JP4132354B2 - 新規のイオウ含有原子団導入多孔質体、多孔質体の総表面へのイオウ含有原子団導入方法、及び電池用セパレータ - Google Patents

新規のイオウ含有原子団導入多孔質体、多孔質体の総表面へのイオウ含有原子団導入方法、及び電池用セパレータ Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規のイオウ含有原子団導入多孔質体、多孔質体の総表面へのイオウ含有原子団導入方法、及び前記のイオウ含有原子団導入多孔質体を利用した電池用セパレータに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、多孔質体の表面へイオウ含有原子団を導入する方法の1つとして、スルホン化処理が知られており、前記スルホン化処理を行う方法としては、例えば、発煙硫酸を用いる方法、あるいは、処理用ガスと希ガスとの混合ガス雰囲気下で大気圧グロー放電によりプラズマ処理を行う方法などが知られていた。これらの方法を用いて、多孔質体の表面をスルホン化[すなわち、被処理面にスルホン酸基(SO3H)を導入]することにより、前記多孔質体に親水性を付与したり、親水性を向上させることができる。得られた処理体におけるスルホン化の程度は、処理表面における、炭素原子(C)の数に対するイオウ原子(S)の数の比(以下、表面S/C比と称する)に相関しており、スルホン化の程度が高いほど、表面S/C比も高い数値を示す。
【0003】
前記の発煙硫酸を用いる方法によると、高い効率でスルホン酸基を導入することができ、高い表面S/C比を示す処理体を得ることができる。しかし、この方法によりスルホン化された処理体では、カルボキシル基などが導入されたことを示す指標である、処理表面上での炭素原子(C)の数に対する酸素原子(O)の数の比(以下、表面O/C比と称する)が、低くなる傾向がある。表面O/C比は濡れ性と相関があり、表面O/C比が低いものは、濡れ性が劣っている。例えば、この方法によりスルホン化された処理体を電池用セパレータとして使用する場合には、濡れ性を向上させるために、更に別の処理(例えば、界面活性剤の付与)を行う必要があった。
また、発煙硫酸を用いる方法では、未反応の発煙硫酸を洗浄するための大掛かりな装置が必要であり、しかも、高濃度の硫酸を含む廃液を大量に処理するという問題があった。更には、多孔質体の強度の劣化という問題もあった。
【0004】
一方、処理用ガスと希ガスとの混合ガス雰囲気下で大気圧グロー放電によりプラズマ処理を行う方法は、例えば、特開平9−85026号公報に開示されている。前記公報には、対向する一対の電極の少なくとも一方の対向面に固体誘電体を設置し、これらの電極間に3次元網目状多孔体を配置し、処理用ガスと希ガスとの混合ガスの大気圧近傍の圧力下で前記多孔体に放電プラズマ処理を行うことを特徴とする処理方法が開示されている。この方法では、混合ガス中の処理用ガスの濃度が、希ガスの10容量%を越える(すなわち、混合ガス中の処理用ガスの濃度が9.09容量%を越える)と、電圧を印加しても均一な放電プラズマが発生し難くなるので、混合ガス中の処理用ガスの濃度は0.01〜9.09容量%であることが好ましく、二酸化イオウ(処理用ガス)0.5容量%を含む二酸化イオウ/ヘリウム混合ガス中で放電プラズマ処理を実際に行ったことが、前記公報に開示されている。なお、前記公報には、処理用ガスとして、二酸化イオウ、三酸化イオウ、酸素、又は窒素などが例示されている。
【0005】
前記公報における開示から明らかなように、大気圧グロー放電による方法では、均一な放電プラズマを発生させるために、90容量%を越える希ガスの存在下で電圧を印加する必要がある。そのため、混合気体中の処理用ガスの濃度を限界値を越えて高くすることができず、高い表面S/C比と高い表面O/C比とを同時に有するスルホン化体は従来全く知られていなかった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の課題は、高い表面S/C比と高い表面O/C比とを同時に有する新規のイオウ含有原子団導入多孔質体を提供することにある。また、本発明の別の課題は、大掛かりな装置や、高濃度の硫酸を含む廃液の大量処理が不要で、大気圧下の放電により高い効率で多孔質体の総表面へイオウ含有原子団を導入することができる手段を提供することにある。更に、本発明の別の課題は、高い表面S/C比と高い表面O/C比とを同時に有する電池用セパレータを提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
前記の課題は、本発明による、
有機材料からなる多孔質体の総表面の少なくとも一部にイオウ含有原子団を導入したイオウ含有原子団導入多孔質体であって、
イオウ含有原子団を導入された表面においてX線光電子分光計により測定された炭素原子(C)の数に対するイオウ原子(S)の数の比(S/C)が7×10−4以上であり、
イオウ含有原子団を導入された表面においてX線光電子分光計により測定された炭素原子(C)の数に対する酸素原子(O)の数の比(O/C)が0.2以上であり、
イオウ含有原子団導入多孔質体全体における、炭素原子(C)の数に対するイオウ原子(S)の数の比(S/C)が1×10−3以上である
ことを特徴とする、イオウ含有原子団導入多孔質体によって達成することができる。
【0008】
また、本発明は、有機材料からなる不織布の総表面の少なくとも一部にイオウ含有原子団を導入したイオウ含有原子団導入不織布であって、
イオウ含有原子団を導入された表面においてX線光電子分光計により測定された炭素原子(C)の数に対するイオウ原子(S)の数の比(S/C)が7×10−4以上であり、
イオウ含有原子団を導入された表面においてX線光電子分光計により測定された炭素原子(C)の数に対する酸素原子(O)の数の比(O/C)が0.2以上であり、
イオウ含有原子団導入多孔質体全体における、炭素原子(C)の数に対するイオウ原子(S)の数の比(S/C)が1×10−3以上である
イオウ含有原子団導入不織布からなる電池用セパレータにも関する。
【0009】
更に、本発明は、少なくとも一方の電極の対向表面側に誘電体層を設けて対向して配置した一対の電極の間に、有機材料からなる多孔質体を配置し、表面処理用ガス全体の容量に対して10容積%以上のイオウ含有化合物ガスの存在下で、且つ、大気圧下にて、前記両電極間に電圧を印加して、放電を発生させることを特徴とする、多孔質体の総表面の少なくとも一部へのイオウ含有原子団導入方法にも関する。
【0010】
更にまた、本発明は、少なくとも一方の電極の対向表面側に誘電体層を設けて対向して配置した一対の電極の間に、有機材料からなる多孔質体を配置し、表面処理用ガス全体の容量に対して10容積%以上のイオウ含有化合物ガスの存在下及び酸素ガスの存在下で、且つ、大気圧下にて、前記両電極間に電圧を印加して、放電を発生させることを特徴とする、多孔質体の総表面の少なくとも一部へのイオウ含有原子団導入方法にも関する。
【0011】
更にまた、本発明は、それぞれの対向表面側に誘電体層を設けて対向して配置した一対の電極の間に、前記の一対の電極とはそれぞれ直接に接触しないが前記誘電体層のそれぞれと外側表面が直接に接触するように、有機材料からなる多孔質体を配置し、表面処理用ガス全体の容量に対して10容積%以上のイオウ含有化合物ガスの存在下で、且つ、大気圧下にて、前記両電極間に電圧を印加して、両電極間に挟まれた前記多孔質体の内部空隙で放電を発生させることを特徴とする、多孔質体の総表面の少なくとも一部へのイオウ含有原子団導入方法にも関する。
【0012】
本明細書において、「総表面」とは、処理対象である多孔質体の外側表面と、多孔質体の内側表面との両方を含む概念である。「外側表面」とは、多孔質体に外接する平滑表面を有する仮想立体と接する多孔質体の表面を意味する。また、「内側表面」とは、多孔質体の前記仮想立体の内部に含まれるすべての内部空隙の全表面を意味する。従って、内側表面とは、発泡体型多孔質体においては各気泡(cell)の表面であり、フィルム型多孔質体においては凹部構造(例えば、くぼみ又は溝など)又は貫通孔の表面であり、繊維質型多孔質体においては構成繊維によって形成される内部空間の表面、すなわち、各構成繊維の全表面が含まれる。
【0013】
本明細書において、「イオウ含有原子団」とは、処理対象である多孔質体(以下、被処理体と称することがある)を本発明方法により処理することにより得られる処理体に新たに導入された、イオウ原子を含有する原子団を意味する。前記イオウ含有原子団の存在状態、又は多孔質体との結合状態は、特に限定されるものではなく、イオウ含有原子団には、例えば、多孔質体と化学的及び/又は物理的に結合する原子、官能基、架橋基、又は分子などが含まれる。
処理体(すなわち、イオウ含有原子団導入多孔質体)の表面に導入されたイオウ含有原子団は、X線光電子分光法により決定することができる。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明によるイオウ含有原子団導入多孔質体においては、イオウ含有原子団を導入された表面においてX線光電子分光計により測定された炭素原子(C)の数に対するイオウ原子(S)の数の比(すなわち、表面S/C比)が、7×10-4以上であり、同じくX線光電子分光計により測定された炭素原子(C)の数に対する酸素原子(O)の数の比(すなわち、表面O/C比)が0.2以上である。このように高い表面S/C比と高い表面O/C比とを同時に有するイオウ含有原子団導入多孔質体を得る技術は、従来全く知られておらず、従って、本発明によるイオウ含有原子団導入多孔質体は従来全く知られていない。
【0015】
本発明によるイオウ含有原子団導入多孔質体においては、表面S/C比は、好ましくは6×10-2以上であり、より好ましくは7×10-2以上である。後述する本発明方法を用いると、0.8程度までの表面S/C比を得ることができる。本発明によるイオウ含有原子団導入多孔質体においては、表面O/C比は、好ましくは0.25以上である。なお、発煙硫酸を用いる従来法又はグロー放電を用いる従来法によりスルホン化した場合には、表面O/C比は通常0.2未満である。後述する本発明方法を用いると、3程度までの表面O/C比を得ることができる。
イオウ含有原子団を導入された多孔質体全体におけるS/C比(以下、全体S/C比と称することがある)が1×10-3以上になると、イオウ含有量が多くなるため、例えば、イオン交換能、イオン吸収性、アンモニア吸収性、又は生体適合性等の物性が向上する効果がある。特に全体S/C比が1.5×10-3以上のイオウ含有原子団導入不織布を電池用セパレータとして利用すると、電池の自己放電抑制作用が向上する。また、全体S/C比が2×10-3以上のイオウ含有原子団導入不織布を電池用セパレータとして利用すると、電池の自己放電抑制作用が更に向上する。これに対して、従来法によるグロー放電ではスルホン化体全体のS/C比が1×10-3未満である。
【0016】
本発明によるイオウ含有原子団導入多孔質体が、構成単位中にイオウ原子及び酸素原子を実質的に含有しない有機高分子材料(特に、有機合成高分子材料)から本質的になる多孔質体にイオウ含有原子団を導入したものからなる場合には、前記の全体S/C比は、0.05以下である。
全体S/C比は、例えば、有機元素分析や、酸素燃焼フラスコ法を用いて多孔質体のイオウ含有量を求め、多孔質体の組成と重量から全体S/C比を求めることができる。また、炭素含有量は、有機元素分析によって測定することもできる。
【0017】
また、本発明による好ましいイオウ含有原子団導入多孔質体においては、全体S/C比(B)に対する表面S/C(A)の比(A/B)が15以上、より好ましくは20以上、最も好ましくは25以上である。全体S/C比(B)に対する表面S/C比(A)の比(A/B)が大きいことは、イオウ含有原子団が多孔質体を構成する材料の表面側に局在している傾向が大きいこと、すなわちイオウ含有原子団が多孔質体を構成する材料の深い内部にまで導入されていないことを意味し、従って、イオウ含有原子団導入多孔質体が強度的に優れていることを意味する。これに対して、発煙硫酸を用いる従来法によりスルホン化した場合には、多孔質体を構成する材料の内部に深くイオウ含有原子団が侵入するのでイオウ含有原子団導入多孔質体の強度が低下する。後述する本発明方法を用いると、A/B比が100程度までの処理体を得ることができる。
【0018】
前記の表面S/C比は、X線光電子分光法を用いて、例えば、対象表面における炭素原子のピーク面積と、前記対象表面におけるイオウ原子のピーク面積とをそれぞれ測定し、光イオン化断面積補正を加えることにより、求めることができる。また、前記の表面O/C比も、X線光電子分光法を用いて、対象表面における炭素原子のピーク面積と、前記対象表面における酸素原子のピーク面積とをそれぞれ測定し、光イオン化断面積補正を加えることにより、求めることができる。なお、測定対象の表面に存在し、表面S/C比及び/又は表面O/C比に影響を与える物質(例えば、界面活性剤など)を除去するために、予め測定対象を洗浄してから、前記分析を実施する。
【0019】
本発明によるイオウ含有原子団導入多孔質体は、例えば、親水化処理の検出と、親水化処理が施されていることが明らかになった処理体の処理表面における表面S/C比及び表面O/C比の測定により同定することができる。例えば、親水化処理の検出に、ぬれ指数を用いる場合を以下に示す。
【0020】
(1)或る多孔質体試料を赤外線分析計などの手段を用いて分析し、総表面に属さない部分の構成材料を決定する。総表面に属さない部分としては、試料がフィルム型多孔質体又は発泡型多孔質体である場合には、例えば、充実した緻密(solid)体部分を挙げることができ、試料が繊維質型多孔質体である場合には、例えば、構成繊維の内部部分を挙げることができる。決定した構成材料からなる多孔質体のぬれ指数を、「ポリエチレン及びポリプロピレンフィルムのぬれ試験方法」(JIS K 6768-1977)に従って決定する。複数の構成成分からなる場合には、ぬれ指数の小さい方の構成成分のぬれ指数を決定する。このぬれ指数を有する材料を濡らして着色することのできる指示薬を選択する。
【0021】
(2)前記工程(1)で決定したぬれ指数の指示薬(着色剤含有)の液中に、試料を浸漬した後、引き上げると、試料の表面の状態に応じて、試料の表面の着色状態は、次の状態(a)〜(c)のいずれかに当てはまる:
(a)着色した部分(非処理領域)と着色しない部分とが現われる。着色しない部分は、疎水化処理されていることがわかる。この場合には、この試料には、親水化処理を施していないことがわかる。
(b)試料全体が着色しない。試料の全体が疎水化処理されていることがわかる。この場合には、この試料には、親水化処理を施していないことがわかる。
(c)試料全体が着色する。この試料は、その一部又は全体が親水化処理されている場合と、表面処理を実施していない場合とが考えられ、この場合には、続いて、次の工程(3)を実施する。
【0022】
(3)前記工程(2)で使用した指示薬よりも高いぬれ指数の指示薬の液中に、試料を浸漬した後、引き上げる。なお、指示薬としては、はじめは前記工程(2)で使用した指示薬よりもわずかに高いぬれ指数の指示薬を使用し、順次、更に高いぬれ指数の指示薬を使用し、前記操作を繰り返すことが好ましい。試料の表面の状態は、次の状態(d)〜(f)のいずれかに当てはまる:
(d)前記工程(2)で使用した指示薬よりもわずかに高いぬれ指数の指示薬を使用した場合に、試料全体が着色しない。この試料には、表面処理を全く施していないことがわかる。
(e)前記工程(2)で使用した指示薬よりもわずかに高いぬれ指数の指示薬を使用した場合に、着色しない部分(非処理領域)と着色した部分とが現われる。着色した部分は、親水化処理されていることがわかる。この場合には、続いて、後述する工程(4)を実施する。
(f)前記工程(2)で使用した指示薬よりも高いぬれ指数の指示薬を順次、使用した場合に、或るぬれ指数までは試料全体が着色し、そのぬれ指数よりもわずかに高いぬれ指数の指示薬を使用した場合に、試料全体が着色しない。この試料は全体が親水化処理されていることがわかる。この場合には、続いて、次の工程(4)を実施する。
以上の工程(1)〜工程(3)により、親水化処理の有無を検出することができる。親水化処理が行われている場合には、その処理体が本発明のイオウ含有原子団導入多孔質体であるか否かを決定するために、処理体の処理表面における表面S/C比及び表面O/C比の測定を実施する。
【0023】
(4)処理領域の表面S/C比及び表面O/C比を、前記のX線光電子分光法によって求める。表面S/C比が7×10-4以上であり、表面O/C比が0.2以上であれば、その試料は、本発明によるイオウ含有原子団導入多孔質体である。
【0024】
本発明によるイオウ含有原子団導入多孔質体は、本発明者が見出した種々の方法により、多孔質体にイオウ含有原子団を導入することによって製造することができる。
本発明によるイオウ含有原子団導入方法においては、ガス状のイオウ含有化合物の存在下で、放電を実施する。前記のイオウ含有化合物としては、例えば、酸化イオウ又は硫化水素(H2S)を挙げることができる。前記酸化イオウとしては、例えば、一酸化イオウ(SO)、二酸化イオウ(SO2)、三酸化イオウ(SO3)、三酸化二イオウ(S23)、又は七酸化イオウ(S27)を挙げることができる。本発明方法においては、前記の各化合物を単独で、あるいは、複数を組合わせて使用することができる。安定に放電を発生させることができる点で、式SOx(式中、xは1〜3の整数である)で表わされる酸化イオウを用いることが好ましく、SO2を用いることがより好ましい。
【0025】
本発明によるイオウ含有原子団導入方法では、希ガスの存在下又は不在下で実施することができる。すなわち、従来の大気圧グロー放電において安定に放電を発生させるために必要であった希ガスを必ずしも必要とせず、本発明方法では、希ガスの不在下でも、安定した放電を発生させることが可能である。なお、本明細書において、「希ガス」とは、周期表の0族元素を意味し、具体的には、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、及びラドンの6元素を意味する。
本発明によるイオウ含有原子団導入方法は、大気圧下にて、イオウ含有化合物ガスの存在下である限り、開放系、すなわち、一般的には空気の存在下で実施することもできるし、あるいは、閉鎖系、例えば、気密性の容器中で大気圧下にて実施することもできる。
【0026】
本発明による1つのイオウ含有原子団導入方法では、イオウ含有化合物ガスの濃度が、表面処理用ガス全体の容量に対して、10容量%以上の範囲で、より好ましくは20〜90容量%の範囲で、最も好ましくは25〜80容量%の範囲で放電を実施する。前記イオウ含有化合物ガスの濃度が、表面処理用ガス全体の容量に対して、10容量%未満であると、導入効率が低かったり、あるいは、期待した導入効果が得られないことがある。
【0027】
本発明による別のイオウ含有原子団導入方法では、イオウ含有原子団導入用ガスとしての前記イオウ含有化合物ガスに加え、希釈ガスとして、その他の気体、例えば、空気、窒素、酸素、若しくは希ガス、又はそれらの組合せ(例えば、希ガスと酸素との混合ガス)の共存下で、好ましくは酸素の共存下で、より好ましくは実質的にイオウ含有化合物ガスと酸素のみの組合せの雰囲気下で放電を実施することができる。本明細書において、イオウ含有原子団導入用ガスであるイオウ含有化合物ガスと、希釈ガスとの混合ガスを、「表面処理用ガス」と称することがある。前記希釈ガスの濃度は、イオウ含有化合物ガスの濃度が適当な範囲内にある限り、特に限定されるものではなく、適宜決定することができる。イオウ含有化合物ガスと酸素との共存下で放電を実施する場合にも、イオウ含有化合物ガスの濃度は、表面処理用ガス全体の容量に対して、10容量%以上、より好ましくは20〜90容量%、最も好ましくは25〜80容量%である。イオウ含有化合物ガスと酸素のみとの共存下で放電を実施する場合にも、イオウ含有化合物ガスの濃度は、表面処理用ガス全体の容量に対して、10容量%以上、より好ましくは20〜90容量%、最も好ましくは25〜80容量%である。
【0028】
本発明によるイオウ含有原子団導入方法においては、少なくとも一方の電極の対向表面側に誘電体層を設けて対向して配置した一対の電極の間に、多孔質体を配置する。一対の電極の少なくとも一方が誘電体層を担持するので、本発明によるイオウ含有原子団導入方法において用いる電極には、
(I)一対の電極が、対向表面側に誘電体層を設けた電極と、誘電体層を担持していない電極とからなる態様(以下、I型電極対と称する)、及び
(II)一対の電極が、両方とも、対向表面側に誘電体層を設けた電極である態様(以下、II型電極対と称する)
が含まれる。
【0029】
前記の一対の電極間に配置する多孔質体は、電極の電極表面又は誘電体層と接触していることもできるし、あるいは、接触していないこともできる。従って、一対の電極と多孔質体との配置の態様としては、
(1)一対の各電極(又は誘電体層)と多孔質体とを、非接触状態で配置する態様(以下、非接触型配置と称する)、
(2)多孔質体の一方の外側表面が、一対の電極の一方(すなわち、誘電体層を担持していない電極の電極表面、又は誘電体層)と接触し、しかも、多孔質体のもう一方の外側表面が、もう一方の電極(すなわち、誘電体層を担持していない電極の電極面、又は誘電体層)と接触しない状態で、一対の電極と多孔質体とを配置する態様(以下、片面接触型配置と称する)、又は
(3)多孔質体の両方の外側表面が、一対の電極の両方(すなわち、誘電体層を担持していない電極の電極表面、又は誘電体層)と接触する状態で、一対の電極と多孔質体とを配置する態様(以下、両面接触型配置と称する)
を挙げることができる。前記の各電極対(I)及び(II)と前記各配置(1)〜(3)との組合せによる、多孔質体の配置態様を図1に模式的に示す。
【0030】
図1に示すように、例えば、I型電極対−非接触型配置(1−I)では、対向表面側に誘電体層42を設けた電極22と、誘電体層を担持していない電極21とを対向して配置した一対の電極21,22の間に、前記誘電体層42及び前記電極21,22のいずれとも接触しない状態で、多孔質体11を配置する。
II型電極対−非接触型配置(1−II)では、それぞれの対向表面側に誘電体層41,42を設けて対向して配置した一対の電極21,22の間に、前記誘電体層41,42及び前記電極21,22のいずれとも接触しない状態で、多孔質体11を配置する。
【0031】
また、I型電極対−片面接触型配置(2−I)では、対向表面側に誘電体層42を設けた電極22と、誘電体層を担持していない電極21とを対向して配置した一対の電極21,22の間に、多孔質体11を配置する際に、(a)多孔質体11の一方の外側表面が、対向表面側に誘電体層を設けた電極22の前記誘電体層42と接触し(但し、電極22とは接触しない)、しかも、多孔質体のもう一方の外側表面が、誘電体層を担持していない前記電極21と接触しない状態とするか、あるいは、(b)多孔質体11の一方の外側表面が、誘電体層を担持していない前記電極21と接触し、しかも、多孔質体のもう一方の外側表面が、もう一方の前記電極22上の誘電体層42と接触しない(その電極22とも接触しない)状態とする。
【0032】
また、II型電極対−片面接触型配置(2−II)では、それぞれの対向表面側に誘電体層41,42を設けて対向して配置した一対の電極21,22の間に、多孔質体11の一方の外側表面が、前記誘電体層の一方(図1においては誘電体層42)と接触し、しかも、多孔質体のもう一方の外側表面が、もう一方の誘電体層(図1においては誘電体層41)と接触しない(前記の一対の電極21,22とも接触しない)状態で、多孔質体11を配置する。
【0033】
更には、I型電極対−両面接触型配置(3−I)では、対向表面側に誘電体層42を設けた電極22と、誘電体層を担持していない電極21とを対向して配置した一対の電極21,22の間に、多孔質体11の一方の外側表面が、対向表面側に誘電体層を設けた電極22の前記誘電体層42と接触し、しかも、多孔質体のもう一方の外側表面が、誘電体層を担持していない前記電極21と接触する状態で、多孔質体11を配置する。なお、多孔質体11は、誘電体層42を担持する電極22とは接触させないようにする。
II型電極対−両面接触型配置(3−II)では、それぞれの対向表面側に誘電体層41,42を設けて対向して配置した一対の電極21,22の間に、前記誘電体層41,42のそれぞれと多孔質体11の外側表面が直接に接触する状態で、多孔質体11を配置する。なお、多孔質体11は、前記の一対の電極21,22とはそれぞれ直接に接触させないようにする。
本発明によるイオウ含有原子団導入方法においては、均一な放電を発生させることができる点で、II型電極対を用いて、電極、誘電体、及び被処理体を配置することが好ましい。
【0034】
以下、添付図面に沿って、本発明によるイオウ含有原子団導入方法を説明する。
本発明によるイオウ含有原子団導入方法の基本的原理を図2に示す。図2にはII型電極対−両面接触型配置を示すが、特に断らない限り、以下の説明は、これまで説明したその他の態様(例えば、I型若しくはII型電極対−非接触型配置、I型若しくはII型電極対−片面接触型配置、又はI型電極対−両面接触型配置)にもそのまま当てはまる。
【0035】
II型電極対−両面接触型配置では、図2に示すように、平板状電極などからなる一対の電極21,22を対向するように配置する。電極21は、その対向表面側に面接触する誘電体層41を固定して担持し、電極22も、その対向表面側に面接触する誘電体層42を固定して担持する。更に、両電極21,22のいずれとも接触しないが、誘電体層41,誘電体層42のそれぞれと外側表面が直接接触するように、誘電体層41と誘電体層42との間に、多孔質体11を配置する。この際に、電極21と電極22とを適当な圧力で押圧することにより、誘電体層41と多孔質体11、及び多孔質体11と誘電体層42のそれぞれの間に、実質的に空間が形成しないように面接触させる。なお、誘電体層を固定して担持する電極の代わりに、誘電体層を担持していない電極を用いることもできる。この場合には、電極21と電極22とを適当な圧力で押圧することにより、電極21と誘電体層41、誘電体層41と多孔質体11、多孔質体11と誘電体層42、及び誘電体層42と電極22のそれぞれの間に、実質的に空間が形成しないように面接触させる。両電極間にかける押圧の下限は、電極と誘電体層との間、及び誘電体層と多孔質体との間の面接触を保証し、実質的に空間を形成させない圧力である。また、その上限は、被処理体である多孔質体の形状を破壊することのない圧力である。
【0036】
電極21及び電極22の大きさを、それぞれが接触する誘電体層41及び誘電体層42の大きさよりも小さくなるようにすると、両電極21,22の端部間でスパークが生じないので好ましい。また、電極21又は電極22の大きさが、それぞれが接触する誘電体層41又は誘電体層42の大きさと同じ場合には、電極の周囲に誘電性材料からなる被覆材(例えば、ビニールテープ)などを設けることにより、両電極21,22の端部間のスパークを防ぐことができる。電極21を交流電源51に接続し、電極22をアースする。図2には、電極21に交流電源51を接続し、電極22をアースする態様を示したが、逆に、電極22に交流電源51を接続し、電極21をアースしてもよい。
【0037】
イオウ含有化合物ガスの存在下で、交流電源51から正弦波交流高電圧を印加すると、多孔質体11の内部空隙で放電し、プラズマが生成される。多孔質体11の内部空隙で発生したプラズマの作用により、多孔質体11の内側表面とイオウ含有化合物とが反応し、多孔質体11の内側表面の改質、すなわち、イオウ含有原子団(例えば、SO4又はSO3Hなど)の導入が行われる。このときには、多孔質体11の外側表面は誘電体層41又は誘電体層42と接しているので、多孔質体11の内部空隙で発生したプラズマは、理論的には多孔質体11の外側表面の誘電体層との接触点には作用しない。しかし、実際には、接触点は総表面の面積と比べて非常に小さい面積であるため、実質的にはすべての外側表面が処理されているものと言うことができる。しかも、多孔質体とイオウ含有化合物との反応は、プラズマだけでなくプラズマによって生じた無水硫酸の作用などによっても起こると考えられるので、多孔質体と誘電体層とが分離した際に、プラズマによって生成した無水硫酸と多孔質体との反応が接触点でも起こる。なお、II型電極対−両面接触型配置では、多孔質体の内部空隙で放電が発生するので、スパーク放電等による被処理体の損傷が起こりにくい。
【0038】
図2に示すII型電極対−両面接触型配置では、両電極間21,22の間に電圧を印加すると、多孔質体11の内部空隙で放電し、プラズマが生成されるが、I型電極対−両面接触型配置においても、両電極間の間に電圧を印加すると、多孔質体の内部空隙で放電し、プラズマが生成される。一方、I型若しくはII型電極対−非接触型配置、又はI型若しくはII型電極対−片面接触型配置では、両電極間の間に電圧を印加すると、多孔質体と電極又は誘電体層との間の空間、及び多孔質体の内部空隙で放電し、プラズマが生成される。
【0039】
図2に示す態様の説明では、両電極間21,22の間に正弦波交流高電圧を印加する場合を示したが、本発明のイオウ含有原子団導入方法においては、放電を発生させるために両電極間に印加する電圧は、電圧値が時間とともに変化する電圧、好ましくは実質的に一定の周期で増減を繰り返す連続波形又は断続的波形からなる電圧である限り、特に限定されるものではなく、例えば、正弦波交流電圧、又は繰返しパルス電圧などを挙げることができる。印加電圧の波形は、特に限定されるものではなく、例えば、正弦波、三角波、又は矩形波などを挙げることができる。また、印加電圧の極性も特に限定されるものではなく、単極性電圧を使用することもできるし、両極性電圧を使用することもできるが、処理効率が高い点で、両極性電圧を使用することが好ましい。
【0040】
繰返しパルス波としては、例えば、図3に示す両極性パルス波、図4に示す単極性パルス波、又は図5に示す両極性矩形繰返しパルス波などを挙げることができる。これらの繰返しパルス波においては、電圧波の立ち上がり時間[すなわち、基準電圧から第1のピーク電圧の90%に到達するまでの時間、例えば、図3〜図5における時間t)が、1マイクロ秒以下であることが好ましく、0.2マイクロ秒以下であることがより好ましい。なお、繰返しパルス波を用いる場合の周波数(例えば、図3〜図5における波長λを1周期としたときの周波数)の好適範囲も限定されるものではないが、その上限は、好ましくは100KHz、より好ましくは50KHzであり、その下限は、好ましくは10Hz、より好ましくは50Hz、最も好ましくは100Hzである。
【0041】
繰返しパルス電圧は、例えば、コンデンサに蓄えた電圧を火花放電スイッチにより負荷に瞬時につなぐ方法や、あるいは、半導体スイッチにより変調させたパルス状電圧をトランスを介して昇圧する方法などにより、発生させることができる。
また、繰返しパルス波の立ち上がり時間は、例えば、負荷までの抵抗やインダクタンスを小さくすることにより、短くすることができる。また、磁気スイッチなどを利用して、パルスを圧縮すると共に立ち上がり時間を短くすることができる。
更に、電流パルスの持続時間が1μ秒以下であると、火花放電が発生しにくくなるので好ましい。
【0042】
本発明によるイオウ含有原子団導入方法において、放電を発生させるために印加する電圧として繰返しパルス電圧を使用する場合には、繰返しパルス電圧の下限は、誘電体層を含めた電極間の距離やガスの濃度に依存するので、特に限定されるものではないが、好ましくは0.5KVp以上、より好ましくは2KVp以上である(KVpは、電圧の最大値ピークから0までの電圧差を示す)。電圧が0.5KVp未満になると、実質的に放電が起こらないか、あるいは、放電が起きても均一な放電が生じないことがあるからである。また、繰返しパルス電圧の上限も、多孔質体及び誘電体の損傷が生じることのない電圧である限り、特に限定されるものではないが、好ましくは100KVp以下、より好ましくは50KVp以下である。電圧が100KVpを越えると、絶縁破壊が生じたり、あるいは、パルス波の周波数を高くすることが困難になることがあるからである。電界強度としては、10〜200KVp/cmであることが好ましく、20〜100KVp/cmであることがより好ましい。
【0043】
本発明によるイオウ含有原子団導入方法では、このような繰返しパルス波を使用することにより、火花放電により穴の空きやすい多孔質体(例えば、メルトブロー不織布)であっても、穴をあけることなく総表面処理を実施することができる。また、イオウ含有化合物の濃度が、従来の大気圧グロー放電では実施することができないほど高い場合(例えば、10容量%以上の場合)であっても、このような繰返しパルス波を使用することにより、均一な放電を安定して発生させることができる。
なお、放電を発生させるために印加する電圧に関するこれらの値は、各電極の形状や多孔質体の材質や放電電圧波形、更には処理時間にも大きく依存するので、前記範囲からはずれて使用されることもある。
【0044】
I型若しくはII型電極対−非接触型配置、I型若しくはII型電極対−片面接触型配置、又はI型電極対−両面接触型配置においては、放電を発生させるために両電極間に印加する電圧として、立ち上がりの早い繰返しパルス電圧を用いるのが好ましく、立ち上がり時間が1マイクロ秒以下である繰返しパルス電圧を使用することが好ましい。特に、I型若しくはII型電極対−非接触型配置、又はI型若しくはII型電極対−片面接触型配置の場合には、放電が均一となるように、パルス電圧を用いるのが好ましい。
【0045】
II型電極対−両面接触型配置においては、通常の正弦波交流電圧を使用することもできるし、繰返しパルス電圧を使用することもできるが、均一な処理を行うことができる点で、立ち上がりの早い繰返しパルス電圧を使用することが好ましい。
【0046】
本発明によるイオウ含有原子団導入方法において、放電を発生させるために印加する電圧として正弦波交流電圧を使用する場合には、正弦波交流電圧の下限は、誘電体層を含めた電極間の距離やガスの濃度に依存するので、特に限定されるものではないが、好ましくは0.5KVp以上、より好ましくは2KVp以上である。電圧が0.5KVp未満になると、実質的に放電が起こらないか、あるいは、放電が起きても均一な放電が生じないことがあるからである。また、正弦波交流電圧の上限も、多孔質体及び誘電体層の損傷が生じることのない電圧である限り、特に限定されるものではないが、好ましくは100KVp以下、より好ましくは50KVp以下である。電圧が100KVpを越えると、絶縁破壊が生じることがあるからである。電界強度としては、10〜200KVp/cmであることが好ましく、20〜100KVp/cmであることがより好ましい。
【0047】
本発明によるイオウ含有原子団導入方法において、前記正弦波交流電圧の周波数の上限は、特に限定されるものではないが、好ましくは100KHz、より好ましくは50KHzである。周波数が100KHzを越えると、誘電加熱により多孔質体及び誘電体層が過熱状態になって破壊するおそれが生じることがあるからである。また、周波数を50KHz以下とすると、多孔質体、誘電体及び電極が加熱されにくいので、長時間、安定して処理することができる点でより好ましい。
周波数の下限は、好ましくは10Hz、より好ましくは50Hzである。周波数が10Hz未満になると、放電による処理効率が低下することがあるからである。周波数を50Hz以上とすると、処理効率が高く、処理時間が短くなるので、より好ましい。
【0048】
本発明によるイオウ含有原子団導入方法において、放電を発生させるために印加する正弦波交流の出力は、各電極の形状、又は使用する誘電体層若しくは被処理体の素材又は厚さなどに依存するので特に限定されるものではないが、II型電極対−両面接触型配置において、一対の電極が、多孔質体を一定の領域で挟んで処理する場合(例えば、図2参照)には、0.01〜5W/cm2であることが好ましい。
また、II型電極対−両面接触型配置において、一対のロール状電極により、多孔質体を線状に挟んで処理する場合には、前記正弦波交流の出力は、0.1〜9W/cmであることが好ましく、0.1〜6W/cmであることがより好ましい。なお、多孔質体を線状に挟んで処理する場合であって、複数本のロール状電極を使用する場合には、前記の正弦波交流出力の範囲は、電極一本当たりの値を意味する。
【0049】
II型電極対−両面接触型配置において、正弦波交流の出力が前記範囲より低い場合(すなわち、多孔質体を一定の領域で挟んで処理する場合に0.01W/cm2未満であるか、あるいは、多孔質体を線状に挟んで処理する場合に0.1W/cm未満である場合)には、多孔質体の放電しやすい場所で主に放電が生じるので、総表面を均一に処理することができないことがある。また、正弦波交流の出力が前記範囲より高い場合(すなわち、多孔質体を一定の領域で挟んで処理する場合に5W/cm2を越えるか、あるいは、多孔質体を線状に挟んで処理する場合に9W/cmを越える場合)には、アーク放電により多孔質体に穴があくことがある。
【0050】
本発明によるイオウ含有原子団導入方法においては、ピーク電流密度(J;単位=mA/cm2)と電圧立ち上がり時間(T:単位=ナノ秒)とが、次の関係式(1)又は関係式(2)を満足すると、処理効率が高く、スパーク放電を生じることなく、均一に放電を行うことができる。
電圧立ち上がり時間(T)が150n秒以下の場合:
(150/T)×150≦J≦(1100/T)2×200 (1)
電圧立ち上がり時間(T)が150n秒を越える場合:
150≦J≦(1100/T)2×200 (2)
なお、ピーク電流密度とは、放電電流のピーク値を誘電体面積で除した値をいう。
【0051】
本発明によるイオウ含有原子団導入方法に用いることのできる電極の材質としては、比抵抗が、好ましくは103Ω・cm以下、より好ましくは100Ω・cm以下の導電体を用いることができ、例えば、金属(例えば、ステンレススチール、アルミニウム、若しくはタングステン等)、導電性金属酸化物、カーボン、又は導電体(例えば、金属粉末若しくはカーボン粉末等)とゴムとを複合した導電性ゴムなどを用いることができる。
また、電極の形状としては、例えば、シート状電極、板状電極、又は円柱状電極を用いることができる。ロール電極対の間に多孔質体を通過させる場合のように、多孔質体と電極とが相対的に移動する場合には、多孔質体の表面に傷をつけにくくなるように、多孔質体の平行移動に同期して、その円柱中心軸を回転軸としてそれ自体が回転することのできる円柱状電極が好ましい。
【0052】
本発明によるイオウ含有原子団導入方法に用いることのできる誘電体層は、全体が非多孔質であるか、あるいは、その一部に多孔質部分を含むことができる。なお、誘電体層として、全体が多孔質部分からなる誘電体層のみを用いると、被処理体及び誘電体の多孔質部分の内部で火花放電が発生することがある。従って、本発明では、そのような誘電体層を使用するのは好ましくない。また、同様の理由により、誘電体層として、厚さ方向に連続した多孔質部分を含む誘電体層を用いるのも好ましくない。
被処理体との接触面に多孔質部分を有する誘電体層を用いると、全体が非多孔質からなる誘電体層を用いた場合に比べて、誘電体層と被処理体との接触面が減少するので、被処理体の外側表面をより効率的に処理することができる。
【0053】
本発明によるイオウ含有原子団導入方法に用いることのできる誘電体層の材料としては、例えば、ガラス、セラミック(例えば、アルミナ、酸化チタン、ジルコニア、チタン酸ストロンチウム、又はチタン酸バリウム等)、ゴム(例えば、合成ゴム、例えば、シリコーンゴム、クロロプレンゴム、若しくはブタジエンゴム、又は天然ゴム等)、又は熱可塑性樹脂(例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン若しくはポリエステル等)などを挙げることができる。被処理体である多孔質体と接触する誘電体層、特にはその接触面には、弾性に優れている点でゴム又は熱可塑性樹脂を用いることが好ましく、弾性に優れており、被処理体との密着性に優れている点で、ゴムを使用することがより好ましい。特に、被処理体の表面に傷をつけにくいゴム、又は絶縁破壊に強いポリテトラフルオロエチレンを使用することが好ましい。耐久性の点からガラス、セラミック又はポリテトラフルオロエチレンを使用するのが特に好ましい。
誘電体層の厚さは、特に限定されるものではないが、0.01〜20mmであることが好ましく、0.1〜10mmであることがより好ましい。20mmより厚いと、放電させるのに非常に高い電圧が必要であり、0.01mm未満では機械的強度が低下し、絶縁破壊が生じやすくなるからである。
【0054】
本発明によるイオウ含有原子団導入方法において、対向表面側に誘電体層を設けた電極における前記誘電体層と、被処理体との距離、あるいは、誘電体層を担持していない電極と、被処理体との距離は、特に限定されるものではないが、0(すなわち、接触している状態)〜100mmであることが好ましい。100mmを越えると、放電を発生させるのに高い電圧が必要になり、多孔質体に穴があく場合もあるからである。
【0055】
本発明によるイオウ含有原子団導入方法において、多孔質体の内部空隙、及び/又は多孔質体と電極若しくは誘電体層との間の空間に、表面処理用ガスを供給する手段としては、例えば、多孔質体内部に表面処理用ガスを強制的に送り込む方法、多孔質体及びその近傍に表面処理用ガスを噴き付ける方法、多孔質体の周囲を表面処理用ガスの雰囲気にする方法、あるいは、一対の電極間に配置する前に、多孔質体の内部空隙を予め表面処理用ガスで満たしてから配置する方法などを挙げることができ、これらの方法を単独又は組合わせて、開放系又は閉鎖系で実施することができる。前記手段としては、電極間に配置する前に、多孔質体の内部空隙を予め表面処理用ガスで満たしてから(例えば、多孔質体の内部空隙に表面処理用ガスを通過させてから)配置する方法が好ましい。I型若しくはII型電極対−非接触型配置、又はI型若しくはII型電極対−片面接触型配置の場合には、表面処理用ガスの拡散性に優れるため、均一に放電処理を行うことができる。
【0056】
例えば、ガス供給管などを用いて、表面処理用ガスを多孔質体の内部空隙及び/又は周囲に供給しながら、高電圧を印加させることにより放電を発生させると、多孔質体の内部空隙、及び/又は多孔質体と電極若しくは誘電体層との間の空間に発生したプラズマの作用により、表面処理用ガスに含まれるイオウ含有化合物ガスと、多孔質体の総表面とが反応し、多孔質体の総表面の改質、すなわち、イオウ含有原子団を導入することができる。
【0057】
本発明によるイオウ含有原子団導入方法においては、多孔質体に界面活性剤を付着させた後に放電処理を行うのが好ましい。界面活性剤による前処理により、イオウ含有原子団の導入量が多くなる傾向がある。前記界面活性剤としては、例えば、炭化水素系、シリコーン系、又はフッ素系界面活性剤などを挙げることができる。
【0058】
界面活性剤による前処理では、例えば、界面活性剤を適当な溶媒又は媒質に溶解又は懸濁させ、その溶液又は懸濁液を多孔質体に含浸した後に、あるいは、前記溶液又は懸濁液を多孔質体の被処理面上にスプレー又は塗布した後に、溶媒又は媒質のみを除去することによって、界面活性剤を多孔質体の被処理面上に担持させることができる。
【0059】
本発明によるイオウ含有原子団導入方法においては、多孔質体を静止させた状態で放電を発生させる図2に示す態様に限定されず、多孔質体を移動させながら、連続的に多孔質体の総表面の処理を行うこともできる。この場合には、以下の配置態様に限定されるものではないが、II型電極対−非接触型配置(1−II)又はII型電極対−片面接触型配置(2−II)で、電極、誘電体層、及び被処理体を配置することが好ましい。連続的に処理する本発明方法の態様を図6に示す。図6に示す本発明方法の態様では、電極間に多孔質体を配置する態様として、II型電極対−両面接触型配置を採用するものであるが、特に断らない限り、以下の説明は、これまで説明したその他の態様(例えば、I型若しくはII型電極対−非接触型配置、I型若しくはII型電極対−片面接触型配置、又はI型電極対−両面接触型配置)にもそのまま当てはまる。
【0060】
この態様では、円柱状の電極21と円柱状の電極22とを対向するように配置する。電極21及び電極22は、その表面が誘電体層41及び誘電体層42にそれぞれ覆われている。電極21及び電極22は、その円柱中心軸を回転軸としてそれ自体が回転することができるものであることもできるし、回転せずに固定されているものであることもできる。多孔質体が移動する際に、多孔質体の表面に傷をつけにくくなる点で、その円柱中心軸を回転軸としてそれ自体が回転することができる電極であることが好ましい。
【0061】
電極21を交流電源51に接続し、電極22をアースする。多孔質体11は、両電極21,22の上流に設けた移送手段(例えば、一対の送出ローラー:図示せず)によって、電極21及び電極22の表面上にそれぞれ担持された誘電体層41及び誘電体層42の間に、矢印Aで示す方向に所定速度で連続的に供給され、それらと接触しながら両誘電体層41,42の間を通過する。両誘電体層41,42の間を通過した多孔質体11は、両電極21,22の下流に設けた移送手段(例えば、一対の送出ローラー:図示せず)によって、所定速度で連続的に移送される。多孔質体11を移送する駆動力を供給する駆動手段(例えば、モータ)は、前記の送出ローラー及び/又は回転自在な電極に連結することができる。
【0062】
多孔質体11の前記供給速度及び前記移送速度は、特に制限されず、一定速度、又は周期的若しくは不規則に変化する速度であることができる。これらの速度は、一定速度であって、多孔質体の表面処理時間が0.1秒以上になるような速度であることが好ましい。この速度より速いと十分な総表面処理効果が得られないことがあるからである。
【0063】
多孔質体11が、両誘電体層41,42の間をそれらと接触しながら通過する際に、多孔質体11の両側から、表面処理用ガス供給パイプ61,64の側壁に設けたノズル63,65から表面処理用ガスを処理領域に供給しながら、交流電源51から交流高電圧を印加すると、誘電体層41及び誘電体層42のそれぞれと多孔質体11との接触面の間に挟まれた多孔質体11の内部空隙に放電が発生し、プラズマが生成する。なお、前記の表面処理用ガス供給パイプ61は、連結管62を介してガスボンベ(図示せず)と連絡している。前記の表面処理用ガス供給パイプ64も同様にガスボンベ(図示せず)に連絡している。多孔質体11の内部空隙に発生したプラズマの作用により、多孔質体11の内側表面の改質、すなわち、イオウ含有原子団の導入が行われる。このとき、誘電体層41及び誘電体層42のそれぞれと多孔質体11との接触面には、多孔質体11の内部空隙で発生したプラズマは作用しない。しかし、多孔質体11は所定速度で連続的に移送されているので、前記接触面であった多孔質体11の外側表面は、誘電体層41及び誘電体層42から次々と分離し、分離した直後にプラズマによって生成した無水硫酸と多孔質体の外側表面とが反応し、多孔質体11の外側表面の改質が行われる。
【0064】
多孔質体11は所定速度で連続的に移送されているので、未処理の多孔質体11が両誘電体層41,42の間に連続的に供給される一方、総表面の改質が行われた多孔質体11が両誘電体層41,42の間から連続的に供出され、多孔質体11の総表面処理を連続的に行うことができる。図2に示す前記の態様において、移送手段(例えば、前記の一対の送出ローラー)を設けることにより、多孔質体を連続的に移送して連続処理を実施することができる。
【0065】
図6に示す態様では、その表面に誘電体層41を担持する円柱状の電極21を1個だけ設けるものであるが、電極21の数は特に限定されるものではなく、1個又は複数個設けることができる。多孔質体の外側表面上の任意の一点が、電極の表面に担持される誘電体層と複数回接触することができるように、誘電体層を担持する電極を複数個設けることが、処理効果を高め、処理速度を上げることができる点で好ましい。
【0066】
本発明によるイオウ含有原子団導入方法により総表面を処理することのできる多孔質体としては、任意の有機材料からなる多孔質体を用いることができる。
前記多孔質体として、任意の全体及び表面S/C比並びに表面O/C比を示す有機材料からなる多孔質体を用いることができるが、表面S/C比が7×10-4未満であり、表面O/C比が0.2未満である材料からなる多孔質体を用いることが好ましく、表面S/C比が7×10-4未満であり、表面O/C比が0.2未満、且つ、全体S/C比が1×10-3未満の材料からなる多孔質体を用いるのがより好ましく、イオウ原子及び酸素原子を実質的に含有しない有機材料(特に有機合成高分子化合物)からなる多孔質体を用いることが更に好ましい。
【0067】
有機材料としては、各種の有機高分子化合物、特に各種の有機合成高分子化合物、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、フッ素化エチレンプロピレン共重合体(FEP)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、又はフッ化ビニリデン−トリフルオロエチレン共重合体等を挙げることができる。
【0068】
イオウ原子及び酸素原子を含有しない有機材料(特に有機合成高分子化合物)としては、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリメチルペンテンなどのポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリスチレン、又はポリイミド等を挙げることができる。
【0069】
前記各種材料からなる多孔質体としては、例えば、繊維質型多孔質体、フィルム型多孔質体、又は発泡体型多孔質体などを挙げることができる。繊維質多孔体は、例えば、織物、編物、又は不織布からなる。不織布としては、例えば、乾式不織布(例えば、水流絡合不織布、ニードルパンチ不織布、バインダ接着不織布、熱融着不織布、スパンボンド不織布、若しくはメルトブロー不織布)、又は湿式不織布、あるいはこれらの組合せなどを挙げることができる。また、発泡体としては、例えば、ポリオレフィン系、ポリエステル系、又はポリウレタン系などの樹脂からなる開放気泡型発泡体などを挙げることができる。また、フィルム型多孔質体としては、凹凸構造をもつフィルムや穴あきフィルムなどを挙げることができる。
【0070】
本発明によるイオウ含有原子団導入方法は、特に非導電性の有機材料(特に有機合成高分子化合物)からなる繊維質型多孔質体の処理に適用することができ、例えば、不織布シート、好ましくは電池用セパレータ(特には、アルカリ電池用セパレータ)として使用することのできる不織布シートの処理に適用することができる。電池用セパレータとして使用することのできる不織布としては、これに限定されるわけではないが、例えば、ポリオレフィン系繊維、すなわち、ポリエチレン、エチレン系共重合体、ポリプロピレン、プロピレン系共重合体、ポリブテン、ブテン系共重合体、ポリメチルペンテン、又はペンテン系共重合体を樹脂成分として1つ以上含む繊維からなり、例えば、水流絡合、熱融着、若しくはメルトブロー、又はこれらを併用して形成される不織布を使用することができる。電池用セパレータとして用いる不織布は、ポリオレフィン系繊維のみから実質的になることが耐アルカリ性の点から好ましい。
【0071】
本発明の電池用セパレータは、表面S/C比及び表面O/C比が同時に高い数値を示し、初期及び長期の保液性及びぬれ性に優れるため、一次電池用及び二次電池用のセパレータ、特にはアルカリ一次電池用及びアルカリ二次電池用のセパレータとして使用することができる。前記アルカリ一次電池としては、例えば、アルカリマンガン電池、水銀電池、酸化銀電池、又は空気電池などを挙げることができ、前記アルカリ二次電池としては、例えば、ニッケル−カドミウム電池、銀−亜鉛電池、銀−カドミウム電池、ニッケル−亜鉛電池、又はニッケル−水素電池などを挙げることができる。
【0072】
【実施例】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例1】
被処理体としては、ポリエチレン/ポリプロピレン17分割繊維からなる湿式法により形成した繊維ウエブを、水流絡合処理し、更に、融着処理によりポリエチレン極細繊維を融着させた不織布を用いた。
イオウ含有原子団導入処理は、II型電極対−片面接触型配置(2−II)により実施した。電極として平板状ステンレススチール電極(大きさ=150mm×210mm)を使用し、誘電体層としてポリテトラフルオロエチレン(PTFE)膜(厚さ=0.1mm)を用いた。対向表面側にPTFE膜を担持する両電極の間に、一方のPTFE膜と接触し、もう一方のPTFE膜からの距離が0.5mmになるように、前記不織布を配置し、図5に示す波形を有するパルス電圧(電圧=6.8KVp,ピーク電流=400A,周波数=75Hz,立ち上がり時間=0.1マイクロ秒)を電極に印加して放電を発生させた。前記処理は、予め空気を除去(0.1Torr)した後に、二酸化イオウ(SO2)ガスと空気との混合ガス(混合容量比=1:1)を封入し、密封した状態のチャンバー内(大気圧下)で、10分間行った。
【0073】
処理した不織布の表面における表面S/C比及び表面O/C比を、X線光電子分光計[日本電子(株)JPS−9000MX;励起源=Mg−Kα,出力=10KV−10mA]により求め、処理した不織布全体における全体S/C比を、イオンクロマトグラフィーにより求めた。得られた表面及び全体S/C比並びに表面O/C比の結果を表1に示す。また、処理した不織布に導入された原子団の種類を前記X線光電子分光計により求めた。処理した不織布に導入された原子団の種類は、主に、SO4、COOH、SO3H、OH、及びCOであった。
処理した不織布に、水滴を一滴滴下したところ、0.5秒以内に不織布内に吸収された。なお、後述する比較例1により得られた不織布では、滴下した水滴が吸収されるまでに3秒以上を要した。
【0074】
【比較例1】
被処理体としては、実施例1で用いた不織布と同じものを用いた。前記不織布を、濃度15%の発煙硫酸により、温度60℃で2分間処理した。処理後の不織布を実施例1に記載した方法により分析した。得られた表面及び全体S/C比並びに表面O/C比の結果を表1に示す。処理した不織布に導入された原子団の種類は、主に、SO3H及びSO4であった。
【0075】
Figure 0004132354
【0076】
【実施例2〜10】
放電処理の際に存在させる気体の種類を変化させて各種の実験を行った。
(1)被処理体及び処理条件
被処理体としては、ポリエチレン/ポリプロピレン17分割繊維からなる湿式法により形成した繊維ウエブを、水流絡合処理し、更に、融着処理によりポリエチレン極細繊維を融着させた不織布(厚さ=0.25mm)を用いた。
イオウ含有原子団導入処理は、II型電極対−片面接触型配置(2−II)により実施した。電極として平板状ステンレススチール電極(大きさ=150mm×210mm)を使用し、誘電体層としてポリテトラフルオロエチレン(PTFE)膜(厚さ=0.26mm)を用いた。対向表面側にPTFE膜を担持する両電極の間に、一方のPTFE膜と接触し、もう一方のPTFE膜からの距離が0.5mmとなるように、前記不織布を配置した。
印加したパルス電圧は、図5に示す波形を有するパルス電圧(電圧=10KVp,ピーク電流密度=440mA/cm2,周波数=125Hz,立ち上がり時間=200n秒)である。
【0077】
(2)処理手順
具体的な処理手順は以下のとおりである。
真空デシケータ内に電極及び不織布をセットした後、ロータリーポンプで減圧した。ガス混合器で3回、デシケータ内を図7に示す混合ガスで置換した後、図7に示す混合ガスを1気圧まで導入した。前記のパルス電圧を5分間印加して放電処理を実施した。続いて、前記の混合ガスを脱気し、空気を導入した。不織布を取り出し、水洗してから風乾した。
【0078】
【比較例2】
放電処理の際に存在させる気体を、6.5容量%−SO2/93.5容量%−Heガスとすること以外は、前記実施例2〜10と同じ操作を繰り返した。
【0079】
【比較例3】
100%Heガス中で放電処理を行った後、デシケータ内を酸素ガスで置換し、その中に不織布を15分間放置し、その後デシケータ内に6.5容量%−SO2/93.5容量%−Heを1気圧まで導入し、その中に5分間放置したこと以外は、前記実施例2〜10と同じ操作を繰り返した。
【0080】
【比較例4】
被処理体としては、実施例2〜10で用いた不織布と同じものを用いた。前記不織布を、濃度15%の発煙硫酸浴(温度60℃)に2分間浸漬してスルホン化した後、出力1500Wで60秒間(単位面積当たりの負荷エネルギー=10.24J/cm2)コロナ放電処理した。
【0081】
【物性評価】
(1)処理不織布の全体S/C比
処理不織布の全体S/C比を、以下の手順で測定した。
NaHCO3(84mg)を純水(100ml)に溶かし、30%H22水溶液(1ml)を加えて吸収液を調製した。この吸収液(5ml)を、燃焼フラスコ(浜田理科製,FHO−A型,500ml)内に入れ、燃焼フラスコの内壁を前記吸収液でよく濡らした。
処理不織布から試料(約20mg)を精秤し、無灰濾紙に包み、燃焼フラスコ内の白金籠にセットした後、燃焼フラスコ内を酸素で充満させた。白金籠に通電し、試料を燃焼させた。試料が燃焼された後、燃焼フラスコをよく振ってから、10分間放置した。燃焼フラスコの注液部に純水10mlを入れ、この純水により内壁を洗浄し、数分間放置した。燃焼フラスコ内の吸収液をメスフラスコを使用し、純水で50mlに希釈し、試験液とした。
イオンクロマトグラフィー(DIONEX社,2000i/SP)を用い、試験液のSO4 2-の濃度を測定した。なお、SO4 2-標準液を用いて校正を行った。
全体S/Cは次の式から算出した。
Figure 0004132354
なお、前記の式で、Wは試料質量(g)であり、aはSO4 2-濃度(mg/ml)であり、bはSO4 2-の分子量(すなわち96)であり、cはC36の分子量(すなわち42)である。前記の実施例2〜10及び比較例2〜4では、試料がポリオレフィンからなるので、その試料は、すべてC36からなるものと仮定して炭素の原子数を算出した。結果を図7に示す。
【0082】
(2)表面S/C比及び表面O/C比の測定
X線光電子分光計(JPS−9010MX,日本電子社製)を用いて、次の条件にて測定した。
処理不織布から試料を切り出し、純水で洗浄した後乾燥し、サンプルホルダーに固定した。励起源としてMg−Kαを用い、印加電圧値を10KVとし、ビーム電流値を10mAとし、そして光電子の脱出角度を90°として、対象表面における炭素原子(Cis)のピーク面積、イオウ原子(2P3/2)のピーク面積、及び酸素原子(Ois)のピーク面積をそれぞれ測定し、光イオン化断面積補正を行って、S/C比及びO/C比を計算した。結果を図7に示す。
【0083】
(3)電池容量維持率
電極の集電体として、発泡ニッケル基材を用いたペースト式ニッケル正極(幅=33mm,長さ=182mm)と、ペースト式水素吸蔵合金負極(メッシュメタル系合金,幅=33mm,長さ=247mm)とを作成した。次いで、実施例2、実施例3、実施例5、実施例7及び実施例10、並びに比較例2及び3で調製したスルホン化処理不織布から試料片(幅=33mm,長さ=410mm)を裁断し、それぞれ前記正極と前記負極との間に挟み、渦巻き状に巻回して、SC型対応の電極群を作成した。この電極群を外装缶に収納した後、電解液として5N−水酸化カリウム及び1N−水酸化リチウムを外装缶に注液し、封缶して円筒型ニッケル−水素電池(容量2000〜2100mAh)を作成した。次いで、それぞれの円筒型ニッケル−水素電池に対し、20℃の恒温槽中で充電率0.1Cで12時間(120%充電)充電し、終止電圧1ボルトになるまで放電率0.1Cで放電することを1サイクルとする充放電を5サイクル実施して、電池を活性化させた。
そして、20℃の恒温槽中で充電率0.1Cで12時間(120%充電)充電し、終止電圧1ボルトになるまで放電率0.1Cで放電させて、初期容量(A)を測定した。
次いで、20℃の恒温槽中で充電率0.1Cで12時間(120%充電)充電した後、温度65℃の恒温室内に5日間放置した。その後、20℃の恒温槽中で終止電圧が1ボルトになるまで放電率0.1Cで放電させて、残存容量(B)を測定した。これらの結果から、次式により容量維持率を算出した。
容量維持率(%)=(B/A)×100
結果を図7に示す。図7に示すように、全体S/C比が2以上であれば、容量維持率により優れていることがわかった。
【0084】
【発明の効果】
本発明によるイオウ含有原子団導入多孔質体は、高い表面S/C比と高い表面O/C比とを同時に有しており、高度の親水性が新たに付与されたり、親水性が高度に向上しているだけでなく、その親水性の耐久性の面でも優れており、更には、イオン吸収性、アンモニア吸着、又は生体適合性などが新たに付与されたり向上している。
本発明によるイオウ含有原子団導入方法によれば、大掛かりな装置を用いることなく、大気圧下の放電により高い効率で多孔質体の総表面にイオウ含有原子団を導入することができ、しかも、高濃度の硫酸を含む廃液の処理が不要である。また、多孔質体を構成する材料の表面に主としてイオウ含有原子団が導入されるため、多孔質体の強度の劣化がほとんどみられない。本発明方法によれば、高い表面S/C比及び高い表面O/C比を示す新規のイオウ含有原子団導入多孔質体を製造することができる。
【0085】
本発明の電池用セパレータは、表面S/C比及び表面O/C比が同時に高い数値を示すので、以下の種々の優れた効果を有する。すなわち、本発明の電池用セパレータは、濡れ性が優れている。また、本発明の電池用セパレータは、高度の初期及び長期の親水性が新たに付与されたり、親水性が高度に向上しているだけでなく、その親水性の耐久性の面でも優れており、しかも、耐酸化性にも優れているので、セパレータとしての寿命が長い。更には、本発明の電池用セパレータは、容量保持率が優れているので、自己放電抑制作用が高い。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明方法の種々の態様を模式的に示す説明図である。
【図2】本発明方法の基本的原理を模式的に示す断面図である。
【図3】本発明方法において使用することのできる繰返しパルス波の形状を示す説明図である。
【図4】本発明方法において使用することのできる別の繰返しパルス波の形状を示す説明図である。
【図5】本発明方法において使用することのできる更に別の繰返しパルス波の形状を示す説明図である。
【図6】本発明方法の一態様を模式的に示す斜視図である。
【図7】実施例2〜10及び比較例2〜4の結果を示す表である。
【符号の説明】
11・・・多孔質体;21,22・・・電極;
41,42・・・非多孔質誘電体層;51・・・交流電源;
61,64・・・ガス供給パイプ;62・・・連結管;
63,65・・・ノズル。

Claims (9)

  1. 有機材料からなる多孔質体の総表面の少なくとも一部にイオウ含有原子団を導入したイオウ含有原子団導入多孔質体であって、
    イオウ含有原子団を導入された表面においてX線光電子分光計により測定された炭素原子(C)の数に対するイオウ原子(S)の数の比(S/C)が7×10−4以上であり、
    イオウ含有原子団を導入された表面においてX線光電子分光計により測定された炭素原子(C)の数に対する酸素原子(O)の数の比(O/C)が0.2以上であり、
    イオウ含有原子団導入多孔質体全体における、炭素原子(C)の数に対するイオウ原子(S)の数の比(S/C)が1×10−3以上である
    ことを特徴とする、イオウ含有原子団導入多孔質体。
  2. イオウ含有原子団導入多孔質体全体における、炭素原子(C)の数に対するイオウ原子(S)の数の比(S/C=B)に対する、イオウ含有原子団を導入された表面においてX線光電子分光計により測定された炭素原子(C)の数に対するイオウ原子(S)の数の比(S/C=A)の比(A/B)が15以上である請求項1に記載のイオウ含有原子団導入多孔質体。
  3. イオウ含有原子団導入処理前の多孔質体がイオウ原子及び酸素原子を実質的に含有しない有機材料からなる、請求項1又は2に記載のイオウ含有原子団導入多孔質体。
  4. 多孔質体が不織布である、請求項1〜3のいずれか一項に記載のイオウ含有原子団導入多孔質体。
  5. 請求項4に記載のイオウ含有原子団導入多孔質体からなる電池用セパレータ。
  6. 少なくとも一方の電極の対向表面側に誘電体層を設けて対向して配置した一対の電極の間に、有機材料からなる多孔質体を配置し、表面処理用ガス全体の容量に対して10容積%以上のイオウ含有化合物ガスの存在下で、且つ、大気圧下にて、前記両電極間に電圧を印加して、放電を発生させることを特徴とする、多孔質体の総表面の少なくとも一部へのイオウ含有原子団導入方法。
  7. 少なくとも一方の電極の対向表面側に誘電体層を設けて対向して配置した一対の電極の間に、有機材料からなる多孔質体を配置し、表面処理用ガス全体の容量に対して10容積%以上のイオウ含有化合物ガスの存在下及び酸素ガスの存在下で、且つ、大気圧下にて、前記両電極間に電圧を印加して、放電を発生させることを特徴とする、多孔質体の総表面の少なくとも一部へのイオウ含有原子団導入方法。
  8. それぞれの対向表面側に誘電体層を設けて対向して配置した一対の電極の間に、前記の一対の電極とはそれぞれ直接に接触しないが前記誘電体層のそれぞれと外側表面が直接に接触するように、有機材料からなる多孔質体を配置し、表面処理用ガス全体の容量に対して10容積%以上のイオウ含有化合物ガスの存在下で、且つ、大気圧下にて、前記両電極間に電圧を印加して、両電極間に挟まれた前記多孔質体の内部空隙で放電を発生させることを特徴とする、多孔質体の総表面の少なくとも一部へのイオウ含有原子団導入方法。
  9. 立ち上がり時間が1マイクロ秒以下である繰返しパルス電圧を前記両電極間に印加して、放電を発生させる請求項6〜8のいずれか一項に記載の方法。
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