JP4087145B2 - アレルゲン低減化繊維 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、改めてアレルゲン低減化処理を施すことなく繊維に付着したアレルゲンを通常使用される湿度下において自動的に低減化することができ、更に簡便な操作によりアレルゲン低減化機能を回復させることができるアレルゲン低減化繊維に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、アトピー性皮膚炎、気管支喘息、アレルギー性鼻炎等の多くのアレルギー疾患が問題となってきている。その主な原因は、住居内性ダニ類、特に室内塵中に多いチリダニのアレルゲン(Der1、Der2)や、主に春季に猛威を振るうスギ花粉アレルゲン(Crij1、Crij2)等の多くのアレルゲンが生活空間内に増えてきているためである。
【0003】
特にチリダニのアレルゲンは、その原因となるチリダニを駆除してもその死虫が更にアレルゲン性の高い物質を生活空間に供給することから、チリダニアレルゲンが原因となるアレルギー疾患を根本的に解決することは困難であった。
また、スギ花粉アレルゲンであるCrij1は分子量約40kDaの糖タンパク質、Crij2は分子量約37kDaの糖タンパク質であり、鼻粘膜等に付着すると生体外異物として認識され炎症反応を引き起こすものである。
【0004】
これらのアレルゲンは布団、枕、毛布、マットレス、ベッドマット、シーツ等の寝具及びそのカバー;布製のソファー、椅子、ベッド等の布製家具及び家具類のカバー;空気清浄機、エアコン、掃除機等のフィルター;カーシート、カーマット、チャイルドシート等の車内用品;ぬいぐるみ等の玩具;絨毯、カーテン、衣服、タオル等の繊維製品の繊維間に蓄積しやすい。
とりわけ、アレルゲンが蓄積した寝具に長時間接触すると、寝ているときにアレルギー症状が出てきた場合に睡眠が妨げられ、更に著しく健康を損なうことから、アレルギー疾患を持つ患者にとっては最もアレルゲン低減化が望まれている。
【0005】
アレルギー疾患の症状を軽減又は新たな感作を防ぐためには、生活空間から完全にアレルゲンを取り除くか、又は、アレルゲンを変性させる等して不活性化させることが必要となる。
【0006】
このうち生活空間からアレルゲンを取り除く方法として、特開昭62−213707号公報には寝具カバーの布帛の目を一定の大きさに制御したものが開示されており、また、特公平7−32735号公報には布帛と中綿の固定方法を制御して、ダニ類が布団の中に通過しないような技術が開示されており、実際に製品化されている。しかしながら、これらの寝具類では、ダニ類は通過できないものの、アレルゲンとなるダニの死骸や糞等の大きさはダニ類自体の1/10以下の大きさであり、また、これらのアレルゲンは物理的な衝撃でバラバラになり更に細かくなることから、これらのアレルゲンの侵入を抑えることはできず充分なアレルゲンの軽減効果は得られなかった。ましてや、寝具内部ではなく室内外から降りかかる塵ゴミ中のアレルゲンに対してはなんらの効果を発揮するものではなかった。
【0007】
一方、種々のアレルゲンを不活性化させる方法が検討されているが、従来のアレルゲン低減化法は、例えばアレルゲン低減化成分をスプレーで噴霧する等、水溶液中のアレルゲンを低減化する方法がほとんどであった。しかしながら、これらの方法は、手間がかかるだけでなく均一な処理を施すのは難しく、更に処理をするまではアレルゲンに汚染された場所は常に人体に悪影響を及ぼす等の問題点があった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記現状に鑑み、改めてアレルゲン低減化処理を施すことなく繊維に付着したアレルゲンを通常使用される湿度下において自動的に低減化することができ、更に簡便な操作によりアレルゲン低減化機能を回復させることができるアレルゲン低減化繊維を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、絶対湿度50g/m3以下の雰囲気下において、アレルゲン低減化効果を発揮しうるアレルゲン低減化繊維において、吸湿性化合物を含有することを特徴とする。以下に本発明を詳述する。
【0010】
本発明のアレルゲン低減化繊維は、アレルゲン低減化効果を有する。
本明細書においてアレルゲン低減化効果とは、アレルゲン、特にヒョウヒダニアレルゲン(Derp 1、Der f 2等)、スギ花粉アレルゲン(Crij 1、Cri j 2)、犬又は猫由来アレルゲン(Can f 1、Fel d 1)等のアレルゲンが、アレルゲン低減化繊維と接触して変性や吸着を起こすことにより、それらのアレルゲンの特異抗体との反応性を抑制される効果をいう。
【0011】
かかるアレルゲン低減化効果を確認する手法としては、例えば、ELISAキット(例えば、LCDアレルギー研究所社製)を用いてELISA法によりアレルゲンの量を測定する方法等が挙げられる。
また、どの程度の効果をもって充分なアレルゲン低減化効果を有するとするかについては必ずしも明確ではないが、例えば、布団表面の衛生的ガイドライン(「室内汚染とアレルギー」吉川翠他著、井上書院、1999年)によれば、ヤケヒョウヒダニとコナヒョウヒダニの糞由来のアレルゲンの合計であるDer 1の場合で、布団表面には2000〜3000ng/m2付着していたDer 1が、1000ng/m2以下にまで軽減できることが好ましいとされている。
【0012】
本発明のアレルゲン低減化繊維は、絶対湿度50g/m3以下の雰囲気下において、アレルゲン低減化効果を発揮しうるものである。
絶対湿度50g/m3以下とは、人間の体温付近での飽和水蒸気量である50g/m3に起因するものであり、通常の室内条件下では絶対湿度は50g/m3より高くはなり得ない。したがって、本発明のアレルゲン低減化繊維は、スプレー等によって作為的に高湿度にすることなく、アレルゲン低減化効果を発揮しうるものであるといえる。
【0013】
このような性質を発現し得るアレルゲン低減化繊維としては、空気中の水分子を集めることによってアレルゲンとの相互作用を起こしうる反応場を形成しうる繊維とアレルゲン低減化成分とからなるものが好適である。
上記空気中の水分子を集めることによって、アレルゲンとの相互作用を起こしうる反応場とは、アレルゲンが抗原性を発揮する部分(エピトープ)の抗原性を抑制するために何らかの化学的相互作用を及ぼすための反応場のことであり、例えば、イオン化状態等の電気化学的遷移状態を安定化させ、化学反応の遷移状態の障壁エネルギーを下げることにより、自然な化学反応の進行が起こりうるような反応場のことをいう。
通常、化学反応を起こすために越えなければならない遷移状態のエネルギー障壁を下げるためには液体状態の水を必要とするが、本発明のアレルゲン低減化繊維では、空気中の水分を集めることによってこのような場を形成することができるので、水をかける等の操作を行う必要がない。
【0014】
上記空気中の水分子を集めることによってアレルゲンとの相互作用を起こしうる反応場を形成しうる繊維としては特に限定されないが、吸湿性化合物を含有する繊維が好適である。
【0015】
上記吸湿性化合物としては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリオキシメチレン等のポリエーテル;ポリビニルアルコール等のポリアルコール;ポリアクリル酸ナトリウム塩等のポリマー塩;ポリアクリル酸等のポリマー酸等が挙げられる。なかでも、吸湿性のみならず捉えた水分子を系中に放出しやすいことからポリエーテルが好適である。
【0016】
上記吸湿性化合物の好ましい配合の下限はアレルゲン低減化繊維の0.01重量%、上限は300重量%である。0.01重量%未満であると、アレルゲン低減化効果が得られない場合があり、300重量%を超えると、かえって低減化剤の効果を抑えてしまう可能性がある。より好ましい下限は0.1重量%、上限は30重量%、更に好ましい上限は10重量%である。
【0017】
上記空気中の水分子を集めることによってアレルゲンとの相互作用を起こしうる反応場を形成しうる繊維は、表面が中性又はアルカリ性であることが好ましい。具体的には、繊維表面のpHが6以上であることが好ましい。繊維表面のpHが6以上であると、アレルゲン低減化効果がより一層向上する。
なお、繊維表面のpHの測定方法としては、例えば、繊維表面に純水を滴下し、充分に表面が湿潤するまで約15分間静置した後、pH試験紙等を用いてpHを測定する方法等が挙げられる。
【0018】
また、上記空気中の水分子を集めることによってアレルゲンとの相互作用を起こしうる反応場を形成しうる繊維は、表面にアルカリ金属又はアルカリ土類金属の酸化物又は水酸化物を含有することが好ましい。これらはアレルゲン低減化効果を高める効果を有する。
上記アルカリ金属又はアルカリ土類金属の酸化物又は水酸化物とは、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、フランシウム、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、ラジウムの酸化物又は水酸化物をいう。
【0019】
上記アルカリ金属又はアルカリ土類金属の酸化物又は水酸化物の繊維に対する配合量の好ましい下限は0.001重量%、上限は30重量%である。0.001重量%未満であると、アレルゲン低減化効果を高める効果が得られない場合があり、30重量%を超えると、繊維を痛める可能性がある。より好ましい下限は0.01重量%、上限は3重量%、更に好ましい下限は0.1重量%、上限は1重量%である。
【0020】
上記アレルゲン低減化成分としては、アレルゲンを変性させる等して不活性化し、抗原抗体反応を抑制できる成分であれば特に限定されず、例えば、タンニン酸、カテキン等の植物抽出物、2,5−ジヒドロキシ安息香酸等のヒドロキシ安息香酸、芳香族ヒドロキシ化合物、アルカリ金属の炭酸塩、明礬、ラウリルベンゼンスルホン酸塩、ラウリル硫酸塩、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸塩、リン酸塩、硫酸亜鉛及び/又は酢酸鉛等が好適である。
なお、本発明のアレルゲン低減化繊維には、これらのアレルゲン低減化成分のうち少なくとも1つが有効成分として含まれていればよく、2つ以上を組み合わせることも可能である。
【0021】
上記芳香族ヒドロキシ化合物としては特に限定されないが、繊維等への着色の心配が少ないという点から、ビニル重合体、ポリエステル、ポリアミド等の線状高分子の側鎖に下記一般式(1)〜(6)に示される少なくとも1つを有する化合物が好ましい。
【0022】
【化1】
【0023】
式中、Rは水素又は水酸基を表し、かつ、少なくとも1つは水酸基である。水酸基がないと、アレルゲン低減化効果を充分に発揮できないことがある。ただし、水酸基が多すぎると着色性が強くなることがあることから、水酸基は1つであることが好ましい。また、水酸基の位置は、立体障害が最も少ない箇所に結合していることが好ましく、例えば一般式(1)ではパラ位にあることが好ましい。
また、nは0〜5である。5を超えると、線状高分子を使用する効果がなくなることがある。また、Rの少なくとも1つは水酸基であり、
【0024】
上記一般式(1)〜(6)で示される官能基と線状高分子との化学結合については特に限定されず、例えば、炭素−炭素結合、エステル結合、エーテル結合、アミド結合等が挙げられる。
【0025】
上記線状高分子の側鎖に上記一般式(1)〜(6)に示される少なくとも1つを有する化合物としては特に限定されないが、安全性や入手しやすさから、例えば、ポリ3,4,5−ヒドロキシ安息香酸ビニル、ポリビニルフェノール、ポリチロシン、ポリ(1−ビニル−5−ヒドロキシナフタレン)、ポリ(1−ビニル−6−ヒドロキシナフタレン)、ポリ(1−ビニル−5−ヒドロキシアントラセン)等が好適である。
【0026】
また、上記芳香族ヒドロキシ化合物としては、上記一般式(1)〜(6)に示される少なくとも1つを含む単量体及び/又は1価のフェノール基を1個以上有する単量体を重合又は共重合してなるものも好適である。
【0027】
上記1価のフェノール基を1個以上有する単量体としては、ベンゼン環に1個の水酸基を有する単量体が1個以上結合している化合物であれば特に限定されず、例えば、ビニルフェノール、チロシン、下記一般式(7)に示される1,2−ジ(4−ヒドロキシフェニル)エテン等が挙げられる。有効成分が、1価のフェノール基を有すると多価フェノールに比べて変色しにくいといった効果がある。
【0028】
【化2】
【0029】
上記1価のフェノール基を1個以上有する単量体と共重合される他の単量体としては、エチレン、アクリレート、メタクリレート、メチルメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、スチレン等が挙げられる。
【0030】
また、上記芳香族ヒドロキシ化合物としては、芳香族複素環式ヒドロキシ化合物も好適である。
上記芳香族複素環式ヒドロキシ化合物としては特に限定されず、例えば、2−ヒドロキシフラン、2−ヒドロキシチオフェン、ヒドロキシベンゾフラン、3−ヒドロキシピリジン等が挙げられる。また、線状高分子の側鎖に芳香族複素環式ヒドロキシ基を含有する化合物又は芳香族複素環式ヒドロキシ基を有する単量体を重合又は共重合してなる化合物等であってもよい。
【0031】
上記芳香族複素環式ヒドロキシ基としては、例えば、下記一般式(8)、(9)に示されるチオフェンやフラン等の複素環骨格にヒドロキシ基が結合したもの;下記一般式(10)に示される複素環と芳香族環とを持つ骨格にヒドロキシ基が結合したもの;複素環骨格にヒドロキシ基と炭素数5以下のアルキル基とを有するもの;複素環と芳香族とを持つ骨格にヒドロキシ基と炭素数5以下のアルキル基とを有するもの等が挙げられる。
【0032】
【化3】
【0033】
上記アルカリ金属の炭酸塩としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、フランシウム等のアルカリ金属の炭酸塩が挙げられる。なかでも、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムが好ましい。
【0034】
上記明礬は、一部がカリミョウバンとして食品添加物や化粧品原料にも指定されていることから安全性が高く、繊維等にも好適に用いられうる。
上記明礬としては、例えば、硫酸アルミニウムとアルカリ金属やタリウム、アンモニウム等の1価イオンの硫酸塩とからなる複塩が挙げられる。また、アルミニウムをクロム、鉄、等に置き換えた複塩も同様に挙げられる。なかでも、硫酸アルミニウムカリウム、硫酸アルミニウムナトリウムが好適である。特にアレルゲン低減化能力の高い硫酸アルミニウムカリウムは、十二水和物(AlK(SO4)2・12H2O)又は無水物(AlK(SO4)2)であるが、水和物が水分子を段階的に失う過程で存在する部分的な水和物であってもよい。
【0035】
上記ラウリルベンゼンスルホン酸塩、ラウリル硫酸塩、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸塩としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム等の金属塩、アンモニウム塩、トリエタノールアミン等のアミン塩が挙げられる。なかでもナトリウム塩、トリエタノールアミン塩が好ましい。
【0036】
上記リン酸塩とは水系溶媒に溶解したときPO4 -3イオンを生成する塩類を指し、例えば、リン酸二水素ナトリウム(リン酸一ナトリウム)、リン酸水素二ナトリウム(リン酸二ナトリウム)、リン酸二水素カリウム等が挙げられる。
【0037】
上記硫酸亜鉛は、古来より白ばん又は亜鉛華等として知られており日本薬局方にも収載されている。また、食品添加物であり、人の成長、健康維持に必須の微量金属元素であるZnの供給を目的として母乳代替食品に添加されていることから、安全性が高く、繊維等にも好適に用いられる。
上記硫酸亜鉛としては、主に水和物(七水和物)又は無水物が用いられるが、水和物が水分子を段階的に失う過程で存在する部分的な水和物であってもよい。
【0038】
上記酢酸鉛は、古来より鉛糖として知られており日本薬局方にも収載されているものである。
上記酢酸鉛としては、水和物(三水和物)又は無水物が用いられるが、水和物が水分子を段階的に失う過程で存在する部分的な水和物であってもよい。
【0039】
上記アレルゲン低減化成分の本発明のアレルゲン低減化繊維に対する配合量の下限は0.1重量%、上限は300重量%である。0.1重量%未満であると、アレルゲン低減化効果が得られない場合があり、300重量%を超えると、表面層が固く脆くなって、物性上の低下を招いたり繊維からの脱落等が容易となったりして、予想される効果が期待できなかったり、脱落物による周辺の汚損が見られ清掃の必要性が出てくる場合がある。より好ましい下限は0.2重量%、上限は100重量%、更に好ましい下限は0.5重量%、上限は50重量%である。
【0040】
本発明のアレルゲン低減化繊維には、アレルゲン低減化効果の有効性を阻害しない範囲において、湿潤剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等の製剤用補助剤が配合されていてもよく、また、殺ダニ剤、殺菌剤、防黴剤、消臭剤等が含有されていてもよい。
【0041】
本発明のアレルゲン低減化繊維の製造方法としては特に限定されず、上記アレルゲン低減化成分や吸湿性化合物、吸湿性繊維等を繊維へ化学的に結合させたり、後固着させたりする方法が挙げられる。なお、この記載は繊維自体が吸湿性繊維である場合を妨げるものではない。
具体的には、例えば、アレルゲン低減化成分や吸湿性化合物をグラフト化反応により繊維に化学的に結合させる方法、溶剤及び/又はバインダーを用いて繊維表面に固着させる方法等が挙げられる。
なお、上記グラフト化反応を採用する場合には、アレルゲン低減化成分としては上記アレルゲン低減化成分に反応性又は重合性を付加した単量体を用いることができ、なかでも芳香族ヒドロキシ化合物が好適である。
【0042】
上記グラフト化反応としては特に限定されず、例えば、繊維となる幹ポリマーに重合開始点をつくり、アレルゲン低減化成分等である枝ポリマーを形成するモノマーを重合させるグラフト重合法;先に準備したアレルゲン低減化成分等である枝ポリマーを高分子反応によって幹ポリマーに結合させるカップリング法(高分子反応法)が挙げられる。
【0043】
上記グラフト重合法としては特に限定されず、例えば、以下の方法が挙げられる。
(1)繊維への連鎖移動反応を利用し、ラジカルを生成し重合する方法。
(2)第2セリウム塩や硫酸銀塩等をアルコール、チオール、アミンのような還元性物質を作用させて酸化還元系(レドックス系)を形成し、繊維にフリーラジカルを生成して重合を行う方法。
(3)γ線や加速電子線を用い、繊維とモノマーを共存させて照射を行う方法、又は繊維だけに照射し、後にモノマーを加えて重合を行う方法。
(4)幹ポリマーを酸化しペルオキシ基を導入、或いは側鎖のアミノ基からジアゾ導入しこれを重合開始点として重合する方法。
(5)水酸基、アミノ基、カルボキシル基等の側鎖の活性基によるエポキシ、ラクタム、極性ビニルモノマー等の重合開始反応を利用する方法。
【0044】
上記グラフト重合法としては、具体的には例えば、以下の方法が挙げられる。a)ビニルモノマー中でセルロースを磨砕することによってフリーラジカルを生成させグラフト重合を行う方法。b)ビニルモノマーと、繊維として連鎖移動を受けやすい基を持つセルロース誘導体(例えば、メルカプトエチルセルロース等)を用いてグラフト重合を行う方法。c)オゾンや過酸化物を酸化し、ラジカルを生成させる方法でグラフト重合を行う方法。d)アリルエーテル、ビニルエーテル又はメタクリル酸エステル等の二重結合を、セルロースの側鎖に導入してグラフト重合を行う方法。e)アンスラキノン−2,7−ジスルホン酸ナトリウム等を光増感剤として用い紫外線を照射してグラフト重合を行う方法。f)カソードの周りに繊維機材を巻き、希硫酸中にモノマーを加え外部電圧を加えることにより電気化学的にグラフト重合を行う方法。g)メタクリル酸グリシジル(GMA)と過酸化ベンゾイルを塗った繊維をモノマー溶液中で加熱することによりグラフト重合する方法。h)過酸化ベンゾイル、ノニオン−アニオン型界面活性剤及びモノクロルベンゼンを水へ分散させた液にモノマーを加え、繊維として例えばポリエステル系繊維を浸漬して、加熱してグラフト重合を行う方法。
なかでも、繊維へのグラフト重合であることを勘案すれば、g法又はh法が好適である。
【0045】
上記カップリング法としては特に限定されず、例えば、(1)C−Hに対する連鎖移動反応、酸化反応、置換反応、(2)二重結合に対する付加反応、酸化反応、(3)水酸基のエステル化、エーテル化、アセタール化、エステル基やアミド基に対する置換反応、付加反応、加水分解反応、ハロゲン基に対する置換反応、脱離反応、(4)芳香環に対する置換反応(ハロゲン化、ニトロ化、スルホン化、クロルメチル化)等が挙げられる。
【0046】
上記溶剤及び/又はバインダーを用いてアレルゲン低減化成分や吸湿性化合物を繊維の表面に固着させる方法としては、上記アレルゲン低減化成分等を溶剤及び/又はバインダーに溶解又は分散させ、その後繊維に化学的に結合及び/又は後固着させる方法が挙げられる。また、化学的に結合及び/又は後固着させる方法としては、特に限定されず、塗工しても、低減化成分含有溶液を繊維にスプレーにより塗布しても構わない。
【0047】
上記溶剤としては、アレルゲン低減化成分や吸湿性化合物を溶解又は分散できるもの又はバインダーを溶解できるものであれば特に限定されず、例えば、水;メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール等のアルコール類;トルエン、キシレン、メチルナフタレン、ケロセン、シクロヘキサン等の炭化水素類;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド類等が挙げられる。
【0048】
上記バインダーとしては、アレルゲン低減化剤や吸湿性化合物を繊維表面に固着できるものであれば特に限定されず、例えば、合成樹脂からなるバインダーとしては、1液型ウレタン樹脂、2液型ウレタン樹脂、アクリル樹脂、ウレタンアクリレート樹脂、ポリエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル樹脂、エポキシ樹脂、エポキシアクリレート樹脂等が挙げられる。これらのバインダーは、液体状態の場合にはそのままの状態で使用しても、また上記溶剤を添加してもよい。固体状態の場合には上記溶剤に溶解又は分散した状態で使用してもよい。
これらの溶剤及びバインダーは、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0049】
本発明のアレルゲン低減化繊維は、アレルゲン低減化成分や吸湿性化合物を有する重合性単量体が共重合されてなる繊維原料を紡糸することにより製造することも可能である。ここで上記繊維原料とは、アレルゲン低減化成分や吸湿性化合物を有する重合性単量体と一般の繊維原料となる重合性単量体とが共重合されたものである。
前記アレルゲン低減化成分や吸湿性化合物を有する重合性単量体としては、上記アレルゲン低減化成分又は吸湿性化合物に重合性を付与した単量体であれば特に限定されない。
【0050】
また、本発明のアレルゲン低減化繊維は、アレルゲン低減化成分と繊維原料とを紡糸して得ることも可能である。ここで言う繊維原料とは、アレルゲン低減化成分や吸湿性化合物を有する重合性単量体と一般の繊維原料となる重合性単量体とが共重合された繊維原料及び/又は一般の繊維原料が用いられる。
上記一般の繊維原料としては、通常繊維として加工・使用されているものであれば特に限定されず、例えば、ナイロン等のポリアミド系繊維;アクリル系繊維、ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、ポリアクリロニトリル、ポリエステル;ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系繊維;ポリウレタン等の合成繊維原料、アセテート等の半合成繊維原料、キュプラ、レーヨン等の再生繊維原料、天然繊維等が挙げられる。
【0051】
更に、上記アレルゲン低減化成分を含有する繊維原料と一般の繊維原料を混紡又は交撚し、紡糸することによっても本発明のアレルゲン低減化繊維を製造することができる。
【0052】
上記アレルゲン低減化成分や吸湿性化合物と繊維原料となる重合性単量体とを共重合する方法としては特に限定されず、例えば、ビニル重合、環化重合、開環重合等の付加反応、転移重合、異性化重合等の水素移動重合、酸化重合、脱窒素重合、脱炭酸重合、重縮合、付加縮合等の縮合反応等が挙げられる。
かかる共重合反応に用いられるアレルゲン低減化成分又は吸湿性化合物としては、上記アレルゲン低減化成分又は吸湿性化合物に重合性を付与した単量体であれば特に限定されないが、なかでも芳香族ヒドロキシ化合物が好適である。
【0053】
上記アレルゲン低減化成分と繊維原料(一般の繊維原料、低減化成分含有繊維原料)とを紡糸する方法としては、特に限定されず、以下の方法が挙げられる。
(1)溶融紡糸法:例えば、溶融する繊維原料においては、繊維原料の加熱溶融後、分解点がその繊維原料の加熱溶融点以上のアレルゲン低減化成分等を練り込み、溶融混合液とし、これを所望の細孔をもつ紡糸口金を通じて、不活性冷却媒体(例えば空気、窒素、水等)中に押し出し、冷却固化させて繊維とする方法。
(2)湿式紡糸法:例えば、繊維原料を溶剤に溶解して溶液とし、アレルゲン低減化成分等を分散混合あるいは溶解し(紡糸原液)、これを紡糸口金を通じ高分子を再生凝固させる液体中に押し出して、紡糸原液中に溶けている高分子を繊維状に固化させる方法。
(3)乾式紡糸法:例えば、繊維原料を揮発性の溶剤に溶解して、アレルゲン低減化成分等を分散混合あるいは溶解して紡糸原液とし、これを口金を通じて加熱気体中に押し出し紡糸原液中の溶剤を蒸発させて、繊維状に固化させる方法。
これらの3つの方法は、工業的に広く使われており、目的とするアレルゲン低減化繊維により使い分けることができる。
【0054】
更に、上記以外のアレルゲン低減化成分と繊維原料とを紡糸する方法としては、
(4)エマルジョン紡糸法:繊維原料のエマルジョン(サスペンジョン、スラリ)を作り、アレルゲン低減化成分等を分散混合あるいは溶解して紡糸原液とし、これを湿式紡糸法あるいは乾式紡糸法に準じて紡糸する方法。
(5)コンジュゲート紡糸法:別々に溶融した2成分以上の繊維原料溶融体中にアレルゲン低減化成分等を分散混合あるいは溶解し、又は、アレルゲン低減化成分等自体を溶融体とし、それら溶融体を紡糸口金の直前で複合して同時に紡出する方法。
(6)紡糸口金を用いずに高分子物質を繊維状にする方法:例えば、アレルゲン低減化成分等を含んだ薄膜を延伸した後、縦に細く切り、更に延伸、熱固定する方法、棒状のアレルゲン低減化成分等を含んだ高分子物質を高度に延伸する方法。
(7)界面重合による方法。
等が挙げられる。
【0055】
本発明のアレルゲン低減化繊維は、いったんそのアレルゲン低減効果が減少しても、種々の方法によりアレルゲン低減化機能を回復させることができる。
上記アレルゲン低減化機能の回復とは、度重なるアレルゲンとの接触によりその低減化機能を失った場合、再びアレルゲン低減化機能を発揮できるようにすることをいう。
アレルゲンの不活性化は、使用する低減化成分の種類により、アレルゲンと低減化成分との反応により低減化成分が消費される場合と、低減化成分が触媒的に作用しアレルゲンを不活性化する場合があると考えられる。このため、低減化成分の機能を回復する方法としては、例えば、繊維内部に存在する低減化成分を表面にブリードアウトさせて新たなアレルゲン低減化成分を繊維表面に表出させる方法、又は、低減化繊維の表面に堆積した不活性化アレルゲンを除去する方法が考えられる。
【0056】
本発明のアレルゲン低減化繊維のアレルゲン低減化機能を回復させる方法しては、具体的には例えば、本発明のアレルゲン低減化繊維を液体で洗浄する方法、加熱する方法、掃除機で吸引する方法等が挙げられる。
上記洗浄に用いることのできる液体としては繊維自体に損傷を与えるものでなければ特に限定されず、例えば水;メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール等のアルコール類;トルエン、キシレン、メチルナフタレン、ケロセン、シクロヘキサン等の炭化水素類;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド類等が挙げられる。なかでも、簡便に家庭でも手軽に処理できるという点から、水又はアルコール類が好適である。また、洗浄効果を高めるために、一般に使用される界面活性剤を併用してもよい。
【0057】
上記本発明のアレルゲン低減化繊維を加熱する場合において、加熱する温度としては繊維自体に損傷を与えるものでなければ特に限定されず、また、上記加熱方法としては特に限定されず、例えば、直接加熱する方法、上記液体を加熱しながら洗浄する方法、太陽光で加熱する方法等が挙げられる。
【0058】
本発明のアレルゲン低減化繊維が対象とするアレルゲンとしては、動物性アレルゲン、花粉等の植物性アレルゲンが挙げられる。本発明のアレルゲン低減化成分は、これらのアレルゲンの特異抗体との反応を抑えることにより、本剤を使用した場所のアレルゲンを低減化する。特に効果のある動物性アレルゲンとしては、ダニ類のアレルゲン(ダニ類、節足動物−蛛形綱−ダニ目の生物で、主に7つの亜目に分かれている。アシナガダニに代表される背気門、カタダニに代表される四気門、ヤマトマダニ、ツバメヒメダニに代表される後気門、イエダニ、スズメサシダニ代表される中気門、クワガタツメダニ、ナミホコリダニに代表される前気門、ケナガコナダニ、コナヒョウヒダニに代表される無気門、イエササラダニ、カザリヒワダニに代表される隠気門等)のいずれの種類でも対象となり得るが、室内塵中、特に寝具類に多く、アレルギー疾患の原因となるチリダニ科、ヒョウヒダニ類に特に効果がある。
【0059】
本発明のアレルゲン低減化繊維は、布団、枕、毛布、マットレス、ベッドマット、シーツ等の寝具及びそのカバー;布製のソファー、椅子、ベッド等の布製家具及び家具類のカバー;空気清浄機、エアコン、掃除機等のフィルター;カーシート、カーマット、チャイルドシート等の車内用品;ぬいぐるみ等の玩具;絨毯、カーテン、衣服、タオル等の繊維製品に好適に用いることができる。
【0060】
【実施例】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0061】
(実施例1)
過酸化ベンゾイル(シグマアルドリッチ社製:純度75%1級規格)1重量部、アレルゲン低減化成分としてアニオン性界面活性剤「エマール2Fニードル」(花王社製:有効成分又は固形分90%)1重量部、クロロベンゼン(シグマアルドリッチ社製:純度99.5%特級規格)10重量部、精製水1000重量部からなる水性乳化分散液に、更にアレルゲン低減化成分として4−ビニルフェノール(ランカスター社製:純度10%プロピレングリコール溶液)100重量部、吸湿性成分としてポリエチレングリコール(和光純薬社製:Mw7500)20重量部を添加し繊維処理液を調製した。
【0062】
処理液中にポリエチレンテレフタレート(PET)製の布20重量部を浸漬し、100℃で60分間加熱しグラフト重合を行った。その後、100℃精製水中にて処理済のPET製布を30分間抽出を行い、更に表面を中性にするために0.5%水酸化ナトリウム水溶液で、50℃で30分中和処理後、水洗し乾燥してアレルゲン低減化繊維からなる布帛を得た。
なお、得られた布帛の表面に純水を滴下し、充分に表面が湿潤するまで15分間静置した後、pH試験紙等を用いてpHを測定する方法により表面のpHを測定したところ、pHは7.0であった。
【0063】
(実施例2)
アレルゲン低減化成分としてポリチロシン(INCバイオケミカルズ社製:重量平均分子量Mw=18000〜36000)2重量部、吸湿性成分としてポリエチレングリコール(和光純薬社製:Mw7500)2重量部、バインダーとしてアクリル酸エチルとメタクリル酸メチル共重合体「オイドラギットNE30D」(Rohm Pharma社製:固形分30%)2重量部、ノニオン系界面活性剤「エマルゲン911」(花王社製)0.3重量部、溶媒として精製水100重量部、及び、繊維表面をアルカリ性にするために水酸化バリウム(和光純薬製)0.1重量部を混合攪拌し繊維処理液を調製した。処理液をポリエステル不織布(目付100g/m2)に20μl/cm2となるように均一にスプレーし、室温で8時間放置して乾燥させ、アレルゲン低減化繊維製の布帛を得た。
なお、得られた布帛の表面に純水を滴下し、充分に表面が湿潤するまで15分間静置した後、pH試験紙等を用いてpHを測定する方法により表面のpHを測定したところ、pHは8.3であった。
【0064】
(実施例3)
ポリエチレンテレフタレート(極限粘度〔η〕=0.65)100重量部と、アレルゲン低減化成分としてポリパラビニルフェノール「マルカリンカーM」(丸善石油化学社製、重量平均分子量Mw=5,500)20重量部と、吸湿性成分としてポリプロピレングリコール(ジオール型、和光純薬社製:平均分子量3000)10重量部、水酸化マグネシウム(和光純薬社製)10重量部を加圧ニーダーを用い260℃で20分の条件で混練した。混練後、スクリュー型1軸押出器で押出し、ペレット状に成型した。
得られたペレットを溶融紡糸法にて紡糸し(紡糸でのパックのフィルターは270メッシュ)、延伸し、水洗し、乾燥してアレルゲン低減化繊維を得た。更にこの繊維を平織りにし、アレルゲン低減化繊維製の布帛を得た。
なお、得られた布帛の表面に純水を滴下し、充分に表面が湿潤するまで15分間静置した後、pH試験紙等を用いてpHを測定する方法により表面のpHを測定したところ、pHは11.0であった。
【0065】
(実施例4)
過酸化ベンゾイル(シグマアルドリッチ社製:純度75%1級規格)1重量部、アレルゲン低減化成分としてアニオン性界面活性剤「エマール2Fニードル」(花王社製:有効成分又は固形分90%)1重量部、クロロベンゼン(シグマアルドリッチ社製試薬:純度99.5%特級規格)10重量部、精製水1000重量部からなる水性乳化分散液に、更にアレルゲン低減化成分として4−ビニルフェノール(ランカスター社製:純度10%プロピレングリコール溶液)100重量部、吸湿性成分としてポリエチレングリコール(和光純薬社製:Mw7500)20重量部を添加し繊維処理液を調製した。
【0066】
得られた処理液中にPET製の布20重量部を浸漬し、100℃で60分間加熱しグラフト重合を行った。その後、100℃精製水中にて処理済PET製布を30分間抽出を行い、更に表面を酸性にするために0.1N塩酸で、50℃で30分処理後、水洗し乾燥してアレルゲン低減化繊維製の布帛を得た。
なお、得られた布帛の表面に純水を滴下し、充分に表面が湿潤するまで15分間静置した後、pH試験紙等を用いてpHを測定する方法により表面のpHを測定したところ、pHは3.0であった。
【0067】
(実施例5)
アレルゲン低減化成分としてポリチロシン(INCバイオケミカルズ社製:重量平均分子量Mw=18000〜36000)2重量部、吸湿性成分としてポリエチレングリコール(和光純薬社製:Mw7500)2重量部、バインダーとしてアクリル酸エチルとメタクリル酸メチル共重合体「オイドラギットNE30D」(Rohm Pharma社製:固形分30%)2重量部、ノニオン系界面活性剤「エマルゲン911」(花王社製)0.3重量部、溶媒として精製水100重量部、及び、繊維表面を酸性にするために0.01N硫酸(和光純薬社製)を0.1重量部混合攪拌し繊維処理液を調製した。
得られた処理液をポリエステル不織布(目付100g/m2)に20μl/cm2となるように均一にスプレーし、室温で8時間放置して乾燥させ、アレルゲン低減化繊維製の布帛を得た。
なお、得られた布帛の表面に純水を滴下し、充分に表面が湿潤するまで15分間静置した後、pH試験紙等を用いてpHを測定する方法により表面のpHを測定したところ、pHは3.3であった。
【0068】
(実施例6)
ポリエチレンテレフタレート(極限粘度〔η〕=0.65)100重量部、アレルゲン低減化成分としてポリパラビニルフェノール「マルカリンカーM」(丸善石油化学社製、重量平均分子量Mw=5500)20重量部、吸湿性成分としてポリプロピレングリコール(ジオール型、和光純薬社製:平均分子量3000)10重量部、塩化鉄(III)(和光純薬社製)1重量部を加圧ニーダーを用い260℃で20分の条件で混練した。混練後、スクリュー型1軸押出器で押出し、ペレット状に成型した。
得られたペレットを溶融紡糸法にて紡糸し(紡糸でのパックのフィルターは270メッシュ)、延伸し、水洗し、乾燥してアレルゲン低減化繊維を得た。更にこの繊維を平織りにし、アレルゲン低減化繊維製の布帛を得た。
なお、得られた布帛の表面に純水を滴下し、充分に表面が湿潤するまで15分間静置した後、pH試験紙等を用いてpHを測定する方法により表面のpHを測定したところ、pHは2.7であった。
【0069】
(比較例1)
実施例1で用いたPET製布を、アレルゲン低減化処理を行わずに用いて布帛を得た。
【0070】
(比較例2)
実施例2で用いたポリエステル不織布(目付100g/m2)を、アレルゲン低減化処理を行わずに用いて布帛を得た。
なお、得られた布帛の表面に純水を滴下し、充分に表面が湿潤するまで15分間静置した後、pH試験紙等を用いてpHを測定する方法により表面のpHを測定したところ、pHは7.5であった。
【0071】
(比較例3)
ポリエチレンテレフタレート(極限粘度〔η〕=0.65)をスクリュー型1軸押出器で押出し、ペレット状に成型した。得られたペレットを実施例3と同様の方法で紡糸し(紡糸でのパックのフィルターは270メッシュ)、延伸し、水洗し、乾燥して繊維を得た。更にこの繊維を平織りにし、布帛を得た。
なお、得られた布帛の表面に純水を滴下し、充分に表面が湿潤するまで15分間静置した後、pH試験紙等を用いてpHを測定する方法により表面のpHを測定したところ、pHは6.7であった。
【0072】
(アレルゲン低減効果の評価)
実施例1〜6及び比較例1〜3で作製した布帛を用いて10cm×10cmの評価布片を10枚づつ作製した。
この評価布片に、エチルアルコール90重量部と精製水10重量部からなる液に塵ゴミ(Der p 1アレルゲン10μg/g含有)1重量部を分散させた調製アレルゲン液を5ml振り撒き、50℃のオーブンで5分間乾燥させて、評価用のサンプルを作製した。
このサンプルについて、サンプル作製直後と25℃、75%RH(絶対湿度17.4g/m3)の恒温恒湿槽内に12時間放置後のアレルゲン量を以下の方法により測定した。
【0073】
まず、アレルゲンを含有させた評価布片を15mL容のガラス試験管に丸めて入れ、10mLの抽出液(リン酸バッファー(pH=7.35)に1wt%のBSAと0.05wt%のTween20を加えたもの)を入れ、20分間よく振とうした後、すぐに抽出液をサンプリングした。
得られた抽出液中のアレルゲンの量を、ELISAキット(LCDアレルギー研究所社製)を用いて測定し、1m2あたりのDer p 1量に換算した。
結果を表1に示した。
【0074】
【表1】
【0075】
表1より、実施例1〜6で作製したアレルゲン低減化繊維製の布帛では、サンプル作製直後は高いレベルにあったアレルゲンが12時間恒温恒湿槽に放置して後には、大きくアレルゲン量が減少した。とりわけ、表面が中性又はアルカリ性になるように調整した実施例1〜3で作製したアレルゲン低減化繊維製の布帛では極めて高いアレルゲン低減化効果が認められた。これより、表面が酸性のものよりも中性・アルカリ性のものの方がより効果が高いことがわかった。
一方、アレルゲン低減化処理をしなかった比較例1〜3で作製した布帛では、ほとんどアレルゲン低減化効果が認められなかった。
【0076】
【発明の効果】
本発明のアレルゲン低減化繊維は、寝具や絨毯、ソファー、カーテン等に用いることにより、日常生活の湿度下で生活空間中のアレルゲンを減少させることができ、その繊維自体にアレルゲン低減化処理が施されているため、薬剤が体内に入る危険も無く、アレルギー疾患を抱える患者であってもアレルギー症状を起こすことなく快適に生活できる。また、アレルゲンにより汚染された繊維に低減化成分を後処理する等の手間をかけることもない。
Claims (4)
- 絶対湿度50g/m3以下の雰囲気下において、アレルゲン低減化効果を発揮しうるアレルゲン低減化繊維において、吸湿性化合物を含有することを特徴とするアレルゲン低減化繊維。
- 吸湿性化合物は、ポリエーテルであることを特徴とする請求項1記載のアレルゲン低減化繊維。
- 表面が中性又はアルカリ性であることを特徴とする請求項1又は請求項2記載のアレルゲン低減化繊維。
- 表面にアルカリ金属又はアルカリ土類金属の酸化物又は水酸化物を含有することを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか1項記載のアレルゲン低減化繊維。
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