JP4086478B2 - 溶融炉用耐火物及び溶融炉 - Google Patents

溶融炉用耐火物及び溶融炉 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、廃棄物を溶融する溶融炉の炉壁に使用する溶融炉用耐火物及び溶融炉に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
都市ごみや産業廃棄物などの廃棄物を処理する装置には、廃棄物を溶融するための溶融炉が備わっている。溶融炉は、廃棄物の溶融時に内部が千数百℃にも達するため、炉内面に耐火物が敷設されている。
【0003】
しかし、耐火物は、廃棄物が溶融されることによって生じた溶融スラグと反応して除々に損耗してしまう。そこで、従来から廃棄物を溶融したスラグとの反応が比較的小さいAl2O3- Cr2O3質やAl2O3- MgO質を耐火物として使用していたが、それでも寿命はせいぜい6ヶ月程度であったために、耐火物の損耗を抑制し保護することが重要な技術的課題となっていた。
【0004】
ところで、製鋼用転炉においては、転炉に残留したスラグを耐火物に付着させて耐火物表面にコーティング層を形成し、運転中は外部から転炉を冷却して該コーティング層を保持することで、流動する精錬中のスラグと耐火物表面との直接的な接触を抑制し、耐火物を保護する手法が、例えば特開平5−228617号、特開平9−209022号、特開平10−183219号、特開平11−323424号公報に開示されている。
【0005】
そこで、この製鋼用転炉における耐火物の保護手法を廃棄物用の溶融炉で転用することで、すなわち耐火物表面に溶融スラグを付着させて該耐火物表面をコーティングすることで、廃棄物用の溶融炉内の耐火物が保護されると考えられる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、製鋼用転炉では、通常、転炉を冷却しつつ残留スラグを吹き付けて耐火物表面にコーティングするが、廃棄物用の溶融炉に使用される耐火物は溶融スラグとの濡れ性が悪いことから、製鋼用転炉における上記手法を単純に廃棄物用の溶融炉に転用しただけでは、耐火物表面に十分な強さでコーティングされず、よって、長時間に亘って流動するスラグに対してコーティングを維持することができなかった。
【0007】
さらには、上記した手法は、冷却によるコーティング効果が現れるのが耐火物の初期厚みの60〜70%まで減肉した時点であり、それまでは比較的早い損耗を示すから、顕著な寿命向上の効果を得ることができないといった問題があると共に、耐火物の厚みを当初から薄くして運転開始時よりコーティングしようとした場合は、炉壁からの放熱が大きくなり過ぎるために溶融作業が困難であるといった問題もある。
【0008】
本発明は、上記の諸問題を解決するものであり、廃棄物用の溶融炉において耐火物表面に溶融スラグを強固にコーティングした溶融炉用耐火物及び溶融炉を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、本発明の溶融炉用耐火物は、廃棄物を溶融して生成した溶融スラグと耐火物とを焼成し、この焼成により、該溶融スラグと該耐火物との間には反応層を、該反応層上には溶融スラグからなるコーティング層を、形成したのである。このようにすることで、耐火物表面に溶融スラグを強固にコーティングすることができ、よって耐火物が確実に保護されることとなり、耐火物の損耗を抑制して長寿命化を図ることができる。
【0010】
また、本発明の溶融炉は、上記した本発明の溶融炉用耐火物を炉壁に敷設したものである。このようにすることで、耐火物の初期厚みを薄くすることが可能となり、耐火物に要するコストを節減することができる。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明の請求項1に係る溶融炉用耐火物は、廃棄物を溶融する溶融炉の炉壁に用いる溶融炉用耐火物であって、廃棄物を溶融して生成した溶融スラグと耐火物を焼成し、この焼成により、該溶融スラグと該耐火物との間には反応層を、該反応層上には溶融スラグからなるコーティング層を、形成したものである。
【0012】
上記構成とされた本発明の溶融炉用耐火物は、従来のように単に耐火物表面に溶融スラグを例えば溶射などして付着させているのではなく、焼成して一体化しているので、耐火物表面と溶融スラグとの間に反応層が形成され、従って、流動する溶融スラグによって耐火物表面にコーティングした溶融スラグが容易に剥離することなく、確実に耐火物を保護することができるのである。
【0013】
また、本発明の請求項2に係る溶融炉用耐火物は、上記した構成において、耐火物と溶融スラグを1400℃以上で焼成したものである。
【0014】
本発明者等は、本発明の溶融炉用耐火物を製作する際に温度を変更して耐火物と溶融スラグとを焼成し、焼成した後に冷却したときの外観状況の観察と、耐火物と溶融スラグの界面の顕微鏡観察とを行った。表1にはその実験結果を示す。
【0015】
【表1】
Figure 0004086478
【0016】
上記の結果、本発明者等は、焼成温度が1400℃より低いと溶融スラグと耐火物とが冷却時に剥離してしまう可能性(さらに低いと焼成自体不可能)があり、また、1500℃より高い温度でも焼成は可能であるが、高温度とすることはエネルギー面から見て無駄であることを知見した。よって本発明の焼成温度は1400℃以上、好ましくは1400〜1500℃で焼成することとした。
【0017】
このようにすることで、本発明の溶融炉用耐火物は、確実に溶融スラグからなるコーティング層を耐火物表面に形成することができ、また、剥離しにくく、長期に亘り耐火物を保護することができるようになる。
【0018】
また、本発明の請求項3に係る溶融炉用耐火物は、上記した構成において、コーティング層の厚さを5〜50mmとしたものである。
【0019】
本発明者等は、後の実施例で述べる効果を確認するための実験を行った結果、コーティング層の厚さが、5mmより薄いと、コーティングの効果が長続きしないから耐火物を長期に亘って保護できず、また、50mmを超えると剥離しやすくなることを知見した。
【0020】
従って、コーティング層の厚さを5〜50mmの範囲とすれば、コーティング層が耐火物表面から剥離しにくく、また、長期に亘って耐火物を保護できるようになる。
【0021】
また、本発明の請求項4に係る溶融炉用耐火物は、上記構成において、コーティングを施す耐火物表面に凹凸を形成したものであり、このようにすることで、耐火物表面とコーティング層との接触面積が増すので、溶融スラグと耐火物表面との接着強度が大きくなり、コーティング層が剥離しにくくなる。
【0022】
また、本発明の請求項5に係る溶融炉用耐火物は、上記請求項4の構成において、コーティングを施す耐火物表面に形成した凹凸の差を10〜50mmとしたものである。
【0023】
本発明者等は、後の実施例で述べる効果を確認するための実験を行った結果、コーティングを施す耐火物表面の凹凸の差が、10mmより小さくなると凹凸を施さない状態と変わりがなく(それでも従来と較べると耐火物の寿命は長い)、一方、50mmを超えると機械的な作用により凸部が損傷して良好な結果が得られないことを知見した。
【0024】
従って、コーティングを施す耐火物表面に形成した凹凸の差を10〜50mmとすることで、コーティング層が剥離しにくく、耐火物を長期に亘って保護することができるようになる。
【0025】
また、本発明の請求項6に係る溶融炉は、廃棄物を溶融する溶融炉において、本発明の請求項1乃至5のいずれかに記載の溶融炉用耐火物を敷設したものである。
【0026】
従来の手法、すなわち耐火物外面側で冷却し、耐火物内面側にコーティングする従来の手法は、耐火物がその初期厚みの60〜70%程度まで減肉した時点で可能となっていたので、減肉されるまではコーティングするだけの冷却効果を耐火物表面に与えることができない一方、耐火物敷設当初から耐火物の厚みを薄くすると、外部への放熱が促進されて、溶融炉の溶融性能の低下が顕著になっていた。
【0027】
これに対して、本発明によれば、溶融スラグからなるコーティング層を耐火物表面に焼成して一体的に形成した溶融炉用耐火物を敷設するので、予めコーティングされた状態で運転が可能であり、よって耐火物を薄くすることができ、耐火物に要するコストを節減することができる。
【0028】
【実施例】
以下に本発明の実施例について図面を参照して説明する。本発明の溶融炉用耐火物1は、図1に示すように、幅300mm×奥行き300mm×厚さ200〜295mmのAl2O3- Cr2O3又はAl2O3- MgOの材質の耐火物2を型枠3にセットし、厚み方向に廃棄物を溶融した溶融スラグ4、ガラスなどの粉末を投入し、1400℃で焼成して2時間保持した後、徐冷して、幅300mm×奥行き300mm×厚さ300mmの大きさに製作した。
【0029】
表2は、本発明の溶融炉用耐火物の断面と、従来の溶射による吹き付けによってコーティングしたもの(従来法)とを、それぞれX線マイクロアナライザによって元素分析した結果を示したものである。
【0030】
【表2】
Figure 0004086478
【0031】
従来法では、コーティング層と耐火物の層とが完全に分離し、反応層が形成されなかった。それに対して、本発明では、溶融スラグと耐火物との間に反応層が形成され、この反応層に溶融スラグ成分と耐火物の成分が混在している。従って、本発明の溶融炉用耐火物は溶融スラグと耐火物とが強固に一体化されているから、コーティング層が剥離しにくく、従って、耐火物が確実に保護されることとなる。
【0032】
また、何もコーティングしない耐火物と、溶射によってコーティングした耐火物と、本発明のように焼成により溶融スラグを耐火物表面にコーティングした溶融炉用耐火物とを各々回転浸食試験装置の円筒内面にセットし、この円筒内に、Na2Oを7%、Al2O3 を8%、SiO2を33.5%、CaO を33.5%、Fe2O3 を18%、の組成とされたスラグを投入し、円筒を1500℃で50時間回転させつつ、内部をバーナで加熱した結果を表3に示す。
【0033】
【表3】
Figure 0004086478
【0034】
表3によれば、コーティング無の耐火物と、溶射によってコーティングした耐火物とは、溶損速度に差が生じていないが、この理由は、溶射によってコーティングした耐火物では、耐火物表面に付着させたコーティングの付着力が弱いために試験開始直後に全て剥離したためと思われる。これらに対して、本発明の溶融炉用耐火物は、溶損速度は1/2となり、また、試験後の表面性状も問題がなかった。
【0035】
次に本発明の効果を確認するための実験結果について説明する。
表4には、上記した本発明の溶融炉用耐火物と、そうでない耐火物を、内径4m×長さ11mの回転型溶融炉の炉壁に敷設し、一般ごみなどの廃棄物の溶融を行った結果を示している。
【0036】
【表4】
Figure 0004086478
【0037】
表4において、1〜3はコーティングをしない耐火物を使用した例であり、これらの例は、いずれも寿命が6ヶ月程度であった。特に、2は、寿命が6ヶ月で1,3に較べて寿命が長いものの耐火物の材質として高価で有害なCr2O3 を20%含有する点で総合的に見て評価を×とした。また、4は、表面にソーダライムガラスをコーティングした例であり、この例は、運転中にコーティング層が流出し、寿命の延長効果が認められなかった。
【0038】
5〜11は、本発明の溶融炉用耐火物を使用した例であり、1〜4に較べると寿命が延長され、また、耐火物の材質にCr2O3 を5%含有した場合であっても、コーティング層を厚くすることで、寿命がCr2O3 を20%含有する耐火物(2の結果)以上となった。従って、本発明の溶融炉用耐火物であれば、高価で有害なCr2O3 の含有量を削減することができ、材料費と残材処理費の大幅な削減ができる。
【0039】
なお、10においては、耐火物の材質に高価で有害なCr2O3 を20%含有している点で2と同様であるが、10では本発明を適用している点で耐火物の材質にCr2O3 を20%含有している2の結果に較べて耐火物の寿命が長くなっているので総合的な評価で○としている。
【0040】
また、本発明の溶融炉用耐火物を使用した例において、溶融スラグのコーティング層の厚みは、9に示すように50mmを超えると剥離してしまったので、望ましくは5〜50mmの範囲とすればよい。
【0041】
11は、Al2O3- MgOを30%含有した耐火物表面に溶融スラグを焼成によりコーティングした例を示す。この場合においても耐火物の寿命が長くなり、十分な効果を得ることができた。
【0042】
12,13は、図2に示すように、耐火物表面に凹凸を形成した溶融炉用耐火物を使用した例である。12,13において、凹凸部は、12では凹凸差(図2におけるl2−l1)が10mm、13では凹凸差が50mmとし、凹部間の凸部幅を30mmとした。
【0043】
この理由は、凹凸差が10mm以下となると凹凸を設けない状態(1〜8の結果)と変わりがなくなるからであり、また、50mmを超えると機械的な作用により凸部が損傷して良好な結果が得られないからである。従って、凹凸差を10〜50mmとした12,13の場合、コーティング層の接触面積が増すから良好な結果を得ることができた。
【0044】
なお、この凹凸は、図示では断面矩形状として耐火物表面の全域に形成しているが、その目的がコーティング層と耐火物表面の接触面積の増加であるため、断面形状は矩形でなくてもよく、また、耐火物表面の全域でなくてもよい。
【0045】
【発明の効果】
以上のように、本発明の溶融炉用耐火物は、廃棄物を溶融して生成した溶融スラグと耐火物とを焼成して反応層と該反応層上にコーティング層を形成したので、従来のように単に耐火物表面に溶融スラグを例えば溶射などして付着させているのではなく、焼成して一体化しているので、流動する溶融スラグによって耐火物表面にコーティングした溶融スラグが容易に剥離することなく、長期に亘り耐火物を確実に保護することができる。
【0046】
また、本発明の溶融炉用耐火物は、上記構成において、耐火物と溶融スラグを1400℃以上で焼成することで、また、コーティング層の厚さを5〜50mmとすることで、また、コーティングを施す耐火物表面に凹凸を形成し、さらにこの凹凸差を10〜50mmとすることで、上記に較べより一層、コーティング層が剥離しにくくなり、耐火物を長期に亘り確実に保護することができるようになる。
【0047】
また、本発明の溶融炉は、上記したいずれかの構成の本発明の溶融炉用耐火物を、廃棄物を溶融する溶融炉の炉壁に敷設しているので、耐火物を薄くすることができ、耐火物に要するコストを節減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の溶融炉用耐火物を製作する状況を示す図である。
【図2】本発明の溶融炉用耐火物における耐火物表面に形成した凹凸を示す図である。
【符号の説明】
1 溶融炉用耐火物
2 耐火物
3 型枠
4 溶融スラグ

Claims (6)

  1. 廃棄物を溶融する溶融炉の炉壁に用いる溶融炉用耐火物であって、廃棄物を溶融して生成した溶融スラグと耐火物を焼成し、この焼成により、該溶融スラグと該耐火物との間には反応層を、該反応層上には溶融スラグからなるコーティング層を、形成したことを特徴とする溶融炉用耐火物。
  2. 耐火物と溶融スラグを1400℃以上で焼成したことを特徴とする請求項1記載の溶融炉用耐火物。
  3. コーティング層の厚さを5〜50mmとしたことを特徴とする請求項1又は2記載の溶融炉用耐火物。
  4. コーティングを施す耐火物表面に凹凸を形成したことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の溶融炉用耐火物。
  5. コーティングを施す耐火物表面に形成した凹凸の差が10〜50mmであることを特徴とする請求項4記載の溶融炉用耐火物。
  6. 廃棄物を溶融する溶融炉において、請求項1乃至5のいずれかに記載の溶融炉用耐火物を敷設したことを特徴とする溶融炉。
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