JP4087090B2 - 機能性素子の実装基板 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、セラミックス基板の表面に金属皮膜または金属化合物皮膜をコーティングし機能性素子を実装する機能性素子の実装基板に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、抵抗体、非直線抵抗体、半導体コンデンサ、IC基板、LSI、着火素子、圧電フィルタ、表面波デバイス、圧電トランス、圧電振動子、サーミスタ、ガス吸着形半導体、パワエレモジュール、ガスセンサー、熱電変換モジュールなどのデバイスに各種機能性素子が用いられている。これらの機能性素子は薄い平板上に導電層となる電極が設けられてモジュール化し、システムに組み込まれる。この時、機能性素子の電極はメタライジング、ペースト焼付け、はんだ接合等いろいろなコーティング手法により形成されている。これらの形成方法はシステム側の要求特性、コーティングプロセス整合性、コスト等の兼ね合いで決定されている。
【0003】
以下に上記のモジュールの中でセラミックス基板に素子が搭載されているLSIについて説明する。高速LSI素子を高密度に搭載し、素子の性能を引き出す半導体実装基板において、近年その表面に形成する回路配線の微細化が進んでいる。実装基板上の回路配線はライン&スペースで各10μm以下のものが求められてきている。この要求を満足するためには薄膜メタライズを用いた微細配線や電極を形成することが必要となっている。LSI素子の高集積化に伴い高熱を発する素子の放熱対策も必要であり、セラミックスは熱に対して安定であるため高発熱素子を実装する基板として適しており、特に高い絶縁性をもちながら金属並みの熱伝導性を有するセラミックスが機能性素子の高密度実装基板として有望視されている。
【0004】
また、LSI素子の高密度搭載を実現するためには、素子同士の配線長さを短縮し、素子を裸のままで基板にはんだ接合する手法が効果的で、この接合方法を採用した場合基板には素子材料であるシリコンに近い熱膨張が要求されるため薄膜メタライズを施したセラミックス基板が最適である。
【0005】
セラミックス基板の薄膜メタライズはスパッター、真空蒸着、CVDを代表とする気相法によるものと、電解めっき、無電解めっき等のウエットコーティングプロセスによるものが挙げられる。実装基板上のメタライズは次の例のように形成されている。まず、セラミックスとの接合性のよい下地密着層をスパッターで形成し、その上にめっきを施すためのシード層をスパッターで製膜する。次に、このシード層に端子を接続しめっき皮膜を成長させる。そして、保護層(金)を電解または無電解めっきで形成する。実装基板ではその上部に絶縁薄膜層として形成する樹脂の熱処理及び表面部品のアセンブリを400℃程度で加熱する。
【0006】
メタライズは多層構造になっているため層間の相互拡散、反応等を十分に留意する必要がある。例えば、チタンは下地密着層として一般に利用されている材料であるが、銅に1at%固溶すると抵抗値が約15倍上昇するため配線層に使用する銅へのチタンの混入は避けなければならない。さらに、層間反応と共に多層構造で考慮すべき問題は各皮膜に作用する応力で、皮膜に発生する応力は基板の反り、膜剥離等に密接に影響を及ぼす。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
機能性素子には導電層となる電極が設けられてモジュール化し、システムに組み込まれている。一般に、異種材料の接合性は不十分なためモジュールの仕様や要求特性に合わせていろいろな接合方法が選定されている。しかしながら、膜質、皮膜の密着性、成膜速度、コーティングプロセスの簡便性、環境低負荷などの要求特性を全て満足するコーティングプロセスは確立されていない。そのため、高品位な皮膜が得られる新コーティングプロセスの開発が望まれている。
【0008】
LSIのセラミックス基板におけるメタライズの場合、回路設計によって差異はあるがセラミックス基板に接する最下部の金属皮膜は、基板との接触面積が大きく、高い密着強度が必要である。また、上部に形成される樹脂の絶縁多層膜の製膜ストレス、熱膨張等の影響を直接受けるため高い密着強度が要求される。
【0009】
本発明は、上記の点を考慮しなされたもので、緻密で、密着力に優れたコーティング皮膜が得られると共に、当然のことながら極めて簡便かつ低コスト、環境に優しいコーティングプロセスであるショットコーティングを適用した機能性素子の実装基板を提供することを目的とする。
【0016】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明は、シリカ、チタニア、アルミナ、窒化ケイ素、ジルコニア、窒化アルミからなる群より選ばれた少なくとも1種類を含むセラミックス基板材料の表面に、シリコン、チタン、アルミニウム、銅、銀からなる群より選ばれた少なくとも1種類を含む10乃至150μmの粒径からなる金属粉末を大気中において常温常圧で100乃至300m/secの速度で高速噴射して金属皮膜を形成し機能性素子を実装する基板であって、前記金属皮膜は気孔率が1乃至4%、平均表面粗さが2μmRa、皮膜厚さが40乃至75μmである構成である。
【0019】
請求項1の発明では、セラミックス基板材料と金属粉末材料との組合せを選定することにより、高品位な膜質で、密着力の高いコーティング皮膜が得られる。そして、高速噴射初期には素材表面にエロージョンが生じるが、エロージョンにより基材の新生面が得られたところに金属粉末が塑性変形及び一部が溶融することによって密着し , 基材表面にコーティング皮膜が形成される。
【0024】
【発明の実施の形態】
上記の課題を解決するに際し、発明者らはショットコーティングという革新的なコーティング技術を発明した。従来からショットピーニングという固体粒子を基材表面に噴射して粗面化、硬化させる技術が良く知られている。しかし、200μm以下の軟質金属をセラミックス基材表面に高速噴射すると、初期に基材表面にエロージョンが生じるものの、その後基材表面にサブミクロンから数百μmの皮膜が形成されることを明らかにした。この皮膜はエロージョンにより基材の新生面が得られたところに金属粉末が塑性変形及び一部が溶融することによって密着し,密着強度の高い皮膜が得られる。またコーティングする金属粉末は加熱されていないため酸化など熱劣化の影響が小さく,気孔率の小さな高品位な皮膜が得られる。
【0025】
従来の金属コーティング技術は、金属粉末を高温で溶融して吹き付ける溶射法や、真空中で金属を蒸発させるPVD法(物理気相蒸着法)、CVD法(化学気相蒸着法)などが挙げられる。これに対してショットコーティングは大気中において、常温常圧で基材表面に金属粉末を高速噴射させることにより皮膜を形成させる技術である。このコーティングプロセスでは、緻密で、密着力に優れた金属皮膜が得られると共に、当然のことながら極めて簡便かつ低コスト、環境に優しいコーティングプロセスが得るれる。
【0026】
本発明においては、機能性セラミックス素子に緻密で密着力の高い導電層を形成するコーティング手法を提案し、その中でも基材材料とコーティング材料の種類、コーティング条件等を限定することにより高品位な膜質で、密着力の高い導電層を形成した機能性素子を提供する。
【0027】
以下本発明の第1の実施の形態について図1及び表1を参照して説明する。図1において、セラミックス基板1であるφ30mmのジルコニア基板に粒径0.5〜200μmのアルミニウム粉末を室温大気中、200m/sの噴射速度で吹き付けるショットコーティング法を用いてアルミニウムの皮膜2を約50μmの膜厚でコーティングした(実施例1)。同様に、実施例1と同じ基板に同じ材質のコーティング皮膜を大気溶射法、蒸着法、無電解めっき法を用いてほぼ同等な膜厚を形成し、比較例1〜3とした。
【0028】
【表1】
【0029】
実施例1及び比較例1〜3について、得られた皮膜の膜質、基板と皮膜の密着性、成膜速度、コーティングプロセスの簡便性、コスト、耐環境性について評価した結果を表1に示す。ショットコーティング法は大気溶射法、蒸着法、無電解めっき法に比べて得られた皮膜の膜質、基板と皮膜の密着性、成膜速度、コーティングプロセスの簡便性、コスト、耐環境性の観点から優れた特性を示すことがわかる。
【0030】
これに対して、大気溶射法は成膜速度が速く、厚膜のものまで形成可能であるが、皮膜中の気孔率が高く、さらに含まれる酸化物の含有量も高いことが知られている。また、コーティング効率が低く、コスト高となってしまう。蒸着法は、高品位な膜質の皮膜が得られるが、成膜速度が遅く、また真空チャンバ内でのバッジ処理となるため簡便性、コストの面でマイナスとなってしまう。無電解めっき法は特に環境負荷の面で問題となっている他、成膜速度も若干遅くなっている。
【0031】
次に本発明の第2の実施の形態を図1及び表2を参照して説明する。セラミックス基板1であるφ30mmのジルコニア基板に粒径0.5〜200μmのアルミニウム粉末を、室温大気中、30〜450m/sの噴射速度で吹き付けるショットコーティング法を用いてアルミニウムの皮膜2を約50μmの膜厚でコーティングした(実施例1)。同様に、φ30mmのアルミナ基板に粒径0.5〜200μmの銅粉末を、室温大気中、30〜450m/sの噴射速度で吹き付けるショットコーティング法を用いて銅皮膜を約50μmの膜厚でコーティングした(実施例2)。同様に、φ30mmの窒化ケイ素基板に粒径0.5〜200μmのチタン粉末を室温大気中、30〜450m/sの噴射速度で吹き付けるショットコーティング法を用いて、チタン皮膜を約50μmの膜厚でコーティングした(実施例3)。同様に、φ30mmの窒化アルミ基板に粒径0.5〜200μmのシリコン粉末を、室温大気中、30〜450m/sの噴射速度で吹き付けるショットコーティング法を用いてシリコン皮膜を約50μmの膜厚でコーティングした(実施例4)。同様に、φ30mmのシリカ基板に粒径0.5〜200μmの金粉末を、室温大気中、30〜450m/sの噴射速度で吹き付けるショットコーティング法を用いて金皮膜を約50μmの膜厚でコーティングした(実施例5)。同様に、φ30mmのチタニア基板に粒径0.5〜200μmの銀粉末を、室温大気中、30〜450m/sの噴射速度で吹き付けるショットコーティング法を用いて銀皮膜を約50μmの膜厚でコーティングした(実施例6)。同様に、φ30mmの炭化ケイ素基板に粒径0.5〜200μmのタングステン粉末を、室温大気中、30〜450m/sの噴射速度で吹き付けるショットコーティング法を用いてタングステン皮膜を約50μmの膜厚でコーティングした(比較例4)。同様に、φ30mmのコージェライト基板に粒径0.5〜200μmのニッケル粉末を、室温大気中、30〜450m/sの噴射速度で吹き付けるショットコーティング法を用いてニッケル皮膜を約50μmの膜厚でコーティングした(比較例5)。同様に、φ30mmのステアタイト基板に粒径0.5〜200μmのモリブデン粉末を、室温大気中、30〜450m/sの噴射速度で吹き付けるショットコーティング法を用いてモリブデン皮膜を約50μmの膜厚でコーティングした(比較例6)。
【0032】
【表2】
【0033】
以上のようにして得られたコーティング皮膜2の気孔率を水銀圧入法を用いて測定した。次に、基板材料と皮膜の密着力を調べるためコーティング皮膜に治具を取り付けて引張試験を行い引張強度を測定した。表面粗さは、形成したコーティング皮膜2の表面の平均表面粗さ(Ra)を測定した。金属酸化物の重量割合は酸素量を燃焼法により求め、金属酸化物としての重量割合を算出したものである。
【0034】
表2に実施例及び比較例のコーティング皮膜2の気孔率、セラミックス基板1の材料と皮膜2の材料の密着強度、皮膜表面の表面粗さ、皮膜中に含まれる酸化物含有量を示す。セラミックス基板材料より融点、硬度、ヤング率の低い金属の粉末を高速噴射した実施例1〜6においては、皮膜中の気孔率が低く、密着強度もバラツキなく安定して高い強度を示し、表面粗さも小さく、酸化物含有量も大幅に少ない皮膜が得られた。
以上のように、上記材料の組合せでは、セラミックス基板1の材料上に、高品位な膜質で、優れた密着強度のコーティング皮膜2を形成することができる。
【0035】
次に本発明の第3の実施の形態を図2〜図4及び表3〜表5までを参照して説明する。前記の第2の実施の形態で記載した製造工程において、ショットコーティングによりコーティング皮膜2をセラミックス基板1の材料上に形成した。この時、異なる条件で形成されたコーティング皮膜2を持つ複数種類の試験体を作製した。この場合、具体的には(1)コーティング皮膜材料の粉末粒径、(2)ショットコーティングプロセスにおける粉末の噴射速度、(3)ショットコーティングプロセスにおける基板材料の温度という複数の条件対象に、複数の形成条件によって複数種類のコーティング被膜を作製した。そして、これらの各条件対象毎に複数種類のコーティングに対して得られた皮膜の膜厚及びバラツキの測定を行った。
【0036】
【表3】
【0037】
【表4】
【0038】
【表5】
【0039】
以下に、各条件に関して具体的に設定した複数種類の形成条件と、その複数種類の形成条件によって形成されたコーティング皮膜を持つ複数種類の試験体の評価結果について説明する。
【0040】
(1)コーティング皮膜材料の粉末粒径
コーティング皮膜材料の粉末粒径を変えて第1及び第2の実施の形態と同じ条件でショットコーティングした場合の膜厚及び成膜状態を示したものである。ここで用いた粉末の粒径は粉末をレーザー回折法により求めた50%粒径とした。表3に示すようにφ30mmのアルミナ基板に粒径10μmと150μmの銅粉末を、室温大気中、30〜450m/sの噴射速度で、一定時間吹き付けて銅皮膜をショットコーティングし、これを実施例2とした。同様に、φ30mmのアルミナ基板に粒径0.1μmと300μmの銅粉末を、室温大気中、30〜450m/sの噴射速度で、一定時間吹き付けて銅皮膜をショットコーティングし、これを比較例7とした。
【0041】
図2は、粉末粒径(μm)と、膜厚(μm)との関係を示すグラフであり、具体的にはショットコーティングで基板材料に高速噴射するコーティング皮膜材料の粉末粒径と、粉末粒径を変えたコーティング皮膜の膜厚の測定結果を示している。図2から明らかなように、10μm及び150μmの粒径の金属粉末を高速噴射するとバラツキの小さい膜厚の皮膜が容易に形成される。これに対して、200μmより大きな粒径の粉末を用いると基板材料のエロージョン摩耗が大きくなり、0.5μm未満の粉末では、高速噴射されたときの衝突エネルギーが小さく、皮膜が形成されない領域が生じる。また、安定した膜厚の皮膜が得られにくい。
【0042】
図2においては、アルミナ基板に銅粉末を高速噴射したときの結果を示したが、その他の組合せを用いた場合も同様な結果が見られた。
以上のように、基板材料に金属粉末を高速で吹き付けるショットコーティングにおいて、金属粉末の粒径が0.5μm〜200μmの場合、高品位な膜質で、密着力の優れたコーティング皮膜が簡便に低コストで形成することができる。
【0043】
(2)ショットコーティングプロセスにおける速度
図3は、ショットコーティングにおける金属粉末の噴射速度と、コーティングの膜厚との関係を示すグラフであり、具体的にはショットコーティングにおける粉末の速度を変えて作製したコーティング皮膜の膜厚の結果を示している。表4に示すようにφ30mmの窒化アルミ基板に粒径0.5〜200μmのシリコン粉末を、室温大気中、100m/sと300m/sの噴射速度で、一定時間吹き付けるショットコーティングを用いてシリコン皮膜をコーティングした(実施例4)。同様に、φ30mmの窒化アルミ基板に粒径0.5〜200μmのシリコン粉末を、室温大気中、10m/sと550m/sの噴射速度で、一定時間吹き付けるショットコーティングを用いてシリコン皮膜をコーティングした(比較例8)。
【0044】
図3中において、実施例4及び比較例8をそれぞれ示している。図3に示す結果から明らかなように、金属粉末の噴射速度が100m/s及び300m/sの両方とも安定した膜質の皮膜形成されるのに対し、450m/sを超える速度で皮膜を形成した場合基板材料の表面がエロージョン摩耗を起こし所定膜厚の皮膜が得られにくく、また、皮膜中の残留応力が高くなり剥離が起こりやすくなる。これに対し、30m/s以下の速度で皮膜を形成した場合、速度が遅すぎるため粉末が基板材料に衝突したときのエネルギーが小さく、皮膜が形成されていない領域が生じ、その部分では膜厚が不均一となる。
【0045】
これに対して、30〜450m/sの速度で皮膜を形成した場合、所定膜厚の皮膜が得られやすく、また、皮膜中の残留応力が低いため密着性の高い皮膜が得られる。
【0046】
(3)ショットコーティングにおける基板材料の予熱条件
図4は、ショットコーティングプロセスにおける基板材料の予熱の有無と、コーティングの膜厚との関係を示すグラフであり、具体的にはショットコーティングにおける基板材料の予熱温度を変えて作製したコーティング皮膜の膜厚の結果を示している。
【0047】
表5に示すようにφ30mmのチタニア基板を室温のままと200℃に加熱したものを準備して、粒径0.5〜200μmの銀粉末を、大気中、30〜450m/sの噴射速度で一定時間吹き付けるショットコーティング法を用いて銀皮膜をコーティングした(実施例6)。同様に、φ30mmのチタニア基板を500℃に加熱したものを準備して、粒径0.5〜200μmの銀粉末を、大気中、30〜450m/sの噴射速度で一定時間吹き付けるショットコーティング法を用いて銀皮膜をコーティングした(比較例9)。
【0048】
図4中において、実施例6及び比較例9についてそれぞれ示す。基板材料を加熱したものの方が厚膜が短時間で形成され、また、皮膜中の残留応力が低いため密着性の高い皮膜が得られる。しかし、400℃以上に加熱しても効果はほとんど同じであり、また、材料によっては酸化や熱変質が見られる場合がある。
【0049】
以上のように、ショットコーティングにより皮膜を形成する際、基板材料を予熱した状態で金属粉末を吹き付けると、さらに優れた皮膜が短時間で、効率よく得ることができる。
【0050】
次に本発明の第4の実施の形態を表6を参照して説明する。
【0051】
【表6】
【0052】
前記の第1〜3の実施の形態で記載した製造工程において、ショットコーティングによりコーティング皮膜を基板材料上に形成した。このとき、異なる条件で形成されたコーティング皮膜を持つ複数種類の試験体を作製した。この場合、具体的には、セラミックス基板材料に金属粉末を高速噴射するとき、搬送ガスを含む雰囲気ガスと、基板材料の温度を制御することによって金属化合物皮膜を形成させた。具体的には(1)金属酸化物の皮膜を形成させたもの、(2)金属窒化物の皮膜を形成させたものについて複数の形成条件によって複数種類のコーティングを作製した。そして、これらの各条件対象毎に複数種類のコーティングに対して得られた皮膜の構造をX線回折により評価した。以下に、各条件に関して具体的に設定した複数種類の形成条件と、その複数種類の形成条件によって形成されたコーティング皮膜を持つ複数種類の試験体の評価結果について説明する。
【0053】
(1)金属酸化物皮膜
φ30mmのジルコニア基板に粒径0.5〜200μmのアルミニウム粉末を、室温大気中、30〜450m/sの噴射速度で吹き付けてショットコーティングした(実施例1)。同様にして、φ30mmのジルコニア基板を800℃に加熱して、粒径0.5〜200μmのアルミニウム粉末を搬送ガスに窒素ガスを用いて30〜450m/sの噴射速度で吹き付けてショットコーティングした(実施例7)。
【0054】
実施例1では、形成された皮膜は金属アルミニウムであるのに対し、400℃以上に加熱したセラミックス基板材料に窒素ガスを含む搬送ガスを用いて、または窒素ガスを含む雰囲気中で高速噴射した実施例7では金属窒化物である窒化アルミ皮膜が形成された。
【0055】
(2)金属窒化物皮膜
φ30mmの窒化ケイ素基板に粒径0.5〜200μmのチタン粉末を、室温大気中、30〜450m/sの噴射速度で吹き付けてショットコーティングした(実施例3)。同様にして、φ30mmの窒化ケイ素基板を600℃に加熱して、粒径0.5〜200μmのチタン粉末を、室温大気中、30〜450m/sの噴射速度で吹き付けてショットコーティングした(実施例8)。
【0056】
実施例3では、形成された皮膜は金属チタンであるのに対し、400℃以上に加熱したセラミックス基板材料に空気または酸素ガスを含む搬送ガスを用いて、または空気または酸素ガスを含む雰囲気中で高速噴射した実施例8では、金属酸化物であるチタニア皮膜が形成された。
【0057】
すなわち、セラミックス基板材料に金属粉末を高速噴射する時、搬送ガスを含む雰囲気ガスと、基板材料の温度を制御することによって金属化合物皮膜が形成できる。
【0058】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、セラミックス基板材料に金属粉末を高速噴射することにより金属皮膜または金属化合物皮膜を形成するようにしたので、緻密で、密着力に優れたコーティング皮膜が得られると共に、当然のことながら極めて簡便かつ低コスト、環境に優しいコーティングプロセスであるショットコーティングを適用した機能性素子の実装基板を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による機能性素子を示す側面図。
【図2】本発明に係わるショットコーティングプロセスにおける速度と皮 膜の膜厚の関係を示すグラフ。
【図3】本発明に係わるショットコーティングプロセスにおけるコーティング皮膜材料の粉末粒径と皮膜の膜厚の関係を示すグラフ。
【図4】本発明に係わるショットコーティングコーティングプロセスにおける基板材料の予熱と皮膜の膜厚の関係を示すグラフ。
【符号の説明】
1…セラミックス基板、2…コーティング皮膜。
Claims (1)
- シリカ、チタニア、アルミナ、窒化ケイ素、ジルコニア、窒化アルミからなる群より選ばれた少なくとも1種類を含むセラミックス基板材料の表面に、シリコン、チタン、アルミニウム、銅、銀からなる群より選ばれた少なくとも1種類を含む10乃至150μmの粒径からなる金属粉末を大気中において常温常圧で100乃至300m/secの速度で高速噴射して金属皮膜を形成し機能性素子を実装する基板であって、前記金属皮膜は気孔率が1乃至4%、平均表面粗さが2μmRa、皮膜厚さが40乃至75μmであることを特徴とする機能性素子の実装基板。
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