JP4119890B2 - ナマコ由来硫酸化フカン分解酵素 - Google Patents

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Description

本発明は糖鎖工学分野において有用な硫酸化フカンを分解する酵素、該酵素の製造方法、該酵素を活性化させる様々な因子、並びに糖鎖工学用試薬として有用な硫酸化フカンオリゴ糖、及びそれらの製造方法に関する。
ナマコには数種の硫酸化多糖が含まれている。これらの中には、硫酸化フコースを主要構成成分とする多糖、すなわち、硫酸化フカンが存在する。ナマコ由来硫酸化フカンのエイズウイルス感染抑制作用や抗凝血作用等が報告されているが、ナマコ由来硫酸化フカンを医薬品として開発する場合、その構造を決定する必要が生じる。ナマコ由来硫酸化フカンの構造は研究されているが、現時点ではその平均的構造が判明しているに過ぎない。硫酸化フカンの構造決定の際、硫酸化フカンを分解する酵素を用いれば非常に有利であるが、ナマコ由来硫酸化フカンを分解する酵素は市販されていない。一方、硫酸化フカンは種々の褐藻類にも含まれており、その構造は由来となる海藻により異なることが多い。例えば、ヒバマタ、マコンブ、モズクそれぞれから抽出される硫酸化フカンは異なる構造を持つ。そして、これまで褐藻類由来の硫酸化フカンを分解する酵素がいくつか報告されているが(国際公開第96/34004号パンフレット、国際公開第97/26896号パンフレット、国際公開第99/11797号パンフレット、国際公開第99/41288号パンフレット、欧州特許出願公開第1306389号明細書)、いずれも、ナマコ由来硫酸化フカンを分解することはできない。すなわち、ナマコ由来硫酸化フカンと褐藻類由来硫酸化フカンの構造は異なると考えられる。
以上のことから、ナマコ由来硫酸化フカンを分解する酵素、及び酵素的に製造した構造が均一な硫酸化フカンオリゴ糖が求められていた。
発明の目的
すなわち、本発明の目的は、ナマコ由来硫酸化フカンを分解する硫酸化フカン分解酵素、該酵素の製造方法、及び硫酸化フカンに該酵素を作用させて得られる低分子化物及びその製造方法を提供することにある。また、本発明の目的は、硫酸化フカン分解酵素の活性化因子を提供することにもある。
発明の概要
本発明者らは、フコイダノバクター属に属する細菌の1菌株、フコイダノバクター マリナス(Fucoidanobacter marinus)SI−0098が新規な硫酸化フカン分解酵素を生産することを見出し、該酵素の製造方法を見出した。また、該酵素を利用してナマコ由来硫酸化フカンから、新規な硫酸化フカンオリゴ糖を製造できることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明の第1の発明は、フコイダノバクター属細菌の培養物から得られたエンド型α−L−フコシダーゼに関する。
本発明の第1の発明において、該酵素は、エンド型α−L−フコシダーゼ生産能を有するフコイダノバクター属細菌を培養し、その培養物から採取することができる。
本発明の第2の発明は、フコイダノバクター属細菌の培養物から得られた硫酸化フカンスルファターゼに関する。
本発明の第2の発明において、該酵素は硫酸化フカンスルファターゼ生産能を有するフコイダノバクター属細菌を培養し、その培養物から採取することができる。
本発明の第3の発明は、ナマコ由来硫酸化フカン画分に、本発明の第1の発明のエンド型α−L−フコシダーゼを作用させて得られる硫酸化フカンオリゴ糖に関する。
本発明の第3の発明の硫酸化フカンオリゴ糖は、ナマコ由来硫酸化フカン画分に本発明の第1の発明のエンド型α−L−フコシダーゼを作用させて得られる硫酸化フカンオリゴ糖の製造方法によって製造することができ、塩化ナトリウムの共存下で行っても良い。
本発明の第4の発明は、ナマコ由来硫酸化フカン画分に、本発明の第1の発明のエンド型α−L−フコシダーゼ及び本発明の第2の発明の硫酸化フカンスルファターゼを作用させて得られる硫酸化フカンオリゴ糖に関する。
本発明の第4の発明の硫酸化フカンオリゴ糖は、ナマコ由来硫酸化フカン画分に本発明の第1の発明のエンド型α−L−フコシダーゼ及び本発明の第2の発明の硫酸化フカンスルファターゼを作用させて得られる硫酸化フカンオリゴ糖の製造方法によって製造することができ、塩化ナトリウム及び/又は塩化カルシウムの共存下で行っても良い。
図1 本発明により得られるエンド型α−L−フコシダーゼのpHと相対活性(%)の関係を表すグラフである。
図2 本発明により得られるエンド型α−L−フコシダーゼの温度(℃)と相対活性(%)の関係を表すグラフである。
図3 本発明により得られるエンド型α−L−フコシダーゼの塩濃度(mM)と相対活性(%)の関係を表すグラフである。
図4 本発明により得られる硫酸化フカンスルファターゼのpHと相対活性(%)の関係を表すグラフである。
図5 本発明により得られる硫酸化フカンスルファターゼの温度(℃)と相対活性(%)の関係を表すグラフである。
図6 本発明により得られる硫酸化フカンスルファターゼの塩濃度(mM)と相対活性(%)の関係を表すグラフである。
図7 本発明により得られるエンド型α−L−フコシダーゼにより硫酸化フカンを分解して得られる硫酸化フカンオリゴ糖をゲルろ過した際の溶出パターンを表す図である。
図8 本発明により得られるエンド型α−L−フコシダーゼと硫酸化フカンスルファターゼにより硫酸化フカンを分解して得られる硫酸化フカンオリゴ糖のHPLC分析の結果を示す図である。
発明の詳細な説明
以下本発明に関して具体的に説明する。
本発明において、ナマコ由来硫酸化フカンとしては、特に限定されるものではないが、例えば、マナマコ(Apostichopus japonicus)由来硫酸化フカンを使用できる。マナマコは、本発明の硫酸化フカンオリゴ糖の生産効率が高く、原料として好適である。
本発明のエンド型α−L−フコシダーゼとは、ナマコ由来硫酸化フカンに作用して還元性末端にフコースを持つオリゴ糖を生成させる酵素である。
本発明の硫酸化フカンスルファターゼとは、ナマコ由来硫酸化フカン及びナマコ由来硫酸化フカンに本発明のエンド型α−L−フコシダーゼを作用させて生成されるオリゴ糖に作用して硫酸を遊離させる酵素である。
本発明の硫酸化フカンオリゴ糖は、ナマコ由来硫酸化フカンに本発明のエンド型α−L−フコシダーゼ単独、又は本発明の硫酸化フカンスルファターゼと一緒に作用させて得られるオリゴ糖で、還元性末端糖がフコースである。
本発明で使用するナマコ由来硫酸化フカンを製造する際にはまず、ナマコを水性溶媒中に浸し、硫酸化多糖画分を抽出する。その際硫酸化フカンの低分子化を防ぐためには、pHは4〜9、温度は100℃以下が好ましい。また、上記硫酸化多糖画分中のアミノ酸や低分子性の色素等は限外ろ過等により効率良く除去できる。疎水性物質の除去には活性炭処理等も有効である。
このようにしてナマコの硫酸化多糖画分を得ることができる。該画分を硫酸化フカン画分として、例えば本発明のエンド型α−L−フコシダーゼや硫酸化フカンスルファターゼの活性測定用基質及び本発明の硫酸化フカンオリゴ糖製造用の基質として使用できる。該画分を陰イオン交換カラムで分離すればより純度の高い硫酸化フカンを得られる。上記の硫酸化多糖画分も陰イオン交換カラムで精製した硫酸化フカンもともに本発明のエンド型α−L−フコシダーゼや硫酸化フカンスルファターゼの活性測定用基質及び本発明の硫酸化フカンオリゴ糖製造用の基質として使用できる。
本発明の、エンド型α−L−フコシダーゼ及び硫酸化フカンスルファターゼの製造に使用される細菌としては、該酵素を生産する細菌であれば特に限定はないが例えば、フコイダノバクター マリナス(Fucoidanobacter marinus)SI−0098株が挙げられる。当該細菌株は本発明者らが単離した細菌である。なお、上記菌株はFucoidanobacter marinus SI−0098と表示され、〒305−8566日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1中央第6、独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センターにFERM P−14873として平成7年3月29日(原寄託日)より寄託され、ブダペスト条約に基づき上記独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センターにFERM BP−5403として平成8年2月15日(移管日)より寄託されている。
本発明者らは、本菌株の16S rRNAをコードするDNAの塩基配列を決定し、既知の細菌との相同性を調べ、本菌株がVerrucomicrobiaに最も近い新属の細菌であると確認した。
本菌株の16S rRNAをコードするDNAの配列を配列表の配列番号1に記載する。従って、16S rRNAをコードするDNAの配列より、フコイダノバクター マリナス SI−0098と同属と判断される細菌から得られたエンド型α−L−フコシダーゼ及び硫酸化フカンスルファターゼも、本発明のエンド型α−L−フコシダーゼ及び硫酸化フカンスルファターゼに含まれる。
本発明のエンド型α−L−フコシダーゼ及び硫酸化フカンスルファターゼを生産する細菌を培養するにあたり、培地に加える栄養源は使用する微生物が利用し、該酵素を生産するものであればよく、炭素源としては、例えば、硫酸化フカン、ナマコ、干しナマコ、海藻、アルギン酸、ラミナラン、フコース、グルコース、マンニトール、グリセロール、サッカロース、マルトース、デンプン等が利用でき、窒素源としては、酵母エキス、ペプトン、カザミノ酸、コーンスティープリカー、肉エキス、脱脂大豆、硫安、塩化アンモニウム、尿素、尿酸等が適当である。その他にナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、亜鉛等の塩化物、リン酸塩、硫酸塩等を加えてもよい。なお、一般に海水から採取した微生物は、海水あるいは市販の人工海水を用いれば極めて生育しやすい。
また、培養条件は使用する微生物、培地組成等に応じ、本発明のエンド型α−L−フコシダーゼ及び硫酸化フカンスルファターゼの生産量が最大になるように設定するが、一般に培養温度は15〜30℃、培地のpHは5〜9がよく、5〜72時間の通気攪拌培養で本発明のエンド型α−L−フコシダーゼ及び硫酸化フカンスルファターゼの生産量は最高に達する。培養終了後、遠心分離により菌体と培養上清に分画し、それぞれから本発明のエンド型α−L−フコシダーゼ及び硫酸化フカンスルファターゼを得ることができる。
上記のフコイダノバクター マリナス SI−0098を適当な培地で培養し、その菌体を集め、通常の細胞破砕手段、例えば超音波処理で菌体を破砕すると無細胞抽出液が得られる。次いでこの抽出液から通常の精製手段により本発明のエンド型α−L−フコシダーゼ及び硫酸化フカンスルファターゼを精製することもできる。例えば、塩析、イオン交換カラムクロマト、疎水カラムクロマト、ゲルろ過等により精製した本発明のエンド型α−L−フコシダーゼ及び硫酸化フカンスルファターゼを得ることができる。また、上述の培養上清中にも本発明のエンド型α−L−フコシダーゼ及び硫酸化フカンスルファターゼが存在するので、菌体内酵素と同様の手段で精製できる。
本発明のエンド型α−L−フコシダーゼの理化学的性質は以下の通りである。
(I)作用:ナマコ由来硫酸化フカンに作用して、α−L−フコシル結合を加水分解する。
(II)至適pH:本酵素の至適pHは7〜9付近にある(図1)。
すなわち図1は本酵素の反応時のpHと相対活性の関係を表すグラフであり、縦軸は相対活性(%)、横軸はpHを示す。
(III)至適温度:本酵素の至適温度は約25〜45℃付近にある(図2)。
すなわち、図2は本酵素の反応時の温度と相対活性の関係を表すグラフであり、縦軸は相対活性(%)、横軸は温度(℃)を示す。
本発明のエンド型α−L−フコシダーゼは、硫酸化フカン分解活性を測定して確認でき、生産菌の培養液を遠心分離した上清、無細胞抽出液、各種カラムクロマトによる精製後の酵素液でも確認できる。
本発明のエンド型α−L−フコシダーゼは塩化ナトリウムの存在下で活性化される。
塩化ナトリウムは、試薬の塩化ナトリウム、食塩、海水、人工海水等、塩化ナトリウムを含むものならばいかなる物質でも使用できる。本発明の、エンド型α−L−フコシダーゼの反応液に添加する塩化ナトリウム濃度は1mMから1M程度がよく、好ましくは5mMから900mM程度がよい。
本発明の硫酸化フカンスルファターゼの理化学的性質は以下の通りである。
(I)作用:ナマコ由来硫酸化フカンに作用して、硫酸を遊離させる。また、本発明のエンド型α−L−フコシダーゼと共存して、ナマコ由来硫酸化フカンの低分子化を、本発明のエンド型α−L−フコシダーゼを単独で作用させた場合よりも進行させる。
(II)至適pH:本酵素の至適pHは6〜8付近にある(図4)。
すなわち図4は本酵素の反応時のpHと相対活性の関係を表すグラフであり、縦軸は相対活性(%)、横軸はpHを示す。
(III)至適温度:本酵素の至適温度は約20〜45℃付近にある(図5)。
すなわち、図5は本酵素の反応時の温度と相対活性の関係を表すグラフであり、縦軸は相対活性(%)、横軸は温度(℃)を示す。
本発明の硫酸化フカンスルファターゼは、遊離した硫酸を測定して確認でき、生産菌の培養液を遠心分離した上清、無細胞抽出液、各種カラムクロマトによる精製後の酵素液でも確認できる。
本発明の硫酸化フカンスルファターゼは塩化ナトリウム及び/又はカルシウムイオンの存在下で活性化される。
塩化ナトリウムは、試薬の塩化ナトリウム、食塩、海水、人工海水等、塩化ナトリウムを含むものならばいかなる物質でも使用できる。本発明の、硫酸化フカンスルファターゼの反応液に添加する塩化ナトリウム濃度は1mMから2M程度がよく、好ましくは5mMから1M程度がよい。
カルシウムイオンは、試薬の塩化カルシウム、酢酸カルシウム等、カルシウムイオンを含むものならばいかなる物質でも使用できる。本発明の、硫酸化フカンスルファターゼの反応液に添加するカルシウムイオン濃度は0.1mMから1M程度がよく、好ましくは1mMから500mM程度がよい。
フコイダノバクター マリナス SI−0098株は硫酸化フカンを資化する微生物であり、硫酸化フカンを分解するために菌体内及び菌体外に本発明のエンド型α−L−フコシダーゼ及び硫酸化フカンスルファターゼを生産する。
本発明の硫酸化フカンオリゴ糖とは、ナマコ由来硫酸化フカン、若しくは硫酸化フカン含有物に本発明のエンド型α−L−フコシダーゼを単独で、または本発明のエンド型α−L−フコシダーゼ及び硫酸化フカンスルファターゼを一緒に作用させて得られるオリゴ糖であり、還元性末端糖がフコースである。硫酸化フカン含有物としては、例えば硫酸化フカンの部分精製品、ナマコ由来硫酸化多糖画分、ナマコの水性溶媒抽出物、干しナマコ、若しくは生ナマコが好適に使用できる。
本発明の硫酸化フカンオリゴ糖を調製する際、硫酸化フカン、若しくは硫酸化フカン含有物の溶解は定法で行えばよく、溶解液中の硫酸化フカン、若しくは硫酸化フカン含有物はその最高溶解濃度でもよいが、通常はその操作性、反応に使用する本発明のエンド型α−L−フコシダーゼ及び硫酸化フカンスルファターゼの量を考慮して選定すればよい。硫酸化フカンの溶解液としては、水、緩衝液等より目的に応じて選択すればよい。反応の条件は、使用する酵素が活性を示す範囲であれば特に限定はないが、溶解液のpHは通常中性付近で、酵素反応は通常30℃付近で行う。反応に使用する本発明のエンド型α−L−フコシダーゼ及び硫酸化フカンスルファターゼの配合比率や使用量、反応液の組成、反応時間等の調整により、硫酸化フカンオリゴ糖の分子量を調整できる。この様にして得られた本発明の硫酸化フカンオリゴ糖を分子量分画あるいは陰イオン交換カラムにより分画すれば、更に均一な分子量あるいは均一な荷電密度分布の本発明の硫酸化フカンオリゴ糖を調製できる。分子量分画は定法、例えばゲルろ過法や限外ろ過法を使用すればよい。低分子化物は、必要に応じて更にイオン交換樹脂処理、活性炭処理等の精製操作を行ってもよく、必要に応じて脱塩処理、無菌処理、凍結乾燥処理もできる。
本発明の硫酸化フカンオリゴ糖は、硫酸基を分子中に有しており、該基は種々の塩基と塩を形成する。本発明の硫酸化フカンオリゴ糖は、塩になった状態が安定であり、通常ナトリウム及び/又はカリウム及び/又はカルシウム等の塩の形態で提供される。これらの物質の塩はダウエックス50W等の陽イオン交換樹脂を利用して遊離の本発明の硫酸化フカンオリゴ糖に導ける。また、これらは、必要に応じ公知慣用の塩交換を行い所望の種々の塩に交換できる。
本発明の硫酸化フカンオリゴ糖は、薬学的に許容される塩、例えばナトリウム、カリウム等のアルカリ金属、カルシウム、マグネシウム、亜鉛等のアルカリ土類金属、アンモニウム等の塩とすることができる。
本発明のエンド型α−L−フコシダーゼ及び硫酸化フカンスルファターゼは硫酸化フカンを低分子化するため硫酸化フカンの構造解析に使用できる。また、本発明の硫酸化フカンオリゴ糖は糖鎖工学用試薬として使用できる。例えば、特公平5−65108号公報記載の方法により2−アミノピリジル化(PA化)を行い、該オリゴ糖のPA−化物を調製すれば、硫酸化フカンオリゴ糖の蛍光標識標準物質として使用できるなど糖鎖工学用試薬として極めて有用な物質を提供できる。また、本発明の硫酸化フカンオリゴ糖は抗原として利用でき、公知の方法により、本発明の硫酸化フカンオリゴ糖を認識する抗体を作製することができる。本発明の硫酸化フカンオリゴ糖を認識する抗体は、硫酸化多糖の構造解析に利用でき、極めて有用である。
以下に本発明を実施例をもって具体的に示すが、本発明は以下の実施例の範囲のみに限定されるものではない。
参考例1 ナマコ由来硫酸化多糖画分の調製
市販のマナマコ35kgの体壁部分を細断し、4倍量のアセトンとともにホモジナイザーで8000回転、5分処理後、ろ紙でろ過し残さを得た。得られた残さを4倍量のアセトンとともにホモジナイザーで8000回転、5分処理後、ろ紙でろ過し残さを得た。得られた残さを吸引乾燥させ、1132gのナマコ体壁アセトン処理物を得た。
400gのナマコ体壁アセトン処理物を、10リットルの100mM塩化ナトリウム及び10mM塩化カルシウムを含む30mMイミダゾールー塩酸緩衝液(pH6.5)に懸濁し、アクチナーゼEを2g添加し、45℃で3時間処理後、さらに、95℃で2時間処理した。処理液を穴径106μmのステンレス製ふるいでろ過し、得られたろ液に20gの活性炭を添加し、室温で30分間攪拌後、遠心分離した。得られた上清に10%となるようにエタノールを加え、排除分子量10万のホロファイバーを装着させた限外ろ過器で2リットルに濃縮後、遠心分離により不溶物を除去した。得られた上清を限外ろ過器により10%エタノールを含む100mM塩化ナトリウムに溶媒置換した。この溶液を4℃以下に冷却後、塩酸によりpHを2.0とし、生じた沈殿を遠心分離により除去した。得られた上清のpHを水酸化ナトリウムにより8.0とし、限外ろ過器により20mM塩化ナトリウムに溶媒置換した。この溶液中の不溶物を遠心分離により除去後、凍結乾燥し、ナマコ由来硫酸化多糖画分の乾燥物37gを得た。
参考例2 硫酸化フカン画分の調製
参考例1記載のナマコ由来硫酸化多糖画分の乾燥物7gを、50mM塩化ナトリウムと10%エタノールを含む20mMイミダゾール塩酸緩衝液(pH7.0)700mlに溶解し、遠心分離により不溶物を除去した。得られた上清を、同緩衝液で平衡化した5リットルのDEAE−セルロファインA−800カラムにかけ、同緩衝液で洗浄後、50mMから2.05Mの塩化ナトリウム濃度勾配により溶出させた。溶出液は500mlずつ分取した。各フラクションの総糖量をフェノール硫酸法により、ウロン酸量をカルバゾール硫酸法により測定した。塩化ナトリウム濃度0.8〜1.5Mで溶出された画分(フラクションナンバー45〜57)を硫酸化フカン画分とした。
参考例3 エンド型α−L−フコシダーゼ活性測定方法
15μlの1%の硫酸化フカン画分溶液と、75μlの50mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH8.5)と、9μlの4M塩化ナトリウムと、41μlの水と、10μlの本発明のエンド型α−L−フコシダーゼ溶液とを混合し、37℃で1時間反応させた後、反応液を100℃で10分間処理し、遠心分離後100μlをHPLCにより分析し、低分子化の程度を測定した。対照として、本発明のエンド型α−L−フコシダーゼ溶液の代わりに、その酵素溶液を溶解している緩衝液を用いて反応させたもの及び硫酸化フカン画分の代わりに水を用いて反応させたものを同様にHPLCで分析した。
1単位のエンド型α−L−フコシダーゼ活性は上記反応系において1分間に1μmolの硫酸化フカンのフコシル結合を切断する酵素量とした。エンド型α−L−フコシダーゼ活性は下記式により求めた。
{(15×1000×1/100)/MG}×{(MG/M)−1}×{1/(60×0.01)}=U/ml
15×1000×1/100:反応系中に添加した硫酸化フカン画分(μg)
MG:基質硫酸化フカンの平均分子量
M:反応生成物の平均分子量
(MG/M)−1:1分子の硫酸化フカンが酵素により切断された部位の数
60:反応時間(分)
0.01:酵素液量(ml)
なお、HPLC条件は下記によった。
装置:L−6200型(日立製作所製)
カラム:OHpak SB−806HQ(8×300mm、昭和電工社製)
溶離液:5mMのアジ化ナトリウムを含む50mMの塩化ナトリウム
検出:視差屈折率検出器(Shodex RI−71、昭和電工社製)
流速:1ml/分
カラム温度:25℃
反応生成物の平均分子量の測定のために、市販の分子量既知のプルラン(STANDARD P−82、昭和電工社製)を上記のHPLC分析と同条件で分析し、プルランの分子量と保持時間との関係を曲線に表し、上記反応生成物の分子量測定のための標準曲線とした。また、タンパク質の定量は、酵素液の280nmの吸光度を測定することにより行った。その際1mg/mlのタンパク質溶液の吸光度を1.0として計算した。
参考例4 硫酸化フカンスルファターゼ活性測定方法
15μlの1%の硫酸化フカン画分溶液と、75μlの50mMイミダゾール−塩酸緩衝液(pH7.0)と、6μlの4M塩化ナトリウムと、3μlの1M塩化カルシウムと、31μlの水と、20μlの本発明の硫酸化フカンスルファターゼ溶液とを混合し、37℃で1時間反応させた後、反応液を100℃で10分間処理し、遠心分離後100μlをHPLCにより分析し、生成する硫酸量を測定した。対照として、本発明の硫酸化フカンスルファターゼ溶液の代わりに、その酵素溶液を溶解している緩衝液を用いて反応させたもの及び硫酸化フカン画分の代わりに水を用いて反応させたものを同様にHPLCで分析した。
1単位の硫酸化フカンスルファターゼ活性は上記反応系において1分間に1μmolの硫酸を生成させる酵素量とした。硫酸化フカンスルファターゼ活性は下記式により求めた。
S/(60×0.02)=U/ml
S:反応により生成した硫酸(μmole)
60:反応時間(分)
0.02:酵素液量(ml)
なお、HPLC条件は下記によった。
装置:L−6200型(日立製作所製)
カラム:OHpak SB−804HQ(8×300mm、昭和電工社製)
溶離液:5mMのアジ化ナトリウムを含む50mMの塩化ナトリウム
検出:示差屈折率検出器(Shodex RI−71、昭和電工社製)
流速:1ml/分
カラム温度:35℃
反応により遊離した硫酸量の測定のために、1mM及び0.5mMの硫酸ナトリウムを上記のHPLC分析と同条件で分析し、硫酸ナトリウム濃度とそのピークの高さとの関係を曲線に表し、遊離硫酸量測定のための標準曲線とした。
実施例1 エンド型α−L−フコシダーゼの調製(1)
フコイダノバクター マリナス SI−0098を参考例1の方法で調製したナマコ由来硫酸化多糖画分0.3%とペプトン1%を含む人工海水(ジャマリンラボラトリー社製)pH8.2からなる培地5mlを120℃、20分間オートクレーブ処理した培地に接種し、25℃で2日培養した。得られた培養物のうち150μlを、上記と同じ成分を含む100mlの培地に植え継ぎ、25℃で3日培養した。上記と同じ成分及び0.01%消泡剤(KM70、信越化学工業社製)を含む培地600mlを2リットルの三角フラスコに入れたものを7本用意し、120℃、20分間オートクレーブ処理後、各培地に上記の培養物を1mlずつ接種し、25℃で3日培養した。培養終了後、培養液を遠心分離して菌体及び培養上清を得た。同じ培養を繰り返し、培養液12.6リットルから約15gの湿菌体を得た。
得られた菌体を200mlの100mM塩化ナトリウム及び5mMβ−メルカプトエタノールを含む10mMイミダゾールー塩酸緩衝液(pH7.5)に懸濁させ、超音波処理により菌体を破砕し、遠心分離して上清を得た。得られた上清を上記の緩衝液で充分透析し、遠心分離して上清を得た。
得られた上清を同じ緩衝液で平衡化した500mlのDEAE−セルロファインA−800のカラムにかけ、同じ緩衝液で洗浄後、100mMから500mM塩化ナトリウムの濃度勾配により溶出させ、溶出液を45mlずつに分画し、各フラクションの本発明のエンド型α−L−フコシダーゼ活性を測定し、活性画分を集めた。
得られた活性画分を50mM塩化ナトリウム及び5mMβ−メルカプトエタノールを含む10mMイミダゾール−塩酸緩衝液(pH7.5)で充分透析し溶媒置換した。この酵素溶液を同じ緩衝液で平衡化した150mlのDEAE−セルロファインA−800のカラムにかけ、同じ緩衝液で洗浄後、50mMから400mM塩化ナトリウムの濃度勾配により溶出させ、溶出液を20mlずつに分画し、各フラクションの本発明のエンド型α−L−フコシダーゼ活性を測定し、活性画分を集めた。
得られた活性画分を50mM塩化ナトリウム及び5mMβ−メルカプトエタノールを含む10mMイミダゾール−塩酸緩衝液(pH7.5)で充分透析し溶媒置換した。この酵素溶液を同じ緩衝液で平衡化した80mlの硫酸化セルロファインのカラムにかけ、同じ緩衝液で洗浄後、50mMから1500mM塩化ナトリウムの濃度勾配により溶出させ、溶出液を5mlずつに分画し、各フラクションの本発明のエンド型α−L−フコシダーゼ活性を測定し、活性画分を集めた。
得られた活性画分を100mM塩化ナトリウム及び5mMβ−メルカプトエタノールを含む10mMイミダゾール−塩酸緩衝液(pH7.5)で充分透析し溶媒置換した。次に、150mM塩化ナトリウム及び5mMβ−メルカプトエタノールを含む40mMリン酸カリウム緩衝液で充分透析し溶媒置換した。この酵素溶液を同じ緩衝液で平衡化した40mlのヒドロキシルアパタイト(和光純薬製)のカラムにかけ、同じ緩衝液で洗浄後、40mMから250mMリン酸カリウムの濃度勾配により溶出させ、溶出液を6mlずつに分画し、各フラクションの本発明のエンド型α−L−フコシダーゼ活性を測定し、活性画分を集めた。
得られた活性画分を100mM塩化ナトリウム及び5mMβ−メルカプトエタノールを含む10mMイミダゾール−塩酸緩衝液(pH7.5)で充分透析し溶媒置換した。この酵素溶液を同じ緩衝液で平衡化した1520mlのセファクリルS−200(4.4×100cm、ファルマシア社製)のカラムにかけ、同じ緩衝液で溶出させ、溶出液を13.5mlずづに分画し、各フラクションの本発明のエンド型α−L−フコシダーゼ活性を測定した。
こうして本発明のエンド型α−L−フコシダーゼの精製物を得た。なお、本発明のエンド型α−L−フコシダーゼのセファクリルS−200によるゲルろ過の際の溶出位置及び電気泳動の際の泳動距離から求めた該酵素の分子量はそれぞれ、およそ3万2000(2万〜4万の分布)及び4万2000(3万〜5万の分布)であった。
以上の精製工程を表1にまとめる。
Figure 0004119890
実施例2 エンド型α−L−フコシダーゼの調製(2)
フコイダノバクター マリナス SI−0098を実施例1に記載の方法で培養し、培養液4.2リットルから約6gの湿菌体を得た。
得られた菌体を50mlの50mM塩化ナトリウムを含む10mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.5)に懸濁させ、超音波処理により菌体を破砕し、遠心分離して上清を得た。得られた上清を上記の緩衝液で充分透析し、遠心分離して上清を得た。
得られた上清を同じ緩衝液で平衡化した300mlのDEAE−セルロファインA−800のカラムにかけ、同じ緩衝液で洗浄後、50mMから500mM塩化ナトリウムの濃度勾配により溶出させ、溶出液を25mlずつに分画し、各フラクションの本発明のエンド型α−L−フコシダーゼ活性を測定し、活性画分を集めた。
得られた活性画分を100mM 塩化ナトリウムを含む10mM リン酸ナトリウム緩衝液(pH7.5)で充分透析し溶媒置換した。この酵素溶液を同じ緩衝液で平衡化した50mlのDEAE−セルロファインA−800のカラムにかけ、同じ緩衝液で洗浄後、100mMから400mM 塩化ナトリウムの濃度勾配により溶出させ、溶出液を10mlずつに分画し、各フラクションの本発明のエンド型α−L−フコシダーゼ活性を測定し、活性画分を集めた。
得られた活性画分を50mM塩化ナトリウムを含む50mMリン酸カリウム緩衝液(pH7.5)で充分透析し溶媒置換した。この酵素溶液を同じ緩衝液で平衡化した20mlのヒドロキシルアパタイトのカラムにかけ、同じ緩衝液で洗浄後、50mMから200mMのリン酸カリウムの濃度勾配により溶出させ、溶出液を10mlずつに分画し、各フラクションの本発明のエンド型α−L−フコシダーゼ活性を測定し、活性画分を集めた。
得られた活性画分を、100mM 塩化ナトリウム及び5mMアジ化ナトリウムを含む10mM イミダゾール−塩酸緩衝液(pH7.5)で平衡化した1520mlのセファクリルS−200(4.4×100cm、ファルマシア社製)のカラムにかけ、同じ緩衝液で溶出させ、溶出液を13.5mlずつに分画し、各フラクションの本発明のエンド型α−L−フコシダーゼ活性を測定した。
こうして本発明のエンド型α−L−フコシダーゼの精製物を得た。
以上の精製工程を表2にまとめる。
Figure 0004119890
本発明のエンド型α−L−フコシダーゼの精製物の至適pH、温度、塩濃度を調べた。その結果をそれぞれ図1、図2および図3に示す。
実施例3 エンド型α−L−フコシダーゼを用いた硫酸化フカンオリゴ糖の調製
参考例2に記載の硫酸化フカン画分1.5gを135mlの250mM 塩化ナトリウムを含む50mMのイミダゾール塩酸緩衝液(pH8.2)に溶解させ、本発明のエンド型α−L−フコシダーゼを144mU(15ml)添加し30℃で4日間攪拌後、1100mlのセルロファインGCL−1000(4×87cm、生化学工業社製)で50mlずつ3回に分けてゲルろ過し分子量分画した。溶出させたフラクションは総て、総糖量をフェノール−硫酸法で測定した。その結果、図7に示すような分布を示した。図7の縦軸はフェノール硫酸法により発色させた際の480nmにおける吸光度、横軸はフラクション番号を示す。すなわち、フラクション番号50〜75の付近を中心に、分子量4万を中心に分布する本発明の硫酸化フカンオリゴ糖が溶出された。これらのオリゴ糖の糖組成、還元性末端糖分析を行ったところ、実質的に総てフコースであった。
すなわち、ナマコ由来硫酸化フカン画分に本発明のエンド型α−L−フコシダーゼを作用させることにより種々の分子量の本発明の硫酸化フカンオリゴ糖が調製できた。
実施例4 硫酸化フカンスルファターゼ
実施例1及び2の方法により精製した本発明のエンド型α−L−フコシダーゼ単独では、ナマコ由来硫酸化フカンを実施例3に示した分子量分布より低分子化させることができなかった。そこで、本発明のエンド型α−L−フコシダーゼと共存してナマコ由来硫酸化フカン画分を低分子化させる画分を探した。その結果実施例1に記載した硫酸化セルロファインの溶出画分のうち、600mM付近の塩化ナトリウムで溶出される画分に、本発明のエンド型α−L−フコシダーゼによる硫酸化フカンの低分子化を活性化させる活性が検出された。そこで、該画分をナマコ由来硫酸化フカンに作用させ、反応液中に生成した物質を調べた。まず、反応液を参考例4に記載の方法でHPLCにより分析したところ、硫酸の生成が確認できた。次に、糖を含む低分子成分が生成していないかどうかを調べるため、反応液をセルロファインGCL−25のカラム(4×90cm)でゲルろ過し、溶出させた各フラクションの総糖量をフェノール−硫酸法により分析した。その結果、糖を含む低分子成分は生成していなかった。このようにして、本発明のエンド型α−L−フコシダーゼによる硫酸化フカンの低分子化を活性化させる酵素は硫酸化フカンスルファターゼであることが強く示唆されたので、参考例4に記載の方法で活性が検出される硫酸化フカンスルファターゼの精製を行った。
すなわち、実施例1に記載した硫酸化セルロファインの溶出画分のうち、600mM付近の塩化ナトリウムで溶出される本発明の硫酸化フカンスルファターゼの活性画分を集め、100mM塩化ナトリウムと5mMアジ化ナトリウムと5mMβ−メルカプトエタノールを含む10mMイミダゾール−塩酸緩衝液で平衡化させた1520mlのセファクリルS−200のカラムにかけ、同緩衝液で溶出させた。分取は1本あたり13.5mlで行った。本発明の硫酸化フカンスルファターゼの分子量を溶出位置から計算すると約8万4000(7万〜10万の分布)であった。
本発明の硫酸化フカンスルファターゼの精製物の至適pH、温度、塩濃度を調べた。その結果をそれぞれ図4、図5および図6に示す。
実施例5 ナトリウム塩濃度の影響
本発明のエンド型α−L−フコシダーゼ及び本発明の硫酸化フカンスルファターゼの反応系に含まれる塩化ナトリウムの濃度と相対活性の関係を調べた。その結果、本発明のエンド型α−L−フコシダーゼ及び本発明の硫酸化フカンスルファターゼは塩化ナトリウムにより賦活化されることが判明した。
実施例6 カルシウム塩濃度の影響
本発明の硫酸化フカンスルファターゼ反応系に含まれる塩化カルシウムの濃度と相対活性の関係を調べた。その結果、本発明の硫酸化フカンスルファターゼは塩化カルシウムにより賦活化されることが判明した。なお、酢酸カルシウムによっても同様の賦活化がみられた。
実施例7 エンド型α−L−フコシダーゼ及び硫酸化フカンスルファターゼを用いた硫酸化フカンオリゴ糖の調製
参考例2に記載のナマコ由来硫酸化フカン画分の1%水溶液30μlに、150μlの50mMイミダゾール−塩酸緩衝液(pH7.0)、14μlの4M塩化ナトリウム、6μlの1M塩化カルシウム、64μlの水を混合し、本発明のエンド型α−L−フコシダーゼを424μU(16μl)及び本発明の硫酸化フカンスルファターゼを226μU(20μl)添加し30℃で2日間反応後、反応液100μlを参考例4に記載の方法でHPLCにより分析した。その結果を図8に示す。図8の縦軸は差示屈折率の相対強度、横軸は保持時間を示す。生成した本発明の硫酸化フカンオリゴ糖は、7分〜10分の位置に分子量9千を中心値として分布しており、明らかに実施例3に記載のオリゴ糖よりも低分子のオリゴ糖を得ることができた。これらのオリゴ糖の糖組成、還元性末端糖分析を行ったところ、実質的に総てフコースであった。
すなわち、ナマコ由来硫酸化フカン画分に本発明のエンド型α−L−フコシダーゼ及び本発明の硫酸化フカンスルファターゼを作用させることにより種々の分子量の本発明の硫酸化フカンオリゴ糖が調製できることがわかった。
産業上の利用の可能性
本発明によりナマコ由来硫酸化フカンの構造解析やナマコ由来硫酸化フカンの低分子化物の再現性よい製造に用いることができる新規のエンド型α−L−フコシダーゼ及び硫酸化フカンスルファターゼが提供される。また、該酵素の製造方法についても提供される。また、該酵素を使用することにより糖鎖工学用試薬として有用な様々な分子量の、ナマコ由来硫酸化フカンオリゴ糖が提供される。また、該酵素を効率良く使用するための添加物が提供される。

Claims (10)

  1. 下記の理化学的性質を有することを特徴とするエンド型α−L−フコシダーゼ:
    (I)作用:ナマコ由来硫酸化フカンに作用して、α−L−フコシル結合を加水分解し、硫酸化フカンを低分子化させる;
    (II)至適pH:本酵素の至適pHは7〜9である;および
    (III)至適温度:本酵素の至適温度は25〜45℃である
    (IV)分子量:3万2000(ゲルろ過による)である。
  2. 請求項1記載のエンド型α−L−フコシダーゼ生産能を有するフコイダノバクター属細菌を培養する工程、およびその培養物から該酵素を採取する工程を包含することを特徴とする請求項1記載のエンド型α−L−フコシダーゼの製造方法。
  3. 下記の理化学的性質を有することを特徴とする硫酸化フカンスルファターゼ:
    (I)作用:ナマコ由来硫酸化フカンに作用して、硫酸エステル結合を加水分解し、硫酸を遊離させ
    (II)至適pH:本酵素の至適pHは6〜8である;および
    (III)至適温度:本酵素の至適温度は20〜45℃である
    (IV)分子量:8万4000(ゲルろ過による)である。
  4. 請求項3記載の硫酸化フカンスルファターゼ生産能を有するフコイダノバクター属細菌を培養する工程、およびその培養物から該酵素を採取する工程を包含することを特徴とする請求項3記載の硫酸化フカンスルファターゼの製造方法。
  5. 硫酸化フカンに請求項1記載のエンド型α−L−フコシダーゼを作用させる工程、および反応物から硫酸化フカンオリゴ糖を取得する工程を包含することを特徴とする硫酸化フカンオリゴ糖の製造方法。
  6. 塩化ナトリウムの共存下で請求項1記載のエンド型α−L−フコシダーゼを作用させることを特徴とする請求項5記載の硫酸化フカンオリゴ糖の製造方法。
  7. 請求項5記載の方法によりナマコ由来硫酸化フカンより得られる、分子量が4万であり構成糖が総てフコースである硫酸化フカンオリゴ糖。
  8. 硫酸化フカンに請求項1記載のエンド型α−L−フコシダーゼ及び請求項3記載の硫酸化フカンスルファターゼを作用させる工程、および反応物から硫酸化フカンオリゴ糖を取得する工程を包含することを特徴とする硫酸化フカンオリゴ糖の製造方法。
  9. 塩化ナトリウム及び/又はカルシウムイオンの共存下で請求項1記載のエンド型α−L−フコシダーゼ及び請求項3記載の硫酸化フカンスルファターゼを作用させることを特徴とする請求項8記載の硫酸化フカンオリゴ糖の製造方法。
  10. 請求項8記載の方法によりナマコ由来硫酸化フカンより得られる、分子量が9千であり構成糖が総てフコースである硫酸化フカンオリゴ糖。
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