JP4100874B2 - セラミックグリーン体およびセラミック電子部品の製造方法 - Google Patents

セラミックグリーン体およびセラミック電子部品の製造方法 Download PDF

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【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、セラミックグリーン体と、このセラミックグリーン体を用いたセラミック電子部品の製造方法と、に関する。
【0002】
【従来の技術】
セラミック電子部品の一例としての積層セラミックコンデンサは、通常、誘電体層用ペーストと内部電極層用ペーストとを交互に複数積層して得られるグリーンチップ(焼成前素子本体)を同時焼成して製造される。
【0003】
グリーンチップを得る方法としては、キャリアフィルム上に誘電体層ペーストを用いてドクターブレード法などによりセラミックグリーンシートを形成し、この上に内部電極層用ペーストを所定パターンで印刷した後、これらを1層ずつ剥離、積層していく方法(シート法)が知られている。また、たとえばスクリーン印刷法を用いて、キャリアフィルム上に誘電体層用ペーストと内部電極層用ペーストとを交互に複数印刷した後、キャリアフィルムを剥離する方法(印刷法)も知られている。
【0004】
これらのシート法および印刷法は、いずれも内部電極層用ペーストを用いて内部電極パターンを印刷により形成するものであることから、原料金属粒子の粒子サイズまたはスクリーンの厚さなどにより内部電極の薄層化に限界があった。
【0005】
そこで、内部電極層用ペーストを用いず、代わりにキャリアフィルム上に各種薄膜形成方法により形成された金属膜を用い、これを内部電極パターンとして、セラミックグリーンシートの表面に転写する方法(転写法)が提案されている。
【0006】
その反面、接着性がほとんどない金属膜を、一般に結合剤の含有量が少ないセラミックグリーンシートの表面に欠陥なく転写することは困難であることから、接着層を介して、金属膜をセラミックグリーンシートの表面に形成することとしている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
このように、各種方法により製造されたグリーンチップを焼成して得られる積層セラミックコンデンサは、セラミックと金属とをセラミックの焼結温度で同時焼成することから、デラミネーションやクラックなどの構造欠陥を、コンデンサの内部に生じることがあった。
【0008】
なお、文献:「ニューケラス3、積層セラミックコンデンサ(学献社)」では、焼成前に行われる脱バインダ処理工程において、セラミックグリーンシートに含まれる結合剤(バインダ)が急激に分解されることにより、コンデンサ内部の構造欠陥を生じることが示されている(同文献57〜58頁参照)。そして、バインダの急激な分解を避けるためには、昇温速度をできるだけ緩やかにすることが有効であることも開示されている。
【0009】
本発明の目的は、焼成後に構造欠陥を生じるおそれが少ないグリーンチップなどのセラミックグリーン体、およびこれを用いた積層セラミックコンデンサなどのセラミック電子部品の製造方法を提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、所定パターンの金属膜を接着層を介してセラミックグリーンシートの表面に転写して得られるセラミックグリーン体を用いて積層セラミックコンデンサなどのセラミック電子部品を製造するに際し、セラミックグリーンシートに含まれる結合剤と、セラミックグリーンシートと金属膜との間に介在された接着層に含まれる結合剤とを特定の樹脂で構成することにより、電子部品内部の構造欠陥を少なくできることを見出した。
【0011】
すなわち、本発明に係るセラミックグリーン体は、
第1結合剤を含むセラミックグリーンシートと、
前記セラミックグリーンシートの表面に、第2結合剤を含む接着層を介して所定パターンで形成された金属膜とを有し、
前記各結合剤の熱分解温度を、第1結合剤:T1℃、第2結合剤:T2℃とした場合に、T1−T2<20の関係式を満足し、
前記第2結合剤を含む接着層が、熱分解過程でカーボンとならない化合物で構成してあることを特徴とする。
【0012】
本発明に係るセラミック電子部品の製造方法は、
第1結合剤を含むセラミックグリーンシートの表面に、第2結合剤を含む接着層を介して所定パターンで金属膜が形成され、
前記各結合剤の熱分解温度を、第1結合剤:T1℃、第2結合剤:T2℃とした場合に、T1−T2<20の関係式を満足し、
前記第2結合剤を含む接着層が、熱分解過程でカーボンとならない化合物で構成されるセラミックグリーン体を有する焼成前素子本体を脱バインダ処理する工程と、
前記脱バインダ後の焼成前素子本体を焼成する工程とを有する。
【0013】
本明細書において、熱分解温度(T1,T2)とは、熱重量分析(TG)を用い、大気中雰囲気において、昇温速度10℃/分にて600℃まで第2結合剤成分を加熱していき、重量が、初期重量100から0(ゼロ)になった時点での温度を意味する。
熱分解過程でカーボンとならない化合物としては、その構造中に、(−C=C−)や(−C≡C−)の不飽和結合を多く含む高分子量の有機化合物や、芳香族系以外の有機化合物が挙げられる。
【0014】
前記焼成前素子本体は、前記セラミックグリーン体を有していればよく、前記セラミックグリーン体の単層で構成してあってもよいし、あるいは前記セラミックグリーン体を、他のセラミックグリーン体および/または他のセラミックグリーンシートとともに積層して得られる積層体で構成してあってもよい。積層セラミックコンデンサなどの積層セラミック電子部品を製造する場合には、前記焼成前素子本体は、前記積層体で構成される。
【0015】
好ましくは、前記脱バインダ処理を、5〜300℃/時間の昇温速度、150〜400℃の保持温度、および0.5〜24時間の保持時間で行う。
【0016】
好ましくは、前記脱バインダ処理前に、前記焼成前素子本体を切断する工程をさらに有する。
【0017】
好ましくは、前記金属膜が、前記セラミックグリーンシートの表面に50g以上の接着力で形成してある。
【0018】
本明細書において、金属膜の接着力は、リード線(φ1.2mm)を金属膜の表面に瞬間接着剤を用いて接着させ、当該リード線を引張試験機(商品名:MODEL1311D、AIKOH ENGINEERING社製)につなぎ、金属膜の部分のみを引張速度:2mm/分で引っ張る過程で、金属膜がセラミックグリーンシートから剥がれる際の負荷荷重を意味する。
【0019】
好ましくは、前記接着層における第2結合剤の含有量が50〜100重量%である。
【0020】
好ましくは、前記接着層の厚みが0.1〜10μmである。
【0021】
好ましくは、前記セラミックグリーンシートにおける第1結合剤の含有量が1〜25重量%である。
【0022】
好ましくは、前記金属膜が卑金属を含む。
【0023】
なお、本発明に係るセラミックグリーン体は、たとえば、基体の表面に所定パターンで金属膜が形成され、前記金属膜の表面に第2結合剤を含む接着層が形成されている金属膜転写用部材の接着層側を、第1結合剤を含むセラミックグリーンシートに接触させる工程と、前記セラミックグリーンシートから前記基体を引き離し、前記セラミックグリーンシートの表面に前記接着層を介して前記所定パターンの金属膜を転写する工程とを有する製造方法により製造することができる。
【0024】
本発明に係るセラミックグリーン体の製造に用いることができる金属膜転写用部材は、たとえば、基体の表面に所定パターンで金属膜を形成する工程と、前記金属膜の表面に第2結合剤を含む接着層を形成する工程とを有する製造方法により製造することができる。
【0025】
前記接着層の形成方法は、特に限定されず、たとえば、電着塗装法や噴霧塗装法、印刷法などの方法を挙げることができる。ただし、金属膜表面にのみ形成できる観点からは電着塗装法により形成することが好ましい。
【0026】
【作用】
本発明に係るセラミックグリーン体では、セラミックグリーンシートに含まれる第1結合剤の熱分解温度(T1)と、接着層に含まれる第2結合剤の熱分解温度(T2)とを特定の関係式を満足するように選択し、しかも第2結合剤を含む接着層が熱分解過程でカーボンとならない化合物で構成してある。
【0027】
このため、このセラミックグリーン体を用いて脱バインダ処理しても、セラミックスと金属膜との間でノンラミネーションが発生するおそれは少なく、焼成後のセラミック電子部品内部にデラミネーションなどの構造欠陥を生じるおそれは少ない。その結果、本発明のセラミックグリーン体を用いて製造されたセラミック電子部品は、電気特性、物理特性および耐久特性などの種々の特性の低下を引き起こすことはない。
【0028】
本発明において、前記金属膜を前記セラミックグリーンシートの表面に50g以上の接着力で形成することで、金属膜がセラミックグリーンシートの表面に確実に固定されるので、セラミックグリーン体を積層する際に金属膜の位置ずれや剥がれを生じるおそれは少ない。
【0029】
従って、金属膜の位置ずれにより生じうるショート不良や、金属膜の剥がれにより生じうるノンラミネーションが発生するおそれは少なく、その結果、焼成後のセラミック電子部品内部の構造欠陥が防止される。
【0030】
セラミック電子部品としては、特に限定されず、たとえば積層セラミックコンデンサ、圧電素子、チップインダクタ、チップバリスタ、チップサーミスタ、チップ抵抗、その他の表面実装(SMD)チップ型電子部品などが挙げられる。
【0031】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を、図面に示す実施形態に基づき説明する。
図1は本実施形態に係る積層セラミックコンデンサの一部破断断面図、図2は図1の積層セラミックコンデンサの平面図、図3は図1および図2に示すコンデンサの製造過程に用いるセラミックグリーン体の斜視図、図4は図3のIV−IV線に沿う断面図、図5はセラミックグリーン体の製造過程に用いる金属膜転写用部材の斜視図、図6は図5のVI−VI線に沿う断面図、図7(A)〜図7(F)はセラミックグリーンシートへの金属膜の転写方法の一例を示す工程図、図8(A)および図8(B)は図1および図2に示すコンデンサの製造過程に用いるセラミックグリーン体の斜視図である。
【0032】
本実施形態では、セラミック電子部品の一例としての積層セラミックコンデンサの構成と、前記積層セラミックコンデンサの製造に用いるセラミックグリーン体の構成およびその製造方法と、前記セラミックグリーン体を用いた積層セラミックコンデンサの製造方法とを、この順で説明することとする。
【0033】
積層セラミックコンデンサ
図1および図2に示すように、本実施形態に係る積層セラミックコンデンサ2は、コンデンサ素体4と、第1端子電極6と、第2端子電極8とを有する。コンデンサ素体4は、誘電体層10と、第1内部電極層12と、第2内部電極層14とを有し、誘電体層10の間に、第1内部電極層12と第2内部電極層14とが交互に積層してある多層構造を持つ。各第1内部電極層12の一端は、コンデンサ素体4の第1端部4aの外側に形成してある第1端子電極6の内側に対して電気的に接続してある。また、各第2内部電極層14の一端は、コンデンサ素体4の第2端部4bの外側に形成してある第2端子電極8の内側に対して電気的に接続してある。
【0034】
本実施形態では、内部電極層12,14は、金属膜22(図3〜4参照)をセラミックグリーンシートに転写して形成され、金属膜22と同じ材質で構成されるが、その厚みは、焼成による水平方向の収縮分だけ金属膜22よりも厚くなる。
【0035】
誘電体層10の材質は、特に限定されず、たとえばチタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウムおよび/またはチタン酸バリウムなどの誘電体材料で構成される。各誘電体層10の厚みは、特に限定されないが、数μm〜数百μmのものが一般的である。
【0036】
端子電極6,8の材質も特に限定されないが、通常、銅や銅合金、ニッケルやニッケル合金などが用いられるが、銀や銀とパラジウムの合金なども使用することができる。端子電極6および8の厚みも特に限定されないが、通常10〜50μm程度である。
【0037】
積層セラミックコンデンサ2の形状やサイズは、目的や用途に応じて適宜決定すればよい。積層セラミックコンデンサ2が直方体形状の場合は、通常、縦(0.6〜5.6mm、好ましくは0.6〜3.2mm)×横(0.3〜5.0mm、好ましくは0.3〜1.6mm)×厚み(0.3〜1.9mm、好ましくは0.3〜1.6mm)程度である。
【0038】
セラミックグリーン体
本実施形態に係る積層セラミックコンデンサ2の製造に用いるセラミックグリーン体を説明する。
【0039】
図3および図4に示すように、本実施形態に係るセラミックグリーン体42は、
セラミックグリーンシート10aを有する。セラミックグリーンシート10aの表面には、接着層24を介して所定パターンの金属膜22が形成してある。
【0040】
セラミックグリーンシート10aは、第1結合剤と誘電体材料とを含有する。
【0041】
第1結合剤としては、有機溶剤可溶系であってもよいし、あるいは水可溶系もしくは水−アルコール可溶系であってもよい。有機溶剤可溶系の結合剤としては、たとえばエチルセルロース、ポリビニルブチラール、アクリル樹脂などが挙げられる。水可溶系もしくは水−アルコール可溶系の結合剤としては、たとえばポリビニルアルコール、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、水溶性アクリル樹脂などが挙げられる。
【0042】
第1結合剤の熱分解温度をT1(℃)とした場合、T1は、好ましくは600℃以下、より好ましくは500℃以下である。なお、T1の下限は、好ましくは200℃である。熱分解温度の測定法は、前述したとおりである。
【0043】
第1結合剤のセラミックグリーンシート10aに対する含有量は、好ましくは1〜25重量%、より好ましくは5〜12.5重量%である。
【0044】
誘電体材料としては、複合酸化物や酸化物となる各種化合物、たとえば炭酸塩、硝酸塩、水酸化物、有機金属化合物などから適宜選択され、適宜混合して用いることができる。
【0045】
誘電体材料のセラミックグリーンシート10aに対する含有量は、好ましくは70〜99重量%、より好ましくは80〜95重量%である。
【0046】
セラミックグリーンシート10aの厚みは、好ましくは0.5〜30μm、より好ましくは0.5〜10μmである。
【0047】
金属膜22の組成は、特に限定されないが、Ag、Cu、Pd、Niなどの金属もしくはこれらの合金が好ましい。金属膜22を電気メッキ、無電解メッキにより形成する場合には、さらにP、B、S、Cなどの元素が含有してあってもよい。金属膜22の厚さD1(図4参照)は、好ましくは0.1〜5μm、より好ましくは0.1〜1.5μm程度である。金属膜22は、単一の層で構成してあってもよく、あるいは2以上の組成の異なる複数の層で構成してあってもよい。
【0048】
接着層24は、第2結合剤を含有する。
【0049】
本発明では、第2結合剤を含む接着層24は、熱分解過程でカーボンとならない化合物で構成される。第2結合剤を含む接着層24が熱分解過程でカーボンとなる化合物で構成されていると、このカーボンによって金属膜22とセラミックグリーンシート10aとの間でノンラミネーションが発生してしまい、その結果、焼成後にコンデンサ内部の構造欠陥が生じてしまう。
【0050】
熱分解過程でカーボンとならない化合物としては、たとえば、その構造中に、(−C=C−)や(−C≡C−)の不飽和結合を多く含む高分子量の有機化合物や、芳香族系以外の有機化合物が挙げられる。このような化合物としては、たとえば、エチルセルロース、ポリビニルブチラールなどの有機溶剤可溶系;メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースなどの水可溶系もしくは水−アルコール可溶系;が挙げられるが、本発明の範囲を満たすものであれば特に限定されない。
【0051】
第2結合剤の熱分解温度をT2(℃)とした場合、T2は、好ましくは600℃未満、より好ましくは500℃以下である。なお、T2の下限は、好ましくは200℃である。熱分解温度の測定法は、前述したとおりである。
【0052】
第2結合剤の接着層24に対する含有量は、好ましくは50〜100重量%、より好ましくは67〜100重量%である。
【0053】
接着層24には、可塑剤その他の添加剤が含有してあってもよい。特に可塑剤を含有させることで、セラミックグリーンシート10aに対する金属膜22の接着力を調整することが可能となる。可塑剤としては、たとえばフタル酸エステル類、エタノールアミンなどが挙げられる。添加剤の接着層24に対する含有量は、好ましくは0〜50重量%程度である。
【0054】
接着層24は、金属膜22と同等程度に薄く、かつ均一であることが好ましい。具体的な厚さD2(図4参照)は、好ましくは0.1〜10μm、より好ましくは0.1〜1μmである。
【0055】
本発明では、上記第1結合剤の熱分解温度T1と、上記第2結合剤の熱分解温度T2とは、T1−T2<20の関係式を満足する。このような関係式を満足することにより、セラミックグリーンシート10aと金属膜22との間でノンラミネーションが発生せず、焼成後のコンデンサ内部にデラミネーションなどの構造欠陥を生じるおそれが少なくなる。
【0056】
本発明では、金属膜22が接着層24を介してセラミックグリーンシート10aに対し、好ましくは50g以上、より好ましくは60g以上の接着力で形成するように、上記第1結合剤および第2結合剤を選択する。接着力が50g未満であると、金属膜22がセラミックグリーンシートの表面に確実に固定できず、セラミックグリーン体を積層する際に金属膜22の位置ずれや剥がれが生じうる。金属膜22の位置ずれによりショート不良を生じるおそれがあり、金属膜22の剥がれによりノンラミネーションを生じるおそれがある。
【0057】
セラミックグリーン体の製造方法
本実施形態に係るセラミックグリーン体42の製造方法の一例を説明する。
【0058】
図3および図4に示すセラミックグリーン体42は、たとえば図5および図6に示す金属膜転写用部材30と、たとえば図7(E)に示すセラミックグリーンシート10aとを用い、以下のようにして製造できる。
【0059】
図5および図6に示すように、本実施形態に係る金属膜転写用部材30は、基体20を有する。基体20の表面には、パターン化された金属膜22が形成してある。金属膜22の表面には、接着層24が形成してある。
【0060】
基体20は、金属板、金属箔などの導電性基体、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンなどの絶縁性基体、あるいは実質的に剥離しないように導電性薄膜を絶縁性基体の表面に形成またはラミネートした複合基体のいずれでも良いが、本実施形態では、導電性基体を採用してあり、背面を絶縁被覆してある。なお、基体20の表面粗さは、形成する金属膜の厚さと比較して充分に小さいことが望ましい。基体20の厚みは、10〜100μm程度とすればよい。
【0061】
金属膜22の組成、厚みなどは、上述したとおりである。接着層24の組成、厚みなども上述したとおりである。
【0062】
本実施形態に係る金属膜転写用部材30は、たとえば以下の工程を経て製造される。
【0063】
まず、たとえば図7(A)に示すように、基体20の表面に、所望のパターン形状の開口部62を有するメッキレジスト層60を形成する。メッキレジスト層60の形成方法は、スクリーン印刷法などの印刷法を用いてもよいが、その他に感光性ドライフィルムを基体20の表面に貼付して、金属マスクを介して露光した後に現像するフォトリソグラフ法を用いて形成してもよい。メッキレジスト層60の材質は、金属膜22を形成するのに用いられるメッキ液の種類に応じて適宜選択すれば良い。メッキレジスト層60の厚さは、1〜30μm程度とすれば良い。
【0064】
次に、図7(B)に示すように、基体20の表面に形成されたメッキレジスト層60の開口部62に、電気メッキや無電解メッキなどの湿式成膜法により金属膜22を形成する。
【0065】
電気メッキ法により金属膜22を形成する場合のメッキ浴としては、たとえばニッケル金属膜を製膜する場合は、硫酸ニッケル、塩化ニッケル、ほう酸を主成分とするいわゆるワット浴、スルファミン酸ニッケル、臭化ニッケル、ほう酸を主成分とするスルファミン酸浴が、また、銅金属膜を製膜する場合はピロリン酸銅、ピロリン酸カリウムを主成分とするいわゆるピロ銅浴等の広く使われているメッキ浴が使用できる。また、上記主成分以外に、応力調整剤、界面活性剤、レベリング剤等の添加剤を含んでいても良い。
【0066】
無電解メッキ法により金属膜22を形成する場合のメッキ浴としては、たとえばニッケル合金膜の場合には、ホスフィン酸ナトリウムを還元剤としたニッケル−リンタイプの浴、水素化ほう素ナトリウム、ジメチルアミンボランなどを還元剤としたニッケル−ほう素タイプの浴などを用いれば良いが、積層セラミック電子部品の電極として用いる場合には、焼結時のセラミックとの反応を考慮して、P、Bなどの共析量が少ない浴を選択するのが望ましい。
【0067】
次いで、図7(C)に示すように、基体20上に形成された金属膜22の表面に接着層24を積層する。
【0068】
接着層24を金属膜22の表面に形成するには、たとえば、金属膜22が表面に形成された基体20を、第2結合剤を含有する溶液中に浸漬する。
【0069】
次いで、図7(D)に示すように、メッキレジスト層60を剥離する。その結果、基体20の表面に所定パターンの金属膜22が形成され、前記金属膜22の表面に接着層24が形成された金属膜転写用部材30が得られる。
【0070】
図7(E)に示す本実施形態に係るセラミックグリーンシート10aは、たとえば以下の工程を経て製造される。
【0071】
まず、誘電体ペーストを準備する。誘電体ペーストは、誘電体材料と有機ビヒクルとを混練して得られた有機溶剤系ペースト、または水溶性溶剤系ペーストで構成される。
【0072】
誘電体材料としては、上述したとおりである。有機ビヒクルとは、バインダ(第1結合剤)を有機溶剤中に溶解したものであり、バインダとしては、上述したとおりである。有機溶剤としては、特に限定されず、テルピネオール、ブチルカルビトール、アセトン、トルエンなどが挙げられる。また、水溶性溶剤系ペーストに用いられる水溶性溶剤としては、水に水溶性バインダ、分散剤などを溶解させた溶剤が用いられる。水溶系バインダ(第1結合剤)としては、上述したとおりである。
【0073】
上述した誘電体ペーストの有機ビヒクルの含有量は特に限定されず、通常の含有量、たとえばバインダ(第1結合剤)は1〜5重量%程度、溶剤は10〜50重量%程度とすればよい。誘電体ペースト中には、必要に応じて各種分散剤、可塑剤、ガラスフリット、絶縁体などから選択される添加物が含有されても良い。
【0074】
この誘電体ペーストを用いて、ドクターブレード法などにより、図7(E)に示すセラミックグリーンシート10aをキャリアフィルム(図示省略)上に剥離可能に形成する。
【0075】
以下に示す説明では、金属膜転写用部材30と、セラミックグリーンシート10aとを用い、図8(A)に示す第1セラミックグリーン体42aを、直接転写法にて製造する場合を例示する。
【0076】
まず、図7(E)に示すように、キャリアフィルム(図示省略)上に剥離可能に形成されたセラミックグリーンシート10aの表面に、図5および図6に示す金属膜転写用部材30の接着層24を接触するように積層させ、両者を、好ましくは30〜150℃、より好ましくは50〜120℃の温度、および好ましくは0.01〜10MPa、より好ましくは0.01〜1MPaの圧力にて加熱加圧する。その結果、接着層24の作用により、所定パターンの金属膜22は、セラミックグリーンシート10aの表面に良好に接着する。
【0077】
次いで、図7(F)に示すように、基体20を引き剥がすことでセラミックグリーンシート10aの表面に金属膜22(=12a)が転写され、図8(A)に示す第1セラミックグリーン体42a、すなわちセラミックグリーンシート10aの表面に第1内部電極層12(図1参照)となる金属膜のパターン12aが形成された第1セラミックグリーン体42aが得られる。
【0078】
図8(B)に示す第2セラミックグリーン体42b、すなわち別のセラミックグリーンシート10aの表面に第2内部電極層14(図1参照)となる金属膜のパターン14aが形成された第2セラミックグリーン体42bも、同様にして得ることができる。
【0079】
積層セラミックコンデンサの製造方法
本実施形態に係る積層セラミックコンデンサ2の製造方法の一例を説明する。積層セラミックコンデンサ2は、図8(A)に示す第1セラミックグリーン体42aと、図8(B)に示す第2セラミックグリーン体42bとを用い、以下のようにして製造される。
【0080】
まず、第1セラミックグリーン体42aと第2セラミックグリーン体42bとを、必要に応じて何らパターンが形成されていないセラミックグリーンシート10aと共に複数枚積層し、切断線16に沿って切断することでグリーンチップを得る。
【0081】
次に、グリーンチップに対して脱バインダ処理および焼成処理を行う。
【0082】
グリーンチップの脱バインダ処理は、焼成前に行われるが、特に金属膜(焼成後には内部電極12,14になる)にNiやNi合金などの卑金属を含む場合には、空気雰囲気において、昇温速度を5〜300℃/時間、より好ましくは10〜100℃/時間、保持温度を150〜400℃、より好ましくは200〜300℃、保持時間を0.5〜24時間、より好ましくは5〜20時間とする。
【0083】
グリーンチップの焼成雰囲気は、金属膜の種類に応じて適宜決定すればよいが、NiやNi合金などの卑金属を含む場合には、焼成雰囲気の酸素分圧を10−7〜10−3Paとすることが好ましい。酸素分圧が低すぎると金属膜の金属が異常焼結を起こして途切れてしまい、酸素分圧が高すぎると金属膜が酸化される傾向にある。また、焼成時の保持温度は1100〜1400℃、より好ましくは1200〜1380℃である。この保持温度が低すぎると緻密化が不充分となり、保持温度が高すぎると金属膜の金属の異常焼結による電極の途切れまたは内部電極材質の拡散により容量温度特性が悪化する傾向にある。
【0084】
これ以外の焼成条件としては、昇温速度を50〜500℃/時間、より好ましくは200〜300℃/時間、温度保持時間を0.5〜8時間、より好ましくは1〜3時間、冷却速度を50〜500℃/時間、より好ましくは200〜300℃/時間とし、焼成雰囲気は還元性雰囲気とすることが望ましく、雰囲気ガスとしてはたとえば窒素ガスと水素ガスとの混合ガスを加湿して用いることが望ましい。
【0085】
還元性雰囲気で焼成した場合は、コンデンサチップの焼結体にアニールを施すことが望ましい。上述した脱バインダ処理、焼成およびアニール工程において、窒素ガスや混合ガスを加湿するためには、たとえばウェッターなどを用いることができる。この場合の水温は5〜75℃とすることが望ましい。
【0086】
以上のようにして、図1および図2に示すコンデンサ素体4が得られる。この得られたコンデンサ素体4の両端部に、端子電極6および8を形成すれば、積層セラミックコンデンサ2が得られる。
【0087】
本実施形態に係るセラミックグリーン体42では、セラミックグリーンシート10aに含まれる第1結合剤の熱分解温度(T1)と、接着層24に含まれる第2結合剤の熱分解温度(T2)とを特定の関係式を満足するように選択し、しかも第2結合剤を含む接着層24を、熱分解過程でカーボンとならない化合物で構成してある。
【0088】
このため、このセラミックグリーン体42を用いて脱バインダ処理しても、セラミックスと金属膜との間でノンラミネーションが発生するおそれは少なく、焼成後の積層セラミックコンデンサ2の内部にデラミネーションなどの構造欠陥を生じるおそれは少ない。その結果、製造される積層セラミックコンデンサ2に、電気特性、物理特性および耐久特性などの種々の特性の低下を引き起こすことはない。
【0089】
さらに、金属膜22をセラミックグリーンシート10aの表面に、好ましくは50g以上、より好ましくは60g以上の接着力で形成することで、金属膜22がセラミックグリーンシート10aの表面に確実に固定されるので、セラミックグリーン体42を積層する際に金属膜22の位置ずれや剥がれが生じるおそれは少ない。
【0090】
従って、金属膜22の位置ずれにより生じうるショート不良や、金属膜22の剥がれにより生じうるノンラミネーションが発生するおそれは少なく、その結果、焼成後の積層セラミックコンデンサ2の内部の構造欠陥が防止される。
【0091】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々なる態様で実施し得ることは勿論である。
【0092】
たとえば、上述した実施形態では、セラミックグリーンシート10aの表面に電極のパターン12aを形成する方法として直接転写法を採用しているが、これに限定されず、1種以上の中間媒体を介して間接的に電極パターン12aを形成する間接転写法を採用してもよい。電極パターン12aをセラミックグリーンシート10aの表面に直接転写せず、一旦、紙などの高い強度を持つ中間媒体(図示省略)に転写しておき、これを用いてセラミックグリーンシート10aの表面に前記電極パターン12aを転写させる間接転写法を用いることにより、電極パターン12aのより完全な転写が可能となる。
【0093】
また、上述した実施形態では、セラミック電子部品として、積層型のセラミックコンデンサを例示したが、これに限定する趣旨ではなく、本発明のセラミックグリーン体の単層で製造される単層型のものであってもよい。
【0094】
【実施例】
以下、本発明を、さらに詳細な実施例に基づき説明するが、本発明はこれら実施例に限定されない。
【0095】
実施例1
金属膜転写用部材の作製
まず、以下に示すようにして、金属膜転写用部材を作製した。
【0096】
ステンレス板を基体として準備した。次いで、この基体の一方の面の全面を絶縁した後、基体の他方の面にメッキレジストを形成して、開口部を有する所定形状のパターンを形成した。ステンレス板に対する前処理として、アルカリ電解脱脂、および塩酸酸洗を行った後、剥離処理液(日本化学産業製、ニッカノンタック)に1分間浸漬して易剥離化処理を行った。
【0097】
次いで、この所定パターンのメッキレジストが片面に形成された基体を、スルファミン酸ニッケルメッキ浴に浸漬し、メッキレジストの開口部内にニッケルメッキ膜を形成した。ニッケルメッキ膜の厚さを、蛍光X線膜厚計を用いて測定したところ、平均で0.5μmであった。
【0098】
なお、スルファミン酸ニッケルメッキ浴の組成は、スルファミン酸ニッケル:300g/L、臭化ニッケル:5g/L、ほう酸:30g/L、およびナフタリンジスルホン酸ナトリウム(応力減少剤):0.5g/Lとを含有したものであった。メッキ処理は、温度50℃、pH4.5、陰極電流密度0.5A/dmにて6分間行った。
【0099】
次いで、この所定パターンのニッケルメッキ膜が形成されたステンレス板を、予め固形分濃度が1%となるように接着層成分をトルエンに溶解しておいた溶液中に、1秒間浸漬することによって、ニッケルメッキ膜の表面に接着層を形成した。接着層の外観は透明で、全面的に干渉色を呈しており、重量増加量からその厚さを求めたところ0.6μmであった。接着層の組成は、第2結合剤としてのアクリル系樹脂A(熱分解温度T2=400℃):67重量%およびフタル酸エステル系可塑剤:33重量%で構成してあった。
【0100】
次いで、メッキレジストのみを除去して金属膜転写用部材を得た。
【0101】
セラミックグリーン体の作製
次に、得られた金属膜転写用部材を用い、セラミックグリーン体を複数枚作製した。
【0102】
得られた金属膜転写用部材の接着層側を、PETフィルム上に形成された厚さ4μmのセラミックグリーンシート上に重ね合わせ、50℃−0.01MPa−1分の加熱加圧処理した後、ステンレス板をセラミックグリーンシートの表面から引き離してセラミックグリーン体を得た。
【0103】
なお、セラミックグリーンシートの組成は、第1結合剤としてのアクリル系樹脂(熱分解温度T1=410℃):5重量部、チタン酸バリウム:90重量部、および可塑剤:5重量部を含有するものであった。本実施例では、T1−T2<20の関係式を満足していた。
【0104】
そして、セラミックグリーンシート上には、金属膜が、転写不良なく良好に転写されていた。セラミックグリーンシートに対するニッケルメッキ膜の接着力を調べたところ150gと良好であった。ニッケルメッキ膜の接着力は、リード線(φ1.2mm)をニッケルメッキ膜の表面に瞬間接着剤を用いて接着させ、当該リード線を引張試験機(商品名:MODEL1311D、AIKOH ENGINEERING社製)につなぎ、ニッケルメッキ膜の部分のみを引張速度:2mm/分で引っ張る過程で、金属膜がセラミックグリーンシートから剥がれる際の負荷荷重とした。
【0105】
なお、第1および第2結合剤の熱分解温度(T1,T2)は、熱重量分析(TG)を用い、大気中雰囲気において、昇温速度10℃/分にて600℃まで前記第1および第2結合剤成分を加熱していき、重量が、初期重量100から0(ゼロ)になった時点での温度とした。
【0106】
セラミック焼成体の作製
得られたセラミックグリーン体を10枚積層、圧着してグリーンチップを得た後、脱バインダ処理と、焼成とを行って、セラミック焼成体を得た。脱バインダ処理は、空気雰囲気において、昇温速度:50℃/時間、保持温度:250℃、保持時間:10時間の条件で行った。
また、焼成は、加湿したN+H混合ガス雰囲気において、昇温速度:300℃/時間、保持温度:1250℃、保持時間:5時間、冷却速度:300℃/時間の条件で行った。焼成の際の雰囲気ガスの加湿には、水温を35℃としたウェッターを用いた。
【0107】
デラミネーションの発生率は0%であった。
【0108】
デラミネーションの発生率は、100個のセラミック焼成体の側面を研磨し、光学顕微鏡にて研磨面全長分を観察した結果、デラミネーションが全く観察されなかった焼成体の個数を100で除した値である。
【0109】
これらの結果を表1に示す。
なお、第2結合剤を含む接着層の熱分解過程でのカーボンの有無は、以下の方法により判定した。すなわちカーボンの有無は、熱重量分析(TG)を用い、大気中雰囲気において、昇温速度10℃/分にて600℃まで前記第2結合剤を含む接着層成分を加熱していき、冷却後、目視にて確認した。
【0110】
実施例2
接着層の組成を、第2結合剤としてのアクリル系樹脂A(熱分解温度T2=400℃):100重量%で構成し、第1結合剤としてのアクリル系樹脂(熱分解温度T1=400℃)で構成した以外は、実施例1と同様にして、セラミックグリーン体およびセラミック焼成体を得た。本実施例では、T1−T2<20の関係式を満足していた。
【0111】
得られたセラミックグリーン体を用いてニッケルメッキ膜の接着力を調べたところ60gと良好であった。デラミネーションの発生率は5%であった。これらの結果を表1に示す。
【0112】
実施例3
接着層の組成を、第2結合剤としてのアクリル系樹脂B(熱分解温度T2=460℃):100重量%で構成した以外は、実施例2と同様にして、セラミックグリーン体およびセラミック焼成体を得た。本実施例では、T1−T2<20の関係式を満足していた。
【0113】
得られたセラミックグリーン体を用いてニッケルメッキ膜の接着力を調べたところ100gと良好であった。デラミネーションの発生率は5%であった。これらの結果を表1に示す。
【0114】
実施例4
接着層の組成を、第2結合剤としてのブチラール系樹脂C(熱分解温度T2=490℃):100重量%で構成し、第1結合剤としてのアクリル系樹脂(熱分解温度T1=450℃)で構成した以外は、実施例1と同様にして、セラミックグリーン体およびセラミック焼成体を得た。本実施例では、T1−T2<20の関係式を満足していた。
【0115】
得られたセラミックグリーン体を用いてニッケルメッキ膜の接着力を調べたところ100gと良好であった。デラミネーションの発生率は0%であった。これらの結果を表1に示す。
【0116】
実施例5
接着層の組成を、第2結合剤としてのブチラール系樹脂C(熱分解温度T2=490℃):67重量%およびフタル酸エステル系可塑剤:33重量%で構成し、第1結合剤としてのアクリル系樹脂(熱分解温度T1=400℃)で構成した以外は、実施例1と同様にして、セラミックグリーン体およびセラミック焼成体を得た。本実施例では、T1−T2<20の関係式を満足していた。
【0117】
得られたセラミックグリーン体を用いてニッケルメッキ膜の接着力を調べたところ120gと良好であった。デラミネーションの発生率は0%であった。これらの結果を表1に示す。
【0118】
実施例6
接着層の組成を、第2結合剤としてのブチラール系樹脂D(熱分解温度T2=480℃):100重量%で構成し、第1結合剤としてのアクリル系樹脂(熱分解温度T1=400℃)で構成した以外は、実施例1と同様にして、セラミックグリーン体およびセラミック焼成体を得た。本実施例では、T1−T2<20の関係式を満足していた。
【0119】
得られたセラミックグリーン体を用いてニッケルメッキ膜の接着力を調べたところ50gであった。デラミネーションの発生率は10%であった。これらの結果を表1に示す。
【0120】
なお、デラミネーションの発生率が10%となったのは、ニッケルメッキ膜の接着力が50gと若干低いことにより、セラミックグリーン体を積層する際に、若干、金属膜の剥がれを生じたものと推定される。
【0121】
実施例7
接着層の組成を、第2結合剤としてのエチルセルロースE(熱分解温度T2=420℃):100重量%で構成し、第1結合剤としてのアクリル系樹脂(熱分解温度T1=400℃)で構成した以外は、実施例1と同様にして、セラミックグリーン体およびセラミック焼成体を得た。本実施例では、T1−T2<20の関係式を満足していた。
【0122】
得られたセラミックグリーン体を用いてニッケルメッキ膜の接着力を調べたところ70gと良好であった。デラミネーションの発生率は5%であった。これらの結果を表1に示す。
【0123】
比較例1
接着層の組成を、第2結合剤としてのアクリル系樹脂F(熱分解温度T2=380℃):80重量%およびフタル酸エステル系可塑剤:20重量%で構成した以外は、実施例1と同様にして、セラミックグリーン体およびセラミック焼成体を得た。
【0124】
本例では、T1−T2<20の関係式を満足していなかった。また、得られたセラミックグリーン体を用いてニッケルメッキ膜の接着力を調べたところ40gであった。デラミネーションの発生率は90%であった。これらの結果を表1に示す。
【0125】
なお、デラミネーションの発生率が90%と非常に高くなったのは、T1,T2が上記関係式を満足しなかったことにより、セラミックグリーンシートと金属膜との間でノンラミネーションが発生し、かつニッケルメッキ膜の接着力が40gと低いことにより、セラミックグリーン体を積層する際に金属膜の剥がれを生じたことによる、と推定される。
【0126】
比較例2
接着層の組成を、第2結合剤としてのアクリル系樹脂F(熱分解温度T2=380℃):67重量%およびフタル酸エステル系可塑剤:33重量%で構成し、第1結合剤としてのアクリル系樹脂(熱分解温度T1=400℃)で構成した以外は、実施例1と同様にして、セラミックグリーン体およびセラミック焼成体を得た。
【0127】
本例では、T1−T2<20の関係式を満足していなかった。また、得られたセラミックグリーン体を用いてニッケルメッキ膜の接着力を調べたところ80gであった。デラミネーションの発生率は70%であった。これらの結果を表1に示す。
【0128】
なお、デラミネーションの発生率が70%と高くなったのは、T1,T2が上記関係式を満足しなかったことにより、セラミックグリーンシートと金属膜との間でノンラミネーションが発生し、その結果、セラミックグリーン体を積層する際に金属膜の剥がれを生じたことによる、と推定される。
【0129】
比較例3
接着層の組成を、第2結合剤としてのフェノール系樹脂G(熱分解温度T2=600℃以上):67重量%およびフタル酸エステル系可塑剤:33重量%で構成し、第1結合剤としてのアクリル系樹脂(熱分解温度T1=400℃)で構成した以外は、実施例1と同様にして、セラミックグリーン体およびセラミック焼成体を得た。
【0130】
本例では、T1−T2<20の関係式を満足していた。また、得られたセラミックグリーン体を用いてニッケルメッキ膜の接着力を調べたところ120gであった。また、熱重量分析(TG)を用いて、第2結合剤を含む接着層についてカーボンの有無を調べたところ、目視にて煤状のカーボンが観察された。デラミネーションの発生率は95%であった。これらの結果を表1に示す。
【0131】
なお、デラミネーションの発生率が95%と非常に高くなったのは、脱バインダ工程から焼成工程の間で、第2結合剤を含む接着層がカーボンとして残ったことによって、セラミック層と金属膜との間にノンラミネーションが発生したことによる、と推定される。
【0132】
比較例4
接着層の組成を、第2結合剤としてのアクリル系樹脂H(熱分解温度T2=360℃):67重量%およびフタル酸エステル系可塑剤:33重量%で構成し、第1結合剤としてのアクリル系樹脂(熱分解温度T1=400℃)で構成した以外は、実施例1と同様にして、セラミックグリーン体およびセラミック焼成体を得た。
【0133】
本例では、T1−T2<20の関係式を満足していなかった。また、得られたセラミックグリーン体を用いてニッケルメッキ膜の接着力を調べたところ100gであった。デラミネーションの発生率は70%であった。これらの結果を表1に示す。
【0134】
なお、デラミネーションの発生率が70%と高くなったのは、T1,T2が上記関係式を満足しなかったことにより、セラミックグリーンシートと金属膜との間でノンラミネーションが発生し、その結果、セラミックグリーン体を積層する際に金属膜の剥がれを生じたことによる、と推定される。
【0135】
比較例5
接着層を介在させず、第1結合剤としてのアクリル系樹脂(熱分解温度T1=400℃)で構成した以外は、実施例1と同様にして、セラミックグリーン体およびセラミック焼成体を得た。
【0136】
得られたセラミックグリーン体を用いてニッケルメッキ膜の接着力を調べたところ30gであった。デラミネーションの発生率は95%であった。これらの結果を表1に示す。
【0137】
なお、デラミネーションの発生率が95%と非常に高くなったのは、ニッケルメッキ膜の接着力が30gと低いことにより、セラミックグリーン体を積層する際に金属膜の剥がれを生じたことによる、と推定される。
【0138】
【表1】
Figure 0004100874
【0139】
【発明の効果】
以上説明してきたように、本発明によれば、焼成後に構造欠陥を生じるおそれが少ないグリーンチップなどのセラミックグリーン体、およびこれを用いた積層セラミックコンデンサなどのセラミック電子部品の製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は本実施形態に係る積層セラミックコンデンサの一部破断断面図である。
【図2】 図2は図1の積層セラミックコンデンサの平面図である。
【図3】 図3は図1および図2に示すコンデンサの製造過程に用いるセラミックグリーン体の斜視図である。
【図4】 図4は図3のIV−IV線に沿う断面図である。
【図5】 図5はセラミックグリーン体の製造過程に用いる金属膜転写用部材の斜視図である。
【図6】 図6は図5のVI−VI線に沿う断面図である。
【図7】 図7(A)〜図7(F)はセラミックグリーンシートへの金属膜の転写方法の一例を示す工程図である。
【図8】 図8(A)および図8(B)は図1および図2に示すコンデンサの製造過程に用いるセラミックグリーン体の斜視図である。
【符号の説明】
2… 積層セラミックコンデンサ(セラミック電子部品)
4… コンデンサ素体
6… 第1端子電極
8… 第2端子電極
10… 誘電体層
10a… セラミックグリーンシート
12… 第1内部電極層
12a… パターン
14… 第2内部電極層
14a… パターン
20… 基体
22… 金属膜
24… 接着層
30… 金属膜転写用部材
42… セラミックグリーン体
42a… 第1セラミックグリーン体
42b… 第2セラミックグリーン体
60… メッキレジスト層
62… 開口部

Claims (9)

  1. 第1結合剤を含むセラミックグリーンシートと、
    前記セラミックグリーンシートの表面に、第2結合剤を含む接着層を介して所定パターンで形成された金属膜とを有し、
    前記各結合剤の熱分解温度を、第1結合剤:T1℃、第2結合剤:T2℃とした場合に、T2<600およびT1−T2<20の関係式を満足し、
    T2>T1の関係式をさらに満足することを特徴とするセラミックグリーン体。
  2. 前記金属膜が、前記セラミックグリーンシートの表面に50g以上の接着力で形成してある請求項に記載のセラミックグリーン体。
  3. 前記接着層における第2結合剤の含有量が50〜100重量%である請求項1あるいは2に記載のセラミックグリーン体。
  4. 前記接着層の厚みが0.1〜10μmである請求項1〜3のいずれかに記載のセラミックグリーン体。
  5. 前記セラミックグリーンシートにおける第1結合剤の含有量が1〜25重量%である請求項1〜4のいずれかに記載のセラミックグリーン体。
  6. 前記金属膜が卑金属を含む請求項1〜5のいずれかに記載のセラミックグリーン体。
  7. 第1結合剤を含むセラミックグリーンシートの表面に、転写法により、第2結合剤を含む接着層を介して所定パターンで金属膜が形成され、
    前記各結合剤の熱分解温度を、第1結合剤:T1℃、第2結合剤:T2℃とした場合に、T2<600およびT1−T2<20の関係式を満足し、
    T2>T1の関係式をさらに満足することを特徴とするセラミックグリーン体を有する焼成前素子本体を脱バインダ処理する工程と、
    前記脱バインダ後の焼成前素子本体を焼成する工程とを有する
    セラミック電子部品の製造方法。
  8. 前記脱バインダ処理を、5〜300℃/時間の昇温速度、150〜400℃の保持温度、および0.5〜24時間の保持時間で行うことを特徴とする請求項に記載のセラミック電子部品の製造方法。
  9. 前記脱バインダ処理前に、前記焼成前素子本体を切断する工程をさらに有する請求項に記載のセラミック電子部品の製造方法。
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