JP4115878B2 - ラッチ装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、特に家具製品等に適用できるラッチ装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
例えば、物品を収納可能な空間を内在させる筐体に観音開き式の扉を取り付けてなる家具では、下記特許文献にも記載されているように、筐体の天板及び底板の前面に開口を形成したラッチ受けを設け、かつ扉の内面側に鎌状のラッチを取り付けて、ラッチ受けの開口にラッチを掛け止めることで筐体に扉を係留することが一般的である。通常、このようなラッチは、扉内に設けた回転軸を中心に回動可能である。また、ラッチには、ばね等の付勢手段により、予め開口に掛け止められる方向の力(付勢力)が加えられている。
【0003】
扉が閉じているとき、扉の外面側に配置された操作レバーを引くと、該操作レバーに加えられた操作力がラッチに伝達され、ラッチが付勢力に抗してラッチ受けの開口縁より外れようとする方向に回動する。結果、ラッチ受けとラッチとの係合が解除され、扉の開放が許容される。逆に、開いている扉を閉じる際には、ラッチがラッチ受けに接触、摺動しながらその開口縁を回避する方向に回動し、しかる後元の位置に戻るように逆方向に回動してその先端部が開口縁の裏側に掛かる。
【0004】
【特許文献1】
特開2002−174066号公報
【特許文献2】
特開2002−174065号公報
【特許文献3】
特開2002−174064号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
つまり、扉が閉止されるためには、ラッチの先端部がラッチ受けの開口縁を乗り越えるように、ラッチ全体が動作しなくてはならない。しかも、開いている扉を閉じる際には、扉が筐体に接近移動するにつれてラッチがラッチ受けに対し摺動しながら掛かる。従って、ラッチが軽く動作するためには(ラッチのラッチ受けへの係合がスムーズに行われるようにするためには)、扉を閉じる過程においてラッチとラッチ受けとの間の摩擦が大きくならないように設計することが求められる。
【0006】
さらに、上記の如き既存のラッチ901を採用する場合、図9に示すように、扉902を閉じた状態、言い換えるならば扉902を筐体903に係留した状態における扉902の(開閉方向に沿った)遊び、がたつき904が生じてしまう点は否めない。一般に、ラッチ901や扉902の寸法、ラッチ901を回動可能に支持する回転軸905の位置等を設計するに際し、これらを製造する段階で生じる寸法誤差を加味しておく必要がある。既存のラッチ901にあっては、回転軸905とラッチ受け906との距離と比較してラッチ901の長さ寸法を大きめにとっておく(製造段階で生じた誤差により、扉902を閉じた状態でラッチ901がラッチ受け906に掛からなくなることを回避するため)。特に、板金材を曲げ加工して扉902や筐体903を製造する場合、比較的大きな誤差が生じる。よって、扉902を閉じた状態におけるラッチ受け906に対するラッチ901や回転軸905の相対位置等が、個々の製品毎に少なからずばらつく。このようなばらつきを吸収できるように余裕をもたせた寸法設計を行うため、結果として、扉901を閉じた状態で扉の遊び、がたつき904が生じることとなる。
【0007】
その上、図10に示すように、ラッチ受け906が掛け止められたラッチ901に作用する作用点P’はラッチ受け906よりも内奥、即ち反扉902側にある一方で、ラッチ901の回転中心905は絶えずラッチ受け906よりも手前にある。そして、ラッチ受け906に係合させたままラッチ901を抜脱しようとする場合に該ラッチ901に作用する反作用力F’は、ラッチ受け906とラッチ901との係合を解除する際に回動させる方向に沿った方向成分の分力F2’を持つ。言い換えるならば、ラッチ901を係合させたまま扉902を開こうとすると、ラッチ901が回動して外れる方向に反作用力F’が働くこととなる。このように、既存の鎌状のラッチ901は、構造的な不安定性を有している。
【0008】
以上の問題に鑑みて、本発明は、開閉可能な扉等を筐体等に係留するためのラッチ装置において、扉等を閉じた時の扉等の遊び、がたつきを極小とすることを実現しようとするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上述した課題を解決すべく、本発明では、ラッチ受けに設定された係留部に係合する展開位置と前記係留部に係合しない退避位置との間で変位可能な可動子を内包しラッチ受けに掛け止めることができるラッチと、所定の操作体に対する操作に連動して前記可動子を変位させる駆動機構とを具備するラッチ装置において、前記係留部に前記可動子を係合させた状態で前記ラッチ受けより前記ラッチを脱離させるように相対移動させる方向の力が作用した場合に可動子に作用する反作用力が、前記展開位置より前記退避位置へ変位する際の可動子の運動の方向に沿った方向成分の分力を持ち得ないように構成した。より具体的に述べると、前記係留部に前記可動子を係合させた状態で係留部に当接している可動子の当接面に作用する反作用力が、可動子の係留部への係合を解除する方向とは逆の方向に作用するように、前記当接面の角度を設定するものとした。
【0010】
このようなものであれば、ラッチ受けに掛け止めたラッチをそのまま脱離させようとした場合に、係留部と可動子との係合が解除される方向に可動子が変位することを抑止できるため、ラッチ受けにラッチを掛け止めた状態における構造的な安定性が担保される。このことは、ラッチ受けにラッチを掛け止めたときの遊び、がたつきを極小にするような設計を行うために有効となる。
【0011】
ここで、ラッチ受けとは、少なくとも可動子が係合してラッチを掛け止めるための部材一般を言う。ラッチ受けは、可動子と係わり合う縁部を有し、該縁部が係留部となる。ラッチ受けの形状は特に限定されないが、通常、ラッチ受けは開口を有し、その周縁部に係留部が設定される(但し、ラッチ受けに開口が形成されているとは限られない)。このとき、前記ラッチ本体を前記開口に挿入することで該ラッチ本体を前記係留部に臨ませることができる。そして、ラッチ受けの開口にラッチ本体を挿入した状態で可動子を変位させて、ラッチ受けとラッチとの係合あるいはその解除を行うものとなる。結果、扉等を閉めた状態での該扉等の遊びを小さくすることが可能となるとともに、可動子の比較的小さな動作で精度の良い扉等の係留が可能となる。また、既存の鎌状のラッチを用いる場合のように、ラッチ受けに(鎌状のラッチが回動できるための)広大な開口を形成する必要がない。なお、ラッチ受けの開口は、その開口縁が閉じているものであってもよく、あるいは開口縁が閉じていない切り欠きであってもよい。
【0012】
また、可動子は、該可動子を変位可能に支持する支持体、あるいはラッチ本体より突没するものであることが好ましい。可動子の運動の軌跡は、特に限定されない。可動子の運動の軌跡としては、直線運動、回転運動若しくはこれらの組み合わせ、その他が考えられる。
【0013】
前記可動子の変位が回転を含む運動であって、その回転の中心が、前記係留部に前記可動子を係合させた状態で、係留部が可動子に作用する作用点よりも前記ラッチの相対移動方向に沿って内奥にあるように構成するならば、幾何的に見て、可動子が変位するときにその外縁が描く軌跡をラッチ受けに設定した係留部に近接させることができる。のみならず、可動子の外縁がラッチ受けの係留部に摺動しながら該係留部に大きな力を及ぼすトグル作用を営ませて、ラッチとラッチ受けとの係合、ひいては筐体等に対する扉等の係留を強固なものとすることも可能となる。よって、ラッチ受けにラッチを掛け止めたときの遊び、がたつきを極小とすることが可能となる。なお、ここに言う回転の中心には、(i)実際の(実体として存在している)回転軸、(ii)仮想的な(実体として存在していない)回転中心が含まれる。(ii)に該当する場合の「回転の中心」は、一定でもよく、展開位置にある可動子が変位する瞬間における瞬間中心でもよい。また、支持体あるいはラッチ本体と可動子とが係わり合う部位とは異なることがある。
【0014】
前記作用点近傍における前記可動子の外縁、言い換えるならば当接面の面形状が、前記回転の軌跡に略対応する部分円弧状(部分円筒曲面状)をなすものであるならば、可動子を変位させてスムーズにラッチ受けの係留部に係合させることができ、かつ係留部に係合している可動子を変位させてスムーズにその係合を解除することができる。しかもこのとき、遊び、がたつきを極小にする好適な設計を具現できる。
【0015】
本発明に係るラッチ装置は、一の部材に他の部材を係留するためのものとして好適に用いることができる。即ち、一の部材と他の部材とのうち一方に前記ラッチ受けを設け、他方に前記ラッチ装置を設けて、ラッチ受け及びラッチ装置を介して両者を係脱自在に結合することができる。とりわけ、種々の物品を収納可能な空間を内在させている家具本体と、前記空間を開放あるいは閉止する蓋体を内包する部材(蓋体そのものであっても構わない)とを少なくとも具備する収納家具にあって、前記家具本体に前記部材を係脱自在に係留するために適用することが効果的であると言える。この場合には、これら家具本体及び部材のうち一方に前記ラッチ受けを設け、他方に前記ラッチ装置を設ける。ここに言う蓋体の典型例として、収納家具本体が有する収納空間を開放あるいは閉止する扉が挙げられる。または、収納家具がキャビネット若しくはワゴン等である場合には、引き出しを出し入れ可能に収納し得る筐体が家具本体に、該筐体より引き出される引き出しの鏡板が蓋体に(即ち、引き出しが蓋体を内包する部材に)、それぞれ該当する。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。図1、図2に、本発明に係るラッチ装置4を適用した収納家具1を示す。該収納家具1は、その前面側に開口する収納空間21を内在させている筐体状の家具本体2と、収納空間21を開閉する位置にヒンジを介して取り付けた観音開き式の蓋体たる扉31、32とを具備する。ラッチ装置4は、例えば、左右の扉31、32のうちの右側の扉31に適用する。本実施形態における左側の扉32は、閉止した状態において、その上から右側の扉31の縁部をオーバーラップさせることにより開放動作が禁止される。右側の扉31は、本発明に係るラッチ装置4の働きにより家具本体2に係留される。そして、右側の扉31に実装した操作体6をユーザが操作することで、ラッチ装置4による右側の扉31の係留の解消を行い得るようにしている。
【0017】
より具体的には、ラッチ受け5を家具本体2に設けるとともに、該ラッチ受け5に掛け止められるラッチ装置4を右側の扉31に設ける。ラッチ受け5は、家具本体2の収納空間21を包囲する周壁(図2に示す例では、家具本体2の底壁)の近傍に成形した前向きの鉛直面22に設けてある。本実施形態におけるラッチ受け5は、周縁が閉じた開口51を有する。そして、後述するラッチ41を掛け止めるための係留部52を、その周縁部に設定している。但し、ラッチ受け5が、周縁の閉じていない開口(若しくは、切り欠き)を有していることを妨げない。
【0018】
ラッチ装置4は、ラッチ本体42及び可動子43を主要な構成要素とするラッチ41と、該ラッチ41の可動子43を駆動する駆動機構44とを具備する。ラッチ41は、扉31の内面側における、ラッチ受け5に対応する位置より突出させて設けてある。扉31を閉じると、このラッチ41が家具本体2に設けたラッチ受け5の開口51に挿入される。
【0019】
因みに、ラッチ受け5並びにラッチ41は複数、とりわけ一対に設けておくことができる。例えば、家具本体2の底壁及び頂壁(図示せず)の近傍にそれぞれラッチ受け5を設けておき、かつこれらラッチ受け5に対して挿脱可能なラッチ41を扉31の内面側に上下一対に設けておくことができる。
【0020】
ラッチ装置4に関して詳述する。ラッチ本体42は、例えば扁平な板状をなすもので、ラッチ受け5に設定した係留部52に係合する可動子43を変位可能に支持している。ラッチ本体42と可動子43とは、別個の部材であってもよく、あるいは単一の部材であってもよいが、本実施形態における可動子43はラッチ本体42とは別体をなす。通常、ラッチ本体42は変形せず、該ラッチ本体42を設けている部材即ち扉31に対し固定されている。つまり、ラッチ本体42は、扉31とともに家具本体2ひいてはラッチ受け5に対して相対移動し、扉31が閉じられるときにはラッチ受け5の開口51に挿入されて、ラッチ受け5に設定した係留部52に臨むように位置づけられる。
【0021】
なお、ラッチ本体42を係留部52に臨むように位置づけたときにラッチ本体42の外面の少なくとも一部がラッチ受け5と係わり合うように構成してあれば、ラッチ本体42及びラッチ受け5を利用して閉じた扉31の家具本体2に対する位置決めを行うことができる。さらに、図示例では、扉31を閉じた状態でラッチ受け5の開口51縁と係わり合うラッチ本体42の基部より先端側の部位が、該基部と比較して先細り形状となっている。よって、扉31を閉止する際、ラッチ本体42が開口51に対して必ずしも適切な位置になくとも、先細り形状の先端部位がまず開口51に挿入され、しかる後ラッチ本体42が開口51縁によって適切な位置に誘導されながらその基部まで挿入される。このように、ラッチ本体42がラッチ受け5に対して適切に位置決めされるため、比較的小さな可動子43であっても好適にラッチ本体42をラッチ受け5に係留できる。
【0022】
可動子43は、図3及び図4の平面図に模式的に示すように、ラッチ受け5の係留部52に当接する当接面43aを有し、ラッチ本体42の相対移動方向に対して非平行な方向に突没する。図示例では、ラッチ本体42より側方に突没するものとなっている。但し、可動子43を、ラッチ本体42より上方に若しくは下方に突没させることを妨げない。本実施形態では、ラッチ本体42の内に空洞が存在しており、その空洞に可動子43を配置している。かつ、ラッチ本体42の端面(図示例では、側端面)に、ラッチ本体42内の空洞に連通するスロット(溝穴)42aを形成してある。可動子43がラッチ本体42に対して変位する際には、可動子43の一部がスロット42aより突没する。よって、可動子43は、少なくともその一部をラッチ本体42内の空洞に収容可能な程度の厚み寸法を有する板状体とする。可動子43は、同じくラッチ本体42内の空洞に配置した回転軸42bを介してラッチ本体42に支持させてあり、該回転軸42bを中心にラッチ本体42に対して相対的に回動させることができる。回転軸42bは、ラッチ本体42の比較的先端寄りの位置に配置してある。図3及び図4に示すように、ラッチ本体42をラッチ受け5の開口51に挿入したとき、回転軸42bがラッチ受け5の開口51縁よりも内奥に位置づけられる。即ち、回転軸42bが、係留部52(または、後述する作用点P)と比較して、ラッチ本体42がラッチ受け5に対して進入する方向(図3及び図4上では、上方向)に向かって先方に、言い換えるならばラッチ本体42の先端側に位置づけられる。
【0023】
しかして、可動子43は、ラッチ本体42を係留部52に臨ませた状態で、即ち、ラッチ本体42をラッチ受け5の開口51に挿入した状態で該係留部52に係合して前記ラッチ受け5にラッチ本体42を掛け止める展開位置S(図3に示す)と前記係留部52に係合せず前記ラッチ受け5よりラッチ本体42が脱離することを許容する退避位置E(図4に示す)との間で変位可能である。可動子43のラッチ本体42に対する相対的な変位は、回転を含む運動となっており、その回転の中心は回転軸42bである。
【0024】
その上で、可動子43を係留部52に係合させた状態でラッチ41(若しくは、扉31)を脱離させるようにラッチ受け5に対して相対移動させる方向の力が作用した場合に可動子43に作用する反作用力Fが、展開位置Sより退避位置Eへ変位する際の可動子43の運動の方向、即ち展開位置Sにある可動子43が退避位置Eに向けて回動する方向に沿った方向成分の分力を持ち得ないように構成する。そのために、ラッチ受け5の係留部52より可動子43の当接面43aに作用する反作用力Fが可動子43と係留部52との係合を解除する方向とは逆の方向に作用するように、当接面43aの角度を設定している。並びに、係留部52に可動子43を係合させた状態にあって、可動子43のラッチ本体42に対する回転の中心が、係留部52が可動子43に作用する作用点Pよりもラッチ本体42の相対移動方向に沿って内奥にあるようにしている。即ち、可動子43の回転の中心たる回転軸42bが、作用点Pと比較して、ラッチ本体42がラッチ受け5に対して進入する方向に向かって先方に位置する(言い換えるならば、可動子43の回転の中心が、作用点Pから見て、該作用点Pにおいてラッチ受け5より可動子43に作用する力Fの方向に沿って先方にある)。この作用点Pが当接面43a上に存在していることは言うまでもない。
【0025】
上記の反作用力Fは、図5に示すように、作用点Pより回転の中心に向かう成分F1と、作用点Pより当接面43aに平行な方向に向かう成分F2との合力と見なすことができる。そして、作用点Pより当接面43aに平行な方向に向かう成分F2は、可動子43を退避位置Eより展開位置Sに向かわせるような方向に作用する力である。よって、可動子43と係留部52との間の摩擦が十分に大きく可動子43が係留部52に対して滑らなければ、可動子43を係留部52に係合させたままラッチ41をラッチ受け5より脱離させようとする場合にあって、可動子43がラッチ本体42よりさらに突き出ようとする。即ち、可動子43が展開位置Sを越えてさらに回動しようとするが、可動子43の所定の部位(当たり部43c)がラッチ本体42の内壁面等に当接することで、あるいは可動子43と係わり合う駆動機構44が可動子43を制止することで、それ以上の変位が抑止される。結果として、可動子43と係留部52との係合がより強まるため、不用意にラッチ41がラッチ受け5より脱離するようなことがない。
【0026】
さらに本実施形態では、作用点P近傍における可動子43の外縁、言い換えるならば当接面43aの面形状を、ラッチ本体42に対する回転の軌跡に略対応する部分円弧状(部分円筒曲面状)としており、展開位置Sと退避位置Eとの間で可動子43をスムーズに変位させることが可能でありながら、しかも可動子43を係留部52に係合させたときのラッチ41とラッチ受け5との間の遊び、がたつきを極小にすることが可能となっている。また、当接面43aが回転の中心たる回転軸42bと作用点Pとを結ぶ線分を径とした円筒曲面であるということは、上記の反作用力Fの分力のうち作用点Pより回転の中心に向かう成分F1が可動子43を回転させるようには作用しないということを意味する。従って、可動子43と係留部52との間の摩擦が小さく可動子43が係留部52に対する滑りの発生が想定されるとしても、可動子43が展開位置Sより退避位置Eに向けて回転してしまうようなことは起こりにくい。即ち、可動子43と係留部52との間の静止摩擦係数に特段の配慮をする必要がない。
【0027】
ラッチ装置4のもう一つの要素である駆動機構44は、蓋体たる扉31に実装され、所定の操作体6に対する操作に連動してラッチ41の可動子43を変位させる役割を担う。図6に示すように、操作体6は、操作軸61と、該操作軸61の所要の部位に取り付けた操作レバー62とを具備してなる。操作軸61は、例えば上下方向に延伸する角柱状のもので、その軸心周りに回動可能であるように扉31に支持させてある。操作レバー62は、ユーザの手指により直接に操作される部材であり、操作軸61の所定高さ位置に固定され、通常、扉31の外面に露出している。ユーザは、操作レバー62を介して操作軸61を回動操作することができる。本実施形態における駆動機構44は、操作軸61の端部に固定したフック部材44を主体とする。このフック部材44は、操作レバー62が操作されることにより、操作軸61を中心に水平面上で回転する。フック部材44の先端部はラッチ本体42内に進入し、可動子43(より上向きに若しくは下向きに突出するピン43b)と係合する。そして、操作レバー62及び操作軸61に加えられた操作力を、可動子43に伝達する。
【0028】
総じて言えば、図4に示すように扉を閉じている状態で、ユーザが操作レバー62を引くと、操作軸61がその軸心周りに回転し、フック部材44が操作軸61に連動して該操作軸61を中心に回転する。そして、フック部材44が、可動子43(のピン43b)に係合し、操作レバー62に加えられた操作力を可動子43に伝達する。その結果、可動子43が展開位置Sより退避位置Eに向けて変位する。
【0029】
つまり、図3に示すように、駆動機構44の要素であるフック部材が、操作体6に対する操作に連動して可動子43を駆動し、これを退避位置Eまで退避させる。ユーザは、操作体6を駆動操作することを通じ、可動子43と係留部52との係合を解除して扉31の開放を行い得る。
【0030】
因みに、可動子43が退避位置Eより展開位置Sへと向かう方向の付勢力を、該可動子43に直接に若しくは間接に加えておくことが好ましい。可動子43に付勢力を加えるための付勢手段45は、典型的には、ねじりコイルばねや板ばね等のばねに代表される弾性付勢手段である。付勢手段45は、ラッチ本体42の内に配置してもよく、ラッチ本体42の外に配置してもよい。また、操作体6または駆動機構44を構成する部材に対して付勢力を加えることで、間接的に可動子43を付勢することとしても構わない。
【0031】
本実施形態によれば、ラッチ受け5に対して相対移動するラッチ本体42と、前記ラッチ受け5に前記ラッチ本体42を掛け止める展開位置Sとラッチ受け5よりラッチ本体42が脱離することを許容する退避位置Eとの間で変位可能な可動子43と、所定の操作体6に対する操作に連動して前記可動43子を変位させる駆動機構44とを具備するラッチ装置4を構成したため、前記可動子43を介して前記ラッチ受け5に前記ラッチ本体42を掛け止めることができる。より具体的には、ラッチ受け5に対して相対移動し、ラッチ受け5に設定された係留部52に臨むように位置づけることができるラッチ本体42と、前記ラッチ本体42に支持され、前記係留部52にラッチ本体42を臨ませた状態で該係留部52に係合して前記ラッチ受け5にラッチ本体42を掛け止める展開位置Sと前記係留部52に係合せず前記ラッチ受け5よりラッチ本体42が脱離することを許容する退避位置Eとの間で変位可能な可動子43と、所定の操作体6に対する操作に連動して前記可動子43を変位させる駆動機構44とを具備するラッチ装置4としたため、ラッチ受け5への係合とその解除との切り替えの役割と、ラッチ受け5に対する位置づけの役割とを分担させることができる。そして、ラッチ受け5にラッチ41を掛け止める際には、可動子43のみを変位させてラッチ受け5に係合させることができる。従って、小さい動作でラッチ41を掛け止めることが可能となり、その際に発生する騒音が小さくなる。また、ラッチ受け5、ラッチ41、その他各種の部材や機構に与えるダメージを小さくすることができる。さらに、可動子43とラッチ本体42とに機能を分けたことにより、扉31を閉じた状態での扉31の遊び、がたつきの量が、ラッチ受け5、ラッチ本体42及び可動子43の加工精度により決まることととなり、扉31や家具本体2の加工精度による影響は小さくなる。よって、ラッチ受け5に対するラッチ本体42の位置づけの誤差や、ラッチ本体42に対する可動子43の位置、回転の中心の位置の誤差を小さくするようにこれらにの加工精度を高めることで、ラッチ本体42をラッチ受け5に精度よく掛け止めることが可能となり、扉31を閉じた状態での遊び、がたつきを低減することができる。扉31や家具本体2全体の設計寸法に対する誤差を小さくすることと比較して、ラッチ受け5、ラッチ本体42、可動子43の加工精度を向上させることは容易である。特に、ラッチ受け5、ラッチ本体42、可動子43を例えば樹脂製のものとすれば、板金材に対する曲げ加工よりも高精度に仕上げることができる。上記より、ラッチ受け5にラッチ41を掛け止めたときの遊び、がたつきを極小にするような設計が可能となる。
【0032】
前記可動子43が、前記ラッチ本体42より突没するものであるならば、ラッチ41とラッチ受け5との相対的な位置関係の制御、ひいては扉31と家具本体2との位置関係の制御を主にラッチ本体42に担わせて、可動子43や可動子43を駆動する駆動機構44への負担を小さくすることができる。加えて、ラッチ本体42とラッチ受け5との係わり合いを利用して、閉止時における扉31の家具本体2に対する位置決めを行うようなことも可能となる。
【0033】
前記ラッチ受け5に前記ラッチ本体42を掛け止めるとき、ラッチ本体42の外面がラッチ受け5の開口51縁に当接又は近接して、ラッチ本体42のラッチ受け5に対する相対的な位置決めがなされるように構成してあれば、閉じた扉31を家具本体2に対して好適に位置決めすることができるものとなり、閉じた扉31の家具本体2に対するがたつきをさらに低減できる。
【0034】
さらに、前記退避位置Eにある前記可動子43が前記ラッチ本体42の内に略収容されるように構成されていれば、可動子43がラッチ本体42により保護されるため、ラッチ41の係脱の際に可動子43と他の部材とが干渉し合って妨げとなることを避けることができる。また、可動子をラッチ本体に強固に取り付けることができ、強度の向上につながる。
【0035】
前記駆動機構44の構成要素の少なくとも一部が前記ラッチ本体42の内に収容されることは、故障の防止、外観の向上や空間の有効利用等に資する。
【0036】
本発明に係るラッチ装置4は、一の部材に他の部材を係留するためのものとして好適に用いることができる。即ち、一の部材と他の部材とのうち一方に前記ラッチ受け5を設け、他方に前記ラッチ装置4を設けて、ラッチ受け5及びラッチ装置4を介して両者を係脱自在に結合することができる。とりわけ、種々の物品を収納可能な空間21を内在させている家具本体2と、前記空間21を開放または閉止する蓋体31とを少なくとも具備する収納家具1にあって、これら家具本体2及び部材のうち一方に前記ラッチ受け5を設け、他方に前記ラッチ装置4を設けることで、前記家具本体2に前記部材を係脱自在に係留するために適用することが効果的である。
【0037】
並びに、本実施形態によれば、ラッチ受け5に設定された係留部52に係合する展開位置Sと前記係留部52に係合しない退避位置Eとの間で変位可能な可動子43を内包しラッチ受け5に掛け止めることができるラッチ41と、所定の操作体6に対する操作に連動して前記可動子43を変位させる駆動機構44とを具備するラッチ装置4において、前記係留部52に前記可動子43を係合させた状態で前記ラッチ受け5より前記ラッチ41を脱離させるように相対移動させる方向の力が作用した場合に可動子43に作用する反作用力Fが、前記展開位置Sより前記退避位置Eへ変位する際の可動子43の運動の方向に沿った方向成分の分力を持ち得ないように構成したため、より具体的には、前記係留部52に前記可動子43を係合させた状態で係留部52に当接している可動子43の当接面43aに作用する反作用力Fが、可動子43の係留部52への係合を解除する方向とは逆の方向に作用するように、前記当接面43aの角度を設定するものとしたため、ラッチ受け5に掛け止めたラッチ41をそのまま脱離させようとした場合に、係留部52と可動子43との係合が解除される方向に可動子43が変位することを抑止でき、ラッチ受け5にラッチ41を掛け止めた状態における構造的な安定性を担保し得る。このことは、ラッチ受け5にラッチ41を掛け止めたときの遊び、がたつきを極小にするような設計を行うために有効となる。
【0038】
前記可動子43の変位が回転を含む運動であって、その回転の中心が、前記係留部52に前記可動子43を係合させた状態で、係留部52が可動子43に作用する作用点Pよりも前記ラッチ41の相対移動方向に沿って内奥にあるように構成するならば、ラッチ受け5にラッチ41を掛け止めたときの遊び、がたつきを極小とすることが可能となる。
【0039】
前記作用点P近傍における前記可動子43の外縁、言い換えるならば当接面43aの面形状が、前記回転の軌跡に略対応する略部分円弧状(部分円筒曲面状)をなすものであるならば、可動子43を変位させてスムーズにラッチ受け5の係留部52に係合させることができ、かつ係留部52に係合している可動子43を変位させてスムーズにその係合を解除することができる。しかもこのとき、遊び、がたつきを極小にする好適な設計を具現できる。
【0040】
なお、本発明は以上に詳述した実施形態に限られるものではない。特に、可動子を変位させるための駆動機構の構成は、上記実施形態におけるもの以外にも種々のものが考えられる。また、操作体の駆動操作は、回転方向に行われるとは限られない。
【0041】
可動子は、ラッチ本体の内に配置されるとは限られない。例えば、可動子をラッチ本体の外面に回転軸を介して回動可能に支持させることで、本発明に係るラッチ装置を構成することが可能である。
【0042】
上記実施形態において、ラッチ受けの係留部は、開口の裏面側の周縁部、厳密には開口縁の裏面側と開口の内面とが交わる縁端部近傍に設定されていた。しかしながら、ラッチ受けの係留部の設定位置は上記の態様には限られず、例えば、開口の内面に係留部が設定される(特に、開口の内面に形成された凹陥等に可動子が係合する)ようなことも考えられる。さらに、ラッチ受けに開口が形成されるとは限られない。例えば、既存のキャビネット若しくはワゴン等の如く、その筐体の内面より内向きに突出する突出体をラッチ受けとし、筐体に出し入れされる引き出しに設けたラッチをこのラッチ受けに掛け止めるような構成とすることもできる。
【0043】
加えて、図7に例示するように、家具本体2側にラッチ本体42及び可動子43を設け、扉31側にラッチ受け5を設けることも可能である。この場合にも、係留部52に可動子43を係合させた状態にあって、可動子43のラッチ本体42に対する回転の中心42bが、係留部52が可動子43に作用する作用点Pよりも、ラッチ本体42がラッチ受け5に対して接近移動する方向に向かって(作用点Pにおいてラッチ受け5より可動子43に作用する力Fの方向に沿って)先方に位置する。
【0044】
本発明に係るラッチ装置は、キャビネット若しくはワゴン等の筐体に、出し入れ可能な引き出しを係留するためにも用いることができる。例えば、図8に示すように、家具本体たる筐体7にラッチ受け5を、引き出し8にラッチ装置4をそれぞれ設けるようにして、本発明に係るラッチ装置4を適用することが可能である。このときの駆動機構には、既知の種々の機構を応用して構成できるため、ここでは説明を省略する。
【0045】
また、本発明に係るラッチ装置を、収納家具以外のものに適用することを妨げない。さらに言えば、本発明に係るラッチ装置は、家具製品のみに適用されるわけではない。一例を挙げると、折り畳み可能なディスプレイ等を有する情報処理端末にあって、折り畳んだディスプレイ等を情報処理端末の本体に係留するためのものとして、本発明に係るラッチ装置を応用するようなことも考えられる。
【0046】
その他各部の具体的構成は上記実施形態には限られず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【0047】
【発明の効果】
以上に詳述した本発明によれば、閉止時の蓋体等の遊び、がたつきを極小とすることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態における収納家具の斜視図。
【図2】同部分斜視図。
【図3】本実施形態におけるラッチ装置を模式的に示す平面図。
【図4】本実施形態におけるラッチ装置を模式的に示す平面図。
【図5】本実施形態におけるラッチ装置を模式的に示す平面図。
【図6】本実施形態における操作体及び駆動機構を示す部分斜視図。
【図7】本発明の変形例の一を示す側面図。
【図8】本発明の変形例の一を示す側面図。
【図9】従来の鎌状ラッチを例示する図。
【図10】従来の鎌状ラッチを例示する図。
【符号の説明】
4…ラッチ装置
42…ラッチ本体
43…可動子
43a…当接面
P…作用点
5…ラッチ受け
52…係留部
S…展開位置
E…退避位置
Claims (3)
- 開口縁に係留部を設定したラッチ受けと、
ラッチ受けに対して相対移動し、前記係留部に臨むように位置づけられた状態で前記係留部に係合する展開位置と前記係留部に係合しない退避位置との間で変位可能な可動子を有するラッチと、
操作体に対する操作に連動して前記可動子を変位させる駆動機構とを具備するラッチ装置であって、
前記可動子の変位は回転を含む運動であり、その回転の中心が、前記係留部に前記可動子を係合させたときに係留部が可動子に作用する作用点よりも、前記ラッチが前記ラッチ受けに対して接近移動する方向に向かって内奥にある
ことを特徴とするラッチ装置。 - 前記作用点近傍における前記可動子の外縁は、前記回転の軌跡に略対応する略部分円弧状をなす請求項1記載のラッチ装置。
- 請求項1又は2記載のラッチ装置を用いてなるものであって、
種々の物品を収納可能な空間を内在させている家具本体と、前記空間を開放あるいは閉止する蓋体とを少なくとも具備し、
これら家具本体及び部材のうち一方に前記ラッチ受けを設け、他方に前記ラッチ装置を設けて、家具本体に蓋体を係留し得るように構成された収納家具。
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