JP4069784B2 - 非水系電解液二次電池とその負極材料 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポータブル電子機器等に用いるのに好適な新規な非水系電解液二次電池とその負極材料に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、非水系電解液二次電池の負極には黒鉛質材料を用いられている(例えば、天然黒鉛材料,コークス等を黒鉛化した人造黒鉛等)。しかしながら、黒鉛結晶が発達している天然黒鉛及びコークスを黒鉛化した人造黒鉛は、放電末期において負極側の分極による電圧変化が大きく、過放電を抑制する為に終止電圧を高く設定し、負極材料が有する容量を充分に活用することが困難であった。例えば、電池の放電終止電圧を2.7V と設定した場合、放電終止時の正極の電位を約3.0Vと推定すると、負極の電位としては約0.3Vに達するまでの放電容量が、実質的な電池容量となる。そこで、黒鉛質材料よりリチウムイオンの拡散が早い、非黒鉛質材料との混合負極を用い、放電末期の分極を抑制する手法が提案されている。
【0003】
特許文献1では黒鉛質材料とX線回折で求めた002面の間隔が0.343 〜0.39nm 、結晶子の大きさを示すLcが0.9〜9.9nmを示す炭素質材料を混合する手法が提案されている。また、特許文献2では黒鉛質材料と黒鉛質材料の重量あたりの容量80%以上を有する非黒鉛炭素材料と混合し、負極の分極を抑制する手法などが提案されている。
【0004】
【特許文献1】
特開平6−36760号公報
【特許文献2】
特開平7−192724号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、特許文献1に記載の材料を電池に用いた際には、混合する炭素質材料が黒鉛質材料より、重量あたりの放電容量が低い物質であり、混合して形成された負極を用いた電池では、重量あたりの放電容量が低くなってしまう危険性があった。また、炭素質材料の混合量が30体積%を超えると、分極が大きくなり電池の放電電位が低くなってしまう問題があった。
【0006】
また、特許文献2に記載の材料を電池に用いた際に充電終止時の負極側の電位は、黒鉛質材料と比較して卑になる。しかし、混合する炭素質材料に黒鉛質材料と比較して、重量あたりの放電容量が80%〜90%程度の材料を用いた際に、重量あたりの放電容量が低い電池になってしまう危険性があった。
【0007】
本発明の目的は、放電末期に両極間の電圧低下を緩やかにし、放電容量の優れた非水系電解液二次電池とその負極材料を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、負極活物質に黒鉛質材料と該黒鉛質材料より高い放電容量を有する非黒鉛質材料の混合材料を用いる(但しここで述べる放電容量は、対極を金属リチウムとして、ある電流密度で端子間電圧が0Vに成るまでリチウムをドープし、その後1.5V までリチウムを脱ドープした際の負極材料単位重量あたりの放電量を指す)。それにより、放電末期に両極間の電圧低下を緩やかにし、放電可能な電池容量が向上される。また、非黒鉛質材料の混合量は10体積%より大きく90体積%未満とする。また、非黒鉛質材料は参照極及び対極に金属リチウムを用いて作成したモデル電池評価において、Li基準電位で0Vまで充電後、
1.5Vまで放電した際の初回充放電効率(但しここで述べる初回充放電効率は、対極を金属リチウムとして、一定電流密度で端子間電圧が0Vに成るまでリチウムをドープした負極材料単位重量あたりの充電量Cと、その後1.5V までリチウムを脱ドープした際の負極材料単位重量あたりの放電量Dとの百分率比=(D/C)×100を指す)が85%より高い値を示す材料を用いる。
【0009】
具体的用いる非黒鉛質材料物性としては、X線回折結果より算出される結晶子の厚みを示すLc値が0 . 70以上2 . 20nm未満で、且つラマン分光スペクトルで測定される1300〜1400cm-1範囲の非結晶質乱層構造に由来する振動モードを示すピークの高さ(ID)と1580〜1620cm-1の範囲の黒鉛結晶質構造に由来する振動モードを示すピークの高さ(IG)の比から求められる黒鉛化度R値(ID/IG)が0 . 90以上1 . 20未満、窒素吸着比表面積が2m 2 /g未満であるものを用いることが望ましい。この、物性値を外れると、放電容量が低く成ったりする危険性がある。また、Li基準電位で0Vまで充電後、1.5Vまで放電した際の初回充放電効率85%以下である場合、不可逆容量が大きくなり、電池として過剰な活物質が必要となり重量あたりのエネルギー密度が低下したり、コストが高くなってしまう問題が生じる。
【0010】
本発明により、放電末期に両極間の電圧低下を緩やかにすることが可能になり、0Vまで充電し、例えば0.3V まで放電可能な容量が、黒鉛質材料単体及び非黒鉛質材料単体における評価容量から推算される、予想値以上に優れた特性を示す負極材料を見出した。
【0011】
即ち、本発明は、リチウムの吸蔵放出が可能な正極活物質が集電体箔の両面に形成された正極と、リチウムの吸蔵放出が可能な負極活物質が集電体箔の両面に形成された負極と、リチウム塩を含む非水電解液とを有し、前記正極及び負極がセパレータを介して巻回または積層された非水系電解液二次電池において、前記負極活物質が黒鉛質材料と該黒鉛質材料より高い放電容量を有する非黒鉛質材料の混合材料からなることを特徴とする。
【0012】
従来の黒鉛質材料と非黒鉛質材料の混合負極の評価では、結晶内にリチウムイオンを可逆的にドープ/脱ドープする為の指標として用いられていた002面の面間隔d(002)及び結晶子サイズLcを適正化していた。それに対して本発明の非黒鉛質材料はLc値を最適化し、且つ、リチウムイオンの可逆的にドープ/脱ドープするためのサイトとなる材料表面の黒鉛化度R値が結晶質な性質と炭素質な性質の両面を持ち合わせる適正値にし、更に非黒鉛質材料の比表面積及び充放電効率を適正化することにより、電解液の分解等の副反応を抑制し、活物質界面でのイオンのドープ/脱ドープに伴う電荷移動などに起因する反応分極を抑制し、従来黒鉛質材料と非黒鉛質材料の混合負極と比較して、放電末期に両極間の電圧低下を緩やかにすることが可能になり、0Vまで充電後、例えば負極電位で0.3V まで放電可能な容量が、黒鉛質材料単体及び非黒鉛質材料単体における評価容量から推算される、予想値以上の優れた特性が得られるものである。
【0013】
負極材料を集電体と密着させるために用いるバインダーは、ポリフッ化ビニリデン−6フッ化プロピレン共重合体,エチレン−プロピレン−ジエン共重合体等が好ましい。また非水溶媒としては、プロピレンカーボネート,ジメチルカーボネート1,2−ジメトキシエタン,テトラヒドロフラン等の単体または混合物が好ましい。
【0014】
電解質は、過塩素酸リチウム,六フッ化リン酸リチウム,ホウフッ化リチウム,ビストリフルオロメチルスルホニイミドリチウムなどを用いることが好ましい。
【0015】
本発明の負極材料と組み合わせて使用する正極材料としては、化学式がLiCoO2,LiNiO2,LiMnxNi1-xO2,LiMn2O4,LiMnO2(但しxは
0.001≦x≦0.5の範囲)等が上げられる。
【0016】
【発明の実施の形態】
本実施例で示すバインダー,非水系溶媒,集電体,電解質等は一例であり、本発明は本実施例に示すものには限定されない。
【0017】
(実施例1)
本実施例の非水系電解液二次電池用負極材料の調製方法を以下に示す。実施形態1〜4において非黒鉛質材料としては、セルロース系の先駆体を焼成したものを用いた。焼成方法の一例を以下に示す。まず、前記先駆体を5℃/分の昇温速度で300℃まで加熱し1時間保持後(大気中)、冷却後粉砕する。その後、分級することで70ミクロン以上の粗粒を除去した。分級した粉末を10-2Torrの真空下で700℃まで昇温(5℃/分)して1時間保持後、更に1200℃まで昇温(5℃/分)し2時間保持して調製した。このようにして調製した非黒鉛材料の物性値は、X線回折結果より算出される結晶子の厚みを示すLc値が1nmで、且つラマン分光スペクトルで測定される非結晶質乱層構造に由来するピークの高さ(ID )と黒鉛結晶質構造に由来するピークの高さ(IG )の比から求められる黒鉛化度R値(ID/IG)が0.98、窒素吸着による比表面積は1m2/gであった。また、用いた黒鉛質材料としては、放電容量が360mAh/gで初回の充放電効率が90%である人造黒鉛を用いた。また比較例1〜4は非黒鉛材料として前述の実施形態1と同じ物を用い混合割合を変化させたものである。また、比較例5〜7は原料として前述の実施形態1と同じ物を用い、700℃での保持をなくしAr雰囲気下で焼成したもの、最高到達温度1500℃で10時間保持したもの、最高到達温度900℃としたものをそれぞれ用いた。その他の焼成の詳細条件は実施形態1に準じた。このようにして調整した非黒鉛質材料の物性値,混合割合を表1に示す。
【0018】
【表1】
【0019】
以下にこれらの負極材料を用いて、電極を作成し負極材料特性を評価する手法を示す。まず電極の作成方法を以下に示す。任意の割合で秤量した負極材料にポリフッ化ビニリデン(クレハ製#1120)10重量部と成るように添加して、溶媒として1−メチル−2−ピロリドンを、固形分濃度が45重量部となるように添加して混練する。そうして得たスラリーを集電体である銅箔上に塗布し、
120℃で3時間恒温槽内において乾燥させた。その後、直径15mmに打ち抜き電極とした。
【0020】
以下にテストセルを作製し、負極材料特性を評価する方法を示す。負極材料特性評価に用いたテストセルは、直径が15mmでセパレータとしてはポリプロピレン製多孔質膜を介して対極となるリチウム金属箔(1mm厚)と対向させて配置し、その間に、非水系電解液を充填させた。本実施例で用いた電解液はエチレンカーボネートとメチルエチルカーボネートとの混合溶媒(容量比1:1)に電解質として六フッ化リン酸リチウムを1M溶解させたものを用いた。このようにして調製したテストセルの充放電条件は、以下に示す条件で行った。充電は定電流充電0.5mA(0.284mA/cm2 ),定電圧充電0V,0.05mA で実施し、放電は電流0.5mAでカット電圧0.3Vとした。表1に示す放電容量及び初回充放電効率は、別途作成したテストセルで、前述の充放電条件と同一電流密度とし、放電カット電圧を1.5V とし評価した値である。
【0021】
上記の条件で充放電を行った後に、混合物負極材料単位量あたりの放電容量を算出した。その結果を図1に示す。図1より本発明である混合負極は、黒鉛質材料単独負極及び非黒鉛質材料単独負極の特性評価から推算される値より高い放電量を示し、優れた負極材料であることが確認された。
【0022】
(実施例2)
本発明の非水系電解液二次電池用負極材料を用いたリチウム二次電池の性能評価方法を示す。本実施例で用いた電極及び電池の調製方法を以下に示す。正極は材料としてLiMn2O4を用いた。正極活物質87重量部に導電助剤となる人造黒鉛8.7重量部 ,1−メチル−2−ピロリドンに溶解させたポリフッ化ビニリデン(クレハ製#1120)を固形分で4.3 重量部と成るように混合し、ペーストを作成して集電体であるアルミ箔に両面塗布し、80℃で3時間乾燥させた。その後、プレスして約2.7g/cm3程度の密度とし、120℃で3時間真空乾燥して正極を得た。
【0023】
負極は実施形態1に示す非黒鉛材料に任意の割合で黒鉛材料を混合した材料にポリフッ化ビニリデン(クレハ製#1120)10重量部と成るように添加して、溶媒として1−メチル−2−ピロリドンを、固形分濃度が45重量部となるように添加して混練する。そうして得たスラリーを集電体である銅箔に両面の塗布し、80℃で3時間乾燥させた。その後、プレスして約1.0g/cm3程度の密度とし、120℃で3時間真空乾燥して得た。
【0024】
実施形態5〜8の電池は実施形態1〜4に示す負極材料を用い、また、比較例9〜14の電池は比較例1〜7の負極材料を用いて、前述と同様の手法で電極を作成した。得られた正極及び負極は、ポリエチレン製多孔質膜セパレータ(厚み:0.025mm )と組み合わせて捲回し、外寸法が直径18mm,長さ65mmの電池缶に収納した。用いた電解液は、エチレンカーボネートとメチルエチルカーボネートとの混合溶媒(容量比1:1)に電解質として六フッ化リン酸リチウムを1M溶解させたものを用いた。図2に本試験に用いた電池の一例の一部断面正面図を示す。
【0025】
図2に示す円筒型リチウム二次電池は、薄板状に加工された正極1と同様に加工された負極2がポリエチレン製多孔膜等のセパレータ3を介して重ね合わせたものを捲回し、これを金属製等の電池缶7に挿入し、密閉化されている。正極には正極タブ4を介して正極蓋6に接合され、負極2は負極タブ5を介して電池底部へ接合されている。正極蓋6はガスケット8にて電池缶7へ固定されている。
【0026】
上記のようにして調製した電池の充放電条件は、以下に示す条件で行った。電流500mA一定で、充電停止電圧4.2V ,放電停止電圧2.7V として性能評価を実施した。表2に電池の充放電効率評価結果を示す。本実施例においても実施形態1〜4と同様の傾向を有し、黒鉛質材料単独負極を用いた際の電池の放電容量と、非黒鉛質材料単独負極を用いた際の電池の放電容量から推算される容量より、優れた放電容量を示す二次電池を製造できることが確認された。
【0027】
【表2】
【0028】
【発明の効果】
本発明の負極材料を用いることにより、放電容量特性が優れた非水系電解液二次電池を製造することが可能となり、ポータブル電子機器、等の小型化に寄与できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の負極材料の単極容量特性を示す線図。
【図2】本発明に係る円筒型リチウム二次電池の断面図。
【符号の説明】
1…正極、2…負極、3…セパレータ、4…正極タブ、5…負極タブ、6…正極蓋、7…電池缶、8…ガスケット。
Claims (2)
- 黒鉛質材料と非黒鉛質材料との混合物からなる負極材料において、前記非黒鉛質材料の混合量が10体積%より大きく90体積%未満であって、前記非黒鉛材料の(I D /I G )が0 . 90以上1 . 20未満であり、Lc値が0 . 70nm以上2 . 20nm未満であり、比表面積が2 . 0m 2 /g未満であり、前記非黒鉛材料は、セルロース系の前駆体を真空中で焼成したものであって、前記黒鉛質材料より高い放電容量を有し、且つ、前記非黒鉛質材料は参照極及び対極に金属リチウムを用いて作成したモデル電池評価において、Li基準電位で0Vまで充電後、1.5Vまで放電した際の初回充放電効率が85%より高い値を示す材料であることを特徴とする非水系電解液二次電池用負極材料。
- リチウムの吸蔵放出が可能な正極活物質が集電体箔の両面に形成された正極と、リチウムの吸蔵放出が可能な負極活物質が集電体箔の両面に形成された負極と、リチウム塩を含む非水電解液とを有し、前記負極活物質が黒鉛質材料と非黒鉛質材料の混合材料であり、前記非黒鉛材料の(I D /I G )が0 . 90以上1 . 20未満であり、Lc値が0 . 70nm以上2 . 20nm未満であり、比表面積が2 . 0m 2 /g未満であり、前記非黒鉛材料は、セルロース系の前駆体を真空中で焼成したものであって、前記黒鉛質材料より高い放電容量を有し、前記正極及び負極がセパレータを介して巻回または積層された非水系電解液二次電池において、前記非黒鉛質材料の混合量が10体積%より大きく90体積%未満であり、また、前記非黒鉛質材料は0Vまで充電後、1.5Vまで放電した際の初回充放電効率が85%より高い値を示す材料であることを特徴とする非水系電解液二次電池。
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