JP4097923B2 - インクジェット記録用紙およびその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、インクを用いて記録するインクジェット記録用紙に関するものであり、さらに詳しくは、経時での白紙部の黄変、画像部の劣化が少なく、記録した画像の発色に優れるインクジェット記録用紙に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
インクジェット記録方式は、種々の作動原理によりインクの微小液滴を飛翔させて紙などの記録用紙に付着させ、画像・文字などの記録を行なうものであるが、高速、低騒音、多色化が容易、記録パターンの融通性が大きい、現像−定着が不要等の特徴があり、漢字を含め各種図形及びカラー画像等の記録装置として種々の用途に於いて急速に普及している。更に、多色インクジェット方式により形成される画像は、製版方式による多色印刷やカラー写真方式による印画に比較して、遜色のない記録を得ることが可能である。又、作成部数が少なくて済む用途に於いては、写真技術によるよりも安価であることからフルカラー画像記録分野にまで広く応用されつつある。
【0003】
又、インクジェット記録装置の低価格化、鮮鋭性や色彩性といった画像再現性や色再現性に優れた画像をパーソナルコンピュータレベルで簡単に得ることができること等から、インクジェット記録装置は、特定の人に使用される特殊な記録装置から汎用の記録装置に変遷してきており、特に近年では更にインクジェット記録装置の高精細化が進み、写真画質を謳ったインクジェット記録装置が低価格で出現したことにより、個人で所有する割合も大幅に増加してきている。
【0004】
さらに、用途の多様化に伴い、大判のポスターやPOPアート、製図用途に使用されることが多くなってきている。これら用途では、インクジェットの高鮮鋭性を生かせ、色彩性も優れていることから良好な画像を得ることが可能であり、宣伝効果が大きいものとなる。これらへの適用はパーソナルコンピュータレベルで、鮮鋭性や色彩性といった画像再現性や色再現性に優れた画像を簡単に得ることが可能であるためであり、インクジェット記録用紙を多用する理由ともなっている。また、用途の多様化はインクジェット記録用紙の外観に対しても生じており、従来からある普通紙やマット紙といった光沢のない或いは低い外観に加え、アート紙、コート紙、キャスト紙、印画紙等の光沢を有した外観が求められている。これはインクジェット記録が印刷や写真に匹敵する画像品質を再現できることにより、外観も類似させたいという要望が生じているためである。
【0005】
これらインクジェット記録装置の高性能化や用途の多様化により、インクジェット記録用紙に求められる特性もかなり高度になってきている。記録用紙に要求される特性としては、インクの吸収が早く且つ異色インクの重色があってもインクの溢れなどを生じないこと、ドット形状が真円に近いこと、ドットエッジが鮮明であること、ドット濃度が高く、且つカラー記録においてはドットのコントラストを際だたせるために十分ISO白色度が高いこと等が挙げられる。
【0006】
インクジェット記録用紙のISO白色度を高めるために、蛍光染料あるいは蛍光顔料等の蛍光増白剤を使用することは一般的に行われている。具体的には、蛍光増白剤を原紙抄造時に内添したり、サイズプレス等により原紙に含浸したりする方法、原紙上に蛍光増白剤を配合したインク受理層を塗工する方法等が挙げられる。しかしながら、前者の方法では、十分なISO白色度が得られず、コントラストの高い画像を得ることは困難である。また、後者の方法では、十分高いISO白色度を得ることは可能であるが、経時で白紙部が黄色く着色する黄変現象が発生する。この黄変現象は、白紙部だけでなく画像部にも影響を及ぼし、経時での色再現性が得られていないのが実状である。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
かかる現状に鑑み、本発明の目的は、経時での白紙部の黄変、画像部の劣化が少なく、記録した画像の発色に優れるインクジェット記録用紙を提供するものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、用紙のISO白色度を高めるために蛍光増白剤の使用方法に着目し、鋭意検討した結果、以下の発明に到った。
【0009】
すなわち、本発明は、原紙、インク受理層、光沢発現層を順次設けてなるインクジェット記録用紙において、少なくとも蛍光増白剤とケン化度95%以上のポリビニルアルコールを含有する蛍光増白層が原紙とインク受理層との間に設けられており、かつ該インクジェット記録用紙の光沢発現層側のJIS P−8148に規定されるISO白色度が85%以上であることを特徴とするインクジェット記録用紙である。
【0010】
該ポリビニルアルコールの重合度が1200以下であると好ましい。
【0011】
原紙上に蛍光増白層、インク受理層を順次設けた状態におけるJIS P−8117に規定される透気抵抗度が10秒以上2500秒以下であると好ましい。
【0012】
蛍光増白層が顔料を含有すると好ましい。
【0013】
蛍光増白層がカチオン樹脂を含有すると好ましい。
【0014】
該インクジェット記録用紙がキャスト光沢紙であると好ましい。
【0015】
さらには、少なくとも蛍光増白層、インク受理層の2層を、同時多層塗布方式により原紙上に積層することを特徴とするインクジェット記録用紙の製造方法の発明である。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下に本発明のインクジェット記録用紙について詳細に説明する。本発明のインクジェット記録用紙は、原紙、インク受理層、光沢発現層を順次設けた構成であり、少なくとも蛍光増白剤とケン化度95%以上のポリビニルアルコールを含有する蛍光増白層が原紙とインク受理層との間に設けられており、かつ該インクジェット記録用紙の光沢発現層側のJIS P−8148に規定されるISO白色度が85%以上であることを特徴とする。ISO白色度は印字物のコントラストを高め印字品質を向上させるため、85%以上である必要があり、好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上である。ISO白色度の照明光は、照明光源の白色光を積分球を用いて拡散照明する。本発明において、照明光源とはCIE標準光源C、2°視野を指す。
【0017】
視感白さだけを向上させる上では、従来から広く行われている試料の青み付けなどでパルプ繊維に黄色の余色である青紫色の着色を与えることによって、残存する黄色を打ち消して無彩色に近くし、場合によってはさらに青みを付け、視覚的に白色度が向上したような錯覚を与えることもできたが、明度はかなり低下してしまう問題があった。蛍光増白剤は、昼光中にある紫外線を吸収して400〜500nmの蛍光を発する性質があるため、可視部の短波長側の反射光を補充して明度の低下を伴うことなく青み付けが行われる結果、肉眼的には白色度は一段と向上して見える。従って、蛍光増白剤による増白は、化学的に材質から着色物質や汚れを取り除く漂白とは異なる。その結果として、漂白工程では達成できないような著しい増白効果を得ることができる。
【0018】
本発明者らは、インクジェット記録用紙のISO白色度を高めるために、当初、原紙上に蛍光増白剤を配合したインク受理層を塗工する方法を検討していた。この方法によれば、十分高いISO白色度を得ることは可能であるが、経時で白紙部が黄色く着色する黄変現象が発生する。この黄変現象は、白紙部だけでなく画像部にも影響を及ぼし、経時での色再現性が得られないという問題が生じている。この黄変現象について、種々検討した結果、黄変は主に光による蛍光増白剤の失活に起因し、インク吸収性を付与するためにインク受理層に一般的に使用されるシリカ等の顔料は、蛍光増白剤の失活を促進する作用があることが判明した。おそらく、シリカ等の顔料は表面活性が高く反応性があるため、蛍光増白剤の異性化、分解等の失活反応の場となっているのではないかと考えられる。こうした知見を元に、蛍光増白剤の使用方法について鋭意検討した結果、本発明に到った。
【0019】
本発明は、原紙とインク受理層との間に蛍光増白層を設けたことを特徴とする。該構成とすることで、蛍光増白剤をインク受理層中に一般的に使用されるシリカ等の表面活性の高い顔料から隔離することが可能となり、蛍光増白剤の失活による白紙部の黄変を起こりにくくすることが可能となるのである。本発明に係わる蛍光増白層は、少なくとも蛍光増白剤とケン化度95%以上のポリビニルアルコールを含有する。蛍光増白剤とケン化度95%以上のポリビニルアルコールを併用した場合、蛍光増白剤単独の場合に比べ、蛍光増白効果が大きくISO白色度を高めることが可能となるばかりか、光による蛍光増白剤の失活速度がよりいっそう遅くなり、経時での黄変を遅らせることが可能となる。おそらく、ポリビニルアルコールの水酸基が蛍光増白剤の安定化に何らかの形で寄与しており、蛍光増白剤の失活反応が起こりにくくなっているものと考えられる。
【0020】
本発明に係わる蛍光増白剤とは、昼光中にある紫外線を吸収して、可視部の短波長側の反射光線を補充して明度の低下を伴うことなく青み付けが可能な材料を指し、蛍光染料と蛍光顔料が挙げられる。蛍光染料としては、ジアミノスチルベン−ジスルフォン酸誘導体、ジアミノスチルベン−テトラスルフォン酸誘導体、ジアミノスチルベン−ヘキサスルフォン酸誘導体等のジアミノスチレベン誘導体、オキサゾール誘導体、ビフェニル誘導体、イミダゾール誘導体、クマリン誘導体、ピラゾリン誘導体、トリアゾール誘導体、ナフタルイミド誘導体等が挙げられる。蛍光顔料としては、Zn2SiO4:Mn、CaSiO4:Pb:Mn、ZnS:Cu等が挙げられる。これらのうち、ジアミノスチルベン誘導体が蛍光増白効果が大きく好ましく使用される。
【0021】
本発明に係わる蛍光増白層で使用されるポリビニルアルコールのケン化度は95%以上である必要がある。ケン化度が95%以上のポリビニルアルコールと蛍光増白剤を併用することにより、蛍光増白効果が大きくISO白色度を高めることが可能となるばかりか、光による蛍光増白剤の失活速度が遅くなり、経時での黄変を遅らせることが可能となる。より好ましくは98%以上である。ケン化度が95%より小さいと、ほぼ同等の蛍光増白効果は得られるものの、光による蛍光増白剤の失活速度が速く、経時での黄変が起こりやすく好ましくない。
【0022】
本発明に係わる蛍光増白層で使用されるポリビニルアルコールは、ケン化度が95%以上であれば、各種変性を施されたポリビニルアルコールも使用可能である。変性ポリビニルアルコールの例として、例えばカルボン酸、スルホン酸等を導入したアニオン変性ポリビニルアルコール、四級アンモニウム塩等を導入したカチオン変性ポリビニルアルコール、シラノール基等を導入した珪素変性ポリビニルアルコール、三元共重合変性ポリビニルアルコール、末端アルキル変性ポリビニルアルコール、末端チオール変性ポリビニルアルコール等が挙げられる。
【0023】
本発明に係わる蛍光増白層で使用されるポリビニルアルコールの重合度は1200以下であることが好ましい。好ましくは700以下、より好ましくは400以下である。重合度が1200よりも低いと、蛍光増白剤の増白効果はより高く、また光による蛍光増白剤の失活速度もより遅くなり、経時での黄変が起こりにくくなるため好ましい。
【0024】
蛍光増白層中で使用される蛍光増白剤の総量は多い方が効果は認められるが、その効果は次第に飽和してきて、最終的にはオーバーダイイングという現象を引き起こして、白色度は逆に低下してしまう。本発明のインクジェット記録用紙の光沢発現層側の蛍光強度は、5〜15%の範囲にあることが好ましい。本発明において蛍光強度とは、紫外領域の光を含む照明光で測定された白色度とUVフィルターで紫外領域の光をカットした照明光で測定された白色度との差を指す。蛍光強度が5%より小さいと、視感白さが弱くなり85%以上のISO白色度が得られにくくなる。15%より大きいと蛍光が飽和してしまい、不経済であるばかりか、光による黄変の程度が酷くなりやすい。上記範囲の蛍光強度を達成するために、蛍光増白層中で使用される蛍光増白剤の総量は、0.01g/m2以上0.4g/m2以下であることが好ましく、より好ましくは0.02g/m2以上0.2g/m2以下、特に好ましくは0.03g/m2以上0.15g/m2以下である。蛍光増白層の塗工量は、上記蛍光増白剤の総量を達成するように適宜調整されるが、具体的には0.1g/m2〜10g/m2の範囲である。
【0025】
蛍光増白層で使用される蛍光増白剤とケン化度95%以上のポリビニルアルコールの混合比率は、乾燥質量部比で1/100以上1/6以下であることが好ましく、より好ましくは1/60以上1/10以下、特に好ましくは1/40以上1/15以下である。混合比率が1/100よりも小さいと蛍光強度が弱くなりやすく、ISO白色度を高めることによるコントラストのある画像を得にくくなる。1/6より大きいと、光による蛍光増白剤の失活速度を遅くし、経時での黄変を遅らせるというポリビニルアルコールの優れた効果が得られにくい。
【0026】
原紙上に蛍光増白層、インク受理層を順次設けた状態におけるJIS P−8117に規定される透気抵抗度は、10秒以上2500秒以下であることが好ましい。より好ましくは40秒以上1000秒以下、さらに好ましくは120秒以上500秒以下である。本発明のインクジェット記録用紙は、インク受理層の上にさらに光沢発現層を設けた構成である。本構成の場合、原紙上に蛍光増白層、インク受理層を順次設けた状態における透気抵抗度が2500秒よりも大きいと、光沢発現層を塗工・乾燥した場合に、水分の乾燥が原紙側からはほとんど行われず、光沢発現層から行われることになる。その結果、水分の急激な蒸発による表面面質の悪化が起こり、酷い場合にはクレーター状のボコツキが発生するため、せっかくの表面光沢が損なわれやすい。乾燥温度を低くする等により、表面面質の悪化を避けることは可能であるが、生産性を考慮して透気抵抗度を2500秒以下にしておくことが好ましい。また、後述するキャスト光沢紙の場合では、キャストドラムに光沢発現層を密着させて原紙側から水分の乾燥を行うため、透気抵抗度が高くなりすぎると、生産性に関しより深刻な状況となる。すなわち透気抵抗度が2500秒を超えると、乾燥時の水分が原紙側から抜けにくくなり、光沢発現層およびインク受理層で逃げ場を失った水分が急激に突沸することにより、光沢発現層あるいはインク受理層が基材から剥がれる現象、いわゆるブリスターが発生しやすくなる。これもキャストドラムの温度を低くする等の手段により回避可能であるが、生産性を考慮して透気抵抗度を2500秒以下にしておくことが好ましい。また、透気抵抗度が2500秒を超えるとインク吸収性も低下しやすい。一方、透気抵抗度が10秒より小さいと、印字部の発色性に劣りやすい。
【0027】
原紙上に蛍光増白層、インク受理層を順次設けた状態におけるJIS P−8117に規定される透気抵抗度を制御する方法として、原紙材料、蛍光増白層で使用する材料、インク受理層で使用する材料の選定、原紙の抄造方法、蛍光増白層およびインク受理層の塗工方法の選定、各工程後におけるカレンダー処理等の手段が挙げられる。これらのうち、蛍光増白層で使用する材料の選定および塗工方法が大きな比重を占める。これは、蛍光増白層は製膜性の高いポリビニルアルコールを主に含有しており、透気抵抗度を大きくする傾向があるからである。蛍光増白層で使用する材料の選定および塗工方法により透気抵抗度を制御する手段としては、ポリビニルアルコールの重合度・ケン化度の変更、蛍光増白層の塗工量、蛍光増白層塗液の粘度、製膜性の低いバインダー樹脂等の添加、製膜を妨げる有機および無機顔料の添加等が挙げられる。透気抵抗度を2500秒以下に制御するという観点からすると、ポリビニルアルコールの重合度およびケン化度は低い方が好ましい。
【0028】
本発明に係わる蛍光増白層には、原紙上に蛍光増白層、インク受理層を順次設けた状態における透気抵抗度を制御する目的で、ケン化度95%以上のポリビニルアルコール以外のバインダー、および有機・無機の顔料を添加することができる。ただし、その添加量は、ケン化度95%以上のポリビニルアルコールの優れた蛍光増白効果および蛍光増白剤の失活速度遅延効果を損なわない範囲である必要がある。ケン化度95%以上のポリビニルアルコール以外のバインダーの例としては、ケン化度が95%よりも小さいポリビニルアルコール、酢酸ビニル、酸化澱粉、リン酸エステル化澱粉、エーテル化澱粉等の澱粉類、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等のセルロース誘導体、カゼイン、ゼラチン、大豆蛋白;無水マレイン酸樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体等の共役ジエン系共重合体ラテックス;アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルの重合体又は共重合体、アクリル酸及びメタクリル酸の重合体又は共重合体等のアクリル系重合体ラテックス;エチレン酢酸ビニル共重合体等のビニル系重合体ラテックス;或いはこれらの各種重合体のカルボキシル基等の官能基含有単量体による官能基変性重合体ラテックス;メラミン樹脂、尿素樹脂等の熱硬化合成樹脂系等の水性接着剤;ポリメチルメタクリレート、ポリウレタン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニルコポリマー、ポリビニルブチラール、アルキッド樹脂等の合成樹脂系接着剤が挙げられる。この他、公知の天然、合成樹脂接着剤を使用することは特に限定されない。
【0029】
本発明に係わる蛍光増白層に添加する顔料は、公知の白色顔料を1種以上用いることができる。例えば、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、カオリン、タルク、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、炭酸亜鉛、サチンホワイト、珪酸アルミニウム、ケイソウ土、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、合成非晶質シリカ、コロイダルシリカ、コロイダルアルミナ、ベーマイト、擬ベーマイト等のアルミナ水和物、水酸化アルミニウム、アルミナ、リトポン、ゼオライト、加水ハロイサイト、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム等の白色無機顔料、スチレン系プラスチックピグメント、アクリル系プラスチックピグメント、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン系プラスチックピグメント、マイクロカプセル、尿素樹脂、メラミン樹脂等の有機顔料等が挙げられる。これらのうち、合成非晶質シリカ等の表面活性が高い顔料は、光による蛍光増白剤の失活を速くし、経時での黄変を起こしやすくするため好ましくない。上記顔料のうち、炭酸カルシウム、カオリン等の無機顔料、アクリル系やポリオレフィン系等の有機顔料等、表面活性の低い顔料が好ましく使用される。
【0030】
蛍光増白層は、インクの定着性や耐水性を高めたり、原紙上に蛍光増白層、インク受理層を順次設けた状態における透気抵抗度を制御したりする目的で、1級〜3級アミン、4級アンモニウム塩のモノマー、オリゴマー、ポリマー等のカチオン樹脂を配合することができる。当初予期しなかったことであるが、蛍光増白層にカチオン樹脂を配合すると、光による蛍光増白剤の失活速度が遅くなり、経時での黄変がよりいっそう起こりにくくなることが判明した。カチオン樹脂としては、例えば、ジメチルアミン−エピクロルヒドリン縮合物、アクリルアミド−ジアリルアミン共重合物、ポリビニルアミン共重合物、ポリビニルアミジン共重合物、ジシアンジアミド、ジシアンジアミド−ホルマリン重縮合物等のジシアン系カチオン樹脂、ジメチル−ジアリルアンモニウムクロライド、ポリエチレンポリアミンやポリプロピレンポリアミン等のポリアルキレンポリアミン共重合物等が挙げられる。
【0031】
蛍光増白層は、原紙上に各種塗工方法により設けられていることが好ましい。少なくとも蛍光増白剤とポリビニルアルコールからなる塗液をタブサイズプレス、サイズプレス等の含浸法を用いて原紙に付与した場合、塗工法により原紙上に蛍光増白層を設けた場合に比べ、蛍光増白効果が弱く、十分なISO白色度が得られない。塗工による場合と同等の効果を得るためには蛍光増白剤の付与量を増やす必要があり不経済となるばかりか、使用する蛍光増白剤が増えることは、光による蛍光増白剤の失活時の黄変の程度も酷くなり好ましくない。
【0032】
本発明でいう原紙とは、木材パルプと顔料を主成分として構成される。木材パルプとしては、LBKP、NBKP等の化学パルプ、GP、PGW、RMP、TMP、CTMP、CMP、CGP等の機械パルプ、DIP等の古紙パルプ等が挙げられ、さらに、ケナフ、バカス、竹、コットン等の非木材パルプも使用でき、必要に応じて従来公知の顔料やバインダー及びサイズ剤や定着剤、歩留まり向上剤、カチオン化剤、紙力増強剤等の各種添加剤を1種以上用いて混合し、長網抄紙機、円網抄紙機、ツインワイヤ抄紙機等の各種装置で原紙の製造が可能であり、酸性、中性、アルカリ性で抄造できる。インクジェット記録用紙のISO白色度を高めるため、抄紙原材料として白色度の高い材料を選定することが好ましい。また、原紙上に蛍光増白層、インク受理層を設けた状態における透気抵抗度を調整するために、該原紙にサイズプレス液の含浸あるいはアンカーコート層の塗工を施すこともできる。さらに、該原紙は、金属ロールと合成樹脂ロールから成るカレンダー装置でオンマシン処理しても良い。その際、オフマシン処理しても良く、処理後に、さらにマシンカレンダー、スーパーカレンダー等でカレンダー処理を施して平坦性、透気抵抗度をコントロールしても良い。
【0033】
本発明に用いられるインク受理層は、少なくとも白色顔料とバインダーから構成される。白色顔料およびバインダーとしては、上記蛍光増白層で例示した材料を使用可能である。インク受理層中に主体成分として含有する白色顔料としては、多孔性無機顔料が好ましく、多孔性合成非晶質シリカ、多孔性炭酸マグネシウム、多孔性アルミナなどが挙げられ、特に細孔容積の大きい多孔性合成非晶質シリカが好ましい。顔料の平均粒子径は0.5〜20μmであると好ましい。さらに、本発明のインク受理層には、インクの定着性や耐水性を高めるため、蛍光増白層で例示したカチオン樹脂を配合することが好ましい。
【0034】
インク受理層の塗工量は、乾燥固形分で1g/m2以上30g/m2以下、好ましくは4g/m2以上20g/m2以下である。1g/m2未満ではインク吸収容量が足りなく、画像濃度・色彩性・鮮明性に劣りやすい。30g/m2を超えると、機能が飽和するばかりか、塗工後の乾燥工程における乾燥負荷が高まり、塗工速度の低下により生産性が低下しやすい。本発明においてインク受理層を構成物質が同等あるいは相違する2層以上の層とすることもでき、その場合の各インク受理層の塗工量範囲も上記範囲である。
【0035】
本発明において、光沢発現層に要求される特性は、光沢・透明性があること、インクを速やかに通過あるいは吸収できることであり、少なくとも顔料とバインダーから構成される。光沢発現層で使用される顔料は、蛍光増白層で例示した材料が使用できるが、光沢、透明性、インク吸収性の点で、ベーマイト、擬ベーマイト等のアルミナ水和物、コロイダルアルミナ、コロイダルシリカ、非晶質シリカ、アルミニウム酸化物またはその水和物、ゼオライト等が好ましい。顔料の平均粒子径は0.001μm以上5μm以下が好ましく、より好ましくは0.01μm以上1μm以下である。粒子径が0.001μm未満になると、インク吸収性に劣りやすく、5μmを超えると、光沢や印字濃度が低下しやすい。
【0036】
光沢発現層に使用されるバインダーとしては、蛍光増白層で例示した材料が使用できる。また、インクの定着性や耐水性を高めるため、光沢発現層に蛍光増白層で例示したカチオン樹脂を配合することも可能である。
【0037】
インク受理層および光沢発現層中に含まれる顔料とバインダーの配合比率は、顔料100質量部に対し、バインダー5質量部以上75質量部以下、好ましくは10質量部以上50質量部以下である。5質量部未満では、インク受理層および光沢発現層の塗層強度が不足しやすく、75質量部を超えるとインク吸収性が低下しやすい。
【0038】
本発明において、光沢発現層の光沢をさらに高めるために、光沢発現層を設けた後、スーパーカレンダー、ソフトカレンダー、TGカレンダー等でカレンダー処理したり、キャスト処理したりすることが好ましい。キャスト処理の方法としては、光沢発現層を塗工後、光沢発現層が湿潤状態にある間に加熱された鏡面ドラムに圧接、乾燥して仕上げる方法(ウェットキャスト方式)、光沢発現層を一旦乾燥し再湿潤後、加熱された鏡面ドラムに圧接、乾燥して仕上げる方法(リウェットキャスト方式)、加熱された鏡面ドラムに光沢発現層液を直接塗工して、光沢発現層がある程度湿潤状態にある間にインク受理層を予め設けた基材に圧接、乾燥して仕上げる方法(プレキャスト方式)、平滑なフィルムやシート上に光沢発現層液を塗工して、光沢発現層あるいは基材に設けられたインク受理層がある程度湿潤状態にある間に、基材に圧接、乾燥した後平滑なフィルムやシートを剥離して仕上げる方法(フィルム転写方式)等が挙げられる。加熱された鏡面ドラムの温度は例えば50〜150℃、好ましくは70〜120℃である。さらにキャスト処理後、マシンカレンダー、TGカレンダー、スーパーカレンダー、ソフトカレンダー等のカレンダーを用いて仕上げても良い。
【0039】
本発明のインクジェット記録用紙は、原紙、インク受理層、光沢発現層を順次積層した構成であり、印字面に光沢が付与されているという特徴を有している。本発明のインクジェット記録用紙の光沢発現層表面のJIS P−8142に規定される75度鏡面光沢度は、40%以上であると光沢感があり、印字品位が向上するため好ましい。より好ましくは60%以上、特に好ましくは75%以上である。75%以上の光沢度を得るためには、光沢発現層を塗工した後、キャスト処理を施すことが好ましい。
【0040】
光沢発現層の塗工量は、乾燥固形分で0.2g/m2以上30g/m2以下、好ましくは1g/m2以上15g/m2以下である。0.2g/m2未満では十分な光沢が得られにくく、30g/m2を超えると、インク乾燥性が劣ったり、記録濃度が低下したり、塗工後の乾燥工程における乾燥負荷が高まり、塗工速度の低下に伴う生産性の低下が起こりやすい。
【0041】
本発明において、蛍光増白層、インク受理層、光沢発現層にはさらに、界面活性剤、硬膜剤、可塑剤、着色染料、着色顔料、顔料分散剤、消泡剤、レベリング剤、防腐剤、防バイ剤、増粘剤、流動性改良剤、粘度安定剤、pH調節剤、離型剤、発泡剤、浸透剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、耐水化剤、湿潤紙力増強剤、乾燥紙力増強剤等等の公知の各種添加剤を添加することもできる。
【0042】
本発明に係わる原紙に、蛍光増白層、インク受理層、光沢発現層を塗工する方法は、各種ブレードコーター、ロールコーター、エアーナイフコーター、ナイフコーター、バーコーター、ロッドブレードコーター、ショートドウェルコーター、コンマコーター、Uコンマコーター、スムージングコーター、ダイコーター、リバースロールコーター、キスコーター、ディップコーター、カーテンコーター、スライドコーター、スライドカーテンコーター、エクストルージョンコーター、ゲートロールコーター、グラビアコーター、グラビアオフセットコーター、マイクログラビアコーター等の塗工装置を用いることができる。
【0043】
また、蛍光増白層、インク受理層、光沢発現層のうちの相接する任意の2層以上をスライドビードコーター、スライドカーテンコーター等を用いて同時多層塗布を行ってもよい。同時多層塗布方式は、製造工程を大幅に短縮できるばかりか、以下に示す優れた特徴を有するため好ましい。つまり、通常の逐次塗工方式の場合、1層目を塗工乾燥後、2層目の塗工を行った際、2層目の塗層が1層目の塗層内に浸透するといったことが生ずる。これはインク受理層を塗工乾燥した後、光沢発現層を設けた場合に顕著に弊害が現れる。すなわち、インク受理層内に光沢発現層が浸透すると、インク受理層の本来有していた空隙が失われ、インク吸収性が低下しやすくなったり、光沢発現層もインク受理層への浸透により光沢の発現が劣りやすくなったりし、これを補うために各層とも多くの塗工量を必要とすることになる。一方、同時多層塗工方式の場合、2つ以上の層を基材上に同時に塗工乾燥するため、各層間で互いに浸透し合うことがほとんど起こらない。このため、インク受理層の空隙は十分に保たれ、光沢発現層はより少ない塗工量で十分な光沢を発現することが可能となる。
【0044】
さらに、少なくとも蛍光増白層、インク受理層の2層を、同時多層塗布方式により原紙上に積層すると、特に好ましい実施形態となる。当初予期していなかったことであるが、蛍光増白層を含む相接する塗工層を同時多層塗布した場合、通常の逐次塗布した場合に比べ、蛍光増白効果をより大きくISO白色度をより高めることが可能となるばかりか、光による蛍光増白剤の失活速度がさらに遅くなり、経時での黄変が遅くなることが判明した。おそらく、同時多層塗工方式を採用することにより、蛍光増白層とインク受理層間での浸透がほとんど起こらないことにより、インク受理層の空隙が保たれ、それに付随してインク受理層の塗工量を減らすことが可能となり、下層にある蛍光増白層からの蛍光が透過しやすくなること、また、蛍光増白層中に含まれる蛍光増白剤とインク受理層中に一般的に含まれるシリカとの接触面積が小さくなること、以上により上記特性が得られるのではないかと思われる。
【0045】
本発明のインクジェット記録用紙において、原紙の蛍光増白層とは反対面に、プリンター通紙性を上げるために、導電処理を施したり、バックコート層を設けたり等の公知の技術を用いることは何ら問題なく行うことができる。さらには、原紙の両面に蛍光増白層、インク受理層、光沢発現層を設け、両面印字可能なインクジェット記録用紙とすることも可能である。本発明のインクジェット記録用紙を提供する形態としては、カットシートのみならずロールでも構わず、原紙の蛍光増白層とは反対面に粘着剤、剥離紙を順次積層してシール、ラベルやタックの用途に使用することも可能である。
【0046】
本発明におけるインクジェット記録用紙は、インクジェット記録用紙としての使用に留まらず、記録時に液状であるインクを使用するどのような記録用紙として用いてもかまわない。例えば、熱溶融性物質、染顔料などを主成分とする熱溶融性インクを樹脂フィルム、高密度紙、合成紙などの薄い支持体上に塗布したインク用紙を、その裏面より加熱し、インクを溶融させて転写する熱転写記録用受像用紙、熱溶融性インクを加熱溶融して微小液滴化、飛翔記録するインクジェット記録用紙、油溶性染料を溶媒に溶解したインクを用いたインクジェット記録用紙、光重合型モノマー及び無色または有色の染顔料を内包したマイクロカプセルを用いた感光感圧型ドナー用紙に対応する受像用紙などが挙げられる。
【0047】
これらの記録用紙の共通点は、記録時にインクが液体状態である点である。液状インクは、硬化、固化又は定着までに、記録用紙のインク受理層の深さ方向又は水平方向に対して浸透又は拡っていく。上述した各種記録用紙は、それぞれの方式に応じた吸収性を必要とするもので、本発明のインクジェット記録用紙を上述した各種の記録用紙として利用しても何ら構わない。更に、複写機・プリンター等に広く使用されている電子写真記録方式のトナーを加熱定着する記録用紙として、本発明におけるインクジェット記録用紙を使用しても構わない。
【0048】
【実施例】
以下に、本発明の実施例をあげて説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。又、実施例に於いて示す「部」および「%」は、特に明示しない限り質量部及び質量%を示す。
【0049】
<原紙の作製>
濾水度450mlCSFのLBKP70部、濾水度450mlCSFのNBKP30部から成る木材パルプ100部に、軽質炭酸カルシウム/重質炭酸カルシウム/タルクの比率が30/35/35の顔料5部、市販アルキルケテンダイマー0.1部、市販カチオン系アクリルアミド0.03部、市販カチオン化澱粉1.0部、硫酸バンド0.5部を調成後、長網抄紙機を用いて坪量80g/m2で抄造し、市販酸化澱粉をインクラインドサイズプレスで乾燥付着量5g/m2させて乾燥して原紙を得た。
【0050】
<インク受理層塗液>
合成非晶質シリカ(ファインシールX37B:トクヤマ株式会社製)100部、ポリビニルアルコール(PVA117:クラレ株式会社製)30部、カチオン樹脂(スミレーズレジン1001:住友化学工業株式会社製)20部を用い、固形分濃度13%に調整した。
【0051】
<光沢発現層塗液>
擬ベーマイト構造で平均粒子径0.050μmのアルミナ水和物を100部、カチオン性アクリル樹脂エマルジョン(ガラス転移温度60℃)10部、ポリビニルアルコール10部、離型剤(ノニオン性オレイン酸乳化物)5部を用い、固形分濃度20%に調整した。
【0052】
<蛍光増白層塗液1>
ポリビニルアルコール(PVA−117;ケン化度98.5±0.5%、重合度1700:クラレ株式会社製)30部、蛍光増白剤(ケイコールBUL:日本曹達株式会社製)1部を用い、固形分濃度10%に調整した。
【0053】
<蛍光増白層塗液2>
カルボン酸変性ポリビニルアルコール(KL−118;ケン化度97.0±1.5%、重合度1800:クラレ株式会社製)30部、蛍光増白剤(ケイコールBUL:日本曹達株式会社製)1部を用い、固形分濃度10%に調整した。
【0054】
<蛍光増白層塗液3>
ポリビニルアルコール(PVA−110;ケン化度98.5±0.5%、重合度1000:クラレ株式会社製)30部、蛍光増白剤(ケイコールBUL:日本曹達株式会社製)1部を用い、固形分濃度10%に調整した。
【0055】
<蛍光増白層塗液4>
ポリビニルアルコール(PVA−105;ケン化度98.5±0.5%、重合度500:クラレ株式会社製)30部、蛍光増白剤(ケイコールBUL:日本曹達株式会社製)1部を用い、固形分濃度10%に調整した。
【0056】
<蛍光増白層塗液5>
ポリビニルアルコール(PVA−103;ケン化度98.5±0.5%、重合度300:クラレ株式会社製)30部、蛍光増白剤(ケイコールBUL:日本曹達株式会社製)1部を用い、固形分濃度10%に調整した。
【0057】
<蛍光増白層塗液6>
ポリビニルアルコール(PVA−105;ケン化度98.5±0.5%、重合度500:クラレ株式会社製)30部、蛍光増白剤(ケイコールBUL:日本曹達株式会社製)1部、炭酸カルシウム(TP−121:奥多摩工業株式会社製)30部を用い、固形分濃度15%に調整した。
【0058】
<蛍光増白層塗液7>
ポリビニルアルコール(PVA−105;ケン化度98.5±0.5%、重合度500:クラレ株式会社製)20部、蛍光増白剤(ケイコールBUL:日本曹達株式会社製)1部、カチオン樹脂(スミレーズレジン1001:住友化学工業株式会社製)10部を用い、固形分濃度15%に調整した。
【0059】
<蛍光増白層塗液8>
ポリビニルアルコール(PVA−205;ケン化度88.0±1.5%、重合度500:クラレ株式会社製)30部、蛍光増白剤(ケイコールBUL:日本曹達株式会社製)1部を用い、固形分濃度10%に調整した。
【0060】
<蛍光増白層塗液9>
酸化澱粉(MS3800;日本食品化工株式会社製)30部、蛍光増白剤(ケイコールBUL:日本曹達株式会社製)1部を用い、固形分濃度10%に調整した。
【0061】
<蛍光増白層塗液10>
ポリビニルピロリドン(ダイドールPVP15:大同化成工業株式会社製)30部、蛍光増白剤(ケイコールBUL:日本曹達株式会社製)1部を用い、固形分濃度10%に調整した。
【0062】
<蛍光増白層塗液11>
蛍光増白剤(ケイコールBUL:日本曹達株式会社製)を水で希釈し、固形分濃度10%に調整した。
【0063】
実施例1
原紙の一方の面に、蛍光増白層塗液1をエアナイフコーターにより乾燥後の塗工量が1.0g/m2となるように塗布、乾燥を行った。こうして得た蛍光増白層上に、インク受理層塗液をエアナイフコーターを用いて乾燥後の塗工量が10g/m2となるように塗布、乾燥した。この状態におけるJIS P−8117に規定される透気抵抗度は3020秒であった。こうして得たインク受理層の上に光沢発現層塗液をエアナイフコーターを用いて乾燥後の塗工量が10g/m2となるように塗布、乾燥した。こうして得たシートにリウェットキャスト方式により光沢仕上げを行った。当初キャストドラム温度95℃、速度15m/minでキャスト仕上げを行っていたが、キャストドラムからの用紙の離型性が悪く、光沢発現層がインク受理層から剥がれる現象、いわゆるブリスターが発生していたため、キャストドラム温度80℃、5m/minに条件を変更し、本発明のインクジェット記録用紙を得た。
【0064】
実施例2
実施例1において、蛍光増白層塗液1の代わりに蛍光増白層塗液2を使用した以外は実施例1と同様にして本発明のインクジェット記録用紙を得た。本用紙のインク受理層を設けた状態におけるJIS P−8117に規定される透気抵抗度は2730秒であった。キャスト時の条件は、キャストドラム温度80℃、速度5m/minである。
【0065】
実施例3
実施例1において、蛍光増白層塗液1の代わりに蛍光増白層塗液3を使用した以外は実施例1と同様にして本発明のインクジェット記録用紙を得た。本用紙のインク受理層を設けた状態におけるJIS P−8117に規定される透気抵抗度は2350秒であった。キャスト時の条件は、キャストドラム温度80℃、速度5m/minである。
【0066】
実施例4
実施例1において、蛍光増白層塗液1の代わりに蛍光増白層塗液4を使用した以外は実施例1と同様にして本発明のインクジェット記録用紙を得た。本用紙のインク受理層を設けた状態におけるJIS P−8117に規定される透気抵抗度は1370秒であった。キャスト時の条件は、キャストドラム温度80℃、速度5m/minである。
【0067】
実施例5
実施例1において、蛍光増白層塗液1の代わりに蛍光増白層塗液4を使用し、かつ蛍光増白層の乾燥後の塗工量を0.6g/m2とした以外は実施例1と同様にして本発明のインクジェット記録用紙を得た。本用紙のインク受理層を設けた状態におけるJIS P−8117に規定される透気抵抗度は590秒であった。キャスト時の条件は、キャストドラム温度80℃、速度5m/minである。
【0068】
実施例6
実施例1において、蛍光増白層塗液1の代わりに蛍光増白層塗液5を使用した以外は実施例1と同様にして本発明のインクジェット記録用紙を得た。本用紙のインク受理層を設けた状態におけるJIS P−8117に規定される透気抵抗度は460秒であった。キャスト時の条件は、キャストドラム温度80℃、速度5m/minである。
【0069】
実施例7
実施例1において、蛍光増白層塗液1の代わりに蛍光増白層塗液6を使用し、かつ蛍光増白層の乾燥後の塗工量を2.0g/m2とした以外は実施例1と同様にして本発明のインクジェット記録用紙を得た。本用紙のインク受理層を設けた状態におけるJIS P−8117に規定される透気抵抗度は15秒であった。キャスト時の条件は、キャストドラム温度95℃、速度15m/minである。
【0070】
実施例8
実施例1において、蛍光増白層塗液1の代わりに蛍光増白層塗液7を使用した以外は実施例1と同様にして本発明のインクジェット記録用紙を得た。本用紙のインク受理層を設けた状態におけるJIS P−8117に規定される透気抵抗度は130秒であった。キャスト時の条件は、キャストドラム温度95℃、速度15m/minである。
【0071】
実施例9
実施例4において、スライドカーテンコーターにより、原紙上に蛍光増白層、インク受理層の2層を同時塗布、乾燥を行った。こうして得たインク受理層の上に光沢発現層塗液をエアナイフコーターを用いて塗布、乾燥した以外は実施例4と同様にして本発明のインクジェット記録用紙を得た。本用紙のインク受理層を設けた状態におけるJIS P−8117に規定される透気抵抗度は890秒であった。
【0072】
実施例10
実施例1において、光沢発現層を設けた後の光沢仕上げとしてスーパーカレンダー処理を行った以外は実施例1と同様にして本発明のインクジェット記録用紙を得た。
【0073】
実施例11
実施例4において、光沢発現層を設けた後の光沢仕上げとしてスーパーカレンダー処理を行った以外は実施例4と同様にして本発明のインクジェット記録用紙を得た。
【0074】
比較例1
実施例1において、蛍光増白層を設けなかった以外は同様にしてインクジェット記録用紙を得た。本用紙のインク受理層を設けた状態におけるJIS P−8117に規定される透気抵抗度は13秒であった。キャスト時の条件は、キャストドラム温度95℃、速度15m/minである。
【0075】
比較例2
インク受理層塗液に蛍光増白剤(ケイコールBUL:日本曹達株式会社製)0.5部を添加した。原紙の一方の面に、こうして得たインク受理層塗液をエアナイフコーターにより乾燥後の塗工量が10g/m2となるように塗布、乾燥した。この状態におけるJIS P−8117に規定される透気抵抗度は13秒であった。こうして得たインク受理層の上に光沢発現層塗液をエアナイフコーターを用いて乾燥後の塗工量が10g/m2となるように塗布、乾燥した。こうして得たシートにリウェットキャスト方式により光沢仕上げを行い、インクジェット記録用紙を得た。キャスト時の条件は、キャストドラム温度95℃、速度15m/minである。
【0076】
比較例3
実施例1において、蛍光増白層塗液1の代わりに蛍光増白層塗液8を使用した以外は実施例1と同様にしてインクジェット記録用紙を得た。本用紙のインク受理層を設けた状態におけるJIS P−8117に規定される透気抵抗度は1130秒であった。キャスト時の条件は、キャストドラム温度80℃、速度5m/minである。
【0077】
比較例4
実施例1において、蛍光増白層塗液1の代わりに蛍光増白層塗液9を使用した以外は実施例1と同様にしてインクジェット記録用紙を得た。本用紙のインク受理層を設けた状態におけるJIS P−8117に規定される透気抵抗度は9秒であった。キャスト時の条件は、キャストドラム温度95℃、速度15m/minである。
【0078】
比較例5
実施例1において、蛍光増白層塗液1の代わりに蛍光増白層塗液10を使用した以外は実施例1と同様にしてインクジェット記録用紙を得た。本用紙のインク受理層を設けた状態におけるJIS P−8117に規定される透気抵抗度は2750秒であった。キャスト時の条件は、キャストドラム温度80℃、速度5m/minである。
【0079】
比較例6
実施例1において、蛍光増白層塗液1の代わりに蛍光増白層塗液11を使用しかつ蛍光増白層の乾燥後の塗工量を0.04g/m2とした以外は、実施例1と同様にしてインクジェット記録用紙を得た。本用紙のインク受理層を設けた状態におけるJIS P−8117に規定される透気抵抗度は8秒であった。キャスト時の条件は、キャストドラム温度95℃、速度15m/minである。
【0080】
比較例7
比較例3において、光沢発現層を設けた後の光沢仕上げとしてスーパーカレンダー処理を行った以外は比較例3と同様にしてインクジェット記録用紙を得た。
【0081】
<ISO白色度>
実施例および比較例で作製した用紙の光沢発現層面について、JIS P−8148に従い、日本電色工業株式会社製PF−10を用いて、ISO白色度を測定した。照明光源には、CIE標準光源C、2°視野を用いた。
【0082】
<蛍光強度>
実施例および比較例で作製した用紙の光沢発現層面について、JIS P−8148に従い、日本電色工業株式会社製PF−10を用いて、UVカットフィルターのある場合とない場合についてISO白色度を測定した。照明光源には、CIE標準光源C、2°視野を用いた。蛍光強度はUVカットフィルターを使用しない場合のISO白色度とUVカットフィルターを使用した場合のISO白色度の差として表現される。
【0083】
<光沢度>
光沢発現層面の光沢度は、JIS P8142に準拠して、市販の光沢度計(ディジタル光沢計 GM−260D型:村上色彩研究所株式会社製)を用いて、75度鏡面光沢度を測定した。
【0084】
<光沢発現層の面質>
実施例および比較例で作製した用紙の光沢発現層の面質について、以下の基準で判定した。
◎:全く欠点が見られず、面質が良好である。
○:面が荒れた箇所が数カ所見られるが、概ね面質は良好である。
△:全体的に面が荒れている、あるいはクレーター状のボコツキが数カ所見られる。
×:クレーター状のボコツキが多発している、あるいは光沢発現層の剥がれている箇所があり、実用不能である。
【0085】
<印字濃度>
実施例および比較例で作製した用紙をA4判に断裁した後、該用紙の光沢発現層側に市販のインクジェットプリンター(PM800C:セイコーエプソン株式会社製)を用いて、ブラックのベタパターンを印字し、印字濃度をマクベスRD919を用いて測定した。値は大きい方が印字濃度が高く印字性が良好であることを示す。
【0086】
<白紙黄変性>
実施例および比較例で作製した用紙の光沢発現層面について、キセノンアークフェードメーター、アトラス製Ci−35fを用い、ブラックパネル温度63℃、相対湿度65%RHの環境下で30時間の光照射を行った。光照射後のISO白色度、蛍光強度、および光照射前後の白紙部の色差を測定した。色差は、L*a*b*(CIE1976)に従って光照射前後のサンプルの色を測定した結果を基に、下記数1で規定することができる。色差が大きいほど、色劣化が生じていることを示し、色差が3.0以下であれば実用上問題ないレベルと判断できる。
【0087】
【数1】
△E={(△L*)2+(△a*)2+(△b*)2}1/2
ここで、△Eは色差、△L*、△a*、△b*は、各々光照射前後のL*、a*、b*の差である。
【0088】
【表1】
【0089】
表1から明らかなように、原紙上に少なくとも蛍光増白剤とケン化度95%以上のポリビニルアルコールを含有する蛍光増白層、インク受理層、光沢発現層を順次積層し、かつ該インクジェット記録用紙の光沢発現層側のISO白色度85%以上とした本発明のインクジェット記録用紙は、画像の発色が高く、経時での画像の劣化、特に光による白紙部の黄変が少なく良好である。特に、ポリビニルアルコールの重合度が1200以下である実施例3〜9、11は、光沢発現層の面質が良好であり、耐光性試験後の白紙黄変も起こりにくくなり好ましい。面質、光沢度、印字濃度を考慮すると、原紙上に蛍光増白層、インク吸収層を順次設けた状態におけるJIS P−8117に規定される透気抵抗度を10秒以上2500秒以下とすることが好ましい。透気抵抗度を上記範囲にするために、実施例7のように蛍光増白層に顔料を配合したり、実施例8のようにカチオン樹脂を配合したりすることができる。特に、蛍光増白層にカチオン樹脂を配合した実施例8は、配合しない実施例4に比べ、ISO白色度を高めることが可能となり、白紙黄変も起こりにくくなるため好ましい。さらに、同時多層塗布方式により、原紙上に、蛍光増白層、インク受理層を積層した実施例9では、上記特性がよりいっそう向上し、特に好ましい実施形態となる。インクジェット記録用紙がキャスト光沢紙である実施例1〜9は、スーパーカレンダー処理により光沢仕上げを行っている実施例10、11に比べ、光沢度が著しく向上しており、印字品位が向上するため好ましい。
【0090】
一方、比較例1のように蛍光増白剤を配合しないと、十分なISO白色度が得られず、画像の発色が低下する。インク受理層に蛍光増白剤を配合した比較例2では、白紙黄変が起こりやすい。また、比較例3〜7のように、蛍光増白層が、蛍光増白剤とケン化度95%以上のポリビニルアルコールをともに含有しないと、ISO白色度が低下する傾向があり画像の発色が低下し、白紙黄変も起こりやすい。
【0091】
【発明の効果】
本発明のインクジェット記録用紙は、原紙上に、少なくとも蛍光増白剤とケン化度95%以上のポリビニルアルコールを含有する蛍光増白層、インク受理層、光沢発現層を順次積層した構成であり、かつ該インクジェット記録用紙の光沢発現層側のJIS P−8148に規定されるISO白色度を85%以上としたことを特徴とする。該構成とすることにより、経時での白紙部の黄変、画像部の劣化が少なく、記録した画像の発色に優れるインクジェット記録用紙とすることが可能となる。
Claims (7)
- 原紙、インク受理層、光沢発現層を順次設けてなるインクジェット記録用紙において、少なくとも蛍光増白剤とケン化度95%以上のポリビニルアルコールを含有する蛍光増白層が原紙とインク受理層との間に設けられており、かつ該インクジェット記録用紙の光沢発現層側のJIS P−8148に規定されるISO白色度が85%以上であることを特徴とするインクジェット記録用紙。
- 該ポリビニルアルコールの重合度が1200以下である請求項1記載のインクジェット記録用紙。
- 原紙上に蛍光増白層、インク受理層を順次設けた状態におけるJIS P−8117に規定される透気抵抗度が10秒以上2500秒以下である請求項1または2記載のインクジェット記録用紙。
- 蛍光増白層が顔料を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項記載のインクジェット記録用紙。
- 蛍光増白層がカチオン樹脂を含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項記載のインクジェット記録用紙。
- 該インクジェット記録用紙がキャスト光沢紙である請求項1〜5のいずれか一項記載のインクジェット記録用紙。
- 少なくとも蛍光増白層、インク受理層の2層を、同時多層塗布方式により原紙上に積層することを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項記載のインクジェット記録用紙の製造方法。
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