JP4069756B2 - 厚膜抵抗体の抵抗値調整方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、厚膜抵抗体の抵抗値を調整する調整方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般的な厚膜抵抗体について図1の概略平面図を参照して述べる。厚膜抵抗体1はAg等からなる一対の電極10、11によって酸化ルテニウム(RuO2)等からなる厚膜抵抗20を電気的に接続してなるものである。
【0003】
このような厚膜抵抗体の抵抗値調整方法としては、従来からレーザトリミング手法が一般的に採用されている。レーザトリミングとは、CO2等のレーザ光を厚膜抵抗20のトリミング部Tに直接照射し、その熱により厚膜抵抗20の一部を溶解・気化させて厚膜抵抗20を削る(焼失させる)ことにより抵抗値を調整する方法である。
【0004】
ここで、図1中には示さないが、厚膜抵抗体1には、温湿度環境下での酸化等による抵抗値変動を防止するために保護ガラス膜を形成する。厚膜抵抗体1の抵抗値調整を保護ガラス膜の形成前に実施すると、保護ガラス膜の形成工程における熱処理の影響で厚膜抵抗体1の抵抗値が変動する。
【0005】
例えば、保護ガラス膜を形成する場合、厚膜抵抗20に保護ガラス成分の拡散が生じたり、保護ガラス膜と厚膜抵抗体1との熱的物性の差から各々の膜内部に歪みを生じる等によって、抵抗値が変動する。そのため、通常は保護ガラス膜の形成後にレーザトリミングを行い、抵抗体の抵抗値調整を行っている。なお、この場合、保護ガラス膜自身も厚膜抵抗体1と一緒に溶解・気化させてトリミングされる。
【0006】
近年、電子装置において高機能化や小型化の要求に対応するものとして、図2に示すように、基板2上に厚膜抵抗体1を形成し、この厚膜抵抗体1の上に層間絶縁ガラス膜等からなる絶縁膜3を形成し、この絶縁膜3を介して厚膜抵抗体1の上に、コンデンサや半導体素子等の部品4を搭載する構造が提案されている。
【0007】
このような構成においては、厚膜抵抗体1の上に絶縁膜3を形成すると、その形成時における熱処理等によって厚膜抵抗体1の抵抗値が大きく変化し、また、そのばらつきも大きいため、高精度な厚膜抵抗体1を得ることは困難である。
【0008】
そのため、この図2に示す構造においても、トリミングによる抵抗値調整が必要となるが、絶縁膜3を形成した後にレーザトリミングを行うと、トリミング部に部品4が搭載できなくなることから、高密度な部品実装が阻害される。また、絶縁確保のため絶縁膜3が厚いことから、絶縁膜3の上からのトリミングでは長時間必要となり、問題である。
【0009】
このようなレーザトリミングによる厚膜抵抗体の抵抗値調整における問題を解決するものとして、電気的負荷を厚膜抵抗体1に加えることにより行う抵抗値調整の手法、いわゆるパルストリミングと呼ばれる手法がある。ここでいう電気的負荷とは電圧、電流である。
【0010】
このパルストリミングは、厚膜抵抗体1の一対の電極10、11間に電圧を印加することで抵抗値を変動させて調整するもので、例えば電圧を印加した場合にその電圧の大きさに依存して抵抗値が変化するという厚膜抵抗体の性質を利用したものである。
【0011】
具体的には、あらかじめ印加電圧と抵抗値変化量との関係を確認しておき、抵抗値調整時に、抵抗値調整を行う厚膜抵抗体1の抵抗値を測定し、その値から変化させたい抵抗値の変化量を求め、この値に応じて印加する電圧値を選択し、厚膜抵抗体1に印加することで所望する抵抗値を得るものである。
【0012】
このパルストリミングによれば、レーザトリミングにてトリミングが困難な上記図2に示すような構造であっても、厚膜抵抗体の抵抗値調整が容易に可能であり、且つ厚膜抵抗体上の絶縁膜を焼失しないため、部品搭載への影響もない。
【0013】
このようなパルストリミングを用いた厚膜抵抗体の抵抗値調整方法は、従来では、例えばサーマルヘッド用の厚膜抵抗体に適用されており、サーマルヘッドのドット間の抵抗値ばらつきを解消できるとされている(例えば、特許文献1〜6参照。
【0014】
【特許文献1】
特開平4−339667号公報
【0015】
【特許文献2】
特開昭62−92410号公報
【0016】
【特許文献3】
特開昭62−92411号公報
【0017】
【特許文献4】
特開昭62−92412号公報
【0018】
【特許文献5】
特開昭62−92413号公報
【0019】
【特許文献6】
特開昭62−92414号公報
【0020】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者らは、上述のパルストリミングによる厚膜抵抗体の抵抗値調整について、次のような検討を行った。図3はこの検討に用いた厚膜抵抗体1の概略平面図である。
【0021】
この厚膜抵抗体1は、アルミナ等からなる絶縁基板上に形成したもので、Ag系厚膜導体からなる一対の電極10、11によって酸化ルテニウム(RuO2)からなる厚膜抵抗20を電気的に接続してなる。厚膜抵抗体1の厚膜抵抗20は平面が略長方形であり、その幅Wは2.0mm、その長さLは4.0mmとした。
【0022】
そして、抵抗値は、一方の電極10と他方の電極11との間に電流を流したときの同一部間の電圧値により求められる。ここでは、従来のパルストリミングと同様に、一方の電極10をグランド電位、他方の電極11を正電位として電圧を印加し、そのときの抵抗値変化を調べた。その結果を図4、図5に示す。
【0023】
図4は、印加電圧の大きさ(単位:kV)と電圧印加前の初期抵抗値に対する抵抗値変化量(単位:%)との関係を調べた結果を示す図である。また、図5は、印加電圧の大きさを変えた場合に、印加回数と抵抗値変化量との関係を調べた結果を示す図である。なお、一回の電圧印加時間は、限定するものではないが、本例では15μsecである。
【0024】
図4は、一回の電圧印加にて調べたものであるが、この結果から、電圧の大きさに依存して抵抗値が変化することが確認された。このことは、上記従来のパルストリミングにおいても知られていることである。
【0025】
また、図5の結果によれば、一定電圧を複数回印加したとき、印加回数に対して抵抗値は変化していくものの、一回目の印加に対する抵抗値変化量は大きいが、2回目以降はその変化量は小さく、且つ回数を重ねる毎にその変化量は減少していくことがわかった。
【0026】
これらの検討結果から、従来のパルストリミングを用いた厚膜抵抗体の抵抗値調整では、一定電圧を複数回印加することにより抵抗値の調整は可能ではあると考えられるが、著しく多い印加回数が必要であり、トリミングに長時間を要するために生産性の低下が避けられないという問題が生じることがわかった。
【0027】
また、短時間でトリミングを行うためには比較的高い電圧を印加する必要がある。しかしながら、他の電気素子への影響等から回路構成上高い電圧を印加できない場合には、最悪、電圧印加による抵抗値調整が困難になる状況が発生するという問題も生じる。
【0028】
本発明は、上述した本発明者らが検討した結果、見出された従来のパルストリミングに対する問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、パルストリミングを用いて厚膜抵抗体の抵抗値を調整するにあたって、印加電圧が制限される場合であっても短時間で所望の抵抗値まで変化させられるようにすることにある。
【0029】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、電圧印加による抵抗値変動が、どのように起こっているのかを詳細に調査検討した。
【0030】
ここで、検討は、上記「課題」の欄にて述べた検討と同様の要領で行った。上記図3に示す厚膜抵抗体1において、上記図5に示した印加電圧20kV且つ印加回数100回の試験条件とし、この条件にて図6に示すような厚膜抵抗体1の各部▲1▼、▲2▼、▲3▼、▲4▼、▲5▼、▲6▼、▲7▼間の抵抗値を電圧印加前後で比較した。
【0031】
図7は、その結果を示したもので、電圧印加時において正極側に近い厚膜抵抗20の部分すなわち図7中の▲5▼〜▲7▼の間の厚膜抵抗部分における抵抗値が大きく変化していることがわかる。このことから、以下のことが推定される。
【0032】
印加電圧に対して、正極側に位置する厚膜抵抗20の部分の抵抗値変動が大きい。また、電圧印加方向が同じである限り、多数回の電圧印加を行ったとしても負極側の厚膜抵抗20の部分すなわち図7中の▲1▼〜▲5▼の間の厚膜抵抗部分における抵抗値変動は少ない。
【0033】
したがって、電圧印加による抵抗体トリミング手法すなわちパルストリミングにおいて、他素子への影響を懸念し、なるべく低電圧印加にて、抵抗値を変化させようとすると、正極側の厚膜抵抗20の部分の抵抗値変化を多く出現させてやることが必要となる。
【0034】
本発明は上記検討結果に基づいてなされたものであり、請求項1に記載の発明では、一対の電極(10、11)によって厚膜抵抗(20)を電気的に接続してなる厚膜抵抗体(1)に対して、前記一対の電極間に電圧を印加することで抵抗値を変動させて調整するパルストリミングによる厚膜抵抗体の抵抗値調整方法において、前記一対の電極に対して第1の方向に電圧を印加することにより前記厚膜抵抗の抵抗値を変動させる第1の工程と、続いて、前記一対の電極に対して前記第1の方向とは反対の第2の方向に電圧を印加することにより前記厚膜抵抗の抵抗値を変動させる第2の工程とを有することを特徴とする。
【0035】
それによれば、第1の工程において、一対の電極(10、11)の正極側に位置する厚膜抵抗(20)の部分が大きく抵抗値変動する。次に、第2の工程において、第1の工程では負極側に位置していた厚膜抵抗(20)の部分が正極側となるため、当該部分が大きく抵抗値変動する。
【0036】
このように、本発明によれば、同一極性にて継続して電圧を印加する従来のパルストリミングに比べて、各工程における印加電圧を小さくすることができ、また、トータルの印加回数も少ないものにできる。
【0037】
よって、本発明によれば、パルストリミングを用いて厚膜抵抗体の抵抗値を調整するにあたって、印加電圧が制限される場合であっても短時間で所望の抵抗値まで変化させることができる。また、このようなパルストリミングによれば、厚膜抵抗体(1)の上に絶縁膜(3)を形成した後に、抵抗値調整を行うことも可能である。
【0038】
また、請求項3に記載の発明では、一対の電極(10、11)によって厚膜抵抗(20)を電気的に接続してなる厚膜抵抗体(1)に対して、一対の電極間に電圧を印加することで抵抗値を変動させて調整するパルストリミングによる厚膜抵抗体の抵抗値調整方法において、厚膜抵抗体において一対の電極以外の厚膜抵抗の中間部に、第3の電極(12)を設けておき、一対の電極のうち一方の電極(10)をグランド電位、他方の電極(11)を正電位として、一対の電極に対して電圧を印加することにより、厚膜抵抗の抵抗値を変動させる第1の工程と、続いて、一対の電極のうち一方の電極(10)をグランド電位、第3の電極(12)を正電位として、一方の電極(10)と第3の電極(12)に対して電圧を印加することにより、厚膜抵抗の抵抗値を変動させる第2の工程とを有することを特徴とする。それによれば、第3の電極(12)を設けることで、厚膜抵抗(20)の中間部を正極側に近い部分とすることができる。つまり、本発明者らが見出した、正極側に近い厚膜抵抗(20)の部分が抵抗値変化が大きいという知見から、第3の電極(12)を用いた電圧印加によって大きな抵抗値変化を得ることができる。なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【0039】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を図に示す実施形態について説明する。本実施形態に用いる厚膜抵抗体は、上述した図2、図3に示したものと同様のものにできる。重複する部分もあるが、本実施形態の厚膜抵抗体について、図2、図3を参照して述べる。
【0040】
図2に示すように、本実施形態の厚膜抵抗体1は、アルミナ等からなる絶縁基板としての基板2の上に形成されたものである。そして、本実施形態における電子装置は、この厚膜抵抗体1の上に層間絶縁ガラス膜等からなる絶縁膜3を形成し、この絶縁膜3を介して厚膜抵抗体1の上に半導体素子やコンデンサ等の部品4を搭載した構造とすることができる。
【0041】
本実施形態の厚膜抵抗体1は、Ag、Au、Cu等からなる一対の電極10、11によって酸化ルテニウム(RuO2)等からなる厚膜抵抗20を電気的に接続してなる。その作り方は、例えば基板2の上にAg系厚膜導体ペーストを印刷・焼成して電極10、11を形成し、次に、酸化ルテニウム系厚膜抵抗体ペーストを印刷・焼成して厚膜抵抗20を形成するものである。
【0042】
このような厚膜抵抗体1に対して、本実施形態ではパルストリミングによる抵抗値調整を採用することで、図2に示すような部品4まで搭載した後にでも、抵抗値調整を行うことができる。
【0043】
その調整方法は、一対の電極10、11に対して第1の方向に電圧を印加することにより厚膜抵抗20の抵抗値を変動させる第1の工程と、続いて、一対の電極10、11に対して第1の方向とは極性が反対の第2の方向に電圧を印加することにより厚膜抵抗20の抵抗値を変動させる第2の工程とを有するものである。
【0044】
このような調整方法を採用した根拠は、次に述べるような検討結果に基づくものである。この検討に用いた本実施形態に係る厚膜抵抗体1は、図3に示すものである。
【0045】
図3に示す厚膜抵抗体1は、アルミナ等からなる絶縁基板上に形成したもので、Ag系厚膜導体からなる一対の電極10、11によって酸化ルテニウム(RuO2)からなる厚膜抵抗20を電気的に接続してなる。厚膜抵抗体1の厚膜抵抗20は平面が略長方形であり、ここでは、その幅Wは2.0mm、その長さLは4.0mmとした。
【0046】
このような構成を有する厚膜抵抗体1において、一方の電極10と他方の電極11との間に電流を流したときの同一部間の電圧値により、厚膜抵抗体1の抵抗値を求めることができる。
【0047】
そして、従来のパルストリミングと同様に、一方の電極10をグランド電位、他方の電極11を正電位として電圧を印加し、印加電圧の大きさを変えた場合に、印加回数と抵抗値変化量との関係を調べた。なお、一回の電圧印加時間は、限定するものではないが、本例では15μsecである。その結果が上記図5に示される。
【0048】
この図5に示す結果によれば、一定電圧を複数回印加したとき、印加回数に対して抵抗値は変化していくものの、一回目の印加に対する抵抗値変化量は大きいが、2回目以降はその変化量は小さく、且つ回数を重ねる毎にその変化量は減少していくことがわかった。
【0049】
このような現象に基づいてさらに検討を進めた。すなわち、上記図3に示す厚膜抵抗体1において、上記図5に示した印加電圧20kV且つ印加回数100回の試験条件とし、この条件にて図6に示すような厚膜抵抗体1の各部▲1▼、▲2▼、▲3▼、▲4▼、▲5▼、▲6▼、▲7▼間の抵抗値変化について調査した。
【0050】
図6では、グランド電位である一方の電極10を部分▲1▼とし、厚膜抵抗20の中央部を部分▲4▼とし、正電位である他方の電極11を部分▲7▼としている。そして、各部分の間▲1▼と▲2▼、▲2▼と▲3▼、▲3▼と▲4▼、▲4▼と▲5▼、▲5▼と▲6▼、▲6▼と▲7▼の間における厚膜抵抗20の部分の抵抗値を求めた。
【0051】
抵抗値は、図6中の各部間に電流を流した時の、電圧降下にて求めた。
【0052】
図7は、図6における厚膜抵抗20の各部間の抵抗値を電圧印加前後にて調べた結果を示す図である。この結果から、電圧印加時において正極側に近い厚膜抵抗20の部分すなわち図7中の▲5▼〜▲7▼の間の厚膜抵抗部分における抵抗値の変化が大きいことがわかる。このことから、以下のことが推定される。
【0053】
印加電圧に対して、正極側に位置する厚膜抵抗20の部分の抵抗値変動が大きい。また、電圧印加方向が同じである限り、多数回の電圧印加を行ったとしても負極側の厚膜抵抗20の部分すなわち図7中の▲1▼〜▲5▼の間の厚膜抵抗部分における抵抗値変動は少ない。
【0054】
したがって、電圧印加による抵抗体トリミング手法すなわちパルストリミングにおいて、他素子への影響を懸念し、なるべく低電圧印加にて、抵抗値を変化させようとすると、正極側の厚膜抵抗20の部分の抵抗値変化を多く出現させてやることが必要となる。
【0055】
そこで、上記「課題」の欄にて述べた検討と同様の要領で、次のような検討を行った。第1の工程として、図3に示す一方の電極10に15kVの正電位電圧を1〜100回印加した。この一対の電極10、11に対する電圧印加方向を第1の方向とする。
【0056】
続いて、第2の工程として、図3に示す他方の電極11に15kVの正電位電圧を1〜100回(トータル回数としては101〜200回)印加した。この一対の電極10、11に対する電圧印加方向を第2の方向とする。そして、これら第1および第2の工程を行ったときの抵抗値変化量を調べた。
【0057】
その結果を図8に示す。図8に示すように、第1の工程では、一方の電極10からの正電位電圧の印加による印加回数と抵抗値変化量との関係は、上記図5に示す従来の調整方法と同様の変化傾向を示しており、回数の増加に対して徐々に抵抗値変化量は小さくなっていく。
【0058】
このような変化傾向を示す中で、第2の工程すなわち正電位電圧の印加を他方の電極11から継続して行うと、一方の電極10から正電位電圧を印加したときと同様の大幅な抵抗値変化が得られ、印加回数に依存した抵抗値変化を再度得ることが可能であることが確認された。
【0059】
このような検討結果を根拠として、本実施形態では、一対の電極10、11に対して第1の方向に電圧を印加することにより厚膜抵抗20の抵抗値を変動させる第1の工程と、続いて、一対の電極10、11に対して第1の方向とは極性が反対の第2の方向に電圧を印加することにより厚膜抵抗20の抵抗値を変動させる第2の工程とを有する調整方法を採用している。
【0060】
その効果は、上述した検討結果から明らかではあるが、第1の工程において、まず、一対の電極10、11の正極側に位置する厚膜抵抗20の部分が大きく抵抗値変動し、次に、第2の工程において、第1の工程では負極側に位置していた厚膜抵抗20の部分が正極側となって当該部分が大きく抵抗値変動する。
【0061】
このように、本実施形態によれば、同一極性にて継続して電圧を印加する従来のパルストリミングに比べて、各工程における印加電圧を小さくすることができ、また、トータルの印加回数も少ないものにできる。
【0062】
具体的には、従来のパルストリミング方法である上記図5における印加電圧15kVの結果と、本実施形態の方法の効果を示す上記図8(印加電圧:15kV)の結果とを比較すれば、本実施形態の効果は明らかである。
【0063】
すなわち、従来(図5参照)では、15kVの同一極性の電圧印加を100回以上継続しても、抵抗値変化量は5%〜6%程度で飽和するのに対し、本実施形態では、電圧印加の極性を変えることにより、10%近くまで抵抗値変化量を大きくすることができている。
【0064】
以上述べてきたように、本実施形態によれば、パルストリミングを用いて厚膜抵抗体の抵抗値を調整するにあたって、印加電圧が制限される場合であっても短時間で所望の抵抗値まで変化させることができる。
【0065】
(他の例)
ここで、上記実施形態に示した抵抗値調整方法を導き出した検討結果に基づく他の抵抗値調整方法の例を図9、図10に示しておく。
【0066】
これら図9、図10に示す方法では、厚膜抵抗体1において一対の電極10、11以外に、厚膜抵抗20の中間部に第3の電極12を設けている。この第3の電極12は、回路から電気的に独立したトリミング専用の電極である。
【0067】
図9では、例えば上記図2に示す基板2の上に、一対の電極11、12および第3の電極12を同一材料にて形成し、その上に厚膜抵抗20を形成したものである。一方、図10では、基板2の上に厚膜抵抗体1を形成し、その上にフォトリソグラフ技術等を用いて、絶縁膜3と第3の電極12とを選択的に形成するものである。
【0068】
そして、図9、図10に示す方法では、まず、図中の印加方向Aに示すように、一対の電極10、11に対して第1の方向に電圧を印加することにより厚膜抵抗20の抵抗値を変動させる第1の工程を行う。
【0069】
具体的には、一方の電極10をグランド電位、他方の電極11を正電位として電圧印加を行う。続いて、図中の印加方向Bに示すように、同じく一方の電極10をグランド電位、この第3の電極を正電位として電圧印加を行う。
【0070】
このように第3の電極12を設けることで、厚膜抵抗20の中間部を正極側に近い部分とすることができる。つまり、本発明者らが見出した、正極側に近い厚膜抵抗20の部分が抵抗値変化が大きいという知見から、この例においても、第3の電極12を用いた電圧印加によって大きな抵抗値変化を得ることができる。
【0071】
その結果、本例においても、同一極性にて継続して電圧を印加する従来のパルストリミングに比べて、各工程における印加電圧を小さくすることができ、また、トータルの印加回数も少ないものにできる。そして、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。特に、図10に示す例では、絶縁膜3を形成した後であっても、適切にトリミングを行うことができる。
【0072】
なお、この図9、図10に示すような第3の電極を用いた方法では、第3の電極の位置は厚膜抵抗20の中間部であれば任意であり、また、第3の電極の数は複数個あっても良い。
【図面の簡単な説明】
【図1】一般的な厚膜抵抗体の概略平面図である。
【図2】厚膜抵抗体を有する電子装置の一例を示す概略断面図である。
【図3】本発明の実施形態に係る厚膜抵抗体の概略平面図である。
【図4】パルストリミングにおいて印加電圧と抵抗値変化量との関係を調べた結果を示す図である。
【図5】パルストリミングにおいて印加電圧の大きさを変えた場合に、印加回数と抵抗値変化量との関係を調べた結果を示す図である。
【図6】厚膜抵抗体における抵抗値変化の詳細確認部位を示す図である。
【図7】図6における厚膜抵抗の各部間の抵抗値変化を調べた結果を示す図である。
【図8】本発明の実施形態の抵抗値調整方法の具体的な効果を示す図である。
【図9】上記実施形態に示した抵抗値調整方法に基づく他の抵抗値調整方法の例を示す図である。
【図10】上記実施形態に示した抵抗値調整方法に基づくもう一つの他の抵抗値調整方法の例を示す図である。
【符号の説明】
1…厚膜抵抗体、10、11…一対の電極、20…厚膜抵抗。
Claims (3)
- 一対の電極(10、11)によって厚膜抵抗(20)を電気的に接続してなる厚膜抵抗体(1)に対して、前記一対の電極間に電圧を印加することで抵抗値を変動させて調整するパルストリミングによる厚膜抵抗体の抵抗値調整方法において、
前記一対の電極に対して第1の方向に電圧を印加することにより前記厚膜抵抗の抵抗値を変動させる第1の工程と、
続いて、前記一対の電極に対して前記第1の方向とは反対の第2の方向に電圧を印加することにより前記厚膜抵抗の抵抗値を変動させる第2の工程とを有することを特徴とする抵抗値調整方法。 - 前記厚膜抵抗体(1)の上に絶縁膜(3)を形成した後に、前記抵抗値調整を行うことを特徴とする請求項1に記載の抵抗値調整方法。
- 一対の電極(10、11)によって厚膜抵抗(20)を電気的に接続してなる厚膜抵抗体(1)に対して、前記一対の電極間に電圧を印加することで抵抗値を変動させて調整するパルストリミングによる厚膜抵抗体の抵抗値調整方法において、
前記厚膜抵抗体において前記一対の電極以外の前記厚膜抵抗の中間部に、第3の電極(12)を設けておき、
前記一対の電極のうち一方の電極(10)をグランド電位、他方の電極(11)を正電位として、前記一対の電極に対して電圧を印加することにより、前記厚膜抵抗の抵抗値を変動させる第1の工程と、
続いて、前記一対の電極のうち前記一方の電極(10)をグランド電位、前記第3の電極(12)を正電位として、前記一方の電極(10)と前記第3の電極(12)に対して電圧を印加することにより、前記厚膜抵抗の抵抗値を変動させる第2の工程とを有することを特徴とする抵抗値調整方法。
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