JP4094921B2 - 平版印刷版の製版方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、光分解反応により画像を形成する光分解型画像形成材料に関する。また、本発明は、デジタル信号に基づいたレーザー光の走査露光によって画像を記録し、平版印刷版を製版する方法にも関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、平版印刷版は、印刷過程でインクを受容する親油性の画像部と湿し水を受容する親水性の非画像部とから成る。従来の平版印刷版は、親水性支持体上に親油性の感光性樹脂層を設けたPS版に、リスフイルムを介してマスク露光した後、非画像部を現像液によって溶解除去することにより製版することが普通であった。ネガ型の画像形成においては、光重合型の感光性樹脂を用いて、露光領域を画像部にする。ポジ型の画像形成においては、光分解型の感光性樹脂を用いて、露光領域を非画像部にする。
近年では、コンピュータを用いて画像情報をデジタル情報として電子的に処理し、蓄積して、出力する。従って、デジタル画像情報に応じた画像形成処理は、レーザー光の様な指向性の高い活性放射線を用いる走査露光により、リスフイルムを介することなく、平版印刷版用原版に対して直接画像形成を行うことが望ましい。このようにデジタル画像情報からリスフイルムを介さずに印刷版を製版する技術は、コンピュータ・トゥ・プレート(CTP)と呼ばれている。
従来のPS版による印刷版の製版方法を、コンピュータ・トゥ・プレート(CTP)技術で実施しようとすると、レーザー光の波長領域と感光性樹脂の感光波長領域とが一致しないとの問題がある。
【0003】
また、従来のPS版では、露光の後、非画像部を溶解除去する工程(現像処理)が不可欠である。さらに、現像処理された印刷版を水洗したり、界面活性剤を含有するリンス液で処理したり、アラビアガムや澱粉誘導体を含む不感脂化液で処理する後処理工程も必要であった。これらの付加的な湿式の処理が不可欠であるという点は、従来のPS版の大きな検討課題となっている。前記のデジタル処理によって製版工程の前半(画像形成処理)が簡素化されても、後半(現像処理)が煩雑な湿式処理では、簡素化による効果が不充分である。
特に近年は、地球環境への配慮が産業界全体の大きな関心事となっている。環境への配慮からも、湿式の後処理は、簡素化するか、乾式処理に変更するか、さらには無処理化することが望ましい。
【0004】
処理工程をなくす方法の一つに、露光済みの印刷版用原版を印刷機のシリンダーに装着し、シリンダーを回転しながら湿し水とインクを供給することによって、印刷版用原版の非画像部を除去する機上現像と呼ばれる方法がある。すなわち、印刷版用原版を露光後、そのまま印刷機に装着し、通常の印刷過程の中で処理が完了する方式である。
このような機上現像に適した平版印刷版用原版は、湿し水やインク(またはインク溶剤)に可溶な感光層を有し、しかも、明室に置かれた印刷機上で現像されるのに適した明室取り扱い性を有することが必要とされる。
従来のPS版では、このような要求を満足することは、実質的に不可能であった。
【0005】
特許第2938397号公報には、親水性バインダーポリマー中に熱可塑性疎水性重合体微粒子を分散させた感熱層を親水性支持体上に設けた平版印刷原版が記載されている。同公報の記載によると、製版において、赤外線レーザー露光して熱可塑性疎水性重合体微粒子を熱により合体(融着)させて画像形成した後、印刷機の版胴上に版を取り付け、湿し水またはインクを供給することにより機上現像できる。この平版印刷版用原版は感光域が赤外領域であることにより、明室での取り扱い性も有している。
特許第2938397号公報記載の方法では、光熱変換によって、本来は感熱材料である平版印刷原版を感光材料として利用する。この平版印刷原版は、現像のラチチュードが狭く、現像条件の厳密な管理が必要である。また、感熱材料を利用した平版印刷原版には、長期間の保存における安定性に関する問題も指摘されている。
【0006】
特開2001−166467号公報に、変調を加えた超短パルスレーザー光で感光性製版材料を走査して、レーザー光照射部において2光子吸収現象による光重合反応を生じさせ画像を記録する工程および画像を現像する工程からなる製版方法が開示されている。
2光子吸収現象を利用すると、明室で取り扱える印刷原版に、レーザーフレアの影響を受けにくい鮮鋭な画像を記録することができる。しかし、特開2001−166467号公報に記載の印刷原版を、印刷機上で現像することは実質的に不可能である。また、同公報記載の方法では、露光領域を画像部にするネガ型の方式のみが実施可能である。
【0007】
【特許文献1】
特許第2938397号公報
【特許文献2】
特開2001−166467号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、露光領域が非画像部となるポジ型の平版印刷原版として利用できる光分解型画像形成材料を提供することである。
また、本発明の目的は、明室で取り扱える平版印刷原版に対して、デジタル画像情報に対応する画像をレーザー光で走査露光し、製版することでもある。
さらに、本発明の目的は、光分解型の平版印刷原版を、レーザー光で走査露光した後、機上現像または無処理で製版することでもある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、下記(1)の光分解型画像形成材料、下記(2)および(4)の平版印刷版の製版方法並びに下記(3)および(5)の平版印刷方法を提供する。
(1)光吸収剤と分解性化合物とを含む画像形成層並びに支持体を有し、該光吸収剤が、多光子吸収により励起された状態において分解性化合物を分解する機能を有することを特徴とする光分解型画像形成材料。
(11)光吸収剤が、下記式(Ia)または(Ib)で表される(1)に記載の光分解型画像形成材料:
【0010】
【化1】
Figure 0004094921
【0011】
[式中、R1 、R2 、R3 およびR4 は、それぞれ独立に、炭素原子数が1乃至20のアルキル基、炭素原子数が3乃至20のアシルオキシアルキル基または炭素原子数が6乃至20のアリール基であり;R5 、R6 、R7 およびR8 は、それぞれシアノであるか、あるいは、R5 とR6 またはR7 とR8 とが結合して複素環を形成し;ベンゼン環A、BおよびCは、ハロゲン原子、シアノ、ニトロおよび炭素原子数が1乃至20のアルコキシ基からなる群より選ばれる置換基を有していてもよく;m1およびm2は、それぞれ独立に、1または2であり;そして、nは、0または1である]。
(12)光吸収剤が、分解性化合物の1乃至50質量%の量で画像形成層に含まれている(1)に記載の光分解型画像形成材料。
(13)分解性化合物が、オニウム塩である(1)に記載の光分解型画像形成材料。
(14)分解性化合物が、キノンジアジド化合物である(1)に記載の光分解型画像形成材料。
【0012】
(15)分解性化合物が、スルホネートまたはスルホン化合物である(1)に記載の光分解型画像形成材料。
(16)分解性化合物が、ベンジルまたはベンゾイン化合物である(1)に記載の光分解型画像形成材料。
(17)分解性化合物が、画像形成層の50乃至99質量%の範囲で含まれている(1)に記載の光分解型画像形成材料。
(18)画像形成層の上にさらに水溶性オーバーコート層を有する(1)に記載の光分解型画像形成材料。
(19)水溶性オーバーコート層が、波長600nm未満の光を吸収する色素を含む(18)に記載の光分解型画像形成材料。
【0013】
(2)光吸収剤と分解性化合物とを含む画像形成層並びに親水性支持体を有する平版印刷原版を、レーザー光で走査露光し、多光子吸収により光吸収剤を励起し、励起された光吸収剤により分解性化合物を分解する工程、そして、露光した部分の画像形成層を除去し、これにより露出した親水性支持体表面を親水性領域、残存する画像形成層表面を疎水性領域とする平版印刷版を製版する工程からなる平版印刷版の製版方法。
【0014】
(21)光吸収剤が、前記式(Ia)または(Ib)で表される(2)に記載の製版方法。
(22)光吸収剤が、分解性化合物の1乃至50質量%の量で画像形成層に含まれている(21)に記載の製版方法。
(23)分解性化合物が、オニウム塩である(2)に記載の製版方法。
(24)分解性化合物が、キノンジアジド化合物である(2)に記載の製版方法。
(25)分解性化合物が、スルホネートまたはスルホン化合物である(2)に記載の製版方法。
【0015】
(26)分解性化合物が、ベンジルまたはベンゾイン化合物である(2)に記載の製版方法。
(27)分解性化合物が、画像形成層の50乃至99質量%の範囲で含まれている(2)に記載の製版方法。
(28)画像形成層の上にさらに水溶性オーバーコート層を有する(2)に記載の製版方法。
(29)水溶性オーバーコート層が、波長600nm未満の光を吸収する色素を含む(28)に記載の製版方法。
(30)走査露光に用いるレーザー光の波長が、600乃至1200nmの範囲である(2)に記載の製版方法。
【0016】
(3)光吸収剤と分解性化合物とを含む画像形成層並びに親水性支持体を有する平版印刷原版を、レーザー光で走査露光し、多光子吸収により光吸収剤を励起し、励起された光吸収剤により分解性化合物を分解する工程、平版印刷原版を印刷機に装着した状態で印刷機を稼動させ、湿し水、油性インク、または擦りにより露光した部分の画像形成層を除去し、これにより露出した親水性支持体表面を親水性領域、残存する画像形成層表面を疎水性領域とする平版印刷版を製版する工程、そして、さらに湿し水と油性インクとを供給し、製版された平版印刷版で印刷する工程からなる平版印刷方法。
【0017】
(31)光吸収剤が、前記式(Ia)または(Ib)で表される(3)に記載の平版印刷方法。
(32)光吸収剤が、分解性化合物の1乃至50質量%の量で画像形成層に含まれている(31)に記載の平版印刷方法。
(33)分解性化合物が、オニウム塩である(3)に記載の平版印刷方法。
(34)分解性化合物が、キノンジアジド化合物である(3)に記載の平版印刷方法。
(35)分解性化合物が、スルホネートまたはスルホン化合物である(3)に記載の平版印刷方法。
【0018】
(36)分解性化合物が、ベンジルまたはベンゾイン化合物である(3)に記載の平版印刷方法。
(37)分解性化合物が、画像形成層の50乃至99質量%の範囲で含まれている(3)に記載の平版印刷方法。
(38)画像形成層の上にさらに水溶性オーバーコート層を有する(3)に記載の平版印刷方法。
(39)水溶性オーバーコート層が、波長600nm未満の光を吸収する色素を含む(38)に記載の平版印刷方法。
(40)走査露光に用いるレーザー光の波長が、600乃至1200nmの範囲である(3)に記載の平版印刷方法。
【0019】
(4)光吸収剤と分解性化合物とを含む画像形成層並びに支持体を有する平版印刷原版を、レーザー光で走査露光し、多光子吸収により光吸収剤を励起し、励起された光吸収剤により分解性化合物を分解し、これにより画像形成層表面に露光された親水性領域と未露光の疎水性領域とを形成して、平版印刷版を製版する工程からなる平版印刷版の製版方法。
【0020】
(41)光吸収剤が、前記式(Ia)または(Ib)で表される(4)に記載の製版方法。
(42)光吸収剤が、分解性化合物の1乃至50質量%の量で画像形成層に含まれている(41)に記載の製版方法。
(43)分解性化合物が、オニウム塩である(4)に記載の製版方法。
(44)分解性化合物が、キノンジアジド化合物である(4)に記載の製版方法。
(45)分解性化合物が、スルホネートまたはスルホン化合物である(4)に記載の製版方法。
【0021】
(46)分解性化合物が、ベンジルまたはベンゾイン化合物である(4)に記載の製版方法。
(47)分解性化合物が、画像形成層の50乃至99質量%の範囲で含まれている(4)に記載の製版方法。
(48)画像形成層の上にさらに水溶性オーバーコート層を有する(4)に記載の製版方法。
(49)水溶性オーバーコート層が、波長600nm未満の光を吸収する色素を含む(48)に記載の製版方法。
(50)走査露光に用いるレーザー光の波長が、600乃至1200nmの範囲である(4)に記載の製版方法。
【0022】
(5)光吸収剤と分解性化合物とを含む画像形成層並びに支持体を有する平版印刷原版を、レーザー光で走査露光し、多光子吸収により光吸収剤を励起し、励起された光吸収剤により分解性化合物を分解し、これにより画像形成層表面に露光された親水性領域と未露光の疎水性領域とを形成して、平版印刷版を製版する工程、そして、湿し水と油性インクとを供給し、製版された平版印刷版で印刷する工程からなる平版印刷方法。
【0023】
(51)光吸収剤が、前記式(Ia)または(Ib)で表される(5)に記載の平版印刷方法。
(52)光吸収剤が、分解性化合物の1乃至50質量%の量で画像形成層に含まれている(51)に記載の平版印刷方法。
(53)分解性化合物が、オニウム塩である(5)に記載の平版印刷方法。
(54)分解性化合物が、キノンジアジド化合物である(5)に記載の平版印刷方法。
(55)分解性化合物が、スルホネートまたはスルホン化合物である(5)に記載の平版印刷方法。
【0024】
(56)分解性化合物が、ベンジルまたはベンゾイン化合物である(5)に記載の平版印刷方法。
(57)分解性化合物が、画像形成層の50乃至99質量%の範囲で含まれている(5)に記載の平版印刷方法。
(58)画像形成層の上にさらに水溶性オーバーコート層を有する(5)に記載の平版印刷方法。
(59)水溶性オーバーコート層が、波長600nm未満の光を吸収する色素を含む(58)に記載の平版印刷方法。
(60)走査露光に用いるレーザー光の波長が、600乃至1200nmの範囲である(5)に記載の平版印刷方法。
【0025】
【発明の効果】
本発明者は、研究の結果、多光子吸収により励起された光吸収剤を用いて、化合物を分解することに成功した。
n個の多光子吸収では、n個の光子を同時に吸収することにより、照射した光のn倍のエネルギー(波長は1/n)に相当する吸収が生じる。そのため、多光子吸収による露光では、高いエネルギーを必要とする。従って、高エネルギーのレーザー光で走査露光する場合、多光子吸収により励起される光吸収剤は、明室内で取り扱える低感度であってもよい。また、長波長レーザーが使用できるため、短波長レーザーで問題となっているレーザーフレアの影響を受けにくいとの効果もある。
【0026】
光吸収剤と分解性化合物とを含む画像形成層を有する平版印刷原版では、レーザー光で走査露光後、平版印刷原版を印刷機に装着した状態で印刷機を稼動させるだけで、湿し水、油性インク、または擦りにより露光した部分の画像形成層を除去することができる。すなわち、光吸収剤と分解性化合物とを含む画像形成層を採用することにより、ポジ型の平版印刷版を印刷機上で現像(機上現像)することが可能になる。
また、分解性化合物が分解の前後において、親水性(あるいは疎水性)の程度が大きく変化する場合は、露光工程のみ(現像工程なし)で平版印刷版を製版できる。すなわち、光吸収剤と分解性化合物とを含む画像形成層を採用することにより、平版印刷版を現像処理なし(無処理)で製版することも可能になる。
本発明の印刷方法によれば、明室で取り扱える印刷原版に、デジタル信号に基づいたレーザー光の走査露光によって、レーザーフレアの影響を受けにくい鮮鋭な画像を記録したのち、明室に置かれた印刷機上でポジ型の平版印刷版を製版し、直ちに印刷を行うことができる。
【0027】
【発明の実施の形態】
[画像形成材料の基本構成]
図1は、画像形成材料の基本構成を示す断面模式図である。
図1に示す画像形成材料は、親水性支持体(1)上に、画像形成層(2)が設けられている。画像形成層(2)は、光吸収剤(21)と分解性化合物(22)とを含む。光吸収剤(21)は、多光子吸収により励起された状態において分解性化合物(22)を分解する機能を有する。
図1に示す画像形成材料のように、画像形成層の塗布に使用した溶媒(23)が一部残存し、画像形成反応に関与してもよい。
【0028】
[多光子吸収型の光吸収剤]
本発明では、多光子吸収により励起され、励起状態において分解性化合物を分解させる機能を有する物質を光吸収剤として用いる。多光子吸収は、通常は2光子吸収である。
なお、光吸収剤は、単一の物質である必要はなく、複数の物質(例えば、増感色素と分解促進剤)の混合物であってもよい。
多光子吸収現象の利用については、国際公開第98/21521号、同第99/53242号の各パンフレット、特開2001−166467号公報、Brian H. Cumpston et al, Two-photon polymerization initiators for three-dimensional optical data storage and microfabrication, Nature, vol.398, 4 March, 1999, pp.51-54 およびMarius Albota et al, Design of Organic Molecules with Large Two-Photon Absorbing Cross Sections, Science, vol.281, 11 September, 1998, pp.1653-1656 に記載がある。
【0029】
多光子吸収型の光吸収剤は、下記式(Ia)または(Ib)で表される化合物であることが好ましい。
【0030】
【化2】
Figure 0004094921
【0031】
式(Ia)において、R1 、R2 、R3 およびR4 は、それぞれ独立に、炭素原子数が1乃至20のアルキル基、炭素原子数が3乃至20のアシルオキシアルキル基または炭素原子数が6乃至20のアリール基である。
アルキル基の炭素原子数は、1乃至15であることが好ましく、1乃至10であることがさらに好ましく、1乃至6であることが最も好ましい。環状アルキル基よりも鎖状アルキル基の方が好ましく、分岐を有する鎖状アルキル基よりも直鎖状アルキル基の方が好ましい。
アシルオキシアルキル基の炭素原子数は、3乃至15であることが好ましく、3乃至12であることがさらに好ましく、3乃至10であることが最も好ましい。アシルオキシアルキル基のアルキル部分は、環状よりも鎖状の方が好ましく、分岐を有する鎖状よりも直鎖状の方が好ましい。アシルオキシアルキル基のアシル部分の例には、ベンゾイル、p−メトキシベンゾイル、p−シアノベンゾイル、p−ニトロベンゾイル、アクリロイルおよびメタクリロイルが含まれる。
アリール基の炭素原子数は、6乃至15であることが好ましく、6乃至12であることがさらに好ましく、6乃至10であることが最も好ましい。アリール基は、置換基を有していてもよい。置換基の例には、ハロゲン原子、シアノ、ニトロおよび炭素原子数が1乃至20のアルコキシ基が含まれる。
【0032】
式(Ib)において、R5 、R6 、R7 およびR8 は、それぞれシアノであるか、あるいは、R5 とR6 またはR7 とR8 とが結合して複素環を形成する。
形成する複素環は、5員環または6員環であることが好ましい。複素環のヘテロ原子の例には、窒素原子、酸素原子および硫黄原子が含まれる。複素環に、他の複素環、脂肪族環または芳香族環が縮合していてもよい。複素環およびその縮合環は、置換基を有していてもよい。置換基の例には、ハロゲン原子、シアノ、ニトロ、炭素原子数が1乃至20のアルキル基、炭素原子数が1乃至20のアルコキシ基、ジシアノメチレン(=C(CN)2 )、オキソ(=O)およびチオ(=S)が含まれる。
【0033】
式(Ia)および(Ib)において、ベンゼン環A、BおよびCは、ハロゲン原子、シアノ、ニトロ、および炭素原子数が1乃至20のアルコキシ基からなる群より選ばれる置換基を有していてもよい。
式(Ia)および(Ib)において、m1およびm2は、それぞれ独立に、1または2である。m1およびm2は、それぞれ、1であることが好ましい。
式(Ia)および(Ib)において、nは、0または1である。nは、1であることが好ましい。
式(Ia)および(Ib)において、二重結合は、シス型よりもトランス型の方が好ましい。
以下に、式(Ia)または(Ib)で表される光吸収剤の例を示す。
【0034】
【化3】
Figure 0004094921
【0035】
【化4】
Figure 0004094921
【0036】
【化5】
Figure 0004094921
【0037】
【化6】
Figure 0004094921
【0038】
【化7】
Figure 0004094921
【0039】
【化8】
Figure 0004094921
【0040】
【化9】
Figure 0004094921
【0041】
【化10】
Figure 0004094921
【0042】
【化11】
Figure 0004094921
【0043】
【化12】
Figure 0004094921
【0044】
【化13】
Figure 0004094921
【0045】
【化14】
Figure 0004094921
【0046】
【化15】
Figure 0004094921
【0047】
【化16】
Figure 0004094921
【0048】
【化17】
Figure 0004094921
【0049】
二種類以上の光吸収剤を併用してもよい。
光吸収剤の使用量は、分解性化合物(全固形分)の1乃至50質量%が好ましく、2乃至45質量%がさらに好ましく、3乃至40質量%が最も好ましい。
【0050】
[分解性化合物]
分解性化合物は、光吸収剤の作用により分解する分解性官能基を有する化合物である。分解性化合物は、分解性官能基を有するポリマーであってもよい。分解性化合物の分解生成物により画像を形成することができる。また、分解性化合物の分解生成物が、さらに他の化合物(ポリマーを含む)に対して作用して、その結果として、画像を形成してもよい。
分解性化合物は、分解性官能基の種類により、(1)オニウム塩、(2)キノンジアジド化合物、(3)スルホネートまたはスルホン化合物、および(4)ベンジルまたはベンゾイン化合物に分類できる。
【0051】
(1)オニウム塩
オニウム塩は、下記式で表される官能基を有し、分解によりスルホン酸またはカルボン酸を形成できる化合物である。
【0052】
【化18】
Figure 0004094921
【0053】
式中、Xは、SO3 またはCOOであり;そして、Yは、ヨードニウムイオン、スルホニウムイオンまたはジアゾニウムイオンである。
オニウム塩は、具体的には(1.1)オニウム塩ポリマー、または(1.2)オニウム塩化合物と酸分解性官能基を有するポリマーとの組み合わせとして用いることが好ましい。
【0054】
(1.1)オニウム塩ポリマー
前記式で表される官能基を有するオニウム塩ポリマーは、光吸収剤のみで画像形成できる。スルホン酸発生ポリマー(X:SO3 )を用いた場合は、水現像できる。カルボン酸発生ポリマー(X:COO)を用いた場合は、アルカリ現像が必要である。
以下に、オニウム塩ポリマーの例を示す。
【0055】
【化19】
Figure 0004094921
【0056】
【化20】
Figure 0004094921
【0057】
【化21】
Figure 0004094921
【0058】
【化22】
Figure 0004094921
【0059】
【化23】
Figure 0004094921
【0060】
【化24】
Figure 0004094921
【0061】
(1.2)オニウム塩化合物と酸分解性官能基を有するポリマーとの組み合わせ
低分子のオニウム塩化合物を分解して、酸を発生させ、酸によりポリマー中の酸分解性官能基を分解することにより、水現像できる。現像後に、加熱処理(後加熱)を実施することが望ましい。
以下に、オニウム塩化合物の例を示す。
【0062】
【化25】
Figure 0004094921
【0063】
【化26】
Figure 0004094921
【0064】
【化27】
Figure 0004094921
【0065】
【化28】
Figure 0004094921
【0066】
【化29】
Figure 0004094921
【0067】
以下に、酸分解性官能基を有するポリマーの例を示す。
【0068】
【化30】
Figure 0004094921
【0069】
【化31】
Figure 0004094921
【0070】
【化32】
Figure 0004094921
【0071】
【化33】
Figure 0004094921
【0072】
【化34】
Figure 0004094921
【0073】
【化35】
Figure 0004094921
【0074】
(2)キノンジアジド化合物
キノンジアジド化合物は、下記式で表される構造単位を有する化合物である。
【0075】
【化36】
Figure 0004094921
【0076】
式中、nは、0または1である。
キノンジアジド化合物は、具体的には(2.1)キノンジアジド化合物とインヒビション樹脂との組み合わせ、または(2.2)キノンジアジド化合物と酸分解性官能基を有するポリマーとの組み合わせとして用いることが好ましい。
【0077】
(2.1)キノンジアジド化合物とインヒビション樹脂との組み合わせ
前記式で表される官能基を有するキノンジアジド化合物は、樹脂のアルカリ溶解性抑制作用を有する。キノンジアジド化合物のアルカリ溶解性抑制作用は、通常のポジ型平版印刷版でも従来から利用されている(例えば、特公昭38−12083号公報記載)。露光によりキノンジアジド化合物が分解すると、樹脂のアルカリ溶解性抑制が解除されて、画像が形成できる。
以下に、キノンジアジド化合物の例を示す。
【0078】
【化37】
Figure 0004094921
【0079】
【化38】
Figure 0004094921
【0080】
【化39】
Figure 0004094921
【0081】
【化40】
Figure 0004094921
【0082】
【化41】
Figure 0004094921
【0083】
以下に、インヒビション樹脂を構成するポリマーの例を示す。
【0084】
【化42】
Figure 0004094921
【0085】
【化43】
Figure 0004094921
【0086】
【化44】
Figure 0004094921
【0087】
【化45】
Figure 0004094921
【0088】
【化46】
Figure 0004094921
【0089】
【化47】
Figure 0004094921
【0090】
【化48】
Figure 0004094921
【0091】
【化49】
Figure 0004094921
【0092】
【化50】
Figure 0004094921
【0093】
(2.2)キノンジアジド化合物と酸分解性官能基を有するポリマーとの組み合わせ
一部のキノンジアジド化合物(例えば、ナフトキノンジアジド−4−スルホネート化合物)は、インデンカルボン酸に分解後、さらにスルホネート部分が分解してスルホン酸を発生させる。この酸を用いて酸分解性官能基を分解し、ポリマーの溶解性を変化させることができる。
以下に、ナフトキノンジアジド−4−スルホネート化合物の例を示す。
【0094】
【化51】
Figure 0004094921
【0095】
【化52】
Figure 0004094921
【0096】
(3)スルホネートまたはスルホン化合物
スルホネート化合物は、(3a)o−ニトロベンジルスルホネート化合物、(3b)イミドスルホネート化合物、(3c)オキシムスルホネート化合物または(3d)α−ケトスルホネート化合物が好ましい。スルホン化合物は、(3e)ジアゾスルホン化合物、(3f)ジスルホン化合物または(3g)ケトスルホン化合物が好ましい。
【0097】
(3a)o−ニトロベンジルスルホネート化合物
o−ニトロベンジルスルホネート化合物は、下記式で表される構造単位を有する化合物であって、分解によりスルホン酸を形成できる。
【0098】
【化53】
Figure 0004094921
【0099】
式中、R1 〜R4 は、それぞれ独立に、水素原子または一価の基である。
o−ニトロベンジルスルホネート化合物は、具体的には(3a.1)o−ニトロベンジルスルホネートポリマー、または(3a.2)o−ニトロベンジルスルホネート化合物と酸分解性官能基を有するポリマーとの組み合わせとして用いることが好ましい。
【0100】
(3a.1)o−ニトロベンジルスルホネートポリマー
上記式で表される構造単位を有するo−ニトロベンジルスルホネートポリマーを分解してスルホン酸が発生すると、ポリマーが水性溶媒に可溶性になる。スルホン酸ポリマーは純水にも可溶性であるため、機上現像により画像を形成できる。
以下に、o−ニトロベンジルスルホネートポリマーの例を示す。
【0101】
【化54】
Figure 0004094921
【0102】
【化55】
Figure 0004094921
【0103】
【化56】
Figure 0004094921
【0104】
【化57】
Figure 0004094921
【0105】
(3a.2)o−ニトロベンジルスルホネート化合物と酸分解性官能基を有するポリマーとの組み合わせ
o−ニトロベンジルスルホネート化合物が分解して発生するスルホン酸により、ポリマー中の酸分解性官能基を分解して、水性現像を可能にする。現像後に、加熱処理(後加熱)を実施することが望ましい。
以下に、o−ニトロベンジルスルホネート化合物の例を示す。
【0106】
【化58】
Figure 0004094921
【0107】
【化59】
Figure 0004094921
【0108】
【化60】
Figure 0004094921
【0109】
【化61】
Figure 0004094921
【0110】
(3b)イミドスルホネート化合物
イミドスルホネート化合物は、下記式で表される構造単位を有する化合物であって、分解によりスルホン酸を形成できる。
【0111】
【化62】
Figure 0004094921
【0112】
式中、R1 およびR2 は、それぞれ独立に、水素原子または一価の基である。
イミドスルホネート化合物は、具体的には(3b.1)イミドスルホネートポリマー、または(3b.2)イミドスルホネート化合物と酸分解性官能基を有するポリマーとの組み合わせとして用いることが好ましい。
【0113】
(3b.1)イミドスルホネートポリマー
上記式で表される構造単位を有するイミドスルホネートポリマーを分解してスルホン酸が発生すると、ポリマーが水性溶媒に可溶性になる。スルホン酸ポリマーは純水にも可溶性であるため、機上現像により画像を形成できる。
以下に、イミドスルホネートポリマーの例を示す。
【0114】
【化63】
Figure 0004094921
【0115】
【化64】
Figure 0004094921
【0116】
【化65】
Figure 0004094921
【0117】
【化66】
Figure 0004094921
【0118】
(3b.2)イミドスルホネート化合物と酸分解性官能基を有するポリマーとの組み合わせ
イミドスルホネート化合物が分解して発生するスルホン酸により、ポリマー中の酸分解性官能基を分解して、水性現像を可能にする。現像後に、加熱処理(後加熱)を実施することが望ましい。
以下に、イミドスルホネート化合物の例を示す。
【0119】
【化67】
Figure 0004094921
【0120】
【化68】
Figure 0004094921
【0121】
【化69】
Figure 0004094921
【0122】
【化70】
Figure 0004094921
【0123】
(3c)オキシムスルホネート化合物
オキシムスルホネート化合物は、下記式で表される構造単位を有する化合物であって、分解によりスルホン酸を形成できる。
【0124】
【化71】
Figure 0004094921
【0125】
式中、R1 およびR2 は、それぞれ独立に、水素原子または一価の基である。
オキシムスルホネート化合物は、具体的には(3c.1)オキシムスルホネートポリマー、または(3c.2)オキシムスルホネート化合物と酸分解性官能基を有するポリマーとの組み合わせとして用いることが好ましい。
【0126】
(3c.1)オキシムスルホネートポリマー
上記式で表される構造単位を有するオキシムスルホネートポリマーを分解してスルホン酸が発生すると、ポリマーが水性溶媒に可溶性になる。スルホン酸ポリマーは純水にも可溶性であるため、機上現像により画像を形成できる。
以下に、オキシムスルホネートポリマーの例を示す。
【0127】
【化72】
Figure 0004094921
【0128】
【化73】
Figure 0004094921
【0129】
【化74】
Figure 0004094921
【0130】
【化75】
Figure 0004094921
【0131】
(3c.2)オキシムスルホネート化合物と酸分解性官能基を有するポリマーとの組み合わせ
オキシムスルホネート化合物が分解して発生するスルホン酸により、ポリマー中の酸分解性官能基を分解して、水性現像を可能にする。現像後に、加熱処理(後加熱)を実施することが望ましい。
以下に、オキシムスルホネート化合物の例を示す。
【0132】
【化76】
Figure 0004094921
【0133】
【化77】
Figure 0004094921
【0134】
【化78】
Figure 0004094921
【0135】
【化79】
Figure 0004094921
【0136】
(3d)α−ケトスルホネート化合物
α−ケトスルホネート化合物は、下記式で表される構造単位を有する化合物であって、分解によりスルホン酸を形成できる。
【0137】
【化80】
Figure 0004094921
【0138】
式中、R1 〜R3 は、それぞれ独立に、水素原子または一価の基である。
α−ケトスルホネート化合物は、具体的には(3d.1)α−ケトスルホネートポリマー、または(3d.2)α−ケトスルホネート化合物と酸分解性官能基を有するポリマーとの組み合わせとして用いることが好ましい。
【0139】
(3d.1)α−ケトスルホネートポリマー
上記式で表される構造単位を有するα−ケトスルホネートポリマーを分解してスルホン酸が発生すると、ポリマーが水性溶媒に可溶性になる。スルホン酸ポリマーは純水にも可溶性であるため、機上現像により画像を形成できる。
以下に、α−ケトスルホネートポリマーの例を示す。
【0140】
【化81】
Figure 0004094921
【0141】
【化82】
Figure 0004094921
【0142】
(3d.2)α−ケトスルホネート化合物と酸分解性官能基を有するポリマーとの組み合わせ
α−ケトスルホネート化合物が分解して発生するスルホン酸により、ポリマー中の酸分解性官能基を分解して、水性現像を可能にする。現像後に、加熱処理(後加熱)を実施することが望ましい。
以下に、α−ケトスルホネート化合物の例を示す。
【0143】
【化83】
Figure 0004094921
【0144】
【化84】
Figure 0004094921
【0145】
(3e)ジアゾスルホン化合物
ジアゾスルホン化合物は、下記式で表される構造単位を有する化合物であって、分解によりスルホン酸を形成できる。
【0146】
【化85】
Figure 0004094921
【0147】
式中、R1 は、一価の基である。
ジアゾスルホン化合物は、具体的には(3e.1)ジアゾスルホンポリマー、または(3e.2)ジアゾスルホン化合物と酸分解性官能基を有するポリマーとの組み合わせとして用いることが好ましい。
【0148】
(3e.1)ジアゾスルホンポリマー
上記式で表される構造単位を有するジアゾスルホンポリマーを分解してスルホン酸が発生すると、ポリマーが水性溶媒に可溶性になる。スルホン酸ポリマーは純水にも可溶性であるため、機上現像により画像を形成できる。
以下に、ジアゾスルホンポリマーの例を示す。
【0149】
【化86】
Figure 0004094921
【0150】
【化87】
Figure 0004094921
【0151】
(3e.2)ジアゾスルホン化合物と酸分解性官能基を有するポリマーとの組み合わせ
ジアゾスルホン化合物が分解して発生するスルホン酸により、ポリマー中の酸分解性官能基を分解して、水性現像を可能にする。現像後に、加熱処理(後加熱)を実施することが望ましい。
以下に、ジアゾスルホン化合物の例を示す。
【0152】
【化88】
Figure 0004094921
【0153】
(3f)ジスルホン化合物
ジスルホン化合物は、下記式で表される構造単位を有する化合物であって、分解によりスルフィン酸を形成できる。スルフィン酸がさらに酸化されてスルホン酸を形成することもある。
【0154】
【化89】
Figure 0004094921
【0155】
式中、R1 は、一価の基である。
ジスルホン化合物は、具体的には(3f.1)ジスルホンポリマー、または(3f.2)ジスルホン化合物と酸分解性官能基を有するポリマーとの組み合わせとして用いることが好ましい。
【0156】
(3f.1)ジスルホンポリマー
上記式で表される構造単位を有するジスルホンポリマーを分解してスルフィン酸またはスルホン酸が発生すると、ポリマーが水性溶媒に可溶性になる。スルフィン酸ポリマーおよびスルホン酸ポリマーは純水にも可溶性であるため、機上現像により画像を形成できる。
以下に、ジスルホンポリマーの例を示す。
【0157】
【化90】
Figure 0004094921
【0158】
【化91】
Figure 0004094921
【0159】
(3f.2)ジスルホン化合物と酸分解性官能基を有するポリマーとの組み合わせ
ジスルホン化合物が分解して発生するスルフィン酸またはスルホン酸により、ポリマー中の酸分解性官能基を分解して、水性現像を可能にする。現像後に、加熱処理(後加熱)を実施することが望ましい。
以下に、ジスルホン化合物の例を示す。
【0160】
【化92】
Figure 0004094921
【0161】
【化93】
Figure 0004094921
【0162】
(3g)ケトスルホン化合物
ケトスルホン化合物は、下記式で表される構造単位を有する化合物であって、分解によりスルフィン酸を形成できる。スルフィン酸がさらに酸化されてスルホン酸を形成することもある。
【0163】
【化94】
Figure 0004094921
【0164】
式中、R1 〜R3 は、それぞれ独立に、水素原子または一価の基である。
ケトスルホン化合物は、具体的には(3g.1)ケトスルホンポリマー、または(3g.2)ケトスルホン化合物と酸分解性官能基を有するポリマーとの組み合わせとして用いることが好ましい。
【0165】
(3g.1)ケトスルホンポリマー
上記式で表される構造単位を有するケトスルホンポリマーを分解してスルフィン酸またはスルホン酸が発生すると、ポリマーが水性溶媒に可溶性になる。スルフィン酸ポリマーおよびスルホン酸ポリマーは純水にも可溶性であるため、機上現像により画像を形成できる。
以下に、ケトスルホンポリマーの例を示す。
【0166】
【化95】
Figure 0004094921
【0167】
【化96】
Figure 0004094921
【0168】
(3g.2)ケトスルホン化合物と酸分解性官能基を有するポリマーとの組み合わせ
ケトスルホン化合物が分解して発生するスルフィン酸またはスルホン酸により、ポリマー中の酸分解性官能基を分解して、水性現像を可能にする。現像後に、加熱処理(後加熱)を実施することが望ましい。
以下に、ケトスルホン化合物の例を示す。
【0169】
【化97】
Figure 0004094921
【0170】
(4)ベンジルまたはベンゾイン化合物
ベンジル化合物は、(4a)o−ニトロベンジルエステル化合物、(4b)m−アルコキシベンジルエステル化合物、(4c)o−ニトロベンジルアミド化合物または(4d)o−ニトロベンジルフェノール化合物が好ましい。ベンゾイン化合物は、(4e)ベンゾインエステル化合物が好ましい。
【0171】
(4a)o−ニトロベンジルエステル化合物
o−ニトロベンジルエステル化合物は、下記式で表される構造単位を有する化合物であって、分解によりカルボン酸を形成できる。
【0172】
【化98】
Figure 0004094921
【0173】
式中、R1 〜R4 は、それぞれ独立に、水素原子または一価の基である。
o−ニトロベンジルエステル化合物は、具体的には(4a.1)o−ニトロベンジルエステルポリマーとして用いることが好ましい。
【0174】
(4a.1)o−ニトロベンジルエステルポリマー
上記式で表される構造単位を有するo−ニトロベンジルエステルポリマーを分解してカルボン酸が発生すると、ポリマーがアルカリ水溶液に可溶性になる。
以下に、o−ニトロベンジルエステルポリマーの例を示す。
【0175】
【化99】
Figure 0004094921
【0176】
【化100】
Figure 0004094921
【0177】
(4b)m−アルコキシベンジルエステル化合物
m−アルコキシベンジルエステル化合物は、下記式で表される構造単位を有する化合物であって、分解によりカルボン酸を形成できる。
【0178】
【化101】
Figure 0004094921
【0179】
式中、R1 〜R5 は、それぞれ独立に、水素原子または一価の基である。
m−アルコキシベンジルエステル化合物は、具体的には(4b.1)m−アルコキシベンジルエステルポリマーとして用いることが好ましい。
【0180】
(4b.1)m−アルコキシベンジルエステルポリマー
上記式で表される構造単位を有するm−アルコキシベンジルエステルポリマーを分解してカルボン酸が発生すると、ポリマーがアルカリ水溶液に可溶性になる。
以下に、m−アルコキシベンジルエステルポリマーの例を示す。
【0181】
【化102】
Figure 0004094921
【0182】
【化103】
Figure 0004094921
【0183】
(4c)o−ニトロベンジルアミド化合物
o−ニトロベンジルアミド化合物は、下記式で表される構造単位を有する化合物であって、分解によりカルボン酸を形成できる。
【0184】
【化104】
Figure 0004094921
【0185】
式中、R1 〜R5 は、それぞれ独立に、水素原子または一価の基である。
o−ニトロベンジルアミド化合物は、具体的には(4c.1)o−ニトロベンジルアミドポリマーとして用いることが好ましい。
【0186】
(4c.1)o−ニトロベンジルアミドポリマー
上記式で表される構造単位を有するo−ニトロベンジルアミドポリマーを分解してカルボン酸が発生すると、ポリマーがアルカリ水溶液に可溶性になる。
以下に、o−ニトロベンジルアミドポリマーの例を示す。
【0187】
【化105】
Figure 0004094921
【0188】
(4d)o−ニトロベンジルフェノール化合物
o−ニトロベンジルフェノール化合物は、下記式で表される構造単位を有する化合物であって、分解によりカルボン酸を形成できる。
【0189】
【化106】
Figure 0004094921
【0190】
式中、R1 〜R8 は、それぞれ独立に、水素原子または一価の基である。
o−ニトロベンジルフェノール化合物は、具体的には(4d.1)o−ニトロベンジルフェノールポリマーとして用いることが好ましい。
【0191】
(4d.1)o−ニトロベンジルフェノールポリマー
上記式で表される構造単位を有するo−ニトロベンジルフェノールポリマーを分解してカルボン酸が発生すると、ポリマーがアルカリ水溶液に可溶性になる。
以下に、o−ニトロベンジルフェノールポリマーの例を示す。
【0192】
【化107】
Figure 0004094921
【0193】
【化108】
Figure 0004094921
【0194】
(4e)ベンゾインエステル化合物
ベンゾインエステル化合物は、下記式で表される構造単位を有する化合物であって、分解によりカルボン酸を形成できる。
【0195】
【化109】
Figure 0004094921
【0196】
式中、Ar1 およびAr2 は、それぞれ独立に、芳香族基である。芳香族基は、芳香族炭化水素基および芳香族複素環基を含む。芳香族炭化水素基(アリール基)が好ましい。芳香族基は、置換基を有していてもよい。
ベンゾインエステル化合物は、具体的には(4e.1)ベンゾインエステルポリマーとして用いることが好ましい。
【0197】
(4e.1)ベンゾインエステルポリマー
上記式で表される構造単位を有するベンゾインエステルポリマーを分解してカルボン酸が発生すると、ポリマーがアルカリ水溶液に可溶性になる。
以下に、ベンゾインエステルポリマーの例を示す。
【0198】
【化110】
Figure 0004094921
【0199】
分解性化合物は、画像形成層の50乃至99質量%の範囲で使用することが好ましく、60乃至95質量%の範囲で使用することがさらに好ましい。
【0200】
[画像形成層の他の任意成分]
画像形成層には、画像形成後の画像部と非画像部との区別を目的として、着色剤を添加することができる。着色剤としては、可視領域に大きな吸収を有する染料または顔料を用いる。着色剤の例には、オイルイエロー#101、オイルイエロー#103、オイルピンク#312、オイルグリーンBG、オイルブルーBOS、オイルブルー#603、オイルブラックBY、オイルブラックBS、オイルブラックT−505(以上オリエント化学工業(株)製)、ビクトリアピュアブルー、クリスタルバイオレット(CI42555)、メチルバイオレット(CI42535)、エチルバイオレット、ローダミンB(CI145170B)、マラカイトグリーン(CI42000)およびメチレンブルー(CI52015)が含まれる。着色剤として用いられる染料については、特開昭62−293247号公報に記載がある。酸化チタンのような無機顔料も着色剤として用いることができる。
着色剤の添加量は、画像形成層の0.01乃至10質量%であることが好ましい。
【0201】
画像形成層には、機上現像の安定性を広げるため、ノニオン界面活性剤(特開昭62−251740号、特開平3−208514号の各公報記載)または両性界面活性剤(特開昭59−121044号、特開平4−13149号の各公報記載)を添加することができる。
ノニオン界面活性剤の例には、ソルビタントリステアレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタントリオレート、ステアリン酸モノグリセリドおよびポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルが含まれる。両性界面活性剤の例には、アルキルジ(アミノエチル)グリシン、アルキルポリアミノエチルグリシン塩酸塩、2−アルキル−N−カルボキシエチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインおよびN−テトラデシル−N,N−ベタイン型界面活性剤(アモーゲンK、第一工業(株)製)が含まれる。
ノニオン界面活性剤および両性界面活性剤は、画像形成層に0.05乃至15質量%含まれることが好ましく、0.1乃至5質量%含まれることがさらに好ましい。
【0202】
画像形成層に柔軟性を付与するため、可塑剤を添加してもよい。可塑剤の例には、ポリエチレングリコール、クエン酸トリブチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジヘキシル、フタル酸ジオクチル、リン酸トリクレジル、リン酸トリブチル、リン酸トリオクチルおよびオレイン酸テトラヒドロフルフリルが含まれる。
【0203】
[画像形成層の形成]
画像形成層は、各成分を適当な液状媒体中に溶解、分散または乳化して塗布液を調製し、支持体上に塗布し、および乾燥して液状媒体を除去することにより形成することができる。
塗布液に使用する液状媒体の例には、ハロゲン化炭化水素(例、エチレンジクロライド)、ケトン(例、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン)、アルコール(例、メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール)、エステル(例、2−メトキシエチルアセテート、1−メトキシ−2−プロピルアセテート、ジメトキシエタン、乳酸メチル、乳酸エチル)、アミド(例、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド)、ウレア(例、テトラメチルウレア)、含窒素ヘテロ環化合物(例、N−メチルピロリドン)、スルホキシド(例、ジメチルスルホキシド)、スルホラン、ラクトン(例、γ−ブチルラクトン)、炭化水素(例、トルエン)および水が含まれる。
【0204】
液状媒体は、光吸収剤と分解性化合物とを溶解させることが好ましい。具体的には、光吸収剤および分解性化合物の種類に応じて、上記例から選択すればよい。
二種類以上の液状媒体を混合して用いてもよい。
液状媒体の一部が画像形成層に残存して、画像形成反応に関与してもよい。例えば、アルコールや水は、画像形成反応におけるプロトン供与体として機能することもできる。
塗布液の全固形分濃度は、1乃至50質量%であることが好ましい。
【0205】
塗布液には、塗布性を良化するための界面活性剤を添加することができる。フッ素系界面活性剤(特開昭62−170950号公報記載)が特に好ましい。界面活性剤の添加量は、塗布液の固形分量に対して0.01乃至1質量%であることが好ましく、0.05乃至0.5質量%であることがさらに好ましい。
画像形成層の乾燥塗布量は、0.5乃至5.0g/m2 であることが好ましい。
【0206】
[支持体]
支持体は、親水性であることが好ましい。
親水性支持体としては、金属板、プラスチックフイルムまたは紙を用いることができる。具体的には、表面処理されたアルミニウム板、親水処理されたプラスチックフイルムまたは耐水処理された紙が好ましい。さらに具体的には、陽極酸化処理されたアルミニウム板、親水性層を設けたポリエチレンテレフタレートフイルムまたはポリエチレンでラミネートされた紙が好ましい。
【0207】
陽極酸化処理されたアルミニウム板が特に好ましい。
アルミニウム板は、純アルミニウム板またはアルミニウムを主成分とし、微量の異元素を含む合金板である。アルミニウム合金に含まれる異元素の例には、ケイ素、鉄、マンガン、銅、マグネシウム、クロム、亜鉛、ビスマス、ニッケルおよびチタンが含まれる。異元素の割合は、10質量%以下であることが好ましい。市販の印刷版用アルミニウム板を用いてもよい。
アルミニウム板の厚さは、0.05乃至0.6mmであることが好ましく、0.1乃至0.4mmであることがさらに好ましく、0.15乃至0.3mmであることが最も好ましい。
【0208】
アルミニウム板表面には、粗面化処理を行うことが好ましい。粗面化処理は、機械的方法、電気化学的方法あるいは化学的方法により実施できる。機械的方法としては、ボール研磨法、ブラシ研磨法、ブラスト研磨法またはバフ研磨法を採用できる。電気化学的方法としては、塩酸または硝酸などの酸を含む電解液中で交流または直流により行う方法を採用できる。混合酸を用いた電解粗面化方法(特開昭54−63902号公報記載)も利用することができる。化学的方法としては、アルミニウム板を鉱酸のアルミニウム塩の飽和水溶液に浸漬する方法(特開昭54−31187号公報記載)が適している。
粗面化処理は、アルミニウム板の表面の中心線平均粗さ(Ra)が0.2乃至1.0μmとなるように実施することが好ましい。
粗面化されたアルミニウム板は、必要に応じてアルカリエッチング処理を行う。アルカリ処理液としては、水酸化カリウムまたは水酸化ナトリウムの水溶液が一般に用いられる。アルカリエッチング処理の後は、さらに中和処理を行うことが好ましい。
【0209】
アルミニウム板の陽極酸化処理は、支持体の耐摩耗性を高めるために行う。
陽極酸化処理に用いられる電解質としては、多孔質酸化皮膜を形成する種々の電解質が使用できる。一般には、硫酸、塩酸、蓚酸、クロム酸あるいはそれらの混酸が電解質として用いられる。
陽極酸化の処理条件は一般に、電解質の濃度が1乃至80質量%溶液、液温が5乃至70℃、電流密度が5乃至60A/dm2 、電圧が1乃至100V、そして、電解時間が10秒乃至5分の範囲である。
陽極酸化処理により形成される酸化皮膜量は、1.0乃至5.0g/m2 であることが好ましく、1.5乃至4.0g/m2 であることがさらに好ましい。
【0210】
[水溶性オーバーコート層]
親油性物質による画像形成層表面の汚染防止のため、画像形成層の上に、水溶性オーバーコート層を設けることができる。
水溶性オーバーコート層は、印刷時に容易に除去できる材料から構成する。そのためには、水溶性の有機ポリマーから水溶性オーバーコート層を構成することが好ましい。水溶性の有機ポリマーの例には、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリル酸、そのアルカリ金属塩もしくはアミン塩、ポリメタクリル酸、そのアルカリ金属塩もしくはアミン塩、ポリアクリルアミド、ポリヒドロキシエチルアクリレート、ポリビニルピロリドン、ポリビニルメチルエーテル、ポリ−2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸、そのアルカリ金属塩もしくはアミン塩、アラビアガム、セルロースエーテル(例、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、メチルセルローズ)、デキストリンおよびその誘導体(例、ホワイトデキストリン、酵素分解エーテル化デキストリン、プルラン)が含まれる。
水溶性の有機ポリマーの繰り返し単位を二種類以上有するコポリマーを用いてもよい。コポリマーの例には、ビニルアルコール−酢酸ビニルコポリマー(ポリ酢酸ビニルの部分ケン化ポリマー)およびビニルメチルエーテル−無水マレイン酸コポリマーが含まれる。ポリ酢酸ビニルの部分ケン化により、ビニルアルコール−酢酸ビニルコポリマーを合成する場合は、ケン化度は65%以上であることが好ましい。
【0211】
二種類以上の水溶性有機ポリマーを併用してもよい。
オーバーコート層に、染料を添加してもよい。染料は、光吸収剤の吸収波長(600nm以下)の光を吸収することが好ましい。n個の多光子吸収では、光吸収剤はn倍の波長の光によって励起される。従って、オーバーコート層の染料が600nm以下の光を吸収すると、走査露光における多光子吸収に問題を生じることなく、画像形成とは無関係で不都合な一光子吸収を防止できる。
【0212】
オーバーコート層の塗布液には、ノニオン界面活性剤(例、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルエーテル)を添加することができる。
オーバーコート層の塗布量は、0.1乃至2.0g/m2 であることが好ましい。
【0213】
[画像形成方法]
画像形成材料は、様々な画像形成方法に応用できる。本発明では、画像形成材料を画像状に露光して、分解性化合物を分解する工程、そして、露光した部分の画像形成層を除去する工程により、残存する画像形成層からなるレプリカ画像を形成することができる。
レプリカ画像は、光フィルターや集積回路のレジストとして機能させることができる。
また、ヒートモードレーザーを用いて、レプリカ画像を繰り返し重ねて形成することによって、3次元像を形成すること(光3D造形)も可能である。
さらに、レプリカ画像をカラープルーフとして用いることもできる。カラープルーフは、大別して、トランスファー方式とオーバーレイ方式とがある。画像形成材料から形成したレプリカ画像は、双方の方式に応用できる。
レプリカ画像を、平版、凹版、凸版あるいは孔版のような印刷版として利用することもできる。
【0214】
画像形成材料の最も代表的な用途は、平版印刷版の製版方法および平版印刷方法である。
平版印刷版の製版においては、平版印刷原版を、レーザー光で走査露光し、多光子吸収により光吸収剤を励起し、励起された光吸収剤により分解性化合物を分解する工程、そして、露光した部分の画像形成層を除去し、これにより露出した親水性支持体表面を親水性領域、残存する画像形成層表面を疎水性領域とする平版印刷版を製版する。
また、平版印刷原版を、レーザー光で走査露光し、多光子吸収により光吸収剤を励起し、励起された光吸収剤により分解性化合物を分解し、これにより画像形成層表面に親水性領域と疎水性領域とを形成して、平版印刷版を製版することもできる。
【0215】
平版印刷においては、通常、平版印刷原版を、レーザー光で走査露光し、多光子吸収により光吸収剤を励起し、励起された光吸収剤により分解性化合物を分解する工程、(必要に応じて、平版印刷原版を後加熱してから)、平版印刷原版を水性現像液で現像する工程、印刷機に装着し、湿し水と油性インクとを供給し、製版された平版印刷版で印刷する工程を実施できる。
また、平版印刷原版を、レーザー光で走査露光し、多光子吸収により光吸収剤を励起し、励起された光吸収剤により分解性化合物を分解する工程、平版印刷原版を印刷機に装着した状態で印刷機を稼動させ、湿し水、油性インク、または擦りにより露光した部分の画像形成層を除去し、これにより露出した親水性支持体表面を親水性領域、残存する画像形成層表面を疎水性領域とする平版印刷版を製版する工程、そして、さらに湿し水と油性インクとを供給し、製版された平版印刷版で印刷する工程も実施できる。
さらに、平版印刷原版を、レーザー光で走査露光し、多光子吸収により光吸収剤を励起し、励起された光吸収剤により分解性化合物を分解し、これにより画像形成層表面に親水性領域と疎水性領域とを形成して、平版印刷版を製版する工程、そして、湿し水と油性インクとを供給し、製版された平版印刷版で印刷する工程を実施することもできる。
【0216】
[走査露光]
走査露光は、レーザーを用いて実施する。レーザーは、赤外線レーザーを用いることが好ましい。赤外線の波長は、600乃至1200nmであることが好ましく、700乃至1100nmであることがさらに好ましい。赤外線は、固体高出力赤外線レーザー(例えば、半導体レーザー、YAGレーザー)が好ましい。レーザーの出力は100mW以上が好ましい。露光時間を短縮するため、マルチビームレーザーデバイスを用いることが好ましい。また、1画素あたりの露光時間は20μ秒以内であることが好ましい。照射される光エネルギーは10乃至500mJ/cm2 であることが好ましい。
分解反応を促進するため、加熱しながらレーザーを照射してもよい。
【0217】
図2は、走査露光後の画像形成材料を示す断面模式図である。
図2に示すように、画像形成層(2)にレーザー(Laser )を走査露光すると、露光部(2a)において、光吸収剤(21)が多光子吸収により励起され、分解性化合物(22)を分解する。これに対して、未露光部(2b)には変化はない。
以上の結果、露光部(2a)が親水性領域となり、未露光部(2b)が疎水性領域になる。
【0218】
[製版工程および印刷工程]
走査露光した平版印刷原版は、通常は(必要に応じて、後加熱を行ってから)水性現像液で現像することにより製版できる。
画像形成材料の種類によっては、現像処理を実施することなく、直ちに印刷機に装着し、油性インクと湿し水を用いて通常の手順で印刷するだけで、製版と印刷を連続して実施することができる。すなわち、平版印刷原版を印刷機に装着して、印刷機を稼動させると、機上現像(湿し水、油性インク、または擦り)により露光した部分の画像形成層を除去することができる。
なお、レーザー露光装置を有する印刷機(特許2938398号公報記載)を用いると、平版印刷原版を印刷機シリンダー上に取りつけた後に、印刷機に搭載されたレーザーにより露光し、その後に湿し水又は油性インクをつけて機上現像する(露光〜印刷を連続して処理する)ことも可能である。
【0219】
図3は、機上現像後に印刷している状態の印刷版を示す断面模式図である。
図3に示すように、現像後の印刷版では、露光部が除去され、親水性支持体表面が露出する。親水性支持体表面には、湿し水(3)が付着し、印刷において非画像部として機能する。これに対して、残存する画像形成層の未露光部(2b)には、油性インク(4)が付着し、画像部として機能する。
【0220】
また、走査露光した平版印刷原版は、機上現像も実施することなく(無処理で)、直ちに印刷を開始することも可能である。すなわち、露光した部分の画像形成層を除去することなく、露光した部分の画像形成層を親水性領域(非画像部)として機能させることができる。
【0221】
図4は、無処理で印刷している状態の印刷版を示す断面模式図である。
図4に示すように、走査露光のみで、現像処理を実施せずに(無処理で)印刷を開始することができる。画像形成層の露光部(2a)は、親水性領域として機能し、印刷では湿し水(3)が付着して非画像部として機能する。これに対して、画像形成層の未露光部(2b)は、疎水性領域として機能し、印刷では油性インク(4)が付着し、画像部として機能する。
【0222】
【実施例】
[実施例1]
(支持体の作製)
99.5質量%以上のアルミニウムと、Fe0.30質量%、Si0.10質量%、Ti0.02質量%、Cu0.013質量%を含むJIS−A−1050合金の溶湯に、清浄化処理を施してから、鋳造した。清浄化処理には、溶湯中の水素などの不要なガスを除去するために脱ガス処理し、セラミックチューブフィルタ処理をおこなった。鋳造法はDC鋳造法で行った。凝固した板厚500mmの鋳塊を表面から10mm面削し、金属間化合物が粗大化してしまわないように550℃で10時間均質化処理を行った。次いで、400℃にて熱間圧延し、連続焼鈍炉中で500℃にて60秒中間焼鈍した後、冷間圧延を行って、板圧0.30mmのアルミニウム圧延板とした。圧延ロールの粗さを制御することにより、冷間圧延後の中心線平均表面粗さRaを0.2μmに制御した。その後、平面性を向上させるためにテンションレベラーにかけた。
【0223】
次に平版印刷版用支持体とするための表面処理を行った。
まず、アルミニウム板表面の圧延油を除去するため10質量%アルミン酸ソーダ水溶液で50℃にて30秒間脱脂処理を行い、30質量%硫酸水溶液で50℃にて30秒間中和するスマット除去処理を行った。
次いで支持体と画像形成層の密着性を良好にし、かつ非画像部に保水性を与えるため、支持体の表面を粗面化する、いわゆる、砂目立て処理を行った。1質量%の硝酸と0.5質量%の硝酸アルミニウムを含有する水溶液を45℃に保ち、アルミウェブを水溶液中に流しながら、間接給電セルにより電流密度20A/dm2 、デューティー比1:1の交番波形でアノード側電気量240C/dm2 を与えることで電解砂目立てを行った。その後10質量%アルミン酸ソーダ水溶液で50℃30秒間エッチング処理を行い、30質量%硫酸水溶液で50℃にて30秒間中和するスマット除去処理を行った。
【0224】
さらに耐摩耗性、耐薬品性、保水性を向上させるために、陽極酸化によって支持体に酸化皮膜を形成させた。電解質として硫酸20質量%水溶液を35℃で用い、アルミウェブを電解質中に通搬しながら、間接給電セルにより14A/dm2 の直流で電解処理を行うことで2.5g/m2 の陽極酸化皮膜を作製した。
この後印刷版非画像部としての親水性を確保するため、シリケート処理を行った。処理は3号ケイ酸ソーダ1.5質量%水溶液を70℃に保ちアルミウェブの接触時間が15秒となるよう通搬し、さらに水洗した。Siの付着量は10mg/m2 であった。
作製した支持体のRa(中心線表面粗さ)は0.25μmであった。
【0225】
(画像形成層の形成)
作製した支持体上に、下記の組成の塗布液を塗布し、100℃にて1分間乾燥した。乾燥後の塗布重量は1.0g/m2 であった。このようにして平版印刷原版を作製した。
【0226】
────────────────────────────────────
画像形成層塗布液組成
────────────────────────────────────
光吸収剤(5) 0.2g
下記の分解性化合物(1) 1.0g
メチルエチルケトン 8.0g
プロピレングリコールモノメチルエーテル 8.0g
────────────────────────────────────
【0227】
【化111】
Figure 0004094921
【0228】
(製版および印刷)
得られた平版印刷原版を、波長830nm、パルス幅5ピコ秒のレーザーにより露光した後、水道水で洗浄した。その結果、露光部が除去されて版上に良好な画像が確認された。
次に、同じ条件で露光し平版印刷原版を、現像処理することなく、印刷機(SOR・M、ハイデルベルグ社製)に装着し、通常どおり印刷したところ、良好な印刷物が得られた。
【0229】
[実施例2]
(画像形成層の形成)
実施例1で作製した支持体上に、下記の組成の塗布液を塗布し、100℃にて1分間乾燥した。乾燥後の塗布重量は1.2g/m2 であった。このようにして平版印刷原版を作製した。
【0230】
────────────────────────────────────
画像形成層塗布液組成
────────────────────────────────────
光吸収剤(4) 0.2g
下記の分解性化合物(2) 1.0g
メチルエチルケトン 8.0g
プロピレングリコールモノメチルエーテル 8.0g
────────────────────────────────────
【0231】
【化112】
Figure 0004094921
【0232】
(製版および印刷)
得られた平版印刷原版を、波長830nm、パルス幅5ピコ秒のレーザーにより露光した後、水道水で洗浄した。その結果、露光部が除去されて版上に良好な画像が確認された。
次に、同じ条件で露光し平版印刷原版を、現像処理することなく、印刷機(SOR・M、ハイデルベルグ社製)に装着し、通常どおり印刷したところ、良好な印刷物が得られた。
【0233】
[実施例3]
(画像形成層の形成)
実施例1で作製した支持体上に、下記の組成の塗布液を塗布し、100℃にて1分間乾燥した。乾燥後の塗布重量は0.9g/m2 であった。このようにして平版印刷原版を作製した。
【0234】
────────────────────────────────────
画像形成層塗布液組成
────────────────────────────────────
光吸収剤(5) 0.2g
下記の分解性化合物(3) 1.0g
メチルエチルケトン 4.0g
プロピレングリコールモノメチルエーテル 12.0g
────────────────────────────────────
【0235】
【化113】
Figure 0004094921
【0236】
(製版および印刷)
得られた平版印刷原版を、波長830nm、パルス幅5ピコ秒のレーザーにより露光した後、水道水で洗浄した。その結果、露光部が除去されて版上に良好な画像が確認された。
次に、同じ条件で露光し平版印刷原版を、現像処理することなく、印刷機(SOR・M、ハイデルベルグ社製)に装着し、通常どおり印刷したところ、良好な印刷物が得られた。
【0237】
[実施例4]
(画像形成層の形成)
実施例1で作製した支持体上に、下記の組成の塗布液を塗布し、100℃にて1分間乾燥した。乾燥後の塗布重量は1.3g/m2 であった。このようにして平版印刷原版を作製した。
【0238】
────────────────────────────────────
画像形成層塗布液組成
────────────────────────────────────
光吸収剤(4) 0.2g
下記の分解性化合物(4) 1.0g
メチルエチルケトン 8.0g
プロピレングリコールモノメチルエーテル 8.0g
────────────────────────────────────
【0239】
【化114】
Figure 0004094921
【0240】
(製版および印刷)
得られた平版印刷原版を、波長830nm、パルス幅5ピコ秒のレーザーにより露光した後、水道水で洗浄した。その結果、露光部が除去されて版上に良好な画像が確認された。
次に、同じ条件で露光し平版印刷原版を、現像処理することなく、印刷機(SOR・M、ハイデルベルグ社製)に装着し、通常どおり印刷したところ、良好な印刷物が得られた。
【図面の簡単な説明】
【図1】画像形成材料の基本構成を示す断面模式図である。
【図2】走査露光後の画像形成材料を示す断面模式図である。
【図3】機上現像後に印刷している状態の印刷版を示す断面模式図である。
【図4】無処理で印刷している状態の印刷版を示す断面模式図である。
【符号の説明】
1 親水性支持体
2 画像形成層
2a 露光部
2b 未露光部
21 光吸収剤
22 分解性化合物
23 溶媒
3 湿し水
4 油性インク
Laser レーザー

Claims (2)

  1. 光吸収剤と分解性化合物とを含む画像形成層並びに支持体を有する平版印刷原版を、レーザー光で走査露光し、多光子吸収により光吸収剤を励起し、励起された光吸収剤により分解性化合物を分解し、これにより画像形成層表面に露光された親水性領域と未露光の疎水性領域とを形成して、平版印刷版を製版する工程からなる平版印刷版の製版方法
  2. 光吸収剤と分解性化合物とを含む画像形成層並びに親水性支持体を有する平版印刷原版を、レーザー光で走査露光し、多光子吸収により光吸収剤を励起し、励起された光吸収剤により分解性化合物を分解する工程、そして、露光した部分の画像形成層を除去し、これにより露出した親水性支持体表面を親水性領域、残存する画像形成層表面を疎水性領域とする平版印刷版を製版する工程からなる平版印刷版の製版方法。
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