JP4083391B2 - 構造部材用フェライト系ステンレス鋼 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車足回りや建築構造物等の構造部材に用いられる耐穴あき性と加工性に優れたフェライト系ステンレス鋼に関する。
【0002】
【従来の技術】
ステンレス鋼は、耐食性に優れるという特徴を生かして、化学工業用、建築内外装用、各種厨房機器類等を中心に広く使用されるようになってきた。
【0003】
一方、建築構造物に代表される構造部材としては、ステンレス鋼が一般構造用部材として公認されていなかったために、その使用事例は、モニュメント等の外観の美麗さや意匠性が要求される部材への適用など、極めて狭い範囲に限られていた。
【0004】
しかしながら、最近、建築基準法の改正とJISの制定(JIS G4321)にともない、SUS304、SUS316等の合計3鋼種が建築構造用ステンレス鋼材として公認され、建築構造物の素材としてステンレス鋼を広く適用しようという気運が起こりつつある。
【0005】
また、近年の環境問題に対する意識の高まりにより、従来は、普通鋼あるいは低合金鋼にめっき処理または塗装処理が施され使用されてきた建築構造物や自動車足回り用の部材をはじめとする構造部材に対して、そのような処理が施されていない鋼材(無処理の鋼材)を使用する動きが認められる。めっきや塗装を省略して、めっき廃液処理の問題等を回避し、鋼材の再使用率向上に寄与するためである。さらに、前記無処理の鋼材として、耐食性と強度を兼ね備えたステンレス鋼を適用することにより、耐食性の確保と薄肉化による軽量化も視野に入れた検討がなされている。自動車用部材の場合、軽量化は燃費の向上につながり、環境問題に対する有効な対策の一つとなるからである。
【0006】
このような構造部材の全部または一部にステンレス鋼を適用するにあたっては、コストが最大の問題となる。例えば、SUS304やSUS316は、構造部材に要求される耐食性、溶接性、強度、加工性を具備する代表的なステンレス鋼であるが、高価であるために、一般構造用部材として広く適用されるには至っていない。
【0007】
一般的に、フェライト系ステンレス鋼は、Niを含有していないため、SUS304に代表されるオーステナイト系ステンレス鋼に比べて安価である。耐食性が良好で、適度の成形性を有する代表的なフェライト系ステンレス鋼であるSUS430は、各種の厨房機器や内外装用等に広く用いられているが、溶接性、特に溶接部の靱性に劣るという欠点を有する。
【0008】
一方、12Cr系の代表的鋼であるSUS410Lは、溶接性、加工性の面ではSUS430に比べ優れるが、耐食性に劣るという欠点を有する。
【0009】
このような問題を解決するために、従来から種々の検討がなされてきた。
【0010】
例えば、特開平1−162750号公報には、質量%で、C:0.04%以下、Si:1.0%以下、Mn:2.0%以下、Cr:10〜15%、Ni:3.6〜8.0%、N:0.015%以下、O:0.01%以下、P:0.03%以下、およびS:0.01%以下と、CaをS含有量の1〜10倍に相当する量で含有し、かつ、(%)C+(%)N≦0.050(%)の関係を満足する溶接構造用マルテンサイト系ステンレス鋼が開示されている。この鋼は、溶接性、靱性に優れるという利点はあるものの、母材をマルテンサイト組織とするために高価なNiや、耐食性を劣化させるMnを相当量含有させる必要がある。
【0011】
同様に、特開平3−271344号公報には、質量%で、C:0.03%以下、Si:1.00%以下、Mn:0.80〜1.00%、Ni:0.60%以下、Cr:11.00〜13.50%、Mo:0.50%以下、Cu:0.50%以下、N:0.01〜0.025%を含有し、420C%+7Mn%+23Ni%+9Cu%+470N%+189−11.5Si%−11.5Cr%−12Mo%≧68となるようにこれらの成分量を調整することにより溶接熱影響部に適量のマルテンサイトを生成させ、溶接部の強度と加工性を向上させたフェライト系ステンレス鋼が開示されている。しかし、この鋼も、マルテンサイト生成のために、耐食性を劣化させるMnを相当量含有させることが必要である。
【0012】
また、特開昭59−13053号公報には、溶接部にマッシブマルテンサイト組織を有することを特徴とする耐食性、加工性および溶接特性のすぐれたステンレス鋼が開示されている。この鋼は、溶接部にマッシブマルテンサイト組織を有するように成分調整するとともに、C、P、S、Oの含有量を低く抑えている。しかし、C、Pの含有量、特にPを低く制御することはコストアップにつながるという問題がある。
【0013】
その他、低C化、低N化、あるいはTi、Nb等のフェライト安定化元素を添加することにより、溶接性と耐食性を改善したフェライト系ステンレス鋼が一般的に知られているが、やはり、C、Nの低減がコストアップになるという問題がある。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記従来技術における問題を解決し、SUS430鋼と同等の耐食性(耐穴あき性)を有し、しかも、SUS410L鋼と同等の強度、加工性を有する、自動車足回りや建築構造物等の構造部材として好適なフェライト系ステンレス鋼を提供することを課題としている。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前述した問題点を踏まえた上で、耐食性(耐穴あき性)を向上させつつ、しかも構造部材としての強度と加工性を有するフェライト系ステンレス鋼を開発する必要があるとの観点にたち、他の重要な要素である溶接性やコストについても考慮しつつ検討を重ねた。その結果、以下の知見が得られた。
【0016】
(a)適量のNi、Cuを複合で添加することにより、耐穴あき性が向上する。これにより、同等の耐穴あき性を得るのに必要なCr含有量が低減する。
【0017】
図1は、耐穴あき性に及ぼすCu、Niの影響を示す図で、Tiを含有しない13〜14%Cr鋼(合金成分含有量についての「%」は「質量%」を意味する)の冷間圧延鋼板(板厚1.5mm)を用い、乾湿繰り返し試験を行って評価した結果である。試験は、『塩水噴霧(35℃、0.5%NaCl水溶液、2時間)→乾燥(70℃、2時間)→湿潤(50℃、4時間)』を1サイクルとして、90サイクル実施し、その後、試験片表面の最大腐食孔深さを測定した。図中に記した数値は、最大腐食孔深さ(単位:mm)である。
【0018】
図1に示した結果から、耐穴あき性の指標である最大腐食深さに対して、Ni、Cuをそれぞれ単独で添加しても効果は認められないが、それぞれ0.1%以上を複合添加することにより最大腐食深さが明確に減少し、耐穴あき性改善効果があることがわかる。しかしながら、Cuを1.5%を超えて過剰に添加すると、ε−Cuが析出し、耐穴あき性が逆に劣化する。また、Niを1%を超えて過剰に添加すると、鋼が硬質化し、加工性が低下する。
【0019】
(b)適量のTiを添加することにより、耐穴あき性、加工性が向上する。
【0020】
Tiを0.02%以上含有させることにより13〜14%Cr鋼の冷間圧延鋼板の加工性(伸び)が大幅に改善される。これは、Tiを添加することにより、熱間圧延鋼板の焼鈍時にTiの炭硫化物(Ti(C、S))が形成されて固溶Cが低減し、その結果フェライトマトリックスは再結晶しやすい鋼質となり、再結晶焼鈍時に(111)方位が成長し、r(ランクフォード)値が高く、伸びの良好な鋼板が得られることによるものと考えられる。
【0021】
Ti含有量が多ければ加工性は良好となるが、Tiを0.2%を超えて過剰に含有させると溶接部でのマルテンサイト相の析出が抑制され、溶接部の強度が低下する。また、連続鋳造時に形成されるTi酸化物、窒化物のクラスターにより表面疵が発生しやすくなる。
【0022】
Tiを含有し、さらにCu、Niを複合添加した鋼の耐食性(耐穴あき性)は、Tiを含有しないCu、Ni複合添加鋼に比較して一層改善された。これは、Tiの炭硫化物(Ti(C、S))が形成されることにより耐食性に有害なMnSの形成が阻害されたためと考えられる。
【0023】
このように、Ni、Cu、さらにTiの適量を複合して含有させることにより、非常に優れた耐穴あき性と加工性を備えたフェライト系ステンレス鋼が得られることが明らかとなった。
【0024】
本発明は上記知見に基づいてなされたもので、その要旨は、下記(1)および(2)の構造部材用フェライト系ステンレス鋼にある。
【0025】
(1)C:0.03%以下、Si:1.0%以下、Mn:1.0%以下、P:0.05%以下、S:0.002%を超え0.02%以下、Ni:0.1〜1.0%、Cr:12〜16%、Cu:0.1〜1.5%、Ti:0.02〜0.2%およびN:0.03%以下を含有し、かつ、下記▲1▼式および▲2▼式を満足し、残部がFeおよび不純物からなる構造部材用フェライト系ステンレス鋼。
【0026】
Ni(%)+Cu(%)≧0.3 ・・・▲1▼
Mn(%)/Ti(%)≦10 ・・・▲2▼
(2)上記(1)に記載の成分に加えて、さらに、Mo:0.2〜1.5%、Nb:0.005〜0.1%、V:0.05〜0.5%、Al:0.001〜0.1%、Mg:0.0001〜0.003%、Ca:0.0001〜0.003%およびB:0.0003〜0.003%のうちの1種以上を含有し、残部がFeおよび不純物からなる構造部材用フェライト系ステンレス鋼。
【0027】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の構造部材用フェライト系ステンレス鋼に含有される各成分の作用効果とその含有量の限定理由について説明する。なお、合金成分含有量についての「%」は「質量%」を意味する。
C:0.03%以下
鋼中のC含有量が多くなると、Cr炭化物が形成されて鋼の耐食性が劣化するが、その含有量が0.03%以下であれば、耐食性の劣化を許容し得る程度に抑えることができる。したがって、C含有量は0.03%以下とする。C含有量の下限は特に限定しないが、C含有量の過度の低減によるコスト増加を避け、また、溶接部の強度低下を補うために溶接熱影響部に適量のマルテンサイト相を析出させるという観点から、C含有量は0.005%以上とするのが好ましい。
【0028】
Si:1.0%以下
Siは、1.0%を超えて含有させると鋼の加工性が低下する。したがって、その含有量は、1.0%以下とする。Si含有量の下限は特に限定しないが、Siは脱酸および耐孔食性向上に有効な元素であり、これらの効果を発揮させるため0.05%以上含有させるのが好ましい。
【0029】
Mn:1.0%以下
Mnは脱酸に有効な元素であり、また、溶接熱影響部に適量のマルテンサイト相を析出させる作用も有しているが、過剰に添加すると、MnSが形成されて耐食性が劣化する。したがって、Mn含有量は、1.0%以下とする。Mn含有量の下限は特に限定しないが、前記の脱酸およびマルテンサイト析出効果を得るために、0.05%以上含有させるのが望ましい。
【0030】
P:0.05%以下
Pは、鋼の溶接性を損なう元素である。したがって、P含有量は低い方が望ましく、0.05%以下とする。
【0031】
S:0.002%を超え0.02%以下
Sは鋼中のTi、Cと結合して化学的に安定なTiの炭硫化物(Ti(C、S))を形成するので、耐食性に有害なMnSの形成が阻害され、耐穴あき性が向上する。また、Sは溶接湯流れ性、切削性を向上させる作用効果を有する。しかしながら、過剰に含有させると、鋼の熱間加工性が劣化する。したがって、S含有量は、0.002%を超え0.02%以下とする。
【0032】
Ni:0.1〜1.0%
前述したように、Niは、Cuと複合添加することにより耐穴あき性を向上させる作用効果を有しており、そのためには、0.1%以上含有させることが必要である。また、溶接熱影響部に適量のマルテンサイト相を析出させるとともに、鋼の強度および靱性の向上にも有効に作用するので、その含有量は多いほど効果的である。しかしながら、過剰に含有させると、鋼が硬質化して加工性が劣化するとともに、コスト増加の要因になる。したがって、Niの含有量は、0.1〜1.0%とする。好ましくは、0.2〜0.8%である。
【0033】
Cr:12〜16%
鋼の耐食性を確保するために、Crは12%以上含有させることが必要であり、Cr含有量が増加するほど耐食性は良好となる。しかし、Cr含有量が増加するにともない、溶接熱影響部に適量のマルテンサイト相を析出させて溶接部の強度低下を補うために必要なNi、Cu等の含有量が増加し、コストアップの要因になる。したがって、Cr含有量は、12〜16%とする。望ましくは12〜15%、より望ましくは13〜15%である。
【0034】
Cu:0.1〜1.5%
前述したように、Cuは、Niと複合添加することにより耐穴あき性を向上させる作用効果を有しており、そのためには、0.1%以上含有させることが必要である。また、Cuは、Niと同様、溶接熱影響部に適量のマルテンサイト相を析出させる作用効果も有する。しかし、1.5%を超えて過剰に添加すると、ε−Cuが析出し、耐穴あき性、耐孔食性が劣化する。したがって、Cu含有量は、0.1〜1.5%とする。好ましくは、0.2〜1.0%である。
【0035】
Ti:0.02〜0.2%
前述したように、Tiは、C、Sと結合して、Ti(C、S)からなる析出物を形成し、MnSの形成を阻害して鋼の耐穴あき性を向上させるとともに、加工性を改善する作用効果を有しており、そのためには、0.02%以上含まれていることが必要である。しかし、過剰に含有させると、溶接部の強度が低下する。したがって、Ti含有量は、0.02〜0.2%とする。好ましくは、0.03〜0.15%である。
【0036】
N:0.03%以下
Nは、加工性、溶接性、耐食性の観点から少ない方がよく、したがって、その含有量は、0.03%以下とする。望ましくは、0.02%以下である。N含有量の下限は特に限定しないが、N含有量の過度の低減によるコスト増加を避け、また、溶接熱影響部に適量のマルテンサイト相を析出させる観点から、N含有量は0.005%以上とするのが好ましい。
【0037】
Ni(%)+Cu(%):0.3%以上
前述したように、NiとCuを複合添加することにより耐穴あき性を向上させることができるが、この効果を発現させるには、NiとCuの含有量がそれぞれ前述した範囲内にあると同時に、両者の合計含有量が0.3%以上であること、すなわち、前記▲1▼式を満たすことが必要である。望ましくは、0.4%以上である。
【0038】
Mn(%)/Ti(%):10以下
前述したように、Mnは、MnSを形成して鋼の耐食性を劣化させる。しかし、Tiの含有量に対するMnの含有量を10以下とすれば、MnSに比べて化学的に安定なTi(C、S)が形成され、耐穴あき性が向上する。したがって、Mn(%)/Ti(%)が10以下であること、すなわち、前記▲2▼式を満たすことが必要である。
【0039】
本発明の構造部材用フェライト系ステンレス鋼の一つ(すなわち、前記(1)に記載のフェライト系ステンレス鋼)は、上記の成分の他、残部はFeおよび不純物からなる鋼である。不純物のうち、O(酸素)は鋼の靱性、溶接性を劣化させるので、0.005%以下に制御するのが好ましい。
【0040】
前記(2)に記載の本発明の構造部材用フェライト系ステンレス鋼は、上述した(1)に記載のフェライト系ステンレス鋼に含まれる成分に加えて、さらに、Mo:0.2〜1.5%、Nb:0.005〜0.1%、V:0.05〜0.5%、Al:0.001〜0.1%、Mg:0.0001〜0.003%、Ca:0.0001〜0.003%およびB:0.0003〜0.003%のうちの1種以上を含有し、残部がFeおよび不純物からなるフェライト系ステンレス鋼である。
【0041】
これらの成分の作用効果とその含有量の限定理由は下記のとおりである。
【0042】
Mo:0.2〜1.5%
Moは、鋼の強度および耐食性を高める作用効果を有しており、この効果を得るためには、0.2%以上含有させることが必要である。一方、過剰に添加すると加工性の劣化を招く。したがって、Moを添加する場合、その含有量は、0.2〜1.5%とする。
【0043】
Nb:0.005〜0.1%
Nbは、鋼の強度と、耐食性、特に溶接部の耐食性を高める作用効果を有する元素で、この効果を得るためには、0.005%以上含有させることが必要である。しかし、過剰の添加はコストの増加を招くので、Nbを添加する場合、その含有量は、0.005〜0.1%とする。
【0044】
V:0.05〜0.5%
Vは、Nbと同様に、鋼の強度と、耐食性、特に溶接部の耐食性を高める作用効果を有する。この効果を得るためには、0.05%以上含有させることが必要である。一方、過剰に添加すると靱性の劣化を招く。したがって、Vを添加する場合、その含有量は、0.05〜0.5%とする。
【0045】
Al:0.001〜0.1%、Mg:0.0001〜0.003%、Ca:0.0001〜0.003%
Al、MgおよびCaはいずれも脱酸に有効な元素であり、その効果を得るためには、Alについては0.001%以上、MgおよびCaについてはいずれも0.0001%以上含有させることが必要である。一方、これらの元素を過剰に添加すると、鋼の靱性が劣化する。したがって、これらの元素を添加する場合、その含有量は、Alについては0.001〜0.1%、Mgについては0.0001〜0.003%、Caについては0.0001〜0.003%とする。
【0046】
B:0.0003〜0.003%
Bは、加工性を改善する作用効果を有する元素で、この効果を得るためには、0.0003%以上含有させることが必要である。しかし、過剰の添加はCr炭化物の析出を促進して耐食性を劣化させるので、Bを添加する場合、その含有量は、0.0003〜0.003%とする。
上述した本発明の構造部材用フェライト系ステンレス鋼を製造するにあたり、特別の方法は必要ではなく、常法にしたがい溶製すればよい。
【0047】
【実施例】
表1に示す化学組成を有する鋼を真空溶解により溶製し、続いて、熱間鍛造、熱間圧延、冷間圧延することにより板厚1.5mmの鋼板を作製した。
【0048】
【表1】
Figure 0004083391
この鋼板に800℃で仕上げ焼鈍を施した後、腐食試験片として、幅70mm、長さ150mmの試験片を採取し、これを用いて乾湿繰り返し試験を実施した。また、JIS Z2201に規定される13B号試験片を、圧延方向と直角方向に採取し、常温で引張試験を行って引張強さおよび破断伸びを測定した。
【0049】
乾湿繰り返し試験は、腐食試験片を600番まで湿式研磨した後、脱脂し、『塩水噴霧(35℃、0.5%NaCl水溶液、2時間)→乾燥(70℃、2時間)→湿潤(50℃、4時間)』を1サイクルとして、90サイクル実施し、試験後の腐食試験片の最大腐食孔深さを測定した。なお、ここに定めた試験条件以外については、JIS Z2371に規定される条件に準じた。
【0050】
表2に、常温引張試験および乾湿繰り返し試験の結果を示す。
【0051】
【表2】
Figure 0004083391
この結果から、供試鋼No.1〜9に示した本発明鋼は、供試鋼No.11に示したSUS430(比較鋼)と同等の耐穴あき性を有し、供試鋼No.10に示したSUS410L(比較鋼)と同等の引張強さおよび伸び(加工性)を有することがわかる。
【0052】
また、Cuの含有量が本発明で規定する範囲から外れる比較鋼No.12および13は、最大腐食孔深さが大きく、耐穴あき性が劣り、Niの含有量が規定範囲から外れる比較鋼No.14は破断伸びが小さく、加工性が劣るものであった。また、Ti含有量が規定範囲に満たない比較鋼No.15は、伸び(加工性)、耐穴あき性のいずれも劣っていた。
【0053】
【発明の効果】
本発明の構造部材用フェライト系ステンレス鋼は、耐食性(耐穴あき性)および加工性に優れており、自動車足回りや建築構造物等の構造部材として好適であるとともに、加工性に優れるため鋼管用素材としても好適である。また、C、P、Sなどの不純物元素の含有量の上限を特に低く定めていないので、比較的安価である。
【図面の簡単な説明】
【図1】13〜14%Cr鋼における耐穴あき性に及ぼすCu、Niの影響を示す図である。

Claims (2)

  1. 質量%で、C:0.03%以下、Si:1.0%以下、Mn:1.0%以下、P:0.05%以下、S:0.002%を超え0.02%以下、Ni:0.1〜1.0%、Cr:12〜16%、Cu:0.1〜1.5%、Ti:0.02〜0.2%およびN:0.03%以下を含有し、かつ、下記▲1▼式および▲2▼式を満足し、残部がFeおよび不純物からなることを特徴とする構造部材用フェライト系ステンレス鋼。
    Ni(%)+Cu(%)≧0.3 ・・・▲1▼
    Mn(%)/Ti(%)≦10 ・・・▲2▼
  2. 質量%で、C:0.03%以下、Si:1.0%以下、Mn:1.0%以下、P:0.05%以下、S:0.002%を超え0.02%以下、Ni:0.1〜1.0%、Cr:12〜16%、Cu:0.1〜1.5%、Ti:0.02〜0.2%およびN:0.03%以下を含有し、かつ、下記▲1▼式および▲2▼式を満足し、さらに、Mo:0.2〜1.5%、Nb:0.005〜0.1%、V:0.05〜0.5%、Al:0.001〜0.1%、Mg:0.0001〜0.003%、Ca:0.0001〜0.003%およびB:0.0003〜0.003%のうちの1種以上を含有し、残部がFeおよび不純物からなることを特徴とする構造部材用フェライト系ステンレス鋼。
    Ni(%)+Cu(%)≧0.3 ・・・▲1▼
    Mn(%)/Ti(%)≦10 ・・・▲2▼
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