JP4109600B2 - アルミニウム合金板およびその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、特に、カメラ、ビデオ(ディジタル形式を含む)等の電子機器の筐体に使用されるアルミニウム合金板およびその製造方法に関する。
各種電気製品の筐体、放熱板、パネル板等の部品に磁気シールド性の確保ならびに軽量化の目的から、アルミニウム合金板が使用されてきている。このような用途に供されるアルミニウム合金板においては、強度および成形性が優れていることや、耐食性が良いこと等が要求されるため、純アルミニウム、Al−Mg系アルミニウム合金等が使用されている。
そして、作製されたアルミニウム合金板の強度、成形性を向上させると共に、特にメスネジ加工性を優れたものにするために、所定範囲のMg、Cuを必須成分として含み、さらに所定範囲のMn、Cr、TiおよびBのうち少なくとも1種以上を含む組成を有するアルミニウム合金が提案され、そのアルミニウム合金から作製された合金板の表面における平均結晶粒径を40μm以下にしたアルミニウム合金板が知られている。また、このようなアルミニウム合金板の製造方法として、前記組成を有するアルミニウム合金につき、480〜550℃×1〜48時間の均質化熱処理を施した後、熱間圧延し、最終冷間圧延率30%以上で冷間圧延して所定の板厚とし、その後、軟質化処理を施して、合金板表面における平均結晶粒径を40μm以下にしたアルミニウム合金板の製造方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
特許第2623302号公報(第2頁右欄13〜26行)
しかしながら、最近、アルミニウム合金板の使用用途も広がり、カメラ、ビデオ等の電子機器の筐体にも使用され始めている。そして、このような筐体は、エッチング等の処理により筐体表面を梨地処理して、筐体の外観(美観)を向上させている。したがって、このような用途に供されるアルミニウム合金板には、前記の強度、成形性に加えて、特に、良好な梨地表面を得るための梨地処理性が優れたものが要求されている。従来から使用されているアルミニウム合金板においては、アルミニウム合金板の表面に多数の金属間化合物が存在するため、エッチング等の梨地処理を行った際、金属間化合物のエッチング液への溶解により、結晶粒内、結晶粒界共に凹凸が生じ、アルミニウムの結晶粒界が不明瞭になり、良好な梨地処理面が得られないという問題があった。したがって、梨時処理性が優れるためには、金属間化合物が関係しているのではないかと推測することができる。
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、強度、成形性に優れると共に、梨地処理性に優れたアルミニウム合金板およびその製造方法を提供することを目的とする。
前記課題を解決するため、請求項1に記載の本発明は、Mg:3.0〜4.5質量%、Si:0.10質量%以下、およびFe:0.15質量%以下を含有すると共に、Mn:0.01〜0.04質量%、およびCr:0.04〜0.30質量%のうち少なくとも1種以上を含有し、かつ、残部をAlおよび不可避的不純物とするアルミニウム合金からなるアルミニウム合金板であって、前記アルミニウム合金板の表面における平均結晶粒径が30〜60μmであり、金属間化合物の面積率が0.4%以下であるアルミニウム合金板として構成したものである。また、請求項2に記載の本発明は、Mg:3.0〜4.5質量%、Si:0.10質量%以下、およびFe:0.15質量%以下を含有すると共に、Mn:0.01〜0.30質量%、およびCr:0.04〜0.30質量%を含有し、かつ、残部をAlおよび不可避的不純物とするアルミニウム合金からなるアルミニウム合金板であって、前記アルミニウム合金板の表面における平均結晶粒径が30〜60μmであり、金属間化合物の面積率が0.4%以下であるアルミニウム合金板として構成したものである。
このような構成によれば、所定範囲のMg、Si、およびFeを含有し、MnおよびCrのうち少なくとも1種を含有するアルミニウム合金からなり、作製されたアルミニウム合金板表面の平均結晶粒径、金属間化合物の面積率を所定範囲に限定したことにより、アルミニウム合金板表面の金属間化合物のサイズが小さく、個数も少なくなると共に、アルミニウムの結晶粒径も適切な範囲となる。その結果、アルミニウム合金板を梨地処理した際、エッチング液に溶解する金属間化合物が少なく、結晶粒内、結晶粒界共に凹凸が生じないため、適正な粒径を有するアルミニウムの結晶粒界が明瞭になり、優れた梨地表面となる。また、アルミニウム合金板の強度が向上すると共に、このアルミニウム合金板から筐体等を作製する際、成形割れ、表面の肌荒れ等が発生しない。
前記課題を解決するため、請求項3に記載の本発明は、Mg:3.0〜4.5質量%、Si:0.10質量%以下、Fe:0.15質量%以下、およびCu:0.2〜0.6質量%を含有すると共に、Mn:0.01〜0.04質量%、およびCr:0.04〜0.30質量%のうち少なくとも1種以上を含有し、かつ、残部をAlおよび不可避的不純物とするアルミニウム合金からなるアルミニウム合金板であって、前記アルミニウム合金板の表面における平均結晶粒径が30〜60μmであり、金属間化合物の面積率が0.4%以下であるアルミニウム合金板として構成したものである。また、請求項4に記載の本発明は、Mg:3.0〜4.5質量%、Si:0.10質量%以下、Fe:0.15質量%以下、およびCu:0.2〜0.6質量%を含有すると共に、Mn:0.01〜0.30質量%、およびCr:0.04〜0.30質量%を含有し、かつ、残部をAlおよび不可避的不純物とするアルミニウム合金からなるアルミニウム合金板であって、前記アルミニウム合金板の表面における平均結晶粒径が30〜60μmであり、金属間化合物の面積率が0.4%以下であるアルミニウム合金板として構成したものである。
このような構成によれば、所定範囲のMg、Si、Fe、およびCuを含有し、MnおよびCrのうち少なくと1種以上を含有するアルミニウム合金からなり、作製されたアルミニウム合金板表面の平均結晶粒径、金属間化合物の面積率を所定範囲に限定したことにより、アルミニウム合金板表面の金属間化合物のサイズが小さく、個数も少なくなると共に、アルミニウムの結晶粒径も適切な範囲となる。その結果、アルミニウム合金板を梨地処理した際、エッチング液に溶解する金属間化合物が少なく、結晶粒内、結晶粒界共に凹凸が生じないため、適正な粒径を有するアルミニウムの結晶粒界が明瞭になり、優れた梨地表面となる。また、アルミニウム合金板の強度が向上すると共に、このアルミニウム合金板から筐体等を作製する際、成形割れ、表面の肌荒れ等が発生しない。
前記課題を解決するために、請求項に記載の本発明は、請求項1、請求項2、請求項3または請求項4に記載のアルミニウム合金を溶解、鋳造し、鋳塊を作製する第1工程と、前記鋳塊を480〜550℃で均質化熱処理する第2工程と、前記均質化熱処理された鋳塊を熱間圧延し、その後、少なくとも1回以上の冷間圧延により圧延板を作製し、その際の最終冷間圧延率を30%以上とする第3工程と、前記圧延板を、加熱速度100℃/分以上で加熱し、450〜560℃で3〜100秒間保持し、冷却速度200℃/分以上で冷却する軟質化処理を施してアルミニウム合金板を作製する第4工程とを含むアルミニウム合金板の製造方法として構成したものである。
このような構成によれば、鋳塊の均質化熱処理条件、圧延板の最終冷間圧延率および冷間圧延後の軟質化熱処理条件を限定したことにより、圧延板表面の平均結晶粒径および金属間化合物の面積率が適正な範囲となり、アルミニウム合金板表面の金属間化合物のサイズが小さく、個数も少なくなると共に、アルミニウムの結晶粒径も適切な範囲となる。その結果、アルミニウム合金板を梨地処理した際、エッチング液に溶解する金属間化合物が少なく、結晶粒内、結晶粒界共に凹凸が生じないため、適正な粒径を有するアルミニウムの結晶粒界が明瞭になり、優れた梨地表面となる。また、アルミニウム合金板の強度が向上すると共に、このアルミニウム合金板から筐体等を作製する際、成形割れ、表面の肌荒れ等が発生しない。
このようなアルミニウム合金板およびその製造方法によれば、アルミニウム合金板に優れた強度、成形性および梨地処理性を付与することができる。また、このアルミニウム合金板から作製した筐体のメスネジ部がネジ止めにより破壊することがない、優れたネジ特性を付与することもできる。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明者らは、アルミニウム合金の組成と、アルミニウム合金板の強度、成形性、梨地処理性について鋭意研究を進めた。その結果、アルミニウム合金中のMg、Si、Fe、Cu、Mn、Crの組成と、そのアルミニウム合金からなるアルミニウム合金板の表面における平均結晶粒径、金属間化合物の面積率が、アルミニウム合金板の強度、成形性、梨地処理性に大きく影響することを見出した。
また、アルミニウム合金板の表面における平均結晶粒径、金属間化合物の面積率は、アルミニウム合金の鋳塊の均質化熱処理条件、冷間圧延における最終冷間圧延率に大きく影響される。さらに,冷間圧延後の軟質化処理における加熱速度,保持温度・時間,冷却速度を制御することにより,再結晶粒径が微細化する。
本発明のアルミニウム合金板は、所定範囲のMg、SiおよびFe、または、Mg、Si、FeおよびCuを含有すると共に、所定範囲のMnおよびCrのうち少なくとも1種以上を含有し、かつ、残部をAlおよび不可避的不純物とするアルミニウム合金からなり、そのアルミニウム合金板の平均結晶粒径、金属間化合物の面積率を所定範囲に限定したものである。以下に、所定範囲の限定理由を説明する。
(1)Mg:3.0〜5.5質量%
Mgはアルミニウム合金板の強度に寄与する元素であって、Mgが3.0質量%未満であると強度が低くなり、カメラ、ビデオ等の筐体としての強度を得ることができない。また、Mgが5.5質量%を超えると強度の改善効果が飽和すると共に、熱間圧延性等が悪く、アルミニウム合金板の生産性が低下する。よって、Mgの含有量は3.0〜5.5質量%である。
(2)Si:0.10質量%以下
SiはMg−Si系金属間化合物の形成に寄与する元素で、Siが0.10質量%を超えると、Mg−Si系金属間化合物のサイズ、個数が増加し、後記するように、アルミニウム合金板をエッチングにより梨地処理した際、Mg−Si系金属間化合物がエッチング液に容易に溶解し、アルミニウムの結晶粒界を不明瞭にし、梨地外観が不良となる。よって、Siの含有量は0.10質量%以下である。
(3)Fe:0.15質量%以下
FeはAl−Fe系金属間化合物の形成に寄与する元素で、Feが0.15質量%を超えると、Al−Fe系金属間化合物のサイズ、個数が増加し、後記するように、アルミニウム合金板をエッチングにより梨地処理した際、Al−Fe系金属間化合物がエッチング液に容易に溶解し、アルミニウムの結晶粒界を不明瞭にし、梨地外観が不良となる。よって、Feの含有量は0.15質量%以下である。
(4)Cu:0.2〜0.6質量%
Cuは本発明においては含有されていなくてもよいが、アルミニウム合金板の強度に寄与する元素であるので所定範囲で含有されていることが好ましい。Cuが0.2質量%未満であると強度の改善効果が小さい。また、Cuが0.6質量%を超えると強度の改善効果が飽和すると共に、熱間圧延性等が悪く、アルミニウム合金板の生産性が低下する。よって、Cuの含有量は0.2〜0.6質量%が好ましい。
(5)Mn:0.01〜0.30質量%、およびCr:0.01〜0.30質量%のうち少なくとも1種以上
Mn、Crはアルミニウムの結晶粒径を適正化する元素で、MnおよびCrのうち少なくとも1種を含有する必要がある。また、MnおよびCrは単独でも、組み合わせても効果がある。そして、0.01質量%未満のMnおよび0.01質量%未満のCrのうち少なくとも1種以上を含有する場合、アルミニウムの結晶粒径が大きくなり、アルミニウム合金板のカメラ、ビデオ等の筐体への成形加工時、成形割れ、肌荒れ等が発生する。また、アルミニウム合金板を梨地処理した際、梨地外観が不良となる。また、0.30質量%を超えるMnおよび0.30質量%を超えるCrのうち少なくとも1種以上を含有する場合、アルミニウムの結晶粒径が小さくなり、アルミニウム合金板を梨地処理した際、梨地外観が不良となる。よって、0.01〜0.30質量%のMnおよび0.01〜0.30質量%のCrのうち少なくとも1種以上を含有する。
(6)不可避的不純物
不可避的不純物としては、例えばZn、Zr、Ti、B等が挙げられるが、これらは本発明の効果を損なわない範囲で、例えば、0.05質量%以下が許容される。
(7)平均結晶粒径:30〜60μm
アルミニウム合金板の平均結晶粒径は、アルミニウム合金板の成形性および梨地処理性に影響し、平均結晶粒径が30μm未満では、結晶粒径が小さく、アルミニウム合金板を梨地処理した際、梨地外観が不良となる。また、平均結晶粒径が60μmを超えると、アルミニウム合金板をカメラ、ビデオ等の筐体に成形加工した際、成形割れ、肌荒れ等が発生すると共に、梨地外観が不良となる。よって、平均結晶粒径は30〜60μmである。
(8)金属間化合物の面積率:0.4%以下
アルミニウム合金板の表面に形成される金属間化合物、特に、Al−Fe系金属間化合物、Mg−Si系金属間化合物は、アルミニウム合金板の梨地処理性に影響し、金属間化合物のサイズ、個数が増加して、金属間化合物の面積率が0.4%を超えると、アルミニウム合金板を梨地処理した際、金属間化合物がエッチング液に容易に溶解し、結晶粒内、結晶粒界共に凹凸が生じ、アルミニウムの結晶粒界が不明瞭になり、アルミニウム合金板の梨地外観が不良となる。よって、面積率は0.4%以下である。
図1に、アルミニウム合金板の梨地処理後の表面状況を模式図で示した。ここで、図1は光学顕微鏡(倍率500倍)で観察した結果であり、図1(a)は金属間化合物の面積率が0.4%以下の例、図1(b)は面積率が0.4%を超える例である。図1(a)では、アルミニウムの結晶粒界Aが明瞭である。図1(b)では、アルミニウムの結晶粒界Aが不明瞭である。
次に、本発明のアルミニウム合金板の製造方法は、前記に記載のアルミニウム合金を溶解、鋳造し、鋳塊を作製する第1工程と、前記鋳塊を均質化熱処理する第2工程と、前記均質化熱処理された鋳塊を熱間圧延し、その後、少なくとも1回以上の冷間圧延により圧延板を作製する第3工程と、前記圧延板に軟質化処理を施してアルミニウム合金板を作製する第4工程とを含むものである。以下、各工程について説明する。
(1)第1工程
アルミニウム合金を溶解、鋳造して鋳塊を作製する。溶解および鋳造方法は、常法にしたがって行う。
(2)第2工程
前記第1工程で作製された鋳塊を均質化熱処理する。このような均質化熱処理を行うことにより、鋳造によってアルミニウム合金中に形成された金属間化合物が固溶し、金属間化合物のサイズ、個数が減少する。均質化熱処理温度は480〜550℃である。処理温度が480℃未満では、固溶の効果が不十分であり、また、処理温度が550℃を超えるとバーニングを生じる恐れがある。また、処理時間については1〜48時間が好ましい。
(3)第3工程
前記第2工程で均質化熱処理された鋳塊を熱間圧延し、その後、少なくとも1回以上の冷間圧延を行い圧延板を作製する。熱間圧延および冷間圧延は常法にしたがって行う。そして、少なくとも1回以上の冷間圧延の各圧延率は適宜設定されるが、最終冷間圧延率は30%以上である。最終冷間圧延率が30%未満であると、後記する第4工程での軟質化処理において、圧延板の再結晶粒径が微細化できず、平均結晶粒径が60μmを超えるため、アルミニウム合金板の成形性、梨地処理性が不良となる。また、各冷間圧延の間に中間焼鈍(例えば、連続焼鈍500℃×10秒)を行ってもよい。
(4)第4工程
前記第3工程で作製された圧延板を軟質化処理してアルミニウム合金板を作製する。次のような軟質化処理によって、圧延板の再結晶粒径が微細化する。軟質化処理条件は、加熱速度100℃/分以上で加熱し、450〜560℃で3〜100秒間保持し、冷却速度200℃/分以上で冷却する。処理条件が前記範囲外であると、再結晶粒径の微細化の効果が不十分、または、バーニングが生じる恐れがあり、アルミニウム合金板の平均結晶粒径が所定範囲外となる。その結果、アルミニウム合金板の成形性、梨地処理性が不良となる。
次に、本発明のアルミニウム合金板から作製されるカメラ、ビデオ等の筐体について説明する。この筐体は、アルミニウム合金板からプレス加工、脱脂、エッチング、表面処理する一般的な方法で作製される。
また、前記ではエッチングによる梨地処理について説明したが、本発明における梨地処理はエッチングに限定されるものではなく、例えば、ブラスト等の物理的加工処理も含まれる。そして、ブラスト等による梨地処理においても、アルミニウム合金板の表面に多数の金属間化合物が存在すると、ブラスト等の処理により金属間化合物が脱落し、結晶粒内、結晶粒界共に凹凸が生じるため、良好な梨地処理面が得られない。したがって、アルミニウム合金板の表面の金属間化合物の面積率を所定範囲に限定する必要がある。
以下、本発明の特許請求の範囲を満たす実施例の効果について、特許請求の範囲から外れる比較例と比較して説明する。
表1に示す組成を有するアルミニウム合金を溶解し、鋳造により板厚500mmの鋳塊を作製し、その鋳塊を面削した。その面削された鋳塊を均質化熱処理、熱間圧延および冷間圧延を行い板厚2mmとし、中間焼鈍(連続焼鈍500℃×10秒)、冷間圧延して板厚0.8mmの圧延板を得た。その圧延板を軟質化処理して板厚0.8mmのアルミニウム合金板を作製した。また、均質化熱処理条件、最終冷間圧延率、軟質化処理条件については表2に示すとおりである。
Figure 0004109600
Figure 0004109600
得られたアルミニウム合金板について、以下の評価を行い、結果を表3、表4に示した。
(1)機械的性質(引張強さ、耐力、伸び)
アルミニウム合金板を引張方向が圧延方向と平行になるようJIS5号による引張試験片を作製した。その後、JISZ2241にて引張試験を実施し、引張強さ、耐力、伸びを測定した。耐力において90N/mm2以上を合格とした。
(2)組織(平均結晶粒径、金属間化合物の面積率)
(平均結晶粒径)
アルミニウム合金板の表面を研磨後,バーカー法にてエッチングして,光学顕微鏡にて偏光をかけて倍率100倍で写真撮影し、JISH0501に規定された切断法で、既知の長さの線分によって完全に切られる結晶粒数を数え、その切断長さ(直線長さ÷数)の平均値を平均結晶粒径とした。平均結晶粒径が30〜60μmを合格とした。
(金属間化合物の面積率)
アルミニウム合金板の表面をSEM(日本電子製T-330)にて倍率500倍で観察し、組成像の20視野(約0.5mm2)で、母相内に異なって写った金属間化合物の視野全面積に対する面積率を算出した。面積率が0.4%以下を合格とした。
(3)成形試験(エリクセン値、表面状態)
アルミニウム合金板を用いて、JISB7729、JISZ2247に規定されたエリクセン試験を、JISA法により20mmφ球頭ポンチで行い、エリクセン値を測定し、9.6mm以上を合格とした。また、40mmφの平頭ポンチで成形試験を行い,角R部を目視にて観察し、肌荒れ等の発生状況を判定した。肌荒れ等の発生がないもの、発生しても微小なものを「○」、肌荒れ等の発生が著しいものを「×」とした。
(4)梨地外観
アルミニウム合金板の表面をNaOH溶液にて70℃×30秒処理し、被験者10人で感応試験を行った。梨地外観を目視にて判定し、8人が美観性に優れた梨地外観が得られたとした場合を良好「○」とし、8人未満の場合を不良「×」とした。
Figure 0004109600
Figure 0004109600
表3、表4の結果から、実施例1〜実施例15はいずれも、機械的性質、成形試験および梨地外観において良好であり、アルミニウム合金板の強度、成形性および梨地処理性において優れたものであった。
比較例1は、組成においてMgが下限値未満、平均結晶粒径が上限値を超えるため、機械的性質において耐力が小さすぎ、成形試験においてエリクセン値が低く、表面状態も不良であり、機械的性質、成形性において実施例と比べて劣るものであった。また、梨地外観も不良であり、梨地処理性においても実施例と比べて劣るものであった。
比較例2は、機械的性質、成形試験および梨地外観において良好であったが、組成においてMgが上限値を超えるため、アルミニウム合金板の熱間圧延性等が悪く生産性が劣るものであった。
比較例3は、組成においてCuが上限値を超えるため、アルミニウム合金板の熱間圧延性等が悪く生産性が劣るものであった。
比較例4は、組成においてSiが、組織において金属間化合物の面積率が上限値を超えるため、梨地外観が不良であり、梨地処理性において実施例と比べて劣るものであった。
比較例5は、組成においてFeが、組織において金属間化合物の面積率が上限値を超えるため、梨地外観が不良であり、梨地処理性において実施例と比べて劣るものであった。
比較例6は組成においてMnが下限値未満およびCrを含有せず、比較例8は組成においてCrが下限値未満およびMnを含有せず、また、両者は共に平均結晶粒径が上限値を超えるため、成形試験において表面状態が不良で、成形性において実施例と比べて劣るものであった。また。梨地外観が不良であり、梨地処理性において実施例と比べて劣るものであった。
比較例7は組成においてMnが上限値を超えると共にCrを含有せず、比較例9は組成においてCrが上限値を超えると共にMnを含有せず、両者共に平均結晶粒径が下限値未満、金属間化合物の面積率が上限値を超えるため、梨地外観が不良であり、梨地処理性において実施例と比べて劣るものであった。
比較例10は均質化熱処理において処理温度が下限値未満であるため、組織において金属間化合物の面積率が上限値を超え、梨地外観が不良であり、梨地処理性において実施例と比べて劣るものであった。比較例11は均質化熱処理において処理温度が上限値を超えるため、組織において平均結晶粒径が上限値を超え、バーニングを生じて成形試験においてエリクセン値が低く、表面状態も不良であり、成形性において実施例と比べて劣るものであった。また、梨地外観も不良であり、梨地処理性においても実施例と比べて劣るものであった。
比較例12は最終冷間圧延率が下限値未満であるため、組織において平均結晶粒径が上限値を超え、成形試験において表面状態が不良であり、成形性において実施例と比べて劣るものであった。また、梨地外観も不良であり、梨地処理性においても実施例と比べて劣るものであった。
比較例13は軟質化処理において保持温度が下限値未満、比較例14は保持温度が上限値を超えるため、両者共に組織において平均結晶粒径が上限値を超え、成形試験においてエリクセン値が低く、表面状態も不良であり、成形性において実施例と比べて劣るものであった。また、梨地外観も不良であり、梨地処理性においても実施例と比べて劣るものであった。
比較例15は軟質化処理において加熱速度および冷却速度が下限値未満であるため、組織において平均結晶粒径が上限値を超え、成形試験において表面状態が不良であり、成形性において実施例と比べて劣るものであった。また、梨地外観も不良であり、梨地処理性においても実施例と比べて劣るものであった。
アルミニウム合金板の梨地処理後の表面状況を示す模式図である。
符号の説明
A アルミニウムの結晶粒界

Claims (5)

  1. Mg:3.0〜4.5質量%、Si:0.10質量%以下、およびFe:0.15質量%以下を含有すると共に、
    Mn:0.01〜0.04質量%、およびCr:0.04〜0.30質量%のうち少なくとも1種以上を含有し、かつ、残部をAlおよび不可避的不純物とするアルミニウム合金からなるアルミニウム合金板であって、
    前記アルミニウム合金板の表面における平均結晶粒径が30〜60μmであり、金属間化合物の面積率が0.4%以下であることを特徴とするアルミニウム合金板。
  2. Mg:3.0〜4.5質量%、Si:0.10質量%以下、およびFe:0.15質量%以下を含有すると共に、
    Mn:0.01〜0.30質量%、およびCr:0.04〜0.30質量%を含有し、かつ、残部をAlおよび不可避的不純物とするアルミニウム合金からなるアルミニウム合金板であって、
    前記アルミニウム合金板の表面における平均結晶粒径が30〜60μmであり、金属間化合物の面積率が0.4%以下であることを特徴とするアルミニウム合金板。
  3. Mg:3.0〜4.5質量%、Si:0.10質量%以下、Fe:0.15質量%以下、およびCu:0.2〜0.6質量%を含有すると共に、
    Mn:0.01〜0.04質量%、およびCr:0.04〜0.30質量%のうち少なくとも1種以上を含有し、かつ、残部をAlおよび不可避的不純物とするアルミニウム合金からなるアルミニウム合金板であって、
    前記アルミニウム合金板の表面における平均結晶粒径が30〜60μmであり、金属間化合物の面積率が0.4%以下であることを特徴とするアルミニウム合金板。
  4. Mg:3.0〜4.5質量%、Si:0.10質量%以下、Fe:0.15質量%以下、およびCu:0.2〜0.6質量%を含有すると共に、
    Mn:0.01〜0.30質量%、およびCr:0.04〜0.30質量%を含有し、かつ、残部をAlおよび不可避的不純物とするアルミニウム合金からなるアルミニウム合金板であって、
    前記アルミニウム合金板の表面における平均結晶粒径が30〜60μmであり、金属間化合物の面積率が0.4%以下であることを特徴とするアルミニウム合金板。
  5. 請求項1、請求項2、請求項3または請求項4に記載のアルミニウム合金を溶解、鋳造し、鋳塊を作製する第1工程と、
    前記鋳塊を480〜550℃で均質化熱処理する第2工程と、
    前記均質化熱処理された鋳塊を熱間圧延し、その後、少なくとも1回以上の冷間圧延により圧延板を作製し、その際の最終冷間圧延率を30%以上とする第3工程と、
    前記圧延板を、加熱速度100℃/分以上で加熱し、450〜560℃で3〜100秒間保持し、冷却速度200℃/分以上で冷却する軟質化処理を施してアルミニウム合金板を作製する第4工程とを含む、
    ことを特徴とするアルミニウム合金板の製造方法。
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