JP4113954B2 - 細胞培養基材、及び該基材を使用した細胞分別方法 - Google Patents

細胞培養基材、及び該基材を使用した細胞分別方法 Download PDF

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Description

本発明は、光応答性組成物により形成された光応答性表面を有する細胞培養基材、及び該細胞培養基材を使用した細胞の分別方法に関する。
近年、身体を構成する細胞や組織がもつ潜在力を利用する新たな医療としての再生医学が期待されている。その再生医学分野において最も重要なのは、体外で培養された細胞や組織が生体内で正常に機能できるようにすることである。従って、その生体内での正常的な機能を発現するためには、培養細胞を培養床からその構造と機能を損なうことなく、細胞を分別回収する技術が強く要望されてきた。
従来の細胞分別技術としては、フローサイトメトリー(FACS;蛍光表示式細胞分離システム)や磁気細胞分離システム(MACS)があり、これらは既に実用化されている。しかしながら、これらのフローサイトメトリーあるいは磁気細胞分離システムは、白血球あるいはリンパ球等の浮遊細胞を分別回収するためによく用いられてきたものの、神経細胞や足場依存性細胞の分別回収に適用する場合は、基質に接着した足場依存性細胞を浮遊状態にさせなければならず、そのとき、トリプシン等の酵素処理によって細胞接着因子や細胞外マトリックスが破壊される問題が生じる。特に、フローサイトメトリーでは、超音波ノズルによる細胞の物理的分離の過程において、細胞に与える損傷が相当大きい。
一方、培養細胞の分離回収に酵素を用いない方法として、温度応答性の高分子化合物を培養基材として用いる方法が知られている(特許文献1参照)。また、温度応答性支持体を用いた細胞培養法により、細胞接着物質や膜タンパクを分解せず、その器官特異的機能を維持したまま細胞をシート状態で剥離・回収する手法が報告されている(非特許文献1参照)。
しかしながら、これらの方法では温度変化によって培養基材の接着制御を行うため、培養容器中の種々の細胞あるいは細胞群から、特定の細胞あるいは細胞群(コロニー)のみを回収しようとする場合において、個々の細胞あるいは細胞群毎にその脱着を制御することは極めて困難であった。
さらに短波長(300nm)の紫外光を照射することによって不可逆的に構造変化する色素材料を細胞培養基材に用いて、細胞のパターニングを光照射によって行った例も報告されている(非特許文献2参照)。
しかし、この研究はあくまで、培養基板の細胞親和性を細胞播種前に予めパターン化する手段の提供を目的としたものであり、このような短波長の紫外光の照射を要する培養基材を、細胞播種後の細胞選別に適用することは不可能である。
細胞を播種した後に光照射によって、細胞接着性及び/又は細胞増殖性を局所的に制御することができれば、培養細胞のパターニングの新たな手段を与えるだけでなく、細胞の分別回収などへの応用展開も可能であるが、従来技術によってそれを実現することは不可能である。
本発明者等は、先に光照射によって細胞との接着性が変化する細胞接着性表面の形成材料、該材料により形成された細胞接着性表面を有する細胞培養装置、ならびに該装置を使用した細胞の培養・分別方法を発明し、特許出願をした(特許文献2参照)。
この発明は、上記従来技術の問題点を解消し、細胞の培養及び分別回収を、細胞に対するダメージを与えることなく、細胞の各器官の特異的機能を維持したまま簡単な方法で行う基本的な発明を開示するものである。しかしながら、特許文献2に記載された発明では、細胞接着性表面を形成する材料の種類によっては、光照射部位と非照射部位の細胞接着性に明確な差異が生じないことがある。また、細胞接着性表面を形成する際の成膜性や、膜強度等が不十分となることがあった。したがって、この発明を実用化するには、光応答性や細胞接着性等の特性や、細胞培養基材表面への成膜性、膜強度等が改善された細胞接着性表面の形成材料を開発することが求められていた。
特開平11−349643号公報 特開2003−339373号公報 A.Kikuchi, M.Okuhara, F.Karikusa, Y.Sakurai and T.Okano, J. Biomater. Sci., Polym. Edn., 9,1331 (1998) Y.Nakayama, A.Furumoto, S.Kidoaki, T.Matsuda, Photochem. Photobiol.77(5),480(2003)
したがって、本発明は、光応答性や細胞接着性等の特性、及び成膜性や膜強度等が改善された光応答性表面を有する細胞培養基材、すなわち、細胞を播種する前及び/又は後に光照射することにより、特定の領域においてその細胞接着性を局所的に亢進できる光応答性表面を有する細胞培養基材を提供することを目的とする。
また、本発明は、この細胞培養基材を使用した、特に足場依存性細胞や神経細胞等などの培養細胞から、細胞機能を損傷することなく、所望の細胞又は細胞群のみを選択的に分別回収する、あるいは所望のパターンに沿って培養するための簡便な手段を提供することを目的とする。
本発明者等は、上記課題を達成するために鋭意検討を行った結果、ニトロスピロピランとメチルメタクリレートとの共重合体からなる光応答性成分とポリエチレングリコールを含む光応答性組成物によって、細胞培養基材の光応答性表面を形成することにより上記課題が解決されることを発見し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は次のような構成をとるものである。
1.ニトロスピロピランとメチルメタクリレートとの共重合体からなる光応答性成分とポリエチレングリコールを含む光応答性組成物により形成された光応答性表面を有することを特徴とする細胞培養基材。
2.前記ポリエチレングリコールの分子量が50,000〜200,000であることを特徴とする、1に記載の細胞培養基材。
3.1又は2に記載の細胞培養基材に細胞を播種する前及び/又は播種した後に、培養基材の光応答性表面の特定の領域を光照射し、光照射領域における所望の細胞以外の細胞との細胞接着性及び/又は細胞増殖性を亢進させることによって、所望の細胞以外の細胞を該表面に分別保持させ、所望の細胞を回収することを特徴とする、細胞の分別回収方法。
4.1又は2に記載の細胞培養基材に細胞を播種する前及び/又は播種した後に、培養基材の光応答性表面の特定の領域を光照射し、光照射領域における所望の細胞との細胞接着性及び/又は細胞増殖性を亢進させることによって、所望の細胞のみを該表面に分別保持させ、培養することを特徴とする、細胞の分別方法。
5.培養基材の光応答性表面に保持させる細胞を標識し、標識された細胞の位置情報に基づいて光照射を行うことを特徴とする、3又は4に記載の細胞の分別方法。
本発明によれば、細胞を播種した後の光照射により、培養基材の光応答性表面の特定の領域に対して、数百ナノメートルの分解能で局所選択的に細胞接着性及び/又は細胞増殖性を亢進させることができ、成膜性や膜強度が改善された細胞培養基材を容易に得ることができる。そのため、従来技術では両立できなかった細胞の精密分離に加え、該分離において細胞外マトリックスや膜タンパク質を損なわず細胞の器官特異的機能の維持を同時に実現することが可能となる。また、従来の細胞のパターニングでは、細胞播種前の処理によって予め培養パターンが決まってしまうのに対し、細胞播種後に細胞を増殖させる領域を任意の2次元パターンで決めることができるため、従来にない細胞操作手段が提供できる。
本発明のポリアルキレングリコールを含む光応答性組成物により形成された光応答性表面は、適度の細胞接着性を有するために、光照射部位と非照射部位の細胞接着性の差異が顕著に表れ、細胞の分別回収や分別培養を簡単に行うことが可能となる。
本発明の細胞培養基材の光応答性表面を形成する光応答性組成物で使用される光応答性成分は、照射されることによって分子構造が変化し、その特性、特に分極率や溶媒親和性が変化する物質であって、光応答性を有するものであれば特に限定されることはなく、例えばアゾベンゼン、ジアリールエテン、スピロピラン、スピロオキサジン、フルギド、及びロイコ色素から選ばれた光応答性成分を使用することができる。
これらの光応答性成分は、単独で、又は使用目的によっては、2種類以上を適宜組み合わせて使用することができる。これらの光応答性成分は、そのもの自体を使用するほか、これらの成分を含有するポリマー、或いはコポリマーとして使用することができる。
光応答性成分をコポリマーとして使用する際に、コポリマーを構成する共重合モノマーとしては、任意の重合性二重結合を有するモノマーを使用することができる。好ましい共重合モノマーとしては、例えばメタクリル酸、アクリル酸、メタクリル酸又はアクリル酸のC1〜C8アルキルエステル、アクリロニトリル、アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、酢酸ビニル、スチレン、α−メチルスチレン、及びビニルトルエン等が挙げられる。
光応答性成分がコポリマーである場合は、非置換もしくは置換のスピロピラン又はアゾベンゼンを含有する光応答性を示す重合性モノマーを含むことが好ましく、更にニトロ基により置換されたスピロピランを含有する重合性モノマーを含むことが特に好ましい。
また、共重合可能なモノマーとしては、メタクリル酸又はアクリル酸のC1−C8アルキルエステル及びスチレン系モノマーが好ましく、汎用性と透明性の側面からメチルメタクリレートがより好ましい。
前記コポリマーにおいて、光応答性を示す色素を含有する重合性モノマーユニット数の、ポリマーを構成する全モノマーユニット数に対する割合は、0.1−100mol%、好ましくは1−10 mol%程度であり、より好ましくは3mol%程度である。
本発明で細胞培養基材の光応答性表面を形成するのに使用する光応答性組成物を構成するのもう一つの成分としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール、ポリペンタメチレングリコール、ポリヘキサメチレングリコール等のポリアルキレングリコール、好ましくはポリエチレングリコールを使用する。これらのポリアルキレングリコールの末端は、アルキル基、水酸基、アミノ基、エステル基等によって変性されていてもよい。
ポリエチレングリコール等のポリアルキレングリコールとしては、分子量5,000−1,000,000、好ましくは分子量10,000−500,000、より好ましくは分子量50,000−200,000程度のものを使用することができるが、これらに限定されるものではない。
また、このポリエチレングリコール等の末端は、光応答性組成物中の他の成分と化学的に結合されていても良い。あるいは、単に光応答性組成物中に混合されているだけでも良い。
本発明で使用する光応答性組成物中の前記光応答性成分の配合量は、特に制限されるものではないが、光応答性成分とポリエチレングリコールとの合計量の0.01−50重量%程度であり、好ましくは0.1−20重量%程度、より好ましくは5重量%程度である。
本発明のポリアルキレングリコールを含む光応答性組成物により形成された光応答性表面は、適度の細胞接着性を有するために、光照射部位と非照射部位の細胞接着性の差異が顕著に表れ、細胞の分別回収や分別培養を簡単に行うことが可能となる。また、ポリアルキレングリコールを含む光応答性組成物を使用することにより、成膜性や膜強度が改善された光応答性表面を有する細胞培養基材を容易に製造することができる。
光応答性組成物をコーティングなどを目的として溶液とする場合、その溶剤は使用する光応答性組成物を溶解できるものであればよく、例えば、1、2−ジクロロエタン、テトラヒドロフラン、クロロフォルム、メチルエチルケトン、酢酸エチル等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
前記光応答性成分がコポリマーである場合、そのコポリマーの平均分子量(重量平均)は、成膜性があれば特に限定されるものではないが、通常2,000−500,000、好ましくは5,000−100,000程度である。コポリマーの平均分子量が2,000未満では成膜性が劣る恐れがあり、一方500,000を超えると、合成が困難である場合がある。
また、前記光応答性組成物を用いて細胞培養基材に光応答性表面を形成するとき、上記光応答性成分を直接表面に導入する場合には、これら光応答性成分を、培養装置の基材表面に、例えばシランカップリング剤等を用いて化学的に、あるいは疎水性相互作用等を利用して物理的に結合させることができる。
本発明で使用される用語「光応答性表面」とは、前記光応答性組成物からなり、足場依存性細胞や神経細胞などの細胞が接着する表面を意味する。該表面は、光照射された領域の細胞接着性及び/又は細胞増殖性が亢進することを特徴とする。
本発明の細胞培養基材を作製するには、例えば前記光応答性組成物の溶液をガラス、改質ガラス、プラスチック、金属等の基板上にスピンコートまたはキャスト法にて成膜する。成膜後に熱処理を行うこともできるが、熱処理を行う場合は、室温−200℃、より好ましくは60−140℃の温度で、2、3時間の熱処理を行うことが望ましい。スピンコートまたはキャストに用いる溶液の濃度(光応答性成分とポリアルキレングリコールの合計量)は、フィルム形成ができれば特に限定されるものではないが、好ましくは0.01−10重量%、より好ましくは0.5−1重量%である。この範囲を逸脱すると、不純物による汚染や膜の不均一化が生じることがある。
本発明の細胞培養基材を使用する細胞培養デバイスとしては、細胞培養が可能であれば特に制限されるものではなく、例えば、培養ディッシュ、細胞培養キュベット等が挙げられるが、定点観測が可能な形態がより好ましい。
光応答性表面の特性を変化させるための照射光としては、紫外線、可視光などを挙げられる。波長域は、330−1000nm程度とすることができ、好ましくは350−800nm、より好ましくは波長360−600nmである。また、光照射エネルギーは、光応答性表面の特性を変化させることができ、かつ細胞に損傷を与えない範囲内であればよく、通常は0.1−10,000J/cm2、好ましくは1−1,000J/cm2、より好ましくは10−100J/cm2である。
本発明で用いられる細胞は、ヒト細胞または動物細胞由来の足場依存性細胞、神経細胞などであり、例えば繊維芽細胞、上皮細胞などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの細胞は必要に応じて単独で使用するか、又は複数組合せて使用することも可能である。
以下、本発明の細胞培養基材を用いた細胞の分別回収方法を図1を用いて説明する。
まず、該細胞培養基材の光応答性表面(1)に、細胞(2)を播種(3)する。この細胞の種類や活性を判定するための標識(4)を行い、所望しない細胞(2A)の位置情報を取り込み(5)、これに基づく照射パターン(6)で2次元パターン光照射(7)を行うことで、所望しない細胞(2A)が存在する領域にのみ光を照射すると、そこでの細胞接着性が亢進されて所望しない細胞(2A)のみが光応答性表面(1)に接着する。所望の細胞(2B)が光応答性表面(1)に接着していないこの状態で培地ごと細胞を回収(8)すれば、所望の細胞(2B)のみが選択的に分別回収される。
次に、本発明における細胞培養基材を用いた細胞のパターニングの方法を図2を用いて説明する。
まず、該細胞培養基材の光応答性表面(9)に、予め2次元パターン光照射(10)を行うことで、細胞接着性及び/又は細胞増殖性を照射パターン(11)に沿って亢進させる。この該細胞培養基材の光応答性表面(9)に細胞(12)を播種(13)する。その後洗浄・培養(14)することで、照射パターン(11)に沿う領域の細胞(12)を増殖させる。照射パターンに沿って複数種の細胞を共培養する場合には、照射パターン(15)で2次元パターン光照射(16)を行い、残りの領域の細胞接着性及び/又は細胞増殖性を亢進させ、他の種類の細胞(17)を播種(18)すると、既に先に播種した細胞(12)が増殖している領域を避け、照射パターン(15)に沿う領域に細胞(17)が接着し、増殖する。
該細胞培養基材の光応答性表面は、細胞播種後に光照射することによっても細胞にダメージを与えることなく、細胞接着性及び/又は細胞増殖性を局所的に亢進させられるので、この操作を複数回繰り返すことが可能であり、本発明にこの繰り返しの方法が含まれることは言うまでもない。この場合、逐次培養領域を指定しながら、複数種の細胞を任意のパターンに沿って共培養することができる。
また、本発明によれば、特に、トリプシン等の酵素を全く、あるいは十分量使用しないため、細胞接着物質であり、細胞機能の発現や保持に重要な働きをするECM(細胞外マトリックス)や膜タンパク質を伴ったまま細胞を剥離回収することが可能である点が、極めて重要な利点である。
本発明においては、上記のように蛍光標識抗体を用いる手法のみでなく、種々の蛍光標識法を採用できる。これには、例えば、ルシフェラーゼ等の発光系を構成する酵素の遺伝子を細胞に導入する方法等が挙げられる。さらに、例えば、形態の違う細胞の分別においては、特に蛍光標識を行わなくとも顕微鏡観察下、光照射して、目的とする細胞のみを分別して回収することができる。
以下に実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
(製造例1:ニトロスピロピラン修飾ポリメチルメタクリレートの製造)
凍結脱気可能で密栓できる100mlフラスコ中で、精製したメチルメタクリレート950mg(9.5mmol;和光純薬製)をテトラヒドロフラン(THF)蒸留液1mlに溶解したあと、N-[3-{3',3'-ジメチル-6-ニトロスピロ(2H-1-ベンゾピラン-2,2'-インドリン)-1-イル-プロピオニル}-プロピル]-メタクリルアミド253.3mg(0.5mmol;文献Heterocycles, 51, 2639-2651 (1999)記載の製造方法により合成)とTHF1mlを入れて撹拌しながら完全に溶解した。また、開始剤AIBN(2、2-アゾビス(イソブチロニトリル)、和光特級)16.4mg(0.1mmol)を入れてTHF1mlにて溶解して、密封した状態で凍結脱気を5回行った。その後、オイルバス中、65℃で24時間加熱した。CHCl3を少量加えて薄めて、メタノール400mlに点滴ろ過した後、減圧ろ過して乾燥させることによってニトロスピロピラン修飾ポリメチルメタクリレートを得た。
(実施例1:細胞培養基材の作製)
上記製造例1で得られたニトロスピロピラン修飾ポリメチルメタクリレート0.5 wt%とポリエチレングリコール0.1wt%を含有する1,2-ジクロロエタン溶液を、ガラス基板(直径2.5cm)上にスピンコーティング(回転速度:1200rpm)して、120℃で2時間熱処理を行ったあと、室温まで放冷、70%エタノール中に浸漬させたあと、減圧乾燥させて細胞培養基材を作製した。
細胞培養基材は、用いたポリエチレングリコールの重量平均分子量50,000、20,000、8,000、14,000に応じて4種類を作製し、それぞれ培養基材1−4とした。
比較のために、ポリエチレングリコールを含有しない以外は、上記と同様にして細胞培養基材を作製したところ、細胞接着性が高すぎて、十分な光応答性を確認するには至らなかった。
(実施例2:細胞播種前の光照射による細胞接着性評価)
上記実施例で得られた培養基材1−4を各々細胞培養キュベットに装着し、細胞の播種前、このキュベットに培養基材の半分の領域をマスクした状態で、光照射装置(モデル名:LC6、浜松ホトニクス社製)からの放射光のうちバンドパスフィルターを介して得られる主波長365nm、強度は20mW/cm2の紫外光を照射した。その後、Balb/3T3細胞を1.0x105cell/dishの細胞濃度で播種し、12時間培養した(培地:MINIMUM ESSENTIAL MEDIUM EAGLE、SIGMA社製)。その後、PBS1mlで2回洗浄を行い、紫外光の照射部と非照射部での細胞接着性を倒立顕微鏡にて肉眼観察したところ、細胞接着性に明確な差異が認められた。
(実施例3)
また、上記実施例1で得られた培養基材1を細胞培養キュベットに装着し、上記実施例2と同様な方法により処理を行い、CCDカメラ撮影視野内の細胞数を数え、細胞密度を求めた。その結果を図3に示した。
図3において、中央は光照射部位において12時間培養した後の細胞密度を表し、右側は非照射部位において12時間培養した後の細胞密度を表す。また、左側は光応答性表面を形成していない単なるガラス基板を使用して同様に培養した後の細胞密度を表す(下記、比較例参照)。
図3によれば、本発明の光応答性表面を形成した培養基材1では、光照射部位と非照射部位において培養後に顕著な細胞密度の差異が見られ、この差異を利用して所望の細胞又は細胞群を分別回収することが可能となる。
(実施例4:細胞播種後の光照射による細胞接着性評価)
重量平均分子量100,000のポリエチレングリコールを用いて、スピンコーティングした膜を70%エタノール中に浸漬させないこと以外は、上記実施例1と同様にして細胞培養基材を作製し、それを培養基材5とした。
この培養基材5を細胞培養キュベットに装着し、所望細胞の領域に対する紫外光照射を、細胞を播種してから5分後に行うこと、及びBalb/3T3細胞を0.5x105cell/dishの細胞濃度で播種する以外は、上記実施例2と同様にして処理を行い、細胞接着性を評価した。紫外光照射部と非照射部では、細胞接着性に明確な差異が認められた。また、実施例3と同様にして測定した細胞密度の結果を図4に示した。
図4によれば、本発明の光応答性表面を形成した培養基材5では、光照射部位と非照射部位において培養後に顕著な細胞密度の差異が見られ、この差異を利用して所望の細胞又は細胞群を分別回収することが可能となる。
(比較例)
本発明の光応答性組成物をコーティングした細胞培養基材と対比するために、光応答性表面を形成していない単なるガラス基板を使用し、その表面で上記実施例2の培養条件で細胞培養を行い、そのガラス基板上での細胞接着性を倒立顕微鏡にて肉眼観察したところ、光照射部位と非照射部位での細胞接着性に有意の差はみられなかった。
また、CCDカメラ撮影視野内の細胞数を数え、細胞密度を求めた結果を図3の左側に示した。
本発明によれば、細胞を播種した後の光照射により、培養基材の光応答性表面の特定の領域に対して、数百ナノメートルの分解能で局所選択的に細胞接着性及び/又は細胞増殖性を亢進させることができるため、従来技術では両立できなかった細胞の精密分離に加え、該分離において細胞外マトリックスや膜タンパク質を損なわず細胞の器官特異的機能の維持を同時に実現することが可能となる。また、従来の細胞のパターニングでは、細胞播種前の処理によって予め培養パターンが決まってしまうのに対し、細胞播種後に細胞を増殖させる領域を任意の2次元パターンで決めることができるため、従来にない細胞操作手段が提供できる。従って、本発明の光応答性組成物から形成された細胞培養基材及び、それを用いた所望細胞の選択的分別回収及びパターン培養の方法は、細胞工学分野、再生医療分野、バイオ関連工業分野、組織工学分野などにおいて極めて有用である。
本発明の細胞培養基材を用いた細胞分別操作を示す模式図である。 本発明の細胞培養基材を用いた細胞のパターニング操作を示す模式図である。 本発明の細胞培養基材の評価として、細胞播種前の紫外光照射の有無と培養細胞密度の関係を表すグラフである。 本発明の細胞培養基材の評価として、細胞播種後の紫外光照射の有無と培養細胞密度の関係を表すグラフである。
符号の説明
1,9 光応答性表面
2,2A,2B,12,17 細胞
3,13,18 播種操作
4 細胞の標識操作
5 位置情報の取り込み操作
6,11,15 照射パターン
7,10,16 2次元パターン照射操作
8 細胞回収操作
14 洗浄・培養操作

Claims (5)

  1. ニトロスピロピランとメチルメタクリレートとの共重合体からなる光応答性成分とポリエチレングリコールを含む光応答性組成物により形成された光応答性表面を有することを特徴とする細胞培養基材。
  2. 前記ポリエチレングリコールの分子量が50,000〜200,000であることを特徴とする、請求項1に記載の細胞培養基材。
  3. 請求項1又は2に記載の細胞培養基材に細胞を播種する前及び/又は播種した後に、培養基材の光応答性表面の特定の領域を光照射し、光照射領域における所望の細胞以外の細胞との細胞接着性及び/又は細胞増殖性を亢進させることによって、所望の細胞以外の細胞を該表面に分別保持させ、所望の細胞を回収することを特徴とする、細胞の分別回収方法。
  4. 請求項1又は2に記載の細胞培養基材に細胞を播種する前及び/又は播種した後に、培養基材の光応答性表面の特定の領域を光照射し、光照射領域における所望の細胞との細胞接着性及び/又は細胞増殖性を亢進させることによって、所望の細胞のみを該表面に分別保持させ、培養することを特徴とする、細胞の分別方法。
  5. 培養基材の光応答性表面に保持させる細胞を標識し、標識された細胞の位置情報に基づいて光照射を行うことを特徴とする、請求項3又は4に記載の細胞の分別方法。
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