JP4106391B2 - 神経細胞アポトーシスの抑制タンパクとその遺伝子配列、並びに脊髄性筋萎縮症の原因となる当該遺伝子の突然変異 - Google Patents
神経細胞アポトーシスの抑制タンパクとその遺伝子配列、並びに脊髄性筋萎縮症の原因となる当該遺伝子の突然変異 Download PDFInfo
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Description
神経細胞アポトーシス抑制タンパク(NAIP)をコードする遺伝子がヒト染色体の5q13領域で見出された。この発明の一つの態様によれば、神経細胞アポトーシス抑制タンパクのcDNA配列表4に開示されたとおりに提供される。この発明の別の態様によれば、このcDNA配列から予測される神経細胞アポトーシス抑制タンパクのアミノ酸配列が提供される。
この発明のさらに別の態様によれば、染色体5q13のSMA含有領域に位置するヒト遺伝子が提供される。このヒト遺伝子は約5.5kbのエクソン1から17までを含み、エクソン2から11までの制限地図は図8に示したとおりである。
i) 第5染色体のSMA含有領域q13由来の生物標本を単離し、
ii) 生物学的アッセイを行い、
a) 配列番号1のNAIPコードDNA;および
B) 配列番号2のNAIPタンパク
からなる群から選択された少なくとも一方が生物標本に存在するか否かを判定する方法である。
以下、別段の指示がない限り、本発明の詳細な説明においてはエクソン番号方式#2に基づいてエクソンを参照する。
CTR − 複合縦列反復
DNA − デオキシリボ核酸
PCR − ポリメラーゼ連鎖反応
PFGE − パルスフィールドゲル電気泳動
PAC − P1人工染色体
RNA − リボ核酸
RT-PCR − 逆転写酵素-ポリメラーゼ連鎖反応
STR − 単純縦列反復
STS − 配列標識部位
YAC − 酵母人工染色体
ii) 残りの遺伝子に欠陥がある場合には、第5染色体のこの遺伝子のコピー不在もしくはコピー数の著しい減少が原因となり得る。
(i) 被検者から得た等量のDNA(0.1マイクログラム)に対して2つの同時PCRを実施する。一方のプライマー対はエクソン5および6に対応するものとし(例えば、配列番号7のプライマー1863と配列番号8のプライマー1864)、他方のプライマー対はエクソン5および6以外の領域に相同なもの(例えば、配列番号5のプライマー1343と配列番号4のプライマー1258)とする。後者の反応を実施することで、PCRが作用していることを確認することができる。さらに2つのコントロールとして、(i)適切なプライマーを使用して、エクソン5およびエクソン6を含むことが知られるゲノムDNAにPCRを行い、この特定反応が作用していることを確認するものと、(ii)鋳型として水を使用し、混入物質の不在を確認する負のコントロールとがある。すべてのPCR産物はアガロースゲル内に移され、電気泳動によって分離され、視覚的に分析される。
この方法は、PCRを用いてRNAを酵素的に増幅するために用いる。
National Centers of Excellence(NCE,Toronto)、Imperial Cancer Research Fund(ICRF,London)(Lain et al.,1991)およびCentred'Etude du Polymorphism Humaine(CEPH,Paris)(Alertson et al.)で構築させた3つのライブラリからYACクローンを単離したが、これらは全てYACベクターpYAC4に連結したDNA全体の一部のEcoRI断片から調製されたものである。ICRF YACクローンは、ライブラリフィルターを5q13.1プローブを用いて探査することによって同定した。NCEライブラリから得られたYACDNAをPCR増幅によってスクリーニングし、電気泳動し、サザンブロットに固定し、放射標識したSTS産物にハイブリダイズし、ポジティブであることを確認した。多数のポジティブがプールしたプレートの第1回目PCRおよび目的のクローンを含むと考えられたプレートでの第2回目のPCR双方から繰り返し得られたが、その多くは偽のポジティブであった。偽ポジティブクローンはプライマー依存性と思われるが、その数はPCR産物を放射標識し、6%ポリアクリルアミドゲル上で分解させることによって減少した。その後、真のポジティブクローンのサイズを偽生成物からの干渉を受けずに正確に測定することができた。
重要なSMA領域の制限地図をD5S629に約100kb近位のSTS Y116U(Kleyn et al.,1993)からD5S557に約500kb遠位のSTS Y107Uまで作成した(図2参照)。我々のYACの欠失または転位についてあらゆる可能性を見い出すために、CEPHライブラリ(Kleeyn et al.,1993)からさらにYACを単離し、この領域内にマッピングすることを分析に含めた。YACの24D6、227H5、33H10、155SH11、76C1、235B7、184M2、428C5、81B11(Kleyn et al.,1993)を低頻度切断エンドヌクレアーゼNotl、BssHII、Sfil、Rsrlを用いて部分的に切断した。パルスフィールドゲル電気泳動(PFGE)で分離した制限産物をサザンブロッティングし、YACの左腕特異プローブおよび右腕特異プローブにハイブリダイズさせたところ、各YACの両端からの開列部位の位置が明らかにされた。YACの配向およびオーバーラップは、STS分析に基づいてすでに求められているので、オーバーラップしたYAC中の低頻度切断部位の位置を比較した。それらの共通する低頻度切断部位にオーバーラップしたYACを並べることによって、オーバーラップの程度をさらに正確に決定することかできた。異なる起源由来のオーバーラップYACの長距離制限地図は33H10および428C5を例外としてほとんど一致する。428C5は欠失を含むことが以前に立証されており(Kleyn et al.,1993)、そのSTS含有物の比較と、わずか300kbのサイズしかないことから、図2の配置よりもさらにセントロメア側に存在することが示唆される。STS分析に基づくYAC33H10は、内部欠失を含み、YAC155H11はテロメア側がキメラであるので、地図のテロメア側の低頻度切断部位は確認することができず、含まれていなかった。この結果は、セントロメア境界であるD5S435からテロメア境界であるD5S557までの距離は1.4Mbであり、これは先に報告された400kb(Francis et al.,1993)とは著しく異なるが、別の見積結果(Wirth et al.,1993)とは一致した。さらに、D5S629-D5s557区間は1.1Mbであり、遺伝的に定義されたCMS1-SMA-D5S557区間の距離は約550kbであると見積もられた。
YAC全体をプローブとして使用するコスミドの単離は、コスミド連続系列を構築する迅速な方法であると考えられたが、この場合、第5染色体に特異的な反復配列の存在によって、第5染色体の別の場所に位置するコスミドを単離し易いと思われた。目的のコスミドのウォーキング法は、こうして採用された。CATT-1 STRは、放射線ハイブリッド分析によって2つの接合標識D5S435とD5S351のほぼ中間に位置することがわかっているが、これを開始点として使用し、コスミドクローン系列を構築した。ゲノムDNAに見られる複合増幅パターンは、1個体あたり2から8の対立遺伝子を含んでいるが(図3参照)、この領域のCATT-1配列のコピー数または部位が可変的であることを示すものであった。30個のCATT-1にポジティブなコスミドを同定したところ、それらはPCR分析時に4個の異なる対立遺伝子の1つを含むことがわかった。コスミドライブラリはモノ染色体ソース由来であったので、これによってCATT STRは少なくとも4つの位置に存在することが確認された。我々はこれらの4つの部位を下位部位(subloci)と命名した。これらの下位部位は、各々12、19、15、20のシトシンアデノシン(CA)ジヌクレオチドの対立遺伝子を含有することが確認された第1コスミド番地に基づいてCATT-40G1、CATT-192F7、CATT-58G12、CATT25OB60と命名された。両方向ウォーキングを4つのコスミド下位部位から開始した。ポジティブなハイブリダイゼーションは、58G12を一端に有する250B6と他端に有する192F7に観察され、cen-192F7-58G12-250B6-telの順序であった(図4)。CATT-192F7対立遺伝子を含む全てのコスミドは、それらのCATT-1対立遺伝子のサイズおよびそれらの制限酵素プロフィルに基づいて、この位置に配置された。図4に示すように、CATT-192F7下位部位は、STR CMS-1に対してテロメア側であり、それ自体がCATT-40G1下位部位のテロメア側である。
コスミド連続系列の伸長は第5染色体に特異的な反復配列の存在によって妨げられるので、5XコスミドライブラリをYAC 76C1から作成した。YACに沿って分布するSTSのCATT-1、CMS-1、Y122T(Kleyn et at.,1993)、Y97T(Kleyn et al.,1993)およびY98T(Kleyn et al.,1993)を用いてコスミドを同定し、連続系列を構築した。同様に、以前に開発されたマーカーpZY8、pL7、pGA-1、p15.1、p402.1、p2281.8および構築されたコスミド連続系列由来のβ-グルクロニダーゼ(Oshima et al.,1987)(表2、図2)がこのライブラリにハイブリダイズしたが、これはコスミドの順序付けに効果的な方法であった。不規則なハイブリダイゼーションパターンを示し、欠失および/または転位を含むと考えられるコスミドを除去した。
幾つかの証拠は、我々のコスミド系列中にゲノム配列重複が存在することを示唆した。我々は、CATT-40G1サブクローンの複製が単一の第5染色体由来のコスミドに存在することの証拠を提供する。CATT-40G1下位部位として確立されたこの下位部位に対するセントロメアの位置は、複数のコスミドにおいてSTSsのY122T、Y88TおよびCMS-1に隣接していることが見出され、セントロメアのYAC428Sは、CATT-40G1含有コスミドから単離されたプローブに対してポジティブであった。YAC428C5は、PCR増幅の際にはCATT-40G1下位部位を含まなかったが、これはYACが由来する染色体の無効対立遺伝子またはYACの欠失によって説明することができる。我々は、既に、離れたCATT-1下位部位で個々の無効対立遺伝子を観察している。CATT40G1の別のよりテロメア寄りの位置を、いずれもテロメア側のYAC33H10である24D62に結合するプローブpGA-1、pL-7およびpZY8のCATT40G-1へのハイブリダイゼーションによって決定した。コスミド40G1由来のp402.1をコスミドの両方の位置にハイブリダイズしたところ、重複はCATT40-1下位部位に限定されず、より広い領域を含む傾向にあることが分かった。サザンブロットによって、2つの位置に対するコスミドの異なるプロフィルが明かになったが、Alu-PCRフィンガプリントによって共通のバンドが検出され、重複を裏付けた。
我々は、D5S435-D5S112領域を組み込み4Mbを含むSMA疾患遺伝子領域のYAC系列を確立した。5q13に沿った系列の向きはPFGE分析と組み合わせて7つの遺伝マーカーおよびSTSsを分析することによって確認した。長距離制限地図では、我々の系列に含まれるYACの主な欠失および転位は明かにならなかったので、この地図を用いて系列のサイズを詳細に見積もった。我々のYAC地図は、少数コピー反復配列と複数部位STSsによって特徴づけられる1.1Mb領域に、マーカーD5S629、D5F153、D5F151、D5F150、D5F149、CMS-1、CATT-1およびD5S557を物理的に連結させた。さらに、我々は、新しく遺伝的に規定されたCMS1-SMA-D5S557が500kbであると見積もった。D5S435-D5S557領域の物理的距離の評価値は400kb(Francis et al.,1993)から1.4Mb(Wirth et al.,1993)までであることが報告されている。このような研究とは対照的に、我々はD5S435-SMA-D5S557領域を1.4Mb、CMS11-SMA-D5S557領域を550kbとする見積では、6個の染色体からなる3つの起源に由来するクローンを採用する。さらに、クローンサイズと低頻度切断部位の位置とを決定することによって、さらに詳細にYACのオーバーラップの程度と系列のサイズを決定することができるようになり、評価が信頼できるものになった。
SMA領域に位置する5つの複合縦列反復および単純縦列反復を用いる連鎖不平衡分析を行った。この分析に使用された2つの多形性は、我々のコスミド系列にマッピングしたCATT-40G1下位部位およびCATT-192F7下位部位であった。2つの独立した下位部位の特異的増幅はCA反復に隣接する領域の配列多形性で終了するプライマーを構築することによってなされた。CATT-40G1下位部位では図6に示されるように、明確なピークが観察された。
40G1 CATT下位部位は連鎖不平衡を示したので、CATT領域を含むPAC連続系列を構築した。このPAC連続系列は9個のクローンからなり、全長約400kbであった(図7)。物理的マッピングデータに組み合わせた我々の遺伝的分析は、SMAと最大の不平衡を示した40G1CATT下位部位マーカーが重複しており、重要なSMA領域の極めてセントロメア寄りに局在していることを明らかにした。結果的に、10kbのセントロメア末端内にCMS対立遺伝子9を限定するSMA領域を含み、テロメア方向に延在して40G1 CATT下位部位を組み込んだ154kbのPACクローン125D9をさらに別の試験用に選択した。
5つのCATT下位部位の1つを含むコスミド250B6の完全なゲノムcDNAインサートを用いてヒト胎児脊髄cDNAライブラリをプロービングした。この結果、2.2kbの転写GA1が検出されたが、この位置は図7に示した。胎児脳ライブラリを連続コスミドインサート(コスミド40G1)の他、このようなコスミドから単離された単コピーサブクローンを用いてさらにプロービングした。複数の転写が確認され、中にはL7と呼ばれるものも含まれていた。コード領域はL7については検出されなかったが、これは恐らくクローン実質部が未処理の異核RNAを含んでいた事実によると思われる。ただし、我々は、後にL7が神経アポトーシス抑制タンパク遺伝子の一部と考えられる領域を含むことを発見した。同様に、GA1転写は、神経アポトーシス抑制タンパクのエクソン13であることが最終的に証明された。GA1は、発現遺伝子であることを示すエクソンを含むことがわかったので特に注目した。PACクローン125D9内に含まれるGA1転写は後にcDNAライブラリを詳しくプロービングすることによって伸長された。
NAIP遺伝子は、少なくとも5.5kbからなる17個のエクソンを含み、ゲノムDNAの約80kbに及んでいる。NAIPコード領域は3698ヌクレオチドで、1233アミノ酸からなる遺伝子産物が推定される。NAIPは2つの潜在的膜貫通領域と、GTP結合部位に直接隣接する細胞内のアポトーシス抑制ドメインとを含んでいる。タンパク質ドメインプログラムの調査によって以下の結果が出た。
(ii) 残基94-118:疎水性膜spanningドメイン
(iii)残基:169-435:アポトーシス抑制タンパクと相同性を示し、次の疎水性ドメインであるGTP/ATP結合部位の直前に位置するドメイン
(iv) 残基486-504:疎水性膜spanningドメイン
(v) 残基505-1005:4つのN−末端結合グリコシル化部位と1つのリポタンパク質結合ドメインを含む受容体ドメイン
タンパク遺伝子突然変異の分析
cDNAライブラリをスクリーニングするプローブとして完全PAC125D9を用いてcDNA20.3プローブを得た。cDNAプローブ20.3を用いたゲノムサザンのプロービングによって、III型の近親婚家族では9kbのEcoRIバンドが欠損していることを明らかにした。この情報によって、NAIP遺伝子の欠失をエクソン5およびエクソン6に位置づけた。このため、欠失は低頻度Notl制限部位とその直接下流を含むエクソンをカバーする。これらのエクソン内または周囲のプライマーを構築し、I型SMA患者3人とIII型SMA患者3人にこの領域の増幅がないことを明かにした。上記の欠失が原因で生成される接合(junction)フラグメントを増幅するプライマーを調製する目的で、PACとエクソン4および5内および周囲のコスミドサブクローンからゲノムDNAを単離し、配列を決定した。1つの接合フラグメントがIII型の患者に検出された。同様の産物が、近親婚の履歴がない別のフランス系カナダ人2例に観察された。3例のI型SMAおよび3例のIII型SMA患者の染色体は、同一のCATT/CMSハプロタイプを有し、これが共通の軽度のSMA突然変異であり、フランス系カナダ人の母集団には比較的多いことを強く示唆した。このパターンの共分離が証明された。我々は、SMA患者の110人の両親の分析を行ったが、同様の産物を発見することができなかった。この領域のゲノムDNAの配列を決定したところ、約10kbの欠失があり、これがフレーム欠失を生じさせていることが確認された。この欠失は、イントロン領域とエクソン5および6に及んでいた。2世代のSMA家族にサザンブロット分析を行った。最初の8エクソンを含むcDNAプローブを用いて、末梢血白血球由来DNAのEcoRI断片をブロービングした。SMA患者は、エクソン5および6を含む10kbのEcoRIバンドへのハイブリダイゼーションが存在しなかった。(図9)。
どちらのIAPもそのアミノ酸末端に80アミノ酸BIR(バクロウイルスIAP反復)モチーフを含んでおり、約30残基の介在配列の後ろで、33%の一致率で重複していた(Clem and Miller,1993)。同じ現象はNAIPにも観察される。エクソン6、7、8にコードされたアミノ酸185-250は、エクソン10、11、12にコードされたアミノ酸300-370と35%相同であった。最も長い相同性は、53アミノ酸配列領域全体に観察され、29のアミノ酸が一致していた。
2.残基 92-110:MEMSATプログラム(Jones et al.,1994)によって膜spanningドメインであることが予知された疎水性ドメイン
3.残基 163-47:バキュウロウイルスのアポトーシス抑制タンパクと相同性を示し、次の疎水性ドメインGTP/ATP結合部位の直接上流に続くドメイン。
4.残基 479-496:MEMSATによって膜spanningドメインであると予知される疎水性ドメイン。
5.残基
493-1232:4つのN−末端連結グリコシル化部位および1つの原核脂質付着部位を含む受容体部位。
成人組織mRNAを含有するノーザンブロットとエクソン14プローブとのハイブリダイゼーションの結果、成人肝臓(約6kbと約7kbのバンド)と胎盤(7kbのバンド、図6)にのみバンドが検出された。成人CNSでの発現レベルは、ノーザン分析法では可視バンドを生成するためには不十分であったが、脊髄、繊維芽細胞、リンパ芽球RNAを用いてたNAIP転写物の逆転転写酵素PCR(RT−PCR)増幅は、このような組織の転写活性を示唆した。
PAC連続系の解析において、クローン238D12および30B2が、NAIPのエクソン6に位置するPAC125D9と高い配列相同性を示したが、これらのクローンはPAC125D9のNotl部位を含んでいなかった。このことは、NAIP遺伝子の重複コピーの可能性を示しており、そのため、さらに解析を進め、PACDNAを含むサザンブロットとNAIPエクソンプローブとのハイブリダイゼーションを行い、またPCR STSに何が含まれているか評価を行った結果、NAIP遺伝子座の異常型2種が検出された。すなわち、一つは、エクソン2〜7が欠失したもの(PAC 238D12)で、他の一種は、エクソン6、7および12〜17が欠失したもの(PAC 30B2および250I7)である。サザン解析によってゲノムDNAおよびPACDNAに同じ大きさのバンドが存在することと、PCRの結果から、この欠失は、in vivoの状態よりもむしろin vitroでのPACアーチファクトを反映するものであるという可能性は排除された。従って、ゲノムDNAサザンブロットをNAIPエクソンプローブとハイブリダイズすると、現れたバンドの数は、NAIP遺伝子の単一コピーをプローブとした場合に予想されるより多かった。例えば、BamHI制限切断ゲノムDNA含有ブロットをNAIPエクソン3−11でプロービングすると、同一サイズの連続する14.5 kb BamHIフラグメントを含むバンドが正常なNAIP部位に得られるはずである。(図11)。ところが、さらに2つのバンドが9.4と23 kb(図11)に現れた。これは、それぞれPAC238D12と30B2/25017で見られる断片である。9.4kb BamHI断片はコスミドからサブクローン化されたもので、欠失のあるエクソン8−11を含んでいるが、この欠失は8番目のエクソンの直前にあるエクソン2から7を組み込んでいる(図11)。23 kbのバンドはBamHi部位から6 kbが欠失して、2つの連続する14.5 kbのBamHI断片がエクソン2〜5、および8〜11を含む23 kb BamHI断片に置換し、その結果図11に示したようにエクソン5および6が欠失する。この欠失の左側は、プライマー1933および1926での増幅では遺伝子産物ができるのに対し、1933および1923でのPCRでは遺伝子産物が生成されない(データ示さず)という事実によってマッピングされた。プライマー1927および1933を用いてPCRを行い、6 kbの欠失に及ぶ4.2kbの接合断片を増幅すると(図11)、サイズおよび配列がゲノムDNAおよびPACs30B2/25017において見られるような増幅産物が得られた。様々なヒトゲノムDNAに見られる9.4および23kbバンドの用量が異なることから、NAIP遺伝子の2つの部分的欠失型は、一般母集団に複数かつ多形性で存在することを示している。
PCRで増幅したNAIPエクソン3〜10でゲノムサザンブロットをプローブすると、III型SMA患者近親家系24561の発症者4例には、エクソン5および6を含む4.8kbのEcoRI/BamHI断片が欠けていることが判明した(図11および14)。この家系についてBamHiで消化したDNAを同様に検出すると、14.5kb バンドの欠失が認められ、前記のようにエクソン5および6の欠失に対応した(図11および14)。やはり近親関係にあると考えられる他のフランス系カナダ人家族2組にも、これと類似した結果が認められている。
SMA患者と非SMA患者のRNAを鋳型とするRT−PCR増幅の結果を図16に示す。
ここで得た知見では、内部に欠失がみられ、かつ切断されたNAIP遺伝子型は、少なくともその一部は転写されていた。機能的タンパクを産生する正常なNAIP遺伝子の転写と、生成しないものの転写とを区別するため、できるだけ大きな転写体をRT−PCR増幅することを試みた。エクソン14の大きさが2.2kbだとすると、これはエクソン2とエクソン13の5’末端を含んだものであることがわかった。第1回目のPCR後の臭化エチジウム染色段階では遺伝子産物は検出されなかった。従って、先の図16の説明のように二次の分枝増幅を行った。
(i) 試料a9のエクソン5の3'末端からのコドン153および190の欠失。
(ii) 資料a2のエクソン5プライマー1864およびエクソン13プライマー1974により増幅した産物において、73番目ヌクレオチドにある終止コドンのエクソン7へのフレームシフトを生じさせるエクソン6の欠失。
(iii)試料a7のエクソン4のプライマー1886とエクソン13のプライマー1974により増幅された遺伝子産物への約50ヌクレオチドの挿入。
(iv) 試料a3のエクソン5のプライマー1864とエクソン13のプライマー1974による増幅産物のエクソン11および12の欠失と合わせて、エクソン5のグルタミン酸コドン番号158の欠失。
(v) 試料a2、a3、a9、a11においてエクソン9プライマー1844およびエクソン13プライマー1974による増幅産物において、終止コドン14ヌクレオチドのエクソン13へのフレームシフトを生じさせるエクソン11および12の欠失。
神経アポトーシス抑制タンパク遺伝子が第5染色体のSMA領域で発見されたことは、SMAの状態がアポトーシス抑制タンパクドメインにおける欠失の結果によるものであることを示している。運動ニューロンが長時間生き残るかどうかは、神経アポトーシス抑制タンパクアが生成されるかどうかにかかっている。このアポトーシス抑制タンパクドメインの欠失は、このタンパク活性を阻害する。我々は、SMA患者全体の17パーセント近くに、第5染色体のエクソン5および6の欠失が認められたことを実証した。
所与の個体におけるSMAの遺伝子型を説明することは、5q13.1領域におけるNAIP遺伝子の異常増幅によって複雑となる。NAIPエクソン・プローブでゲノムDNA含有サザンブロットをプロービングすると、NAIP遺伝子の内部欠失型および切断型コピーから生じたバンドが見られる。従って、一般母集団においては、多様な形態のNAIP遺伝子座が不定数存在するのが正常であり、それだけではSMA突然変異の判定要素とはならず、それ故に、NAIP遺伝子の突然変異分析は複雑となる。NAIP遺伝子座の変異体を含有したゲノムDNAが検出されても、SMA染色体の証拠とはならず、正常な遺伝子が欠損しているかどうかを探求しなければならない。しかし、ゲノム中にエクソン3−4のコピーがないにもかかわらず、臨床上は疾患の形跡がないという珍しい患者を我々は検出した。これは、我々がNAIP遺伝子構造について理解していることと一致する知見である。従って、SMA染色体の同定は、完全なNAIPと、エクソン3−4だけが欠失したNAIP型の両方が不在であることに依存する。それが欠けているかどうかを検定する作業は複雑なものとなる。それは、NAIP遺伝子座でもう一つ、欠失のさらに進んだ形のものそれぞれに正常なNAIP断片が存在するためにである。例えば、SMA患者がそのゲノムにPAC 238D12と30B2、すなわち各々エクソン1−6およびエクソン5、6と11−14が欠失したNAIPの欠失型(図10、11)だけを持っている場合、PCRとサザン・ブロット解析ではNAIPのエクソン5−6だけが欠失した型を持っていることになり、従って、SMA染色体は含んでいないように見られる。我々は、観察した多数のエクソン5−6の欠失したSMA患者の多く、おそらくはその大部分が、実際にこうした構造の染色体を持ち、欠失のないNAIP遺伝子座もエクソン5−6だけが欠失したNAIP型も含んでおらず、何か別の遺伝子座に重度な切断/欠失の認められる型を組み合わせたものを含有していて、その結果、欠失のないNAIPの翻訳ができないのだと考えている。こうした解釈の裏付けとなるのは、我々が、I型SMA組織のRNAにRT−PCRを用いて、正常なNAIP転写体を増幅させることができないという事実による。
NAIPは、CpIAPおよびOpIAPという昆虫細胞のアポトーシス抑制能をもつ二種のバキュロウイルスIAPと高い相同性を示す(表4)。昆虫の細胞アポトーシスはバキュロウイルス感染によって生じるが、これについては十分に実証されており、防衛メカニズムの一種と考えられている。感染した昆虫の細胞が早期に死亡する結果、ウイルスの複製が弱められる(Clem and Miller,1994a)。CpIAPおよびOpIAPは、こうしたアポトーシスメカニズムに対するバキュロウイルス反応を表すものであると考えられる。両タンパクとも互いに関係なく作用し、宿主昆虫細胞アポトーシスを抑制することによってウイルスの増殖を増加させる(Clem and Miller,1994a,1994b)。これらのタンパクは相互にのみ強い類似性を有することが知られているが、最近までcrossphyla タンパクとの配列上の類似性は報告されていなかった。その作用形態は知られてはいないが、DNAとある程度相互作用するものと想定されている。
Family Material
MacKenzie et al,(1993)に記載の方法で、所定の診断基準を満足する患者を対象に臨床的診断をおこなった。記載に従ってDNAを抹消白血球から単離した(MacKenzie et al.,1993)。
ミクロサテライト マーカーによる遺伝子型の決定は、MacKenzie et al.(1993)およびMcLean et al.(1994)に従って行った。既に述べたように、次の5q13.1部位を用いた。D5S112(Brzusowitcz et al.,1990)、D5S351(Hudson et al.,1992)、D5S435(Soares et al.,1993)、D5S557(Francis et al.,1993)、D5S629およびD5S637(Clermont et al.,1994)、D5S684(Brahe et al.,1994)、Y98T、Y97T、Y116T、Y122TおよびCMS(Kleyn et al.,1993)、CAT(Burghes et al.,1994;McLean et al.,1994)およびMAPIB(Lien et al.,1991)。
コスミドとYAC連続系列についてはRoy et al.,(1994)に概要が述べられている。PACはloannou et al.,(1994)の記載に従って作製した。以上の方法を用いて合計175,000個のクローンからなるPACライブラリを3つ作製し、マイコロタイター皿に個別クローンとして増殖させた(lannou et al.,結果未公表)。3つのライブラリ(LLNL PAC 1、RPCI1、RPCI2と命名)を5q13.1STS'sでスクリーニングした。ポジティブなPACを配列して、互いに連続的にオーバーラップするように配置し、さらにSTSを加えて解析するとともに、単一コピーのゲノムDNAとcDNAプローブを用いてPAC DNAを含有するサザンブロットをプロービングした。
PACゲノムDNAインサートをBamHI,BamHI/Notl、全および部分的Sau3aI(5kbのインサートサイズに合わせて選択)で消化することにより、PAC 125D9インサートを含む4種のゲノム・ライブラリーを作製し、これをBlue scriptベクターにサブクローニングした。Chen et al.(1994)の方法により、部分Sau3AI消化ライブラリーから得た5kbのクローン200個について両末端の約400bpの配列を決定した。
プライマーの配列は下記の通りである。
7μgの完全なRNAを用い、20μlの反応溶液でcDNAを合成した。このRNAを5分間95℃で変性し、37℃で冷却した。5μl5×の逆転写緩衝液、2μl0.1M DTT、412.5mM dNTP、8単位 RNAsin、25ng cDNAプライマー(1285)および400単位 HMLV(Gibco,BRL)を添加後、42℃で1時間逆転写反応を行った。その後、50μlPCRの反応では鋳型として1μlのDNAを用いた。この一次PCR1μlを鋳型に用いて二次PCR増幅を行った。
一次DNA配列データをTEDプログラムで編集した(Gleeson and Hillier,1991)。部分Sau3AI消化ライブラリーの部分的にアミノ酸配列が決定されている5kbクローン200のうちなるべく多数を、XBAP Stadenパッケージにより配列し、オーバーラップする列にした(Dear and Staden,1991)。また、GCG Sequence analysis(Genetics Computer Group,1991)により配列データを組立て、分析した。Procite proteinデータベース(Bairoch and Butcher,1993)を検索して蛋白質領域の相同性を検出した。MEMSTATプログラムも使ってトランスメンブランドメイン領域の検索もおこなった(Jones e tal.,1994)。
Claims (8)
- 実質的に配列番号:1に示される塩基配列を含むDNA、または、前記DNAにストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、神経細胞アポトーシス抑制タンパクをコードするDNA。
- 実質的に配列番号:2に示されるアミノ酸配列をコードするDNA。
- 配列番号1の1位塩基から4092位塩基までのヌクレオチド配列のエクソン1から16の少なくとも1に対応するcDNA、またはmRNAである精製ヌクレオチド配列。
- 配列番号:1に示される塩基配列を含むDNA、又は配列番号1の1位塩基から4092位塩基までのヌクレオチド配列のエクソン1から16の少なくとも1に対応するcDNAにストリンジェントな条件下でハイブリダイズする、少なくとも20連続ヌクレオチドを有するヌクレオチド配列を含む、請求項1〜3のいずれか一項記載のDNAまたはヌクレオチド配列を検出するためのヌクレオチドプローブ。
- DNAまたはRNAである、請求項4のヌクレオチドプローブ。
- 請求項1〜3のいずれか一項記載のDNAまたはヌクレオチド配列に相補的である、少なくとも20連続ヌクレオチドを有するヌクレオチド配列を含む、請求項1〜3のいずれか一項記載のDNAまたはヌクレオチド配列を増幅するためのPCRプライマー。
- 配列番号:3から20より選択されるヌクレオチド配列からなる請求項6のPCRプライマー。
- 請求項1〜3のいずれか一項記載のDNAまたはヌクレオチド配列を含むクローニングベクターまたは発現ベクター。
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