JP4096589B2 - インクジェットヘッドの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はインクジェットヘッドの製造方法に関し、詳しくは、インク吐出口が形成される部位の周辺に凹部を有し、その表面に撥インク膜が形成されてなるノズルプレートを有するインクジェットヘッドの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
インク吐出口からインクを微細な液滴状に吐出することにより画像記録を行うためのインクジェットヘッドは、常に安定したインク吐出により高品質な画像記録を実現するため、ノズル吐出口から吐出されるインクの直進性が高度に要求される。このノズル吐出口の周辺にインクが付着すると、インク吐出口から吐出されるインクに曲がりが発生し、インクの直進性が損なわれてしまう。このため、ノズルプレートの表面(インク吐出側の面)に撥インク膜を形成することによって撥インク性を付与し、ノズル吐出口の周縁部にインクが付着しないようにしてインク吐出時の直進性を損ねないようにしている。
【0003】
かかる撥インク膜は、インク吐出口内に入り込んで目詰まりを生じさせることのないようにノズルプレート表面のみに形成することが望まれる。このため、従来、特開平6−87216号に開示されているように、ノズルプレート材料の表面に撥インク膜を形成した後、該撥インク膜の表面にポリイミド樹脂シート等からなる保護部材を添着し、そのノズルプレート材料における保護部材添着面とは反対側の面から、上記ノズルプレート材料及び撥インク膜を貫通し且つ上記保護部材の一部を除去する程度にレーザー光を照射し、しかる後、保護部材を剥離してノズル吐出口を有するノズルプレートを作成する技術が提案されている。この技術によれば、インク吐出口の穿孔時にノズルプレート材料表面が保護部材により覆われているため、インク吐出口近傍の加工形状を均一に保つことができる利点もある。
【0004】
一方、ノズルプレート表面の撥インク膜は、画像記録時における記録媒体との擦れ等に対する耐久性が悪く、摩耗や剥離等により撥インク性が損なわれると、インク吐出口周辺にインクが付着し、吐出されるインクの曲がりが発生して画像品質を低下させる問題がある。このため、例えば特許第3060526号に開示されているように、ノズルプレート材料表面に凹部を形成し、この凹部内にノズル吐出口を穿孔することで、ノズル吐出口周辺に形成されている撥インク膜を擦れ等の機械的な破壊から保護する技術が知られている。
【0005】
しかし、このように表面に凹部を有するノズルプレート構造では、ノズルプレート表面が平滑ではないために、上記のように保護部材を積層した後にレーザー光の照射によりインク吐出口を形成する場合、特に最も重要なノズル吐出口周辺において保護部材との密着性が悪くなり、保護部材と撥インク膜との間に隙間が生じ、その結果、ノズル吐出口の穿孔後にその周囲の撥インク膜の剥がれが発生したり、インク吐出口形状そのものの乱れが発生する問題がある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明は、インク吐出口が形成される部位の周辺に凹部を有すると共に撥インク膜を有するノズルプレート材料表面に保護部材を形成した後、インク吐出口の形成を行う場合に、上記凹部における保護部材とノズルプレート材料表面との間の密着性を高め、ノズル吐出口穿孔後の撥インク膜の剥がれやインク吐出口形状の乱れの発生のないインクジェットヘッドの製造方法を提供することを課題とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決する請求項1記載の発明は、ノズルプレート材料表面におけるインク吐出口が形成される部位の周辺に凹部を形成する工程と、前記ノズルプレート材料表面に撥インク膜を形成する工程と、前記撥インク膜の表面に保護部材を加熱及び加圧することにより密着させて貼付する工程と、前記保護部材が貼付されたノズルプレート材料に前記インク吐出口を形成する工程と、前記保護部材を除去する工程と、を有し、且つ前記凹部を形成する工程では、前記撥インク膜の表面に前記保護部材を貼付する工程において前記保護部材を貼付した際に前記凹部と前記保護部材との間に残留する空気を前記ノズルプレート材料の側方へ逃がすための空気逃げ部を、前記凹部から前記ノズルプレート材料の端部に亘って凹設することを特徴とするインクジェットヘッドの製造方法である。
【0008】
請求項2記載の発明は、撥インク膜の表面に保護部材を加熱及び加圧することにより密着させて貼付する工程は、前記撥インク膜の表面に対して保護部材を貼付すると同時に加熱及び加圧して密着させることを特徴とする請求項1記載のインクジェットヘッドの製造方法である。
【0009】
請求項3記載の発明は、撥インク膜の表面に保護部材を加熱及び加圧することにより密着させて貼付する工程は、前記撥インク膜の表面に対して保護部材を常温環境下で貼付した後に、加熱及び加圧して密着させることを特徴とする請求項1記載のインクジェットヘッドの製造方法である。
【0010】
また、上記課題を解決する請求項4記載の発明は、ノズルプレート材料表面におけるインク吐出口が形成される部位の周辺に凹部を形成する工程と、前記ノズルプレート材料表面に撥インク膜を形成する工程と、前記撥インク膜の表面に保護部材を加熱及び加圧することなく密着させて貼付する工程と、前記保護部材が貼付されたノズルプレート材料に前記インク吐出口を形成する工程と、前記保護部材を除去する工程と、を有し、且つ前記凹部を形成する工程では、凹部の深さAとインク吐出口となる部位の端部から該凹部の外周縁までの距離Bとが、1/40≦A/B≦1/25となるように形成すると共に、前記撥インク膜の表面に前記保護部材を貼付する工程において前記保護部材を貼付した際に前記凹部と前記保護部材との間に残留する空気を前記ノズルプレート材料の側方へ逃がすための空気逃げ部を、前記凹部から前記ノズルプレート材料の端部に亘って凹設することを特徴とするインクジェットヘッドの製造方法である。
【0011】
請求項5記載の発明は、凹部の外周部は、該凹部の底面に向けて漸次小径となるテーパー面を構成していることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のインクジェットヘッドの製造方法である。
【0012】
請求項6記載の発明は、前記撥インク膜の表面に前記保護部材を貼付する工程は、前記保護部材と前記ノズルプレート材料とを一対のロール間に通過させて貼付するものであり、前記凹部を形成する工程では、前記空気逃げ部を、前記凹部から前記一対のロール間にニップされる前記ノズルプレート材料の進行方向下流側の端部に亘って凹設することを特徴とする請求項1又は4記載のインクジェットヘッドの製造方法である。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。
【0014】
図1(a)〜(c)は、ノズルプレートの製造工程を示している。
【0015】
まず、図1(a)に示すように、ノズルプレートを作成するためのノズルプレート材料1の表面(インクが吐出される側面)におけるインク吐出口が形成される部位(図1において点線で示す)の周辺に凹部2を形成する。
【0016】
このノズルプレート材料1を構成し得る部材としては、インク吐出口の形成が容易に行える点で合成樹脂を用いることが好ましく、例えば、ポリイミド樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、液晶ポリマー、アロマティックポリアミド樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリサルフォン樹脂等の合成樹脂を挙げることができる。ノズルプレート材料1の厚みは、60〜100μm程度が好ましい。
【0017】
凹部2は、ノズルプレート材料1の表面において、後工程において形成されるノズル吐出口となる部位を含み、且つその周辺に亘って形成される。凹部2を形成する方法としては、エキシマレーザーを照射することによりノズルプレート材料1の表面を掘り込む方法、凹部2となるパターンを形成した後に、ドライエッチングまたはウェットエッチングにより形成する方法、凹部2となるパターンを形成した後に、サンドブラスト処理することにより形成する方法、ノズルプレート材料4表面を打突することにより形成する方法等が挙げられる。
【0018】
凹部2の深さは、0.5〜20μm程度が好ましい。
【0019】
凹部2は、図示するように、その外周部2aが凹部2の底面に向けて漸次小径となるテーパー面を構成していると、後述する保護部材4の貼付時に凹部2内に隙間なくより密接状に貼付することができるために好ましい。テーパーの角度θは15〜75°程度が好ましい。また、同様に、保護部材4を密接状に貼付するため、凹部2の底面は平面とすることが好ましい。
【0020】
なお、ここでは、ノズルプレート材料1は図2に示すように実際に作成されるノズルプレート(点線で示す)よりも大判に形成されており、そこから外形加工することにより複数枚(図示例ではP1及びP2の2枚)のノズルプレートを形成するようにしている。このため、ノズルプレート材料1には、各ノズルプレートP1、P2毎に凹部2の形成を行う。
【0021】
次に、ノズル吐出口が形成される各部位毎に凹部2が形成されたノズルプレート材料1の表面に、図1(b)に示すように撥インク膜3を被覆形成し、ノズルプレート材料1の表面に撥インク性を付与する。
【0022】
撥インク膜3としては、ノズルプレート材料1表面に撥インク性を付与し得ると共に、後工程においてインク吐出口を加工する際に容易に除去可能であれば任意であり、例えば含フッ素樹脂溶液をコーティングする方法、含フッ素樹脂分散液をコーティングした後、加熱溶融処理を施す方法、シリコーン含有樹脂をコーティングする方法、プラズマ重合保護膜を形成する方法、PTFEニッケル共析めっきを施す方法等により形成することができる。
【0023】
この撥インク膜3の膜厚は、0.1〜5μm程度が好ましい。
【0024】
次に、この撥インク膜3が被覆形成されたノズルプレート材料1の表面に保護部材4を貼付する。ここで使用できる保護部材4としては、粘着テープ類、熱可塑性樹脂類が挙げられる。
【0025】
粘着テープ類としては、基材としてポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリイミド樹脂等を使用し、粘着剤としてアクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤等を塗布したものを使用することができる。
【0026】
また、熱可塑性樹脂類としては、ポリエステル樹脂、エチレンアクリル酸共重合物、ポリアミド樹脂、ポリエチレン樹脂等があり、これらを単独で使用したり、基材フィルムにコーティングしたものを使用することもできる。
【0027】
保護部材4の厚さは、50〜200μm程度が好ましい。
【0028】
本発明に係る第1の実施形態では、かかる保護部材4を撥インク膜3が形成されたノズルプレート材料1の表面に貼付する際、ノズルプレート材料1の撥インク膜3の表面に保護部材4を加熱及び加圧することにより密着させて貼付することを特徴としている。保護部材4を貼付する際に加熱することで、保護部材4がノズルプレート材料1の表面形状に馴染んで凹部2内にまで入り込み、更に加圧することにより、図1(d)に示すように、凹部2の底面にまで隙間なく保護部材4を密着状に貼付することができる。
【0029】
加熱温度条件は60〜150℃、加圧条件は0.3〜5MPaが好ましい。加熱温度が60℃よりも低いと、加圧しても保護部材4をノズルプレート材料1の凹部2内に密着させ難くなる。また、150℃よりも高くしても、保護部材4を凹部2内に密着させる効果はさほど変わらず、逆に粘着剤のはみ出し、保護部材4やノズルプレート材料1の変形等の問題が発生する弊害が出易くなるため好ましくない。一方、加圧条件が0.3MPaよりも小さいと、保護部材4と凹部2との間に残留する空気をうまく抜くことができず、凹部2内に保護部材4を密着させることができない。また、5MPaよりも大きくなると、加圧後にノズルプレート材料1にソリが発生し易くなるため好ましくない。
【0030】
撥インク膜3間の表面に保護部材4を密着状に貼付するには、撥インク膜3の表面に対して保護部材4を貼付すると同時に加熱及び加圧して密着させる態様、撥インク膜3の表面に対して保護部材4を常温環境下で貼付した後に、加熱及び加圧して密着させる態様が好ましく採用できる。
【0031】
前者の態様は、2本の加熱加圧ロール間に、ノズルプレート材料1及び保護部材4をニップする熱ラミネート装置を用いて行うことができる。
【0032】
かかる熱ラミネートを行うための装置の一例を図3に示す。R1及びR2は発熱構造を有する加熱圧着ロールであり、金属ロール、樹脂ロール、ゴムロールを用いて構成されている。加熱圧着ロールR1、R2は、その間を通過する部材を加圧して圧着するように所定圧をもって対向状に配置され、図示しない駆動手段により回転可能とされている。
【0033】
一方の加熱圧着ロールR1には、粘着テープロール40から保護部材4としての粘着テープが供給され、他方の加熱圧着ロールR2には、粘着テープがロールR2に張りつかないようにするための例えばポリエチレン樹脂、PET樹脂等からなる支持ベース5が支持ベースロール50から同時に供給されるようになっている。なお、図中、6は加熱圧着ロールR1、R2間を通過した保護部材4とノズルプレート材料1との一体物を搬送させる搬送台である。
【0034】
かかる加熱圧着ロールR1、R2間に、凹部2及びその表面に撥インク膜3が形成されたノズルプレート材料1を、その撥インク膜3が形成された面を保護部材4が供給される加熱圧着ロールR1側にして供給すると、ノズルプレート材料1の表面に保護部材4が加熱圧着ロールR1及びR2間の通過により貼付されると同時に加熱圧着されて密着される。その後、保護部材4付きノズルプレート材料1をノズルプレート材料1のサイズ毎に切断する。
【0035】
また、後者の態様は、撥インク膜3が形成されたノズルプレート材料1の表面に対して保護部材4を常温環境下で貼付し、この貼付の後に、保護部材4付きノズルプレート材料1を加熱及び加圧して保護部材4を撥インク膜3に密着させる。即ち、保護部材4をノズルプレート材料1の表面に貼付する工程と、その貼付された保護部材4をノズルプレート材料1の表面に加熱及び加圧して密着させる工程とを別工程として行う。
【0036】
保護部材4をノズルプレート材料1表面に対して貼付し、その後加熱及び加圧して密着するための装置の一例を図5に示す。R10及びR20は対向状に配置された貼り付けロールであり、図示しない駆動手段により回転可能とされている。一方の貼り付けロールR10には、粘着テープロール40から保護部材4としての粘着テープが供給され、他方の貼り付けロールR20には上記同様に支持ベース5が支持ベースロール50から供給される。
【0037】
また、貼り付けロールR10、R20の下流側には、所定間隔をおいて一対の加熱加圧ロールR11、R21が配置されている。加熱加圧ロールR11、R21は、発熱構造を有し、その間を通過する部材を加圧して圧着するように所定圧をもって対向状に配置され、図示しない駆動手段により回転可能とされている。
【0038】
かかる装置の貼り付けロールR10、R20間に、凹部2及びその表面に撥インク膜3が形成されたノズルプレート材料1を、その撥インク膜3が形成された面を保護部材4が供給される貼り付けロールR10側にして供給すると、ノズルプレート材料1の表面に保護部材4が貼り付けロールR10及びR20間の通過によって貼り付けられる。このときの保護部材4の貼り付けは、常温でノズルプレート材料1表面に対して0.03〜0.5MPa程度の圧力で行う。
【0039】
貼り付けロールR10、R20間を通過した保護部材4付きノズルプレート材料1は、次いで加熱加圧ロールR11、R21間を通過し、この加熱加圧ロールR11、R21によって保護部材4とノズルプレート材料1とが加熱及び加圧されて密着される。このとき、図3に示す態様と同様、加熱温度条件は60〜150℃、加圧条件は0.3〜5MPaが好ましい。その後、保護部材4及びノズルプレート材料1の一体物をノズルプレート材料1のサイズ毎に切断する。
【0040】
このようにノズルプレート材料1の表面に保護部材4を一旦常温環境下で貼付した後、加熱及び加圧することでも、図1(d)に示すように、保護部材4は凹部2内にまで入り込み、その表面形状に沿ってほとんど隙間なく密着させることができる。
【0041】
なお、加熱加圧ロールR11、R21による保護部材4付きノズルプレート材料1の加熱加圧処理は、図5に示すように、貼り付けロールR10、R20の通過後に連続して行うようにするものに限らず、貼り付けロールR10、R20による保護部材4付きノズルプレート材料1の作成と、加熱加圧ロールR11、R21による加熱加圧処理とを非連続的に行うようにしてもよい。
【0042】
次に、以上の方法で撥インク膜3の表面に保護部材4を密着させたノズルプレート材料1に対して、レーザー加工により、図2に示すようにノズルプレートP1、P2となる形状に外形加工を行う。
【0043】
次いで、各ノズルプレート材料1の表面に形成した各凹部2毎にインク吐出口5を穿孔する。このインク吐出口5の穿孔には、微細な加工形成が容易に可能であることからレーザ光の照射によるレーザー加工とすることが好ましい。一般にレーザー加工に使用されるレーザーにはガスレーザーや固体レーザーがあるが、本発明ではそのいずれを用いてもよい。ガスレーザーとしてはエキシマレーザーを挙げることができ、固体レーザーとしてはYAGレーザーを挙げることができる。
【0044】
レーザー加工によるインク吐出口の加工に際しては、ノズルプレート材料1の裏面(保護部材4とは反対側の面)からレーザー光を照射することで、その照射部をエッチングし、インク吐出口7を削成していく。ノズルプレート材料1のエッチングが進行するにつれ、やがてレーザー光はノズルプレート材料1を完全に貫通すると共に、ノズルプレート材料1表面に形成された撥インク膜3をも貫通し、ノズルプレート材料1において凹部2の表面を覆っている保護部材4まで達し、図4(a)に示すように、この保護部材4の一部をもエッチングする。その後、ノズルプレート材料1表面の保護部材5を剥離して除去することでノズルプレートが得られる(図4(b))。
【0045】
保護部材4をノズルプレート材料1の表面に加熱及び加圧することにより密着させて貼付する際、保護部材4の貼り付け時のノズルプレート材料1表面の凹部2内の空気の抜けを良くするため、凹部2には、保護部材4の貼り付け時に保護部材4との間に残留する空気を凹部2内から逃がす空気逃げ部を有するようにすることが好ましい。空気逃げ部は、前記した各ロールR1、R2、R10、R20、R11、R21によってニップされる際の凹部2の下流側に配置される。
【0046】
この空気逃げ部の形成例について図6に示す。なお、図6はノズルプレート材料1の平面図であり、ノズルプレート材料1中の黒点はインク吐出口加工予定位置を、また、白抜き矢印はロール通過時のノズルプレート材料1の進行方向を、更に、斜線部は凹設されている領域をそれぞれ示している。
【0047】
図6(a)は、凹部2を全インク吐出口に亘って棒溝状に凹設形成すると共に、その端部をノズルプレート材料1の端部まで延設することにより、保護部材4の貼り付け時に凹部2内に残留する空気をノズルプレート材料1の進行方向下流側の側方へ逃がすための空気逃げ部2bを形成している。また、(b)は、各インク吐出口毎に形成される平面視略円形状の凹部2を全て連結して所謂数珠状に凹設形成すると共に、その端部をノズルプレート材料1の端部まで延設することにより、保護部材4の貼り付け時に凹部2内に残留する空気をノズルプレート材料1の進行方向下流側の側方へ逃がすための空気逃げ部2bを形成している。
【0048】
図6(c)(d)は、それぞれノズルプレート製品と同形状の1枚のノズルプレート材料1に凹部2を加工する場合の例であり、(c)は、各インク吐出口毎に形成される平面視略円形状の凹部2のそれぞれに、保護部材4の貼り付け時に各凹部2内に残留する空気をノズルプレート材料1の進行方向下流側の側方へ逃がすための空気逃げ部2bを凹設形成している。また、(d)は、各インク吐出口毎に形成される平面視略円形状の凹部2から保護部材4の貼り付け時に各凹部2内に残留する空気をノズルプレート材料1の進行方向下流側の側方へ逃がすための共通の空気逃げ部2bを凹設形成することにより、凹部2を所謂入り江状に形成している。
【0049】
なお、図6(a)(b)に示す態様では、空気逃げ部2bをノズルプレート材料1の進行方向に沿う両端部にそれぞれ形成しているため、保護部材4の貼付時にロール間にニップする際の方向が、上記両端部のいずれからでも良いという利点がある。
【0050】
このように、凹部2に空気逃げ部2bを有するようにすることで、ロール間を通過させてノズルプレート材料1の表面に保護部材4を貼付する際、保護部材4を凹部2内に空気残留なく密着させることができるようになる。また、この空気逃げ部2bと、前述した凹部2の外周部2aをテーパー面に形成する構成とを併用すると、保護部材4を凹部2内に一層隙間なく密着させることができるためにより好ましい。
【0051】
以上のようにして作成されたノズルプレートPは、図7に示すように、各インク吐出口7に対応する平行な多数のチャネル溝101、101…を形成した圧電素子材料からなるアクチュエータ基板100の前面に接着される。更に、アクチュエータ基板100の上面にはカバー基板102を接着すると共に、その後面にチャネル溝101へのインク流入を規制する流路規制板103を介してインク溝101内にインクを供給するためのインクマニホールド104を接着してインクジェットヘッドを製造する。
【0052】
図8は、インクジェットヘッドの製造方法の第2の実施形態に係るノズルプレート材料10を示している。以上の説明と重複する部分についての説明は省略する。
【0053】
このノズルプレート材料10は、インク吐出口が形成される部位(点線で示す)の周辺に形成する凹部20を、その深さAと該凹部20底面に臨むインク吐出口となる部位の端部e1から該凹部20の外周縁e2までの距離Bとが、A/B≦1/20となるように形成している。この凹部20を形成する方法は前述と同様の方法を用いることができる。
【0054】
凹部20を上記の条件を満たすように形成することにより、その表面に撥インク膜3を形成した後、その表面に保護部材4を貼付する際、加熱及び加圧といった特殊な処理を施す必要なく、常温環境下で凹部20内にほとんど隙間なく密着させることができるようになる。A/Bが1/20よりも大きくなると、保護部材4を常温環境下で加熱及び加圧処理なしに貼付した時の凹部内での密着性が悪くなる。また、A/Bの下限は、小さすぎると凹部としての本来の機能を果たし難くなるため、1/50以上とすることが好ましい。より好ましくは、1/40≦A/B≦1/25とすることである。
【0055】
かかる凹部20は、前記同様に、その外周部20aが凹部20の底面に向けて漸次小径となるテーパー面を構成していることが、凹部20での保護部材4の密着性を高める上でより好ましい。
【0056】
かかるノズルプレート材料10の表面に保護部材4を貼付するには、図5に示す装置において加熱加圧ロールR11、R21を有さないものと同様の装置を用いることができる。即ち、保護部材4の貼り付けは、ノズルプレート材料1表面に対して常温環境下で行う。
【0057】
その後は、前記同様にノズルプレート材料1にインク吐出口7を形成した後、保護部材4を除去し、ノズルプレートとする。
【0058】
【実施例】
(実施例1)
ノズルプレート材料として、125μm厚さのポリイミド樹脂シートを用意し、その片面に、後にインク吐出口を形成する部位の周辺にエキシマレーザーを用いて、直径0.5mm、深さ10μmの凹部を形成した。
【0059】
次いで、このノズルプレート材料の凹部加工面を洗浄後、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体の水分散液を塗布して350℃で加熱処理し、表面に撥インク膜を形成した。このときの塗布膜厚は、加熱処理後の値で0.5μmとした。
【0060】
更に、このノズルプレート材料表面に、保護部材として75μmのポリエチレンテレフタレート樹脂にゴム系の粘着剤が塗布された粘着シート(日東電工社製「31D75」)を、図3に示す装置を用いて加熱と同時に圧着させて密着状に貼付した。加熱温度は100℃、加圧力は3MPaとした。
【0061】
その後、保護部材付きのノズルプレート材料をノズルプレート材料側からエキシマレーザーを用いて外形加工を行い、更に続けて各凹部内に直径30μmのインク吐出口(ノズル数256)を加工し、その後粘着シートを除去してノズルプレート(実施例1−1)とした。
【0062】
また、比較として、上記と同一の材料を用いて、粘着シートとノズルプレート材料とを加熱することなく常温環境下で貼付した後に、各凹部内にインク吐出口(ノズル数256)を同様に加工することによりノズルプレート(比較例1−1)を製造した。
【0063】
それぞれ得られた各ノズルプレートを、ニコン社製CNC画像測定システム「NEXIV VMR−3020」を用いて目視観察し、それぞれのインク吐出口形状の状態と撥インク膜の剥離の有無を確認し、全インク吐出口における形状不良及び撥インク膜の剥離発生の割合(レーザー加工不良率)を求めた。その結果を表1に示す。
【0064】
(実施例2)
ノズルプレート材料として、125μm厚さのポリイミド樹脂シートを用意し、その片面に、後にインク吐出口を形成する部位の周辺にエキシマレーザーを用いて、直径0.5mm、深さ10μmの凹部を形成した。
【0065】
次いで、このノズルプレート材料の凹部加工面を洗浄後、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体の水分散液を塗布して350℃で加熱処理し、表面に撥インク膜を形成した。このときの塗布膜厚は、加熱処理後の値で0.5μmとした。
【0066】
更に、このノズルプレート材料表面に、保護部材として75μmのポリエチレンテレフタレート樹脂にゴム系の粘着剤が塗布された粘着シート(日東電工社製「31D75」)を、図5に示す装置を用いて常温環境下で貼り付けロール間を通過させた後、加熱加圧ロール間を通過させることにより加熱加圧して密着させた。この加熱加圧ロールにおける加熱温度は120℃、加圧力は2.5MPaとした。
【0067】
その後、保護部材付きのノズルプレート材料をノズルプレート材料側からエキシマレーザーを用いて外形加工を行い、更に続けて各凹部内に直径30μmのインク吐出口(ノズル数256)を加工し、その後粘着シートを除去してノズルプレート(実施例2−1)とした。
【0068】
また、比較として、上記と同一の材料を用いて、粘着シートとノズルプレート材料とを加熱することなく常温環境下で貼付した後に、各凹部内にインク吐出口(ノズル数256)を同様に加工することによりノズルプレート(比較例2−1)を製造した。
【0069】
それぞれ得られた各ノズルプレートを、ニコン社製CNC画像測定システム「NEXIV VMR−3020」を用いて目視観察し、それぞれのインク吐出口形状の状態と撥インク膜の剥離の有無を確認し、全インク吐出口における形状不良及び撥インク膜の剥離発生の割合(レーザー加工不良率)を求めた。その結果を表1に示す。
【0070】
【表1】
【0071】
なお、実施例1−1の保護部材が貼り付けられたノズルプレート材料のシートは、若干のソリの発生が認められたが、実施例2−1ではほとんどソリの発生は認められなかった。
【0072】
(実施例3)
ノズルプレート材料として、125μm厚さのポリイミド樹脂シートを用意し、その片面に、後にインク吐出口を形成する部位の周辺にエキシマレーザーを用いて平面視略円形状の凹部を形成した。凹部の深さAを表1に示す。
【0073】
次いで、このノズルプレート材料の凹部加工面を洗浄後、テトラフルオロエチレンヘキサフルオロプロピレン共重合体の水分散液を塗布して350℃で加熱処理し、表面に撥インク膜を形成した。このときの塗布膜厚は、加熱処理後の値で0.5μmとした。
【0074】
更に、このノズルプレート材料表面に、保護部材として75μmのポリエチレンテレフタレート樹脂にゴム系の粘着剤が塗布された粘着シート(日東電工社製「31D75」)を、常温環境下で、図5に示す装置における貼り付けロールR10、R20間のみを通過させて貼付した。このときの貼り付けロールR10、R20間の加圧力は3MPaとした。
【0075】
その後、保護部材付きのノズルプレート材料をノズルプレート材料側からエキシマレーザーを用いて外形加工を行い、更に続けて各凹部内に直径30μmのインク吐出口(ノズル数256)を加工した。このときのインク吐出口の端部e1から凹部の外周縁e2までの距離B(図8参照)を表2に示す。
【0076】
その後粘着シートを除去してノズルプレート(実施例3−1、3−2、3−3)とした。
【0077】
また、比較として、上記と同一の材料を用いて、凹部における深さAと距離Bとの関係を表2に示す通りとしたノズルプレート(比較例3−1、3−2)を製造した。
【0078】
各ノズルプレートの評価は、ニコン社製CNC画像測定システム「NEXIVVMR−3020」を用いて目視観察し、それぞれのインク吐出口形状の状態と撥インク膜の剥離の有無を確認し、全インク吐出口における形状不良及び撥インク膜の剥離発生の割合(レーザー加工不良率)を求めた。その結果を表2に示す。
【0079】
【表2】
【0080】
【発明の効果】
本発明によれば、凹部における保護部材とノズルプレート材料表面との間の密着性を高めることができ、ノズル吐出口穿孔後の撥インク膜の剥がれやインク吐出口形状の乱れの発生のないインクジェットヘッドの製造方法を提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)〜(d)はノズルプレートの製造過程を示す図
【図2】ノズルプレート材料の平面図
【図3】保護部材を貼り付けるための装置の一例を示す図
【図4】(a)(b)はノズルプレートの製造過程を示す図
【図5】保護部材を貼り付けるための装置の一例を示す図
【図6】(a)〜(d)はノズルプレート材料表面の凹部形状を示す平面図
【図7】インクジェットヘッドの分解斜視図
【図8】ノズルプレート材料の凹部の別の実施形態を説明する図
【符号の説明】
1、10:ノズルプレート材料
2、20:凹部
3:撥インク膜
4:保護部材
7:インク吐出口
P:ノズルプレート
Claims (6)
- ノズルプレート材料表面におけるインク吐出口が形成される部位の周辺に凹部を形成する工程と、前記ノズルプレート材料表面に撥インク膜を形成する工程と、前記撥インク膜の表面に保護部材を加熱及び加圧することにより密着させて貼付する工程と、前記保護部材が貼付されたノズルプレート材料に前記インク吐出口を形成する工程と、前記保護部材を除去する工程と、を有し、且つ前記凹部を形成する工程では、前記撥インク膜の表面に前記保護部材を貼付する工程において前記保護部材を貼付した際に前記凹部と前記保護部材との間に残留する空気を前記ノズルプレート材料の側方へ逃がすための空気逃げ部を、前記凹部から前記ノズルプレート材料の端部に亘って凹設することを特徴とするインクジェットヘッドの製造方法。
- 撥インク膜の表面に保護部材を加熱及び加圧することにより密着させて貼付する工程は、前記撥インク膜の表面に対して保護部材を貼付すると同時に加熱及び加圧して密着させることを特徴とする請求項1記載のインクジェットヘッドの製造方法。
- 撥インク膜の表面に保護部材を加熱及び加圧することにより密着させて貼付する工程は、前記撥インク膜の表面に対して保護部材を常温環境下で貼付した後に、加熱及び加圧して密着させることを特徴とする請求項1記載のインクジェットヘッドの製造方法。
- ノズルプレート材料表面におけるインク吐出口が形成される部位の周辺に凹部を形成する工程と、前記ノズルプレート材料表面に撥インク膜を形成する工程と、前記撥インク膜の表面に保護部材を加熱及び加圧することなく密着させて貼付する工程と、前記保護部材が貼付されたノズルプレート材料に前記インク吐出口を形成する工程と、前記保護部材を除去する工程と、を有し、且つ前記凹部を形成する工程では、凹部の深さAとインク吐出口となる部位の端部から該凹部の外周縁までの距離Bとが、1/40≦A/B≦1/25となるように形成すると共に、前記撥インク膜の表面に前記保護部材を貼付する工程において前記保護部材を貼付した際に前記凹部と前記保護部材との間に残留する空気を前記ノズルプレート材料の側方へ逃がすための空気逃げ部を、前記凹部から前記ノズルプレート材料の端部に亘って凹設することを特徴とするインクジェットヘッドの製造方法。
- 凹部の外周部は、該凹部の底面に向けて漸次小径となるテーパー面を構成していることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のインクジェットヘッドの製造方法。
- 前記撥インク膜の表面に前記保護部材を貼付する工程は、前記保護部材と前記ノズルプレート材料とを一対のロール間に通過させて貼付するものであり、前記凹部を形成する工程では、前記空気逃げ部を、前記凹部から前記一対のロール間にニップされる前記ノズルプレート材料の進行方向下流側の端部に亘って凹設することを特徴とする請求項1又は4記載のインクジェットヘッドの製造方法。
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