JP4127377B2 - 配線基板およびその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、半導体素子等の電子部品を搭載するために用いられる配線基板およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、現在の電子機器は、移動体通信機器に代表されるように小型・薄型・軽量・高性能・高機能・高品質・高信頼性が要求されてきており、このような電子機器に搭載される電子装置も小型・高密度化が要求されるようになってきている。そのため、電子装置を構成する配線基板にも小型・薄型・多端子化が求められてきており、それを実現するために信号導体等を含む配線導体層の幅を細くするとともにその間隔を狭くし、さらに配線導体層の多層化により高密度配線化が図られている。
【0003】
このような高密度配線が可能な配線基板として、ビルドアップ法を採用して製作された配線基板が知られている。このビルドアップ配線基板は、例えば、次に述べる方法により製作される。
【0004】
まず、ガラスクロスやアラミド不布織等の補強材に耐熱性や耐薬品性を有するエポキシ樹脂やアリル変性ポリフェニレンエーテル樹脂に代表される熱硬化性樹脂を含浸させた絶縁シートに金属箔から成る配線導体を埋入し、しかる後これを加熱硬化して絶縁基板に配線導体が埋入して成るコア基板を得る。
【0005】
次に、コア基板にエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂から成る樹脂フィルムを貼着し加熱硬化して、厚みが20〜200μmの絶縁樹脂層を形成する。次に、配線導体上の絶縁樹脂層に径が50〜200μmの貫通孔をレーザで穿設し、さらに絶縁樹脂層の表面および貫通孔の内面を過マンガン酸カリウム溶液等の粗化液で化学粗化し、次にセミアディティブ法を用いて絶縁樹脂層の表面および貫通孔の内面に銅めっきから成る導体膜を被着して配線導体層および貫通導体を形成する。そして、この上に絶縁樹脂層や貫通導体・配線導体層の形成を複数回繰り返すことによって、ビルドアップ配線基板が製作される。
【0006】
【特許文献1】
特開2002−261451号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述の配線基板は、絶縁基板の熱膨張係数が10×10-6〜15×10-6/℃、銅箔から成る配線導体の熱膨張係数が15×10-6〜20×10-6/℃であり絶縁基板の熱膨張係数と配線導体の熱膨張係数が異なることから、配線基板に電子部品を搭載した後に長期の熱履歴が繰り返し印加されると、絶縁基板と配線導体の熱膨張差により発生する熱応力が絶縁基板と配線導体との境界に集中して配線導体の側面と絶縁基板との間に隙間が発生し、その隙間を起点として絶縁樹脂層にクラックが生じるとともに配線導体層を切断して断線不良を発生させてしまうことがあるという問題点を有していた。
【0008】
また、コア基板にアリル変性ポリフェニレンエーテル樹脂を用いた場合、アリル変性ポリフェニレンエーテル樹脂が化学的に安定で粗化することが困難であり、コア基板の表面にエポキシ樹脂を含む絶縁樹脂層を積層した場合、コア基板のアリル変性ポリフェニレンエーテル樹脂と絶縁樹脂層のエポキシ樹脂とが強固に結合することができず、その結果、コア基板とその上に積層された絶縁樹脂層との密着力が弱いものとなってしまい、例えば配線基板の表面に電子部品を実装する際に、配線基板に急激な温度変化が加わったりあるいは電子部品を実装した後に電子部品が作動する際に発生する熱や外部環境による熱等が長期間にわたり繰返し加わったりすると、絶縁樹脂層とコア基板との間で膨れや剥がれが発生してしまうことがあるという問題点も有していた。
【0009】
他方、上述の配線基板の製造方法は、配線導体を絶縁基板に埋入することによって、および絶縁樹脂層を絶縁基板に被着することによって配線基板を製作することから、絶縁基板と配線導体および絶縁樹脂層との密着が弱く、配線基板に電子部品を搭載した後に長期の熱履歴が繰り返し印加されると、絶縁基板と配線導体および絶縁樹脂層との熱膨張差により発生する熱応力が絶縁基板と配線導体との境界および絶縁基板と絶縁樹脂層との境界に集中して、配線導体の側面と絶縁基板との間に隙間が発生し、その隙間を起点として絶縁樹脂層にクラックが生じるとともに配線導体層を切断して断線不良を発生させてしまう、あるいは絶縁樹脂層が絶縁基板から剥離してしまうことがあるという問題点を有していた。
【0010】
本発明は、かかる従来技術の問題点に鑑み完成されたものであり、その目的は、電子部品を搭載した配線基板において、長期の熱履歴を繰り返し印加しても、熱応力に充分耐え、断線等が生じない接続信頼性の高い配線基板を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明の配線基板は、耐熱性繊維基材にアリル変性ポリフェニレンエーテル樹脂を含浸させた絶縁基板に銅箔から成る配線導体をその表面が前記絶縁基板の表面と同一面をなすように埋入して成るコア基板の前記配線導体を埋入した表面に、エポキシ樹脂を含む絶縁層と銅めっきから成る配線導体層とを交互に複数層積層して成る配線基板において、前記配線導体はその側面が粗化されており、かつ前記絶縁基板に前記側面と前記絶縁基板との間に前記エポキシ樹脂を介在させて埋入されていることを特徴とするものである。
【0012】
本発明の配線基板によれば、配線導体はその側面が粗化されており、かつ絶縁基板に側面と絶縁基板との間にエポキシ樹脂を介在させて埋入されていることから、配線導体の側面と絶縁基板との間に介在させたエポキシ樹脂が接着材の機能を果たして配線導体の側面とエポキシ樹脂とが強固に接着し、配線導体と絶縁基板とが強固に接着した配線基板とすることができる。そしてその結果、配線基板に電子部品を搭載した後に配線基板に長期の熱履歴が繰り返し印加され、絶縁基板と配線導体との熱膨張差により発生する熱応力が絶縁基板と配線導体との境界に集中したとしても、配線導体の側面と絶縁基板との間に隙間が発生することはなく、その隙間を起点として絶縁層にクラックが生じたり、このクラックが配線導体層を切断して断線不良を発生させてしまうということはない。
【0013】
また、本発明の配線基板によれば、絶縁基板と絶縁層とが配線導体の側面と絶縁基板との間に介在させたエポキシ樹脂のアンカー効果により強固に接合し、その結果、配線基板に電子部品を搭載した後に長期の熱履歴が繰り返し印加され、絶縁基板と絶縁層の熱膨張差により発生する熱応力が両者の境界に集中したとしても、絶縁層が絶縁基板から剥離してしまうということもない。
【0014】
本発明の配線基板の製造方法は、耐熱性繊維基材にアリル変性ポリフェニレンエーテル樹脂を含浸させた絶縁基板に銅箔から成る配線導体をその表面が前記絶縁基板の表面と同一面をなすように埋入して成るコア基板を準備する工程と、このコア基板の前記配線導体を埋入した表面にプラズマを照射して前記コア基板の表面およびその近傍に位置する前記アリル変性ポリフェニレンエーテル樹脂を収縮させることによって前記配線導体の側面と前記絶縁基板との間に隙間を形成する工程と、この隙間内に露出した前記配線導体の前記側面を粗化する工程と、前記コア基板の前記配線導体を埋入した表面にエポキシ樹脂を含む絶縁層を被着するとともに前記隙間の内部に前記エポキシ樹脂を充填する工程と、前記絶縁層の表面に銅めっきから成る配線導体層を被着する工程とを具備することを特徴とするものである。
【0015】
本発明の配線基板の製造方法によれば、コア基板の配線導体を埋入した表面にプラズマを照射してコア基板の表面およびその近傍に位置するアリル変性ポリフェニレンエーテル樹脂を収縮させることによって配線導体の側面と絶縁基板との間に隙間を形成し、次にこの隙間内に露出した配線導体の側面を粗化し、次にコア基板の配線導体を埋入した表面にエポキシ樹脂を含む絶縁層を被着するとともに隙間の内部にエポキシ樹脂を充填することから、配線導体の側面と絶縁基板との間に介在させたエポキシ樹脂が接着材の機能を果たすとともに配線導体の側面とエポキシ樹脂とが強固に接着し、配線導体と絶縁基板とが強固に接着した配線基板を提供することができる。また、絶縁基板と絶縁層とが配線導体の側面と絶縁基板との間に介在させたエポキシ樹脂のアンカー効果により強固に接合するので、絶縁基板と絶縁層との接合が強固な配線基板を提供することができる。
【0016】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の配線基板を添付の図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明の配線基板の実施の形態の一例を示す断面図であり、図2は、図1の要部拡大断面図である。これらの図において、1は絶縁基板、2は配線導体、2aは配線導体2の側面、3は絶縁基板1と配線導体2とから成るコア基板、4は絶縁層、5は配線導体層で、主にこれらで本発明の配線基板が構成されている。
【0017】
コア基板3を構成する絶縁基板1は、例えば耐熱性繊維基材であるガラス繊維を縦横に織り込んだガラスクロスにアリル変性ポリフェニレンエーテル樹脂を含浸させて成る厚みが0.15〜1.5mmの略四角形状の基板であり、配線導体2および絶縁層4の支持体としての機能を有するとともに配線基板に強度を付与する機能を有する。絶縁基板1は、その厚みが0.15mm未満であると配線基板の剛性が低下し、反りが発生し易くなる傾向があり、1.5mmを超えると配線基板が不要に厚いものとなり配線基板を軽量化することが困難となる傾向がある。従って、絶縁基板1の厚みは0.15〜1.5mmの範囲が好ましい。
【0018】
また、絶縁基板1の表面には銅箔から成る配線導体2がその表面が絶縁基板1の表面と同一面をなすように埋入されている。
このような銅箔から成る配線導体2は、その幅が20〜200μm、厚みが5〜50μmであり、配線導体層5とともに搭載する半導体素子等の電子部品(図示せず)の各電極を外部電気回路基板(図示せず)に電気的に接続する導電路の一部としての機能する。配線導体2は、その幅が20μm未満となると配線導体2の変形や断線が発生しやすくなる傾向があり、200μmを超えると高密度配線が形成できなくなる傾向がある。また、配線導体2の厚みが5μm未満になると配線導体2の強度が低下し変形や断線が発生しやすくなる傾向があり、50μmを超えると絶縁基板1への埋入が困難となる傾向がある。従って、配線導体2は、その幅を20〜200μm、厚みを5〜50μmの範囲とすることが好ましい。
【0019】
なお、上下に位置する配線導体2同士を、絶縁基板1に形成した貫通導体(図示せず)により電気的に接続してもよい。このような貫通導体は、その直径が30〜100μmであり、例えば、絶縁基板1に設けた貫通孔(図示せず)の内部に銅や銀・錫合金等の金属粉末とトリアジン系熱硬化性樹脂等とから成る導体を埋め込むことにより形成される。貫通導体を設ける場合、その直径が30μm未満になると貫通導体の形成が困難となる傾向があり、100μmを超えると高密度配線が形成できなくなる傾向がある。従って、貫通導体を設ける場合、その直径は30〜100μmの範囲とすることが好ましい。
【0020】
また、コア基板3の配線導体2を埋入した表面には、エポキシ樹脂を含有する絶縁層4と銅めっきから成る配線導体層5とが交互に積層されている。絶縁層4は、銅めっきから成る配線導体層5の支持体としての機能を有し、その厚みが10〜80μmであり、エポキシ樹脂と平均粒径が0.01〜2μmで含有量が10〜50重量%のシリカやアルミナ・窒化アルミニウム等の無機絶縁フィラーとから成る。
【0021】
無機絶縁フィラーは、絶縁層4の熱膨張係数を調整し配線導体層5の熱膨脹係数と整合させるとともに、絶縁層4の表面に適度な凹凸を形成し、配線導体層5と絶縁層4との密着性を良好となす機能を有する。なお、無機絶縁フィラーは、その平均粒径が0.01μm未満であると、無機絶縁フィラー同士が凝集して均一な厚みの絶縁層4を形成することが困難となる傾向があり、2μmを超えると絶縁層4の表面の凹凸が大きなものとなり過ぎて配線導体層5と絶縁層4との密着性を低下させてしまう傾向がある。従って、無機絶縁フィラーの平均粒径は、0.01〜2μmの範囲が好ましい。
【0022】
また、無機絶縁フィラーの含有量が10重量%未満であると、絶縁層4の熱膨張係数を調整する作用が小さくなる傾向があり、50重量%を超えると絶縁層4の樹脂量が減少し絶縁層4を成形することが困難となる傾向がある。従って、無機絶縁フィラーの含有量は、10〜50重量%の範囲が好ましい。
【0023】
また、絶縁層4には、レーザ加工によりビア孔6が形成されており、このビア孔6の内部に銅めっきから成る配線導体層5の一部を充填させることにより絶縁層4を挟んで上下に位置する配線導体2と配線導体層5、および配線導体層5同士が電気的に接続されている。なお、配線導体層5は、その幅が20〜200μmであり、その厚みが1〜2μmの無電解銅めっき層と厚みが10〜30μmの電解銅めっき層とから成り、配線基板に搭載される半導体素子等の電子部品の各電極を外部電気回路基板に電気的に接続する導電路としての機能を有する。
【0024】
配線導体層5は、その幅が20μm未満となると配線導体層5の変形や断線が発生しやすくなる傾向があり、200μmを超えると高密度配線が形成できなくなる傾向がある。また、配線導体層5の厚みが11μm未満になると配線導体層5の強度が低下し変形や断線が発生しやすくなる傾向があり、32μmを超えると配線導体層5の形成に長時間を要してしまう傾向がある。従って、配線導体層5は、その幅を20〜200μm、厚みを11〜32μmの範囲とすることが好ましい。
【0025】
そして、本発明の配線基板においては、配線導体2はその側面2aが粗化されており、かつ絶縁基板1に配線導体2の側面2aと絶縁基板1との間に絶縁層4を構成するエポキシ樹脂を介在させて埋入されており、また、このことが重要である。
【0026】
本発明の配線基板によれば、配線導体2はその側面2aが粗化されており、かつ絶縁基板1に側面2aと絶縁基板1との間に絶縁層4を構成するエポキシ樹脂を介在させて埋入されていることから、配線導体2の側面2aと絶縁基板1との間に介在させたエポキシ樹脂が接着材の機能を果たし、配線導体2の側面2aとエポキシ樹脂とが強固に接着し、配線導体2と絶縁基板1とが強固に接着した配線基板とすることができる。そしてその結果、配線基板に電子部品を搭載した後に配線基板に長期の熱履歴が繰り返し印加され、絶縁基板1と配線導体2の熱膨張差により発生する熱応力が絶縁基板1と配線導体2との境界に集中したとしても、配線導体2の側面2aと絶縁基板1との間に隙間が発生することはなく、その隙間を起点として絶縁層4にクラックが生じて配線導体層5を切断して断線不良を発生させてしまうということもない。
【0027】
また、本発明の配線基板によれば、絶縁基板1と絶縁層4とが配線導体2の側面2aと絶縁基板1との間に介在させた絶縁層4を構成するエポキシ樹脂のアンカー効果により強固に接合し、その結果、配線基板に電子部品を搭載した後に長期の熱履歴が繰り返し印加され、絶縁基板1と絶縁層4の熱膨張差により発生する熱応力が両者の境界に集中したとしても、絶縁層4が絶縁基板1から剥離してしまうということもない。
【0028】
なお、配線導体2の側面2aと絶縁基板1との間隔が1μm未満であると、配線導体2の側面2aを粗化すること、および配線導体2の側面2aと絶縁基板1との間にエポキシ樹脂を充填することが困難となる傾向にあり、5μmを超えると、このような大きな間隔を形成するのが困難となる傾向がある。従って、配線導体2の側面2aと絶縁基板1との間隔は1〜5μmであることが好ましい。
【0029】
また、配線導体2の側面2aは、その算術平均粗さRaが0.1μm未満の場合、配線導体2の側面2aと絶縁基板1との間に介在させたエポキシ樹脂との接合が弱いものとなる傾向にあり、他方、2μmを超える場合、そのような粗面を形成するのに長時間を要し、形成することが困難となる傾向にある。従って、配線導体2の側面2aは、その算術平均粗さRaを0.1〜2μmの範囲とすることが好ましい。
【0030】
なお、配線導体2の側面2aの粗化、および配線導体2を絶縁基板1へ配線導体2の側面2aと絶縁基板1との間にエポキシ樹脂を介在させての埋入は、次に述べる方法により行なわれる。
【0031】
まず、コア基板3の配線導体2を埋入した表面にプラズマを、出力が0.5〜3kw、酸素/四弗化炭素=1/1のガス比率の条件で、300〜500秒間照射することによって、絶縁基板1の表面およびその近傍に位置するアリル変性ポリフェニレンエーテル樹脂を収縮させ、配線導体2の側面2aと絶縁基板1との間に幅が1〜5μmの隙間7を形成し、次に、隙間7を形成したコア基板3を温度が約25℃の蟻酸・銅イオン溶液に数分間浸漬することにより、隙間7内に露出した配線導体2aの側面2aを算術平均粗さが0.1〜2μmの凹凸を有するように粗化し、しかる後、コア基板3の配線導体2を埋入した表面にエポキシ樹脂から成り絶縁層4と成るフィルムを貼着するとともに150〜180℃で数時間熱硬化することによりコア基板3の配線導体2を埋入した表面に絶縁層4を被着形成するとともに隙間7内に絶縁層4のエポキシ樹脂を充填することにより行なわれる。
【0032】
かくして、本発明の配線基板によれば、配線導体2はその側面2aが粗化されており、かつ絶縁基板1に側面2aと絶縁基板1との間にエポキシ樹脂を介在させて埋入されていることから、配線導体2の側面2aと絶縁基板1との間に介在させたエポキシ樹脂が接着材の機能を果たして配線導体2の側面2aとエポキシ樹脂とが強固に接着し、配線導体2と絶縁基板1とが強固に接着した配線基板とすることができる。
【0033】
なお、本発明は上述の実施の形態の一例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲であれば種々の変更は可能であり、本実施例では、絶縁基板を1層から成るものとした例を示したが、絶縁基板を2層以上から成るものとし、内部に配線導体や、上下に位置するこれらの配線導体間を電気的に接続する貫通導体を複数形成してもよい。
【0034】
次に、本発明の配線基板の製造方法を、図3に基づいて詳細に説明する。
図3(a)〜(f)は、本発明の配線基板の製造方法を説明するための各工程毎の要部断面図であり、11は転写用シート基材、12は転写用シートである。なお、図3において、図1および図2と同じ部材、箇所には同じ符合を付した。
【0035】
まず、耐熱性繊維基材にアリル変性ポリフェニレンエーテル樹脂を含浸させた絶縁基板1に銅箔から成る配線導体2をその表面が絶縁基板1の表面と同一面をなすように埋入して成るコア基板3を準備する。このようなコア基板3は、次に述べる方法により製作される。
【0036】
まず、図3(a)に示すように、耐熱性樹脂から成る転写用シート基材11に銅箔から成る配線導体2を被着して成る転写用シート12と、耐熱性繊維に未硬化のアリル変性ポリフェニレンエーテル樹脂を含浸させて成る絶縁基板1と成る前駆体シート1aとを用意する。
【0037】
転写用シート基材11は、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂やポリカーボネート(PC)等の耐熱性樹脂が用いられ、銅箔をエッチングして配線導体2を形成する際の支持体、および配線導体2を転写する際の支持体としての機能を有する。
【0038】
転写用シート基材11は、その厚みが20〜50μmであることが好ましく、厚みが20μm未満であると剛性が低下し銅箔をエッチングする際に配線導体2が変形し易くなる傾向にあり、50μmを超えると柔軟性が低下し絶縁基板1から剥離し難くなる傾向にある。従って、転写用シート基材11の厚みは20〜50μmが好ましい。
【0039】
また、配線導体2は、その厚みは5〜50μmが好ましく、さらには10〜20μmが好ましい。配線導体2の厚みが5μm未満になると配線導体2の強度が低下し変形や断線が発生しやすくなる傾向があり、50μmを超えると前駆体シート1aへの埋入が困難となる傾向がある。従って、配線導体2aの厚みは5〜50μmが好ましい。
【0040】
このような転写用シート12は、例えば厚みが25μm程度のポリエチレンテレフタレート等の耐熱性樹脂から成る転写シート基材11の一方の主面全体に接着材を介して厚みが12μm程度の銅箔を剥離可能に接着した後、銅箔上にフィルム状感光性レジストを被着するとともにこのレジストを露光・現像して配線導体2のパターンに対応するパターンのエッチングマスクを形成し、しかる後、塩化第二鉄溶液中に浸漬して銅箔の非パターン部をエッチング除去し、最後に、感光性レジストを剥離除去してパターン状の配線導体2を形成することにより製作される。
【0041】
他方、絶縁基板1と成る前駆体シート1aは、ガラスクロスやアラミド繊維等の耐熱性繊維にアリル変性ポリフェニレンエーテル樹脂を含浸させて半硬化させたものから成り、その表面は配線導体2を埋入可能な程度の可塑性を備えている。
【0042】
次に、前駆体シート1aの表面に転写用シート12を積層するとともにそれらを加熱加圧して配線導体2を前駆体シート1aに熱圧着した後、前駆体シート1aから転写用シート基材11を剥離して、前駆体シート1aにその表面が前駆体シート1aの表面と同一面をなすように配線導体2を転写埋入してする。
【0043】
熱圧着は、熱プレス機を用いて温度が100〜150℃、圧力が0.5〜5MPaの条件で数分間加圧することにより行なわれる。なお、熱圧着は加熱に先行して加圧のみを行なう方が良い。加熱を先に行なうと熱によって転写用シート12が伸び、配線導体2を所望の位置に正確に埋入することが困難となってしまう危険性がある。従って、熱圧着は加熱に先行して加圧を行なうことが好ましい。
【0044】
さらに、それらを加熱加圧して前駆体シート1aのアリル変性ポリフェニレンエーテル樹脂を熱硬化して、絶縁基板1にその表面が絶縁基板1の表面と同一面をなすように配線導体2を埋入した、図3(b)に断面図で示すようなコア基板3を得る。なお、加熱処理にあたっては、前駆体シート1aをフッ素系樹脂などから成る離型性シートで上下から挟みこみ、1〜5MPaの圧力で150〜240℃の温度で熱処理することにより、前駆体シート1aの熱硬化性樹脂を熱硬化させる。
【0045】
次に、図3(c)に断面図で示すように、コア基板3にプラズマを、出力が0.5〜3kw、酸素/四弗化炭素=1/1のガス比率の条件で、300〜500秒間照射することによって絶縁基板1の配線導体2を埋入した表面およびその近傍に位置するアリル変性ポリフェニレンエーテル樹脂を収縮させ、配線導体2の側面2aと絶縁基板1との間に幅が1〜5μmの隙間7を形成する。なお、コア基板3にプラズマを照射することによって、絶縁基板1の表面に算術平均粗さRaが0.5〜3μmの凹凸が形成される。この凹凸により絶縁基板1と絶縁層4との接着力を向上させることができる。
【0046】
次に、図3(d)に断面図で示すように、プラズマを照射したコア基板3を約25℃の温度の蟻酸・銅イオン溶液に数分間浸漬することにより、隙間7内に露出した配線導体2aの側面2aを算術平均粗さが0.1〜2μmの凹凸を有するように粗化する。
【0047】
次に、図3(e)に断面図で示すように、コア基板3の配線導体2を埋入した表面にエポキシ樹脂から成り絶縁層4と成るフィルムを貼着するとともに150〜180℃で数時間熱硬化することによりコア基板3の配線導体2を埋入した表面に絶縁層4を被着するとともに隙間4内に絶縁層4のエポキシ樹脂を充填する。なお、絶縁層4用のフィルムは、熱硬化の際に一旦、溶融軟化するのでその際に絶縁層3のエポキシ樹脂が隙間7の内部に良好に充填される。そして、隙間7内に充填されたエポキシ樹脂により絶縁基板1の表面に埋入された配線導体2と絶縁基板1とが強固に接着される。
【0048】
本発明の配線基板の製造方法によれば、コア基板3の配線導体2を埋入した表面にプラズマを照射して表面およびその近傍に位置するアリル変性ポリフェニレンエーテル樹脂を収縮させることによって配線導体2の側面2aと絶縁基板1との間に隙間7を形成し、次にこの隙間7内に露出した配線導体2の側面2aを粗化し、次にコア基板3の配線導体2を埋入した表面にエポキシ樹脂を含む絶縁層4を被着するとともに隙間7の内部にエポキシ樹脂を充填したことから、配線導体2の側面2aと絶縁基板1との間に介在させたエポキシ樹脂が接着材の機能を果たすとともに、配線導体2の側面2aが粗化されていることから配線導体2の側面2aとエポキシ樹脂とが強固に接着し、配線導体2と絶縁基板1とが強固に接着した配線基板を提供することができる。また、絶縁基板1と絶縁層4とが配線導体2の側面2aと絶縁基板1との間に介在させたエポキシ樹脂のアンカー効果により強固に接合するので、絶縁基板1と絶縁層4との接合が強固な配線基板を提供することができる。
【0049】
なお、絶縁層4は、その厚みが10〜80μmであり、エポキシ樹脂と平均粒径が0.01〜2μmで含有量が10〜50重量%のシリカやアルミナ・窒化アルミニウム等の無機絶縁フィラーとから成る。
【0050】
次に、図3(f)に断面図で示すように、絶縁層3の上面に銅めっきから成る配線導体層5を被着させる。さらに必要に応じてその上に次層の絶縁層4および配線導体層5を積層することによって配線基板が完成する。
【0051】
なお、絶縁層4の表面に銅めっきから成る配線導体層5を被着させるには、まず、絶縁層4の表面を過マンガン酸塩類水溶液等の粗化液に浸漬して粗化した後、無電解めっき用パラジウム触媒の水溶液中に浸漬し表面にパラジウム触媒を付着させ、さらに、硫酸銅・ホルマリン・EDTAナトリウム塩・安定剤等から成る無電解銅めっき液に約30分間浸漬して厚みが1〜2μm程度の無電解銅めっき層を析出させる。次に、無電解銅めっき層の表面に耐めっき樹脂層を被着し露光・現像により銅めっきの配線導体層5のパターン形状に、電解銅めっき層を被着させるための開口部を複数形成し、さらに、硫酸・硫酸銅5水和物・塩素・光沢剤等から成る電解銅めっき液に数A/dm2の電流を印加しながら数時間浸漬することにより開口部および貫通孔の内面に厚みが10〜30μm程度の電解銅めっき層を被着させる。しかる後、耐めっき樹脂層を水酸化ナトリウムで剥離し、さらに、耐めっき樹脂層を剥離したことにより露出する無電解銅めっき層を硫酸と過酸化水素水の混合物等の硫酸系水溶液によりエッチング除去することにより形成される。
【0052】
かくして、本発明の配線基板の製造方法によれば、配線導体2の側面2aと絶縁基板1との間に介在させたエポキシ樹脂が接着材の機能を果たすとともに、配線導体2の側面2aが粗化されていることから配線導体2の側面2aとエポキシ樹脂とが強固に接着し、配線導体2と絶縁基板1とが強固に接着した配線基板を提供することができる。また、絶縁基板1と絶縁層4とが配線導体2の側面2aと絶縁基板1との間に介在させたエポキシ樹脂のアンカー効果により強固に接合するので、絶縁基板1と絶縁層4との接合が強固な配線基板を提供することができる。
【0053】
なお、本発明は、上述の実施の形態の一例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲であれば種々の変更は可能である。
【0054】
【発明の効果】
本発明の配線基板によれば、配線導体はその側面が粗化されており、かつ絶縁基板に側面と絶縁基板との間にエポキシ樹脂を介在させて埋入されていることから、配線導体の側面と絶縁基板との間に介在させたエポキシ樹脂が接着材の機能を果たして配線導体の側面とエポキシ樹脂とが強固に接着し、配線導体と絶縁基板とが強固に接着した配線基板とすることができる。そしてその結果、配線基板に電子部品を搭載した後に配線基板に長期の熱履歴が繰り返し印加され、絶縁基板と配線導体との熱膨張差により発生する熱応力が絶縁基板と配線導体との境界に集中したとしても、配線導体の側面と絶縁基板との間に隙間が発生することはなく、その隙間を起点として絶縁層にクラックが生じたり、このクラックが配線導体層を切断して断線不良を発生させてしまうということはない。
【0055】
また、本発明の配線基板によれば、絶縁基板と絶縁層とが配線導体の側面と絶縁基板との間に介在させたエポキシ樹脂のアンカー効果により強固に接合し、その結果、配線基板に電子部品を搭載した後に長期の熱履歴が繰り返し印加され、絶縁基板と絶縁層の熱膨張差により発生する熱応力が両者の境界に集中したとしても、絶縁層が絶縁基板から剥離してしまうということもない。
【0056】
本発明の配線基板の製造方法によれば、コア基板の配線導体を埋入した表面にプラズマを照射してコア基板の表面およびその近傍に位置するアリル変性ポリフェニレンエーテル樹脂を収縮させることによって配線導体の側面と絶縁基板との間に隙間を形成し、次にこの隙間内に露出した配線導体の側面を粗化し、次にコア基板の配線導体を埋入した表面にエポキシ樹脂を含む絶縁層を被着するとともに隙間の内部にエポキシ樹脂を充填することから、配線導体の側面と絶縁基板との間に介在させたエポキシ樹脂が接着材の機能を果たすとともに配線導体の側面とエポキシ樹脂とが強固に接着し、配線導体と絶縁基板とが強固に接着した配線基板を提供することができる。また、絶縁基板と絶縁層とが配線導体の側面と絶縁基板との間に介在させたエポキシ樹脂のアンカー効果により強固に接合するので、絶縁基板と絶縁層との接合が強固な配線基板を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の配線基板の実施の形態の一例を示す断面図である。
【図2】図1の要部拡大断面図である。
【図3】(a)〜(f)は、本発明の配線基板の製造方法を説明するための各工程毎の要部断面図である。
【符号の説明】
1・・・・・・・・・・絶縁基板
2・・・・・・・・・・配線導体
2a・・・・・・・・・配線導体の側面
3・・・・・・・・・・コア基板
4・・・・・・・・・・絶縁層
5・・・・・・・・・・配線導体層
7・・・・・・・・・・隙間
Claims (2)
- 耐熱性繊維基材にアリル変性ポリフェニレンエーテル樹脂を含浸させた絶縁基板に銅箔から成る配線導体をその表面が前記絶縁基板の表面と同一面をなすように埋入して成るコア基板の前記配線導体を埋入した表面に、エポキシ樹脂を含む絶縁層と銅めっきから成る配線導体層とを交互に複数層積層して成る配線基板において、前記配線導体はその側面が粗化されており、かつ前記絶縁基板に前記側面と前記絶縁基板との間に前記エポキシ樹脂を介在させて埋入されていることを特徴とする配線基板。
- 耐熱性繊維基材にアリル変性ポリフェニレンエーテル樹脂を含浸させた絶縁基板に銅箔から成る配線導体をその表面が前記絶縁基板の表面と同一面をなすように埋入して成るコア基板を準備する工程と、該コア基板の前記配線導体を埋入した表面にプラズマを照射して前記コア基板の表面およびその近傍に位置する前記アリル変性ポリフェニレンエーテル樹脂を収縮させることによって前記配線導体の側面と前記絶縁基板との間に隙間を形成する工程と、該隙間内に露出した前記配線導体の前記側面を粗化する工程と、前記コア基板の前記配線導体を埋入した表面にエポキシ樹脂を含む絶縁層を被着するとともに前記隙間の内部に前記エポキシ樹脂を充填する工程と、前記絶縁層の表面に銅めっきから成る配線導体層を被着する工程とを具備することを特徴とする配線基板の製造方法。
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