JP4115716B2 - コンクリート用材料分離低減剤 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はコンクリート用材料分離低減剤に関するものであり、さらに詳しくは、AE剤、減水剤、AE減水剤、高性能減水剤、高性能AE減水剤、流動化剤等のコンクリート用化学混和剤を配合したコンクリートに少量添加することにより流動性、流動性保持性能を悪化させることなく、骨材分離の防止、ブリーディングの防止、充填性の向上などを実現させ、施工性、作業性及び硬化体品質を著しく改善することができ得るコンクリート用材料分離低減剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、構造物の高機能化・高耐久化への要求及び施工の合理化への要求の高まりに伴って、コンクリートの高性能化が急速に進んでいる。
コンクリートの耐久性を向上させるためには、一般的に配合する単位水量を低減し、毛細管空隙などの空隙を最小に抑えると共に、ジャンカ等のない均一かつ緻密なコンクリートを造る必要があり、建築工事標準仕様書、コンクリート標準仕様書等でも単位水量等の規制がなされている。また、振動締め固め等の現場作業の簡素化、ポンプ圧送性の改善、コンクリート打設速度の向上、新工法による鋼管充填、鉄筋の高密化への適応等の要求に対応して、高流動コンクリートに代表されるような、コンクリートの高性能化が進展している。これらの状況の中で、配合する水量(単位水量)を上げずに、高い流動性と充填性を満足させることが重要課題になっている。
【0003】
一方、骨材資源の枯渇を背景に、これまで河川砂利・砂等の良質な骨材から、砕石・砕砂、海産骨材、山陸産骨材さらには高炉スラグ等の副産物や廃棄物を原料とした人工骨材への転換が余儀なくされており、特に高炉スラグやフライアッシュなどの副産物や廃棄物を原料とした骨材は、地球環境保全や省資源の観点から骨材として使用比率の増大の傾向が高まっている。
【0004】
しかし、これら骨材の材料転換は、流動性の低下や単位水量増大等、コンクリートの高性能化に逆行する傾向を引き起こす場合が多い。上記のように、骨材など材料品質の悪化傾向の中でコンクリートの高性能化を図るためには、セメント混和剤の果たす役割がますます大きくなっている。
従来これらセメント混和剤には、減水や流動性保持を目的としてリグニンスルホン酸塩、メラミンスルホン酸ホルムアルデヒドの塩、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒドの塩、ポリカルボン酸塩等種々のものがあり、中でもポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸共重合体系のセメント混和剤(特公昭59−18338号)は、特に減水効果と流動性保持効果が高く、その使用比率が増大しており、高流動コンクリートや高強度コンクリートはもとより汎用のコンクリートまでにも採用も進んでいる。
【0005】
しかし、これらのセメント混和剤を使用すると、その高い分散効果によりセメント組成物は高い流動性を示し、従ってコンクリート組成物の作業性や流動性を大幅に改善できる。しかし、コンクリート組成物の流動性を高めると、ブリーディングや、粗骨材を主とした粒度の比較的大きい骨材の分離が、発生しやすくなる。また、骨材が分離すると分離した骨材同士が絡み合って充填性を阻害するだけでなく、均質なコンクリートとならないため結果として得られる硬化体は強度などの品質が低下することが避けられない。
また、生コンクリート工場において、骨材表面水率等の材料変動により、流動性変動や突発的な材料分離が引き起こされる場合もある。
【0006】
この材料分離の抑制や材料変動に対する品質変動の緩和を目的として、水溶性高分子増粘剤をコンクリート用材料分離低減剤として使用することが数多く提案されている。コンクリート用材料分離低減剤としては、従来、メチルセルロースエーテル等のセルロース誘導体、ポリアクリルアミド等の合成高分子、カードラン等の天然多糖類等の水溶性高分子が提案されている(例えば、特開昭61−72664,特開昭61−260453,特開平9−2856)。
【0007】
さらにこれら従来のコンクリート用材料分離低減剤はその分離低減能力が充分ではなく、材料分離を抑制するために必要な量を添加すると粘度増加に伴う流動性や流動性保持性能の低下、多量の有機物混入による凝結遅延と硬化体の耐久性低下が問題となるだけでなく、材料費の過剰なコストアップが問題となっていた。
以上のように、従来技術では流動性、流動性保持性能、充填性、凝結速度、硬化体の耐久性等といった各種の要求性能を損なうことなく、流動性を損なうことなく、流動性とは一見相反する性能である材料分離抵抗性を充分に満足しうるコンクリート用材料分離低減剤の開発が強く待ち望まれている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、セメントに対して少量添加することにより、流動性、流動性保持性能、充填性、凝結速度、硬化体の耐久性等といった高強度コンクリート、高流動性コンクリートに要求される性能を損なうことなく、充分な材料分離抵抗性を発揮でき、硬化体の高強度化・高耐久化、施工の合理化等を実現しうるコンクリート用材料分離低減剤を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究を行った結果、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、
[1] AE剤、減水剤、AE減水剤、高性能減水剤、高性能AE減水剤、流動化剤から選ばれる1種または2種以上のコンクリート用化学混和剤を含有するコンクリートに対して、さらに併用するコンクリート用材料分離低減剤であって、下記一般式(1)
(ただし、式中、R1は水素またはメチル基を、Xlは−C(=O)−または−CH2−を、X2は炭素数2〜4のアルキレン基を、R2は水素または炭素数1から5のアルキル基を、nは2〜100の数を示す。)で示される1種または2種以
下記一般式(2)
(ただし、R3は水素原子、メチル基または−COOX4,R4は水素原子、メチル基または−COOX5,X3,X4およびX5は水素、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム基または有機アミノ基、mは0または1を示す。)で示される1種または2種以上の単量体(B)
を共重合して得られる共重合体で、共重合体の重量平均分子量(プルランを標準物質としたゲル.パーミエーションクロマトグラフィーによる測定値)が、50万〜300万である共重合体を含有することを特徴とするコンクリート用材料分離低減剤、
【0010】
[2] 単量体(A)及び単量体(B)の共重合体において、下記一般式(3)
CH2=CR5−CONH−R6−SO3X6 ・・・・・(3)
(ただし、式中、R5は水素またはメチル基を、R6は炭素数1〜4の直鎖または分岐状のアルキレン基を、X6は水素、アルカリ金属、アンモニウム塩、有機アンモニウム塩を示す。)
で示される1種または2種以上の単量体(C)を40質量%以下、および/または単量体(A)、単量体(B)、単量体(C)以外のビニル系単量体(D)を30質量%以下を共重合して得られる共重合体で、共重合体の重量平均分子量(プルランを標準物質としたゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる測定値)が、50万〜300万である共重合体を含有する前記[1]に記載のコンクリート用材料分離低減剤、
【0011】
[3] 単量体(A)のn(アルキレンオキサイド付加モル数)が4〜50である上記[1]または[2]に記載のコンクリート用材料分離低減剤、
[4] 単量体(B)が、アクリル酸、および/またはメタアクリル酸、および/またはそれらの塩、から選ばれる1種または2種以上である上記[1]〜[3]のいずれかに記載のコンクリート用材料分離低減剤、
[5] 単量体(C)が、2−アクリルアミドー2−メチループロパンスルホン酸および/またはその塩である上記[2]〜[4]のいずれかに記載のコンクリート用材料分離低減剤、
[6] AE剤、減水剤、AE減水剤、高性能減水剤、高性能AE減水剤、流動化剤から選ばれる1種または2種以上のコンクリート用化学混和剤に対し、上記[1]〜[5]のいずれかに記載のコンクリート用材料分離低減剤を混合したコンクリート用混和剤、
【0012】
[7] 単量体(A) 20〜80重量%、単量体(B) 20〜80重量%からなる単量体混合物を、単量体濃度5〜20質量%で水溶液重合または水系溶液重合して、重量平均分子量(プルランを標準物質としたゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる測定値)50万〜300万の共重合体のコンクリート用材料分離低減剤の製造方法。
[8]水、セメント、細骨材、粗骨材、およびAE剤、減水剤、AE減水剤、高性能減水剤、高性能AE減水剤、流動化剤から選ばれる1種または2種以上のコンクリート用化学混和剤を混練してコンクリートを製造する方法において、上記[1]ないし[6]のいずれかに記載のコンクリート用材料分離低減剤を、共重合体固形分質量として、セメント単位質量あたり20〜1,000ppm添加率で、さらに配合することを特徴とするコンクリートの製造方法、
[9]水、セメント、細骨材、粗骨材、およびAE剤、減水剤、AE減水剤、高性能減水剤、高性能AE減水剤、流動化剤から選ばれる1種または2種以上のコンクリート用化学混和剤を混練してコンクリートを製造する方法において、上記[1]〜[6]のいずれかに記載のコンクリート用材料分離低減剤を配合し、さらに粘度平均分子量10万〜1,000万のポリエチレンオキサイドを配合することを特徴とするコンクリートの製造方法、および、
[10]AE剤、減水剤、AE減水剤、高性能減水剤、高性能AE減水剤、流動化剤から選ばれる1種または2種以上のコンクリート用化学混和剤に対し、上記[1]〜[5]のいずれかに記載のコンクリート用材料分離低減剤及び粘度平均分子量10〜1000万のポリエチレンオキサイドを配合したコンクリート用混和剤、を開発することにより上記の課題を解決した。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明のコンクリート用材料分離低減剤として用いられる共重合体の原料として、一般式(1)で示される単量体(A)としては、例えばアルキレングリコールの付加モル数が2〜100、好ましくは4〜50のポリエチレングリコール、メトキシポリエチレングリコール、エトキシポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、メトキシポリプロピレングリコール、エトキシポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコールあるいはそれらの炭素数1〜5のモノアルキルエーテルと、アクリル酸もしくはメタアクリル酸とのエステル化合物、または付加モル数が5〜50の上記アルキレングリコールあるいはそれらのモノアルキルエーテルのアリルアルコールとのエーテル化合物が好ましい。
【0014】
本発明のコンクリート用材料分離低減剤の共重合体中の単量体(A)の組成比率は、20〜80質量%であり、好ましくは40〜70質量%である。単量体(A)の割合が80質量%を越えると、フレッシュコンクリートに充分な材料分離抵抗性が得られない傾向にあり、20質量%未満であると、フレッシュコンクリートの流動性と流動性保持性能を損なう傾向にある。
【0015】
本発明に用いられる一般式(2)で示される単量体(B)としては、例えばアクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸、フマール酸、イタコン酸またはこれらのアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属の塩等が挙げられ、特に性能及びコストのバランスからアクリル酸、メタクリル酸またはそれらの塩が好ましい。
【0016】
本発明のコンクリート用材料分離低減剤においては、共重合体中の単量体(B)の組成比率は、20〜80質量%、好ましくは30〜60質量%である。単量体(B)の割合が80質量%を越えるか、または20質量%未満であると、フレッシュコンクリートに、充分な材料分離抵抗性が得られない傾向にある。
【0017】
本発明において必要に応じて用いられる一般式(3)で示される単量体(C)としては、例えば、2−アクリルアミドー2−メチルプロパンスルホン酸、3−メタクリルアミドプロパンスルホン酸、2−アクリルアミドエタンスルホン酸、2−メタクリルアミドエタンスルホン酸等のアクリルアミドアルカンスルホン酸及び/またはそれらの塩等が挙げられ、中でも2−アクリルアミドー2−メチルプロパンスルホン酸及び/またはその塩が好ましい。
【0018】
本発明のコンクリート用材料分離低減剤においては共重合体中の単量体(C)の組成比率は、40質量%以下、好ましくは20質量%以下である。単量体(C)は使用しなくとも良いが、コンクリートを調製する際に併用する高分子分散剤の種類や使用する骨材の種類によっては単量体(C)を併用することにより材料分離抵抗性をより高めることができる場合がある。単量体(C)の割合が40質量%を超えるとフレッシュコンクリートの材料分離抵抗性を低下させる傾向にある。
【0019】
本発明のコンクリート用材料分離低減剤に必要に応じて用いることができるビニル系単量体(D)としては、単量体(A)、単量体(B)、単量体(C)以外のビニル系単量体を挙げることが出来る。
使用可能なビニル系単量体(D)としては、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、アクリロイルモルホリン、N−ビニルピロリドン、アクリロニトリル、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、スチレンダイマー,ビニルアセテート、メチルビニルケトン、エチルビニルケトン、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、イソブチレン、4メチルペンテンー1、ノルボルネン、アリルアルコール、アリルクロライド等のノニオン性単量体、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミドまたはその四級アンモニウム塩等のカチオン性単量体等が挙げられる。
なお、本発明においては、ビニル単量体(D)を単量体として使用しなくてもよいが、使用する場合は共重合体の水溶性を失わない範囲でかつ30質量%を超えてはならない。好ましくは20質量%以下である。30質量%を超えると本発明のコンクリート用材料分離低減剤としての性能が十分発揮できない。
【0020】
本発明のコンクリート用材料分離低減剤は、上記の各単量体を共重合することによってえられた共重合体の重量平均分子量(プルランを標準物質としたゲルバーミエーションクロマトグラフィーによる測定値)が、50万〜300万、好ましくは100万〜200万の範囲である。
重量平均分子量が50万以下であるとフレッシュコンクリートヘの粘性付与が不十分となり、特に5万以下であるときはセメント分散剤、セメント減水剤として使用されており、フレッシュセメントの流動性は大きく改善されるが、骨材分離を起こしやすい。一方重量平均分子量が300万をこえる場合は、粘性が過剰に付与され、分散性が低下し、流動性、流動性保持性能、充填性が不十分となる傾向にある。
【0021】
本発明のコンクリート用材料分離低減剤の添加量は、セメント単位質量当たりの共重合体固形分として20ppmから1000ppmの範囲であり、50ppmから500ppmの範囲がさらに好ましい。20ppm以下であるとフレッシュコンクリートヘの粘性付与が不十分となり、材料分離を引き起こす傾向にあり、1000ppmを超えると、分散性が低下し、流動性、流動性保持性能、充填性が不十分となる傾向にある。
【0022】
本発明のコンクリート用材料分離低減剤は、水、セメント、細骨材、粗骨材、およびAE剤、減水剤、AE減水剤、高性能減水剤、高性能AE減水剤、流動化剤等のコンクリート用化学混和剤を配合したコンクリートの製造において、単独で使用しても良好な材料分離抵抗性を発揮できるが、ポリエチレンオキサイドをさらに併用させることにより、より一層高い材料分離抵抗性を発揮することが可能である。
本発明のコンクリート用材料分離低減剤に併用するポリエチレンオキサイドの粘度平均分子量は、10万〜1000万、好ましくは100万〜800万の範囲である。粘度平均分子量が10万以下であると、フレッシュコンクリートの材料分離抵抗性が不十分となる傾向にあり、1000万を越えると、フレッシュコンクリートの流動性と流動保持性を損なう傾向にある。
本発明のコンクリート用材料分離低減剤に併用するポリエチレンオキサイドの添加量は、特に限定されるものではないが、本発明のコンクリート用材料分離低減剤の添加量に対して同量以下が好ましい。同量を越えると、単独添加に対して材料分離抵抗性が、かえって低下する傾向となる。
本発明のコンクリート用材料分離低減剤にポリエチレンオキサイドを併用させる方法は、特に限定されるものではなく、コンクリート調整時にセメントと粉体混合しても良いが、本発明のコンクリート用材料分離低減剤に対して水溶液として予め混合し、混合水溶液としてコンクリート混練水に添加することもできる。
【0023】
本発明のコンクリート用材料分離低減剤は、AE剤、減水剤、AE減水剤、高性能減水剤、高性能AE減水剤、流動化剤等のコンクリート用化学混和剤に混合して使用することができる。この場合、それらのコンクリート用化学混和剤の各種性能をあまり影響を与えることなく、材料分離の抑制や材料変動に対する品質変動の緩和等の性能を付与することが可能となるため、コンクリート用化学混和剤に対する添加剤としても有効である。
特に減水剤、AE減水剤、高性能減水剤、高性能AE減水剤などの流動性付与剤を配合したフレッシュコンクリートは、その高い流動性により骨材分離やブリーディングが発生し易くなるので、これらを防止するため本コンクリート用材料分離低減剤を併用することは極めて有効で、流動性を悪化させることなく骨材分離やブリーディングを防止することが可能となった。
【0024】
本発明の共重合体の製造方法は特に限定されるものではないが、水溶液重合、または低級アルコールなどの親水性有機溶媒−水系の水系媒体である水系溶液重合、逆相懸濁重合、沈澱析出重合等の方法を用いることができるが、単量体濃度5〜20質量%で水溶液重合または水系溶液重合を実施する方法が、共重合体の重量平均分子量を本発明の範囲内に納める上から好ましい。
【0025】
本発明の共重合体の製造において、通常は、重合開始剤を使用する。重合開始剤としては、通常のラジカル重合開始剤を用いることができ、2,2’−アソビスイソブチロニトリル、2,2’−アソビス(2−アミジノプロパン)ジハイドロクロライド、2,2−アソビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパンコジハイドロクロライド、2,2’−アソビス[2−(3,4,5,6−テトラヒドロピリミジン−2−イル)プロパン]ジハイドロクロライド、2,2’−アソビス[2−(5−ヒドロキシ−3,4,5,6−テトラヒドロピリミジン−2−イル)プロパン]ジハイドロクロライド等のアゾ系開始剤、過酸化水素、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、コハク酸パーオキサイド等の過酸化物系開始剤、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム等の過硫酸塩系開始剤、または過酸化物もしくは過硫酸塩類とトリエタノールアミン、亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム等の還元剤を同一系内に存在させるいわゆるレドックス系開始剤等が挙げられる。
【0026】
また、分子量の調整剤として、重合時に連鎖移動剤を用いることもできる。連鎖移動剤としては、n−ブチルメルカプタン、トリエチルアミン、イソプロピルアルコール、チオグリコール酸アンモニウム、次亜リン酸ナトリウム等が挙げられる。
本発明のコンクリート用分離低減剤は、水溶液または水性溶液として土木、建築、二次製品などのセメント類の水硬性組成物に使用するもので特に限定するものではない。
【0027】
また、本発明のコンクリート用分離低減剤は、他のセメント添加剤(材)、例えば、遅延剤、早強剤、促進剤、起泡剤、発泡剤、保水剤、増粘剤、防水剤、消泡剤、水溶性高分子、界面活性剤、膨張剤(材)、高炉スラグ、フライアッシュ、シリカヒューム、アスベスト、ビニロン繊維、PP繊維等と併用することができる。例えば、本発明のコンクリート用分離低減剤に対して、さらにメチルセルロース、ポリアクリルアミド等の増粘剤を併用することもできる。
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明は該実施例に限定されるものではない。
【0028】
【実施例】
(製造例1)
(共重合体S1の製造)
攪拌機付きガラス製反応器に、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(エチレングリコール付加モル数:9モル,「9EG−MA」)50g、アクリル酸ナトリウム(「AA−Na」)の20%水溶液200gおよび2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸ナトリウム(「AMPS−Na」)の50%水溶液20gを入れ、水718gを加えて溶解させた。次に、攪拌下で恒温水槽にて45℃に保ちながら、窒素通気により溶存酸素を除去した後、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジハイドロクロライド(和光純薬工業製,V−50)の1%水溶液12gを添加し、窒素通気下で6時間反応し重合を完了させ、共重合体S1の10%水溶液を得た。得られた共重合体S1の重量平均分子量(プルランを標準物質としたゲルパーミェーションクロマトグラフィーによる測定値)は、152万であった。
【0029】
(製造例2〜8)
(共重合体S2〜S8の製造)
製造例1と同様の方法で、表1に示すモノマー組成と2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジハイドロクロライト(和光純薬工業製:V−50)の1%水溶液の添加量を変化させて製造を行い共重合体(S2〜S8)を得た。なお、全モノマーの合計濃度が10重量%、V−50水溶液仕込み後の全仕込量が1000gになるよう水量を調節した。それらのモノマー及びラジカル重合開始剤の配合条件と重量平均分子量について製造例1と共に表1に示す。
【0030】
【表1】
【0031】
(注)
・9EG−MA…メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(エチレン グリコール付加モル数:9モル)
・23EG−MA…メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(エチレ ングリコール付加モル数:23モル)
・AA−Na…アクリル酸ナトリウム
・MA−Na…メタアクリル酸ナトリウム
・AMPS−Na…2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸ナト リウム
・AN…アクリロニトリル
・MAA…メチルアクリレート
【0032】
(比較製造例1)
(共重合体R1の製造)
攪拌機付きガラス製反応器に、製造例4と同一種類のモノマーを同一量仕込み、水680gを加えて溶解させた。次に攪拌下で恒温水槽にて60℃に保ちながら窒素通気により溶存酸素を除去した後、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジハイドロクロライド(和光純薬工業製,V−50)の10%水溶液50gを添加し、窒素通気下で6時間反応し重合を完了させ、共重合体R1の10%水溶液を得た。得られた共重合体R1の重量平均分子量(プルランを標準物質としたゲルパーミェーションクロマトグラフィーによる測定値)は、8万であった。
【0033】
(比較製造例2)
(共重合体R2の製造)
攪拌機付きガラス製反応器に、製造例4と同一種類のモノマーを同一量仕込み、水680gを加えて溶解させた。次に、攪拌下で恒温水槽にて60℃に保ちながら窒素通気により溶存酸素を除去した後、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジハイドロクロライド(和光純薬工業製,V−50)の10%水溶液20gを添加し、窒素通気下で6時間反応し重合を完了させ、共重合体R2の10%水溶液を得た。得られた共重合体R2の重量平均分子量(プルランを標準物質としたゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる測定値)は、23万であった。
【0034】
(比較製造例3)
(共重合体R3の製造)
攪拌機付きガラス製反応器に、アクリルアミド(AAM)50gとアクリル酸ナトリウム(AA−Na)の20%水溶液200gと2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸ナトリウム(AMPS−Na)の50%水溶液20gを入れ、水715gを加えて溶解させた。次に、攪拌下で恒温水槽にて45℃に保ちながら窒素通気により溶存酸素を除去した後、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジハイドロクロライド(和光純薬工業製,V−50)の1%水溶液15gを添加し、窒素通気下で6時間反応し重合を完了させ、共重合体R3の10%水溶液を得た。得られた共重合体R3の重量平均分子量(プルランを標準物質としたゲルバーミエーションクロマトグラフィーによる測定値)は、172万であった。
【0035】
(比較製造例4)
(共重合体R4の製造)
攪拌機付きガラス製反応器に、アクリルアミド(AAM)40g、メチルアクリレート(MAA)10g、アクリル酸ナトリウム(AA−Na)の20%水溶液200g及び2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸ナトリウム(AMPS−Na)の50%水溶液20gを入れ、水720gを加えて溶解させた。次に攪拌下で恒温水槽にて45℃に保ちながら窒素通気により溶存酸素を除去した後、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジハイドロクロライド(和光純薬工業製,V−50)の1%水溶液10gを添加し、窒素通気下で6時間反応し重合を完了させ、共重合体R4の10%水溶液を得た。得られた共重合体R4の重量平均分子量(プルランを標準物質としたゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる測定値)は、160万であった。
比較製造例1〜4のモノマー及びラジカル重合開始剤の配合条件と共重合体R1〜4の重量平均分子量について表2に示す。
【0036】
【表2】
(注)
・AAM…アクリルアミド
【0037】
[コンクリート用材料分離低減剤の性能評価試験(I)]
合成した共重合体のコンクリート用材料分離低減剤としての性能を把握するために、コンクリート調製時にコンクリート用材料分離低減剤としてそれぞれ共重合体を添加して流動性、自己充填性、材料分離抵抗性に関して性能評価試験を実施した。
(1)コンクリート配合と混練方法
▲1▼コンクリート配合
性能評価試験(I)におけるコンクリートの材料配合を表3に示す。
【0038】
【表3】
1)水(W) …イオン交換水
2)セメント(C)…普通ポルドランドセメント(比重:3.19)
3)細骨材(S) …相模川産川砂(比重:2.60)
4)粗骨材(G) …相模川産砕石(比重:2.63)
*a=S(容量)+G(容量)
【0039】
▲2▼混練方法
50L強制パン型ミキサーを用い、コンクリート練り混ぜ量が40Lとなるよう材料配合量を決定した。
まず、セメント、細骨材、粗骨材を30秒間攪拌した。次に予め高性能AE減水剤とコンクリート用材料分離低減剤を溶解した水溶液を添加し、45秒間混練した後、ミキサーを一旦停止した。ミキサーの底面、側面及び攪拌羽根に付着したモルタル分を掻き落とした後、さらに45秒間混練して、排出した。
なお、粉体のコンクリート用材料分離低減剤(メチルセルロース)は、セメント仕込み時に添加した。
【0040】
(2)性能試験方法
▲1▼流動性試験
・スランプフロー試験…「日本建築学会JASS5T−503」に準じて行い、練り混ぜ直後及び60分後について測定した。
【0041】
▲2▼自己充填性試験
・図1に示すL型試験装置を用いて、仕切り板を閉じた状態で、仕切り板の左室にコンクリートミルクを満たし、仕切り板を全開にして右室に流れたコンクリートミルクの充填高さを測定した。従って、充填高さが高いほど(20cmに近いほど)、良好な自己充填性が確保できることを示すものと判断される。
【0042】
▲3▼材料分離抵抗性試験
・日本建築学会「高流動コンクリートの材料・調合・製造・施工指針(案)・同解説」に掲載されている「粗骨材洗い試験」を行った。
すなわち、スランプフロー試験終了後のフレッシュコンクリートを、中心部と外周部からそれぞれ約2kgを採取し、5mmふるいでウェットスクリーニングして残った粗骨材の重量を測定し、外周部の粗骨材重量比に対する中心部の粗骨材重量比の比率を、内外粗骨材比として求めた。
従って、内外粗骨材比が1に近いほど、中心部と外周部の粗骨材差が少ないため良好な材料分離抵抗性を示すものと判断される。
【0043】
▲4▼その他
・空気量、ブリーディング量は、それぞれJIS A 1128及びJIS A 1123に準じて測定した。
(3)性能試験結果性能試験結果を表4に示す。
【0044】
【表4】
1)ポリエチレンオキサイド…住友精化(株)社製、PEO−15
2)高性能AE減水剤…ポリカルボン酸エーテル系[(株)エヌエムビー社製、レオビルドSPー8N]
3)X…メチルセルロース[信越化学(株)社製、90SH−15000]
【0045】
[コンクリート用材料分離低減剤1」の性能評価試験(II)]
(1)コンクリート配合と混練方法
▲1▼コンクリート配合
性能評価試験(II)におけるコンクリートの基本材料配合を表5に示す。(表5の配合に対し、細骨材表面水率1%相当の水を増減させた配合についても試験を実施した。)
【0046】
【表5】
1)水(W) …イオン交換水
2)セメント(C) …普通ポルトランドセメント(比重:3.19)
3)石灰石微粉末(LP)…比表面積:3900cm2/g,比重:2,67
4)納骨材(S) …相模川産川砂(比重:2.60)
5)粗骨材(G) …相模川産砕石(比重:2.63)
*a=S(容量)+G(容量),P=C(重量)+LP(重量)
【0047】
▲2▼混練方法
[コンクリート用材料分離低減剤の性能評価試験(I)]と同様の方法で行った。
【0048】
(2)性能試験方法流動性試験、材料分離抵抗性試験、空気量測定、ブリーディング試験とも、[コンクリート用材料分離低減剤の性能評価試験(I)]と同様の方法で行った。
(3)性能試験結果
性能試験結果を表6に示す。
【0049】
【表6】
1)高性能AE減水剤 …ポリカルボン酸エーテル系[(株)エヌエムビー社製、レオビルドSP−8N]
2)仕込み水量調整 …「±0%」は、表5に示す基本材料配合と同一の配合であり、「−1%」及び「+1%」は、基本材料配合の水量に対し、細骨材表面水量1%の相当量(7.24kg/m3)を、それぞれ減量及び増量した配合であることを示す、
【0050】
【本発明の効果】
本発明のコンクリート用分離低減剤は、従来のコンクリート用分離低減剤に比較して極少量の添加量で、良好なスランプフロー値、L型試験充填高さ、内外粗骨材比、ブリーディング量を与えるものであり、フレッシュコンクリートに高い骨材分離抵抗性、ブリーディング抑制性能、充填性を付与することが可能であり、さらに充分な流動性、流動保持性を得るために必要とする高性能AE減水剤等のセメント分散剤の添加量を低く抑えることができるものである。
また、コンクリート配合における水量変動に対する、フレッシュコンクリートの流動性、材料分離抵抗性等の変動を低く抑えることが可能である。
すなわち、本発明のコンクリート用分離低減剤を使用することにより、低い薬剤コストで、高い流動性、流動保持性、材料分離抵抗性、充填性を併せ持つコンクリートを製造することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【図1】 自己充填性試験に用いたL型試験装置の断面図。
Claims (10)
- AE剤、減水剤、AE減水剤、高性能減水剤、高性能AE減水剤、流動化剤から選ばれる1種または2種以上のコンクリート用化学混和剤を含有するコンクリートに対して、さらに併用するコンクリート用材料分離低減剤であって、
下記一般式(1)
CH2=CR1
| ・・・・・(1)
X1O(X2O)nR2
(ただし、式中、R1は水素またはメチル基を、Xlは−C(=O)−または−CH2−を、X2は炭素数2〜4のアルキレン基を、R2は水素または炭素数1から5のアルキル基を、nは2〜100の数を示す。)で示される1種または2種以上の単量体(A)
・・・・・20〜80質量%、
下記一般式(2)
CH=CR4
| | ・・・・・・(2)
R3 (CH2)mCOOX3
(ただし、R3は水素原子、メチル基または−COOX4,R4は水素原子、メチル基または−COOX5,X3,X4およびX5は水素、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム基または有機アミノ基、mは0または1を示す。)で示される1種または2種以上の単量体(B)
・・・・・・20〜80質量%、
を共重合して得られる共重合体で、共重合体の重量平均分子量(プルランを標準物質としたゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる測定値)が、100万〜300万(但し、100万は除く)である共重合体を含有することを特徴とするコンクリート用材料分離低減剤。 - 単量体(A)及び単量体(B)の共重合体において、下記一般式(3)
CH2=CR5−CONH−R6−SO3X6 ・・・・・(3)
(ただし、式中、R5は水素またはメチル基を、R6は炭素数1〜4の直鎖または分岐状のアルキレン基を、X6は水素、アルカリ金属、アンモニウム塩、有機アンモニウム塩を示す。)
で示される1種または2種以上の単量体(C)を40質量%以下、および/または単量体(A)、単量体(B)、単量体(C)以外のビニル系単量体(D)を30質量%以下を共重合して得られる共重合体で、共重合体の重量平均分子量(プルランを標準物質としたゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる測定値)が、100万〜300万(但し、100万は除く)である共重合体を含有する請求項1に記載のコンクリート用材料分離低減剤。 - 単量体(A)のn(アルキレンオキサイド付加モル数)が4〜50である請求項1または2に記載のコンクリート用材料分離低減剤。
- 単量体(B)が、アクリル酸、および/またはメタアクリル酸、および/またはそれらの塩、から選ばれる1種または2種以上である請求項1〜3のいずれか1項に記載のコンクリート用材料分離低減剤。
- 単量体(C)が、2−アクリルアミド−2−メチループロパンスルホン酸および/またはその塩である請求項2〜4のいずれか1項に記載のコンクリート用材料分離低減剤。
- AE剤、減水剤、AE減水剤、高性能減水剤、高性能AE減水剤、流動化剤から選ばれる1種または2種以上のコンクリート用化学混和剤に対し、請求項1〜5のいずれか1項に記載のコンクリート用材料分離低減剤を混合したコンクリート用混和剤。
- 単量体(A) 20〜80重量%、単量体(B) 20〜80重量%からなる単量体混合物を、単量体濃度5〜20質量%で水溶液重合または水系溶液重合することによる、重量平均分子量(プルランを標準物質としたゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる測定値)100万〜300万(但し、100万は除く)の共重合体を含有する請求項1〜6のいずれかに記載のコンクリート用材料分離低減剤の製造方法。
- 水、セメント、細骨材、粗骨材、およびAE剤、減水剤、AE減水剤、高性能減水剤、高性能AE減水剤、流動化剤から選ばれる1種または2種以上のコンクリート用化学混和剤を混練してコンクリートを製造する方法において、請求項1ないし6のいずれか1項に記載のコンクリート用材料分離低減剤を、共重合体固形分質量として、セメント単位質量あたり20〜1,000ppm添加率で、さらに配合することを特徴とするコンクリートの製造方法。
- 水、セメント、細骨材、粗骨材、およびAE剤、減水剤、AE減水剤、高性能減水剤、高性能AE減水剤、流動化剤から選ばれる1種または2種以上のコンクリート用化学混和剤を混練してコンクリートを製造する方法において、請求項1ないし6のいずれか1項に記載のコンクリート用材料分離低減剤および粘度平均分子量10万〜1,000万のポリエチレンオキサイドを併用することを特徴とするコンクリートの製造方法。
- AE剤、減水剤、AE減水剤、高性能減水剤、高性能AE減水剤、流動化剤から選ばれる1種または2種以上のコンクリート用化学混和剤に対し、請求項1〜5のいずれか1項に記載のコンクリート用材料分離低減剤及び粘度平均分子量10〜1000万のポリエチレンオキサイドを配合したコンクリート用混和剤。
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