JP4087555B2 - 酸化鉄およびその製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はFe3 4 、α−Fe2 3 およびそれらの製造方法に関し、特に仮焼温度を低下することができるα−Fe2 3 とその原料のFe3 4 およびそれらの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、電子機器の小型化、軽量化に伴い、磁気素子の分野でもノイズフィルタとしての積層チップインダクタやパワー系の平面インダクタが提案され、一部で実用に供されている。積層チップインダクタはフェライトペーストを印刷法やドクターブレード法で成形した磁性体部分(コア層)と、印刷法で成形された導体部分(内部電極)を積層、焼成して製造される(特開平4−180610号公報)。積層チップインダクタは小型化に有利であり、外鉄構造であるため、漏洩磁束が小さく高密度実装にも適している。
【0003】
一方、平面インダクタは、シリコン基板上にフェライトペーストを印刷し、焼成して磁性体部分を形成し、その上に平面コイルをフォトリソ技術とめっき技術により形成して製造される(特開平11−26239号公報)。平面インダクタも薄型化と高密度実装化に優れている。
【0004】
これら素子の磁性体材料には、NiZn系、NiZnCu系などのフェライトが用いられている。これらフェライトの原材料としては、通常、α−Fe2 3 と酸化ニッケル、酸化亜鉛、酸化銅などの金属酸化物とを混合、仮焼後、粉砕して得られるフェライト粉末を溶媒と混合し、ペースト化したもの(フェライトペースト)が用いられており、前述したように該フェライトペーストを焼成して磁性体部分が形成される。
【0005】
積層チップインダクタや平面インダクタなどの小型磁気素子の焼成温度が1000℃前後の高温であると、導体材料の銀合金とフェライトが反応してフェライト特性が劣化したり、電極が短絡する等の問題が生じるので、銀合金の融点以下の低温で焼成する必要がある。しかし、900℃以下の低温焼成の場合は、フェライトの焼結密度が十分に高くならず、透磁率等の磁気特性は不十分になってしまう。そこで、小型磁気素子のさらなる性能の向上のためには、900℃以下の低温で焼成しても高い焼結密度が得られ、初透磁率などの磁気特性に優れるフェライトが求められている。
【0006】
焼成温度を低下させる方法として、通常よりも低い温度で仮焼、微粉砕したフェライト粉末を用いる方法が知られている。しかし、仮焼温度を単に下げたのみでは、仮焼時のスピネル化が不十分であり、900℃以下で焼成しても焼結密度が高くならない。
【0007】
そこで、低温仮焼してもスピネル化を高める方法として、酸化鉄と酸化ニッケル、酸化亜鉛、酸化銅などの金属酸化物との混合粉中に塩素化合物および/または硫酸化合物を添加し、仮焼する方法が提案されている(特開平11−144934号公報)。また、粉体粉末冶金協会の平成12年度春季大会概要の第246頁にも、フェライト原料粉末に塩素イオンを添加することにより仮焼温度が低下し、低温で焼成しても高い焼結密度が得られることが報告されている。
【0008】
これらの方法はいずれも、α−Fe2 3 と酸化ニッケル、酸化亜鉛、酸化銅などの金属酸化物との混合粉中に塩素化合物を添加する方法である。しかし、あらかじめα−Fe2 3 などの鉄源中に仮焼温度を低下できる成分が含まれていれば、塩素化合物や硫酸化合物などを添加する工程が不要であり、工業的には有利になる。
【0009】
フェライト粉末の主原材料であるα−Fe2 3 の製造方法は数多く、例えば、▲1▼ 鋼材の酸洗工程で得られる塩化鉄水溶液を噴霧焙焼して製造する方法(乾式法)、▲2▼ 塩化鉄水溶液や硫酸鉄水溶液をアルカリで中和して、水酸化鉄を得、これを酸化して一旦Fe3 4 を得(湿式法)、さらに酸化する方法などがある。
【0010】
乾式法で得られたα−Fe2 3 は残存塩素分により仮焼温度を低減できる可能性はあるが、焙焼炉の制約などから、比表面積が10m2/g以下の小さな粒子を得ることが難しく、かつ凝集した粒子が多い。このためフェライト粉末を得る際には、均一な混合物を得るために、他の金属酸化物と混合する前に、予め粉砕する必要がある。しかし、粉砕時に鉄などのコンタミが混入するので、特性劣化を招きやすいなどの問題があり、小型磁気素子用には不向きである。
【0011】
一方、湿式法で得たFe3 4 は比表面積が10m2/g以上の微粒子であり、粒度分布もシャープであり、分散性にも優れている。このFe3 4 をさらに酸化して得られるα−Fe2 3 の寸法や形状はFe3 4 とほぼ同じであり、小型磁気素子用フェライト粉末原料に適している。しかし、Fe3 4 中には中和時に添加したアルカリなどが残存し、磁気特性に影響を与える場合もあるため、十分に洗浄除去しなければならない。
【0012】
湿式法では中和時に塩化ナトリウムなどの塩素含有物質が生成するので、仮焼温度を低下できる可能性があるが、塩化ナトリウムは上記した洗浄工程で殆ど除去されてしまうので、仮焼温度の低減効果は余り期待できない。しかし、湿式法で製造したFe3 4 やこれを酸化して得たα−Fe2 3 の粉体特性は小型磁気素子用フェライト粉末原材料に最適であるため、該Fe3 4 やα−Fe2 3 を使用することができれば、小型磁気素子用フェライト粉末の原材料として非常に有効である。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、湿式法において、洗浄しても簡単には除去できないような形態でα−Fe2 3 やFe3 4 中に塩素分を含有させることを検討した。この結果、湿式法の原料として用いる塩化鉄水溶液中の第一鉄イオン(Fe2+)と第二鉄(Fe3+)が特定の比率となり、かつ、中和時に混合する際の「塩化鉄水溶液の濃度」と「アルカリ溶液の濃度」の比が特定の値となれば、洗浄しても簡単には除去できない塩素分を任意に制御できることを見出し、本発明の完成に至ったものである。
本発明の目的は、Fe3 4 、α−Fe2 3 中の塩素含有量を任意に制御し、低温仮焼が可能なフェライト粉末用原材料となるα−Fe2 3 、該α−Fe2 3 の原料として最適なFe3 4 およびこれらの製造方法を提供するものである。
【0014】
【課題を解決するための手段】
第一の発明は、湿式法で製造してなるFe34 であって、比表面積が10.6〜40m2/g、塩素含有量が100ppm 以上3000ppm 以下であることを特徴とするFe34 である。
【0015】
第二の発明は、塩化鉄水溶液とアルカリ水溶液を混合して中和し、得られる中和液を酸化してFe34 を製造する方法において、前記塩化鉄水溶液中の第二鉄イオン濃度(mol /l) を、第一鉄イオンと第二鉄イオンの合計鉄イオン濃度(mol /l)に対し2〜30%に調整し、かつ前記塩化鉄水溶液と前記アルカリ水溶液の濃度を、
0.8 ≦ 合計鉄イオン濃度(mol /l) /A ≦ 12
ただし、A=(Fe2+とFe3+の中和に必要な水酸基換算量(mol) )×R/(アルカリ水溶液の量(l) )
(ここで、Rは前記塩化鉄水溶液と前記アルカリ水溶液の当量比を示し、0.90≦R≦1.5である)
に調整して中和することを特徴とするFe34 の製造方法である。
【0016】
第三の発明は、前記の第一の発明のFe3 4 を酸化してなる比表面積が10〜40m2/g、塩素含有量が100ppm 以上3000ppm 以下であることを特徴とするα−Fe2 3 である。
【0017】
第四の発明は、前記の第二の発明の製造方法で製造したFe3 4 を加熱し、酸化することを特徴とするα−Fe2 3 の製造方法である。
【0018】
【発明の実施の形態】
本発明のFe34 は、塩化第一鉄と塩化第二鉄を含有する塩化鉄水溶液をアルカリ水溶液で中和し、得られた水溶液を加熱、酸化する方法(湿式法)で製造された比表面積が10.6〜40m2/g、塩素含有量が100ppm 以上3000ppm 以下の酸化鉄である。
【0019】
湿式法によるFe34 は、粒径が小さく、粒度分布がシャープであるため、分散性に優れ、α−Fe23 にするための加熱酸化時に粒成長が抑制され、フェライト粉末としての粉砕性が優れる。比表面積が10.6m2/g未満であると粒径が大きく、低温短時間で仮焼することが困難となる。一方、比表面積が40m2/gを超えると、粒子が凝集しやすく、分散性に劣り、加熱酸化時に粒成長しやすい。好ましい比表面積は15〜30m2/gである。なお、比表面積は例えば、塩化鉄水溶液の第二鉄イオン量などにより制御できる。
【0020】
本発明のFe3 4 の塩素含有量は100ppm 以上3000ppm 以下である。塩素含有量が比較的多量のため、フェライト化の仮焼温度の低減効果が大きく、低温焼結してもフェライトの焼結密度が高い。塩素含有量が100ppm 未満であると、フェライト化の仮焼温度の低減効果が認められない。一方、3000ppm を超えると、仮焼温度が下がるものの、焼成時に焼結密度が上がらず、所望の電磁気特性を得ることができない。塩素含有量は例えば後述するように、中和時の塩化鉄水溶液とアルカリ水溶液の濃度比により制御することができる。好ましい塩素含有量は300ppm 以上1600ppm 以下であり、より好ましくは500〜1200ppm である。
【0021】
本発明のFe3 4 はそのままでもフェライト原料として使用して構わないが、Fe3 4 はFe2+とFe3+の比率、すなわち、鉄と酸素の比率が必ずしも一定しないため、フェライト原料として実用化が難しい面があるので、通常は、さらにこれを加熱し、酸化して得られたα−Fe2 3 がフェライト原料として使用される。本発明はFe3 4 とα−Fe2 3 の2種の酸化鉄に係わる。
【0022】
つぎに、Fe3 4 の製造方法について説明する。
第二の発明のFe3 4 は、塩化第一鉄と塩化第二鉄を含有する塩化鉄水溶液をアルカリ水溶液で中和して得られた水酸化鉄水溶液を加熱、酸化する方法で製造される。従来から、トナー用Fe3 4 は、塩化第一鉄水溶液をアルカリ水溶液で中和して得られた水酸化鉄水溶液を加熱、酸化する方法で製造されているが、該Fe3 4 は粒度分布がシャープなものの、比表面積が10m2/g未満と小さいため、噴霧焙焼法により製造されたFe3 4 よりもやや粒径が小さい程度であり、前記の問題点を解決するような粒径ではない。また水洗などの洗浄工程で塩素分は除去されやすいため、塩素含有量が100ppm 未満と少なく、フェライト化の仮焼温度を下げる効果が十分でない。そのため、小型磁気素子用には適さない。
【0023】
本発明のFe34 の製造において、鉄源として塩化第一鉄および塩化第二鉄を共有する水溶液を用いる。塩化鉄はそれを構成する塩素をFe34 に取り込むために使用する。塩化第一鉄と塩化第二鉄を含有する塩化鉄水溶液は、第二鉄イオン(Fe3+)濃度(mol /l)が第一鉄イオン(Fe2+)と第二鉄イオン(Fe3+)の合計鉄イオン濃度(全Fe量)(mol /l)に対して2〜30%となるように調整して用いることが重要である。塩化第二鉄を加え、その含有量を上記範囲に規制することにより、生成するFe34 の粒径を小さく制御することができ、比表面積が10.6〜40m2/gで、粒度分布がシャープで、しかも分散性に優れたFe34 を得ることができる。しかも塩素分の含有量も適量となる。
【0024】
第二鉄イオンの添加量が前記濃度比で2%未満の場合は、目標とする小粒径のFe34 が得られず、比表面積10.6m2/g未満の粒子が得られる。また、塩素分の含有量が少なく、フェライト粉末の仮焼温度の低減に寄与しない。逆に添加量が前記濃度比で30%を超えると、比表面積が40m2/gを超えるFe34 が得られ、磁気的な凝集力により分散性が悪くなるため、フェライト仮焼時に焼結が進みやすくなり、仮焼品の粉砕性も悪化する。好ましい第二鉄イオンの含有量は前記濃度比で5〜20%である。
【0025】
本発明のFe3 4 を得るためには、塩化鉄水溶液とアルカリ水溶液の濃度を下記の関係に調整して中和することも重要である。
0.8 ≦ 合計鉄イオン濃度(mol /l) /A ≦ 12 [1]
ただし、A=(Fe2+とFe3+の中和に必要な水酸基換算量(mol) )× R/(アルカリ水溶液の量(l) )
(ここで、Rは塩化鉄水溶液とアルカリ水溶液の当量比を示し、0.90≦R≦1.5である。)
【0026】
式[1]は、中和に際し、混合する時のアルカリ水溶液の濃度に対する、塩化鉄水溶液の濃度の比を示す。例えば塩化鉄水溶液1l(濃度10mol / l)と水酸化ナトリウム水溶液9l(濃度2.2mol / l)を混合、中和する場合のように、少量の高濃度塩化鉄水溶液と多量の低濃度アルカリ水溶液を混合する場合、式[1]の値が大きくなる。
【0027】
本発明者は、この場合、塩化鉄水溶液の濃度とアルカリ水溶液の濃度条件次第で、Fe3 4 に含有される塩素分の量が変化することを見出し、該濃度条件を式[1]で示される範囲に調整すれば、含有する塩素分がα−Fe2 3 の仮焼温度の低下に寄与することを確認した。
【0028】
式[1]の前記濃度比は0.8以上12以下である。この範囲であると、仮焼温度の低下に効果があるFe3 4 に含有される塩素分の量が適量となる。前記濃度比が0.8未満の場合は、アルカリ水溶液の濃度に比べ塩化鉄水溶液の濃度が低くなりすぎ、仮焼温度の低下に必要な量の塩素分がFe3 4 に含有されず、仮焼温度を下げることができない。逆に前記濃度比が12を超える場合は、塩化鉄水溶液の濃度が塩化第一鉄の溶解度を超えることがあり得るので現実的でない。中和後の塩化鉄濃度が非常に低い場合には、12を超えても可能性があるが、必要以上の塩素分がFe3 4 に取り込まれてしまい、逆に焼結を阻害することになる。式[1]の前記濃度比が1.0〜12であれば、該取り込み量が適量であり、1.5〜10であればさらに好ましい。
【0029】
Fe2+とFe3+の中和に必要なアルカリの量は水酸基(OH- )に換算した濃度でなければならない。例えば、1mol/lの炭酸ナトリウム水溶液の場合は、炭酸イオン(CO3 2- )となるので、水酸基濃度に換算すると2mol/lとなる。また、Rは塩化鉄塩水溶液とアルカリ水溶液の当量比を示す。塩化鉄水溶液過剰の場合はR<1、アルカリ水溶液過剰の場合はR>1となる。0.90≦R≦1.5であると、フェライト原料として好適な粒径のFe3 4 が得られる。
【0030】
当量比Rが0.90未満の場合は、水酸基の量が不足し、pHが低くなるので、生成する核の数が減り、さらに余剰のFe3+がグリーンリラストと称される中間生成物の生成に消費されるので、得られる粒径が大きくなり、好適粒径が得られ難い。当量比Rが1.5を超える場合は、未反応のアルカリが多く、また反応速度が遅いためコスト的に好ましくない。また粒成長しやすいため粒径が大きくなりすぎる場合がある。
【0031】
本発明のアルカリ原料としては、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムのような水酸化アルカリ、炭酸ナトリウムなどの炭酸アルカリ、アンモニア等が使用できる。
【0032】
塩化鉄水溶液中の一部の第一鉄イオンは下記式[2]の反応に従い、塩化第二鉄と反応し、Fe3 4 が生成する。残部の第一鉄イオンは中和されて水酸化第一鉄になる。得られた水溶液を50〜100℃に維持しながら酸素含有ガスを通気すると、生成したFe3 4 を核として粒成長する。酸素含有ガスは通常空気である。酸化温度が50℃より低いと、針状の含水酸化物が生成するため好ましくない。また100℃を超える場合は設備が大掛かりになり、工業化には適さない。
Fe2++Fe3++8OH- → Fe3 4 +4H2 O [2]
【0033】
第三の発明のα−Fe23 は、第一の発明のFe34 を加熱酸化して製造され、比表面積が10〜40m2/gで、塩素の含有量が100ppm 以上3000ppm以下である。好ましい比表面積は15〜30m2/g、好ましい塩素含有量は300〜1600ppm であり、より好ましくは500〜1200ppm である。
【0034】
第四の発明のα−Fe2 3 の製造方法は、前記第二の製造方法で製造したFe3 4 を加熱酸化することにより容易に実施できる。加熱温度は純度にもよるが、300℃以上が好ましい。加熱温度が300℃未満であるとγ−Fe2 3 が生成する。γ−Fe2 3 もフェライト原料になり得るが、磁気的に凝集しやすく、分散性の点から好ましくない。Fe3 4 の加熱温度が高すぎると酸化鉄の粒子同士が溶融して粒成長するため、目的とする粒径の小さなα−Fe2 3 が得られにくく、α−Fe2 3 中の塩素含有量が低下しやすい。好ましい加熱温度は450〜600℃である。
【0035】
本発明のα−Fe2 3 は湿式法で製造したFe3 4 を加熱酸化して得るため、塩素含有量が100〜3000ppm 、比表面積が10〜40m2/gであり、小粒径で粒度分布がシャープで、分散性に優れている。したがって、これを用いてフェライトを製造する場合、低温での仮焼が可能であり、結果的には、得られたフェライト粉末を900℃の低温で焼成しても高い焼結密度を得ることが可能である。
【0036】
このようにして得られたα−Fe2 3 は酸化ニッケル、酸化亜鉛、酸化第二銅、酸化マンガンなどと混合、仮焼してフェライト粉末とする。フェライト粉末は、例えば、バインダーを混合してペーストとした後、印刷法やドクターブレード法などで磁性材層を形成され、焼成後、積層チップインダクタや平面インダクタとすることができる。また、フェライト粉末とポリビニルアルコール(PVA)などの結合剤や微量の添加元素を添加して、造粒、成形した後、焼成してフェライトコアとすることもできる。
【0037】
【実施例】
(実施例1)
ステンレス製円筒容器(容量15l)に、濃度1.37mol/lの水酸化ナトリウム水溶液7lを投入し、窒素ガスを通気して窒素雰囲気とした。塩化第一鉄水溶液と塩化第二鉄水溶液をFe3+/(Fe2++Fe3+)=9%になるように混合し、塩化鉄の濃度が1.5mol/lの水溶液3lを調製した。該鉄塩水溶液を、該円筒容器の水酸化ナトリウム水溶液に攪拌しながら添加した。混合液10lの当量比Rは1.02であり、(合計鉄イオン濃度(mol/ l) )/Aの値は1.095であった。
【0038】
該溶液を窒素雰囲気のまま85℃まで昇温し、温度が安定した後、空気を3l/min通気して酸化を行い、Fe3 4 粒子を製造した。酸化完了後、イオン交換水を用いて、沈降脱塩を十分繰り返し、吸引ろ過して、大気中70℃で乾燥させ、解砕してFe3 4 粉末を得た。これを480℃で1時間加熱酸化して、α−Fe2 3 を得た。Fe3 4 粉末とα−Fe2 3 粉末の比表面積をBET法で測定した。塩素含有量、ナトリウム含有量はICPにより求めた。
【0039】
α−Fe2 3 と酸化ニッケル、酸化亜鉛、酸化第二銅をボールミルを用い、α−Fe2 3 :NiO:ZnO:CuO=49:11:30:10(モル比)で混合し、乾燥した。混合粉末を600℃以上の温度で2時間仮焼し、NiZnCu系フェライトを得た。得られたフェライト粉末のスピネル化率をXRD(X線回折)により求め、スピネル化率が90%以上となる最低温度725℃を仮焼可能温度とした。
【0040】
仮焼したフェライト粉末をさらにボールミルにより湿式粉砕し、比表面積が12±1m2/gになるまで粉砕した。得られた粉末を乾燥し、PVA溶液を混合して造粒した後、トロイダル形状にプレス成形した。成形体を850〜900℃で焼成して焼結体(フェライト)とした。焼結密度は焼結体の重量と寸法から算出した。初透磁率はLCRメータを用いて、900℃で焼成したコアについて測定した。製造条件と評価結果を表1に示した。
【0041】
(比較例1)
実施例1の塩化第一鉄から噴霧焙焼法により製造された高純度α−Fe2 3 を用いて、実施例1におけるフェライト粉末製造およびフェライト製造条件を、表1に示す条件に変更し、実施例1と同様にサンプルを製造した。製造条件と評価結果を表1に示した。
【0042】
(比較例2、3)
実施例1において、塩化第一鉄と塩化第二鉄を含有する塩化鉄水溶液の代わりに、工業用試薬の硫酸第一鉄および硫酸第二鉄から調製した硫酸鉄水溶液を用いる以外は、実施例1と同様にFe3 4 を製造し、α−Fe2 3 を製造し、さらにフェライト粉末およびフェライトを製造した。製造条件と評価結果を表1に示した。
【0043】
実施例1と比較例1〜3の対比から、本発明のα−Fe2 3 からのフェライト粉末は、噴霧焙焼法によるα−Fe2 3 からのフェライト粉末に比べ、仮焼温度を低くすることができ、また、900℃以下の低温で焼成しても、高い焼結密度と高い初透磁率を示すフェライトの製造が可能であることが分かる。
【0044】
(実施例2〜6、比較例4〜6)
実施例1におけるFe3 4 、α−Fe2 3 、フェライト粉末およびフェライト製造の各条件を、表2に示す各条件に変更し、実施例1と同様にサンプルを製造した。製造条件と評価結果を表2に示した。
【0045】
実施例2〜6と比較例4〜6の対比から、本発明のα−Fe2 3 からのフェライト粉末は900℃以下の低温で焼成しても、高い焼結密度と高い初透磁率を示すフェライトの製造が可能であることが分かる。なお、比較例5の場合は、鉄塩水溶液の濃度が塩化第一鉄の溶解度を超えてしまうため、水溶液を調製することが不可能であった。
【0046】
(実施例7〜11、比較例7〜8)
実施例1において、塩化第一鉄水溶液と塩化第二鉄水溶液の混合割合を変える以外は、実施例1と同様にFe3 4 を製造した。Fe3 4 の加熱温度を600℃に、加熱時間1時間を30分に変える以外は、実施例1と同様にα−Fe2 3 を製造し、実施例1と同様にフェライト粉末とフェライトを製造した。製造条件と評価結果を表3に示した。
【0047】
実施例7〜11と比較例7〜8の対比から、本発明のFe3+/(Fe2++Fe3+)=2〜30%を満足するFe3 4 からのフェライト粉末は、900℃以下の低温で焼成しても、高い焼結密度と高い初透磁率を示すフェライトの製造が可能であることが分かる。
【0048】
(実施例12〜17、比較例9〜10)
実施例1において、中和時の当量比Rを変える以外は、実施例1と同様にFe3 4 を製造した。Fe3 4 の加熱温度を550℃に変える以外は、実施例1と同様にα−Fe2 3 を製造し、実施例1と同様にフェライト粉末とフェライトを製造した。製造条件と評価結果を表4に示した。
【0049】
実施例12〜17と比較例9〜10の対比から、中和時の当量比Rが0.9〜1.5とした時の本発明のFe34 からのフェライト粉末は、900℃以下の低温で焼成しても、高い焼結密度と高い初透磁率を示すフェライトの製造が可能であることが分かる。Rが0.9未満の場合は、粒径が大きく、塩素含有量も少ないため、仮焼温度の低下効果が認められない。逆にRが1.5を超えると、Fe34 生成時の酸化反応が遅くなり、粒子が成長し、粒径が大きくなるので、好ましくない。
【0050】
【発明の効果】
本発明のα−Fe2 3 は、湿式法で製造したFe3 4 を加熱酸化して得られるため、小粒径で、粒度分布がシャープで、しかも分散性に優れている。このα−Fe2 3 よりフェライト粉末を製造する場合、仮焼温度を低くすることができ、該フェライト粉末を900℃以下の低温で焼成しても焼結密度が高く、初透磁率に優れた小型磁気素子用磁性材料として好適なフェライトを得ることができる。
【表1】
Figure 0004087555
【表2】
Figure 0004087555
【表3】
Figure 0004087555
【表4】
Figure 0004087555

Claims (4)

  1. 湿式法で製造してなるFe34 であって、比表面積が10.6〜40m2/g、塩素含有量が100ppm 以上3000ppm 以下であることを特徴とするFe34
  2. 塩化鉄水溶液とアルカリ水溶液を混合して中和し、得られる中和液を酸化してFe34 を製造する方法において、前記塩化鉄水溶液中の第二鉄イオン濃度(mol /l) を、第一鉄イオンと第二鉄イオンの合計鉄イオン濃度(mol /l) に対し2〜30%に調整し、かつ前記塩化鉄水溶液と前記アルカリ水溶液の濃度を、
    0.8 ≦ 合計鉄イオン濃度(mol /l) /A ≦ 12
    ただし、A=(Fe2+とFe3+の中和に必要な水酸基換算量(mol) )×R/(アルカリ水溶液の量(l) )
    (ここで、Rは前記塩化鉄水溶液と前記アルカリ水溶液の当量比を示し、0.90≦R≦1.5である)
    に調整して中和することを特徴とするFe34 の製造方法。
  3. 請求項1に記載のFe34 を酸化してなる比表面積が10〜40m2/g、塩素含有量が100ppm 以上3000ppm 以下であることを特徴とするα−Fe23
  4. 請求項2に記載の製造方法で製造したFe34 を加熱し、酸化することを特徴とするα−Fe23 の製造方法。
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