JP4094311B2 - 車高調整式ダンパ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は車高調整式ダンパに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、車両用ダンパとして、ダンパチューブの外周に取付けられるスプリングシートの取付高さ位置を調整可能にし、該ダンパチューブの外周に設けたねじ部にスプリングシートの固定手段を螺合してなるものがある。スプリングシートの取付高さ位置を下げることにより車高を下げ、取付高さ位置を上げることにより車高を上げる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
スプリングシートに担持されるスプリングは、スプリングシートの取付高さ位置を下げた低車高状態でも、ピストンロッドが伸び切ったときに遊ぶことなくプリロードがかかっているように設定される必要がある。また、スプリングシートを上げた高車高状態でも、ピストンロッドが縮み切ったときに、スプリングが密着まで圧縮されることがないように設定される必要がある。
【0004】
しかしながら、スプリングシートの取付高さ位置を過度に下げると、ピストンロッドの伸びストロークが過大になり、ピストンロッドの伸び切り時にスプリングの遊びを生ずる虞がある。また、スプリングシートの取付高さ位置を過度に上げると、ピストンロッドの縮みストロークが過大になり、ピストンロッドの縮み切り時にスプリングの密着を生ずる虞がある。
【0005】
本発明の課題は、螺動操作手段によるスプリングシートの取付高さの調整範囲を規制し、かつこの調整範囲幅を変更可能にし、スプリングの作動の安定を図ることにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明は、ダンパチューブの外周に取付けられるスプリングシートの取付高さ位置を調整可能にするようにダンパチューブの外周に対して螺動する螺動操作手段を有し、該ダンパチューブの外周に設けたねじ部にスプリングシートの固定手段を螺合してなる車高調整式ダンパにおいて、螺動操作手段によるスプリングシートの取付高さの調整範囲を規制する上下の規制手段を設け、上下の規制手段の少なくとも一方がダンパチューブの外周に設けたリング溝に係着されるストッパリングであり、ストッパリングの係着位置を変更可能とする複数のリング溝をダンパチューブの外周に並設したものである。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1の発明において更に、上下の規制手段の一方がダンパチューブの外周に設けたねじ部の加工端であり、他方がダンパチューブの外周に設けたリング溝に係着されるストッパリングであるようにしたものである。
【0008】
請求項3の発明は、請求項1の発明において更に、上下の規制手段の両方がダンパチューブの外周に設けたリング溝に係着されるストッパリングであるようにしたものである。
【0010】
【発明の実施の形態】
図1は第1実施形態のダンパを示す全体断面図、図2は図1の要部断面部、図3は第2実施形態のダンパを示し、(A)は要部断面図、(B)はB−B線に沿う断面図である。
【0011】
(第1実施形態)(図1、図2)
図1は複筒型の車高調整式ダンパ10であり、ダンパチューブ11を外筒(アウタチューブ)12と内筒(シリンダ)13からなる二重管とし、外筒12と内筒13をリブ14によって同芯に結合している。
【0012】
ダンパ10は、外筒12に内蔵の内筒13にピストンロッド15を挿入し、ピストンロッド15の上端部に固定の取付ブラケット(不図示)を車体に連結し、外筒12の下端部を取付ブラケット16により車輪側に連結し、車両の懸架装置を構成する。
【0013】
ダンパ10は、外筒12の外周に後述する如くに取付けられる下側のスプリングシート17と、ピストンロッド15の上端部の取付ブラケットに背面支持される上側のスプリングシート(不図示)の間に懸架スプリング18を介装している。
【0014】
ダンパ10は、内筒13に挿入されるピストンロッド15のためのロッドガイド21(ブッシュ21A)と、オイルシール組立体22からなる軸封部20を、内筒13の上端部と外筒12の上端部に固定している。
【0015】
尚、ダンパ10は、外筒12の上端部にバンプストッパ24を備え、ピストンロッド15に備えるバンプラバー(不図示)をバンプストッパ24に衝合させてピストンロッド15の最圧縮ストロークを規制する。また、ピストンロッド15は内筒13への挿入部にリバウンドシート25、リバウンドラバー26を備え、リバウンドラバー26をロッドガイド21に衝合させてピストンロッド15の最伸長ストロークを規制する。
【0016】
ダンパ10は、ピストンバルブ装置30とベースバルブ装置40を有し、それらが発生する減衰力により、懸架スプリング18による衝撃力の吸収に伴なうピストンロッド15の伸縮振動を制振する。
【0017】
ピストンバルブ装置30は、ピストンロッド15の内筒13への挿入端に設けたピストン31により、内筒13の内部をピストンロッド15が収容されないピストン側油室32Aと、ピストンロッド15が収容されるロッド側油室32Bとに区画する。ピストン31は、チェックバルブ33を備える圧側流路33Aと、ディスクバルブ34を備える伸側流路34A(不図示)を有する。これにより、圧縮行程では、ピストン側油室32Aの油が圧側流路33Aを通りチェックバルブ33を開いてロッド側油室32Bに導かれる。伸長行程では、ロッド側油室32Bの油が伸側流路34Aを通り、ディスクバルブ34を撓み変形させて開き、ピストン側油室32Aに導かれ、伸側減衰力を生ずる。
【0018】
ベースバルブ装置40は、内筒13の下端部にボトムピース41を固定し、外筒12と内筒13の環状間隙であるリザーバ室42を、このボトムピース41によりピストン側油室32Aと区画している。リザーバ室42は下部油室と上部ガス室からなる。ボトムピース41は、チェックバルブ43を備える伸側流路43Aと、ディスクバルブ44を備える圧側流路44Aを有する。これにより、伸長行程では、内筒13から退出するピストンロッド15の退出容積分の油が、リザーバ室42から伸側流路43Aを経てチェックバルブ43を開き、ピストン側油室32Aに補給される。圧縮行程では、内筒13に進入するピストンロッド15の進入容積分の油がピストン側油室32Aから圧側流路44Aを経てディスクバルブ44を撓み変形させて開き、リザーバ室42へ押出され、圧側減衰力を得る。
【0019】
しかるに、ダンパ10は車高調整構造を有する(図2)。ダンパチューブ11の外筒12の外周にはねじ付パイプ51が挿嵌されて両端部を溶接固定される。ねじ付パイプ51の外周にはおねじ部51Aが螺設される。スプリングシート17はねじ付パイプ52の上端側にシート部53を溶接し、ねじ付パイプ52の下端側に工具係止部54を溶接して構成される。ねじ付パイプ52の内周にはめねじ部52Aが螺設される。スプリングシート17のねじ付パイプ52が外筒12のねじ付パイプ51に螺合され、外筒12に対するスプリングシート17の取付高さ位置を調整可能とし、ねじ付パイプ51のおねじ部51Aに螺着されるロックナット55(固定手段)とねじ付パイプ52との衝合によりスプリングシート17が固定される。
【0020】
車高調整手段は、スプリングシート17の取付高さの調整範囲を規制する下規制手段56と上規制手段57を有する。
【0021】
このとき、ねじ付パイプ51はおねじ部51Aが設けられる大外径部の上端部からねじ加工され、下端部の手前をねじ加工の加工端としている。このおねじ部51Aの加工端が下規制手段56となる。
【0022】
また、ねじ付パイプ51の上端側の外周部にはリング溝58が設けられ、このリング溝58に係着されるストッパリング59を上規制手段57とする。尚、リング溝58はおねじ部51Aから外して設けてあるが、おねじ部51Aの範囲内に設けても良い。ストッパリング59の係着位置をスプリングシート17の取付高さ方向で変更可能とする複数のリング溝58(58A〜58C)をねじ付パイプ51の外周部に並設しても良い。スプリングシート17の最大移動範囲Hは図2に示す如くになる。
【0023】
尚、外筒12と別体のねじ付パイプ51を用いず、外筒12の外周に直接的におねじ部51A、リング溝58を設けても良い。
【0024】
また、スプリングシート17はねじ付パイプ52とシート部53と工具係止部54を一体成形するものでも良い。
【0025】
また、下規制手段56をおねじ部51Aの加工端によるものとせず、下規制手段56もねじ付パイプ51の下端側の外周部に設けたリング溝に係着されるストッパリングにて構成しても良い。
【0026】
本実施形態によれば以下の作用がある。
(請求項1に対応する作用)
(a)スプリングシート17は下規制手段56の存在により、下規制手段56より下方に下がることがなく、車高を下げすぎることがない。これにより、スプリング18は、スプリングシート17の取付高さ位置を下げた低車高状態でも、ピストンロッド15が伸び切ったときに遊ぶことなくプリロードがかかっているように設定される。
【0027】
また、スプリングシート17は上規制手段57の存在により、上規制手段57より上に上がることがなく、車高を上げすぎることがない。これにより、スプリングシート17を上げた高車高状態でも、ピストンロッド15が縮み切ったときに、スプリング18が密着まで圧縮されることがないように設定される。
【0028】
(請求項2に対応する作用)
(b)下規制手段56をダンパチューブ11の外筒12の外周に設けたおねじ部51Aの加工端により構成し、上規制手段57をダンパチューブ11の外筒12の外周に設けたリング溝58に係着されるストッパリング59によって構成することにより、簡単である。
【0029】
(請求項3に対応する作用)
(c)下規制手段56と上規制手段57の両方を、ダンパチューブ11の外筒12の外周に設けたリング溝に係着されるストッパリングにより構成することによっても簡単である。
【0030】
(請求項1に対応する作用)
(d)ダンパチューブ11の外筒12の外周に複数のリング溝58A〜58Cを設け、ストッパリング59の係着位置を変更可能としたから、スプリング18の変更に対し部品の共通化を実現できる。
【0031】
(第2実施形態)(図3)
図3の第2実施形態が第1実施形態と異なる点は車高調整構造にある。ダンパチューブ11の外筒12の外周にはおねじ部61Aが螺設される。スプリング17はパイプ部62の上端側にシート部63を一体成形して構成される。パイプ部62の内周の周方向の一部にはキー64が一体成形され、外筒12の外周にはキー溝64Bが形成される。スプリングシート17のパイプ部62はキー64Aをキー溝64Bに係合し、外筒12に対して回り止めされながら挿嵌され、外筒12に対するスプリングシート17の取付高さ位置を調整可能とされる。外筒12のおねじ部61Aに螺着されるダブルナット65A、65B(固定手段)とスプリングシート17のパイプ部62の下端面との衝合によりスプリングシート17が固定される。
【0032】
車高調整手段は、スプリングシート17の取付高さの調整範囲を規制する下規制手段66と上規制手段67を有する。
【0033】
このとき、外筒12はおねじ部61Aが設けられる大外径部の上端側からねじ加工され、下端部の手前をねじ加工の加工端としている。このおねじ部61Aの加工端が下規制手段66となる。
【0034】
また、外筒12の上端側の外周部にはリング溝68が設けられ、このリング溝68に係着されるストッパリング69を上規制手段67とする。ストッパリング69の係着位置をスプリングシート17の取付高さ方向で変更可能とする複数のリング溝68(68A〜68C)を外筒12の外周部に並設しても良い。スプリングシート17の最大移動範囲Hは図3に示す如くになる。
【0035】
尚、下規制手段66をおねじ部61Aの加工端によるものとせず、下規制手段66も外筒12の外周部に設けたリング溝に係着されるストッパリングにて構成しても良い。
【0036】
本実施形態によれば、第1実施形態における▲1▼〜▲4▼と同様の作用がある。
以上、本発明の実施の形態を図面により詳述したが、本発明の具体的な構成はこの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。例えば、本発明は単筒型のダンパにおいても採用できる。
【0037】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、スプリングシートの取付高さ位置を規制し、スプリングの作動の安定を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は第1実施形態のダンパを示す全体断面図である。
【図2】図2は図1の要部断面部である。
【図3】図3は第2実施形態のダンパを示し、(A)は要部断面図、(B)はB−B線に沿う断面図である。
【符号の説明】
10 車高調整式ダンパ
11 ダンパチューブ
12 外筒
17 スプリングシート
18 スプリング
51A、61A おねじ部
55、65A、65B ナット(固定手段)
56、66 下規制手段
57、67 上規制手段
58、58A〜58C、68、68A〜68C リング溝
59、69 ストッパリング
Claims (3)
- ダンパチューブの外周に取付けられるスプリングシートの取付高さ位置を調整可能にするようにダンパチューブの外周に対して螺動する螺動操作手段を有し、該ダンパチューブの外周に設けたねじ部にスプリングシートの固定手段を螺合してなる車高調整式ダンパにおいて、
螺動操作手段によるスプリングシートの取付高さの調整範囲を規制する上下の規制手段を設け、
上下の規制手段の少なくとも一方がダンパチューブの外周に設けたリング溝に係着されるストッパリングであり、ストッパリングの係着位置を変更可能とする複数のリング溝をダンパチューブの外周に並設したことを特徴とする車高調整式ダンパ。 - 上下の規制手段の一方がダンパチューブの外周に設けたねじ部の加工端であり、他方がダンパチューブの外周に設けたリング溝に係着されるストッパリングである請求項1に記載の車高調整式ダンパ。
- 上下の規制手段の両方がダンパチューブの外周に設けたリング溝に係着されるストッパリングである請求項1に記載の車高調整式ダンパ。
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