JP4116683B2 - 徐放性局所送達製剤 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、薬物を部位特異的に投与でき且つ適度な徐放性を有する、徐放性局所送達製剤に関する。さらに詳しくは、本発明は、フィブリン、カルボキシル基を有する多糖類もしくはその塩および薬物からなる徐放性局所送達製剤、該徐放性局所送達製剤を調製するためのキット並びに該徐放性局所送達製剤の担体を調製するためのキットに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、薬物を局所的に投与することにより副作用を抑制する製剤として局所送達製剤が注目を浴びている。特に、抗悪性腫瘍剤は重篤な副作用を示すものが多いため、それを軽減する製剤が求められている。局所送達製剤は全身的な副作用を軽減するためのアプローチの一つであり、薬物を担体した製剤を病巣臓器または組織に埋め込み、薬物を局所的に投与するものである。
【0003】
このような製剤として例えば、本質的に水不溶性の生体内分解性高分子により構成された少なくとも1つの開放端を有する筒状部材内に、ゼラチン、アルブミン、コラーゲン、フィブリン等の賦形剤および生理活性を有する水溶性ペプチドホルモンを含む芯材を入れたうめこみ型徐放性製剤が知られている(特開平6−321803号公報)。この製剤においては、長期に亙り薬物を徐放させることができ、また筒状部材が生体適合性、生体内分解性であり、薬物放出終了後の筒状部材は徐々に分解代謝されるので摘出手術が不要であるという利点を有する。しかしながら、筒状部材を製造するのに繁雑な操作を要する。
【0004】
また、特開平6−336444号公報には、フィブリノゲンおよび/またはフィブリン、アニオン性界面活性剤、および薬物を含んでなる徐放性医薬品組成物が記載されている。この製剤においては、フィブリンからの薬物の拡散、放出を制御することが可能であるが、担体と薬物が均質に分散されなかったり、十分な徐放効果が得られない、あるいは使用する界面活性剤の毒性等の問題がある。
【0005】
さらに、WO92/13547公報には、薬物、ペプチドおよび組成物にエネルギーを適用する際に該ペプチドを支持する第2成分を含む組成物からなる薬物送達製剤が記載されており、前記ペプチドとして、フィブリノゲン、フィブリン、トロンビン、コラーゲン、アルブミンが、第2成分として、フラクトース、デキストラン、アガロース、アルギン酸などが挙げられている。この組成物はペプチドのゲル化のため、加熱などのエネルギーを外から与えることを必要としている。また、フィブリノゲン(あるいはフィブリン)、薬物およびアルギン酸の混合物を加熱して得られる薬物送達製剤は、薬物の徐放性が必ずしも満足の行くものではない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、生体適合性、生体内分解性であり、また薬物の徐放性に優れ、かつ調製が容易である局所送達製剤を提供することにある。本発明者らは、鋭意研究の結果、フィブリノゲン、カルボキシル基を有する多糖類もしくはその塩および薬物からなる混合物に生理学的因子を加え、フィブリノゲンをフィブリンに変換してゲル化させた組成物が上記課題を達成することができることを知り、本発明を完成するに至った。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、薬物およびカルボキシル基を有する多糖類もしくはその塩の存在下、所望によりさらにアプロチニンおよび(または)人血液凝固第XIII因子の存在下で、フィブリノゲンに生理学的因子を作用させて得られるフィブリンを含んでなることを特徴とする徐放性局所送達製剤からなる。
【0008】
本発明はさらに、薬物、フィブリノゲンおよびカルボキシル基を有する多糖類もしくはその塩の混合液、所望によりこの混合液にさらにアプロチニンおよび人血液凝固第XIII因子を加えた混合液に、生理学的因子を含む溶液を加えて得られるフィブリンを含んでなることを特徴とする上記徐放性局所送達製剤からなる。
【0009】
さらに本発明は、フィブリノゲン、前記多糖類もしくはその塩および薬物の混合液、所望によりこの混合液にさらにアプロチニンおよび人血液凝固第XIII因子を加えた混合液と、生理学的因子を含む溶液とからなることを特徴とする上記徐放性局所送達製剤の調製のためのキットよりなる。
【0010】
さらに本発明は、フィブリノゲンおよび前記多糖類もしくはその塩の混合液、所望によりこの混合液にさらにアプロチニンおよび人血液凝固第XIII因子を加えた混合液と、生理学的因子を含む溶液とからなることを特徴とする上記徐放性局所送達製剤の担体の調製のためのキットよりなる。
【0011】
本発明で使用されるカルボキシル基を有する多糖類もしくはその塩の好ましい例としては、アルギン酸、カルボキシデキストラン、カルボキシメチルエチルセルロース等およびそのアルカリ金属塩、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩が挙げられる。前記多糖類は薬物と複合体を形成しやすい負電荷を有しており、フィブリンとともに徐放効果を高めるための適切な担体である。また、前記多糖類は水に対する溶解度が高い、免疫原性がない、さらに至適な分子量が選択できるなど、生体内に投与する担体として要求される諸性質を備えている。なかでも、アルギン酸のアルカリ金属塩、特にアルギン酸ナトリウムが好ましい。アルギン酸またはその塩のような前記多糖類の好ましい平均分子量は1,000〜500,000の範囲である。
【0012】
本発明の製剤において使用される薬物には特に限定はないが、前記多糖類のカルボキシル基と結合しやすい正電価を有する塩基性の薬物が好ましい。局所的な投与により副作用の軽減が望まれている塩基性の抗悪性腫瘍剤が特に好ましい。抗悪性腫瘍剤としては塩酸ドキソルビシン、塩酸ペプロマイシン、塩酸ナイトロジェンマスタード−N−オキシド、シクロファスファミド、チオデパ、カルボコン、塩酸ニムスチン、塩酸ブレオマイシン、硫酸ブレオマイシン、硫酸ペプロマイシン、塩酸アクラルビシン、塩酸イダルビシン、塩酸エピルビシン、塩酸ダウノルビシン、塩酸ピラルビシン、ジノスタチンスチマラマー、ネオカルチノスタチン、エトポシド、テニポシド、塩酸イリノテカン、硫酸ビンクリスチン、硫酸ビンデシン、硫酸ビンブラスチン、L−アスパラギナーゼ、塩酸ミトキサントロン、シスプラチン、カルボプラチン、ネダプラチン、ペントスタチン、ジゾフィラン、ポルフィマーナトリウム、イファスファミド、カタルバジン、メルカプトプリン、チオイノシン、シタラビン、エノシタビン、フルオロウラシル、テガフール、塩酸アンシタビン、メトトレキサート、カルモフール、マイトマイシンC、アクチノマイシン、塩酸ブレオマイシン、タキソールが挙げられる。特に、塩酸ドキソルビシンが好ましい。
【0013】
抗腫瘍剤以外の好ましい薬物としては、硫酸アミカシン等のアミノグリコシド系抗生物質、塩酸バンコマイシン、マクロライド系抗生物質、アゾール系抗真菌剤が挙げられる。
【0014】
本発明においては、フィブリノゲンに生理学的因子を作用させてフィブリンに変換させる。フィブリンへの変換は、フィブリノゲンに2価のカルシウムイオンの存在下でトロンビンまたはトロンビン様活性化凝固因子をフィブリノゲンに作用させることにより行われる。トロンビン様活性化凝固因子としては、バトロキソビンが使用され得る。バトロキソビンはBothrops atrox蛇毒由来のセリンプロテアーゼで、分子量約36000の直鎖糖タンパクで、炭水化物の含量は約5%であり、N−末端アミノ酸はバリンで、その主要構成アミノ酸はアスパラギン酸である。バトロキソビンは、トロンビン様活性化凝固因子で、37℃で、標準ヒトクエン酸加血漿にバトロキソビン溶液を加えるとき、凝固させる活性を有する。
【0015】
本発明の局所送達製剤には、薬理学的に許容されるカルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒアルロン酸、コロミン酸等の増粘剤、アルブミン、クエン酸、アミノ酸類等の安定化剤、等張化剤、溶解補助剤、pH調節剤等を必要に応じて添加することができる。
【0016】
本発明の徐放性局所送達製剤は、薬物、フィブリノゲンおよびカルボキシル基を有する多糖類もしくはその塩の混合液、所望によりこの混合液にさらにアプロチニンおよび人血液凝固第XIII因子を加えた混合液に、2価のカルシウムイオンを含む生理学的因子例えばトロンビン溶液を加えてフィブリノゲンをフィブリンに変換することにより容易に調製することができる。例えば、フィブリノゲン、人血液凝固第XIII因子およびアプロチニンを含む溶液に、カルボキシル基を有する多糖類もしくはその塩および薬物を溶解または均一に分散してA液を得、次にこのA液に、2価のカルシウムイオンを含有するトロンビンの溶液(B液)を添加してフィブリンを生成させて糊状組成物とする。
【0017】
繊維タンパク質である人フィブリノゲンを含有する液に、トロンビンおよび塩化カルシウムを含む液を加えてフィブリノゲンをフィブリンに変換させる場合、50〜150mg/ml、より好ましくは70mg/ml〜90mg/mlの人フィブリノゲンを含有した溶液1mlに対し、0.1〜500単位、好ましくは200〜400単位のトロンビンおよび1〜50mg/mlの塩化カルシウムを溶解した2価のカルシウムイオンを有する溶液1mlを添加することにより容易にフィブリンが得られる。
【0018】
フィブノゲンからフィブリンを生成させる際に、人血液凝固第XIII因子および(または)アプロチニンを存在させることにより、フィブリンの物理的強度および生体内分解に対する抵抗性を強化することができる。人血液凝固第XIII因子は、フィブリノリガーゼ、血漿トランスグルタミナーゼとも呼ばれ、物理的に強固なフィブリン形成にかかわるものであり、さらにα2プラスミンインヒビターやフィブロネクチンをフィブリンと架橋結合させることで、生体内の線溶系酵素からフィブリンの生分解に対する抵抗性を増大させる。人血液凝固第XIII因子は正常人血漿1mlに相当する人血液凝固第XIII因子活性の7〜100倍、好ましくは60〜90倍が添加される。アプロチニンは、生体内の線溶系酵素からフィブリンの生分解を防御する。アプロチニンは、例えばフィブリノゲンを80mg/ml含有したもの1mlに対して20〜2000カリクレイン不活化単位(KIE)、好ましくは500〜1500KIEを添加する。本発明で用いられるフィブリン成分として、特公昭63−40547号公報に記載されているフィブリノゲンおよび人血液凝固第XIII因子を含有する人間のまたは動物の蛋白をベースとする組織接着剤が好適に使用される。
【0019】
かくして得られたフィブリン組成物を、病巣臓器または組織に局所投与するに適した球状、棒状、板状、円盤状またはフイルム状に任意の大きさで成形し、低温保存あるいは乾燥することによって埋めこみ投与に適した本発明の局所送達製剤を製造することができる。フィブリン組成物をスプレーすることによって、あるいは成形したものを粉砕することによって粉末状の製剤とすることもできる。
【0020】
さらに、特開昭50−152641号公報に記載の方法に準じて、前述のA液とB液とをそれぞれ別々のシリンジに採取し、両シリンジのシリンダ部前端部の吐出口に各シリンジ内の溶液を別々に注射針もしくはカテーテルに導くY字型の導管をもつYピースを設置し、Yピース先端に取り付けた注射針等により生体内の標的部位に直接両溶液を注入し、投与部位で本発明の製剤を形成させることもできる。また、Yピースを用いずA液、B液のいずれか一方を先に適用した後に残る一方の液を適用することもできる。あるいは、前記Yピースのかわりに、Yピース内の導管に不活性ガスを導入できるスプレーヘッドを取り付けることにより前記シリンジ内の両溶液を噴霧投与することも可能である。このように、本発明の局所送達製剤を生体内の標的部位に外科手術することなく適用することも可能である。
【0021】
本発明の局所送達製剤を調製するに当たり、各成分の濃度は臨界的ではなく、目的とする徐放性に応じて適宜選択される。通常、A液中の各成分の濃度は、フィブリノゲン濃度が50〜150mg/ml、好ましくは70〜90mg/ml、前記多糖類濃度が10〜50mg/ml、好ましくは20〜30mg/ml、人血液凝固第XIII因子が正常人血漿1mlの相当する活性の7〜100倍/ml、好ましくは60〜90倍/ml、アプロチニンが20〜2000KIE/ml、好ましくは500〜1500KIE/ml、そして薬物濃度が1〜200mg/ml、好ましくは20〜100mg/mlである。B液中のトロンビン濃度は0.1〜500単位、好ましくは200〜400単位、2価のカルシウムイオン濃度は塩化カルシウム濃度として1〜50mg/mlである。
【0022】
本発明の製剤は、前述したように、球状、棒状、板状、円盤状もしくはフィルム状に成形されたものを患部あるいはその近くに埋め込むことにより投与することができる。あるいは前記A液とB液とからなるキットの形態のものを、前述したYピースを取り付けたシリンジを用いて混合して適用部位に注入し、適用部位で徐放性局所送達製剤を形成させて投与することもできる。あるいはフィブリノゲンおよびカルボキシル基を有する多糖類もしくはその塩の混合液と、2価のカルシウムイオンを含むトロンビン溶液とからなる徐放性局所送達製剤の担体キットのいずれかの溶液に所望の薬物を添加した後、これらを前述したYピースを取り付けたシリンジを用いて混合して適用部位に注入し、適用部位で徐放性局所送達製剤を形成させて投与することもできる。
【0023】
【実施例】
次に、実施例を示して本発明の効果をさらに具体的に説明する。
実施例1
1ml中に1000KIEのアプロチニンを含むアプロチニン液(商品名:ベリプラスト、ヘキスト薬品工業社製)0.1mlにフィブリノゲン末8mg(商品名:ベリプラスト、ヘキスト薬品工業社製、正常人血液凝固因子XIII因子を含む)、塩酸ドキソルビシン(商品名:アドリアシン、協和醗酵社製)6mg及びアルギン酸ナトリウム(商品名:アルト、共成製薬社製)2.5mgを溶解させてA液を調製した。次に1ml中に塩化カルシウム14.7mgを含む塩化カルシウム液(商品名:ベリプラスト、ヘキスト薬品工業社製)0.1mlでトロンビン末30単位(商品名:ベリプラスト、ヘキスト薬品工業社製)を溶解しB液を調製した。前記A液とB液を混合した後、直径10mm、厚さ約2mmの円盤状に成形し本発明の局所送達製剤を得た。
【0024】
対照例1
アルギン酸ナトリウムを除いた他は実施例1と同様に調製して対照例製剤を得た。
溶出試験
実施例1および対照例1の各製剤を被験物質として、各被験物質からのin vitroにおける薬物(塩酸ドキソルビシン)の溶出を、再生セルロース膜を用いた透析法で測定した。実施例1および対照例1の両製剤並びに塩酸ドキソルビシン水溶液を等張リン酸緩衝液(pH7.0)1mlと共に透析チューブに入れ、100mlの等張リン酸緩衝液(pH7.0)中に浸し撹拌した。経時的に外液を採取し、外液を定量するまで−20℃で保存した。塩酸ドキソルビシン濃度の測定は、蛍光分光光度計(型式RF−503A,島津製作所製)を用いて、励起波長500nm、測定波長580nmで行った。各被験試料からの塩酸ドキソルビシン放出に関する平均時間をモーメント法により計算し、平均溶出時間を算出した。
【0025】
溶出試験の結果を図1に示す。平均溶出時間は塩酸ドキソルビシン水溶液、対照例1および実施例1についてそれぞれ3.7、8.7および80.8時間であった。このように、水溶液およびフィブリンからの塩酸ドキソルビシン放出に対して、塩酸ドキソルビシンとフィブリン、さらにアルギン酸ナトリウムを含む実施例1の製剤は長時間にわたり徐放性を示すことが明らかとなった。この優れた徐放効果は、アルギン酸ナトリウムがそのカルボキシル基に起因する負電荷を有しており、正に荷電している(pKa,8.22)塩酸ドキソルビシンと静電的に結合していること、さらに、アルギン酸ナトリウムと塩酸ドキソルビシンの複合体が、フィブリンのマトリックス構造中に効果的に捕捉されていることにより得られたものである。
【0026】
腫瘍内薬物動態試験
雄性ドンリュウラット(220〜250g)は三協ラボより購入し無病原菌室にて飼育した。ラット腹水肝腫瘍細胞を腹水中で継代培養し、1×107個のラット腹水肝腫瘍細胞を前記ラットの背中皮下に植え付け、腫瘍の長径が1.5〜2cmに成長してから試験に使用した。腫瘍の体積(V)は以下の計算式により算出した。
V(cm3)=(π/6)(d1)(d2)2
(ただし、d1、d2はそれぞれ腫瘍の長径と短径を示す)
【0027】
前記担癌ラットにペントバルビタールの腹腔内投与(50mg/kg)で麻酔後、腫瘍の中心部に微小透析プローブ〔分画分子量20,000のポリカーボネート膜(全長24mm,透析部10mm)を持つ透析プローブ(CMA/20CMA/Microdialysis AB)〕を挿入し、定速注入器を用い一定流速(3μl/min)でリンゲル液を流した。次に、ハサミで腫瘍と周辺皮膚の間を少し広げ、そこに実施例1の製剤を挿入した。
【0028】
手術後、担癌ラットを拘束ゲージに入れた。血液(約200μl)は軽いエーテル麻酔下で経時的(2、5、7、24時間後)に眼窩静脈より採取し、透析液はフラクションコレクターで1.5時間毎に採取した。血液は3,000回転/分で10分間遠心分離後、血漿を分離した。なお、得られた透析液および血漿は測定まで−20℃で保存した。
【0029】
前記透析液および血漿中の塩酸ドキソルビシン濃度は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)法にて定量した。腫瘍組織からの透析液は夾雑物を含まないため、無処理で直接HPLCに注入した。200μlの血漿サンプルは20μlの40%硫酸亜鉛及び200μlのメタノールと混合し10秒間振とうした後、15,000gで10分間遠心分離し、その上清を蛍光検出器を接続したHPLCシステム(型式LC module 1,ウォーターズ社製)に注入した。
【0030】
HPLC測定条件は以下の通りである。
測定条件:HPLCカラム;COSMOSIL C18(46×150mm,ケムコ)、
移動相;0.28Mギ酸緩衝液(pH3.55)/acetone/isopropanol(65:30:5)
励起波長;470nm
検出波長;585nm
流速;1.0ml/min
測定結果を定量的に比較するため、非コンパートメント動態パラメータ(血中濃度下面積AUCおよび平均滞留時間MRT)をモーメント解析法によって0〜24時間について求めた。また、測定データの統計的有意差は、Welchのt−検定法により評価した。
【0031】
血漿中および腫瘍細胞外液中の塩酸ドキソルビシン濃度推移を図2に示す。腫瘍細胞外液中の塩酸ドキソルビシン濃度は被験試料の局所適用後2〜4時間まで増加し、そして緩やかに減少した。一方、血漿中の塩酸ドキソルビシン濃度は、腫瘍細胞外液中の濃度よりも24時間にわたって著しく低い値であった。
【0032】
塩酸ドキソルビシンをはじめとする抗癌剤の全身投与が、しばしば投与量を制限するような重篤な副作用(たとえば骨髄抑制)を起こすことを考えると、局所と全身に対する薬物暴露の割合によっては、本発明による抗癌剤の部位特異的(局所)送達製剤は非常に有用であるといえる。
【0033】
非コンパートメント解析による体内動態パラメータを、腫瘍サイズおよび腫瘍細胞外液/血漿中濃度のAUC比とともに、表1に示す。実施例の製剤で観察された非常に高いAUC比(860〜2,700)は、全身への薬物移行を抑えて局所濃度を高めるという部位特異的薬物送達の目標に合致している。
前述の試験例により、カルボキシル基を有する多糖類を添加したフィブリンを用いた薬物の部位特異的送達法の有用性が明らかである。
【0034】
【表1】
【0035】
【発明の効果】
本発明の局所送達製剤は、薬物の徐放性に優れ、かつ調製が容易である。本発明の製剤においては、フィブリンに由来する薬物の徐放効果のみならず、カルボキシル基に起因する負電荷を有する多糖類と薬物とが静電気的に結合することにより、また、多糖類と薬物との複合体がフィブリンのマトリックス構造中に効果的に捕捉されることにより、優れた徐放効果が得られるものと思われる。また担体として生体内成分を用いているため、生体適合性、生体内分解性に優れ、埋め込み型の徐放製剤として安全に生体内に投与でき、薬物の副作用を伴わずに標的臓器または組織内の薬物濃度を長期間高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 in vitroにおける薬物の放出挙動をあらわす溶出曲線図である。
【図2】実施例1の本発明製剤をラット腫瘍表面に適用後の腫瘍細胞外液中および血漿中の薬物の濃度推移を表すグラフである。
Claims (14)
- 薬物およびアルギン酸またはその塩の存在下で、フィブリノゲンに生理学的因子を作用させて得られるフィブリンを含んでなることを特徴とする徐放性局所送達製剤。
- 薬物およびアルギン酸またはその塩の存在下、並びにアプロチニンおよび(または)人血液凝固第XIII因子の存在下で、フィブリノゲンに生理学的因子を作用させて得られるフィブリンを含んでなることを特徴とする請求項1に記載の徐放性局所送達製剤。
- 生理学的因子が2価のカルシウムイオンおよびトロンビンであることを特徴とする請求項1または2に記載の徐放性局所送達製剤。
- 薬物、フィブリノゲンおよびアルギン酸またはその塩の混合液に生理学的因子を含む溶液を加えて得られるフィブリンを含んでなることを特徴とする請求項1に記載の徐放性局所送達製剤。
- 薬物、フィブリノゲン、アルギン酸またはその塩、アプロチニンおよび人血液凝固第XIII因子の混合液に生理学的因子を含む溶液を加えて得られるフィブリンを含んでなることを特徴とする請求項2記載の徐放性局所送達製剤。
- 生理学的因子が2価のカルシウムイオンおよびトロンビンであることを特徴とする請求項4または5に記載の徐放性局所送達製剤。
- 前記アルギン酸またはその塩がアルギン酸ナトリウムである請求項1〜6のいずれか1項に記載の徐放性局所送達製剤。
- 前記薬物が塩基性薬物である請求項1〜7のいずれか1項に記載の徐放性局所送達製剤。
- 前記塩基性薬物が抗悪性腫瘍剤である請求項8に記載の徐放性局所送達製剤。
- 前記抗悪性腫瘍剤が塩酸ドキソルビシンである請求項9に記載の徐放性局所送達製剤。
- フィブリノゲン、アルギン酸またはその塩および薬物の混合液と生理学的因子を含む溶液とからなる請求項4または6に記載の徐放性局所送達製剤の調製のためのキット。
- フィブリノゲン、アルギン酸またはその塩、アプロチニン、人血液凝固第XIII因子および薬物の混合液と、生理学的因子を含む溶液とからなる請求項5または6に記載の徐放性局所送達製剤の調製のためのキット。
- フィブリノゲンおよびアルギン酸またはその塩の混合液と、生理学的因子を含む溶液とからなる請求項4または6に記載の徐放性局所送達製剤の担体の調製のためのキット。
- フィブリノゲン、アルギン酸またはその塩、アプロチニンおよび人血液凝固第XIII因子の混合液と、生理学的因子を含む溶液とからなる請求項5または6に記載の徐放性局所送達製剤の担体の調製のためのキット。
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