JP4109239B2 - 転炉への溶銑供給方法 - Google Patents
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Description
転炉工程では、溶銑を転炉に装入し、副原料添加と酸素吹込みを行うことで脱りん・脱炭を行って、りん濃度や炭素濃度が所定の値となっている溶鋼を生産するようにしている。転炉工程で得られた溶鋼は、その後、連続鋳造工程を経てスラブ等に成形され、このスラブが圧延されることで厚板や薄板等の鉄鋼製品が製造される(圧延工程)。
特許文献1には、高炉工程に着目し、高炉・製鋼工場間における溶銑輸送容器の稼働状況(物流状況)を考慮することで、高炉・製鋼工場間の貯銑量のバランスを検証し、出鋼未達を防ぐ技術が開示されている。
特許文献3には、圧延工程に着目し、加熱炉投入までの圧延材の流れ(物流)に着目して、スラブ圧延工程における生産量向上を考えた物流計画の技術が開示されている。
一方、転炉工程に関して考えると、その溶鋼生産能力に関与するのは、転炉自体の処理能力と転炉への溶銑供給能力である。もし、複数の転炉を同時に稼働させた際には、転炉の処理能力が転炉への溶銑供給能力を上回ることになり、転炉への溶銑供給能力が律速となる。つまり、転炉への溶銑供給をいかに効率的に迅速に行うかが、非常に重要となる。
これにより、運搬台車1台に対して取鍋2基を交互に使用することができるようになり、一方の取鍋が脱炭用転炉への溶銑装入中であっても、他方の取鍋を速やかに脱燐用転炉の出銑口へ移動させることができるものとなっている。
本願発明者は、転炉工程での溶鋼生産能力を向上させる方法を探るために、図3(a)のガントチャート等を基に、取鍋並びにクレーンの稼働状況を詳細に検討し、その結果、クレーンの待ち時間なく稼働させることが必要であることを見いだした。クレーンの待ち時間を少なくするためには、例えば、空の取鍋を払い出しステーションへ据え付けた時点で既に、隣の払い出しステーションの取鍋では溶銑払い出しが完了していることが好ましい。そうすることで、空の取鍋の据え付け後、クレーンは待ち時間なく溶銑が装入された取鍋を吊り上げることができる。
しかしながら、具体的に取鍋の数をいくつにしたらよいかを決定するような技術は確立されるにいたっておらず、前述した特許文献4の技術は、転炉工程の一部にのみ着目したものであって、この問題を解決し、転炉への溶銑供給能力を大幅に向上させることは難しい。一方、特許文献1〜特許文献3の物流技術を当該転炉設備に応用しようとしても非常に困難である。
すなわち、本発明における課題解決のための技術的手段は、転炉と、この転炉へ溶銑を装入する取鍋と、混銑車から該取鍋への溶銑払い出しが行われる払い出しステーションと、この払い出しステーションに対する取鍋の搬入又は搬出を行うべく取鍋をハンドリングするクレーンとを有している転炉設備で、前記取鍋の稼働数を「払い出しステーション数+1」とし、該取鍋をクレーンでハンドリングして、転炉に溶銑を供給することを特徴とする。
すなわち、クレーンの待ち時間を少なくするためには、空の取鍋を払い出しステーションへ据え付けた時点で既に、隣の払い出しステーションの取鍋では溶銑払い出しが完了していることが好ましい。そうすることで、空の取鍋の据え付け後、クレーンは待ち時間なく溶銑が装入された取鍋を吊り上げることができる。しかしながら、払い出しステーション数より取鍋の稼働数が少ない場合、取鍋に空鍋を載置した後、溶銑払い出しが完了した別の取鍋を吊り下げに行くことができず、クレーンに待ち時間が生じる。
この際に、前記転炉設備は取鍋内のスラグの排出処理が行われる除滓ステーションを有すると共に、前記クレーンは払い出しステーション及び除滓ステーションに対する取鍋の搬入又は搬出を行うべく取鍋をハンドリングするものであって、当該払い出しステーションと除滓ステーションとをクレーンの移動方向に隣接又はクレーン1基分以上離して設け、該払い出しステーション及び除滓ステーションへの同時配置を可能とするように取鍋をクレーンでハンドリングするとよい。
例えば、従来の転炉設備では、払い出しステーションと除滓ステーションとが上下方向で同一場所であって、平面視で重なる位置にあったため、一方のクレーンで、溶銑の入った取鍋を払い出しステーションの上方へ持ち上げて除滓作業をしている際に、他方のクレーンで、当該払い出しステーションに別の取鍋を搬入しようとすると、両クレーンで差し合いが起こることになる。逆に、一方のクレーンが溶銑払い出し中の取鍋をその上空で待っている際に、他方のクレーンに吊られた取鍋に対する除滓作業をしようとすると、同じ場所にクレーンが来ることになり差し合い状態となる。
なお、言い換えるならば、払い出しステーションと除滓ステーションとをそれぞれクレーン移動方向に別々の位置に設けることにより、払い出しステーションから見ると除滓ステーションがクレーンの待避場所(待避ステーション)として作用し、除滓ステーションから見ると払い出しステーションがクレーンの待避場所として働くようになる。
こうすることで、払い出しステーションの隣に除滓ステーションが設けられる設備構成を2セット用意することができ、より多くの取鍋をクレーンの差し合いを起こさない状況下で取り回すことができるようになって、転炉への溶銑供給を効率的に行うことが可能となる。
上述した如く取鍋の稼働本数が増えることにより、取鍋1本あたりの巡回時間が延長し、取鍋のスラグライン等に地金やスラグが付着生成するようになる。そこで、これに対応して転炉操業を円滑に行うためには、稼働している取鍋をさらに1本増やして、増やした取鍋を載置する待機ステーションを設けるとよい。待機ステーションに配置された取鍋に関し、その地金やスラグを定期的に除去するようにすることで、地金やスラグが付着せずに安定して使用できる取鍋を確実に確保することができるようになる。
図1は、転炉設備1を正面から見た際の概略を示したものであり、図2には、転炉設備1の平面概略図が示されている。
図1に示すように、本実施形態の転炉設備1は、3基の転炉2と、これら転炉2に溶銑を供給する取鍋3(溶銑鍋)と、この取鍋3を搬送する2基のクレーン4とを有している。さらに、取鍋3を載置した上で、混銑車5から該取鍋3に溶銑を移し替える場所である「払い出しステーション6(払い出しピット)」を2つ備えている。払い出しステーション6から移送され且つ取鍋3内のスラグの排出処理を行う除滓ステーション9も2つを備えている。
以下、本実施形態にかかる転炉設備1の詳細について述べる。
本転炉設備1の上方側には、該転炉設備1を縦断するように走行レール7が設けられており、この走行レール7上を後述するクレーン4が2基走行するようになっている。走行レール7の一方側(図2の左側)には、前記払い出しステーション6A,6Bが走行レール7方向に並ぶように設けられており、走行レール7の他方側(図2の右側)には3基の転炉(転炉2A〜転炉2C)が走行レール7方向に並ぶように配設されている。なお、以降の説明における上下方向は、図1の上下方向と一致するものとする。
また、区切り番号0の位置であって、払い出しステーション6Aより上方側には、ノロカキ8A(スラグドラッガー)により取鍋3内の溶銑上面に浮かんでいるスラグを掻き出す場所である「除滓ステーション9A」が設けられている。同様に区切り番号3の場所にはノロカキ8Bが配置され除滓ステーション9Bとなっている。
走行レール7上には2基のクレーン4A,4Bが配備されている。詳しくは、走行レール7上をクレーン本体10が走行するものとなっており、このクレーン本体10からは、下方に吊り下げ索体11(ワイヤ)が延びており、該吊り下げ索体11の先端に設けられたフック12で取鍋3を吊り下げるようになっている。吊り下げ索体11をクレーン本体10へ巻き取ることで、取鍋3は上方へ引き上げられることになり、その上でクレーン本体10が走行レール7上を走行することで、取鍋3は、払い出しステーション6〜転炉2間を自在に移送される。
まず、混銑車5が転炉設備1に到着した後、該混銑車5から払い出しステーション6A,6Bに載置された取鍋3に溶銑が注ぎ込まれる。溶銑が装入された取鍋3は、クレーン4A,4Bにより引き上げられ、払い出しステーション6A,6Bの上方であって該払い出しステーション6A,6Bに隣接する除滓ステーション9A,9Bまで移動され、ノロカキ8A,8Bで溶銑の上面に浮いているスラグが掻き出されるものとなっている。
スラグを掻き出された取鍋3は、クレーン4A,4Bにより3基の転炉2A,2B,2Cのいずれかの前に移送され、当該転炉2を傾動すると共に取鍋3を傾けることで、転炉2内に溶銑を装入する。
図3には、払い出しステーション6A,6Bに常時配置される取鍋3の数を1本とすると共に、取鍋3の総稼働数を3本とした場合の、クレーン4A,4Bの動きとそれに伴う取鍋3の動き(物流)を詳細に表したガントチャートが示してある。
図3(a)は、図8に示された従来の転炉設備101におけるガントチャートである。従来例の転炉設備101は、払い出しステーション106A,106Bの上方側に除滓ステーション109A,109Bが設けられており、平面視では、払い出しステーション106A,106Bと除滓ステーション109A,109Bとは同一の区切り番号位置に存在する点が、本転炉設備1とは大きく異なっている。加えて、従来例では取鍋103の稼働本数は2本である。
このとき、クレーン104Bで吊り下げられたままの取鍋103は、除滓ステーション109Bに配置されて、当該取鍋103内のスラグがノロカキ108Bで掻き出されるものとなっている。その後、クレーン104Bの取鍋103は、転炉102Aの位置に移送され、溶銑が転炉102Aに装入されることになる。溶銑装入が完了し、空になった取鍋103は払い出しステーション106Bに搬送されて据え付けられ、溶銑の払い出しが始まる。このとき、クレーン104Bは払い出しステーション106Bの上空で待ちの状態となる。
転炉102Bへの溶銑装入を終えた取鍋103は、クレーン104Aにより再度払い出しステーション106Aの位置まで移動させられ据え付けられることになり、クレーン104Aの1サイクルが終了することになる。
本実施形態の場合、取鍋103とクレーン104と払い出しステーション106とは常に対応しており、ある取鍋103を把持するのは常に決まったクレーン104であり、取鍋103は、常に同一払い出しステーション106に配置される。なお、クレーン104の1サイクルにかかる時間、すなわちサイクルタイムは、図3(a)から33分であることが判る。
一方、図3(b)には、本実施形態のクレーン4の動きとそれに伴う3本の取鍋3の動き(物流)が示してある。
クレーン4の動きに関しては、まず、クレーン4Aは、払い出しステーション6Bに空の取鍋3を据え付けるようにする。その後、払い出しステーション6Aに移動し、溶銑払い出しが終わると共に溶銑の成分測定や温度測定が完了した取鍋3を吊り上げ、除滓ステーション9Aへ移送する。この除滓ステーション9Aでは、取鍋3は吊り下げられた状態であって、取鍋3内のスラグがノロカキ8Aで掻き出されるものとなっている。
払い出しステーション6Aへ取鍋3が据え付けられる状況は、ガントチャート中のP部で示されており、これは、図3(a)のR’部がR部まで早まったことを意味している。P部の状況を別の観点で見ると、除滓ステーション9Aと払い出しステーション6Aとが平面視でクレーン1基分だけ離れているため、両ステーション同時にクレーン4が位置することが可能となっていることを意味し、除滓と溶銑払い出しがパラレルに行われて、溶銑供給処理を効率的に進めていることの現れとなっている。図7のケースCがこの状況に相当し、従来(ケースA)のクレーンのサイクルタイムが33分/回に対して、除滓ステーション9Aと払い出しステーション6Aとが離れているために差し合いが起こらず、クレーンサイクルが29分/回と短くなっている。
払い出しステーション6Bの取鍋3を吊り上げたクレーン4Bは、そのまま、除滓ステーション9Bに移動すればベストであるが、除滓ステーション9Aにある取鍋3を転炉2Aの前に移動させる必要があるため、一旦、転炉2Cの前まで移動するようになる(逃げる)。
併せて、取鍋3の稼働本数とは別に更に1本の取鍋3を用意し、両者を併せて稼働させ、該取鍋3のいずれか1つを前記待機ステーション13に配置するようにクレーン4を操作している。待機ステーション13に配置された取鍋3では、取鍋3に付着した地金やスラグを定期的に除去するようにする。
図4,図5には、転炉設備の第2実施形態が示してある。
本転炉設備1は、脱硫ステーション14A、脱硫ステーション14Bを有し、該脱硫ステーション14A、脱硫ステーション14Bは、走行レール7の番号1,2の場所で、走行レール7の側方側にそれぞれ配置されている。加えて、区切り番号0の位置に前ノロカキを配置し除滓ステーション9としていると共に、転炉2Aと転炉2Bの2基を備えるものとなっている。その他の構成は第1実施形態と略同様である。
本実施形態では、前記脱硫ステーション14A,14Bに常時配置されている取鍋3の本数が「脱硫ステーション総数−1」以上となるように、クレーン4A、4Bで取鍋3のハンドリングを行うこととしている。すなわち、払い出しステーション6に適用した、クレーン4をもっとも効率的に使用するための考え方を、脱硫ステーション14に適用したものである。
このガントチャート中、例えば、P部に着目すると、クレーン4Aは、脱硫ステーション14Bに溶銑が装入された取鍋3を載置した後に、待ち時間なくすぐに、払い出しステーション6Aへ移動し、払い出しの終わった取鍋3を吊り下げるようにしている。
また、Q部に着目すると、クレーン4Bは、払い出しステーション6Bに空の取鍋3を据え付けた後すぐに、脱硫ステーション14Bのノロカキ8が終わった取鍋3を吊り下げに行っている。R部に着目すると、クレーン4Bは、空の取鍋3を払い出しステーション6Bに据え付けた後、すぐに、脱硫ステーション14Aにある脱硫処理完了後の取鍋3を吊り上げるようにしている。
すなわち、第1実施形態のように、払い出しステーション6Bと除滓ステーション4Bとを隣接させて配置するのではなく、転炉を区切り番号5,6,7に配設し、区切り番号4に除滓ステーション4Bを設け、払い出しステーション6Bと除滓ステーション4Bとの間にクレーン1基分の空間を設けるようにしてもよい。
また、転炉は上吹き転炉、底吹き転炉、又は上底吹き転炉のいずれであってもよく、1つの転炉で脱りんと脱炭を行う、いわゆるダブルスラグ法を行っている転炉施設にも適用可能である。
2 転炉(2A〜2C)
3 取鍋
4 クレーン(4A,4B)
5 混銑車
6 払い出しステーション(6A,6B)
9 除滓ステーション(9A,9B)
14 脱硫ステーション(14A,14B)
Claims (4)
- 転炉と、この転炉へ溶銑を装入する取鍋と、混銑車から該取鍋への溶銑払い出しが行われる払い出しステーションと、この払い出しステーションに対する取鍋の搬入又は搬出を行うべく取鍋をハンドリングするクレーンとを有している転炉設備で、
前記取鍋の稼働数を「払い出しステーション数+1」とし、該取鍋をクレーンでハンドリングして、転炉に溶銑を供給することを特徴とする転炉への溶銑供給方法。 - 前記転炉設備は取鍋内のスラグの排出処理が行われる除滓ステーションを有すると共に、前記クレーンは払い出しステーション及び除滓ステーションに対する取鍋の搬入又は搬出を行うべく取鍋をハンドリングするものであって、当該払い出しステーションと除滓ステーションとをクレーンの移動方向に隣接又はクレーン1基分以上離して設け、該払い出しステーション及び除滓ステーションへの同時配置を可能とする取鍋をクレーンでハンドリングすることを特徴とする請求項1に記載の転炉への溶銑供給方法。
- 前記転炉設備には、クレーンの移動方向に沿って隣接する2つの払い出しステーションが備えられ、これら払い出しステーションの前記移動方向両側に、それぞれ除滓ステーションが備えられていることを特徴とする請求項2に記載の転炉への溶銑供給方法。
- 前記転炉設備は、取鍋の補修や地金取り作業を行う待機ステーションを有しており、請求項1〜3のいずれかで設定された取鍋の稼働本数+1の取鍋を稼働させた上で、該取鍋のいずれか1つを前記待機ステーションに配置するようにクレーンを操作することを特徴とする転炉への溶銑供給方法。
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