機化合物が一般に用いられる。
【0030】
また、キャリアガスには、水素ガス(H2)が通常用いられ、水素ガス(H2)は、通常、水素精製器を通して不純物を除去して供給している。そして窒素を含んだ半導体層の成長のための窒素の原料には、DMHy(ジメチルヒドラジン),MMHy(モノメチルヒドラジン)等の有機化合物を用いることができる。なお、原料は、これに限られるものではない。有機金属や有機窒素化合物のような液体または固体の原料は、バブラーに入れられてキャリアガスを通してバブリングすることで供給される。また、水素化物はガスシリンダーに入れられて供給される。図2では、TMG,TMA,TMI,DMHyについてバブラー(液体,固体原料バブラー)を用い、AsH3とドーパントガス(図2では1種類のみ示している)についてガスシリンダーを用いている。
【0031】
原料ガスの経路はバルブで切り替え、また、原料ガスの供給量をMFCマスフローコントローラー等で制御することで、必要な材料,組成を成長することができる。一般に、III族ガスライン,V族ガスラインごとに、反応室にガスを供給するメインラインと、排気ポンプにガスを供給するベントラインとを有し、かつ、原料ラインの他にダミーライン(図中、ダミーライン1、2参照)を設けてそれぞれメインラインまたはベントラインのどちらか一方に合流するようにバルブを切り替え、メインラインとベントラインの圧力差をなくすことでガス流が極力乱れないようにしている。なお、メインライン,ベントライン,ダミーラインもキャリアガスが供給されている。このようなMOCVD装置では、複数の半導体層を有する半導体発光素子等を成長する場合、各層ごとに必要な原料をメインライン側に供給し、また、ダミーラインからのキャリアガスをベント側に供給し、結晶成長が行われる。成長の厚さは原料ガスを供給する時間で制御する。これにより必要な構造を成長できるので、スループットが良く、量産に向いている。
【0032】
図3は、このようなMOCVD装置で作製した窒素を含んだ半導体層であるGaInNAs量子井戸層とGaAsバリア層とからなるGaInNAs/GaAs 2重量子井戸構造からなる活性層からの室温フォトルミネッセンススペクトルを示す図である。図3において、符号AはAlGaAsクラッド層上にGaAs中間層をはさんで2重量子井戸構造を形成した試料であり、符号BはGaInPクラッド層上にGaAs中間層をはさんで2重量子井戸構造を連続的に形成した試料である。なお、図4には試料A,Bの基本構造が示されている。すなわち、図4を参照すると、試料A,Bは、基本的には、GaAs基板201上に、下部クラッド層202、中間層203、窒素を含む活性層204、中間層203、上部クラッド層205が順次積層されて構成されている。
【0033】
図3に示すように、試料Aでは試料Bに比べてフォトルミネッセンス強度が半分以下に低下している。従って、1台のMOCVD装置を用いてAlGaAs等のAlを構成元素として含む半導体層上に、GaInNAs等の窒素を含む活性層を連続的に形成すると、活性層の発光強度が劣化してしまうという問題が生じた。そのため、AlGaAsクラッド層上に形成したGaInNAs系レーザの閾電流密度は、GaInPクラッド層上に形成した場合に比べて数倍高くなってしまう。
【0034】
本願の発明者は、この原因解明について検討した。図5は、図4に示した半導体発光素子の一例として、クラッド層202をAlGaAsとし、中間層203をGaAsとし、活性層204をGaInNAs/GaAs2重量子井戸構造として構成した素子を1台のエピタキシャル成長装置(MOCVD)を用いて形成したときの、窒素(N)濃度と酸素(O)濃度の深さ方向分布を示す図である。なお、この測定はSIMSによって行った。次表(表1)に測定条件を示す。
【0035】
【表1】
Figure 0004136369
【0036】
図5において、GaInNAs/GaAs2重量子井戸構造に対応して、活性層204中に2つの窒素ピークが見られる。そして、活性層204において、酸素のピークが検出されている。しかし、NとAlを含まない中間層203における酸素濃度は活性層204の酸素濃度よりも約1桁低い濃度となっている。
【0037】
一方、クラッド層202をGaInPとし、中間層203をGaAsとし、活性層204をGaInNAs/GaAs2重量子井戸構造として構成した半導体レーザ素子について、酸素濃度の深さ方向分布を測定した場合には、活性層204中の酸素濃度はバックグラウンドレベルであった。
【0038】
すなわち、窒素化合物原料と有機金属Al原料を用いて、1台のエピタキシャル成長装置により、基板(201)と窒素を含む活性層(204)との間にAlを含む半導体層(202)を設けた半導体発光素子を連続的に結晶成長すると、窒素を含む活性層(204)中に酸素が取りこまれることが本願の発明者の実験により明らかとなった。活性層(204)に取りこまれた酸素は非発光再結合準位を形成するため、活性層(204)の発光効率を低下させてしまう。この活性層(204)に取りこまれた酸素が、基板(201)と窒素を含む活性層(204)との間にAlを含む半導体層(202)を設けた半導体発光素子における発光効率を低下させる原因であることが新たに判明した。この酸素の起源は装置内に残留している酸素を含んだ物質、または窒素化合物原料中に不純物として含まれる酸素を含んだ物質と考えられる。
【0039】
次に、酸素の取りこまれる原因について検討した。図6は、図5と同じ試料でのAl濃度の深さ方向分布を示す図である。なお、測定はSIMSによって行った。また、次表(表2)には測定条件を示す。
【0040】
【表2】
Figure 0004136369
【0041】
図6から、本来Al原料を導入していない活性層204において、Alが検出されている。しかし、Alを含む半導体層(クラッド層)202,205に隣接した中間層(GaAs層)203においては、Al濃度は活性層204よりも約1桁低い濃度となっている。これは、活性層204中のAlがAlを含む半導体層(クラッド層)202,205から拡散,置換して混入したものではないことを示している。
【0042】
一方、GaInPのようにAlを含まない半導体層上に窒素を含む活性層を成長した場合には、活性層中にAlは検出されなかった。
【0043】
従って、図6において、活性層204中に検出されたAlは、装置内に残留したAl原料、または、Al反応物、または、Al化合物、または、Alが、窒素化合物原料または窒素化合物原料中の不純物(水分等)と結合して活性層204中に取りこまれたものである。すなわち、窒素化合物原料と有機金属Al原料を用いて、1台のエピタキシャル成長装置により、基板と窒素を含む活性層との間にAlを含む半導体層を設けた半導体発光素子を連続的に結晶成長すると、窒素を含む活性層中に自然にAlが取りこまてしまうことが本願の発明者により新たにわかった。
【0044】
図5に示した同じ半導体発光素子における、窒素濃度と酸素濃度の深さ方向分布と比較すると、2重量子井戸活性層204中の2つの酸素ピークプロファイルは、窒素濃度のピークプロファイルと対応しておらず、図6のAl濃度プロファイルと対応している。このことから、GaInNAs井戸層中の酸素不純物は、窒素原料と共に取りこまれるというよりも、むしろ井戸層中に取りこまれたAlと結合して一緒に取りこまれていることが明らかとなった。すなわち、成長室内に残留したAl原料、または、Al反応物、または、Al化合物、または、Alが窒素化合物原料と接触すると、Alと窒素化合物原料中に含まれる水分またはガスラインや反応室中に残留する水分などの酸素を含んだ物質とが結合して、活性層204中にAlと酸素が取りこまれる。この活性層204に取り込まれた酸素が活性層204の発光効率を低下させていたことが本願の発明者の実験により初めて明らかとなった。
【0045】
通常のMBE法で作製した場合には、基板と窒素を含む活性層との間にAlを含む半導体層を設けた半導体発光素子における発光効率低下については報告されていない。
【0046】
これは、MBE法が超減圧(高真空中)で結晶成長が行われるのに対して、MOCVD法は通常数10Torrから大気圧程度と、MBE法に比べて反応室の圧力が高いため、平均自由行程が圧倒的に短く、供給された原料やキャリアガス等が反応室等でAl系残留物と接触、反応するためと考えられる。
【0047】
よって、MOCVD法のように、反応室やガスラインの圧力が高い成長方法の場合、これを改善するためには、少なくとも装置内に残留したAlが窒素を含む活性層成長時に酸素とともに膜中に取りこまれないように、Al系残留物を除去する工程が必要なことがわかった。
【0048】
このため、本発明の実施形態では、次のような構成を採用したことを特徴としている。以下、各実施形態毎に詳細に説明する。
【0049】
第1の実施形態
先ず、本発明の第1の実施形態の半導体発光素子の製造方法は、基板と窒素を含む活性層との間にAlを含む半導体層を設ける半導体発光素子の製造方法において、Alを含む半導体層を成長した後であって、窒素を含む活性層の成長を開始させる前に、エッチングガスとして塩素系化合物ガスを成長室(反応室)内に供給し、成長室内に残留したAl原料、または、Al反応物、または、Al化合物、または、Alを除去する工程を設けたことを特徴としている。
【0050】
上述の説明のように、Al系残留物が非発光再結合の原因となる酸素を、窒素を含む活性層に取りこむ原因となっているので、Alを含んだ半導体層を成長した後、窒素を含む活性層の成長の前までに、反応室(成長室)側壁,加熱帯,基板を保持する治具等に残留しているAl系残留物と反応してAl系残留物を除去することのできるガスを成長室に供給することで、活性層への酸素の取り込みを抑えることができる。HClのような塩素系化合物ガスは、成長室内の反応生成堆積物と反応し、エッチング除去する効果がある。よって、Alを含んだ半導体層を成長した後、窒素を含む活性層の成長の前までに、エッチングガスとして塩素系化合物ガスを供給すると、このエッチングガスは反応室側壁,加熱帯,基板を保持する治具等に残留しているAl系残留物と反応してAl系残留物を除去することができるので、活性層への酸素の取り込みを抑えることができる。塩素系化合物ガス(例えば、HClガス)はガスシリンダーに充填して使用することができる。この場合、酸素,水分等が少ない高純度のものが好ましい。
【0051】
この手法により、窒素を含む活性層中のAl濃度を1×1019cm-3以下に低減することができ、これにより、室温連続発振が可能となった。さらに、窒素を含む活性層中のAl濃度を2×1018cm-3以下に低減することにより、Alを含まない半導体層上に形成した場合と同等の発光特性が得られた。
【0052】
表3は、AlGaAsをクラッド層(Alを含む層)とし、GaInNAs2重量子井戸構造(窒素を含む層)を活性層としたブロードストライプレーザを試作して閾電流密度を評価した結果を示している。
【0053】
【表3】
Figure 0004136369
【0054】
表3から、Alを構成元素として含む半導体層に、窒素を含む活性層を連続的に形成した構造においては、活性層中に2×1019cm-3以上のAl、及び、1×1018cm-3以上の酸素が取りこまれており、閾電流密度は10kA/cm2以上と著しく高い値となった。しかし、活性層中のAl濃度を1×1019cm-3以下に低減することにより、活性層中の酸素濃度が1×1018cm-3以下に低減され、閾電流密度2〜3kA/cm2でブロードストライプレーザが発振した。ブロードストライプレーザの閾電流密度が数kA/cm2以下の活性層品質であれば、室温連続発振が可能である。従って、窒素を含む活性層中のAl濃度を1×1019cm-3以下に抑制することにより、室温連続発振可能な半導体レーザを作製することが可能である。
【0055】
このように、第1の実施形態では、基板と窒素を含む活性層との間にAlを含む半導体層を設ける半導体発光素子の製造方法において、Alを含む半導体層を成長した後であって、窒素を含む活性層の成長を開始させる前に、エッチングガスとして塩素系化合物ガスを成長室内に供給し、成長室内に残留したAl原料、または、Al反応物、または、Al化合物、または、Alを除去するので、活性層への酸素の取り込みを抑えることができ、発光効率が高い半導体発光素子を得ることができる。
【0056】
第2の実施形態
本発明の第2の実施形態の半導体発光素子の製造方法は、上記第1の実施形態の半導体発光素子の製造方法において、成長室内に残留したAl原料、または、Al反応物、または、Al化合物、または、Alを除去する工程を行なうときには、半導体発光素子の成長を中断して、半導体発光素子の被成長基板を成長室から別室に移動させるか、または、一度外部に取り出すことを特徴としている。
【0057】
塩素系化合物ガスは、成長室内の反応生成堆積物と反応しエッチング除去する効果があるとともに、被成長基板をもエッチングする効果があるので、成長室内に残留したAl原料、または、Al反応物、または、Al化合物、または、Alを除去する工程を行なうときには、成長室内に半導体発光素子の被成長基板を置かない方が好ましい。もちろん、被成長基板がエッチングされるのをあらかじめ想定して、その分厚く成長しておくことで被成長基板を移動しないで連続して行うことも可能ではある。
【0058】
第3の実施形態
本発明の第3の実施形態の半導体発光素子の製造方法は、上記第1の半導体発光素子の製造方法において、成長室内に残留したAl原料、または、Al反応物、または、Al化合物、または、Alをエッチングガスとしての塩素系化合物ガスで除去する工程を行った後であって、窒素を含む活性層を成長させる前に、GaInP層、または、GaPAs層、または、GaInPAs層を形成することを特徴としている。
【0059】
上記成長室内に残留したAl原料、または、Al反応物、または、Al化合物、または、Alを塩素系化合物ガスで除去する工程は、前述したように、例えば、半導体発光素子の成長を中断して、半導体発光素子の被成長基板を成長室から別室に移動させるか、または、一度外部に取り出してから行うことができる。しかしながら、被成長基板を別室に移動させてから行う場合、被成長基板を別室に移動させることで、エピ基板表面には酸化膜が形成されてしまう。もしこの界面がキャリアが注入される活性領域であれば、非発光再結合中心となり発光素子動作時発光効率が低下してしまう。
【0060】
これに対し、成長中断時の表面材料のバンドギャップエネルギーよりも高いバンドギャップエネルギーを有する材料を窒素を含む活性層との間に成長すると、成長中断界面への注入キャリアはほとんど無くなるので、発光効率の低下を防止できる。この成長中断界面をSIMS分析すれば、酸素(O)または窒素(N)または塩素(Cl)が観察されるであろう。成長中断時の表面材料のバンドギャップエネルギーよりも高いバンドギャップエネルギーを有する材料としては、発明の主旨からAlを含まない材料であれば良く、GaInP層、または、GaPAs層、または、GaInPAs層を用いることができる。もちろん、N,Sbなど他の元素を含んでいてもかまわない。また、これらの材料は格子整合していても良く、臨界膜厚以下の厚さであれば歪を有していても良い。例えば活性層が圧縮歪を有している場合、これらの材料を引張り歪にすれば活性層の歪を補償する効果がある。
【0061】
第4の実施形態
本発明の第4の実施形態の半導体発光素子は、第1乃至第3の実施形態のいずれかの製造方法によって作製されたことを特徴としている。
【0062】
本発明の第4の実施形態の半導体発光素子は、第1乃至第3の実施形態のいずれかの製造方法によって作製されたので、活性層への酸素の取り込みを抑えることができ、発光効率が高い半導体発光素子を提供できる。
【0063】
第5の実施形態
本発明の第5の実施形態の面発光型半導体レーザ素子の製造方法は、半導体基板上に、レーザ光を発生する少なくとも1層の窒素を含んだ活性層を含む活性領域と、レーザ光を得るために活性層の上部および下部に設けられた上部反射鏡および下部反射鏡と、上部反射鏡と下部反射鏡とに挟まれた共振器構造とを有する面発光型半導体レーザ素子の製造方法において、前記下部反射鏡は、屈折率が周期的に変化し入射光を光波干渉によって反射する半導体分布ブラッグ反射鏡を有し、該半導体分布ブラッグ反射鏡の屈折率が小さい層はAlxGa1-xAs(0<x≦1)からなり、半導体分布ブラッグ反射鏡の屈折率が大きい層はAlyGa1-yAs(0≦y<x≦1)からなり、前記Alを含んだ下部反射鏡を成長した後、前記窒素を含んだ活性層を成長する前に、エッチングガスとして塩素系化合物ガスを成長室内に供給し、成長室内に残留したAl原料、または、Al反応物、または、Al化合物、または、Alを除去することを特徴としている。
【0064】
窒素を含んだ半導体層としては、GaNAs,GaInNAs,InNAs,GaAsNSb,GaInNAsSb等が挙げられる。例えばGaInNAsについて以下説明する。GaAsより格子定数が大きいGaInAsにNを添加することで、GaInNAsはGaAsに格子整合させることが可能となるとともに、そのバンドギャップが小さくなり、1.3μm,1.55μm帯での発光が可能となる。また、GaAs基板格子整合系なので、ワイドギャップのAlGaAsやGaInPをクラッド層に用いることができる。
【0065】
さらに、Nの添加により上記のようにバンドギャップが小さくなるとともに、伝導帯,価電子帯のエネルギーレベルがともに下がり、ヘテロ接合における伝導帯のバンド不連続が極めて大きくなる結果、レーザの動作電流の温度依存性を極めて小さくできる。
【0066】
さらに、面発光型半導体レーザ素子は、小型化,低消費電力化及び2次元集積化による並列伝送に有利である。面発光型半導体レーザ素子は従来のGaInPAs/InP系では実用化に耐え得る性能を得るのは困難であるが、GaInNAs系材料によるとGaAs基板を用いた0.85μm帯面発光型半導体レーザ素子などで実績のあるAl(Ga)As/(Al)GaAs系半導体多層膜分布ブラッグ反射鏡や、AlAsの選択酸化による電流狭さく構造が適用できるので、実用化が期待できる。
【0067】
これを実現するためにはGaInNAs活性層の結晶品質の向上や、多層膜反射鏡の低抵抗化、面発光型半導体レーザ素子としての多層膜構造体の結晶品質や制御性の向上が重要であったが、この第5の実施形態では、Alを含んだ下部反射鏡を成長した後であって、窒素を含んだ活性層を成長する前に、塩素系化合物ガスを成長室内に供給し、成長室内に残留したAl原料、または、Al反応物、または、Al化合物、または、Alを除去するので、非発光再結合中心となる酸素が窒素を含む活性層へ取りこまれるのを抑制することができ、低抵抗で駆動電圧が低く、発光効率が高く低しきい値電流動作し、温度特性が良い面発光型半導体レーザ素子を容易に低コストで実現できる。なお、成長室内に残留したAl原料、または、Al反応物、または、Al化合物、または、Alを除去する工程は、被成長基板を成長室から別室に移動させてから、または一度外部に取り出してから行うことが好ましい。
【0068】
第6の実施形態
本発明の第6の実施形態の面発光型半導体レーザ素子の製造方法は、第5の実施形態の面発光型半導体レーザ素子の製造方法において、成長室内に残留したAl原料、または、Al反応物、または、Al化合物、または、Alをエッチングガスとしての塩素系化合物ガスで除去する工程を行った後であって、窒素を含む活性層を成長する前に、GaInP層、または、GaPAs層、または、GaInPAs層を設け、また、前記エッチングガスで除去する工程は、半導体分布ブラッグ反射鏡を成長しているときに行なうことを特徴としている。
【0069】
キャリアが注入される活性領域中でエッチング除去工程を設けると、酸化等により非発光再結合が生じ発光効率が低下する恐れがあるが、この第6の実施形態のように、成長室内に残留したAl原料、または、Al反応物、または、Al化合物、または、Alをエッチングガスとしての塩素系化合物ガスで除去する工程を行った後、活性層を成長する前に、反射鏡の低屈折率層の一部としてGaInP層、または、GaPAs層、または、GaInPAs層を成長すると、GaInP層、または、GaPAs層、または、GaInPAs層よりも活性層に近い領域で、ナローギャップの材料(例えばGaAs)を用いて活性領域を形成することが可能となるので、上記発光効率低下の心配はなく、Al系残留物除去工程を行った領域での非発光再結合センターによる素子性能への影響を無くすことができ、低しきい値電流動作し、温度特性が良い面発光型半導体レーザ素子を得ることができる。
【0070】
第7の実施形態
本発明の第7の実施形態の面発光型半導体レーザ素子の製造方法は、第5の実施形態の面発光型半導体レーザ素子の製造方法において、成長室内に残留したAl原料、または、Al反応物、または、Al化合物、または、Alをエッチングガスとしての塩素系化合物ガスで除去する工程を行った後であって、窒素を含む活性層を成長する前に、GaInP層、または、GaPAs層、または、GaInPAs層を設け、また、前記エッチングガスで除去する工程は、共振器構造を成長しているときに行なうことを特徴としている。なお、ここで、共振器構造は、下部反射鏡と上部反射鏡とに挟まれた領域である。
【0071】
成長室内に残留したAl原料、または、Al反応物、または、Al化合物、または、Alを塩素系化合物ガスで除去する工程は、Alを含んだ下部反射鏡を成長した後であって、窒素を含んだ活性層を成長する前に行なわれれば良く、共振器内でも良い。ただし、キャリアが注入される活性領域中で除去工程を設けると、酸化等により非発光再結合が生じ発光効率が低下する恐れがあるが、共振器部分で成長中断して、成長室内に残留したAl原料、または、Al反応物、または、Al化合物、または、Alをエッチングガス(例えば塩素系化合物ガス)で除去する工程を行った後、活性層を成長する前に、GaInP層、または、GaPAs層、または、GaInPAs層を成長すると、GaInP層、または、GaPAs層、または、GaInPAs層よりも活性層に近い領域で、ナローギャップの材料(例えばGaAs)を用いて活性領域を形成することが可能となるので、共振器内で成長中断しても上記発光効率低下の心配はなく、Al系残留物除去工程を行った領域での非発光再結合センターによる素子性能への影響を無くすことができ、低しきい値電流動作し、温度特性が良い面発光型半導体レーザ素子を得ることができる。
【0072】
第8の実施形態
本発明の第8の実施形態の面発光型半導体レーザ素子は、第5乃至第7の実施形態のいずれかの製造方法によって作製されたことを特徴としている。
【0073】
本発明の第8の実施形態の面発光型半導体レーザ素子は、第5乃至第7の実施形態のいずれかの製造方法によって作製されたので、非発光再結合中心となる酸素が窒素を含む活性層へ取りこまれるのを抑制することができ、低抵抗で駆動電圧が低く、発光効率が高く低しきい値電流動作し、温度特性が良い面発光型半導体レーザ素子を容易に低コストで実現できる。
【0074】
第9の実施形態
本発明の第9の実施形態の光送信モジュールは、第8の実施形態の面発光型半導体レーザ素子を光源として用いることを特徴としている。
【0075】
第8の実施形態のような低抵抗で駆動電圧が低く、低しきい値電流動作し、温度特性が良い面発光型半導体レーザ素子を用いることによって、冷却素子が不要な低コストな光送信モジュールを実現することができる。
【0076】
第10の実施形態
本発明の第10の実施形態の光送受信モジュールは、第8の実施形態の面発光型半導体レーザ素子を光源として用いることを特徴としている。
【0077】
第8の実施形態のような低抵抗で駆動電圧が低く、低しきい値電流動作し、温度特性が良い面発光型半導体レーザ素子を用いることによって、冷却素子が不要な低コストな光送受信モジュールを実現することができる。
【0078】
第11の実施形態
本発明の第11の実施形態の光通信システムは、第8の実施形態の面発光型半導体レーザ素子を光源として用いることを特徴としている。
【0079】
第8の実施形態のような低抵抗で駆動電圧が低く、低しきい値電流動作し、温度特性が良い面発光型半導体レーザ素子を用いることによって、冷却素子が不要な低コストな光ファイバー通信システム,光インターコネクションシステムなどの光通信システムを実現することができる。
【0080】
【実施例】
次に、本発明の実施例を説明する。
【0081】
(第1の実施例)
図7(a),(b)は本発明の第1の実施例のGaInNAs面発光型半導体レーザ素子の構成例を示す図である。なお、図7(b)は図7(a)の活性領域の拡大図である。
【0082】
図7(a),(b)を参照すると、この第1の実施例の面発光型半導体レーザ素子は、2インチの大きさの面方位(100)のn−GaAs基板301上に,それぞれの媒質内における発振波長の1/4倍の厚さでn−AlxGa1-xAs(x=0.9)とn−GaAsを交互に35周期積層した周期構造からなるn−半導体分布ブラッグ反射鏡302(下部半導体分布ブラッグ反射鏡:単に下部反射鏡ともいう)が形成されている。そして、下部反射鏡302の上に、アンドープ下部GaAsスペーサ層310,3層のGaxIn1-xyAs1-y(x、y)井戸層306aとGaAsバリア層306bとからなる多重量子井戸活性層306,アンドープ上部GaAsスペーサ層311が形成されている。
【0083】
そして、アンドープ上部GaAsスペーサ層311の上には、p−半導体分布ブラッグ反射鏡309(上部半導体分布ブラッグ反射鏡:単に上部反射鏡ともいう)が形成されている。上部反射鏡309は、被選択酸化層となるAlAsをAlGaAsで挟んだ3λ/4厚さの低屈折率層340(λ/4−15nmのCドープp−AlxGa1-xAs(x=0.9)、Cドープp−AlAs被選択酸化層30nm、2λ/4−15nmのCドープのp−AlxGa1-xAs(x=0.9))と、厚さλ/4のGaAs(1周期)、及びCドープのp−AlxGa1-xAs(x=0.9)とp−GaAsをそれぞれの媒質内における発振波長の1/4倍の厚さで交互に積層した周期構造(例えば、25周期)とにより構成されている。
【0084】
なお、図7(a)において、符号312はp側電極、符号313はn側電極、符号314は絶縁膜(ポリイミド)である。
【0085】
また、上部反射鏡309の最上部のGaAs層309aは、電極312とコンタクトを取るコンタクト層を兼ねている。また、活性層306内の井戸層306aのIn組成xは37%,窒素組成は0.5%とした。また、井戸層306aの厚さは7nmとした。井戸層306aは、GaAs基板301に対して約2.5%の圧縮歪(高歪)を有していた。
【0086】
MOCVD法によるGaInNAs活性層306の原料には、TMG(トリメチルガリウム),TMI(トリメチルインジウム),AsH3(アルシン)を用い、窒素の原料には、DMHy(ジメチルヒドラジン)を用いた。また、キャリアガスにはH2を用いた。DMHyは低温で分解するので、600℃以下のような低温成長に適しており、特に低温成長の必要な歪みの大きい量子井戸層を成長する場合に、好ましい原料である。この第1の実施例のGaInNAs面発光型半導体レーザ素子の活性層306のように歪が大きい場合は、非平衡となる低温成長が好ましい。この第1の実施例では、GaInNAs層は540℃で成長させた。
【0087】
また、この第1の実施例では、活性層306への酸素の取り込みを抑え発光効率を低下させないようにするため、図7(a)に破線で示すところで、すなわち、下部GaAsスペーサ層310の成長途中で、成長中断し、被成長基板のみを別室に移動させてから、HClガスを用いて反応室(成長室)内のAl系残留物を除外した。HClガスを供給すると、HClガスは、反応室(成長室)側壁,加熱帯,基板を保持する治具等に残留しているAl系残留物と反応してエッチング除去することができるので、活性層306への酸素の取り込みを抑えることができた。この工程は、Alを含んだ半導体層(図7(a),(b)の例では、下部反射鏡302)の成長後、窒素を含んだ活性層306の成長の前までに行えば良い。
【0088】
図7(a),(b)の面発光型半導体レーザ素子の作製では、基板301上に、下部反射鏡302,下部スペーサ層310,活性層306,上部スペーサ層311,上部反射鏡309を順次に形成した後、所定の大きさのメサを少なくともp−AlAs被選択酸化層の側面を露出させて形成し、側面の現れたAlAsを水蒸気で側面から酸化してAlxy電流狭さく部を形成した。そして次にポリイミド314でエッチング部を埋め込んで平坦化し、pコンタクト部と光出射部のある上部反射鏡309上のポリイミドを除去し、pコンタクト部上の光出射部以外にp側電極312を形成し、また、基板301の裏面にn側電極313を形成した。
【0089】
作製した面発光型半導体レーザ素子の発振波長は約1.3μmであった。また、この第1の実施例では、GaInNAsを活性層306に用いたので、GaAs基板301上に長波長帯の面発光型半導体レーザ素子を形成できた。また、第1の実施例では、装置内に残留したAlを含んだ化合物が、窒素を含む活性層の成長時に酸素とともに膜中に取りこまれないように、装置内に残留したAlを含んだ化合物を塩素系化合物ガスを用いて除外したので、活性層に酸素がAlとともに混入することを抑えることができた。これにより、発光効率が高く低しきい値で発振するGaInNAs面発光型半導体レーザ素子を量産に有利なMOCVD法で製造できた。
【0090】
また、AlとAsを主成分とした被選択酸化層の選択酸化により電流狭さくを行ったので、しきい値電流は低かった。被選択酸化層を選択酸化したAl酸化膜からなる電流狭さく層を用いた電流狭さく構造によると、電流狭さく層を活性層に近づけて形成することで、電流の広がりが抑えられ、大気に触れない微小領域に効率良くキャリアを閉じ込めることができる。さらに酸化してAl酸化膜となることで屈折率が小さくなり凸レンズの効果でキャリアの閉じ込められた微小領域に効率良く光を閉じ込めることができ、極めて効率が良くなり、しきい値電流は低減される。また、容易に電流狭さく構造を形成できることから製造コストを低減できる。
【0091】
従来では、GaInNAs等の窒素と他のV族を含んだ半導体層の作製には、MBE法が主に用いられていたが、原理的に高真空中での成長なので原料供給量を大きくできない。原料供給量を大きくすると、排気系に負担がかかるというデメリットがある。すなわち、高真空排気系の排気ポンプを必要とするが、MBEチャンバー内の残留原料等を除去するなどのために排気系に負担がかかり故障しやすいことからスループットは悪い。
【0092】
具体的に、面発光型半導体レーザ素子は、レーザ光を発生する少なくとも1層の活性層を含んだ活性領域を半導体多層膜反射鏡で挟んで構成されている。端面発光型レーザの結晶成長層の厚さが3μm程度であるのに対して、例えば1.3μm波長帯面発光型半導体レーザ素子では10μmを超える厚さが必要になるが、MBE法では高真空を必要とすることから原料供給量を高くすることができず、成長速度は1μm/h程度であり10μmの厚さを成長するには原料供給量を変えるための成長中断時間を設けないとしても最低10時間かかる。
【0093】
活性領域の厚さは全体に比べて通常ごくわずかであり(10%以下)、ほとんどが多層膜反射鏡を構成する層である。半導体多層膜反射鏡はそれぞれの媒質内における発振波長の1/4倍の厚さ(λ/4の厚さ)で低屈折率層と高屈折率層を交互に積層して(例えば20〜40ペア)形成されている。GaAs基板上の面発光型半導体レーザ素子では、AlGaAs系材料を用い、Al組成を変えて低屈折率層(Al組成大)と高屈折率層(Al組成小)としている。しかし実際には、特にp側は各層のヘテロ障壁により抵抗が大きくなるので、低屈折率層と高屈折率層との間に、Al組成が両者の間となる中間層を挿入して、多層膜反射鏡の抵抗を低減している。このように、面発光型半導体レーザ素子は、100層を超える組成の異なる半導体層を成長しなければならない他に、多層膜反射鏡の低屈折率層と高屈折率層との間にも中間層を設けるなど、瞬時に原料供給量を制御する必要がある素子である。
【0094】
しかし、MBE法では、原料セルの温度を変えて原料供給量を制御しており臨機応変に組成をコントロールすることができない。よって、MBE法により成長した半導体多層膜反射鏡は、抵抗を低くするのは困難であり、動作電圧が高い。
【0095】
これに対し、MOCVD法は、原料ガス流量を制御するだけで良く、瞬時に組成をコントロールできるとともに、MBE法のような高真空を必要とせず、また成長速度を例えば3μm/h以上と高くでき、容易にスループットを上げられることから、極めて量産に適した成長方法である。
【0096】
このように、第1の実施例によれば、低消費電力で低コストの1.3μm帯の面発光型半導体レーザ素子を実現できる。
【0097】
(第2の実施例)
図8(a),(b)は本発明の第2の実施例のGaInNAs面発光型半導体レーザ素子の構成例を示す図である。なお、図8(b)は図8(a)の活性領域の拡大図である。また、図8(a),(b)において、図7(a),(b)と同様の箇所には同じ符号を付している。
【0098】
この第2の実施例が前述の第1の実施例と違うところは、成長室内に残留したAl原料、またはAl反応物、または、Al化合物、または、Alを除去する工程を下部反射鏡302の領域で行っていることである。下部反射鏡302を構成する低屈折率層は、ほとんどAlGaAsで構成されているが(具体的に、下部反射鏡302は、そのほとんどがAl0.9Ga0.1As層とGaAs層とが交互に積層されて構成されているが)、最も活性層306側の一層302aをGaxIn1-xyAs1-y(例えば、x=0.5,y=1)とし、その下部の高屈折率層であるGaAs層の途中で成長中断し、被成長基板のみを別室に移動させてからHClガスを反応室(成長室)に供給して、反応室内のAl系残留物を除外した。
【0099】
作製した面発光型半導体レーザ素子の発振波長は約1.3μmであった。また、GaInNAsを活性層に用いたので、GaAs基板上に長波長帯の面発光型半導体レーザ素子を形成できた。
【0100】
また、装置内に残留したAlを含んだ化合物が、窒素を含む活性層成長時に、酸素とともに膜中に取りこまれないように、Alを含んだ半導体層を成長した後、窒素を含んだ活性層を成長する前に、エッチングガスであるHClを供給したので、反応室(成長室)内に残留したAlを含んだ化合物は、活性層を成長する前に除外され、活性層に酸素がAlとともに混入することを抑えることができた。ただし、成長中断した界面には、成長中断による酸化膜が形成され、欠陥が発生する可能性がある。これにより、非発光再結合センターが形成される可能性がある。
【0101】
しかしながら、第2の実施例では、成長中断した界面とGaInNAs活性層306との間にワイドバンドギャップであるGaInPAs層302aが挿入されているので、確実に成長中断界面にキャリアが注入されるのを抑制できて、成長中断界面の非発光再結合センターによる発光効率低下が防止できる。なお、第2の実施例では、GaInPAs層は格子整合組成としたが、活性層306がこの第2の実施例のように高圧縮歪組成の場合は、GaInPAs層302aを引っ張り歪組成とすると、活性層306の歪を補償する効果があり、活性層306の格子緩和を抑制できるので好ましい。
【0102】
これにより、発光効率が高く、低しきい値で発振するGaInNAs面発光型半導体レーザ素子を、量産に有利なMOCVD法で製造できた。
【0103】
(第3の実施例)
図9(a),(b)は本発明の第3の実施例のGaInNAs面発光型半導体レーザ素子の構成例を示す図である。なお、図9(b)は図9(a)の活性領域の拡大図である。また、図9(a),(b)において、図7(a),(b),図8(a),(b)と同様の箇所には同じ符号を付している。
【0104】
この第3の実施例が前述の第2の実施例と違うところは、この第3の実施例では、成長室内に残留したAl原料、または、Al反応物、または、Al化合物、または、Alを除去する工程が、下部反射鏡302の低屈折率層を構成しているGaxIn1-xyAs1-y(例えば、x=0.5,y=1)層302a中となっていて、GaInPAs層302aの成長途中で成長を中断して、被成長基板のみを別室に移動させてからHClガスを反応室(成長室)に供給してAl系残留物を除外したことである。
【0105】
作製した面発光型半導体レーザ素子の発振波長は約1.3μmであった。また、GaInNAsを活性層に用いたので、GaAs基板上に長波長帯の面発光型半導体レーザ素子を形成できた。
【0106】
また、装置内に残留したAlを含んだ化合物が、窒素を含む活性層成長時に、酸素とともに膜中に取りこまれないように、エッチングガスであるHClを供給して、装置内に残留したAlを含んだ化合物を除去した。これにより、活性層に酸素がAlとともに混入することを抑えることができた。
【0107】
さらに、この第3の実施例では、成長中断界面とGaInNAs活性層との間にワイドバンドギャップであるGaInPAs層302aがあるので、非発光再結合センターによる発光効率低下が防止できる。
【0108】
これにより、発光効率が高く、低しきい値で発振するGaInNAs面発光型半導体レーザ素子を、量産に有利なMOCVD法で製造できた。
【0109】
(第4の実施例)
図10(a),(b)は本発明の第4の実施例のGaInNAs面発光型半導体レーザ素子の構成例を示す図である。なお、図10(b)は図10(a)の活性領域の拡大図である。また、図10(a),(b)において、図7(a),(b),図8(a),(b),図9(a),(b)と同様の箇所には同じ符号を付している。
【0110】
この第4の実施例が前述の第1の実施例と違うところは、この第4の実施例では、成長室内に残留したAl原料、または、Al反応物、または、Al化合物、または、Alを除去する工程が共振器部分に形成したGaPAs層320中となっていて、GaPAs層320の成長途中で成長を中断して、被成長基板のみを別室に移動させてからHClガスを反応室(成長室)に供給してAl系残留物を除外したことである。
【0111】
具体的に、この第4の実施例では、下部反射鏡302の最も上部のAlGaAs低屈折率層302aの上部に、GaPAs層320を形成し、GaPAs層320の成長途中でAl系残留物を除外した。なお、AlGaAs低屈折率層302aとGaPAs層320との間にGaAs層を形成して、その途中でAl系残留物を除外しても良い。
【0112】
作製した面発光型半導体レーザ素子の発振波長は約1.3μmであった。また、GaInNAsを活性層に用いたので、GaAs基板上に長波長帯の面発光型半導体レーザ素子を形成できた。
【0113】
また、装置内に残留したAlを含んだ化合物が、窒素を含む活性層成長時に、酸素とともに膜中に取りこまれないように、Alを含んだ半導体層と窒素を含んだ活性層との間でエッチングガスであるHClを供給したので、反応室(成長室)内に残留したAlを含んだ化合物は、活性層を成長する前に除外され、活性層に酸素がAlとともに混入することを抑えることができた。ただし、成長中断した界面には、成長中断による酸化膜が形成され、欠陥が発生する可能性がある。これにより、非発光再結合センターが形成される可能性がある。
【0114】
しかしながら、第4の実施例では、成長中断した界面とGaInNAs活性層306との間にGaAsスペーサ層よりワイドバンドギャップであるGaPAs層320が挿入されているので、確実に成長中断界面にキャリアが注入されるのを抑制できて、成長中断界面の非発光再結合センターによる発光効率低下が防止できる。なお、GaPAs層320はGaAs基板301に対して引張り歪を有している。活性層306がこの第4の実施例のように高圧縮歪組成の場合は、GaPAs層320が引っ張り歪を有していると、活性層306の歪を補償する効果があり、活性層306の格子緩和を抑制できるので好ましい。なお、この第4の実施例では、GaPAs層320を設けたが、これのかわりに、GaInP層,GaInPAs層を設けても良い。
【0115】
これにより、発光効率が高く、低しきい値で発振するGaInNAs面発光型半導体レーザ素子を、量産に有利なMOCVD法で製造できた。
【0116】
(第5の実施例)
図11は本発明の第5の実施例を示す図であり、図11には、第2の実施例の面発光型半導体レーザ素子とファイバーとを組み合わせた光送信モジュールの概要が示されている。
【0117】
この第5の実施例の光送信モジュールでは、1.3μm帯のGaInNAs面発光型半導体レーザ素子からのレーザ光が石英系光ファイバーに入力され、伝送される。この場合、発振波長の異なる複数の面発光型半導体レーザ素子を1次元または2次元にアレイ状に配置して、波長多重送信することにより伝送速度を増大することが可能となる。また、面発光型半導体レーザ素子を1次元または2次元にアレイ状に配置し、それぞれに対応する複数の光ファイバーからなる光ファイバー束とを結合させて伝送速度を増大することもできる。
【0118】
さらに、本発明による面発光型半導体レーザ素子を光通信システムに用いると、低コストで信頼性が高い光送信モジュールを実現できる他、これを用いた低コストの高信頼光通信システムを実現できる。また、GaInNAsを用いた面発光型半導体レーザ素子は温度特性が良いこと、及び低しきい値であることにより、発熱が少なく高温まで冷却なしで使えるシステムを実現できる。
【0119】
(第6の実施例)
図12は本発明の第6の実施例を示す図であり、図12には、第3の実施例の面発光型半導体レーザ素子と、受信用フォトダイオードと、光ファイバーとを組み合わせた光送受信モジュールの概要が示されている。
【0120】
本発明による面発光型半導体レーザ素子を光通信システムに用いる場合、面発光型半導体レーザ素子は低コストであるので、図12に示すように送信用の面発光型半導体レーザ素子(1.3μm帯GaInNAs面発光型半導体レーザ素子)と、受信用フォトダイオードと、光ファイバーとを組み合わせた光送受信モジュールを用いた低コストで高信頼性の光通信システムを実現できる。また、本発明に係るGaInNAsを用いた面発光型半導体レーザ素子の場合,温度特性が良いこと、動作電圧が低いこと、及び、低しきい値であることにより、発熱が少なく、高温まで冷却なしで使えるより低コストのシステムを実現できる。
【0121】
さらに、1.3μm等の長波長帯で低損失となるフッ素添加POF(プラスチックファイバ)とGaInNAsを活性層に用いた面発光型レーザとを組み合わせると、ファイバが低コストであること、ファイバの径が大きくてファイバとのカップリングが容易で実装コストを低減できることから、極めて低コストのモジュールを実現できる。
【0122】
本発明に係る面発光型半導体レーザ素子を用いた光通信システムとしては光ファイバーを用いた長距離通信に用いることができるのみならず、LAN(Local Area Network)などのコンピュータ等の機器間伝送、さらにはボード間のデータ伝送、ボード内のLSI間、LSI内の素子間等、光インターコネクションとして短距離通信に用いることができる。
【0123】
近年LSI等の処理性能は向上しているが、これらを接続する部分の伝送速度が今後ボトルネックとなる。システム内の信号接続を従来の電気接続から光インターコネクトに変える場合、例えばコンピュータシステムのボード間、ボード内のLSI間、LSI内の素子間等を本発明に係る光送信モジュールや光送受信モジュールを用いて接続すると、超高速コンピュータシステムが可能となる。
【0124】
また、複数のコンピュータシステム等を本発明に係る光送信モジュールや光送受信モジュールを用いて接続した場合、超高速ネットワークシステムが構築できる。特に面発光型半導体レーザ素子は、端面発光型レーザに比べて桁違いに低消費電力化でき2次元アレイ化が容易なので、並列伝送型の光通信システムに適している。
【0125】
以上説明したように、窒素を含んだ半導体層であるGaInNAs系材料によると、GaAs基板を用いた0.85μm帯面発光型半導体レーザ素子などで実績のあるAl(Ga)As/(Al)GaAs系半導体多層膜分布ブラッグ反射鏡や、AlAsの選択酸化による電流狭さく構造が適用でき、本発明による製造方法で面発光型半導体レーザ素子を製造することにより、GaInNAs活性層の結晶品質の向上や、多層膜反射鏡の低抵抗化、面発光型半導体レーザ素子としての多層膜構造体の結晶品質や制御性の向上ができるので、実用レベルの高性能の1.3μm帯等の長波長帯面発光型半導体レーザ素子を実現でき、さらにこれらの素子を用いると、冷却素子不要で低コストの光ファイバー通信システム、光インターコネクションシステムなどの光通信システムを実現することができる。
【0126】
【発明の効果】
以上に説明したように、請求項1乃至請求項3記載の発明によれば、基板と窒素を含む活性層との間にAlを含む半導体層を設ける半導体発光素子の製造方法において、
前記窒素を含む活性層は、GaInNAs系材料、GaNAs、InNAs、GaAsNSb、GaInNAsSbのいずれかからなる半導体層で構成され、
Alを含む半導体層を成長した後であって、前記窒素を含む活性層の成長を開始させる前に、エッチングガスとして塩素系化合物ガスを成長室内に供給し、成長室内に残留したAl原料、または、Al反応物、または、Al化合物、または、Alを除去する工程を設けたので、活性層への酸素の取り込みを抑えることができ、発光効率が高い半導体発光素子を得ることができる。
【0127】
特に、請求項2記載の発明によれば、請求項1記載の半導体発光素子の製造方法において、前記成長室内に残留したAl原料、または、Al反応物、または、Al化合物、または、Alを除去する工程は、半導体発光素子の成長を中断して、半導体発光素子の被成長基板を成長室から別室に移動させてから、または、一度外部に取り出してから行うので、被成長基板はエッチング等のダメージを受けることなく活性層への酸素の取り込みを抑えることができ、発光効率が高い半導体発光素子を得ることができる。
【0128】
また、請求項3記載の発明によれば、請求項1記載の半導体発光素子の製造方法において、前記成長室内に残留したAl原料、または、Al反応物、または、Al化合物、または、Alをエッチングガスとしての塩素系化合物ガスで除去する工程を行った後であって、窒素を含む活性層を成長させる前に、GaInP層、または、GaPAs層、または、GaInPAs層を形成するので、成長中断界面への注入キャリアはほとんど無くなり、発光効率の低下を防止できる。すなわち、成長中断時の表面材料のバンドギャップエネルギーよりも高いバンドギャップエネルギーを有する材料を窒素を含む活性層との間に成長すると、成長中断界面への注入キャリアはほとんど無くなるので、発光効率の低下を防止できる。また、半導体レーザの場合、しきい値電流を充分低いものとすることができる。
【0130】
また、請求項4乃至請求項6記載の発明によれば、半導体基板上に、レーザ光を発生する少なくとも1層の窒素を含んだ活性層を含む活性領域と、レーザ光を得るために活性層の上部および下部に設けられた上部反射鏡および下部反射鏡と、上部反射鏡と下部反射鏡とに挟まれた共振器構造とを有する面発光型半導体レーザ素子の製造方法において、
前記活性層は、GaInNAs系材料、GaNAs、InNAs、GaAsNSb、GaInNAsSbのいずれかからなる半導体層で構成され、
前記下部反射鏡は、屈折率が周期的に変化し入射光を光波干渉によって反射する半導体分布ブラッグ反射鏡を有し、該半導体分布ブラッグ反射鏡の屈折率が小さい層はAlxGa1-xAs(0<x≦1)からなり、半導体分布ブラッグ反射鏡の屈折率が大きい層はAlyGa1-yAs(0≦y<x≦1)からなり、前記Alを含んだ下部反射鏡を成長した後、前記窒素を含んだ活性層を成長する前に、エッチングガスとして塩素系化合物ガスを成長室内に供給し、成長室内に残留したAl原料、または、Al反応物、または、Al化合物、または、Alを除去するので、活性層への酸素の取りこまれを抑えることができ、低抵抗で駆動電圧が低く、発光効率が高く、低しきい値電流動作し、温度特性が良い面発光型半導体レーザ素子を容易に低コストで実現できる。
【0131】
また、請求項5,請求項6記載の発明によれば、成長室内に残留したAl原料、または、Al反応物、または、Al化合物、または、Alをエッチングガスで除去する工程を行った後、活性層を成長する前に、GaInP層、または、GaPAs層、または、GaInPAs層を成長するので、発光効率低下を抑制でき、発光効率が高くしきい値電流の小さい特性を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本願の発明者が実験的に求めたしきい値電流密度の窒素組成依存性を示す図である。
【図2】一般的なMOCVD装置の概略を示す図である。
【図3】MOCVD装置で作製した窒素を含んだ半導体層であるGaInNAs量子井戸層とGaAsバリア層とからなるGaInNAs/GaAs 2重量子井戸構造からなる活性層からの室温フォトルミネッセンススペクトルを示す図である。
【図4】試料の基本構造を示す図である。
【図5】図4に示した半導体発光素子の一例として、クラッド層をAlGaAsとし、中間層をGaAsとし、活性層をGaInNAs/GaAs2重量子井戸構造として構成した素子を1台のエピタキシャル成長装置(MOCVD)を用いて形成したときの、窒素(N)濃度と酸素(O)濃度の深さ方向分布を示す図である。
【図6】図5と同じ試料でのAl濃度の深さ方向分布を示す図である。
【図7】本発明の第1の実施例のGaInNAs面発光型半導体レーザ素子の構成例を示す図である。
【図8】本発明の第2の実施例のGaInNAs面発光型半導体レーザ素子の構成例を示す図である。
【図9】本発明の第3の実施例のGaInNAs面発光型半導体レーザ素子の構成例を示す図である。
【図10】本発明の第4の実施例のGaInNAs面発光型半導体レーザ素子の構成例を示す図である。
【図11】本発明の第5の実施例を示す図である。
【図12】本発明の第6の実施例を示す図である。
【符号の説明】
301 n−GaAs基板
302 下部反射鏡
310 下部スペーサ層
306 活性層
311 上部スペーサ層
312 p側電極
313 n側電極
314 ポリイミド
302a GaInPAs層
320 GaPAs層

Claims (6)

  1. 基板と窒素を含む活性層との間にAlを含む半導体層を設ける半導体発光素子の製造方法において、
    前記窒素を含む活性層は、GaInNAs系材料、GaNAs、InNAs、GaAsNSb、GaInNAsSbのいずれかからなる半導体層で構成され、
    Alを含む半導体層を成長した後であって、前記窒素を含む活性層の成長を開始させる前に、エッチングガスとして塩素系化合物ガスを成長室内に供給し、成長室内に残留したAl原料、または、Al反応物、または、Al化合物、または、Alを除去する工程を設けたことを特徴とする半導体発光素子の製造方法。
  2. 請求項1記載の半導体発光素子の製造方法において、前記成長室内に残留したAl原料、または、Al反応物、または、Al化合物、または、Alを除去する工程は、半導体発光素子の成長を中断して、半導体発光素子の被成長基板を成長室から別室に移動させてから、または、一度外部に取り出してから行うことを特徴とする半導体発光素子の製造方法。
  3. 請求項1記載の半導体発光素子の製造方法において、前記成長室内に残留したAl原料、または、Al反応物、または、Al化合物、または、Alをエッチングガスとしての塩素系化合物ガスで除去する工程を行った後であって、窒素を含む活性層を成長させる前に、GaInP層、または、GaPAs層、または、GaInPAs層を形成することを特徴とする半導体発光素子の製造方法。
  4. 半導体基板上に、レーザ光を発生する少なくとも1層の窒素を含んだ活性層を含む活性領域と、レーザ光を得るために活性層の上部および下部に設けられた上部反射鏡および下部反射鏡と、上部反射鏡と下部反射鏡とに挟まれた共振器構造とを有する面発光型半導体レーザ素子の製造方法において、
    前記活性層は、GaInNAs系材料、GaNAs、InNAs、GaAsNSb、GaInNAsSbのいずれかからなる半導体層で構成され、
    前記下部反射鏡は、屈折率が周期的に変化し入射光を光波干渉によって反射する半導体分布ブラッグ反射鏡を有し、該半導体分布ブラッグ反射鏡の屈折率が小さい層はAlxGa1-xAs(0<x≦1)からなり、半導体分布ブラッグ反射鏡の屈折率が大きい層はAlyGa1-yAs(0≦y<x≦1)からなり、前記Alを含んだ下部反射鏡を成長した後、前記窒素を含んだ活性層を成長する前に、エッチングガスとして塩素系化合物ガスを成長室内に供給し、成長室内に残留したAl原料、または、Al反応物、または、Al化合物、または、Alを除去することを特徴とする面発光型半導体レーザ素子の製造方法。
  5. 請求項4記載の面発光型半導体レーザ素子の製造方法において、前記成長室内に残留したAl原料、または、Al反応物、または、Al化合物、または、Alをエッチングガスとしての塩素系化合物ガスで除去する工程を行った後であって、窒素を含む活性層を成長する前に、GaInP層、または、GaPAs層、または、GaInPAs層を設け、また、前記エッチングガスで除去する工程は、半導体分布ブラッグ反射鏡を成長しているときに行なうことを特徴とする面発光型半導体レーザ素子の製造方法。
  6. 請求項4記載の面発光型半導体レーザ素子の製造方法において、前記成長室内に残留したAl原料、または、Al反応物、または、Al化合物、または、Alをエッチングガスとしての塩素系化合物ガスで除去する工程を行った後であって、窒素を含む活性層を成長する前に、GaInP層、または、GaPAs層、または、GaInPAs層を設け、また、前記エッチングガスで除去する工程は、共振器構造を成長しているときに行なうことを特徴とする面発光型半導体レーザ素子の製造方法。
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