JP4097877B2 - 医療検査用カセット - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、医療検査用顕微鏡標本の作製に使用する医療検査用カセットに関し、更に詳しくは、片手で容易且つ安定的に蓋を開閉でき、作業性の向上した医療検査用カセットに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来のこの種のカセットは、図13に示すように、耐薬品性合成樹脂からなるカセット本体1と蓋2とを具備してなる。カセット本体1は、上面を開放した方形の容器で、底部に多数の透孔3を有し、短辺側の一側壁の外側に底部に向かって末広がり状に傾斜した板状の記録部4を設け、その内側に係止溝5を有し、他の側壁の外側に係止部6を有する。
【0003】
蓋2は、着脱可能な板状体で、板面に多数の透孔7を有し、裏面の外周面に沿ってカセット本体内に嵌合するリブ8を有し、短辺側の一方側には前記係止溝5の記録部4の裏面に沿って嵌入係合する傾斜状係止片9を有し、短辺側の他方側にはカセット本体1よりも僅かに大き目の突縁部10を有し、係合部6と係合する係止片11を有している。
【0004】
上記カセットを使用して顕微鏡標本を作製するには、まず、採取した検体12をカセット本体1内に収容して蓋2を取り付け、記録部4に被検者の氏名等を記録しておく。蓋2の傾斜状係止片9は、カセット本体1の係止溝5に係合し、また係止片11はカセット本体1の係止部6に係合して蓋2を固定する。
【0005】
続いて、透孔7、3を通じて、検体12を水洗し、次いでアルコールにより検体12の水分を除去し、キシレンにより後述する液状パラフィンとの親和性を付与する。
【0006】
次に、図14に示すように、ステンレス製トレイ13内に液状パラフィン14を入れ、検体12をカセット本体1から取り出して液状パラフィン14中に置いて検体12に液状パラフィンを浸透させる。続いて、トレイ13の段部にカセット本体1を載せ、カセット本体1の底部が液状パラフィン14に浸るまで、液状パラフィン14を検体12上に注ぎ足す。
【0007】
液状パラフィン14が固化した後トレイ13を取り去ることにより、検体12を包埋したパラフィン14がカセット本体1の底部に付着してなるカセットブロック15(図15参照)を得る。
【0008】
次に、図15に示すように、ミクロトーム16上に装着したアダプター17の基台18上にカセットブロック15を裏返して載せ、固定する。アダプター17は、レバー19の操作により、基台18に設けた固定腕20と可動腕21との間にカセット本体1を挟持して固定する。その際、カセット本体1が記録部4の傾斜により浮き上がるのを防止するため、両腕20、21の先端に形成した係止爪22がカセット本体1の底部の角に係合する。続いて、パラフィン14の検体12を包埋した部分を矢印a方向にスライスし、スライスした薄片に染色、その他の所定の処理を施すことにより顕微鏡標本を得るのである。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
上記カセットは、通常、一方の片手にピンセットを持ち、他方の片手で、例えば図16に示す如く、蓋2のP点付近に人指し指を掛け、蓋2の突縁部10に親指をかけた状態でP点を人指し指で少し押圧して該P点の両側を若干上方に反り返らせることにより蓋2の係止片11をカセット本体1の係止部6から離脱させ、蓋2を上方に取り除き、もう一方の片手のピンセットを操作して検体をカセット本体1内に収容させる。そして、上記したように、水洗、薬剤処理を行った後、上記と同様の操作で片手で蓋2を取り去り、他方の片手のピンセットで検体12をカセット本体1から取り出して液状パラフィン14中に置いてカセットブロックが作成される。
【0010】
しかるに、上記の如き従来のカセットにあっては、蓋2の裏面に設けたリブ8の傾斜状係止片9側の先端角部8aがカセット本体1の側壁先端角部1aに引っ掛り、蓋2を無理矢理上方に持ち上げてカセット本体1から取り去ろうとすると、蓋2が、先端角部8aが側壁先端角部1aから外れると同時にピンとはね上がることになり、その勢いで、カセット本体1内の検体12がカセット本体1の外へ飛び出してしまい、貴重な検体12を台無しにすることになる。
【0011】
上記トラブルを回避しようとすれば、一旦両手を使って蓋2がはね上がることがないように慎重にカセット本体1から取り去り、次いで、ピンセットを使って検体12を取り出すことになり、片手でピンセットを持ち、他方の片手で蓋を開けるという効率的な作業は不可能となり、従って、作業性は大巾に低下せざるを得ない。
【0012】
本発明は、上記の如き欠点を解消し、片手で容易且つ安定的に開閉でき、作業性の改善された医療検査用カセットを提供するものである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
即ち、本発明の第1は、耐薬品性材料からなるカセット本体と蓋を具備してなり、
カセット本体が、上面を開放した、検体を収容し得る方形の容器で、多数の透孔を有し、短辺側の一側壁Aの外側に底部に向かって末広がり状に傾斜した板状の記録部を備えるとともに、その内側に係止溝を有し、他の側壁Bの外側に係止部を有し、
蓋が多数の透孔を有し、裏面の外周面に沿ってカセット本体内に嵌合するリブを有し、短辺側の一方側には前記係止溝に記録部裏面に沿って嵌入係合する傾斜状係止片を、他方側にはカセット本体よりも僅かに大き目の突縁部を有し、前記係止部と係合する係止片を有してなる医療検査用カセットにおいて、
前記カセット本体の側壁Aの内面と嵌合するリブの先端角部を除去した形状からなることを特徴とする医療検査用カセットを内容とする(請求項1)。
【0014】
本発明の第2は、耐薬品性材料からなるカセット本体と蓋を具備してなり、
カセット本体が、上面を開放した、検体を収容し得る方形の容器で、多数の透孔を有し、短辺側の一側壁Aの外側に底部に向かって末広がり状に傾斜した板状の記録部を備えるとともに、その内側に係止溝を有し、他の側壁Bの外側に係止部を有し、
蓋が多数の透孔を有し、裏面の外周面に沿ってカセット本体内に嵌合するリブを有し、短辺側の一方側には前記係止溝に記録部裏面に沿って嵌入係合する傾斜状係止片を、他方側にはカセット本体よりも僅かに大き目の突縁部を有し、前記係止部と係合する係止片を有してなる医療検査用カセットにおいて、
前記カセット本体の側壁Aの内面と嵌合するリブの高さを小さくしたことを特徴とする医療検査用カセットを内容とする(請求項2)。
【0015】
本発明の第3は、耐薬品性材料からなるカセット本体と蓋を具備してなり、
カセット本体が、上面を開放した、検体を収容し得る方形の容器で、多数の透孔を有し、短辺側の一側壁Aの外側に底部に向かって末広がり状に傾斜した板状の記録部を備えるとともに、その内側に係止溝を有し、他の側壁Bの外側に係止部を有し、
蓋が多数の透孔を有し、裏面の外周面に沿ってカセット本体内に嵌合するリブを有し、短辺側の一方側には前記係止溝に記録部裏面に沿って嵌入係合する傾斜状係止片を、他方側はカセット本体よりも僅かに大き目の突縁部を有し、前記係止部と係合する係止片を有してなる医療検査用カセットにおいて、
前記側壁Aの内側先端角部を除去した形状からなることを特徴とする医療検査用カセットを内容とする(請求項3)。
【0016】
好ましい態様として、カセット本体が仕切壁により区画され、蓋が裏面に前記仕切壁を両側から挟着するリブを有する請求項1〜3のいずれか1項に記載の医療検査用カセットである(請求項4)。
【0017】
好ましい態様として、仕切壁を両側から挟着したリブのいずれか一方又は両方の仕切壁と接する側の先端角部を除去した形状からなる請求項4記載の医療検査用カセットである(請求項5)。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を実施例を示す図面に基づいて詳細に説明するが、本発明はかかる実施例のみに限定されないことは云うまでもない。
【0019】
実施例1
本実施例の医療検査用カセットは、図1、図2に示すように、耐薬品性材料からなるカセット本体1と蓋2とを具備してなり、カセット本体1が、上面を開放した、検体を収容し得る方形の容器で、多数の透孔3を有し、短辺側の一側壁Aの外側に底部に向かって末広がり状に傾斜した板状の記録部4を備えるとともに、その内側に係止溝5を有し、他の側壁Bの外側に係止部6を有してなる。
【0020】
一方、蓋2が多数の透孔を有し、裏面の外周面に沿ってカセット本体1内に嵌合するリブ8を有し、短辺側の一方側には前記係止溝5に記録部4の裏面に沿って嵌入係合する傾斜状係止片9を、他方側にはカセット本体1よりも僅かに大き目の突縁部10を有し、前記係止部6と係合する係止片11を有してなる。
【0021】
そして、前記カセット本体1の側壁Aの内面と嵌合するリブ8が、該側壁Aの先端1aの内面と接する側8aの先端角部を除去した形状から構成されている。
【0022】
上記カセットは、通常、片手にピンセットを持ち、片手で、例えば図2に示す如く、蓋2のP点付近に人指し指を掛け、蓋2の突縁部10に親指をかけた状態でP点を人指し指で少し押圧して該P点の両側を若干上方に反り返らせることにより蓋2の係止片11をカセット本体1の係止部6から離脱させ、蓋2を上方に取り除き、他方の片手のピンセットを操作して検体をカセット本体1内に収容させる。そして、上記したように、水洗、薬剤処理を行った後、上記と同様の操作で片手で蓋2を取り去り、他方の片手のピンセットで検体12をカセット本体1から取り出して液状パラフィン14中に置いてカセットブロックが作成される。
【0023】
この場合において、蓋2のリブ8は、側壁Aの先端1aの内面と接する側8aがその先端角部を除去した形状からなるため、リブ8と側壁Aの先端1aとが引っ掛かるということがなく、蓋2は片手で容易且つスムーズに開けられ、検体のカセット本体1内への収容及び取り出しを容易に行うことができる。
【0024】
尚、図ではリブ8の側壁Aの先端1aの内面と接する側8の先端角部をアールを付けることにより角部を除去しているが、先端から根元部に広がる傾斜状としてもよい。
【0025】
本発明に使用される耐薬品材料としては、特に制限はなく、例えばポリアセタール、ポリカーボネート、フッ素樹脂等が好適である。
【0026】
実施例2
本発明は図3、図4に示すように、カセット本体1の側壁Aの内面と嵌合する、蓋2の裏面に設けたリブ8の該側壁Aの先端1aの内面と接する側8aの高さを小さくした他は実施例1と同じである。
この場合においても、リブ8と側壁Aの先端1aとが引っ掛かるということがなく、蓋2は片手で容易且つスムーズに開けられ、検体のカセット本体1内への収容及び取り出しを容易に行うことができる。
【0027】
尚、図3においては、リブ8の高さが側壁Bの側から側壁Aの側へ連続的に小さくなるように構成されているが、側壁Aの近傍部のみを小さくしてもよい。
【0028】
実施例3
本実施例は図5、図6に示すように、カセット本体1の側壁Aの先端1aの内側角部を除去した形状(図では傾斜状)とした他は実施例1と同じである。
この場合においても、リブ8と側壁Aの先端1aとが引っ掛かるということがなく、蓋2は片手で容易且つスムーズに開けられ、検体のカセット本体1内への収容及び取り出しを容易に行うことができる。
【0029】
実施例4
本実施例は図7〜図11に示すように、カセット本体1が仕切壁23により9個の小室に区画され(図8)、蓋2が上記仕切壁23を両側から挟着するように、仕切壁23の両側に2条のリブ8が設けられ(図9)、蓋2のリブ8の側壁Aの先端1aの内面と接する側8aが、その高さを小さくするとともに先端角部を除去した構成からなっている(図10)。
この場合においても、リブ8と側壁Aの先端1aとが引っ掛かるということがなく、蓋2は片手で容易且つスムーズに開けられ、検体のカセット本体1(9個の小室)内への収容及び取り出しを容易に行うことができる。
【0030】
本実施例の場合は9個の小室からなるので、同時に9個の検体が処理されるものであるが、勿論9個に限られず所望の数の小室を設けることが可能である。しかし、前記したように、既存のミクロトーム等の装置を使用する場合には、カセットの大きさに自ら制約があり、従って、複数個の小室を設ける場合は、2〜9個程度が好ましい。9個を越えると、小室のサイズが小さくなり過ぎ、収容、処理する検体のサイズも制限され不都合な場合がある。
【0031】
実施例5
本実施例は図12に示すように、実施例4において、更に仕切壁23を両側から挟着する2条のリブ8の仕切壁23と接する側の先端角部を除去した構成とした他は実施例4と同じである。
このように構成することにより、蓋を開ける際に仕切壁23とリブ8との摩擦が小さくなり、片手での開蓋操作を一層容易に行うことができる。
【0032】
【発明の効果】
叙上のとおり、本発明によれば、一方の片手でピンセットを持ったまま、他方の片手で蓋を容易且つ安定的に開閉できるので、両手を使用したりする必要がなく効率的であり、また開蓋時に貴重な検体がカセット本体より飛び出すといったトラブルも皆無となり、作業性、効率性は飛躍的に改善される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のカセットの実施例を示す概略断面図である。
【図2】図1のカセットの蓋を開ける状態を示す概略図である。
【図3】本発明のカセットの他の実施例を示す概略断面図である。
【図4】図3のカセットの蓋を開ける状態を示す概略図である。
【図5】本発明のカセットの他の実施例を示す概略断面図である。
【図6】図5のカセットの蓋を開ける状態を示す概略図である。
【図7】本発明のカセットの別の実施例を示す上面図である。
【図8】図7のカセットのカセット本体の上面図である。
【図9】図7のカセットの蓋の裏面図である。
【図10】図7のカセットの長さ方向の断面図である。
【図11】図7のカセットの巾方向の断面図である。
【図12】本発明のカセットの更に別の実施例を示す概略断面図である。
【図13】従来のカセットを示す概略断面図である。
【図14】従来のカセットを用いて検体をパラフィンに包埋させる状態を示す概略断面図である。
【図15】図14で得られるパラフィンブロックをミクロトームでスライスする状態を示す概略図である。
【図16】従来のカセットの蓋を開ける状態を示す概略図である。
【符号の説明】
1 カセット本体 2 蓋
3 透孔 4 記録部
5 係止溝 6 係止部
7 透孔 8 リブ
9 傾斜状係止片 10 突縁部
11 係止片 12 検体
13 トレイ 14 パラフィン
15 カセットブロック 16 ミクロトーム
17 アダプター 18 基台
19 レバー 20 固定腕
21 可動腕 22 係止爪
Claims (5)
- 耐薬品性材料からなるカセット本体と蓋を具備してなり、
カセット本体が、上面を開放した、検体を収容し得る方形の容器で、多数の透孔を有し、短辺側の一側壁Aの外側に底部に向かって末広がり状に傾斜した板状の記録部を備えるとともに、その内側に係止溝を有し、他の側壁Bの外側に係止部を有し、
蓋が多数の透孔を有し、裏面の外周面に沿ってカセット本体内に嵌合するリブを有し、短辺側の一方側には前記係止溝に記録部裏面に沿って嵌入係合する傾斜状係止片を、他方側にはカセット本体よりも僅かに大き目の突縁部を有し、前記係止部と係合する係止片を有してなる医療検査用カセットにおいて、
前記カセット本体の側壁Aの内面と嵌合するリブの先端角部を除去した形状からなることを特徴とする医療検査用カセット。 - 耐薬品性材料からなるカセット本体と蓋を具備してなり、
カセット本体が、上面を開放した、検体を収容し得る方形の容器で、多数の透孔を有し、短辺側の一側壁Aの外側に底部に向かって末広がり状に傾斜した板状の記録部を備えるとともに、その内側に係止溝を有し、他の側壁Bの外側に係止部を有し、
蓋が多数の透孔を有し、裏面の外周面に沿ってカセット本体内に嵌合するリブを有し、短辺側の一方側には前記係止溝に記録部裏面に沿って嵌入係合する傾斜状係止片を、他方側にはカセット本体よりも僅かに大き目の突縁部を有し、前記係止部と係合する係止片を有してなる医療検査用カセットにおいて、
前記カセット本体の側壁Aの内面と嵌合するリブの高さを小さくしたことを特徴とする医療検査用カセット。 - 耐薬品性材料からなるカセット本体と蓋を具備してなり、
カセット本体が、上面を開放した、検体を収容し得る方形の容器で、多数の透孔を有し、短辺側の一側壁Aの外側に底部に向かって末広がり状に傾斜した板状の記録部を備えるとともに、その内側に係止溝を有し、他の側壁Bの外側に係止部を有し、
蓋が多数の透孔を有し、裏面の外周面に沿ってカセット本体内に嵌合するリブを有し、短辺側の一方側には前記係止溝に記録部裏面に沿って嵌入係合する傾斜状係止片を、他方側はカセット本体よりも僅かに大き目の突縁部を有し、前記係止部と係合する係止片を有してなる医療検査用カセットにおいて、
前記側壁Aの内側先端角部を除去した形状からなることを特徴とする医療検査用カセット。 - カセット本体が仕切壁により区画され、蓋が裏面に前記仕切壁を両側から挟着するリブを有する請求項1〜3のいずれか1項に記載の医療検査用カセット。
- 仕切壁を両側から挟着したリブのいずれか一方又は両方の仕切壁と接する側の先端角部を除去した形状からなる請求項4記載の医療検査用カセット。
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