JP4084921B2 - ブローチ盤の切屑除去装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、立て型ブローチ盤の切屑除去装置に関し、特に切削油を使用しないドライブローチ加工や、ミスト状の切削油を用いたミストドライブローチ加工に好適な切屑除去装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来のブローチ加工においては、ブローチ周囲に設けた複数のノズルからブローチに向けて切削油を供給し、切削時の切屑は前記切削油によって流し出されて下方に流れ落ちた後、ブローチの下方に設置したチップコンベアをフレーム下部に設置して上部より落下した切屑を装置外へ搬出していた。特に、この従来技術にあっては、切削油が必要で、且つ切削油を含んだ切屑を回収して切削油等を無害にする処理装置も必要であり、また加工作業場の環境確保の面からも作業性の向上が求められていた。そこで、近年切削油を使用しないドライブローチ加工又は切削油をミスト状にして使用するミストブローチ加工が知られている。
【0003】
この種の技術として、例えば特開2000−117531号公報に開示されているような技術が知られている。これを図4に示して概略を説明すると、ブローチ盤1のテーブル7上に、ブローチ4の最大外径の約2倍の内径を有する切屑収容室2を設け、前記切屑収容室2の両側に切屑排出用穴22及びエアー供給用穴23を設け、図外の切屑吸引装置の吸引側に接続された吸引用ホース11aを前記切屑排出穴22に連結すると共に、排気側に接続された排気用ホース11bを前記エアー供給用穴23に連結する。これにより、テーブル7上のワークWをブローチ4で加工した際に、ブローチ4に付着する切屑を切屑収容室2に収容して排出するようにしたものである。なお、図中8はオイルミスト供給用のノズルである。
【0004】
これにより、切削時に生じる切屑を飛散させることなく、ドライ状態で回収することができるというものである。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来技術の特開2000−117531号公報にあっては、ドライ加工やミスト加工により、切屑を含む切削油の後処理が不要であり、また切屑収容室2を設け、この切屑収容室内にエアー供給と排気を行って、積極的に切屑を除去するようにしている。しかし、ブローチ4の切れ刃に凝着した切屑は十分に回収しきれずに下方に落下し、長時間加工を行った際には、切り屑が床上に堆積し、頻繁に清掃する作業を余儀なくされるという問題があった。
【0006】
すなわち、ブローチ4は図中の上下方向に移動し、テーブル7上のワークWが加工されるのであるが、ブローチ4には切屑が強固に付着した状態で下方に移動する。ここで、切屑収容室2内の側方から水平方向に空気を噴射し、更に側方から吸引を行うことにより、切屑収容室2内でブローチ4の切れ刃から切屑が離脱し易い状態になるものの、ブローチ4の切れ刃に凝着した状態となって、即座に剥離しないことがあり、ブローチ4が更に下方に移動し、切屑が切屑収容室2外の下方に移動して初めて離脱することがあるからである。この時には、もはや切屑は回収ができず、床上に飛散して堆積し、そのため清掃作業を行う頻度が高くなるのである。
【0007】
本発明は以上のような課題に着目してなされたもので、切屑を含む切削油の後処理が不要であるのは勿論、切屑を積極的に上方に吹上げるようにして、テーブルの下方に飛散して床上に堆積するのをより効果的に防止し、テーブルの下方を常に清潔に保って頻繁に清掃する必要のない装置を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の発明は、立て型ブローチ盤の上下方向に延び且つ駆動されるブローチを通過させる貫通穴を有すると共にその上部に加工されるワークを位置決め支持するテーブルを上板とし、前記テーブルから下方に隔たった下方位置に配置され且つ前記ブローチを通過させる貫通穴を備える下板として、両板の間にワーク貫通加工後のブローチを取囲む環状空間からなる切屑収容室を形成し、前記切屑収容室の底面を構成する下板の、隙間をもってブローチを通過させる前記貫通穴の内面に開口させて、前記ブローチの切刃に向かって半径方向外周側から圧縮空気を噴射する複数のエアブローノズルを配置し、前記各エアブローノズルは、噴射された圧縮空気が前記下板の貫通穴を通過中のブローチの切刃に作用した後に前記貫通穴上方の前記切屑収容室内へ流れるよう前記ブローチの軸直角な平面に対し所定角度上方に傾けて設定し、前記切屑収容室の下板により構成する底面は、外周側からブローチを貫通させる貫通穴に向けて所定角度上方に傾斜した略円錐状に形成されていることを特徴とする。
【0010】
請求項2に記載の発明は、切屑収容室は、当該切屑収容室内の切屑を吸引して排出する吸引手段が接続されていることを特徴とする。
【0013】
【発明の効果】
請求項1に記載の発明によれば、エアブローノズルは、切屑収容室を構成する下板に設けられて、ブローチの通過を許容すると共に切屑収容室内を下方の外部空間に連通させる貫通穴内面に開口させて配置され、当該貫通穴を通過するブローチの切刃に向かって半径方向外周側から所定角度上方に傾けて圧縮空気を噴射するよう設定されているので、噴射された圧縮空気はブローチの切刃にぶつかり、当該貫通穴とブローチ外周との狭い隙間から上昇されて切屑収容室へ導入され、切刃に凝着している切屑を離脱させて上方に向けて確実に吹き飛ばすことができ、切屑収容室の外部空間である下方に落下するのを効率的に防止し得ると共に、吹上げられた切屑を切屑収容室内に確実に回収することができる。
しかも、切屑収容室の下板により構成する底面は、外周側からブローチを貫通させる貫通穴に向けて所定角度上方に傾斜した略円錐状に形成されているので、切屑を自重で外周側に移動させてブローチ外周の貫通孔近傍に堆積するのを防止できる上、下板はエアブローノズルの向きに沿っているので下板のスペースを小さくでき、装置全体をコンパクト化できる。
【0015】
請求項2に記載の発明によれば、切屑収容室は、当該切屑収容室内の切屑を吸引して排出する吸引手段が接続されているので、吸引手段の吸引により下板貫通穴とブローチとの隙間から下方に落下するのを効率的に防止し得ると共に、ノズルからの上方に向けて吹き飛ばされた切屑を切屑収容室を経由させて確実に回収することが出来る。
【0018】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を実施例により説明する。なお、従来技術で説明した符号には同じ符号を付与して説明を省略する。
【0019】
図1〜3は本発明に係る切屑除去装置の好ましい実施の形態を示す図である。図1を参照し、立て型ブローチ盤1のテーブル7上には基準ブロック15が載置され、この基準ブロック15上に加工対象となるワークWが位置決めされる。そして、このワークWに加工工具たるブローチ4が内挿されるようになっている。このブローチ4はベース14上に立設され、ベース14が図示しない駆動機構によって上方から下方に移動することでブローチ4が上下方向に移動し、ワークWに対してブローチ加工が施される。
【0020】
立て型ブローチ盤1の上下方向に延びるブローチ4の周囲のうちワークWよりも下方に位置する部分であって、前記テーブル7の下方には、切屑収容室2が設けてある。この切屑収容室2は、前記ブローチ4周囲を囲む中空円筒状の側板3と、該側板3の上下を塞ぎ、且つブローチ4がそれぞれ貫通する貫通穴7b、5bを有した上板としてのテーブル7及び下板5を備え、前記側板3の内面3aとテーブル7の下面7a及び下板5の上面5aにより囲まれた空間内に切屑を収容するようになっている。
【0021】
ここで、下板5の上面5aは側板3から貫通穴5bに向けて上面5aが所定角度上方に傾斜した略円錐状に形成されている。この傾斜により切屑収容室2内の切屑を自重で側板3側に移動させてブローチ4周囲の下板5の貫通孔5b近傍に堆積することがなく、後述するエアブローノズル12の向きに沿っていることから、エアブローノズル12の機能と切屑収容室2を形成する下板5の両機能を小さいスペースで満足させることができ、装置全体のスペースを小さくしてコンパクト化が図れる。更には、エアブローノズル12を切屑収容室2を構成する下板5に設けたので下板5のスペースをより小さくでき、装置全体をよりコンパクト化できる。
【0022】
なお、この実施例では、確実に切屑6を自重で効率よく側板3側に滑り落ちるようにするために、図2に示すブローチ4の軸l(鎖線)に直角な平面m2(鎖線)に対する角度αを30度に設定してある。なお、下板5の上面5aに摩擦抵抗を小さくするコーティングを行ってもよい。また、この実施例では角度αを30度としたが、これに限らず切屑6が滑り落ちる角度内で変更してもよい。
【0023】
図2に示すように、下板5にはブローチ4に対し圧縮空気を噴射する複数のエアブローノズル12が配置されている。そして、各エアブローノズル12の噴射方向は前記ブローチ4の軸lに直角な平面m1(鎖線)に対し所定角度上方に傾けて設定してある。各エアブローノズル12は、前記ブローチ4の軸lに直角な平面m1上にあって、前記軸l回りに等間隔に8本配置してあり(図3を参照)、前記軸lに直角な平面m1に対する角度βを45度に設定してある。なお、角度βが10度以下では切屑を上方に向けて吹き上げる作用が低下し下方に落ちる量が多くなり、逆に45度を超えるとブローチ4の切れ刃に十分空気流が作用せず、切屑が下方に落ちる量が多くなる。そして、角度βは10度〜45度の範囲内であれば良好に切屑を下方に残すことなく上方に吹き上げることが実験により確認されている。また、エアブローノズル12は、下板5内のブローチ4の軸lと同心状にリング状の空間である空気室9に連通し、前記軸心lに向けて放射状に且つ45度上方に延び、更に下板5とブローチ4の間隙5b上部に解放する細長い略直線状空間である。なお、空気室9は図外の圧力空気源からの圧力空気が孔13を介して供給されるようになっている。
【0024】
なお、この実施例ではブローチ4の切れ刃4aの最大径dが8mmで、下板5の内周の径Dが10mmである。すなわち、下板5の内周Dはブローチ4の最大径dよりも2mm大きくしてある。すなわち、下板5の貫通穴5bとブローチ4の切れ刃4aとの間隙は1mmである。
【0025】
以上のように、各エアブローノズル12からの噴射方向をブローチ4の軸lに直角な平面m1に対し所定角度上方に傾けて設定したので、ブローチ4の切れ刃に凝着している切屑6を上方に向けて確実に吹き飛ばすことができ、下方に落下するのを効率的に防止し得て装置を常に清潔に保ち、大掛かりな切屑清掃装置や切削油処理装置を設けたり、或いは作業者が頻繁に清掃する等の必要がない。また、エアブローノズル12はブローチ4の軸回りに等間隔に配置すると共に、ブローチ4の軸直角な平面に対し10度〜45度上方の範囲に傾けて設定したので、ブローチの切刃に凝着している切屑を上方に向けてより確実に吹き飛ばす事ができる。
【0026】
図1に示すように、側板3には切屑排出用穴22が形成され、この切屑排出用穴22には、ホース11を介して切屑吸引装置10に接続され、切屑吸引装置10内の図示しない吸引ポンプからの負圧がホース11及び切屑排出用22穴を経由して切屑収容室2内に作用し、これにより切屑が切屑吸引装置10内に収容される。なお、切屑吸引装置10内に切屑が所定量堆積した際には、図外のセンサで検知して表示ランプ等で表示し、作業者に排出を促すとよい。また、切屑吸引装置10にキャスタ16を設けて床17上を移動自在にすると切屑排出が容易に行える。この切屑排出に際しては、ドライブローチ加工で、切削油を流しながらの加工ではないため、面倒な切削油の処理は不要である。
【0027】
更に、ワークWと各エアブローノズル12の間に、前記ブローチ4周囲を囲む切屑収容室2を設け、該切屑収容室2には当該切屑収容室2内の切屑6を吸引して排出する吸引手段としての切屑吸引装置10が接続されているので、ブローチ4の切刃に凝着している切屑6を上方に向けて確実に吹き飛ばすことができ、下方に落下するのを効率的に防止し得ると共に、切屑を加工位置近傍で確実に回収することが出来る。
【0028】
更にまた、前記切屑収容室2は、前記ブローチ4周囲を囲む側板3と、該側板3の上下を塞ぎ、且つブローチ4が貫通する貫通穴7b、5bを有した上板としてのテーブル7及び下板5を備え、前記下板5の貫通穴5bには、ブローチ4外周との間で間隙が形成されているので、間隙内に向けて上方にエアブローする事によりブローチ4の切れ刃4aに凝着している切屑6を上方に向けて確実に吹き飛ばすことができ、下方に落下するのを効率的に防止し得ると共に、切屑を加工位置近傍で確実に回収することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る切屑除去装置の好ましい実施の形態を示す説明図
【図2】図1の要部を説明する説明図。
【図3】図2の要部を平面図で説明する説明図。
【図4】従来の切屑除去装置の一例を示す説明図。
【符号の説明】
1・・・ブローチ盤
2・・・切屑収容室
3・・・側板
4・・・ブローチ
4a・・切れ刃
5・・・下板
7・・・テーブル(上板)
10・・・切屑吸引装置
12・・・エアブローノズル
13・・・圧力空気供給部
W・・・ワーク
Claims (2)
- 立て型ブローチ盤の上下方向に延び且つ駆動されるブローチを通過させる貫通穴を有すると共にその上部に加工されるワークを位置決め支持するテーブルを上板とし、前記テーブルから下方に隔たった下方位置に配置され且つ前記ブローチを通過させる貫通穴を備える下板として、両板の間にワーク貫通加工後のブローチを取囲む環状空間からなる切屑収容室を形成し、
前記切屑収容室の底面を構成する下板の、隙間をもってブローチを通過させる前記貫通穴の内面に開口させて、前記ブローチの切刃に向かって半径方向外周側から圧縮空気を噴射する複数のエアブローノズルを配置し、
前記各エアブローノズルは、噴射された圧縮空気が前記下板の貫通穴を通過中のブローチの切刃に作用した後に前記貫通穴上方の前記切屑収容室内へ流れるよう前記ブローチの軸直角な平面に対し所定角度上方に傾けて設定し、
前記切屑収容室の下板により構成する底面は、外周側からブローチを貫通させる貫通穴に向けて所定角度上方に傾斜した略円錐状に形成されていることを特徴とするブローチ盤の切屑除去装置。 - 前記切屑収容室は、当該切屑収容室内の切屑を吸引して排出する吸引手段が接続されていることを特徴とする請求項1に記載のブローチ盤の切屑除去装置。
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