JP4097778B2 - ガス溶解洗浄水供給配管 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ガス溶解洗浄水供給配管に関する。さらに詳しくは、本発明は、電子材料のウェット洗浄工程において、酸化性ガス又は還元性ガスを溶解した洗浄水を長距離移送しても、ユースポイントにガス濃度のほぼ一定した洗浄水を供給することができ、しかもユースポイントにおいて分岐配管から取り出す洗浄水への気泡の混入を防止することができるガス溶解洗浄水供給配管に関する。
【0002】
【従来の技術】
半導体用シリコン基板、液晶用ガラス基板、フォトマスク用石英基板などの電子材料の表面から異物を除去することは、製品の品質、歩留まりを確保する上で極めて重要であり、この目的のためにウェット洗浄が広く行われている。有機物汚染、金属汚染の除去には、強い酸化力を有する洗浄液の適用が有効であり、従来、硫酸と過酸化水素の混合液(SPM洗浄液)や、塩酸と過酸化水素と超純水の混合液(SC2洗浄液)などによる高温洗浄が採用されていた。これらの洗浄法を採用した場合の多大な薬液コスト、リンス用の超純水コスト、廃液処理コスト、薬品蒸気を排気し新たに清浄空気を作る空調コストなどを低減し、さらに水の大量使用、薬物の大量廃棄、排ガスの放出などの環境への負荷を低減するために、近年ウェット洗浄工程の見直しが進められている。
本発明者らは、先に洗浄対象物及び洗浄目的に応じて、純水にオゾン、酸素ガス、水素ガス、炭酸ガス、塩素ガス、窒素ガス、希ガスなどの気体を溶解した電子材料洗浄用のガス溶解洗浄水を開発した。例えば、純水にオゾンを溶解した洗浄水は、溶存オゾン濃度が数mg/リットル程度の低濃度でありながら、極めて高い酸化力を発揮し、電子材料表面に付着した有機物汚染や金属汚染を効果的に除去することができる。また、酸素ガス又は水素ガスを溶解した洗浄水は、電子材料表面に付着した微粒子汚染の除去に有効である。これらのガス溶解洗浄水の多くは、溶存ガスの分解又は除去により高純度の水となり、再利用することができるという利点も有する。しかし、オゾン溶解洗浄水は、溶存オゾンが経時的に自己分解して酸素ガスとなるために、オゾン濃度の維持管理が困難であり、長距離配管による供給は困難とされていた。
これに対し、本発明者らは、先に、オゾン含有ガスと純水とを送給配管内で混合しつつ送給することにより、オゾン濃度の低下が抑制され、長距離配水が可能となることを見いだし、図1に示すオゾン溶解洗浄水供給システムを提案した。酸素ガス容器1と窒素ガス容器2から、無声放電方式のオゾン発生器3に、酸素ガスと微量の窒素ガスの混合ガスを送って、オゾンと酸素ガスの混合ガスを製造し、オゾン溶解装置4において、イオン交換装置、膜装置、紫外線酸化装置などを用いて製造された純水中に、エジェクター、ポンプなどを用いて送り込む。オゾンと酸素ガスの混合ガスは、純水と混合して気液混合状態となり、オゾンが水中に溶解してオゾン溶解洗浄水が生成し、さらに気液混合状態のまま主配管5の中を流れる。水中に溶解したオゾンは、自己分解により酸素ガスとなるが、自己分解によるオゾンの減少分は、気相中のオゾンが水相中に溶解することにより補われるので、水中のオゾン濃度をほぼ一定に保つことができる。オゾン溶解洗浄水は、分岐配管6から取り出され、バッファタンクなどの気液分離装置において気液分離されたのちユースポイント7で消費される。分岐管から取り出されなかった余剰のオゾン溶解洗浄水は、オゾン分解装置8において水相及び気相中のオゾンを分解除去したのち気液分離装置9に導き、気相と水相に分離する。気相は排ガスとして大気開放し、水相は排水として回収し、必要な処理を行って再利用する。
ガス溶解洗浄水中に気泡が混入したままユースポイントで使用されると、微細な気泡が被洗浄物である電子材料の表面に付着し、気泡の表面に集合する異物で電子材料が汚染されるので、ユースポイントで使用されるガス溶解洗浄水は、完全に気泡を含まない状態としなければならない。オゾン溶解洗浄水のみならず、酸素ガス溶解洗浄水や水素ガス洗浄水なども、純水の配管に酸素ガスや水素ガスなどを送り込み、インラインミキサーなどを利用して配管中で直接ガス溶解洗浄水を調製する場合などには、ユースポイントにおいて気液分離を行う必要がある。しかし、ユースポイントごとにバッファタンクなどの気液分離装置を設けた装置は複雑であり、その管理も煩雑であるために、ガス溶解洗浄水の気液分離を容易に行うことができる簡便な装置が求められるようになった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、電子材料のウェット洗浄工程において、酸化性ガス又は還元性ガスを溶解した洗浄水を長距離移送しても、ユースポイントにガス濃度のほぼ一定した洗浄水を供給することができ、しかもユースポイントにおいて分岐配管から取り出す洗浄水への気泡の混入を防止することができるガス溶解洗浄水供給配管を提供することを目的としてなされたものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、ガス溶解洗浄水を気液混合状態で移送する主配管に、分岐配管を下向きに取り付けて洗浄水を取り出し、かつ分岐配管に流量調整弁を取り付けて分岐配管内の洗浄水の流速を低下させることにより、気泡を含まない状態で洗浄水を取り出すことが可能となることを見いだし、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
(1)ユースポイントにガス溶解洗浄水を供給する供給配管において、純水にオゾンガスを溶解した洗浄水を、オゾンガスの共存下に移送する主配管に、主配管から洗浄水を取り出す分岐配管をほぼ水平の主配管から下向きに取り付け、分岐配管に流量調整弁を取り付けてなることを特徴とするガス溶解洗浄水供給配管、及び
(2)第(1)項のガス溶解洗浄水供給配管を用いるガス溶解洗浄水供給方法において、分岐配管に取り付けられた流量調整弁によって、分岐配管内の洗浄水の流速を主配管内の洗浄の流速より小さく調整することを特徴とするガス溶解洗浄水供給方法、
を提供するものである。
【0005】
【発明の実施の形態】
本発明のガス溶解洗浄水送給配管は、純水に酸化性ガス又は還元性ガスを溶解した洗浄水を、酸化性ガス又は還元性ガスの共存下に移送する主配管に、主配管から洗浄水を取り出す分岐配管を下向きに取り付け、分岐配管に流量調整弁を取り付けてなるものである。図2は、本発明の配管の一態様の説明図である。純水又は超純水を水供給配管10に供給し、ガス溶解装置11において、酸化性ガス又は還元性ガスを供給して純水又は超純水に溶解させ、洗浄水を調製する。ガス溶解装置に供給する酸化性ガス又は還元性ガスは、必要に応じてあらかじめ洗浄し、目的とする酸化性ガス又は還元性ガス以外のガス成分や、微粒子などの不純物を除去することが好ましい。本発明に用いるガス溶解装置に特に制限はなく、例えば、エジェクター方式のガス溶解装置、ガスを純水中に散気する散気方式の溶解装置、気体透過膜の一方の側に供給したガスを気体透過膜を介して他方の側の純水に溶解させる気体透過膜方式の溶解装置などを挙げることができる。
本発明の配管において、ガス溶解装置から流出する洗浄水は、未溶解の酸化性ガス又は還元性ガスとの気液混合流体として、洗浄水を使用するユースポイント近傍まで、主配管を通じて送給される。散気方式や、気体透過膜方式の溶解装置を用いた場合は、ガス溶解装置からそれぞれ流出する洗浄水と酸化性ガス又は還元性ガスが、ともに主配管に導入され、気液混合状態で送給される。通常、電子材料工場などには、ユースポイントが複数個所あり、それぞれのユースポイントで純水に酸化性ガス又は還元性ガスを溶解して洗浄水を製造するよりも、一カ所で製造した洗浄水をそれぞれのユースポイントに配管で連絡し、供給する方が設備的及び経済的に有利である。しかし、配管が長距離化すると、オゾンのように自己分解性を有するガスを溶解した洗浄水では、ガスの自己分解よる濃度の低下が問題になる。
【0006】
酸化性ガスがオゾンである場合、ガス溶解装置から流出するオゾン溶解洗浄水を、未溶解のオゾン含有ガスとの気液混合流体として主配管を通じて送給すると、ユースポイントにおいて使用されるオゾン溶解洗浄水の溶存オゾン濃度をほぼ一定とすることができる。図3は、オゾン定濃度保持機構の説明図である。図3において、横軸は主配管長を表し、縦軸は溶存オゾン濃度を表す。ガス溶解装置Aにおいてオゾン含有ガスが純水に供給されると、オゾンが純水に溶解して溶存オゾン濃度は急速に上昇する。しかし、純水に溶解したオゾンの濃度が高くなると、水中における自己分解によるオゾンの消失が多くなる。一方、ガス状態で存在するオゾンは水に溶解したオゾンよりも安定なので、水流に随伴する未溶解ガス中に存在するオゾンが水中に溶け込む。その結果、B点において、水中で自己分解により消失するオゾンの量と、随伴する未溶解ガスから水中に溶け込むオゾンの量が均衡し、オゾン溶解洗浄水中の溶存オゾン濃度はほぼ一定の値に保たれる。オゾン溶解洗浄水が、主配管のさらに下流へ流れると、随伴する未溶解ガス中のオゾンの量が減少し、C点において、水中で自己分解により消失するオゾンの量と、随伴する未溶解ガスから水中に溶け込むオゾンの量が均衡を保つことが困難となり、溶存オゾン濃度は低下しはじめる。B点とC点の間にオゾン溶解洗浄水を取り出す分岐配管を配設することにより、長距離移送であっても安定してユースポイントに所定濃度のオゾン水を供給することができる。
酸化性ガス又は還元性ガスが酸素ガスや水素ガスのように自己分解性を有しないガスであっても、純水の配管に付設したガス溶解装置にガスを送り込み、インラインミキサーなどを利用して主配管内で直接ガス溶解洗浄水を調製する場合には、洗浄水は、酸化性ガス又は還元性ガスの共存下に主配管中を移送される。また、散気方式や気体透過膜方式でガス溶解洗浄水を調製した場合であっても、主配管中に酸化性ガス又は還元性ガスを供給して、常に気液平衡状態を保つことにより、洗浄水中のガス濃度を安定することができる。
【0007】
本発明のガス溶解洗浄水供給配管においては、酸化性ガス又は還元性ガスを溶解した洗浄水が、酸化性ガス又は還元性ガスの共存下に、気液混合状態で主配管12内を移送され、ユースポイント近傍において、主配管から枝分かれし、下向きに取り付けられた分岐配管13より取り出される。分岐配管は、主配管内の流れが安定し、気相が主配管の上部のみに存在し、水流内に気泡が巻き込まれていない位置に配設することが好ましい。主配管には、通常、立ち上がりや、立ち下がり箇所があるので、このような垂直に近い主配管を避け、垂直部からの距離が50cm以上であり、かつ主配管がほぼ水平に設置されている位置に分岐配管を配設することが好ましい。分岐配管を、主配管から下向きに取り付けることにより、主配管内で配管上部に集まって移動する気相を巻き込むことなく、気泡を含まない洗浄水のみを取り出すことができる。
本発明のガス溶解洗浄水供給配管においては、分岐配管に流量調整弁14を取り付ける。使用する流量調整弁に特に制限はなく、例えば、玉形弁、ニードル弁、バタフライ弁などを絞り弁として用いることができる。分岐配管に流量調整弁を設け、分岐配管内の洗浄水の流速を調節することにより、主配管からの気泡の巻き込みを防止することができる。分岐配管内の洗浄水の流速は、主配管内の洗浄水の流速より小さいことが好ましく、主配管内の洗浄水の流速の85%未満であることがより好ましく、主配管内の洗浄水の流速の70%未満であることがさらに好ましい。
本発明のガス溶解洗浄水供給配管を用いることにより、ユースポイント近傍にバッファタンクなどの気液分離装置を設けることなく、完全に気液分離し、気泡を含まない酸化性ガス又は還元性ガスを溶解した洗浄水を取り出すことができるので、設備コストと管理コストを低減することができる。また、気液分離装置の管理不良による洗浄水の汚染を生ずるおそれもない。
【0008】
【実施例】
以下に、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によりなんら限定されるものではない。
実施例1
図4は、本実施例に用いた試験配管の概略図である。純水供給配管にオゾン溶解装置としてオゾン溶解用エジェクター15を接続し、さらにオゾン溶解用エジェクターに内径20mmの半透明のポリフッ化ビニリデンパイプを接続して主配管16とした。オゾン溶解用エジェクターから70cm離れた位置に、内径20mmの半透明のポリフッ化ビニリデンパイプで作られた分岐配管17を下向きに取り付け、テフロン製コネクター18を介して内径20mmの透明テフロンチューブ19を接続した。透明テフロンチューブの中間に、接液部がテフロンであるニードル弁20を設け、透明テフロンチューブの末端は、容量10リットルのメスシリンダー21の中に収めた。
純水は、定量ポンプ(図示していない。)を用いて純水供給配管に供給した。オゾン発生装置(図示していない。)として、住友精密工業(株)製の無声放電式オゾン発生装置SG−01CHUを用いた。オゾン発生装置に高純度酸素ガスと微量の高純度窒素ガスの混合ガスを送り込み、オゾン含有量が10重量%であるオゾン含有ガスを発生させた。オゾン含有ガスは、純水とオゾン含有ガスの混合比が3.5(L/G容量比)になるように、オゾン溶解用エジェクターに送り込んだ。
主配管の水流量412リットル/hr、流速0.36m/sec、分岐配管の水流量138リットル/hr、流速0.12m/secのとき、透明テフロンチューブ内にも、メスシリンダー内にも、目視によっては、気泡の存在は認められなかった。
定量ポンプによる純水の供給量を漸次減少し、ニードル弁を開いて、分岐配管へのオゾン溶解洗浄水の取り出し量を漸次増加した。主配管の水流量370リットル/hr、流速0.33m/sec、分岐配管の水流量180リットル/hr、流速0.16m/secのときも、主配管の水流量334リットル/hr、流速0.30m/sec、分岐配管の水流量216リットル/hr、流速0.19m/secのときも、透明テフロンチューブ内、メスシリンダー内ともに、目視によっては、気泡の存在は認められなかった。
さらに、定量ポンプによる純水の供給量を減少し、ニードル弁を開いて、分岐配管へのオゾン溶解洗浄水の取り出し量を増加したところ、主配管の水流量298リットル/hr、流速0.26m/sec、分岐配管の水流量252リットル/hr、流速0.22m/secとなったとき、透明テフロンチューブ内及びメスシリンダー内への気泡の移行が観察された。
主配管水流量と流速V1、分岐配管の水流量と流速V2、流速比V2/V1及び目視により観察された気泡の有無を第1表に示す。
【0009】
【表1】
【0010】
第1表の結果から、分岐配管の流速V2と主配管の流速V1の比、V2/V1、が0.85以上になると分岐配管中に気泡が移行するが、V2/V1を0.85未満とすることにより、バッファタンクなどの気液分離装置を設置しなくても、主配管から気泡の巻き込みのないガス溶解洗浄水を取り出して、ユースポイントで使用し得ることが分かる。
【0011】
【発明の効果】
本発明のガス溶解洗浄水供給配管によれば、オゾン含有ガス、酸素ガス、水素ガスなどの酸化性ガス又は還元性ガスと純水を、主配管内で混合しつつ通水するガス溶解洗浄水供給システムにおいて、分岐配管に気液分離装置を設けることなく、ユースポイントにおいて気液分離された気泡の巻き込みのないガス溶解洗浄水を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、従来のオゾン溶解洗浄水供給システムの工程系統図である。
【図2】図2は、本発明の配管の一態様の説明図である。
【図3】図3は、オゾン定濃度保持機構の説明図である。
【図4】図4は、実施例に用いた試験配管の概略図である。
【符号の説明】
1 酸素ガス容器
2 窒素ガス容器
3 オゾン発生器
4 オゾン溶解装置
5 主配管
6 分岐配管
7 ユースポイント
8 オゾン分解装置
9 気液分離装置
10 水供給配管
11 ガス溶解装置
12 主配管
13 分岐配管
14 流量調整弁
15 オゾン溶解用エジェクター
16 主配管
17 分岐配管
18 テフロン製コネクター
19 透明テフロンチューブ
20 ニードル弁
21 メスシリンダー
Claims (2)
- ユースポイントにガス溶解洗浄水を供給する供給配管において、純水にオゾンガスを溶解した洗浄水を、オゾンガスの共存下に移送する主配管に、主配管から洗浄水を取り出す分岐配管をほぼ水平の主配管から下向きに取り付け、分岐配管に流量調整弁を取り付けてなることを特徴とするガス溶解洗浄水供給配管。
- 請求項1のガス溶解洗浄水供給配管を用いるガス溶解洗浄水供給方法において、分岐配管に取り付けられた流量調整弁によって、分岐配管内の洗浄水の流速を主配管内の洗浄の流速より小さく調整することを特徴とするガス溶解洗浄水供給方法。
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