JP4068662B2 - イオン浸透装置 - Google Patents
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Description
発明の詳細な説明
本発明は、対象(又は患者)に活性成分を経皮投与するためのイオン浸透装置(dispositif d’ionophorese)に関し、その装置は、可逆的複合材電極を備えた少なくとも1つの電極アセンブリを含む。本発明は、さらに前記電極アセンブリに関する。
【0002】
多くの病気についての現行の治療において、制御された方法で且つしばしば持続性のある方法によって薬剤または他の活性成分を対象に投与する必要がある。製薬者が利用可能な膨大な技術の中で、イオン浸透の技術は、医薬物質などの活性成分を対象の体に投与するのを制御するのに優れた代替法を示す。このような技術の1つは、対象の皮膚を通して量のみならず活性成分の送達速度をも制御する為に電流の使用を包含する。多くの場合、電流なしに送達された量と比較して、この技術は、電流によって活性成分の供給を著く増加させるのに高い有効性を有することが判明した。
【0003】
対象にイオン浸透により活性成分を経皮投与することは、少なくとも部分的にイオン化された形態または中性形態で活性成分を含む水溶液または水性ゲルで開始して、一方では、活性電極と呼ばれ、投与されるべき活性成分のイオンと同じ極性、または活性成分が中性である場合には正の極性を示し、且つ、活性成分を含み対象の皮膚の第一の領域と接触して配置されている貯蔵容器(element reservoir)に接触した第1の電極と、他方ではもどり電極(contre−electrode)または受動電極と呼ばれ、活性成分に関連した極性と反対の極性を有し、直接または無関係電解質を介して、対象の皮膚の第1の領域から分離されている第2の領域と接触して設置されている第2の電極との間で電気信号を印加することにより、一般的に行われる。電極間に電圧をかけることにより発生する電流が上記の様に形成された回路中を通過する間、活性成分のイオンが、対象の皮膚および組織を通して同じ極性の電極(活性電極)から、反対の極性の電極(もどり電極)に向けて移動し、その結果、対象の循環系中を通る。同様に、活性成分の中性分子は、対象の皮膚および組織を通して陽極から陰極(もどり電極)に向かう水性の電気浸透流にのって運ばれ、そして中性分子もまた対象の循環系中を通る。
【0004】
対象に活性成分を経皮投与するための1つのイオン浸透装置は、第1電極アセンブリと第2電極アセンブリと電気信号発生器を含むタイプである。上記第1電極アセンブリは活性電極と呼ばれる第1電極で構成され、該第1電極は、一方で活性成分を少なくとも部分的にイオン化された形態もしくは中性形態で保持する電解質を含むために、そして他方で対象の皮膚のある領域と接触して設置される場合に前記第1の電極と前記領域との間のイオン伝導の連続性を確保するために、適合させた活性貯蔵容器と接触している。上記第2電極アセンブリは、(i)もどり電極と呼ばれる第2の電極、または好ましくは、(ii)貯蔵容器と接触している第2の電極で構成され、前記貯蔵容器は、電解質を保持するために、そして対象の皮膚の一部と接触して設置される場合に、前記第2の電極と前記皮膚の一部との間のイオン伝導の連続性を確保するために配置される。上記電気信号発生機は、第1の電極が活性成分のイオンと同じ極性となるか、または前記活性成分が中性である場合には陽極性となる様に且つ、第2の電極の極性が第1の電極の極性と反対となる様に上記第1の電極と第2の電極のそれぞれに接続することができる。
【0005】
医薬品貯蔵容器に電気信号をかけることを企図するイオン浸透用電極は、活性成分の経皮通過を促進するために以下の条件:−電気信号発生器との間の接続部位に印加された電位が、貯蔵容器の全表面に、そして皮膚と接触している全表面に均一に分配されるための優れた電気伝導性を有する;
【0006】
−電気化学的可逆性を有する、即ち、過電圧活性がなく、電解質との副反応がなく特に、医薬貯蔵容器の実際の特性により、および/または発汗を介して常に存在する水の電気分解を防止し、更に腐食しない;
に合致しなければならない。
【0007】
長年の間、電気化学者は、生物学的プローブとしてまたは可逆的イオン浸透電極として、塩化物、例えばHCl、NaClまたはその他を豊富に含む水溶液中でアノード酸化についての常套の電気化学工程にしたがって銀製の膜、ワイヤーまたはグリッドの直接塩素化により特に得られる銀/塩化銀(Ag/AgCl)電極を使用している。塩素化により得られたこれらの電極は、電気化学的観点からは満足するものであるが、しかしそれらは、以下の欠点を示す。
【0008】
−塩化物の優れた品質のデポジッションを得ることが望まれる場合、電気化学的塩素化は、まさしく遅く、そして問題がある。それは連続工程にはあまり適合せず、且つ、信号発生器に可能な永続的接触ソケットを作るために挿入することが望まれる複雑な形の非塩素化領域の製造にはあまり適合しない。
【0009】
−所望の水準に、一般におよそ0.5mg/cm2〜16mg/cm2に、すなわち電極1cm2当たり0.1〜3mAh(0.36〜10.8クーロン)の電気量の通過を起こす水準に塩素化すること、および十分な機械的強度を有する電極を製造することの両方のために、多量の過剰の銀金属が必要である。−塩化銀の量が、1cm2当たりおよそ2ミリアンペアー−時間に対応する1cm2当たりおよそ10mgを超過するとすぐに、その支持体への塩化銀の付着はとても弱くなり、この塩化銀は、最小の機械的ストレスで支持体から剥がれた状態になり、電極を不可逆性にする可能性がある。
【0010】
−電極が陰極として使用される場合、Ag/AgCl界面で優先的に還元が起こり、アセンブリの密着をさらに弱め、塩化銀が消耗するよりはるかに前にこの電極を不可逆性にしてしまうので、当初に形成された塩化銀の電気化学的使用は、ほんの一部である。
【0011】
電極は各イオン浸透処理で使い捨てであることにより、費用がかかる。塩素化銀のフィルムに基づく電極は、優れた再生産性にとって基礎となる過剰の金属銀及び塩化銀による材料費のために、そしてそれらの製造の非連続性および製造方法が必然的にゆっくりとした方法であるために高価である。前記製造方法は、AgClの優れた品質のデポジッションのためには、銀の塩素化が、一般に1cm2当たり5mAより少ない低い電流密度で行われなければならないためゆっくりと行なわれねばならない。
【0012】
例えば銀および/または塩化銀に基づく複合材電極を含有する、イオン浸透用の電極アセンブリは公知である。前記電極アセンブリは、一方では結合した電極が、活性電極である場合、少なくとも部分的にイオン化された形態もしくは中性形態で活性成分を保持する電解質を含有するためか、または結合した電極がもどり電極としてのみ働く場合、無関係電解質を含有するために、そして他方では対象の皮膚のある領域と接触して設置される場合に、前記複合材電極と前記領域との間のイオン伝導の連続性を確保するために、適合させた貯蔵容器に接触している。複合材電極は、重合体バインダー、そしてそのバインダーの容量に対して、その重合体バインダー内に導電性ネットワークを形成する5%〜40%の導電性フィラー、特にカーボンブラックまたはグラファイト繊維、および電気化学的酸化または還元により消費可能な5%〜40%の電気化学的酸化または還元可能な材料(matiere divisee)からなる組成物で形成される。このような電極アセンブリおよびそれらを含むイオン浸透装置は、特に文献WO−A−9116944に記述される。電極アセンブリの電極は、アノードとして作用することが企図されているとき、電気化学的に消費可能な材料は、酸化により消費され、そして、Ag、Zn、Cu、Ni、Sn、Pb、FeまたはCrのような電気化学的に酸化できる材料を含み、金属Ag、ZnおよびCuは、さらに特に好ましい。電極アセンブリの電極は、カソードとして作用することが企図されているとき、電気化学的に消費可能な材料は、還元により消費され、そして、一般的にイオン化できる金属化合物を含み、その金属イオンは電気化学的に還元できる。これらの金属化合物の中で、ハロゲン化銀およびヘキサシアノ鉄酸塩およびハロゲン化銅、そして特にはAgClおよびCuClが有利であると言及されうる。複合材電極の重合体バインダーを構成できる重合体はポリアルケン、ポリイソプレン、ポリ(酢酸ビニル)、エチレン/酢酸ビニル共重合体、ポリアミド、ポリウレタン、ポリ(塩化ビニル)、セルロース重合体、ポリオキシエチレンまたはアクリル酸の重合体のようなものでありうる。エチレン/酢酸ビニル(「EVA」と略記)共重合体は好ましい共重合体である。
【0013】
支持体上にデポジットした、電気化学的に消費できる材料(例えば、銅、亜鉛、銀のような金属および/またはCuClまたはAgClのような金属塩)のフィルムから成るイオン浸透電極について、文献WO−A−9116944に記載された対応する複合材電極は、著しく向上した機械的特性を有する。これらの複合材電極は、優れた可撓性を示し、使用の間に複合材電極層の剥離または裂傷も観察されない。さらに、複合材電極を製造するために使用される電気化学的に消費しうる材料は、電極の機械的強度を確保することを目的とした過剰の電気化学的に消費しうる材料、特に過剰の金属を有する必要がもはやないので(前記機械的強度は、重合体バインダーにより提供される)、対応する非複合材のイオン浸透電極を形成するために使用される材料より少なく、その結果、材料費用が減少する。
【0014】
イオン浸透に使用される常套の可逆性電極に対するそれらの利点にもかかわらず、文献WO−A−9116944で提供される複合材電極は、まだ多数の不都合を示す。特に、100μm未満の厚み、すなわち2mA−時間未満の容量、を有するような複合材電極を製造するのが困難である。さらに、これらの複合材電極は、実質的には反転しえない。「反転可能な電極」は、本発明にしたがって、イオン浸透処理の間の極性の1度または複数回の変化から生じる複数回の酸化と還元のサイクルを越えて使用できる電極を意味すると理解される。さらに、溶媒経路を介したスプレッディング技術により前記複合材電極を得ることは、非常に困難であるか、またはEVA重合体バインダーの場合には、実質的には不可能である。
【0015】
重合された形態で、モル基準で60%〜100%の1,2−エポキシプロパン、およびモル基準で40%〜0%の1,2−エポキシプロパンと共重合可能な1種もしくは複数の他のモノマーを含有する特定の重合体で前記電極の重合体バインダーを構成することにより、文献WO−A−9116944で記載されたタイプのイオン浸透の複合材電極の欠点を克服することが可能であることが見いだされた。
【0016】
重合体バインダーが1,2−エポキシプロパンをベースとする上述の特定の重合体からなる前記複合材電極は、文献WO−A−9116944の複合材電極の利点に加えて、とりわけ、すばらしい反転可能性を示し、さらにそれらは、100μm未満の厚さ、すなわち2mA−時間未満の容量、を有する電極を得ることを可能にする、溶媒経路によるスプレッディング技術を伴う製造に高度に適合する。
【0017】
したがって、本発明の対象は、上述の1,2−エポキシプロパンをベースとする重合体からなる重合体バインダーを含有する可逆性複合材電極を具備した少なくとも1つの電極アセンブリを含む改善されたイオン浸透装置であり、本発明は、前記電極アセンブリにも関係する。
【0018】
本発明の、活性成分を対象に経皮投与するためのイオン浸透装置は、第1電極アセンブリと第2電極アセンブリと電気信号発生器を含む型のものであって、前記第1電極アセンブリは活性電極と呼ばれる第1電極で構成され、該第1電極は、一方で活性成分を少なくとも部分的にイオン化された形態、または中性形態で保持する電解質を含むために、そして他方で対象の皮膚のある領域と接触して設置される場合に前記第1の電極と前記領域との間のイオン伝導の連続性を確保するために、適合させた活性貯蔵容器と接触しており、上記第2電極アセンブリは、(i)もどり電極と呼ばれる第2の電極、または好ましくは、(ii)貯蔵容器と接触している第2の電極で構成され、該貯蔵容器は、少なくとも電解質を保持するために、そして対象の皮膚の一部と接触して設置される場合に、第2の電極と前記皮膚の一部分との間のイオン伝導の連続性を確保するために配置され、上記電気信号発生機は、第1の電極が活性成分のイオンと同じ極性を有するか、または前記活性成分が中性である場合には陽極性を有する様に、且つ、第2の電極が第1の電極のものと反対の極性を有する様に、前記第1の電極と第2の電極のそれぞれに接続することが可能であり、上記、活性貯蔵容器に接触している第1の電極および/または貯蔵容器に接触している第2の電極は、重合体バインダーおよび前記バインダーの体積による%として4%〜60%の電気化学的に非消費性の粉末または繊維状の導電性フィラーおよび4%〜100%の電気化学的酸化または還元により消費可能な材料を含む組成物から形成された複合材電極から成り、そして複合材電極のまたは複数の複合材電極の各々の重合体バインダーが、1,2−エポキシプロパンをベースとする少なくとも1種の重合体を含有し、且つ、モル%で、60%〜100%の1,2−エポキシプロパン、並びに1,2−エポキシプロパンと共重合可能な40%〜0%の1種または複数の他のモノマーを含有するという点で特徴づけられる。
【0019】
本発明は、また、複合材電極を含有するイオン浸透用電極アセンブリに関し、前記複合材電極は、一方では、少なくとも部分的にイオン化された形態もしくは中性形態で活性成分を保持する電解質または無関係電解質である電解質を含有するために、そして他方では対象の皮膚のある領域と接触して設置される場合に、前記複合材電極と前記領域との間のイオン伝導の連続性を確保するために、適合させた貯蔵容器に接触しており、且つ、該複合材電極は重合体バインダーおよび、前記バインダーの体積で4%〜60%の電気化学的に非消費性の粉末または繊維状の導電性フィラーおよび4%〜100%の電気化学的酸化または還元により消費可能な材料からなる組成物から形成され、そして前記アセンブリは、複合材電極の重合体バインダーが1,2−エポキシプロパンをベースとする少なくとも1種の重合体を含有し、且つ、モル%で、60%〜100%の1,2−エポキシプロパン、並びに1,2−エポキシプロパンと共重合可能な40%〜0%の1種または複数の他のモノマーを含有することで特徴づけられる。
【0020】
複合材電極の重合体バインダーを構成する1種又は複数のポリマーがその中から選択される、1,2−エポキシプロパン(1,2−プロピレンオキシドとしても知られる)をベースとする重合体は、さらに詳細には75%〜100%の範囲の1,2−エポキシプロパンのモル含有量を示す。前記1,2−エポキシプロパンをベースとする重合体は、さらに特定的には1,2−エポキシプロパン単独重合体であるか、あるいは、1,2−エポキシプロパンと1,2−エポキシブタンとのランダム共重合体、逐次共重合体、または、1,2−エポキシプロパンと(i)4員以上の環である環状オキシド、および(ii)式
【0021】
【化3】
[式中、RはR1基またはCH2−O−R2−R1基であり、ここで、R1は水素原子を表わすか、またはC3〜C12、好ましくはC3〜C6のアルキル、もしくはC2〜C12、好ましくはC2〜C6のアルケニル基を表わし、R2は、式−(CH2−CH2−O)p−(ここでpは0〜10、好ましくは0〜4の範囲の数を示す)で表されるポリエーテル基を表す。]
で表される環状オキシドから形成された群から選択された1種または複数の環状モノマーとのランダム結合を有する共重合体である。
【0022】
環に4員以上を含有する環状オキシド(i)の中で、オキセタン、テトラヒドロフラン、ジオキソラン、ジオキサンおよびそれらの置換誘導体、特にメチルまたはエチルのようなC1〜C4アルキル基に置換されたものを挙げることができる。式
【0023】
【化4】
で表される環状オキシド(ii)の中で、Rが水素原子またはプロピル、ブチル、−CH2OCH3または−CH2OCH2−CH=CH2基を表するものを挙げることができる。
【0024】
複合材電極のバインダーを構成する1,2−エポキシプロパンおよび/または1,2−エポキシブタンをベースとする重合体は、それが上述で定義の単独重合体であるかまたは共重合体である場合、架橋されうる。架橋は、例えば遊離基の化学的発生剤、特にペルオキシド、アゾビスニトリル、硫黄またはポリスルフィドの作用から生じ得、あるいは、電離放射線、例えばγ−放射線の作用から、あるいは、トリイソシアナートまたはAl、Zn、Mg、Cd、Sn、BおよびTiから選択される多価元素の化合物の作用から生じうる。
【0025】
非架橋状態で、複合材電極のバインダーを形成するのに使用される1,2−エポキシプロパンをベースとする1種または複数の重合体は、10,000と106の間、そしてさらに詳細には30,000〜500,000の範囲の数平均分子量を有する。
複合材電極の組成物の一部を形成する電気化学的に非消費性の導電性フィラーは、特にカーボンブラック、グラファイトまたはホウ素のような少なくとも1つの生成物から形成される導電性材料からなる。前記フィラーおよび特に前記材料が、100μm未満、そして好ましくは50μm未満の粒子サイズを有利に有する粉末の形態で、または1μm〜15μmの範囲の直径および50〜1000の範囲の同じ単位で表される長さの直径に対する比を有利に有する短繊維で提供される。
【0026】
重合体バインダーと、そして電気化学的に消費されない導電性フィラーと組み合せて使用される電気化学的に消費される材料は、電極がアノードとして働くことが企図されている場合は電気化学的酸化により消費できる材料であり、または電極がカソードとして働くことが企図されている場合は電気化学的還元により消費できる材料でなければならない。電気化学的酸化により消費できる材料は、有利には、Ag、Zn、Cu、Ni、Sn、Pb、FeまたはCrのような電気化学的に酸化可能な金属から選択される金属であり、該金属はAg、ZnおよびCuであるのが好ましい。電気化学的還元により消費できる材料は、有利には、電気化学的に還元可能な金属イオンを与えるイオン化可能な金属化合物を含有し、前記金属化合物は、特にハロゲン化銀またはヘキサシアノ鉄酸塩、またはハロゲン化銅および特にはAgClまたはCuClである。電気化学的に消費可能な材料は、例えばAgCl/Ag対の場合のように、電気化学的に金属に還元可能な金属イオンを与える金属のイオン化可能化合物と前記金属とから成る対を含有することもできる。
【0027】
複合材電極が、電気化学的酸化により消費可能な材料のみを含有すると、アノードとして作動する第1のサイクル後反転可能になるのみである。複合材電極の消費可能な材料が、電気化学的還元により消費できるのみである場合は、前記電極は、カソードとして作動する第1のサイクル後反転可能になるのみである。複合材電極の消費可能な材料が、金属塩/金属対、例えばAgCl/Ag対からなる場合、該電極はアノードとしてまたはカソードとして区別なしに最初から作動できる。
【0028】
複合材電極に含まれる電気化学的に消費可能な材料は、粉末の形態で提供され、その粒子サイズは都合よくは100μm未満であり、好ましくは50μm未満である。特に電気化学的に消費可能な材料の粉末は、ポリ様式の粒子サイズ分配を示し、即ち、粒子サイズの異なる少なくとも2種の粉末の混合物からなり、前記粒子サイズの各々は、100μm未満、そして好ましくは50μm未満の粒子サイズ範囲である。
【0029】
電気化学的に消費可能な材料の機能と導電性フィラーの機能をと組み合わせた二重機能性材料を形成するために、導電性フィラー上に電気化学的に消費可能な材料をデポジッションさせ、その後複合材電極を形成するために、前記二重機能性材料を重合体バインダーに組み込むことを想定することは可能である。したがって、複合材電極を形成するために、電気化学的酸化により消費される金属でコーティングしたカーボンまたはグラファイト繊維を製造し、得られたコーティングされた繊維を重合体バインダーに組み込むことが可能であろう。
【0030】
複合材電極を形成するために重合体バインダーと結合させる電気化学的に非消費性の導電性フィラーと電気化学的に消費可能な材料の割合は、重合体バインダーの体積基準で、導電性フィラーについては4%〜60%、そしてさらに詳細には8%〜45%、電気化学的に消費可能な材料については4%〜100%、そして好ましくは25%〜70%である。
【0031】
本発明にしたがって使用される複合材電極は、重合体バインダーを含む薄いフィルムを得るための任意の技術により、そして特に塗料の塗布にたとえることが可能な技術である支持体フィルム上にコーティングする技術を用いることにより製造できる。この様にして、皮膚に適用して使用するのに十分に適している平らで柔軟で薄い複合材の電極が得られる。
【0032】
前記コーティング技術において、複合材電極、電気化学的に非消費性である導電性フィラーおよび電気化学的消費可能な材料の重合体マトリックスを構成することが企図される、1,2−エポキシプロパンおよび/または1,2−エポキシブタンをベースとする重合体を上記で規定した範囲内の適当な比率で含有する流動相を最初に調製し、その後前記流動相の層を支持体上にコーティングによりデポジッションさせ、前記層は、冷却後、および/または揮発性材料の蒸発後、複合材電極を構成する。
【0033】
1,2−エポキシプロパンをベースとする重合体が、作業温度で、複合材電極の他の成分との流動性混合物を形成するのに十分に流動性であれば、そのような混合物は、コーティングにより支持体上に層のデポジッションをするために使用されうる。
【0034】
複合材電極層がそれから支持体上にコーティングにより形成されるものである流動相は、1,2−エポキシプロパンをベースとする重合体用の溶媒中に該重合体を溶解させた溶液中に導電性フィラーおよび電気化学的に消費可能な材料の分散質を都合よく含有する。溶媒経路によるコーティングのこの技術により、100μm未満、例えば、10μmと100μmの間の厚みの複合材電極を容易に得ることが可能である。
【0035】
複合材電極の重合体マトリックスは、流動相からコーティングにより支持体上に複合材電極層をデポジッションさせる間に都合により架橋してもよい。上で示したとおり、この架橋は、架橋剤、例えば遊離基の化学的発生剤、トリイソシアナートまたは上で記載したとおりの多価元素化合物を、コーティングに用いる流動相中に含ませるか、または支持体上にデポジッションした流動相の層を電離放射線の作用にかけることにより行われうる。
【0036】
活性成分の所定総量を対象に経皮投与することを可能にする本発明によるイオン浸透装置の1実施態様では、1つの電極アセンブリの電極は、限定量の電気化学的に消費可能な材料を含む本発明による複合材電極である、限定複合材電極と称される特定の複合材電極を形成するためにアレンジされる。前記限定量は、その電気化学的消費に必要な電気量が、対象に所定総量の活性成分を投与するのに必要とされる電気量に相当する様に選択され、その結果、限定複合材電極の消費可能な材料が消費された場合、電極間の電流の流れは実際に中断される。
【0037】
本発明によるイオン浸透装置で、単一の電極アセンブリ、好ましくは活性成分を含むアセンブリのみ、本発明による可逆性複合材電極を具備させることが可能であり、他方の電極アセンブリは、非複合材可逆性電極または不可逆性電極、例えばカーボン、グラファイト、プラチナ、チタンまたはステンレス鋼から製造された電極さえも具備しうる。しかし、イオン浸透装置の各電極アセンブリが、本発明による複合材電極を具備することが好ましく、その場合、電極アセンブリの一方が、アノードとして最初に作動するために適合させた複合材電極、即ち、電気化学的酸化により消費可能な材料のみを当初含有する複合材電極を具備し、そして電極アセンブリの他方がカソードとして当初作動するために適合させた複合材電極、即ち、電気化学的還元により消費可能な材料のみを当初含有する複合材電極を具備する。イオン浸透装置の各電極アセンブリが、電気化学的に消費可能な材料の対を当初含有する本発明による複合材電極を具備するケースを想定することも可能であり、その場合、第1の材料は酸化により消費可能であり、第2の材料は還元により消費可能であって、電気化学的酸化により第1の材料は第2の材料に、そして電気化学的還元により第2の材料は第1の材料に変換される、このような対は例えばAg/AgClである。この場合に、各電極アセンブリの電極は、その極性が陽性または陰性であるかにより、アノードまたはカソードとして当初に作動できる。
【0038】
電気発生機は、イオン浸透装置の電極の間に電気信号を印加し、該電気信号は、強度差信号(signal intensiometrique)、即ち、設定平均強度、例えば一定の信号[定強度信号(signal intentiostatique)]、または好ましくは電位差信号(signal potentiometrique)、即ち、設定平均電圧、例えば一定の信号[定電位信号(signal potentiostatique)]であり得る。定強度型または定電位型の電気信号は、継続式またはパルス式、そして永続式または断続式であり得、一時的極性反転を伴うことも、伴わないことも可能である。電気信号の周波数は、0〜500kHzの範囲、さらに詳細には0〜100kHzでありうる。
【0039】
都合よく、イオン浸透装置の2つの電極、すなわち、活性電極およびもどり電極の間にかけられた電気信号の平均電圧は、0.1と50ボルトの間、さらに特には0.5と20ボルトの間から選択され、その結果前記電極の間で発生される平均電流の密度は、5mA/cm2未満、さらに特には1mA/cm2以下の値を有する。
【0040】
イオン浸透装置の電気信号発生器は、継続式またはパルス式、そして永続式または断続式、且つ一時的極性反転を伴うかまたは伴なわない、設定平均強度または設定平均電圧の上記で定義された特徴を有する電気信号を発生させる任意の既知タイプのものであり得る。
【0041】
活性複合材電極と接触する活性貯蔵容器中に存在する電解質は、有利には、粘着性もしくは非粘着性の水溶液または水性ゲルを含み、少なくとも部分的にイオン化した形態または中性形態で投与する活性成分を保持する。同様に、都合によりもどり電極に接触している無関係電解質は、少なくとも部分的に、粘着性もしくは非粘着性の水溶液または水性ゲルの形態で提供される。これらの水溶液またはゲルは、活性貯蔵容器中に存在する電解質の全て、または無関係電解質の全てを構成できるか、あるいは、前記電解質の一部のみを形成でき、その場合電解質の残部を形成する非水性媒体中に分散させてもよく、該非水性媒体は、電極と皮膚との間のイオン伝導の連続性を中断しない様に、そして電極と皮膚との間の接着性の質を向上するために選択される。これらの水溶液または水性ゲルは、イオン浸透技術でよく知られているとおり得られる。水性ゲルのまたは濃厚水溶液の例は、特に文献US−A−4764164およびUS−A−3163166に別々に記載される。
【0042】
活性成分を保存する水性媒体及び無関係電解質を構成する水性媒体は、前記電解質が使用される場合、必要であれば、種々の添加剤、そして暗黙の限定なしに、アルコール型またはエステル型の化合物で代表される、例えば血管拡張剤および/または両親媒性剤のような特に活性成分の経皮通過を促進する能力のある剤を保持できる。
【0043】
イオン浸透装置での本発明による複合材電極の使用は、活性成分を保持する水性媒体のpH並びに無関係電解質を構成する水性媒体のpHを制御することを可能にし、もはや緩衝剤を使用する必要がないので、外来のイオンを、活性成分を保持する水性媒体から皮膚に導入するのを防止するかまたは少なくとも非常に著しく減少することを可能にする。
【0044】
本発明によるイオン浸透装置は、少なくとも活性成分を保持する活性貯蔵容器と接続した電極、そして好ましくは活性電極およびもどり電極を本発明による複合材電極に置き換える様に修正された、任意のイオン浸透装置で出発して製造され得る。適切なら、本発明によるイオン浸透装置の複合材電極は、限定電極を構成するために上述のとおりアレンジされうる。
【0045】
特に、本発明による装置は、少なくともその内の1つが本発明による複合材電極であり、各々は50cm2未満、さらに詳細には1cm2と40cm2の間の面積を有する電極および小型化電気信号発生器を含有し、ブレスレットにより固定されるか、または場合により皮膚の上に固着される携帯用自給式装置であってよい。したがって、本発明による自給式携帯用装置は、少なくとも活性成分を保持する活性貯蔵容器に接続された活性電極が本発明による重合体バインダーを含有する複合材電極であって、且つ、該自給式携帯用装置の電極(その内の1つは限定電極を構成する様にアレンジされうる)の各々が、50cm2未満、さらに詳細には1cm2と40cm2の間の面積を有するという条件で、例えば文献US−A−4325367、US−A−4557723、EP−A−0060452およびFR−A−2509182に記載された自給式携帯用のイオン浸透装置のものと同様の構造を有しうる。
【0046】
イオン浸透装置の複合材電極の各々が、例えば、その製造の完了時に電極を貫通するとにより機械的に製造されるか、または文献WO−A−9116944で示されるとおり製造の後半の間に水溶性ポロジェニック剤(agent porogene)を電極に取り込むことにより製造された複数のマイクロチャンネルにより厚みの方向に貫通されうる。複合材電極中のこれらのマイクロチャンネルの存在は、電極と結合した貯蔵容器を非水和状態で製造し、前記チャンネルを通して水を通過させることにより前記貯蔵容器の連続水和を可能にする。
【0047】
イオン浸透装置の電極アセンブリを接着剤の手段により皮膚に密着させるときは、皮膚と接触するようになることを意図した各電極アセンブリの貯蔵容器の面またはその面を取り囲む領域にイオンを保持する接着剤の層を具備させることにより行うことができる。
【0048】
本発明によるイオン浸透装置を用いて、種々の活性成分、特に、例えばインスリン、メトプロロール、ヒドロコドン、テトラサイクリン、スルブタモール、バルプロ酸(acide valproique)、プロパノロール、アルギニン−デスモプレシン、デスモプレシンまたはその他のような治療用分子を対象に経皮投与できる。さらに一般的に、本発明によるイオン浸透装置を用いて対象に経皮的に投与されうる活性成分としては、文献WO−A−9116944の15−16頁に記載された種々の生成物または化合物が挙げられる。
【0049】
本発明は、暗黙の限定なしに、以下の実施例により例示される。
【0050】
実施例1
イオン浸透装置中のカソードとして使用されうる4系列の電極を製造した。すなわち、1系列は、1,2−エポキシプロパン単独重合体からなるバインダーを含む本願発明の複合材電極(1A型の電極)であり、2つの系列は、対照複合材電極であって、一方はポリイソブテンからなるバインダーを含み(1B型の電極)、そして他方はEVA共重合体からなるバインダーを含み(1C型の電極)、そして最後の系列は塩素化された銀のフィルムからなる非複合材電極(1D型の電極)である。
【0051】
電極は、以下に記載されるとおり製造された。
【0052】
溶媒経路により製造された1A型の電極
5μmと50μmの間の粒子サイズを示す3.34gの塩化銀粉末、0.335gのカーボンブラック、すなわちシェルキミー(Shell Chimie)から販売されるアセチレンブラックYS、および8.83gのエタノール中の15重量%の1,2−エポキシプロパン単独重合体(ポリ[1,2−オキシプロピレン])(前記単重合体は、およそ100,000の数平均分子量を示す)、および6〜10mmの直径を有する少量のスチールボールが、50mlのボールミルのステンレススチールチャンバーに導入された。
【0053】
1時間粉砕した後、およそ500μmの湿潤厚みをスプレッディングするのを可能にする目盛補正されたドクタを使用することにより、80μmの厚みを示すポリエステルフィルムにスプレッディングされた均質化ペーストを得た。
【0054】
通風乾燥機で乾燥させた後、接着性で可撓性のある乾燥デポジットが、支持フィルムの変形に対して高度に耐性を示すポリエステルフィルム上で得られた。支持体の上にデポジットしたコーティングは、9.425mg/m2のグラメージ(grammage)、すなわち1.18mAh/cm2の通過により銀に還元され得る1cm2当たり6.29mgの塩化銀であった。1,2−エポキシプロパン単独重合体、塩化銀およびカーボンブラックを含有する組成物をベースとするデポジットでコーティングされたフィルムは、A型の電極の製造に使用された。
【0055】
これを行うために、5cmの長さと3cmの幅を示す長方形をそのコーティングフィルム、すなわち上述のデポジットでコーティングされたフィルム、から切り離した。3cmの側面当たりの長さを示し、その中心部に四角形の中心に16mmの直径の円形開口部(即ち、面積2cm2)を有する、四角形の粘着性絶縁プラスチック製フィルムを、四角形の側辺が長方形の側辺エッジに一致するように各長方形のコーティング面に結合した。銀をベースとする導電性ワニスを、信号発生器と電極の接続を促進するために四角形により境界を定められた外側コーティング部分に塗布された。
【0056】
溶媒経路により製造された1B型の電極
5μmと50μmの間の粒子サイズを示す3.442gの粉末形態の塩化銀、0.5μmと30μmの間の粒子サイズを示す0.343gのグラファイト粉末、および12.36gのヘキサン中の35重量%のポリイソブテン、そのポリイソブテンはおよそ150,000の数平均分子量を示すものであり、そして6〜10mmの直径を示す少量のスチールボールが、50mlのボールミルのステンレススチールチャンバーに導入された。
【0057】
1時間粉砕した後、およそ300μmの湿潤厚みをスプレッディングするのを可能にする補正されたドクタを使用することにより、80μmの厚みを有する、ポリエステルフィルム上にスプレッディングされた均質化ペーストを得た。
【0058】
通風乾燥機で乾燥させた後、支持フィルムに優れた接着性を示し、そして支持フィルムの変形に対し、剥離されたり、または引き裂いたりすることなく順応する乾燥デポジットが、ポリエステルフィルム上で得られた。支持体の上にデポジットしたコーティングは、10.42mg/cm2のグラメージ、すなわち1.2mAh/cm2の通過により銀に還元され得る1cm2当たり6.95mgの塩化銀であった。
【0059】
電極は、1A型の電極の実施例に示されたとおり、得られたコーティングフィルムから製造された。
【0060】
溶媒経路により製造された1C型の電極
5μmと50μmの間の粒子サイズを示す3.44gの塩化銀粉末、および0.343gのアセチレンブラックYSを、ボールミルを保持する50mlのステンレススチールチャンバーを使用することによりキシレン中で1時間共に粉砕した。得られた混合物を、その後80℃に維持しつつキシレン中のエチレン/酢酸ビニル共重合体(EVA共重合体)の10重量%溶液に添加し(該共重合体は、8重量%の酢酸ビニルを含有し、およそ70,000の数平均分子量を有する)、混合物をプロペラを使用して80℃で均質化した。
【0061】
およそ600μmの湿潤厚みをスプレッディングするのを可能にする目盛補正されたドクタを使用することにより、得られたペーストを80μmの厚みでポリエステルフィルムに80℃でスプレッディングした。
【0062】
通風乾燥機で乾燥させた後、均質であるが、支持体にほどんど接着性を示さず、屈曲により剥離するコーティングがポリエステルフィルム上で得られた。支持体の上にデポジットした前記コーティングは、9.93mg/cm2のグラメージ、すなわち1.24mAh/cm2の通過により銀に還元され得る6.634mg/cm2の塩化銀であった。
【0063】
電極は、1A型の電極について上で記載されるとおり、製造されたコーティングフィルムから製造された。
【0064】
1D型の電極
1A、1Bまたは1C型の複合材電極と同じ立体配置を示す非複合材電極は、上述の複合材電極の製造の際に使用されるコーティングポリエステルフィルムを電気化学的に塩化物化された銀のフィルムに置き換えることにより製造された。その内の面の1つは、絶縁性の接着性プラスチック製フィルムによりマスクされた。
【0065】
電気化学的にデポジッションさせた塩化銀フィルムは、15μmの厚みを示し、1.25mAh/cm2に等しい電気量に対応する塩化銀の量を含んだ。
【0066】
銀フィルムの電気化学的な塩化物化を行うために、直流電流を、共に1N塩酸浴に浸漬された銀フィルムとグラファイトロッドとの間を通過させ、前者は直流電流の発生器の陽極に接続されており、そして後者は負極に接続され、電流を、5mA/cm2に等しい電流密度で15分間通した。
【0067】
上述で記載されるおとりに得た種々の電極を容量評価試験にかけた。
【0068】
電極の真の容量を評価するために、試験されるべき各電極は、1重量%の水性NaCl溶液を含有する平行六面体の容器の形態のセル内に、前記溶液中に深さ2.5cmまで浸漬され、その結果2cm2に等しい電気化学的に活性な面積を示すように導入した。試験されるべき電極と同様の構造及び面積を有するが、電極1Dに示されたとおり、2mAh/cm2に等しい量の塩化銀を含有するために、電気化学的酸化により塩化物化された銀のシートから構成される相補的電極も、試験されるべき電極と同じ深さに水溶液中に浸漬した。試験されるべき前記電極および相補的電極を、それぞれ、一定強度の電流を供給する直流電流発電機の極の内の1つに接続した。ミリアンペア計及び電量計を電流発電機に直列に配置し、試験されるべき電極および相補的電極の末端の電位の差を測定するように、ミルボルト計を配列した。
【0069】
イオン浸透の電気信号の皮膚耐性の研究では、イオン浸透処理の間に多数回、電流の方向を逆転することは非常に有用であることが示された。その結果、試験されるべき各タイプの電極の容量は、0.25mA/cm2の電流密度で順行方向で、そしてその後逆方向で首尾よく評価された。
【0070】
試験されるべき電極が不可逆になる前の、即ち、電位超過(300mVの領域で)を起こし、容器内pHの上昇の原因となる水の電気分解を起し始める前の各サイクルで順行方向(カソードとして作動する)および逆方向(アノードとして作動する)における観察された逐次的容量、カソードとして作動(カソードサイクル)するかまたはアノードとして作動(アノードサイクル)する各サイクルの継続時間、変化した総継続時間及び総容量を以下の表Iに示した。
【0071】
【表1】
【0072】
表Iに照合される結果を比較すると、複合材電極の製造に関しての本発明によるバインダー(上記では1,2−エポキシプロパン単独重合体である)の主な利点が強調される。実際、理論的容量を使用する水準は、それ自身は単位面積当たりにデポジットした塩化銀の量に関連するが、ポリイソブテンまたはEVA共重合体バインダーを含む複合材電極のものより、または塩化物化された銀からなる非複合材電極のものより顕著に高い。逆方向で使用できる容量、即ち、電流逆転の間可逆的に作動を続ける能力、についても同様であり、それは、上記の場合本発明によるバインダーが、ポリイソブテンまたはEVE共重合体のような他のバインダーより顕著に優れて機能する複合材電極に帰着する。後者の重合体は、おそらくその結晶性のために溶媒経路により複合材電極を製造するのに特に適切でないことが観察された。後者の重合体が塩化銀粒子を十分に結合する時間を経る前に、ペーストをスプレッディングする間に該重合体の沈殿が起こった。
【0073】
種々の複合材電極の材料費は実質的に同じであるが、許容しうる機械的強度を維持するために半分未満の銀しか塩化物化されず、その結果使用される銀フィルムが、10〜25mg/cm2の量の銀(電気化学的工程には影響しないが、複合材電極に比較して電極のコストを3倍にし、且つイオン浸透電極が1度しか使用されないことで完全に失なわれてしまう)に相当する少なくとも10μmから15μmの厚さを有することを必要とする塩化物化された銀からなる非複合材電極(1D型の電極)とは同じではないことも強調すべきである。
【0074】
実施例2
2系統の混合複合材電極、換言すれば、アノードまたはカソードの区別をせずに使用できる複合材電極を溶媒経路で製造した。すなわち1系統は、本発明による複合材電極であって、1,2−エポキシプロパンとアリルグリシジルエーテルの共重合体からなるバインダーを含有し(2A型の電極)、そしてもう1つの系統は対照複合材電極であって、ポリイソブテンからなるバインダーを含有した(2B型の電極)。
【0075】
電極は、以下のとおり製造された。
【0076】
2A型の電極
エタノール中の1,2−エポキシプロパンとアリルグリシジルエーテルとの共重合体(該共重合体は2モル%のアリルグリシジルエーテルを含有し、そしておよそ100,000の数平均分子量を示す)の15重量%の溶液25.4g、並びに0.965gのアセチレンブラックYS、5μmと50μmの間の粒子サイズを示す5.35gの塩化銀粉末、および5μmと50μmの間の粒子サイズを示す8.06gの銀粉末を、50mLのボールミルのステンレススチールチャンバーに投入した。6〜10mmの直径を示す少数のステンレス鋼ボールも、そのチャンバーに投入し、その後前記チャンバーはおよそ半時間振動条件下に置いた。
【0077】
300μmに調整したドクタを用いて、80μmの厚みで得られた懸濁物をポリエステルフィルム上にスプレッディングさせた。製造されたコーティングは、塗料の外観を示し、通風乾燥機での乾燥後、ポリエステル支持体フィルムによく接着し、そしておよそ50μmの厚みを示す複合材デポジットの黒く、柔軟で均質化したフィルムが得られた。この複合材デポジットは、12.32mg/cm2のグラメージを示し、1.3mAh/cm2に相当するアノードとして使用できる量の銀を含み、0.65mAh/cm2に相当するカソードとして使用できる量の塩化銀を含んだ。
【0078】
複合材デポジットでコーティングされたポリエステルフィルムから、実施例1の1A型の電極の立体配置および寸法を有する電極を製造し、該電極は上記実施例1に示されたとおり組立てた。
【0079】
2B型の電極
2A型の電極を製造するために指示されるおとに製造を行ったが、しかし、1,2−エポキシプロパンとアリルグリシジルエーテルとの共重合体の溶液を実施例1に使用されたポリイソブテンの35重量%のヘキサンの溶液11gに換え、ポリエステルフィルム上でのスプレッディングに使用されたドクタは250μmに調整した。
【0080】
乾燥後、製造されたコーティングは、ポリエステル支持フィルムに接着し、およそ45μmの厚みを示す複合材デポジットの黒く、均質で、柔軟なフィルムになった。この複合材デポジットは、14.2mg/cm2のグラメージを示し、1.56mAh/cm2に相当するアノードとして使用できる量の銀を含み、0.78mAh/cm2に相当するカソードとして使用できる量の塩化銀を含んだ。
【0081】
2つの型の電極の比較サイクル
各電極が2cm2の電気化学的に活性な領域を示す、2A型または2B型の2つの電極を、実施例1の電極の評価のために使用したセルに類似し、1重量%のNaCl水溶液を充填したセルに浸漬し、そしてそのセルの2つの電極を、30分毎に電流の方向を逆転させながら、前記電極の間に0.5mAの直流電流(各々の方向に、各電極について0.125mAh/cm2の電流量の通過に対応する)をかけるシステムに接続した。セルの中心に浸漬されたプローブは媒質のpHを測定することおよび記録することを可能にし、電極の末端に配置されたミリボルト計は、セルの末端に現れる電位差を観測するのを可能にした。
【0082】
A型の電極を具備したセルでは、pHでの異常な変化やサイクル終了時の電位差の上昇は8時間の間で、すなわち、8つの完全なサイクルおよび電流の方向での14の逆転の間観察されなかった。
【0083】
B型の電極を具備したセルでは、これらの電極は、A型の電極のものよりわずかに多い理論的容量を有するにもかかわらず、極性の3番目の変化の前においても電位差の上昇が観察され、4番目のサイクルの途中から、即ち、第2の作動時間の終了の前から、pHの急速な低下が観察された。
【0084】
実施例3
イオン浸透装置中のカソードとして使用されうる2つの系列の電極が溶融経路で製造された。すなわち、1つの系列は、本発明による複合材電極であって、1,2−エポキシプロパン単独重合体からなるバインダーを含み(3A型の電極)、もう1つの系列は対照複合材電極であって、EVA共重合体からなるバインダーを含んだ(3A型の電極)。
【0085】
電極は、以下に記載されるとおり製造された。
【0086】
3A型の電極
およそ180,000の数平均分子量を示す1,2−エポキシプロパン単独重合体23.5g、その後8μmの直径および6mmの平均長を示す未分級の炭素繊維20.3g、そして最後に5μmと50μmの間の粒子サイズを示す塩化銀粉末62.6gを、120℃に維持したブラベンダー(BRABENDAR)混合機(米国、ニュージャージー、サウス ハッケンサックのブラベンダーインストルメンツ(Brabender Instruments,Inc.)の50mLチャンバーに投入した。この様に製造された混合物を混合機で20分間均質化した後混合機から取り出して小分し、それらを2つのポリ(エチレンテレフタレート)フィルムの間で成形した。前記成形は、液圧で行われ、その温度は、120℃に調整し、そして圧力は2トンに調整した。
【0087】
緩和の期間をはさんで、2トンで5回圧力サイクル後、複合材生成フィルムを得、その厚みは、80μmの範囲内であり、そのグラメージは19.11mg/cm2に等しく、カソードとして使用できる塩化銀の量は、2.1mAh/cm2に相当するものであった。
【0088】
上記複合材生成フィルムから、その一方の面は絶縁性の接着性プラスチック製フィルムでマスクして、1A型の電極の立体配置および寸法を示す電極を作り、該電極は、実施例1に示されるとおり組み立てた。
3C型の電極
3A型の電極を製造するために指示されたとおり製造を行ったが、しかし1,2−エポキシプロパン単独重合体を実施例1に使用されたエチレンと酢酸ビニルとの共重合体(EVA共重合体)の同量に換え、混合機のチャンバーを135℃に調整し、成形プレスの温度を165℃に調整した。
【0089】
緩和の期間をはさんで、5回圧力サイクル後、複合材生成フィルムを得、その厚みは、95μmの範囲内であり、そのグラメージは22.8mg/cm2に等しく、カソードとして使用できる塩化銀の量は、2.5mAh/cm2に相当するものであった。
【0090】
上記複合材生成フィルムから、その一方の面は、絶縁性の接着性プラスチック製フィルムでマスクして、1A型の電極の立体配置および寸法を示す電極を作り、製造方法、実施例1に示されるとおりだった。
【0091】
カソードとしての、及びサイクル時のカソードとしての電極の使用水準の比較
実施例1に記載される手段を使用して、カソードとして使用される3A型および3C型の複合材電極の容量を、水の電気分解に関連した現象が現れる前に、すなわち、セルの末端での電位差の上昇およびセル中のpHでの実質的な変動が現れる前に、電極の単位面積当たりに通過できる電流の最大量を測定することで評価した。電極3Aおよび3Cの各型の容量は、0.3mA/cm2に等しい定電流密度、各電極の電気化学的に活性な領域2cm2において試験した。
【0092】
カソードとして作動する各サイクル後観察される容量、並びにカソードとしてまたはアノードとして作動する各サイクルについて観察される最大継続時間、変換総継続時間、総変化容量および総変化容量の%は、以下に表IIで示される。
【0093】
【表2】
【0094】
表IIの結果の考察から、3A型および3C型の電極の能力が第1使用時間の間は同様であるが、本発明によるバインダー(1,2−エポキシプロパン単独重合体)を使用する電極3Aのサイクル性は、従来技術にしたがったバインダー(EVA共重合体)を使用する3C型の電極のものに極めて著しく勝っていることが示されており、これは本発明によるバインダーが従来技術にしたがったバインダーよりより極めて優れた能力を有することを意味する。
【0095】
さらに、本実施例の結果を、実施例1のものと比較する場合、溶媒経路によって得られた本発明による複合材電極(電極1A)が、特にサイクル性に関して、溶融経路によって得られた本発明による複合材電極に勝っていることも分かる。
【0096】
電流の単一方向で、及び処理機関中に電流の方向の頻繁な逆転をともなって使用できる電極の同じ容量について、イオン浸透装置に使用できる複合材電極のための本発明による重合体バインダーは、従来技術の重合体バインダー、特にポリイソブテンまたはEVA共重合体に非常に勝っている。この優越性は、1.5mAh/cm2未満の理論的容量に相当する薄い複合材電極を得ることを可能にする技術である、溶媒経路によって上記電極が得られる場合、さらに明白である。
【0097】
実施例4
その内の1つが1A型または1C型の複合材電極である電極を使用したイオン浸透により、バルプロ酸ナトリウムの経皮的拡散を試験した。
【0098】
同一の構造のイオン浸透セルで作業が行われた。各イオン浸透セルは、同軸上に隣接する断面積2cm2の3つの円筒形の区画、すなわち順に、供与区画、受容区画およびもどり電極区画から構成された。この3つの区画は以下の区画から各々、そして漏れのない方法で、経皮拡散試験のための膜として使用されるヌードラット(OFA hr/hr)の皮膚の一片により分離された。0.5mLの容積を有する供与区画は、10重量%のバルプロ酸ナトリウム溶液を含有した。10mLの容積を有する受容区画は、500重量ppmのNaN3が添加され、そして磁石棒を用いて攪拌された生理学的塩の溶液を含有した。供与区画と同一なもどり電極区画は、2重量%のNaClと500重量ppmのNaN3を含有する水溶液0.5mLを含有する。受容区画と対峙する末端で、供与区画には、その状況にしたがって、実施例1にしたがう2cm2の活性面積を有する1A型または1C型の複合材電極が具備された。もどり電極区画には、実施例1にしたがう2cm 2 の活性面積を有する1D型の非複合材電極が具備された。各電極の活性面は、ラット皮膚膜の側に向けられた。
【0099】
ラット皮膚のサンプルは、全ての皮下組織を除去し、0.05重量%のNaN3を加えた生理学的塩溶液中で15分間室温に置いた後、受容区画の方向に向けられた皮膚面でイオン浸透セルに設置されるまで、−40℃で冷凍保存した。
【0100】
行われた各試験について、4つの同一のイオン浸透セルを同時に作動開始させた。効果的交換領域は、各皮膚の2cm2であった。
【0101】
直流電流発電機は、その陰極が複合材電極に接続され、各セルの電極の間に0.2mAに等しい設定強度の電気信号を確立することを可能にする。
【0102】
イオン浸透の作動は、イオン浸透セルの末端で0.8ボルトに等しい電位差が現れ、そしてその後回路が開放することにより電流の通過が停止されるまで続けられた。
【0103】
イオン浸透作動の始めから計算して、1時間、12時間および24時間にそれぞれ等しい期間後、イオン浸透セルの受容区画に含有される0.5mLの液体を除去し、各サンプルに含有されるバルプロ酸ナトリウムの量が測定された。定量測定により得られた値から、前記の期間の終わりにイオン浸透セルの受容区画に入ったバルプロ酸塩の総量を計算した。
【0104】
4つの試験で平均して得られた結果は、表IIIに示した。
【0105】
【表3】
【0106】
表IIIに現れた結果を検討すると、明らかに本発明による複合材電極の優越性が強調され、該電極は、水の電気分解に関係した望ましくない現象が現れる以前に、従来技術により得られた匹敵する容量の複合材電極より明らかに長く作動できる。
Claims (16)
- 活性成分を対象に経皮投与する為のイオン浸透装置であって、該装置は第1の電極アセンブリと第2の電極アセンブリと電気信号発生機を含有し、前記第1電極アセンブリは活性電極と呼ばれる第1電極と活性剤貯蔵容器から構成され、該第1電極は、活性成分を少なくとも部分的にイオン化された形態、または中性形態で保持する活性剤貯蔵容器と接触しており、上記第2電極アセンブリは、第2の電極と貯蔵容器から構成され、該第2電極は電解質を保持する貯蔵容器と接触しており、上記電気信号発生機は、第1の電極が活性成分のイオンと同じ極性を有するか、または前記活性成分が中性である場合には陽極性を有する様に、且つ、第2の電極が第1の電極のものと反対の極性を有する様に、前記第1の電極と第2の電極のそれぞれに接続することが可能であり、前記活性剤貯蔵容器に接触している第1の電極および貯蔵容器に接触している第2の電極は、重合体バインダーおよび前記バインダーの体積による%として4%〜60%の電気化学的に非消費性の粉末または繊維状の導電性フィラーおよび4%〜100%の電気化学的酸化または還元可能なAg/AgCl混合粉末材料を含む複合材電極から成り、この複合材電極の重合体バインダーが、1,2−エポキシプロパンをベースとする1種又は複数の重合体から構成され、且つ、この重合体がモル%で、60%〜100%の1,2−エポキシプロパン、並びに1,2−エポキシプロパンと共重合可能な40%〜0%の1種又は複数の他のモノマーからなることを特徴とするイオン浸透装置。
- 前記複合材電極の重合体バインダーを構成する1種又は複数の重合体が、75%〜100%の範囲の1,2−エポキシプロパンのモル含量を示すことを特徴とする請求項1に記載の装置。
- 前記複合材電極の重合体バインダーを構成する1種又は複数の重合体が、1,2−エポキシプロパンの単独重合体であるか、あるいは、1,2−エポキシプロパンと1,2−エポキシブタンとのランダム共重合体、逐次共重合体、または、1,2−エポキシプロパンと(i)4員以上の環である環状オキシド、および(ii)式
で表される環状オキシドから形成された群から選択された1種または複数の環状モノマーとのランダム結合を有する共重合体であることを特徴とする請求項1又は2に記載の装置。 - 前記複合材電極の重合体バインダーを構成する1種又は複数の重合体が、1,2−エポキシプロパンの単独重合体または1,2−エポキシプロパンと前記環状オキシドとの共重合体であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の装置。
- 前記複合材電極の重合体バインダーを構成する1種又は複数の重合体が、架橋されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の装置。
- 前記複合材電極の重合体バインダーを構成する1種又は複数の重合体が、非架橋状態で、10,000と106の間の範囲の分子量を示すことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の装置。
- 前記電気化学的に非消費性の粉末状または繊維状導電性フィラーが、カーボンブラックまたはグラファイトからなることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の装置。
- 前記複合材電極の導電性フィラーが、100μm未満の粒子サイズの粉末の形態から成る粉末状フィラーであることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の装置。
- 前記複合材電極の導電性フィラーが、1μm〜15μmの範囲の直径、及び、50〜1000の範囲の、同じ単位で表される直径に対する長さの比を有する短繊維の形態で提供される繊維状フィラーであることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の装置。
- AgまたはAgCl粉末材料の粒子サイズが100μm未満であることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の装置。
- 複合材電極が、重合体バインダーの体積当りで、導電性フィラーについては8%〜45%、Ag/AgCl混合粉末材料については25%〜70%の範囲であることを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載の装置。
- 前記装置が含有する前記複合材電極が、10μmと100μmの間の厚みを有することを特徴とする請求項1〜12のいずれか1項に記載の装置。
- 前記装置が含有する前記複合材電極が、溶媒を用いたコーティング技術により製造されることを特徴とする請求項1〜13のいずれか1項に記載の装置。
- 電気信号発生機が、第1の電極と第2の電極との間に、設定平均強度の信号である強度差信号または、設定平均電圧の信号である電位差信号をかけ、該信号が継続式または周波数が500kHz以下のパルス式、そして連続式または断続式であって、一次的極性反転を伴うことを特徴とする請求項1〜14のいずれか1項に記載の装置。
- 電極の間にかけられた電気信号が、0.1〜50ボルトの範囲の平均電圧を示し、それにより該電極の間で発生された平均電流の密度は、5mA/cm2未満の値を示すことを特徴とする請求項15に記載の装置。
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