JP4122464B2 - 印刷インキ用ドライヤー及び該ドライヤーを含む印刷インキ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は酸化重合乾燥型印刷インキ用ドライヤー及び該ドライヤーを含有する印刷インキに関する。
【0002】
【従来の技術】
平版オフセット印刷インキ等の酸化重合乾燥型インキには印刷後の乾燥を促進するためにドライヤーが添加される。このドライヤーとしては、マンガンの脂肪酸塩及びコバルトの脂肪酸塩を単独にまたは併用して用いるのが一般的である。
【0003】
マンガン、コバルトは重金属に分類されるが無害な金属では無く、使用しないに越したことはない。しかしこれらの重金属を使用しない場合、例えばカルシウムや鉄の脂肪酸塩は単独使用した場合にドライヤーとしての効果をほとんど示さない。
他に替わるものが容易に見つからないため、マンガンやコバルトを含むドライヤーが使用されているのが実情である。
【0004】
またコバルトとマンガンの毒性を比較すると、次表の通りであり、コバルトの方が有害性は大きいと言える。
【0005】
【表1】
【0006】
また近年環境問題へ意識の高まりから、植物油を原料に用いるインキの使用量が増している。印刷インキ用溶剤として従来多用されてきた石油系溶剤は代表的な揮発性有機化合物(VOCともいう)であるので、これを植物油に置換し、削減していこうとしている。
【0007】
例えばVOC成分を減らし、これらを大豆油に置換した印刷インキが市販されている。これらのインキはその乾燥性が従来のインキよりも劣るため、印刷したものを積み重ねておくと印刷面同士や印刷インキ面と紙とがくっつくという「ブロッキング性不良」と呼ばれるトラブルが起きやすい。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
酸化重合乾燥型インキ用のドライヤーであって、コバルトを含有しないドライヤー及び該ドライヤーを含有する印刷インキを提供することを課題とする。
【0009】
またVOC含有量を削減した印刷インキや、VOC含有量を削減し且つ大豆油をビヒクルの主成分とした印刷インキにおけるブロッキング性不良を起こしやすいという問題を解決するドライヤー及び該ドライヤーを含有する印刷インキを提供することを課題とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
発明者らは、環境や健康への悪影響が少なく、印刷における作業性を損なわない乾燥性を備えた印刷インキを提供するべく研究開発を重ねた結果、本発明を完成した。
【0011】
即ち、本発明の酸価重合乾燥型インキ用ドライヤーは、セリウムの脂肪酸塩及びマンガンの脂肪酸塩を含有する。
セリウムの脂肪酸塩単独ではドライヤーとしての効果はほとんど無いが、マンガンの脂肪酸塩と併用することにより、有害性の高いコバルトを使用しなくても印刷インキとして適正な乾燥性が得られる。
【0012】
また本発明のドライヤーの別の形態は、セリウムが金属分の50質量%以上である金属脂肪酸塩及びマンガンの脂肪酸塩を含有するドライヤーである。該ドライヤーは印刷インキに適正な乾燥性を与える。
【0013】
またさらに別の形態は、鉄の脂肪酸塩及びマンガンの脂肪酸塩を含有するドライヤーである。
鉄の脂肪酸塩単独ではドライヤーとしての効果は小さいが、マンガンの脂肪酸塩と併用することにより、有害性の高いコバルトを使用しなくても印刷インキとして適正な乾燥性が得られる。
鉄はセリウムよりも安く、原料費を低く抑えることができる。鉄塩は添加したインキが褐色に着色される傾向があり、明るい色や薄い色のインキへの使用が制限される。しかしマンガン塩と併用することで鉄塩の添加量を下げることができ、インキの着色を防いで利用範囲を広げることができる。
【0014】
上記のドライヤーをインキに添加することにより、コバルトを含有しないインキを提供することができる。
【0015】
また鉄の脂肪酸塩及びマンガンの脂肪酸塩を含有するドライヤーを大豆油の含有量を増した印刷インキに添加すると、該インキの乾燥性が改善され、先に述べたブロッキング性不良の問題が起きにくくなる。
【0016】
【発明の実施の形態】
(1)本発明のドライヤーの第一の形態は、セリウムの脂肪酸塩とマンガンの脂肪酸塩を含有するドライヤーである。
セリウムやマンガンの脂肪酸塩としては、オクチル酸塩、ナフテン酸塩、ネオデカン酸塩等の公知の脂肪酸を用いた脂肪酸塩を用いることができる。
【0017】
(2)本発明のドライヤーの第二の形態は、金属脂肪酸塩であって該金属分の50質量%以上がセリウムである脂肪酸塩と、マンガンの脂肪酸塩とを含有するドライヤーである。セリウムは高価であるが、50%以上あれば本発明の効果達成に十分であり、マンガンの脂肪酸塩と併用することにより、セリウムの効果を発揮することができ、マンガンの脂肪酸塩単独でドライヤーとして使用した場合に比べて乾燥性が優れる。
【0018】
(3)本発明のドライヤーの第三の形態は、鉄の脂肪酸塩と、マンガンの脂肪酸塩とを含有するドライヤーである。鉄の脂肪酸塩としては、オクチル酸塩、ナフテン酸塩、ネオデカン酸塩等の公知の脂肪酸を用いた脂肪酸塩が挙げられる。
【0019】
上記(1)〜(3)に記載の脂肪酸金属塩を公知のインキに使用可能な溶剤もしくは油脂や脂肪酸エステルに溶解してドライヤーを製造する。該ドライヤーの金属含有率は3〜12質量%が好ましく、さらに好ましくは4〜6質量%である。脂肪酸金属塩を溶解するには、VOCの含有量を少しでも低減するため植物油や植物油脂肪酸エステルを用いることが好ましい。
【0020】
(4)前記した第一、第二及び第三の形態の本発明のドライヤーは酸化重合乾燥型の印刷インキに添加して必要十分な乾燥性を得ることができる。
これらのドライヤーは金属の脂肪酸塩を油脂類、脂肪酸エステル類、印刷インキ用高沸点石油系溶剤等の公知の溶剤を単独もしくは混合した溶剤に溶解しておき、印刷インキの製造工程において添加し、ミキサーによる撹拌またはロールミル等による練肉工程を経て印刷インキ中に均一に分散させる。脂肪酸塩を溶解する溶剤としては、大豆油などの植物油や、大豆油脂肪酸エステルなどの植物油脂肪酸エステルを用いることが好ましい。そうすることによってインキ中のVOC成分の含有量を低減することができる。
【0021】
(5)大豆油などの植物油類や大豆油脂肪酸などの植物油脂肪酸エステル類を単独もしくは混合して使用することによってVOC成分のインキ中の含有量を1%未満に減らした印刷インキに添加する場合に、鉄の脂肪酸塩や、マンガンの脂肪酸塩を含有するドライヤーは必要十分な乾燥性をインキに与えることができる。
【0022】
(6)前記のVOC成分の含有量が1%未満であるようなインキの例として、大豆油及びまたは大豆油脂肪酸エステルを20〜60質量%含有する印刷インキが挙げられる。大豆油脂肪酸エステルとしては、大豆油脂肪酸メチルエステル、大豆油脂肪酸エチルエステル、大豆油脂肪酸n−ブチルエステル、大豆油脂肪酸tert−ブチルエステル、大豆油脂肪酸2−エチルヘキシル等の公知の脂肪酸エステルを使用することができる。
【0023】
(7)前記のVOC成分の含有量が1%未満であるようなインキの別の例として、大豆油及びまたはトール油脂肪酸エステルを20〜60質量%含有し、かつ大豆油の含有量が20質量%以上である印刷インキが挙げられる。トール油脂肪酸エステルとしては、トール油脂肪酸メチルエステル、トール油脂肪酸エチルエステル、トール油脂肪酸ブチルエステル、トール油脂肪酸2−エチルヘキシルエステル、トール油脂肪酸ペンタエスリトールエステル等の公知の脂肪酸エステルを用いることができる。
【0024】
(8)また、前記の(1)に記載のドライヤーをインキに使用する際、セリウムの脂肪酸塩を含有するドライヤー(金属含有率3%〜12%)についてはインキ中にセリウムを0.003〜0.36質量%含有するように、マンガンの脂肪酸塩を含有するドライヤー(金属含有率3%〜12%)についてはインキ中にマンガン分を0.003〜0.12質量%含有するように添加することが好ましい。
【0025】
(9)また、前記の(2)に記載のセリウムが金属分の50質量%以上である金属脂肪酸塩ドライヤーをインキに使用する際、セリウムが金属分の50質量%以上である金属脂肪酸塩を含有するドライヤー(金属含有率3%〜12%)についてはインキ中にセリウムを0.003〜0.36質量%含有するように、マンガンの脂肪酸塩を含有するドライヤー(金属含有率3%〜12%)についてはインキ中にマンガンを0.003〜0.12質量%含有するように添加することが好ましい。
【0026】
(10)また、前記の(3)に記載の金属脂肪酸塩ドライヤーをインキに使用する際、鉄の脂肪酸塩を含有するドライヤー(金属含有率3%〜12%)についてはインキ中に鉄を0.003〜0.36質量%含有するように、マンガンの脂肪酸塩を含有するドライヤー(金属含有率3%〜12%)についてはインキ中にマンガンを0.003〜0.12質量%含有するように添加することが好ましい。
【0027】
また、例えばVOC成分を大豆油に置換してVOC分を低減した印刷インキが市販されているが、これらのインキはその乾燥性が従来のインキよりも劣るため、印刷したものを積み重ねておくと印刷面同士や印刷面と紙面とがくっつくという「ブロッキング性不良」と呼ばれるトラブルが起きやすいが、本発明における鉄の脂肪酸及びマンガンの脂肪酸塩を含有するドライヤーを使用することにより、上記「ブロッキング性不良」を除去もしくは低減することが可能である。
【0028】
本発明に係る印刷インキには、該ドライヤー及び顔料等の色材、ビヒクル(ワニス)が含まれる他、ワックス等の印刷インキ用の各種添加剤を含有させてもよい。
該ビヒクル(ワニス)は、ロジン変性フェノール樹脂、ロジンエステル、石油樹脂、アルキド樹脂、石油樹脂変性ロジン・フェノール樹脂、石油樹脂変性ロジンエステル、石油樹脂変性アルキド樹脂、アルキド樹脂変性ロジン・フェノール樹脂、アルキド樹脂変性ロジンエステル、アクリル変性ロジン・フェノール樹脂、アクリル変性ロジンエステル、ウレタン変性ロジン・フェノール樹脂、ウレタン変性ロジンエステル、ウレタン変性アルキド樹脂、エポキシ変性ロジン・フェノール樹脂、エポキシ変性ロジンエステル、エポキシ変性アルキド樹脂等の印刷インキに使用する公知の樹脂類、および、アマニ油、大豆油、桐油、パーム油、ヒマシ油等の植物油類、大豆油脂肪酸メチルエステル、大豆油脂肪酸ブチルエステル、大豆油脂肪酸イソブチルエステル、大豆油脂肪酸2−エチルヘキシルエステル、亜麻仁油脂肪酸ブチルエステル、アマニ油脂肪酸イソブチルエステル、トール油脂肪酸ブチルエステル、トール油脂肪酸2−エチルヘキシルエステル、トール油脂オクチルエステル、トール油脂肪酸ペンタエリスリトールエステル、パーム油脂肪酸メチルエステル、パーム油脂肪酸ブチルエステル、パーム油脂肪酸イソブチルエステル、パーム油脂肪酸2−エチルヘキシルエステル、ヒマシ油油脂肪酸メチルエステル、ヒマシ油脂肪酸ブチルエステル、ヒマシ油脂肪酸イソブチルエステル、ヒマシ油脂肪酸2−エチルヘキシルエステル等の脂肪酸エステル類、公知の印刷インキに使用可能な高沸点石油系溶剤、キレート化剤としては一般にアルミニウムキレートと呼ばれるもので、アルミニウムn−ブトキシド、アルミニウム−iso−ブトキシド、アルミニウム−sec−ブトキシドの誘導体で、n−ブトキシ基、iso−ブトキシ基、sec−ブトキシ基の各々の基の一つが、エチルアセテート、または、メチルアセトアセテートで置換された化合物等のキレート化剤、キレート化剤以外の架橋化剤としては、エポキシ基を有するモノマーもしくは樹脂、イソシアネート基を有するモノマーもしくは樹脂等、上記公知の樹脂を架橋させうる架橋化剤、BHT等の酸化防止剤等を使用することが可能であり、これらを加熱溶解させることにより製造することができる。
また、ワックスとしては、ポリエチレンワックス、PTFEワックス、サゾールワックス等の公知のワックス類を使用することができる。
【0029】
更に、該ドライヤーを含有するインキは酸化重合乾燥型であるので、保管中でも空気に触れると当然乾燥して皮膜が形成される。これを皮張り現象というが、皮張りを起こり難くするためにカテキンを添加することができる。カテキンを添加する場合は、その添加時期は特に限定は無いが、インキの調整後に添加することが好ましい。添加の方法はインキ中によく撹拌して均一に分散すれば良く、ロールミル等で混錬しても良い。インキへの添加量は0.01〜1.0質量%が好ましい。
また、ドライヤーとしては金属類の脂肪酸塩以外にホウ酸塩を使用することが可能である。
【0030】
【実施例】
次に、本発明を実施例により説明するが、本発明はここで挙げる実施例のみに限定されるものではない。実施例中の部および%は、特に記載しない限り質量基準である。
【0031】
実施例1はセリウムの脂肪酸塩及びマンガンの脂肪酸塩からなるドライヤーに関する。
実施例2は鉄の脂肪酸塩及びマンガンの脂肪酸塩からなるドライヤーに関する。実施例1、2及び比較例1、2において、ドライヤーを添加するベースとなるインキは以下の配合で調製する。
a)大日本インキ化学工業株式会社製藍ベースインキA 60質量部。
b)大日本インキ化学工業株式会社製樹脂ワニス12X1153 35質量部。
c)日本石油化学株式会社製AF−5ソルベント 5質量部。
ここでのa)のベースインキは、顔料をロジン変性フェノール樹脂、亜麻仁油及び又は大豆油等の油脂類、高沸点石油系溶剤等からなるワニスに分散したものである。
b)のワニスはロジン変性フェノール樹脂及び亜麻仁油・大豆油等の油脂、高沸点石油系溶剤等を主成分とする。
a)〜c)を混合した後、それぞれの場合に使用するドライヤーを所定量添加してロールミルで均一に分散し、でき上がったインキの乾燥試験を行う。
乾燥試験はJIS K5701−1「平版インキ試験方法(第一部)」の「4.4.3 C型乾燥試験機による方法」に記載の方法による。
【0032】
[実施例1]
次の1)、2)の2種類のドライヤーを表2に示すように所定量混合して前記のインキに添加し、そのインキの乾燥試験を行った。
1)ナフテン酸マンガン・・・金属含有率が5%であるマンガン系ドライヤー(Mn-5と表記する)。
2)セリウムを含む金属のオクチル酸塩であり、金属含有率が6%であるセリウム系ドライヤー(Ce-6と表記する)。
ここでナフテン酸マンガンドライヤー使用量は0.1、0.3、0.5%の3点とし、セリウムを含む金属のオクチル酸塩ドライヤー使用量は0、0.5、1.0、1.5%の4点とした。
比較例1は、ナフテン酸マンガンドライヤー単独をインキに添加している。
乾燥試験結果を表2に示す。
【0033】
【表2】
【0034】
枚葉インキの乾燥時間は、用途に応じて異なるが、一般的には25℃の状態にて500〜800分が適切である。
表2より、比較例1ではMn-5を0.1%まで減らすと乾燥時間が800分を越えてしまうが、実施例ではMn-5を0.1%およびCe-6を0.5%添加することにより、乾燥時間を800分以下に短縮できることがわかる。また、必要ならばMn-5もしくはCe-6の使用量を変化させることにより、更に乾燥時間を短時間にするなどのコントロールが可能であることもわかる。
【0035】
[実施例2]
1)ナフテン酸マンガンであって、その金属含有率が5%であるマンガン系ドライヤー(Mn-5と表記する)。
2)ナフテン酸鉄であって、その金属含有率が5%である鉄系ドライヤー(Fe-5と表記する)。
上記の1)および2)のドライヤーを前記のインキに所定量混合し、その乾燥試験を行った。
ここでナフテン酸マンガンドライヤー使用量は0.1、0.3、0.5%の3点とし、ナフテン酸鉄ドライヤー使用量は0、0.5、1.0、1.5%の4点とする。
比較例2は、ナフテン酸マンガンドライヤーを単独でインキに添加している。
乾燥試験結果を表3に示す。
【0036】
【表3】
【0037】
表3より、比較例2ではMn-5を0.1%まで減らすと乾燥時間が800分を越えてしまうが、実施例2−1〜2−3ではMn-5を0.1%およびFe-5を0.5%添加することにより、乾燥時間を800分以下に短縮できることがわかる。また、必要ならばMn-5もしくはFe-5の使用量を変化させることにより、更に乾燥時間を短時間にするなどのコントロールが可能であることもわかる。
【0038】
表4に、比較例3〜12として、各種金属脂肪酸塩を単独に使用した場合の乾燥時間を参考として記す。
【0039】
【表4】
【0040】
表4において、Co-Naはコバルト金属塩の一種である金属含有率が6%であるナフテン酸コバルトドライヤーを表す。また、Co-12は金属含有率が12%であるオクチル酸コバルトドライヤーを表す。
【0041】
[実施例3]
実施例3のインキは、大豆油及びまたは大豆油脂肪酸を含有するインキに、鉄の脂肪酸塩及びマンガンの脂肪酸塩から成るドライヤーを添加する。
実施例3及び比較例13において、ドライヤーを添加するベースとなるインキは以下の配合で調製する。
a)大日本インキ化学工業株式会社製藍ベースインキB 60質量部。
b)大日本インキ化学工業株式会社製樹脂ワニスB 35質量部。
c)日清製油株式会社製大豆油サラダ油 5質量部。
ここでのa)のベースインキは顔料および、ロジン変性フェノール樹脂、大豆油等の油脂類、大豆油脂肪酸エステル等の脂肪酸エステルからなるワニスからなる。
b)のワニスはロジン変性フェノール樹脂及び大豆油等の油脂、大豆油脂肪酸エステル等の脂肪酸エステル等を主成分とする。
比較例13のインキは、前記のインキにマンガンの脂肪酸塩及びコバルトの脂肪酸塩を含有するドライヤーを添加する。
インキの配合及びブロッキング試験結果を表5に示す。
【表5】
【0042】
ブロッキング試験は、インキを紙面に印刷した後、印刷面を重ね合わせて圧力をかけた状態で、高温、多湿の条件下で一晩放置し、翌日、印刷面間をはがして、そのはがれ具合を目視により5段階で評価する(5(優)>3>1(劣))。本実施例では温度50℃、湿度80%で行った。
評価の判断基準は印刷面が接着しない場合が良好であり、接着した場合においても印刷面のはがれ度合いが少ない場合が良好である。
【0043】
[実施例4]
実施例4のインキは、大豆油及びまたはトール油脂肪酸を含有するインキに、鉄の脂肪酸塩及びマンガンの脂肪酸塩から成るドライヤーを添加する。
実施例4及び比較例14において、ドライヤーを添加するベースとなるインキは以下の配合で調製する。
a)大日本インキ化学工業株式会社製藍ベースインキC 60質量部。
b)大日本インキ化学工業株式会社製樹脂ワニスC 35質量部。
c)日清製油株式会社製大豆油サラダ油 5質量部。
ここでのa)のベースインキは顔料および、ロジン変性フェノール樹脂、大豆油等の油脂類、トール油脂肪酸エステル等の脂肪酸エステルからなるワニスからなる。
b)のワニスはロジン変性フェノール樹脂及び大豆油等の油脂、トール油脂肪酸エステル等の脂肪酸エステル等を主成分とする。
比較例4のインキは、前記のインキにマンガンの脂肪酸塩及びコバルトの脂肪酸塩を含有するドライヤーを添加する。
インキの配合及びブロッキング試験結果を表6に示す。
【表6】
【0044】
【発明の効果】
本発明によりコバルトを含まず、マンガンの含有量を削減した酸化重合乾燥型インキ用ドライヤーを得ることができる。
セリウムとマンガンを併用したドライヤーは、従来のコバルトとマンガンから成るドライヤーと同等の乾燥促進性を示す。また鉄脂肪酸塩とマンガン脂肪酸塩を併用することにより、インキの着色の問題がある鉄塩の添加量を減らすことができる。また鉄脂肪酸塩はセリウム脂肪酸塩よりも安価であり、ドライヤーのコストを削減できる。
【0045】
さらにVOC含有量が少なく、大豆油等をビヒクルの主成分とする印刷インキにおいては、本発明のドライヤーを使用することによりブロッキング性不良を改善することができる。
Claims (8)
- セリウムの脂肪酸塩及びマンガンの脂肪酸塩を含有する酸化重合乾燥型印刷インキ用ドライヤー。
- セリウムが金属分の50質量%以上である金属脂肪酸塩及びマンガンの脂肪酸塩を含有する酸化重合乾燥型印刷インキ用ドライヤー。
- 請求項1又は請求項2に記載のドライヤーを含有する印刷インキ。
- 請求項1又は請求項2に記載のドライヤーを含有し、揮発性有機化合物の含有量が1質量%未満である印刷インキ。
- 大豆油及び又は大豆油脂肪酸エステルを20〜60質量%含有する請求項4に記載の印刷インキ。
- 大豆油及び又はトール油脂肪酸エステルを20〜60質量%含有し、かつ大豆油の含有量が20質量%以上である請求項4に記載の印刷インキ。
- 請求項1に記載のドライヤーを含有する印刷インキであって、セリウムの含有率が0.003〜0.36質量%であり、マンガンの含有率が0.003〜0.12質量%である印刷インキ。
- 請求項2に記載のドライヤーを含有する印刷インキであって、セリウム及びその他金属分の含有率が0.003〜0.36質量%であり、マンガンの含有率が0.003〜0.12質量%である印刷インキ。
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