JP4129965B2 - 非水電解液電池 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、非水電解液電池に関し、さらに詳しくは、中負荷以下の用途に適した高容量かつ安全で信頼性の高い円筒形の非水電解液電池に関する。
【0002】
【従来の技術】
リチウム一次電池の分野において、ボビン型構造が最も単純で生産性に優れていることは広く知られている。かかるボビン型構造の優位性の一つに、負極としてリチウムのような異種金属に対して粘着性を示す金属を用いた場合でも、予め外装缶の内面に金属リチウムを貼り付けたうえで、セパレータで覆われた正極を挿入できることが挙げられる。
【0003】
要求される負荷特性によっては、電極面積を大きく採るために、シート状の正極と負極とを、セパレータを介して捲回してなる捲回式の電極体を電池要素とすることがある。この形式の電池では、電極体の最外周面に金属リチウム製の負極が露出していると、該金属リチウムの粘着性のために外装缶内への挿入作業の途中で負極が外装缶の内壁に張り付いて、電極体を完全に挿入できなくなるおそれがある。かかる不具合は、電極体と外装缶の内面との間の隙間寸法を大きく採ることで解消できるが、これは電池容量の低下を招く。加えて負極と外装缶とを、別途リード体などを用いて電気的に導通させなければならず、生産性良く電池を組み立てられない点でも不利がある。
【0004】
捲回式の電極体を電池要素とする電池において、外装缶に対する電極体の挿入性の向上を図ることを目的として、電極体の表面を金属体で覆うことは、例えば特許文献1に公知である。かかる特許文献1には、底部と、該底部を支点として傾動する一対の側壁と、側壁の両側辺を内広がり状に屈曲してなる屈曲部とからなる金属ケースが開示されており、底部に電極体を載置した状態で金属ケースを外装缶内に挿入していくと、側壁が閉じるようになっている。
【0005】
【特許文献1】
特開平6−150974号公報(図1、図3、図4)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
かかる従来例によれば、金属ケースで覆いながら外装缶内に電極体を挿入できるので、電極体の最外周面に負極である金属リチウムが露出する形態であっても、金属リチウムが外装缶の内壁に貼り付く不具合を確実に解消でき、従って電極体の挿入性の向上を図って、生産性良く電池を製造できる利点がある。但し、別体で成形した金属ケースを組み付ける形式であるので、その分だけ部品点数が多くなり、電池全体の製造コストが高く付く。また、金属ケースを構成する側壁の厚み分だけ外装缶の内部体積が減少して、電極体の外形寸法が小さくなることが避けられず、電池容量の低下を招く不利もある。
【0007】
加えて、電極体として図1に示すような厚み寸法が大きく且つ短いシート状の正極3を、負極4およびセパレータ5とともに捲回してなる形態を採る非水電解液電池においては、正極3の捲回末端部Eが外方向に大きく張り出すことが避けられず、その結果、先の負極4である金属リチウムの粘着性と相俟って、円筒状の外装缶2内へ電極体6をスムーズに挿入することが困難となる。すなわち、薄く且つ長いシート状の正・負極をセパレータを介して捲回してなる渦巻状の電極体6を電池要素とする電池においては、正負極の厚み寸法は極めて小さく、これら正・負極の捲回末端部の外方向への張り出し幅は無視できるほどに僅かであるため、円筒状の外装缶内へ電極体を挿入する際に捲回末端部を無理に押し込むような事態は生じない。これに対して、図1のごとく、厚み寸法が大きく且つ短いシート状の正極3を、負極4およびセパレータ5とともに捲回してなる電極捲回体6を電池要素とする電池においては、捲回末端部Eに係る正極3が外方向に大きく張り出すため、電極捲回体6を円柱状にすることが難しく、従って電極捲回体6を外装缶2内にスムーズに挿入することは容易でない。加えて先に述べたように、電極捲回体6の外周面に粘着性のある金属リチウム製の負極4が露出していると、かかる金属リチウムの粘着性のために挿入作業の途中で負極4が外装缶2の内壁に張り付いて、その点でも電極捲回体6をスムーズに挿入することが難しくなる。電極捲回体6を外装缶2内に無理に押し込むと、捲回末端部Eに係るセパレータ5が正極3のエッジ部で損傷されて、内部短絡を起こすおそれがある。
【0008】
本発明の目的は、厚み寸法が大きく且つ短いシート状の正極を、金属リチウム製の負極およびセパレータとともに捲回してなる略円柱状の電極捲回体を電池要素とする非水電解液電池において、電極捲回体の構造に改良を加えて、円筒状の外装缶内への電極捲回体の挿入動作をスムーズに行うことができるようにし、以て電池の生産性の向上を図ることにある。
【0009】
本発明の目的は、従来形態のごとく金属ケースのような別部品を用いずとも、外装缶内への電極体の挿入をスムーズに行うことができ、構造が簡素で安価に製造できる非水電解液電池を得ることにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、図2に示すごとく、上方開口部を有する有底円筒状の外装缶2内に、シート状の正極3と負極4とをセパレータ5を介して捲回してなる電極捲回体6と、非水電解液とを収容してなる円筒形の非水電解液電池を対象とする。図1に示すように、電極捲回体6は、正極3の捲回始端部Sと捲回末端部Eとで規定される捲回数が1.5周以上、2.5周以下となるように正負極3・4およびセパレータ5を捲回してなるものであって、全体として略円柱形状に成形されている。正極3は、正極活物質合剤を0.5mm以上、2mm以下の厚み寸法を有するシート状に成形してなる2枚の正極シート20・21と、これら正極シート20・21の間に介在された集電体22とからなる。なお、図1には、捲回数が1.6周程度の形態を示す。
【0011】
そのうえで本発明は、図1および図3に示すごとく、前記2枚の正極シート20・21と前記集電体22とが分割されているか、または、前記2枚の正極シート20・21と前記集電体22とが捲回始端部Sに相当する箇所でのみ固定され、他の箇所では分割されており、負極4は金属リチウムからなるものであって、該負極4は、電極捲回体6の最外周部において正極3よりも外周寄りに位置しており、負極4の最外周面の全体が、正負極3・4およびセパレータ5とともに捲回された、外装缶2内への電極捲回体6の挿入性向上用の金属箔23で被覆されていることを特徴とする。
【0012】
具体的には、金属箔23は、0.005mm(5μm)以上、0.1mm以下の厚み寸法を有するものとすることができる。
【0013】
図3(c)に示すごとく、金属箔23は、電極捲回体6の作成に先立って、シート状の負極4の表面に一部重畳状に固着する。この固着状態において、該金属箔23は捲回末端部Eの方向に向かって負極4よりも長く延出されている。そして、最外周面の全体が金属箔23で覆われるように、正負極3・4、セパレータ5および該金属箔23を捲回して電極捲回体6を作成する。
【0014】
金属箔23の素材金属としては、例えば銅、ニッケル、鉄、ステンレスなどを挙げることができる。
【0015】
【発明の作用効果】
最近の応用機器の多様化により、メモリーバックアップなどの軽負荷用途、カメラ用などの重負荷用途だけでなく、データの発信、受信など中負荷での用途が増加しつつあり、中負荷で特徴を発揮する電池の開発が要望されている。そこで、例えば、特開平6−267583号公報や特開平9−190836号公報などには、厚い電極を数回巻いた電極捲回体を電池要素とする電池が提案されている。かかる電極捲回体を電池要素とする電池によれば、厚い電極を用いることで、従来の重負荷特性の電池に比べて、電池容量の向上に直接的に寄与しないセパレータや集電体などの使用量を減らして活物質の充填性の向上を図ることができ、従って高容量な電池を得ることができる点で有利である。また、極端な大電流を流せなくすることで、安全性、信頼性に優れ、中負荷特性に優れた電池を得ることができる。
【0016】
しかし、上記公報に係る電池では、その正極をニッケル発泡体からなる集電体の空隙に活物質合剤を充填してなる形態としてあるため、正極は可撓性や柔軟性に劣る。このため正極の厚み寸法を大きくとると、捲回時に正極にクラックができたり、活物質が脱落することが避けられず、導電不良や短絡を引き起こすおそれがある。薄い長尺の電極を捲回してなる渦巻電極体を電池要素とする電池の多くは、集電網に活物質合剤を圧着したり、金属箔に活物質合剤を塗布するなどして正極を得ている。しかし、正極の厚み寸法を大きくしていくと、捲回時に正極にクラックができたり、活物質が脱落することが避けられない。
【0017】
そこで本発明においては、図1および図3(c)に示すごとく、正極活物質合剤をシート状に成形してなる2枚の正極シート20・21と、これら正極シート20・21の間に介在された集電体22とで正極3を構成した。これにより、従来形態のニッケル発泡体からなる集電体の空隙に活物質合剤が充填された一枚物の正極などと比べて、正極3の可撓性や柔軟性を良好に担保できる。すなわち、正極3を独立別個の2枚の正極シート20・21と集電体22との三分割された構成としたので、一枚あたりの正極シート20・21の厚み寸法は小さくて済み、従って正極3の厚み寸法を大きく取りながら、その可撓性や柔軟性を良好に担保できる。以上より、捲回時における活物質合剤の脱落・剥離やクラックの発生などを効果的に防いで、短絡や導電不良の発生を確実に抑えることができる。
【0018】
正極シート20・21の厚み寸法を0.5mm〜2mmと規定したのは、以下のような理由による。すなわち、0.5mm未満では捲回数が多くなって、セパレータ5や集電体22等の電池容量の向上に直接的に寄与しない部品が多くなり、電池容量の高容量化が図れない。2mmを超えると、正極シート20・21の可撓性や柔軟性が不良となって活物質合剤が脱落するおそれがある。正極3の捲回始端部Sと捲回末端部Eとで規定される捲回数を1.5周以上、2.5周以下と設定したのは、捲回数が1.5周未満、または2.5周を超えると、図1において符号Dで示される外装缶内のデッドスペースが大きくなることによる。加えて、本発明者等の知見によれば、正極シート20・21の厚み寸法、および捲回数を上記の数値範囲に設定することにより、捲回中心部Cを楕円形状とすることと相俟って、電極捲回体6を略円柱状に成形できる。
【0019】
正極シート20・21と集電体22の全体を貼りあわせて、一枚物のシート状に成形した場合には、内周側の正極シート20と外周側の正極シート21との捲回半径差に起因して、正極シート20・21にクラックができやすい。場合によっては捲回できないこともある。その点、本発明のように正極シート20・21と集電体22とを捲回始端部Sのみを固定した状態で捲回するようにしてあると(図3(c)参照)、両正極シート20・21を異なる捲回半径で適切に捲回できるので、活物質合剤の脱落やクラックの発生などを確実に阻止できる。
【0020】
そのうえで本発明においては、金属リチウム製の負極4の最外周面の全体を金属箔23で被覆した。従って、外装缶2内への電極捲回体6の挿入時に金属リチウムが外装缶2の内壁に貼り付くことを効果的に防いで、電極捲回体6の挿入作業をスムーズに行うことが可能となるので、非水電解液電池1を生産性良く組み立てることができる。電極捲回体6を外装缶2内に無理に押し込むことがなくなり、捲回末端部Eに係るセパレータ5の損傷に起因する内部短絡の発生を抑えることができるので、非水電解液電池1の信頼性、安全性を良好に担保できる点でも有利となる。
【0021】
金属箔23が正負極2・3およびセパレータ5とともに捲回された形態としたから、別途電極捲回体6の最外周面に金属箔23を貼り付ける形態に比べて、生産性良く電極捲回体6が得られ、非水電解液電池1の製造コストの低減化に貢献できる。従来形態のような金属ケースが不要であるから、その分だけ非水電解液電池1の製造コストが安価に済む。加えて、金属箔23を介して負極4と外装缶2とが電気的に接続されるため、別途負極リードなどで負極4と外装缶2とを導通させる形態に比べて、生産性良く電池を製造できる。負極リードで負極4と外装缶2とを導通させる形態に比べて、集電効率と放電容量に優れる点でも有利である。
【0022】
具体的には、図3(b)に示すごとく、電極捲回体6の作成に先立って金属箔23をシート状の負極4の表面に一部重畳状に固着する。このとき金属箔23は捲回末端部Eの方向に向かって負極4よりも長く延出されるようにする。そして、図1に示すごとく、最外周面の全体が金属箔23で覆われるように、正負極3・4、セパレータ5および金属箔23を捲回して電極捲回体6を得ている。
【0023】
金属箔23の厚みぶんだけ外装缶2の内部体積が減少するため、金属箔23の厚み寸法は可及的に小さいことが好ましく、本発明においてはその厚み寸法は0.005mm以上、0.1mm以下に設定する。0.005mmを下回ると、金属箔23が破れるおそれがある。0.1mmを超えると、外装缶2の内部体積の減少が大きくなり、挿入できる電極捲回体は小さなものとなるため、電池容量が低下する。
【0024】
【発明の実施の形態】
図1ないし図3に、本発明の実施形態に係る非水電解液電池を示す。図2において、非水電解液電池1は、上方開口部を有する有底円筒状の外装缶2と、外装缶2内に装填された正極3および負極4と、外装缶2の上方開口部を封止する封口構造とからなる。正極3および負極4は、セパレータ5を介して捲回してなる電極捲回体6として、電解液とともに外装缶2内に収容されている。外装缶2は、鉄やステンレスを素材とする。
【0025】
封口構造は、外装缶2の上方開口部の内周縁に固定された蓋板8と、蓋板8の中央部に開設された開口に、ゴム製の絶縁パッキン9を介して装着された端子体10と、蓋板8の下部に配置された絶縁板11とからなる。絶縁板11は、円盤状のベース部12の周縁に環状の側壁13を立設した上向きに開口する丸皿形状に形成されており、ベース部12の中央にはガス通口14が開設されている。蓋板8は、側壁13の上端部に受け止められた状態で、外装缶2の上方開口部の内周縁に、レーザ溶接若しくはパッキングを介したクリンプシールで固定されている。蓋板8もしくは外装缶2の缶底2aには薄肉部を設け、内圧が急激に上昇したときの対策としてのベントを設けることができる。正極3と端子体10の下面とは、正極リード体15で接続されている。
【0026】
図1に示すごとく、電極捲回体6は、正極3の捲回始端部Sと捲回末端部Eとで規定される捲回数が、1.5周以上、2.5周以下となるように正・負極3・4およびセパレータ5を捲回してなるものであって、全体として略円柱形状に形成される。なお、図1には捲回数が1.6周程度の形態を示す。正極3は、同一の厚み寸法を有する帯状の2枚の正極シート20・21と、これら正極シート20・21の間に介在された集電体22とを含み、電極捲回体6の作成時においては、正極シート20・21と集電体22は、捲回始端部Sのみを固定した状態で捲回される(図3(c)参照)。より詳しくは、集電体22が、正極シート20・21よりも数mm内側にくるように三者を重ね合わせたうえで、長さ方向の端部から3〜10mmをプレスにより圧着する。そして、負極4、セパレータ5とともに正極3を捲回して、電極捲回体6を作成している。
【0027】
正極シート20・21は、正極活物質合剤を0.5mm以上、2mm以下の厚み寸法を有するシート状に成形してなる。正極活物質としては、例えば二酸化マンガン、フッ化カーボン、リチウムコバルト複合酸化物、スピネル形リチウムマンガン複合酸化物などを挙げることができる。
【0028】
正極3の電導助剤としては、黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラックから選択される一種、または2種以上の複合物を用いることができる。正極3のバインダとしては、テフロンディスパージョンや、粉末のテフロン(登録商標)、ゴム系バインダなどを用いることができるが、テフロンディスパージョンを用いることが好ましい。
【0029】
集電体22としては、ステンレス316や、430、444などからなる平織り金網、エキスパンドメタル、ラス網、パンチングメタル、金属箔などを用いることができる。集電体22の表面には、ペースト状の導電材が塗布されている。
【0030】
集電体22として立体構造を有する網状の集電体22を用いた場合も、金属箔やパンチングメタルなどの本質的に平板からなる材料を用いた場合と同様に、導電材の塗布により集電効果の著しい改善が認められる。これは、網状の集電体22の金属部分が正極シート20・21と直接的に接触する経路のみならず、網目内に充填された導電材を介しての経路が有効に利用されていることに拠るものと推定される。
【0031】
導電材の具体例としては、銀ペーストやカーボンペーストなどを挙げることができる。とくにカーボンペーストは、銀ペーストに比べて材料費が安く済み、しかも銀ペーストと略同等の接触効果が得られるため、非水電解液電池の製造コストの低減化を図るうえで好適である。導電材のバインダとしては、水ガラスやイミド系のバインダなどの耐熱性の材料を用いることが望ましい。これは正極シート20・21中の水分を除去する際に200℃を超える高温で乾燥処理するためである。
【0032】
負極4は、薄い板状(箔状)に形成されており、その材料としては、リチウム金属、リチウムとアルミニウムなどの合金を挙げることができる。負極4は、図1および図3(b)に示すごとく、短尺と長尺の2枚の箔4a・4bを、張り合わしてなるものであり、これらを正極3、セパレータ5とともに捲回して電極捲回体6を作製する。
【0033】
図1および図4において符号23は、負極4の最外周面の全体を覆う、外装缶2内への電極捲回体6の挿入性向上用の金属箔を示す。図3(c)に示すごとく金属箔23は、長尺側の負極4bの表面に一部重畳状に貼り合わされている。このとき金属箔23は、捲回末端部Eの方向に向かって負極4よりも長く延出されている。そして、その最外周面の全体が金属箔23で覆われるように、正負極3・4、セパレータ5および金属箔23を捲回して、電極捲回体6を作成している。金属箔23の素材としては、銅、ニッケル、鉄、ステンレスなどを挙げることができる。
【0034】
金属箔23の厚みぶんだけ外装缶2の内部体積が減少するため、金属箔23の厚み寸法は可及的に小さいことが好ましい。本実施形態においてはその厚み寸法は0.005mm以上、0.1mm以下に設定する。0.005mmを下回ると、金属箔23が破れやすくなる。0.1mmを超えると、活物質合剤の充填性が不良となり、電池容量の低下を招く。なお、図1および図4は、電極捲回体6の構造を概念的に示したものであり、とくに金属箔23の厚み寸法などは実際とは異なる。
【0035】
電解液としては、溶質としてLiPF6 、LiClO4 、LiCF3 (CF3 SO2 )2 NLiなどを0.3〜1.5M/l溶解した溶媒として、PC、ECなどの環状カルボネートにDMEなどの鎖状エーテル、ジメチルカルボネートなどの鎖状カルボネートを混合した電解液が用いられる。
【0036】
セパレータ5としては、PP、PE、PET、PBT、PPSなどの不織布、微孔性フィルムなどを用いることができる。
【0037】
電極捲回体6は、図3に示すような手順で作製することができる。まず、図3(a)に示すごとく、セパレータ5を2つ割の巻芯25に挟んで1周巻く。次に図3(b)に示すごとく、負極4を短尺4aのみの一層部分から巻芯25に向けて挿入して、セパレータ5とともに1周巻き込む(図3(c)参照)。続いて、図3(c)に示すごとく、正極3をセパレータ5を介して負極4上に載置して巻芯25で捲回する。ここでは、正極3は、両正極シート20・21および集電体22を固定した捲回始端部Sの側から捲回されるようにしてあり、長尺の負極4b上にセパレータ5を介して載置された状態で捲回される。金属箔23は、捲回末端部Eの方向に向かって負極4よりも長く延出された姿勢で、一部が負極4a・4bの間に挟まれるようにして、長尺側の負極4bの表面に貼り合わされており、正負極2・3およびセパレータ5とともに巻芯25により捲回される。捲回終了後は、金属箔23が最外周を覆う形となる。以上より、図1に示すような形態の電極捲回体6を得ることができる。
【0038】
このように、金属リチウム製の負極4の最外周面の全体を金属箔23で被覆してあると、外装缶2内への電極捲回体6の挿入時に金属リチウムが外装缶2の内壁に貼り付くことを効果的に防いで、電極捲回体6の挿入作業をスムーズに行うことができるので、電池の生産性向上を良く図ることができる。電極捲回体6を外装缶2内に無理込むことがなくなり、捲回末端部Eに係るセパレータ5の損傷に起因する内部短絡の発生を抑えて、非水電解液電池1の信頼性、安全性も向上できる。
【0039】
加えて、金属箔23が正負極3・4とともに捲回された形態としたから、別途電極捲回体6の最外周面に金属箔23を貼り付ける形態に比べて、生産性良く電極捲回体6が得られ、非水電解液電池1の製造コストの低減化に貢献できる。また、金属ケースなどが不要であるから、その分だけ電池1の製造コストが安価に済む点でも有利である。
【0040】
【実施例】
次に、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。但し、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、この実施例においては、CR電池を例にして説明する。
【0041】
《実施例1》
〈正極の製法〉
(配合) カーボンブラック3%と、二酸化マンガン(東ソー社製)92%の比率でプラネタリーミキサーを用いて乾式で5分間混合したのち、水を重量比で固形分の20%添加して5分間混合した。テフロンディスパージョン(D−1 ダイキン工業社製)を固形分として5%を残りの水に希釈した状態で添加し、5分間混合した。配合剤中の水分は、固形分100に対し25〜30に調整した。
【0042】
(シート化) 混合した配合剤を直径250mmの2本ロールを用い、ロール温度を130±5℃に調整し、プレス圧7トン/cm、ロール間隔0.4mm、回転速度10rpmで、ロールによる圧延、シート化を行った。ロールを通過した配合剤(予備シート)を105℃±5℃で残水分が2%以下になるまで乾燥した。次いで乾燥後の予備シートを粉砕器を用いて粉砕した。ここでは、プレスされた予備シートが、元の見かけ体積の2倍以上になるまで粉砕した。粉砕された粒子径は、大部分が1mm以下であり、バインダとして添加したテフロン(登録商標)の繊維も1mm以下の長さに切断されていた。
【0043】
粉砕された材料に対して、再度ロールによるシート化を行った。ロールの間隔は0.6±0.05mmに調整し、ロール温度は120±10℃、プレス圧7トン/cm、回転速度10rpmでシート化を行い、正極シートを得た。正極シートは、厚さが1.0mm、密度が2.6g/cm3 であった。
【0044】
以上のようにして、内周用と外周用の2枚の正極シート20・21(図1、図3(c)参照)を作成した。内周用の正極シート20は、幅37mm、長さ51mmに切断した。外周用の正極シート21は、幅37mm、長さ62mmに切断した。
【0045】
(集電体) ステンレス316からなるエキスパンドメタルを集電体22として用いた。このエキスパンドメタルは、幅34mm、長さ56mmに切断し、その長さ方向の中央部に、厚さ0.3mm、幅3mmのステンレスリボン製の正極リード体15を抵抗溶接により取り付けた。集電体22にカーボンペースト(日本黒鉛社製)を網の目をつぶさない程度に塗布したのち、105℃±5℃の加熱温度条件で2時間以上乾燥した。尚、ここでは10mg/cm2 となるようにカーボンペーストを塗布した。
【0046】
次に、図3(c)に示すごとく、2枚の正極シート20・21を、その間に集電体22を介装した状態で長さ方向の一端部のみを固定して三者を一体化した。具体的には、内・外周用の2枚の正極シート20・21は、長さ方向の一端を揃えるとともに、集電体22の端部が正極シート20・21からはみ出さないようにセットし、その状態で長さ方向の端部から5mmをプレスにより圧着することで、3者を一体化した。続いて、これら正極シート20・21および集電体22を250℃±10℃で6時間熱風乾燥して正極3を得た。尚、ここで正極シート20・21と集電体22とを一体化したのは、作業上の問題であり、尤も独立した正極シート20・21と集電体22とを、捲回時に一体化しても特性上の問題はない。
【0047】
〈負極の製法〉 負極4は、幅37mm、厚さ0.3mmの金属リチウム箔を46mmと82mmに切断し、短尺側の箔4aの一端から10mmを除き、36mmを長尺側の箔4bと重ねて圧着した。このとき、幅40mm、厚さ0.01mm、長さ90mmの銅箔(金属箔23)を、一部が箔4aと箔4bの間に挟まれるようにして、箔4bの表面に捲回末端部Eの側から50mm重ねて貼り付けた。
【0048】
〈組立方法〉 幅44mm、厚さ0.025mmのPEからなる微孔性セパレータ(旭化成社製ハイポア)を170mmに切断し、図3(a)に示すごとく2つ割の直径4mmの巻芯25に挟んで1周巻いた。次いで、図3(b)・(c)に示すごとく、負極4のリチウム金属箔の一重長さが10mmの方を巻芯25側にして、セパレータ5と同時に1周巻き込んだのち、正極シート20・21を固定した方を巻芯25側に載置して捲回した。捲回終了後は、金属箔23が最外周を覆う形となった。以上より、図1に示すような電極捲回体6を得た。
【0049】
ニッケルメッキした鉄缶からなる外装缶2の底に、厚さ0.2mmのPP製絶縁板を挿入し、その上に電極捲回体6を正極リード体15が上側に向く姿勢で挿入した。正極リード体15は、絶縁板11を挿入したのち、端子体10の下面に抵抗溶接した。この時点で絶縁抵抗を測定し、短絡がないことを確認した。
【0050】
電解液は、0.5M LiClO4 /(PC+DME=1:2)を、外装缶2内に3.3±0.1ml注入した。注入は3度に分け、最終工程で減圧にして全量を注入した。電解液の注入後、蓋体8を嵌合・レーザ溶接により封口した。以上により、実施例1に係る非水電解液電池を得た。
【0051】
(後処理:予備放電、エージング)
封口した電池は、1Ωの抵抗で30秒間予備放電し、45℃で24時間保管した後、1Aの低電流で3分間2次予備放電を行った。予備放電後の電池を、室温で7日間エージングし、開路電圧を測定した。
【0052】
《実施例2》 金属箔23として、幅40mm、厚さ0.01mm、長さ130mmの銅箔を用いた。この銅箔を負極4を構成する長短の金属リチウム4a・4bの間に挟み込むように配した。それ以外は実施例1と同様にして、実施例2に係る非水電解液電池を得た。
【0053】
《比較例1》 最外周面が金属箔23で覆われていない電極捲回体6を作成した。すなわち、この比較例1に係る電極捲回体6では、その最外周面に負極4である金属リチウムが露出している。それ以外は実施例1と同様である。
【0054】
《比較例2》 最外周面がセパレータで覆われた電極捲回体6を作成し、これを外装缶2内に挿入して比較例2に係る非水電解液電池を得た。具体的には、セパレータ5として、幅44mm、厚さ0.025mmのPEからなる微孔性セパレータ(旭化成社製ハイポア)を170mmに切断したものを用いて、これを正負極3・4とともに、最外周面がセパレータ5で覆われるように捲回して電極捲回体6とした。負極4の中央部に厚さ0.1mm、幅3mmのニッケルリボンを負極リードとして圧着し、これを外装缶2の内壁に抵抗溶接した。これら以外は実施例1と同様である。
【0055】
実施例1、2および比較例1、2の電極捲回体6を外装缶2内に挿入し、電池を組み立てた。最外周面が金属箔23で覆われた実施例1、2および最外周面がセパレータ5で覆われた比較例2は、電極捲回体6を外装缶2内に問題なく挿入することができた。一方、比較例1に係る電極捲回体6は、最外周面に露出した負極4である金属リチウムが外装缶2に貼り付くため挿入できず、電池を組み立てることができなかった。
【0056】
表1に実施例1、2及び比較例2に係る非水電解液電池の内部抵抗、300mAでの連続放電、1Aでのパルス放電(パルス幅(放電時間):3秒間、パルス間隔(休止時間):27秒間)の結果を示す。
【0057】
【表1】
【0058】
表1に示すように、内部抵抗は実施例2が最も低く、次いで実施例1、比較例2の順となった。この結果より、比較例2のごとく、負極リード体を介して負極4と外装缶2とを電気的に接続するよりも、実施例1、2の非水電解液電池のごとく金属箔23を介して負極4と外装缶2とを電気的に接続するほうが、効率良く集電できることがわかる。また、連続放電、パルス放電のいずれも実施例1、2のほうが比較例2より大きな容量が得られ、従って、電極捲回体6の最外周面を金属箔23で覆うことが、電池容量の向上の点でも有利であることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の非水電解液電池の横断平面図である。
【図2】本発明の非水電解液電池の縦断正面図である。
【図3】電極捲回体の作製方法を説明するための図である。
【図4】本発明の非水電解液電池の要部の拡大図である。
【符号の説明】
1 非水電解液電池
2 外装缶
3 正極
4 負極
5 セパレータ
6 電極捲回体
20 内周側に位置する正極シート
21 外周側に位置する正極シート
22 集電体
23 金属箔
S 正極の捲回始端部
E 正極の捲回末端部
Claims (4)
- 上方開口部を有する有底円筒状の外装缶内に、シート状の正極と負極とをセパレータを介して捲回してなる電極捲回体と、非水電解液とを収容してなる円筒形の非水電解液電池であって、
前記電極捲回体は、前記正極の捲回始端部と捲回末端部とで規定される捲回数が1.5周以上、2.5周以下となるように正負極およびセパレータを捲回してなるものであって、全体として略円柱形状に成形されており、
前記正極は、正極活物質合剤を0.5mm以上、2mm以下の厚み寸法を有するシート状に成形してなる2枚の正極シートと、これら正極シートの間に介在された集電体とからなり、
前記2枚の正極シートと前記集電体とが分割されているか、または、前記2枚の正極シートと前記集電体とが捲回始端部に相当する箇所でのみ固定され、他の箇所では分割されており、
前記負極は金属リチウムからなるものであって、前記電極捲回体の最外周部において前記正極よりも外周寄りに位置しており、
前記負極の最外周面の全体が、正負極およびセパレータとともに捲回された、外装缶内への電極捲回体の挿入性向上用の金属箔で被覆されていることを特徴とする非水電解液電池。 - 前記金属箔が、0.005mm以上、0.1mm以下の厚み寸法を有するものである請求項1記載の非水電解液電池。
- 前記金属箔は、前記電極捲回体の作成に先立って、シート状の負極の表面に一部重畳状に固着されていて、この固着状態において、該金属箔は捲回末端部の方向に向かって負極よりも長く延出されており、
前記電極捲回体は、その最外周面の全体が前記金属箔で覆われるように、前記正負極、セパレータおよび該金属箔を捲回してなるものである請求項1又は2記載の非水電解液電池。 - 前記金属箔が、銅、ニッケル、鉄、ステンレスのいずれかからなるものである請求項1又は2又は3記載の非水電解液電池。
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