JP4110295B2 - 銅エッチング廃液とレジスト廃液を同時に処理する方法及びそれに使用する薬剤 - Google Patents

Description

【０００１】
【発明の属する技術分野】
本発明は、銅エッチング廃液とレジスト廃液を混合して同時に処理する方法及びそれに使用する薬剤に関するものである。
【０００２】
【従来の技術】
プリント基板工場からは、銅エッチング廃液（極めて強酸性、銅濃度数千ｐｐｍ、ＴＯＣ約１．５％、硫酸約１．５％、過酸化水素十数％を含む）と、レジスト廃液（樹脂を含む）が排出されるが、これらはいずれも処理が困難であり、効率的な処理技術の開発が求められている。
銅エッチング処理工程から排出されるエッチング廃液は強い酸性で銅の濃度は、通常、８〜２０％の範囲と高いが、銅の回収再利用の妨げとなる塩素濃度も、通常、５〜３０％と高い。このような塩素イオンを大量に含む廃液から銅のみを回収する技術がないため、エッチング廃液は、一般には産業廃棄物処理会社により廃棄物として引き取られ、再利用されることなく処分されてきた。
フォトレジスト廃液はアルカリ性で、一般にアルカリ可溶性の樹脂を主成分として溶解している。フォトレジストの現像廃液または剥離廃液の処理方法は、廃液に硫酸、塩酸などを加え、酸性にしてレジストを不溶化させ、この不溶化したレジストを分離除去する方法で行われてきた。分離されたレジストは焼却処分や産業廃棄物として処分されてきた。しかし、昨今の処分場不足にともなう処分費用の高騰や、ゼロエミッションが求められる現状を鑑み、廃棄物の出ないレジスト廃液の処理方法の開発が強く求められている。また、酸性にして不溶化されたレジストは、粘性が高く分離除去操作が非常に困難で問題であった。
【０００３】
【特許文献１】
特開平５−１２３６８１号
【特許文献２】
特開平１０−１０４８４４号
【特許文献３】
特開平１１−６０２３９号
【０００４】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、プリント基板工場から排出され処理が困難な、強酸性の銅エッチング廃液とアルカリ性のレジスト廃液の両廃液に対する効率的な処理法を確立するため、両廃液を混合して同時に処理し、しかも銅が回収再利用可能な程に銅含有量が高く塩素含有量の低い銅スラッジが得られる処理法を提供することにある。
【０００５】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、以下の事柄を見出して本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、
（１）銅エッチング廃液とレジスト廃液を混合し、希土類化合物の共存下で、アルカリを添加してｐＨを８〜１３に調整することによって、該銅を難溶性物質として沈殿分離させること及び、該廃液中の有機物を沈殿させることを特徴とする銅エッチング廃液とレジスト廃液を混合して同時に処理する方法。
（２）該希土類化合物が、ランタンもしくはランタンと他の希土類の化合物との混合物であることを特徴とする（１）項に記載の銅エッチング廃液とレジスト廃液を混合して同時に処理する方法。
（３）銅エッチング廃液とレジスト廃液を混合したものに希土類化合物を添加した、銅を含有する被処理水中に凝集剤を添加することを特徴とする（１）又は（２）項に記載の銅エッチング廃液とレジスト廃液を混合して同時に処理する方法。
（４）（１）〜（３）項のいずれか１項に記載の方法に使用される薬剤であって、供給される希土類化合物が薬剤として構成されるものであり、その薬剤が希土類元素の酸化物、水酸化物、炭酸塩、又はハロゲン化物の水溶液、塩酸溶液又は硫酸溶液からなる群から選択される少なくとも一種からなることを特徴とする薬剤を提供するものである。
【０００６】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明では、銅エッチング廃液とレジスト廃液及び希土類化合物の存在下で、アルカリを添加してｐＨを８〜１３に調整することによって、該銅を難溶性物質として沈殿分離させる及び、該廃液中の有機物を沈殿させること。この希土類化合物が銅除去剤（以下、単に除去剤ともいう）及び有機物除去剤としての役割を果たす。添加する希土類元素は本発明の目的を達成することができればいかなる状態であってもよいが、希土類元素含有溶液として添加するのが好ましく、希土類元素の酸化物、水酸化物、炭酸塩、又はハロゲン化物の水溶液、塩酸溶液又は硫酸溶液として被処理水へ添加するのが好ましい。その濃度は特に限定されるものではないが、操作性を考慮すると、例えば、希土類元素酸化物の塩酸溶液の場合は、塩酸溶液中の希土類元素を酸化物として好ましくは１０〜６０質量％、より好ましくは３０〜５０質量％である。
【０００７】
希土類元素の中でもランタン、セリウムの使用が好ましく、ランタンの使用がより好ましい。
また、本発明において除去剤として用いる前記希土類元素含有溶液は、希土類元素の混合物の溶液もしくは、希土類元素の単独又は混合液の形態で用いることができる。ランタンとセリウム及びイッテルビウム溶液の使用が好ましく、ランタンとセリウムとの溶液がより好ましい。好ましい具体例としては、ランタンとセリウムとイッテルビウムの塩酸溶液（濃度は酸化物として５０質量％、その中の組成は、ランタン９５質量％、セリウム４．９質量％、イッテルビウム０．１質量％）である。
【０００８】
本発明で使用される除去剤は、例えば、希土類元素を含有している鉱石から不純物を取り除いた後、塩酸に溶解させて調製することができる。このときの塩酸濃度は、０．１〜１２規定が好ましく、より好ましくは、５〜１２規定、さらに好ましくは８〜１２規定であり、希土類元素イオンの濃度は、操作性を考慮すると、酸化物として好ましくは１０〜６０質量％、より好ましくは２０〜５０質量％、さらに好ましくは３０〜５０質量％である。溶解時間は、完全に溶解すればよく、特に限定されないが、０．５時間から２時間程度で十分である。
【０００９】
本発明において、希土類元素の添加量は、被処理水中の銅の濃度にもよるが、銅1モル当たり、好ましくは０.１〜５０モル、より好ましくは、０.５〜２０モル、さらに好ましくは、１〜１０モルである。
【００１０】
本発明においては、銅エッチング廃液とレジスト廃液と希土類元素水溶液を混合する場合には、これらを混合する順序は、いかなる順序であってもよく、エッチング廃液に除去剤を添加したものに、レジスト廃液を混合してもよいし、レジスト廃液に除去剤を添加したものに、エッチング廃液を混合してもよいし、エッチング廃液とレジスト廃液を混合したものに除去剤を添加しても良い。
【００１１】
本発明においては、銅エッチング廃液とレジスト廃液と希土類元素水溶液を混合する場合には、強酸性のエッチング廃液のｐＨを中性付近に調整したあとに行うこともできる。通常、銅エッチング廃液とレジスト廃液を混合すると、レジスト廃液のｐＨが下がって樹脂が析出するが、銅エッチング廃液のｐＨをあらかじめ中性付近に調整することにより、樹脂の析出を防ぐことができる。このときのｐＨは特に制約されないが、ｐＨ４〜９、好ましくは６〜８の範囲である。
【００１２】
本発明においては、ｐＨを調整した銅エッチング廃液とレジスト廃液、及び希土類元素水溶液を混合する場合には、これらを混合する順序は、いかなる順序であってもよく、ｐＨを調整したエッチング廃液に除去剤を添加したものに、レジスト廃液を混合してもよいし、レジスト廃液に除去剤を添加したものに、ｐＨを調整したエッチング廃液を混合してもよいし、ｐＨを調整したエッチング廃液とレジスト廃液を混合したものに除去剤を添加しても良い。
【００１３】
本発明では、銅エッチング廃液とレジスト廃液及び除去剤を混合した後、銅及び有機物の沈殿が生じるようにｐＨを調整して、排水中に溶存する銅及び有機物を除去する。そのｐＨは、一般的には８〜１３の範囲、好ましくは９〜１３の範囲、より好ましくは１０〜１３の範囲である。
【００１４】
被処理水のｐＨをアルカリ性領域や酸性領域に調節する場合、ｐＨ調節剤が用いられるが、このようなｐＨ調節剤としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、水酸化カルシウム等のアルカリ性物質、もしくは塩酸、硫酸、硝酸等の酸性物質が用いられる。
【００１５】
本発明においては、凝集剤を併用するのが好ましい。この場合の凝集剤は、フロックの凝集に用いられているものであり、このようなものには、塩化カルシウム、ビス（リン酸２水素）カルシウム、塩化第１鉄、塩化第２鉄、硫酸第１鉄、硫酸第２鉄、ポリ硫酸第1鉄、ポリ硫酸第２鉄、硫酸アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム等の無機系凝集剤の他、ポリアクリルアミドのカチオン化変性物、ポリアクリル酸ジメチルアミノエチルエステル、ポリメタクリル酸ジメチルアミノエチルエステル、ポリエチレンイミン、キトサン等のカチオン性有機系凝集剤、ポリアクリルアミド等のノニオン性有機系凝集剤、ポリアクリル酸、アクリルアミドとアクリル酸との共重合体及び／その塩等のアニオン性有機系凝集剤が包含される。被処理水への添加量は、例えば高分子凝集剤では、好ましくは０.１〜１００ｐｐｍ、より好ましくは０.２〜８０ｐｐｍ、さらに好ましくは１〜５０ｐｐｍである。
【００１６】
一連の工程終了後、被処理水は固液分離処理される。この場合の固液分離方法としては、慣用の方法、例えば、濾過分離、遠心分離、沈降分離等が挙げられる。
【００１７】
【実施例】
次に本発明を実施例によりさらに詳細に説明する。
【００１８】
参考例１
希土類元素の酸化物の塩酸溶液（希土類元素の濃度は、酸化物として３２．５質量％、組成はランタン９５質量％、セリウム４．９質量％、イッテルビウム０．１質量％）を除去剤とした。
【００１９】
実施例１
エッチング廃液（ｐＨ０．２０、銅濃度４７５０ｐｐｍ、ＴＯＣ１５０００ｐｐｍ）５００Ｌ／ｈに除去剤を１０ｍＬ／Ｌ添加し、５分間撹拌した後、レジスト廃液（ｐＨ１３．７、銅濃度２７ｐｐｍ、ＴＯＣ１８８００ｐｐｍ）２０００Ｌ／ｈを混合し５分間撹拌した。混合液にＮａＯＨ水溶液（７％）を添加してｐＨを１２に調整し１０分間撹拌した。固液分離した処理水の銅濃度を測定したところ、０．２ｐｐｍで、ＴＯＣは７３００ｐｐｍであった。スラッジ中の銅含有量は、６３％、塩素含有量は０．５％で、このスラッジは、十分採算ベースで銅資源として利用できることが明らかになった。
【００２０】
実施例２
レジスト廃液２０００Ｌ／ｈに除去剤を１ｍＬ／Ｌ、２ｍＬ／Ｌ及び５ｍＬ／Ｌ添加し、それぞれを５分間撹拌した後、エッチング廃液５００Ｌ／ｈを混合し５分間撹拌した。発熱して発泡し、樹脂状物質が上部に生成した。ＮａＯＨ水溶液（７％）を添加してｐＨを１２に調整し１０分間撹拌した。固液分離した処理水の銅濃度を測定したところ、それぞれ１．１６ｐｐｍ、１．３１ｐｐｍ及び０．８８ｐｐｍとなった。スラッジ中の銅含有量は、５８％、塩素含有量は０．７％で、このスラッジは、十分採算ベースで銅資源として利用できることが明らかになった。
【００２１】
比較例２
実施例２において、除去剤を添加せずに他は同様に処理したところ、処理水の銅濃度は４３．７ｐｐｍであった。
【００２２】
実施例３
レジスト廃液２０００Ｌ／ｈに除去剤を２ｍＬ／Ｌ添加し、５分間撹拌した。一方、エッチング廃液５００Ｌ／ｈにＮａＯＨ水溶液（７％）を添加してｐＨを７に調整し１０分間撹拌した。この両者を混合し、さらにＮａＯＨ水溶液（７％）を添加してｐＨを１２に調整し１０分間撹拌した。固液分離した処理水の銅濃度を測定したところ、０．１２ｐｐｍであった。スラッジ中の銅含有量は、５６％、塩素含有量は０．６％で、このスラッジは、十分採算ベースで銅資源として利用できることが明らかになった。
【００２３】
【発明の効果】
本発明によれば、銅エッチング廃液とレジスト廃液および希土類化合物の存在下で、アルカリを添加してｐＨを８〜１３に調整することによって、該銅を難溶性物質として沈殿分離させること及び該原水中の有機物を沈殿分離できる。

Claims (4)

1. 銅エッチング廃液とレジスト廃液を混合し、希土類化合物の共存下で、アルカリを添加してｐＨを８〜１３に調整することによって、該銅を難溶性物質として沈殿分離させること及び、該廃液中の有機物を沈殿させることを特徴とする銅エッチング廃液とレジスト廃液を混合して同時に処理する方法。
2. 該希土類化合物がランタンもしくはランタンと他の希土類化合物との混合物である請求項１記載の銅エッチング廃液とレジスト廃液を混合して同時に処理する方法。
3. 銅エッチング廃液とレジスト廃液を混合したものに希土類化合物を添加した、銅を含有する被処理水中に凝集剤を添加することを特徴とする請求項１又は２記載の銅エッチング廃液とレジスト廃液を混合して同時に処理する方法。
4. 請求項１〜３のいずれか１項に記載の方法に使用される薬剤であって、供給される希土類化合物が薬剤として構成されるものであり、その薬剤が、希土類元素の酸化物、水酸化物、炭酸塩、又はハロゲン化物の水溶液、塩酸溶液又は硫酸溶液からなる群から選択される少なくとも一種からなることを特徴とする薬剤。