JP4068120B2 - 光学補償フィルム - Google Patents

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Description

本発明は、光学補償フィルムに関する。
近年、ディスプレイ市場の拡大に伴い、より画像を鮮明にみたいという要求が高まっている。そこで、単なる透明材料ではなく、より高度な光学特性が付与された光学材料が求められている。
このような高度な光学特性の一つに複屈折性がある。一般に、高分子は分子主鎖方向とそれに垂直な方向とでは屈折率が異なるため、複屈折を生じる。用途によっては、この複屈折を厳密にコントロールすることが求められている。例えば、液晶の偏光板に用いられる保護フィルムの場合は、全光線透過率が同じであっても、複屈折がより小さい高分子材料成形体が必要とされる。代表的なものとしては、トリアセチルセルロースからなるフィルムがある。一方、この複屈折を利用することにより、直線偏光を円偏光に変えたり(1/4波長板等)、液晶が持つ複屈折を補償する(位相差フィルムなどの光学補償フィルム等)ことが可能となる。このような複屈折性光学材料としてはポリカーボネートがよく知られている。
また、最近では液晶ディスプレイが大型化し、それに伴い位相差フィルムなどの高分子光学素子の大型化も必要である。しかし、光学素子を大型化すると、外力の偏りが生じるため、光学素子が外力による複屈折変化の生じやすい材料からなる場合、複屈折の分布が生じ、コントラストが不均一となるという問題点がある。
外力による複屈折変化の生じやすさは光弾性係数によって表されるが、前述のポリカーボネートは、光弾性係数が大きいため、これらに代わる光弾性係数の小さい複屈折性光学材料が切望されている。
スチレン系樹脂を含む位相差フィルムとして、スチレン−アクリロニトリル共重合体からなる位相差フィルムが知られている(特許文献1)。しかし、このフィルムの光弾性係数は大きく、位相差フィルムとして満足のいくものではない。
スチレン−アクリロニトリル共重合体とアクリル系樹脂のブレンド物(非特許文献1)、スチレン−メタクリル酸共重合体とアクリル系樹脂のブレンド物(特許文献2)、スチレン−無水マレイン酸共重合体とアクリル系樹脂のブレンド物(非特許文献2)自体は知られている。しかし、これらブレンド物は、光学材料に用いられるものではない。
スチレン−無水マレイン酸共重合体を含む光学材料用樹脂組成物として、スチレン−無水マレイン酸共重合体とポリカーボネートよりなる樹脂組成物が知られている(特許文献3)。しかし、この樹脂組成物は、光弾性係数が正の樹脂どうしの組み合わせであり、その光弾性係数の絶対値は大きい。
固有複屈折の正負に着目したものとしては、固有複屈折が正と負の樹脂よりなる位相差フィルム(特許文献4)も知られている。しかし、特許文献4に具体的に開示されているのは、光弾性係数が正の樹脂どうしの組み合わせからなるフィルムであり、光弾性係数が大きい。
また、光弾性係数が正と負の樹脂よりなる位相差フィルムも知られている(特許文献5)。しかし、この位相差フィルムにおいては、位相差フィルムとして必要な複屈折性を備えるために、光弾性係数が正の樹脂として光弾性係数が大きい(60×10-8cm2/N
(=60×10-12Pa-1)以上)ものを用いる。そのため、使用できる材料が限定され
、他の光学特性を自由に設計できないという問題がある。
さらに、最近は、液晶画面のさらなる高画質を求めるために、位相差フィルムの面内のレタデーションだけでなく、厚み方向のレタデーションも制御したいという要求がある。そして、近年注目されている水平電界(IPS)モード液晶ディスプレイ用の位相差フィルムの場合、厚み方向レタデーションが負の値であることが好ましい。しかし、一般的な光学フィルムである、トリアセチルセルロースやポリカーボネートからなるフィルムや、特許文献5に開示された位相差フィルムは、厚み方向のレタデーションは正の値を有する。そのため、光弾性係数の絶対値が小さいことに加え、厚み方向のレタデーションが負である光学フィルムが求められている。
特開平05−257014号公報 特開昭56−98251号公報 特開平7−233296号公報 特開2002−40258号公報 特開2004−212971号公報 T.Nishimoto、POLYMER、vol.30、p.1279−1285、1989 D.Chopra、Society of Plastics Engineers. Annual Technical Conference、59th、vol.2、p.2326−2330、2001
本発明は、高い複屈折性を示し、かつ外力による複屈折変化が小さい、すなわち、光弾性係数の絶対値が小さい光学補償フィルムを提供することを目的とする。
さらに、本発明は、厚み方向レタデーションが負となる光学補償フィルムを提供することを目的とする。
本発明者らは、樹脂組成物の複屈折性について鋭意検討した結果、主成分となる樹脂の固有複屈折の正負を統一することにより、光弾性係数が大きい樹脂を用いなくても、樹脂組成物に高い複屈折性を与えることができることを見出した。
さらに、本発明者らは、主成分となる樹脂の固有複屈折が負であれば、樹脂組成物をフィルムにしたときの厚み方向レタデーションを負にすることが可能であることを見出した。
以上の知見に基づき、本発明者らは、光弾性係数が正、固有複屈折率が負の樹脂(a)と、光弾性係数が負、固有複屈折が負の樹脂(b)とを含む樹脂組成物は、高い複屈折性、小さい光弾性係数の絶対値を実現でき、かつ、フィルムにしたときにその厚み方向レタデーションが負となることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明は以下の通りである。
23℃における未延伸時の光弾性係数が正でかつ固有複屈折が負であり、アクリロニトリル含量が1〜40質量%であるスチレン−アクリロニトリル共重合体、メタクリル酸含量が0.1〜50質量%であるスチレン−メタクリル酸共重合体及び無水マレイン酸含量が、0.1〜50質量%であるスチレン無水マレイン酸共重合体からなる群から選択されるスチレン系樹脂(a)と、
23℃における未延伸時の光弾性係数が負でかつ固有複屈折が負であるアクリル系樹脂(b)を含む樹脂組成物からなる光学補償フィルムであって、
前記樹脂組成物中の樹脂(a)、樹脂(b)の含有量の合計が80質量%以上であり、
前記樹脂組成物中の樹脂(a)と樹脂(b)の質量比((a)/(b))が、20/80〜80/20である光学補償フィルム。
本発明によれば、高い複屈折性を示し、かつ、光弾性係数の絶対値が小さい光学補償フィルムが提供できる。また、特定の条件で成形・延伸することにより、光学補償フィルムのレタデーションを所望の値に制御できる。
したがって、液晶表示装置等に用いた場合に、外力の偏りによって生じる複屈折の分布が小さく、コントラストの均一性に優れる光学補償フィルムすることができる。
以下、本発明について具体的に説明する。
本発明の光学補償フィルムを構成する樹脂組成物は、23℃における未延伸時の光弾性係数が正でかつ固有複屈折が負であり、アクリロニトリル含量が1〜40質量%であるスチレン−アクリロニトリル共重合体、メタクリル酸含量が0.1〜50質量%であるスチレン−メタクリル酸共重合体及び無水マレイン酸含量が、0.1〜50質量%であるスチレン無水マレイン酸共重合体からなる群から選択されるスチレン系樹脂(a)と、23℃における未延伸時の光弾性係数が負でかつ固有複屈折が負であるアクリル系樹脂(b)を含む。
本発明における「光弾性係数」とは、外力による複屈折の変化の生じやすさを表す係数で、下式により定義される。
R[Pa-1]=Δn/σR
ここで、σRは伸張応力[Pa]、Δnは応力付加時の複屈折であり、Δnは下式によ
り定義される。
Δn=n1−n2
ここで、n1は伸張方向と平行な方向の屈折率、n2は伸張方向と垂直な方向の屈折率である。
光弾性係数の値がゼロに近いほど、外力による複屈折の変化が小さいことを示しており、各用途に応じて設計された複屈折が外力によって変化しにくいことを意味する。
また、本発明における「固有複屈折」とは、配向に依存した複屈折の大きさを表す値で、下式により定義される。
固有複屈折=npr−nvt
ここで、nprは、一軸性の秩序をもって配向した高分子の配向方向と平行な方向の屈折率、nvtはその配向方向と垂直な方向の屈折率である。
すなわち、本発明において、固有複屈折が負である樹脂とは、樹脂を構成する高分子が一軸性の秩序をもって配向して形成された層に光が入射したとき、前記配向方向の光の屈折率が前記配向方向に直交する方向の光の屈折率より小さくなる樹脂をいう。
樹脂(a)について説明する。
本発明においては、樹脂(a)として、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体からなる群から選択されるスチレン系樹脂を用いる。これらのスチレン系樹脂は、耐熱性、透明性等の光学材料に求められる特性を有しているため好ましい。
また、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体は、メタクリル酸メチルを単量体成分として含む重合体との相溶性が高いことから、樹脂(b)としてメタクリル酸メチルを単量体成分として含む重合体を用いる場合に特に好ましい。
スチレン−アクリロニトリル共重合体の場合、共重合体中のアクリロニトリル含量は1〜40質量%である。さらに好ましい範囲は1〜30質量%であり、とりわけ好ましい範囲は1〜25%である。共重合体中のアクリロニトリルの含量が1〜40質量%の場合、透明性に優れるため好ましい。
スチレン−メタクリル酸共重合体の場合、共重合体中のメタクリル酸含量0.1〜50質量%である。より好ましい範囲は0.1〜40質量%であり、さらに好ましい範囲は0.1〜30質量%である。共重合体中のメタクリル酸含量が0.1質量%以上であると耐熱性に優れ、50質量%以下の範囲であれば透明性に優れるので好ましい。
スチレン−無水マレイン酸共重合体の場合、共重合体中の無水マレイン酸含量0.1〜50質量%である。より好ましい範囲は0.1〜40質量%であり、さらに好ましい範囲は0.1質量%〜30質量%である。共重合体中の無水マレイン酸含量が0.1質量%以上であると耐熱性に優れ、50質量%以下の範囲であれば透明性に優れるので好ましい。
これらの中でも、耐熱性の観点から、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体が特に好ましい。
本発明においては樹脂(a)として、組成、分子量など異なる複数種類のスチレン系樹脂を併用することもできる。
スチレン系樹脂は、公知のアニオン、塊状、懸濁、乳化または溶液重合方法により得ることができる。また、スチレン系樹脂は、共役ジエンやスチレン系単量体のベンゼン環の不飽和二重結合が水素添加されていてもよい。水素添加率は核磁気共鳴装置(NMR)によって測定できる。
樹脂(a)の23℃における未延伸時の光弾性係数は、60×10-12Pa-1以下であることが好ましく、30×10-12Pa-1以下であることがさらに好ましく、6×10-12Pa-1以下であることがとりわけ好ましい。樹脂(a)の光弾性係数がこの範囲にあると、光弾性係数が小さく、かつ、所望のRthを有する光学フィルムが得られるため好ましい。
樹脂(b)について説明する。
本発明においては、樹脂(b)としてアクリル系樹脂を用いる
本発明においてアクリル系樹脂とは、アクリル酸、メタクリル酸又はこれらの誘導体を単量体成分として含む重合体をいう。
このアクリル系樹脂の中でも、特に、アクリル酸アルキルエステル又はメタクリル酸アルキルエステルを単量体成分として含む重合体は、スチレン系樹脂との相溶性が高いことから、樹脂(a)としてスチレン系樹脂を用いる場合には特に好ましい。
アクリル酸アルキルエステル又はメタクリル酸アルキルエステルを単量体成分として含むアクリル系樹脂の具体例としては、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸t−ブチルシクロヘキシル、メタクリル酸メチル等のメタクリル酸アルキルエステル;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸2−エチルヘキシル等のアクリル酸アルキルエステルより選ばれる1種以上の単量体を重合したもの等が挙げられる。
また、アクリル酸アルキルエステル又はメタクリル酸アルキルエステルを単量体成分として含むアクリル系樹脂には、メタクリル酸アルキルエステル、アクリル酸アルキルエステル以外の単量体が共重合されたものも含まれる。
アクリル酸アルキルエステル、メタクリル酸アルキルエステルと共重合可能なメタクリル酸アルキルエステル、アクリル酸アルキルエステル以外の単量体としては、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル化合物類;アクリロニトリル、メタクリルニトリル等のシアン化ビニル類;N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等のマレイミド類;無水マレイン酸等の不飽和カルボン酸無水物類;アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸等の不飽和酸類等が挙げられる。これらは一種または二種以上組み合わせて使用することもできる。
メタクリル酸アルキルエステル、アクリル酸アルキルエステル以外の単量体成分を共重合する場合、その共重合割合は、メタクリル酸アルキルエステル、アクリル酸アルキルエステルに対して、50質量%未満であることが好ましい。さらに好ましくは40質量%以下であり、とりわけ好ましくは30質量%以下である。50質量%未満であると全光線透過率などの光学特性に優れるため好ましい。
アクリル酸アルキルエステル又はメタクリル酸アルキルエステルを単量体成分として含む重合体の中でも、メタクリル酸メチルの単独重合体または、メタクリル酸メチルと他の単量体との共重合体が、耐熱性、透明性等光学材料に求められる特性を有しているため好ましい。
メタクリル酸メチルと共重合させる単量体としては、特にアクリル酸アルキルエステル類が、耐熱分解性に優れ、これを共重合させて得られるメタクリル系樹脂の成形加工時の流動性が高いため好ましい。メタクリル酸メチルにアクリル酸アルキルエステル類を共重合させる場合のアクリル酸アルキルエステル類の使用量は、耐熱分解性の観点から0.1質量%以上であることが好ましく、耐熱性の観点から15質量%以下であることが好ましい。0.2質量%以上14質量%以下であることがさらに好ましく、1質量%以上12質量%以下であることがとりわけ好ましい。
アクリル酸アルキルエステル類の中でも、アクリル酸メチル及びアクリル酸エチルが、少量メタクリル酸メチルと共重合させるだけでも前述の成形加工時の流動性の改良効果が著しく得られるため好ましい。
アクリル系樹脂の質量平均分子量は5万〜20万であることが好ましい。質量平均分子量は成形品の強度の観点から5万以上が好ましく、成形加工性、流動性の観点から20万以下が好ましい。さらに好ましい範囲は7万〜15万である。
また、本発明においてはアイソタクチックポリメタクリル酸エステルとシンジオタクチックポリメタクリル酸エステルを同時に用いることもできる。
アクリル系樹脂を製造する方法として、例えばキャスト重合、塊状重合、懸濁重合、溶液重合、乳化重合、アニオン重合等の一般に行われている重合方法を用いることができる。光学用途としては微小な異物の混入はできるだけ避けることが好ましく、この観点からは懸濁剤や乳化剤を用いない塊状重合や溶液重合が好ましい。
溶液重合を行う場合には、単量体の混合物をトルエン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素の溶媒に溶解して調製した溶液を用いることができる。塊状重合により重合させる場合には、通常行われるように加熱により生じる遊離ラジカルや電離性放射線照射により重合を開始させることができる。
重合反応に用いられる開始剤としては、ラジカル重合において用いられる任意の開始剤を使用することができ、例えば、アゾビスイソブチルニトリル等のアゾ化合物、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート等の有機過酸化物を用いることができる。
特に、90℃以上の高温下で重合を行わせる場合には、溶液重合が一般的であるので、10時間半減期温度が80℃以上で、かつ用いる有機溶媒に可溶である過酸化物、アゾビス開始剤などが好ましい。具体的には、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、シクロヘキサンパーオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、1,1−アゾビス(1−シクロヘキサンカルボニトリル)、2−(カルバモイルアゾ)イソブチロニトリル等を挙げることができる。
これらの開始剤は、例えば、0.005〜5質量%の範囲で用いることが好ましい。
重合反応に必要に応じて用いられる分子量調節剤としては、ラジカル重合において用いる任意のものが使用でき、例えばブチルメルカプタン、オクチルメルカプタン、ドデシルメルカプタン、チオグリコール酸2−エチルヘキシル等のメルカプタン化合物が特に好ましいものとして挙げられる。
これらの分子量調節剤は、アクリル系樹脂の重合度が好ましい範囲内に制御されるような濃度範囲で添加する。
樹脂(b)としては、メタクリル酸メチル単独重合体、メタクリル酸メチル−アクリル酸メチル共重合体、メタクリル酸メチル−アクリル酸エチル共重合体が好ましく、成形加工時の流動性と耐熱性をバランスよく兼ね備えているという点で、とりわけ、メタクリル酸メチル−アクリル酸メチル共重合体が好ましい。
樹脂(b)として、組成、分子量など異なる複数種類のアクリル系樹脂を併用することができる。
樹脂(b)の23℃における未延伸時の光弾性係数は、−60×10-12Pa-1以上であることが好ましく、−30×10-12Pa-1以上であることがさらに好ましく、−6×10-12Pa-1以上であることがとりわけ好ましい。樹脂(b)の光弾性係数がこの範囲にあると、光弾性係数が小さく、かつ、所望のRthを有する光学フィルムが得られるため好ましい。
次に、本発明の光学補償フィルムを構成する光学材料用樹脂組成物について説明する。
樹脂(a)と樹脂(b)は相溶することが好ましい。相溶は、樹脂(a)、(b)の組成(共重合組成を含む)、配合比率、混練温度、混練圧力、冷却温度、冷却速度などを適宜選択することにより実現できる。相溶(missible)については、『高性能ポリマーアロイ』(高分子学会編集、平成3年丸善株式会社発行)に詳しい記載がある。樹脂(a)と樹脂(b)が相溶すると、樹脂(a)と樹脂(b)とを含む樹脂組成物を成形したフィルムの全光線透過率を高めることが可能となる。
このような観点から、本発明においては、樹脂(a)としてアクリロニトリル含量が1〜40質量%であるスチレン−アクリロニトリル共重合体、メタクリル酸含量が0.1〜50質量%であるスチレン−メタクリル酸共重合体及び無水マレイン酸含量が、0.1〜50質量%であるスチレン無水マレイン酸共重合体からなる群から選択されるスチレン系樹脂、樹脂(b)としてアクリル系樹脂を組み合わせる。樹脂(a)と樹脂(b)をこのような組み合わせとすることにより、使用中に相分離を起こして透明性が低下することなどのない安定性の高い光学素子を製造することができる。
学材料用樹脂組成物においては、樹脂(a)、樹脂(b)の含有量や質量比を調整することにより、その光弾性係数を制御することができる。
本発明の光学補償フィルムを構成する光学材料用樹脂組成物における樹脂(a)の含有量は、20〜80質量部であることがとりわけ好ましい。樹脂(b)の含有量は、20〜80質量部であることがとりわけ好ましい。
また、本発明において、樹脂(a)と樹脂(b)の含有量の合計は、樹脂組成物に対して80質量%以上であ、90質量%以上であることがましい。
さらに、本発明において、樹脂(a)と樹脂(b)の質量比((a)/(b))は、20/80〜80/20であり、樹脂(a)、樹脂(b)の種類にも依存するが、40/60〜60/40であることが好ましい。
本発明の光学補償フィルムを構成する光学材料用樹脂組成物は、樹脂(a)及び(b)の合計100質量部に対して、紫外線吸収剤(c)を0.1〜10質量部含むことが好ましく、さらに好ましくは0.1〜2質量部であり、とりわけ好ましくは0.1〜1.5質量部以下である。
紫外線吸収剤(c)をこのような量添加することにより、光弾性係数及び分光透過率を好ましい範囲に制御することができる。もっとも、紫外線吸収剤(c)を多量に添加すると、光弾性係数が大きくなるため、光学材料としては好ましくない。
紫外線吸収剤(c)の含有量は、核磁気共鳴装置(NMR)によりプロトンNMRを測定し、ピークシグナルの積分値の比から求める方法や、または良溶媒を用い樹脂から抽出後、ガスクロマトグラフ(GC)で測定する方法等により定量できる。
紫外線吸収剤(c)としては、例えば、ベンゾトリアゾール系化合物、トリアジン系化合物、ベンゾエート系化合物、ベンゾフェノン系化合物、オキシベンゾフェノン系化合物、フェノール系化合物、オキサゾール系化合物、マロン酸エステル系化合物、シアノアクリレート系化合物、ラクトン系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンズオキサジノン系化合物等が挙げられる。好ましくは、ベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾトリアジン系化合物である。これらを単独で用いても、2種以上併用して用いてもよい。
紫外線吸収剤(c)の20℃における蒸気圧(P)は、1.0×10-4Pa以下である
ことが、成形加工性に優れるため好ましい。さらに好ましくは、蒸気圧(P)が1.0×10-6Pa以下であり、とりわけ好ましくは、蒸気圧(P)が1.0×10-8Pa以下で
ある。ここで、成型加工性に優れるというのは、例えばフィルム成形時に、低分子化合物のロールへの付着が少ないことなどを示す。ロールへ低分子化合物が付着すると、フィルム表面にも付着し、外観、及び光学特性を悪化させるため、光学用材料として好ましくないものとなる。
紫外線吸収剤(c)の融点(Tm)は、80℃以上であることが、成形加工性に優れるため好ましい。さらに好ましいくは融点(Tm)が130℃以上であり、とりわけ好ましくは融点(Tm)が160℃以上である。
また、紫外線吸収剤(c)が、23℃〜260℃まで20℃/minの速度で昇温した場合の質量減少率が50%以下である場合には、成形加工性に優れるため好ましい。さらに好ましい範囲は質量減少率が15%以下であり、とりわけ好ましい範囲は質量減少率が2%以下である。
本発明の光学補償フィルムを構成する樹脂組成物には、樹脂(a)成分および(b)成分以外の重合体を、本発明の目的を損なわない範囲で含有することができる。樹脂(a)、樹脂(b)以外の重合体としては、オレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマー、アクリル系ゴムなどのゴム成分;ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリアミド、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエステル、ポリスルホン、ポリフェニレンオキサイド、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリアセタール等の熱可塑性樹脂;およびフェノール樹脂、メラミン樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂などが挙げられる。
さらに、本発明の樹脂組成物には、本発明の効果を著しく損なわない範囲内で、目的に応じて任意の添加剤を配合することができる。このような添加剤としては,樹脂やゴム状重合体の配合に一般的に用いられるものであれば特に制限はない。例えば、無機充填剤;酸化鉄等の顔料;ステアリン酸、ベヘニン酸、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、エチレンビスステアロアミド等の滑剤;離型剤;パラフィン系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル、芳香族系プロセスオイル、パラフィン、有機ポリシロキサン、ミネラルオイル等の軟化剤・可塑剤;ヒンダードフェノール系酸化防止剤、りん系熱安定剤等の酸化防止剤;ヒンダードアミン系光安定剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤;難燃剤;帯電防止剤;有機繊維、ガラス繊維、炭素繊維、金属ウィスカ等の補強剤;着色剤;その他添加剤が挙げられる。
本発明の光学補償フィルムを構成する光学材料用樹脂組成物の製造方法は、特に制限されるものではなく、公知の方法が利用できる。例えば、単軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、ブラベンダー、各種ニーダー等の溶融混練機を用いて、樹脂(a)および樹脂(b)、必要に応じて上記その他の成分を添加して溶融混練して樹脂組成物を製造することができる。
次に、光学補償フィルムについて説明する。
成形方法は、特に制限されるものではなく、公知の方法が利用できる。例えば、射出成形、シート成形、ブロー成形、インジェクションブロー成形、インフレーション成形、押し出し成形、発泡成形等の方法で成形することが可能であり、圧空成形、真空成形等の二次加工成形法も用いることができる。
発明においては、フィルムとは厚さが300μm以下のものをいう。また、本発明において、フィルムの厚さは好ましくは1μm以上、より好ましくは5μm以上である。
本発明の光学補償フィルムは、押し出し成形、キャスト成形等の手法により成形することが好ましい。例えば、Tダイ、円形ダイ等が装着された押出機等を用いて、未延伸フィルム、シートを押し出し成形することができる。押し出し成形により成形品を得る場合は、事前に樹脂(a)、樹脂(b)を溶融混錬した材料を用いることもできれば、押し出し成形時に溶融混錬を経て成形することもできる。また、樹脂(a)、樹脂(b)に共通な溶媒、例えばクロロホルム、二塩化メチレン等の溶媒を用いて、樹脂(a)、樹脂(b)を溶解後、キャスト乾燥固化することにより未延伸フィルムをキャスト成形することもできる。
さらに必要に応じて、未延伸フィルム、機械的流れ方向に一軸延伸、機械的流れ方向に直行する方向に一軸延伸することができる。また、ロール延伸とテンター延伸の逐次2軸延伸法、テンター延伸による同時2軸延伸法、チューブラー延伸による2軸延伸法等によって延伸することにより2軸延伸フィルムを製造することもできる。 延伸はガラス転移温度(Tg)を基準として、(Tg−20℃)〜(Tg+50℃)の範囲で行うことが好ましい。
また、延伸倍率は、どちらか一方向に0.1〜1000%であることが好ましく、0.2〜600%であることがさらに好ましく、0.3〜300%であることがとりわけ好ましい。この範囲に設計することにより、複屈折、耐熱性、強度の観点で好ましい光学素子用成形体が得られる。
ここで、延伸倍率は、得られた延伸フィルムをガラス転移温度よりも50℃以上高い温度で収縮させ、以下の式により求めることができる。また、ガラス転移温度はDSC法や粘弾性法により求めることができる。
延伸倍率(%)=[(収縮前の長さ/収縮後の長さ)−1]×100
機械的流れ方向、及び機械的流れ方向に直行する方向に異なる延伸倍率で2軸延伸を行うことにより、高い強度で、高い面内レタデーション値を有するフィルムが得られる。このような光弾性係数が小さく、レタデーション値が高いフィルムは、位相差フィルムとして好適に用いられる。
一方、機械的流れ方向、及び機械的流れ方向に直行する方向にほぼ同じ延伸倍率で2軸延伸を行うことにより、高い強度で、低い面内レタデーション値のフィルムが得られる。このような光弾性係数が小さく、レタデーション値が低いフィルムは、偏光板保護フィルムとして好適に用いられる。
本発明の光学補償フィルムは、例えばレタデーション等の性質の異なるものどうしを2枚以上積層して使用することもできるし、本発明の光学補償フィルムに本発明以外の高分子フィルムを積層して用いることもできる。
本発明の光学補償フィルムは、23℃における光弾性係数の絶対値が、0〜5×10-12Pa-1であることが好ましい。光弾性係数の絶対値の値は0〜4×10-12Pa-1であることがより好ましく、0〜3.5×10-12Pa-1であることがさらに好ましく、0〜3.0×10-12Pa-1以下であることがとりわけ好ましい。
光学補償フィルムの光弾性係数がこの範囲内であれば、外力による複屈折の変化が少ないため、これを大型の液晶表示装置等に使用した場合にコントラストや画面の均一性に優れる。
本発明の光学補償フィルムは、光学材料用樹脂組成物の組成や樹脂(a)と樹脂(b)の質量比、厚み、及び延伸倍率等を好ましい範囲内に設計することにより、面内レタデーション(Re)と厚み方向レタデーション(Rth)、Nz係数を制御することができる。
ここで、面内レタデーション(Re)、厚み方向レタデーション(Rth)及びNzは下式により定義される。
Re =(nx−ny)×d
Rth=((nx+ny)/2)−nz)×d
Nz =(nx−nz)/|(nx−ny)|
(式中、nx:成形体面内において屈折率が最大となる方向をxとした場合のx方向の主
屈折率、ny:成形体面内においてx方向に垂直な方向をyとした場合のy方向の主屈折
率、nz:成形体厚み方向の主屈折率、d:成形体の厚み(nm)である。)
本発明における光学補償フィルムの好ましいReの値は0〜400nmであり、さらに好ましくは5〜350nmであり、とりわけ好ましくは20を超え350以下である。
本発明の光学補償フィルムを1/4波長板として用いる場合、そのReの絶対値は、100nm以上180nm以下であることが好ましく、より好ましくは120nm以上160nm以下、さらに好ましくは130nm以上150nm以下である。
また、本発明の光学補償フィルムを1/2波長板としても用いる場合、そのReの絶対値は、240以上320nm以下であることも好ましく、より好ましくは260以上300nm以下、さらに好ましくは270以上290nm以下である。
本発明の光学補償フィルムのRe/Rthの絶対値は、3以下であることが好ましく、より好ましくは0.1〜2、さらに好ましくは0.2〜1.5である。Re/Rthの絶対値は、MD、TD方向の延伸倍率、フイルム厚さ、樹脂(a)、樹脂(b)の質量比により調整することができる。
また、本発明においては、光学補償フィルムのRthを負の値に設計することが可能であるが、Rthを負の値に設計することにより液晶ディスプレイ用の好ましい光学補償フィルムが得られる。特に、水平電界(IPS)モード液晶ディスプレイ用として好ましい。好ましいRthの値は−400nm〜−1nmであり、さらに好ましくは、−350nm〜−5nmであり、とりわけ好ましくは−300nm〜−10nmである。Rthの値は、MD、TD方向の延伸倍率、フイルム厚さ、樹脂(a)、樹脂(b)の質量比により調整することができる。
本発明の光学補償フィルムのNz係数は、−5〜0であることが好ましく、さらに好ましくは−3〜0であり、とりわけ好ましくは−1.5〜0である。この範囲に設計することにより液晶ディスプレイ用の好ましい光学補償フィルムが得られる。特に、水平電界(IPS)モード液晶ディスプレイ用として好ましい。Nz係数はMD、TD方向の延伸倍率、フイルム厚さ、樹脂(a)、樹脂(b)の質量比により調整することができる。
本発明の光学補償フィルムは、全光線透過率が80%以上であることが好ましく、85%以上であることがより好ましく、87%以上であることがさらに好ましく、90%以上であることがとりわけ好ましい。
なお、このような全光線透過率は、樹脂(a)、樹脂(b)の組成(共重合組成を含む)、配合比率、混練温度、混練圧力、冷却温度、冷却速度などを調整して光学材料用樹脂組成物の成分を相溶させることにより達成できる。
本発明の光学補償フィルムは、380nmにおける分光透過率が5%以下であることが好ましい。紫外領域である380nmの分光透過率が低いほど偏光子や液晶素子の劣化を防ぎ光学フィルムとして好ましく用いることができる。380nmにおける分光透過率が3%以下であることがさらに好ましく、380nmにおける分光透過率が2.5%以下であることがとりわけ好ましい。
したがって、本発明の光学補償フィルムは、380nmにおける分光透過率が5%以下であり、かつ、光弾性係数の絶対値の値は0〜4×10-12Pa-1であることが好ましく、この場合、光弾性係数の絶対値の値は0〜3.5×10-12/Pa-1であることがさらに好ましく、0〜3.0×10-12Pa-1であることがとりわけ好ましい。
本発明の光学補償フィルムには、例えば反射防止処理、透明導電処理、電磁波遮蔽処理、ガスバリア処理等の表面機能化処理をすることもでき、表面機能化基材として有用に用いることができる。
本発明の光学補償フィルムは、高い機械強度を有するので各種光学素子用の保護フィルムとして用いることもできる。特に、本発明の光学補償フィルムは、光学的に異方性を持たせることが可能であるため、偏光板保護フイルムとして好適に用いることができる。以下に、本発明の光学素子用成形体を偏光板保護フィルムとして用いる場合について説明する。
本発明の偏光板保護フィルムを偏光フィルムに積層することにより偏光板を製造することができる。本発明においては、偏光フィルムの一方の面にReが10nm以上の保護フィルムを積層し、他方の面にReが10nm以下の保護フィルムを積層することが好ましい。
通常、保護フィルムは、偏光フィルムの保護を目的としているので、トリアセチルセルロース系フィルムのような光学的に等方性を持つフィルムが用いられる。
これに対し、本発明の好ましい態様では、一方の面に本発明の光学的に異方性を持つ保護フィルムを積層し、他方の面に光学的に等方性を持つ保護フィルムを積層する。これにより、一方の面の保護フィルムが光学異方性フィルムを兼ねるので、通常は偏光板の保護フィルムの上に貼り付けられるポリカーボネート樹脂やシクロオレフィン系の樹脂などからなる位相差フィルム等の光学異方性フィルムを省き、偏光板の薄肉化を図ることができる。
また、保護フィルムの上に別の光学異方性フィルムを接着する工程がないので生産性に優れる。
また、偏光フィルムの一方の面に積層する保護フィルムのReは10nm以上であることが好ましく、より好ましくは20〜1000nm、さらに好ましくは30〜900nmである。
一方の面に積層するReが10nm以上の保護フィルムは、光学補償位相差フィルム、1/4波長板、1/2波長板、その他位相差フィルムとしての機能を併せもつことになる。
また、偏光フィルムの他方の面に積層する光学的に等方性を持つ保護フィルムのReは小さい方が好ましく、好ましくはReは10nm以下、より好ましくは8nm以下、さらに好ましくは5nm以下である。
本発明においては、他方の面に積層する光学的に等方性を持つ保護フィルムとしてアクリル系樹脂(d)からなるフィルムを用いることが好ましい。
アクリル系樹脂(d)の具体例としては、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸t−ブチルシクロヘキシル、メタクリル酸メチル等のメタクリル酸アルキルエステル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸2−エチルヘキシル等のアクリル酸アルキルエステルより選ばれる1種以上の単量体を重合したものが好ましい。
これらの中でも、メタクリル酸メチルの単独重合体または他の単量体との共重合体が特に好ましい。
メタクリル酸メチルと共重合可能な単量体としては、他のメタリル酸アルキルエステル類、アクリル酸アルキルエステル類、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル化合物類;アクリロニトリル、メタクリルニトリル等のシアン化ビニル類;N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等のマレイミド類;無水マレイン酸等の不飽和カルボン酸無水物類;アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸等の不飽和酸類等が挙げられる。これらは一種または二種以上組み合わせて使用することもできる。
これらメタクリル酸メチルと共重合可能な単量体の中でも、特に、アクリル酸アルキルエステル類は、耐熱分解性に優れ、これを共重合させて得られるメタクリル系樹脂の成形加工時の流動性が高いため好ましい。
メタクリル酸メチルにアクリル酸アルキルエステル類を共重合させる場合のアクリル酸アルキルエステル類の使用量は、耐熱分解性の観点から、0.1質量%以上であることが好ましく、耐熱性の観点から15質量%以下であることが好ましい。0.2〜14質量%であることがさらに好ましく、1〜12質量%であることがとりわけ好ましい。
アクリル酸アルキルエステル類としては、アクリル酸メチル及びアクリル酸エチルが、少量メタクリル酸メチルと共重合させるだけでも前述の成形加工時の流動性の改良効果が著しく得られるため好ましい。
アクリル系樹脂(d)の質量平均分子量は、5万〜20万であることが好ましい。質量平均分子量は成形品の強度の観点から5万以上が好ましく、成形加工性、流動性の観点から20万以下が好ましい。さらに好ましい範囲は7万〜15万である。また、本発明においてはアイソタクチックポリメタクリル酸エステルとシンジオタクチックポリメタクリル酸エステルを同時に用いることもできる。
アクリル系樹脂(d)を製造する方法として、例えばキャスト重合、塊状重合、懸濁重合、溶液重合、乳化重合、アニオン重合等の一般に行われている重合方法を用いることができるが、光学用途としては微小な異物の混入はできるだけ避けることが好ましく、この観点からは懸濁剤や乳化剤を用いない塊状重合や溶液重合が好ましい。具体的には、特公昭63−1964等に記載されている方法等を用いることができる。
溶液重合を行う場合には、単量体の混合物をトルエン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素の溶媒に溶解して調整した溶液を用いることができる。塊状重合により重合させる場合には、通常行われるように加熱により生じる遊離ラジカルや電離性放射線照射により重合を開始させることができる。
重合反応に用いられる開始剤としては、ラジカル重合において用いられる任意の開始剤を使用することができ、例えばアゾビスイソブチルニトリル等のアゾ化合物、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート等の有機過酸化物を用いることができる。
特に、90℃以上の高温下で重合を行わせる場合には、溶液重合が一般的であるので、10時間半減期温度が80℃以上でかつ用いる有機溶媒に可溶である過酸化物、アゾビス開始剤などが好ましい。具体的には1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、シクロヘキサンパーオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、1,1−アゾビス(1−シクロヘキサンカルボニトリル)、2−(カルバモイルアゾ)イソブチロニトリル等を挙げることができる。これらの開始剤は、例えば、0.005〜5質量%の範囲で用いることができる。
重合反応に必要に応じて用いられる分子量調節剤としては、一般的なラジカル重合において用いる任意のものが使用でき、例えばブチルメルカプタン、オクチルメルカプタン、ドデシルメルカプタン、チオグリコール酸2−エチルヘキシル等のメルカプタン化合物が特に好ましいものとして挙げられる。これらの分子量調節剤は、アクリル系樹脂(d)の重合度が好ましい範囲内に制御されるような濃度範囲で添加される。
本発明で用いるアクリル系樹脂(d)としては、メタクリル酸エステルおよび/またはアクリル酸エステルと芳香族ビニル化合物と下記一般式[1]で表される化合物とを共重合して得られる共重合体が好ましい。
Figure 0004068120
(XはOまたは、N−Rを示す。Oは酸素原子、Nは窒素原子、Rは水素原子またはアルキル基である)
一般式[1]で表される化合物と共重合させるメタクリル酸エステルおよび/またはアクリル酸エステルとしては、メタクリル酸メチルが好ましい。芳香族ビニル化合物としては、α−メチルスチレン,α−メチル−p−メチルスチレン等のα−アルキル置換スチレ
ン等が挙げられ、好ましくはスチレンである。
上記一般式[1]で表される化合物としては、X=Oであるもの、すなわち無水マレイン酸が好ましい。さらに、耐熱性、光弾性係数の点から、共重合体中のメタクリル酸メチル単位は40〜90質量%、スチレン単位は5〜40質量%、マレイン酸単位は5〜20質量%からなり、かつマレイン酸単位に対するスチレン単位の割合が1〜3倍であることが好ましい。さらに好ましくは、共重合体中のメタクリル酸メチル単位が40〜90質量%、無水マレイン酸単位が5〜19質量%、スチレン単位が10〜40質量%であり、とりわけ好ましくは、共重合体中のメタクリル酸メチル単位が45〜88質量%、無水マレイン酸単位が6〜15質量%、スチレン単位が16〜40質量%である。
本発明で用いるアクリル系樹脂(d)のメルトインデックス(ASTM D1238;I条件)は、成形品の強度の観点から10g/10分以下であることが好ましい。より好ましくは6g/10分以下、さらに好ましくは3g/10分以下である。
アクリル系樹脂(d)は、脂肪族ポリエステル系樹脂(e)を含むことができる。
脂肪族ポリエステル系樹脂(e)としては、例えば、脂肪族ヒドロキシカルボン酸を主たる構成成分とする重合体、脂肪族多価カルボン酸と脂肪族多価アルコールを主たる構成成分とする重合体などが挙げられる。
脂肪族ヒドロキシカルボン酸を主たる構成成分とする重合体の具体例としては、ポリグリコール酸、ポリ乳酸、ポリ3−ヒドロキシ酪酸、ポリ4−ヒドロキシ酪酸、ポリ4−ヒドロキシ吉草酸、ポリ3−ヒドロキシヘキサン酸およびポリカプロラクトンなどが挙げられ、脂肪族多価カルボン酸と脂肪族多価アルコールを主たる構成成分とする重合体の具体例としては、ポリエチレンアジペート、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンアジペートおよびポリブチレンサクシネートなどが挙げられる。これらの脂肪族ポリエステル系樹脂(e)は、単独ないし2種以上を用いることができる。
これらの脂肪族ポリエステル系樹脂(e)の中でも、ヒドロキシカルボン酸を主たる構成成分とする重合体が好ましく、特にポリ乳酸系樹脂が好ましく使用される。これらの(e)成分は1種以上を用いることができる。
ポリ乳酸系樹脂としては、L−乳酸および/またはD−乳酸を主たる構成成分とする重合体が挙げられる。
ポリ乳酸系樹脂において、L−乳酸単位と、D−乳酸単位の構成モル比は、L−体とD−体あわせて100%に対し、L体ないしD体いずれかが85%以上が好ましく、より好ましくは一方が90%以上であり、さらに好ましくは一方が94%以上の重合体である。本発明においてはL−乳酸を主体とするポリL乳酸とD−乳酸を主体とするポリD乳酸を同時に用いることもできる。
ポリ乳酸系樹脂は、L体ないしD体以外の乳酸誘導体モノマーまたは、ラクチドと共重合可能な他成分を共重合していてもよく、このような成分としてはジカルボン酸、多価アルコール、ヒドロキシカルボン酸、ラクトン等が挙げられる。ポリ乳酸系樹脂は、直接脱水縮合、ラクチドの開環重合等公知の重合法で重合することができる。また必要に応じてポリイソシアネート等の結合剤を用いて、高分子量化することもできる。
ポリ乳酸系樹脂の好ましい質量平均分子量範囲は、機械的性質の観点から質量平均分子量が30,000以上であることが好ましく、加工性の観点から1000,000以下であることがより好ましい。さらに好ましくは50,000〜500,000、最も好ましくは100,000〜280,000である。
また、ポリ乳酸系樹脂には、本発明の目的を損なわない範囲で、乳酸以外の他の共重合成分0.1〜30質量%を含んでいてもよい。かかる他の共重合成分単位としては、例えば、多価カルボン酸、多価アルコール、ヒドロキシカルボン酸、ラクトンなどが挙げられ、具体的には、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸、フマル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、5−テトラブチルホスホニウムスルホイソフタル酸などの多価カルボン酸類;エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘプタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、ノナンジオール、デカンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノ−ル、ネオペンチルグリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ビスフェノールA、ビスフェノールにエチレンオキシドを付加反応させた芳香族多価アルコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどの多価アルコール類;グリコール酸、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ吉草酸、6−ヒドロキシカプロン酸、ヒドロキシ安息香酸などのヒドロキシカルボン酸類;グリコリド、ε−カプロラクトングリコリド、ε−カプロラクトン、β−プロピオラクトン、δ−ブチロラクトン、β−またはγ−ブチロラクトン、ピバロラクトン
、δ−バレロラクトンなどのラクトン類などを使用することができる。これらの共重合成分は、単独ないし2種以上を用いることができる。
脂肪族ポリエステル系樹脂(e)の製造方法としては、既知の重合方法を用いることができ、特にポリ乳酸系樹脂については、乳酸からの直接重合法、ラクチドを介する開環重合法などを採用することができる。
本発明において、アクリル系樹脂(d)と脂肪族ポリエステル系樹脂(e)よりなる樹脂組成物におけるアクリル系樹脂(d)の割合(質量部)は、アクリル系樹脂(d)と脂肪族ポリエステル系樹脂(e)の合計量100質量部に対して、光弾性係数、強度、耐熱性、ヘイズ値の点から0.1〜99.9質量部であることが好ましく、50〜99.9質量部であることがさらに好ましく、60〜95質量部であることがとりわけ好ましい。50質量部以上にすると、湿熱雰囲気下でのヘイズ値が低くなり好ましい。ヘイズ値が小さい、または変化が小さい場合、ディスプレイ用途等に好適に用いることが可能となる。
脂肪族ポリエステル系樹脂(e)の割合(質量部)は、アクリル系樹脂(d)と脂肪族ポリエステル系樹脂(b)の合計量100質量部に対して、光弾性係数、強度、耐熱性、ヘイズ値の点から0.1〜99.9質量部であることが好ましく、0.1〜50質量部であることがさらに好ましく、5〜40質量部であることがとりわけ好ましい。50質量部以下であると、湿熱雰囲気下でのヘイズ値が低くなり好ましい。ヘイズ値が小さい、または変化が小さい場合に、本発明をディスプレイ用途に好適に用いることが可能となる。
本発明において、保護フィルムの厚さは、ハンドリング性の観点から0.1μm以上であることが好ましく、当該技術分野で求められている薄肉化の観点から300μm以下が好ましい。そして、同様の理由から0.2〜250μmの範囲がさらに好ましく、0.3〜200μmの範囲がとりわけ好ましい。
偏光フィルムと保護フィルムとの貼合には、光学的に等方性を有する接着剤を用いるのが好ましく、かかる接着剤としては、ポリビニルアルコール系接着剤、ウレタン系接着剤、エポキシ系接着剤、アクリル系接着剤などが挙げられる。偏光フィルムと保護フィルムとの接着性が悪い場合は、保護フィルムに適宜、コロナ処理、プライマ処理、コーティング処理などの易接着処理を施してから、偏光フィルムと貼合することが好ましい。
偏光板の一方の面に本発明の光学素子用成形体を用いた保護フィルムを用い、他方の面にアクリル系樹脂(d)からなる保護フィルムを用いると、樹脂間の特性差による反りやカールといった不具合や、吸湿性の差に起因する応力による異常を生じることが少なくなる。
このような偏光板に用いられる偏光フィルムは、特に限定されるものではないが、例えば、一軸延伸された樹脂フィルムに二色性色素を吸着配向させた偏光フィルムが好ましい。
このような偏光フィルムは公知の方法を用いて製造することができ、例えば特開2002−174729号公報等に記載されている方法により製造することができる。具体的には以下の通りである。
偏光フィルムを構成する樹脂としては、ポリビニルアルコール系樹脂が好ましく、ポリ酢酸ビニル系樹脂をケン化することにより得られポリビニルアルコール系樹脂が好ましい。ここで、ポリ酢酸ビニル系樹脂としては、酢酸ビニルの単独重合体であるポリ酢酸ビニルのほか、酢酸ビニル及びこれと共重合可能な他の単量体の共重合体などが挙げられる。酢酸ビニルに共重合される他の単量体としては、例えば、不飽和カルボン酸類、オレフィン類、ビニルエーテル類、不飽和スルホン酸類などが挙げられる。また、ポリビニルアルコール系樹脂のケン化度は、85〜100モル%であることが好ましく、より好ましくは98〜100モル%である。このポリビニルアルコール系樹脂はさらに変性されていてもよく、例えば、アルデヒド類で変性されたポリビニルホルマールやポリビニルアセタールなども使用し得る。ポリビニルアルコール系樹脂の重合度は、1000〜10000であることが好ましく、より好ましくは1500〜10000である。
偏光フィルムは、例えば、樹脂からフィルムを作製して一軸延伸する工程、延伸されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムを二色性色素で染色してヨウ素や二色性染料を吸着させる工程、二色性色素が吸着されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムをホウ酸水溶液で処理する工程、ホウ酸水溶液による処理後に水洗する工程を経て製造できる。
一軸延伸は、二色性色素による染色の前に行ってもよいし、二色性色素による染色と同時に行ってもよいし、二色性色素による染色の後に行ってもよい。一軸延伸を二色性色素による染色後に行う場合、一軸延伸は、ホウ酸処理の前に行ってもよいし、ホウ酸処理中に行ってもよい。また、複数の段階で一軸延伸を行うことも可能である。
一軸延伸するには、周速の異なるロール間で一軸に延伸してもよいし、熱ロールを用いて一軸に延伸してもよい。また、大気中で延伸を行う乾式延伸であってもよいし、溶剤で膨潤した状態で延伸を行う湿式延伸であってもよい。延伸倍率は、通常4〜8倍程度である。
樹脂フィルムを二色性色素で染色するには、例えば、樹脂フィルムを、二色性色素を含有する水溶液に浸漬すればよい。ここで、二色性色素としては、例えば、ヨウ素や二色性染料が挙げられる。
二色性色素としてヨウ素を用いる場合は、ヨウ素及びヨウ化カリウムを含有する水溶液に、樹脂フィルムを浸漬して染色する方法が採用できる。この水溶液におけるヨウ素の含有量は、水100質量部あたり0.01〜0.5質量部程度であることが好ましく、ヨウ化カリウムの含有量は、水100質量部あたり0.5〜10質量部程度であることが好ましい。この水溶液の温度は、20〜40℃程度であることが好ましく、また、この水溶液への浸漬時間は、30〜300秒程度であることが好ましい。
二色性色素として二色性染料を用いる場合は、二色性染料を含む水溶液に、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを浸漬して染色する方法が採用できる。この水溶液における二色性染料の含有量は、水100質量部あたり1×10-3〜1×10-2質量部程度であるこ
とが好ましい。この水溶液は、硫酸ナトリウムなどの無機塩を含有していてもよい。この水溶液の温度は、20〜80℃程度であることが好ましく、また、この水溶液への浸漬時間は、30〜300秒程度であることが好ましい。
二色性色素による染色後のホウ酸処理は、染色された樹脂フィルムをホウ酸水溶液に浸漬することにより行われる。ホウ酸水溶液におけるホウ酸の含有量は、水100質量部あたり2〜15質量部程度であることが好ましく、さらに好ましくは5〜12質量部程度である。二色性色素としてヨウ素を用いる場合には、このホウ酸水溶液はヨウ化カリウムを含有するのが好ましい。ホウ酸水溶液におけるヨウ化カリウムの含有量は、水100質量部あたり2〜20質量部程度であることが好ましく、さらに好ましくは5〜15質量部である。ホウ酸水溶液への浸漬時間は、100〜1200秒程度あることが好ましく、より好ましくは150〜600秒程度、さらに好ましくは200〜400秒程度である。またホウ酸水溶液の温度は、50℃以上であることが好ましく、より好ましくは50〜85℃である。
ホウ酸処理後の樹脂フィルムは、水洗処理されることが好ましい。水洗処理は、例えば、ホウ酸処理されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムを水に浸漬することにより行われる。水洗後は適宜乾燥処理が施されて、偏光フィルムが得られる。水洗処理における水の温度は、5〜40℃程度であることが好ましく、浸漬時間は、2〜120秒程度であることが好ましく。その後に行われる乾燥処理は、熱風乾燥機や遠赤外線ヒーターを用いて行われることが好ましい。乾燥温度は、40〜100℃であることが好ましく。乾燥処理における処理時間は、120秒〜600秒程度であるあることが好ましい。
最終的なフィルム厚は、フィルムの取り扱い易さ、ディスプレイの薄肉化要求の観点から、5〜200μmが好ましく、10〜150μmが更に好ましく、15〜100μmがとりわけ好ましい。
次に実施例によって本発明を具体的に説明する。
本願発明および実施例で用いた評価法を説明する。
(1)評価方法
(I)光弾性係数の測定、固有複屈折正負の判断
(光弾性係数の測定)
Macromolecules 2004,37,1062−1066に詳細に記載される複屈折測定装置を用いる。レーザー光の経路にフィルムの引っ張り装置を配置し、幅7mmの樹脂又は樹脂組成物の試験片に23℃で伸張応力をかけながら、その複屈折を測定する。伸張時の歪速度は20%/分(チャック間:30mm、チャック移動速度:6mm/分とする。
このようにして測定した値について、複屈折(Δn)をy軸、伸張応力(σR)をx軸
としてプロットし、その関係から、最小二乗近似により初期線形領域の直線の傾きを求め、光弾性係数(CR)を算出する。傾きの絶対値が小さいほど光弾性係数が0に近いこと
を示し、好ましい光学特性であることを示す。
(固有複屈折正負の判断)
ガラス転移温度以上、ガラス転移温度+50℃以下の範囲内で伸張応力をかけながら延伸を行い、急冷固化し、23℃におけるnpr−nvtを測定する。npr−nvtが負の場合、固有複屈折が負、npr−nvtが正の場合、固有複屈折が正と判断する。
(II)全光線透過率の測定
ASTM D1003に準拠し測定を行う。
(III)分子量の測定
GPC(東ソー(株)製GPC−8020、検出RI、カラム昭和電工製Shodex K−805、801連結)を用い、溶媒はクロロホルム、測定温度40℃で、市販標準ポリスチレン換算で質量平均分子量を求める。
(IV)アクリロニトリル含量の測定
(スチレン−アクリロニトリル)共重合体を熱プレス機を用いてフィルムに成形し、日本分光社製FT−410を用いて、フィルムの1603cm-1、2245cm-1における吸
光度を測定する。あらかじめ求められている、(スチレン−アクリロニトリル)共重合体中のアクリロニトリル量と1603cm-1、2245cm-1の吸光度比の関係を用いて、
(スチレン−アクリロニトリル)共重合体中のアクリロニトリル含量を定量する。
(V)面内レタデーション(Re)、厚み方向レタデーション(Rth)およびNz係数(面内レタデーション(Re)の測定)
シックネスゲージを用いてフィルムの厚さd(nm)を測定する。この値を大塚電子(株)社製複屈折測定装置RETS−100に入力し、測定面が測定光と垂直になるように試料を配置し、23℃で回転検光子法により面内レタデーション(Re)を測定・算出する。
(厚み方向レタデーション(Rth)、Nzの測定)
Metricon社製レーザー屈折計Model2010を用いて、23℃で光学フィルムの平均屈折率nを測定する。そして、平均屈折率nとフィルム厚さd(nm)を大塚電子(株)社製複屈折測定装置RETS−100に入力し、23℃で厚み方向レタデーション(Rth)、Nz係数を測定・算出する。
(VI)分光透過率の測定
日立製作所製、U−3310を用いて分光スペクトルを測定し、380nmにおける透過率を求める。
(VII)偏光板の反りの測定
偏光板を200mm×200mmの正方形に裁断し、水平で平坦な台の上にフィルムの中央が台に接するように置き、23℃、50%RHの雰囲気下で72時間静置し、裁断したフィルムの四隅が台から反り上がった高さを平均して算出する。
(VIII)偏光板の高温多湿時の耐久性の測定
60℃、90%RH条件で1000時間保持した前後の偏光度を下式に従って求め、この値を用いて偏光度保持率を算出して耐久性を評価する。
偏光度(%)={〔(H2−H1)/(H2+H1)〕×1/2}×100
ここで、H2は2枚の偏光板の配向方向が同一方向になるように重ね合わせた状態で分光
光度計を用いて測定した値(平行透過率)であり、H1は2枚の偏光板の配向方向が互い
に直交方向になるように重ね合わせた状態で測定した値(直交透過率)である。偏光度の測定は、島津製作所UV−3150分光光度計を使用する。
偏光度保持率とは、60℃、90%RH条件、1000時間保持試験後の偏光度を試験前の偏光度で除した値に100を掛けた数値である。数値が大きいほど耐久性がよい。
(2)原料の準備
(I)光弾性係数が正、固有複屈折が負の樹脂(a)
1)スチレン−アクリロニトリル共重合体(a−1)
攪拌機付き完全混合型反応機に、スチレン72質量%、アクリロニトリル13質量%、エチルベンゼン15質量%からなる単量体混合物を連続的にフイードし、150℃、滞留時間2時間で重合反応を行った。
得られた重合溶液を押出機に連続的に供給し、押出機で未反応単量体、溶媒を回収し、スチレン−アクリロニトリル共重合体(a−1)のペレットを得た。
得られたスチレン−アクリロニトリル共重合体(a−1)は無色透明で、中和滴定による組成分析の結果、スチレン含量80質量%、アクリロニトリル含量20質量%であり、ASTM−D1238に準拠した220℃、10kg荷重のメルトフローレート値は13g/10分であった。また、その光弾性係数(未延伸)は、5.0×10-12Pa-1であ
り、固有複屈折は負であった。
2)スチレン−メタクリル酸共重合体(a−2)
装置の全てがステンレス鋼で製作されているものを用いて、連続溶液重合を行った。スチレン75.2質量%、メタクリル酸4.8質量%、エチルベンゼン20質量%を調合液とし、重合開始剤として1,1−tert−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンを用いる。この調合液を1L/hr.の速度で連続して、内容積2Lの攪拌機付きの完全混合重合器へ供給し、136℃で重合を行った。
固形分49%を含有する重合液を連続して取り出し、まず230℃に予熱後、230℃に保温し、20torrに減圧された脱揮器に供給し、平均滞留0.3時間経過後、脱揮器の低部のギヤポンプより連続して排出した。
得られたスチレン−メタクリル酸共重合体(a−2)は無色透明で、中和滴定による組成分析の結果、スチレン含量92質量%、メタクリル酸含量8質量%であった。ASTM−D1238に準拠して測定した230℃、3.8kg荷重のメルトフローレート値は5.2g/10分であった。また、その光弾性係数(未延伸)は、4.8×10-12Pa-1
であり、固有複屈折は負であった。
3)スチレン−無水マレイン酸共重合体(a−3)
装置の全てがステンレス鋼で製作されているものを用いて、連続溶液重合を行った。スチレン91.7質量部、無水マレイン酸8.3質量部の比率で合計100質量部を準備した。(ただし、両者は混合しない。)メチルアルコール5質量部、重合開始剤として1,1−tert−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン0.03質量部をスチレンに混合し、第1調合液とした。0.95kg/hr.の速度で連続して内容積4Lのジャケット付き完全混合重合機に供給した。
一方、70℃に加熱した無水マレイン酸を、第二調合液として0.10kg/hr.の速度で同一重合機へ供給し、111℃で重合を行う。重合転化率が54%となったところで、重合液を重合機から連続して取り出し、まず230℃に予熱後、230℃に保温し、20torrに減圧された脱揮器に供給し、平均滞留0.3時間経過後、脱揮器の低部のギヤポンプより連続して排出し、スチレン−無水マレイン酸共重合体(a−3)を得た。 得られたスチレン−無水マレイン酸共重合体(a−3)は無色透明で、中和滴定による組成分析の結果、スチレン含量85質量%、無水マレイン酸単位15質量%であった。ASTM−D1238に準拠して測定した230℃、2.16kg荷重のメルトフローレート値は2.0g/10分であった。また、その光弾性係数(未延伸)は、4.1×10-1
2Pa-1であり、固有複屈折は負であった。
(II)光弾性係数が負、固有複屈折が負の樹脂(b)
1)メタクリル酸メチル−アクリル酸メチル共重合体(b−1)
メタクリル酸メチル89.2質量部、アクリル酸メチル5.8質量部およびキシレン5質量部からなる単量体混合物に、1,1−ジ−t−ブチルパ−オキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン0.0294質量部、およびn−オクチルメルカプタン0.115質量部を添加し、均一に混合した。この溶液を内容積10Lの密閉式耐圧反応器に連続的に供給し、攪拌下に平均温度130℃、平均滞留時間2時間で重合した後、反応器に接続された脱気設備つきの貯槽に連続的に送り出して揮発分を除去した。さらに押出機に連続的に溶融状態で移送し、押出機にて(メタクリル酸メチル−アクリル酸メチル(b−1)共重合体のペレットを得た。
得られたメタクリル酸メチル−アクリル酸メチル共重合体(b−1)のアクリル酸メチル含量は6.0質量%、質量平均分子量は145,000、ASTM−D1238に準拠して測定した230℃、3.8キログラム荷重のメルトフローレート値は1.0g/10分であった。また、その光弾性係数(未延伸)は、−4.2×10-12Pa-1であり、固
有複屈折は負であった。
2)メタクリル酸メチル−アクリル酸メチル共重合体(b−2)
メタクリル酸メチル93.2質量部、アクリル酸メチル2.3質量部、及びキシレン3.3質量部からなる単量体混合物に、1,1−ジ−t−ブチルパーオキシ−3,3,3−トリメチルシクロヘキサン0.03質量部、及びn−オクチルメルカプタン0.12質量部を添加し、均一に混合する。この溶液を内容積10Lの密閉耐圧反応器に連続的に供給し、攪拌下に平均温度130℃、平均滞留時間2時間で重合した後、反応器に接続された貯層に連続的に送り出し、一定条件下で揮発分を除去した。さらに押出機に連続的に溶融状態で移送し、メタクリル酸メチル−アクリル酸メチル共重合体(b−2)のペレットを得た。
得られたメタクリル酸メチル−アクリル酸メチル共重合体(b−2)のアクリル酸メチル含量は2.0%、質量平均分子量は102,000、ASTM−D1238に準拠して測定した230℃3.8kg荷重のメルトフロー値は2.0g/10分であった。また、その光弾性係数(未延伸)は、−4.4×10-12Pa-1であり、固有複屈折は負であっ
た。
(III)紫外線吸収剤(c)
ベンゾトリアゾール系化合物(c−1)(旭電化(株)社製、アデカスタブLA−31(融点(Tm):195℃)を用いた。理学電気(株)社製、ThermoPlus TG8120を用いて、23℃から260℃まで20℃/minの速度で昇温した場合の質量減少率を測定したところ、0.03%であった。
(IV)ポリカーボネート
比較例として、ポリカーボネート(旭化成(株)製 WONDERLITE PC−110)を使用した。このポリカーボネートの光弾性係数(未延伸)は70×10-12Pa-
1であり、固有複屈折は正であった。
(V)アクリル系樹脂(d)
1)メタクリル酸メチル/アクリル酸メチル共重合体(d−1)
前述のメタクリル酸メチル/アクリル酸メチル共重合体(b−1)を、メタクリル酸メチル/アクリル酸メチル共重合体(d−1)として用いた。
2)耐熱アクリル系樹脂(d−2)
特公昭63−1964号公報に記載の方法で、メタクリル酸メチル−無水マレイン酸−スチレン共重合体を得た。
得られたメタクリル酸メチル−無水マレイン酸−スチレン共重合体(d−2)の組成は、メタクリル酸メチル74質量%、無水マレイン酸10質量%、スチレン16質量%であり、共重合体メルトフローレート値(ASTM−D1238;230℃、3.8kg荷重)は1.6g/10分であった。
(VI)脂肪族ポリエステル系樹脂(e)
ポリ乳酸(e−1)(カーギルダウ社製4032D)を用いた。
[実施例1、3〜5および比較例1〜4、9、12]
表1に記載の配合比の樹脂組成物を用い、テクノベル製Tダイ装着押し出し機(KZW15TW−25MG−NH型/幅150mmTダイ装着/リップ厚0.5mm)を用いて、スクリュー回転数、押し出し機のシリンダー内樹脂温度、Tダイの温度を調整し押し出し成形をすることにより未延伸フィルムを得た。
各未延伸フィルムの組成、押し出し成形条件、フィルムの厚み、光弾性係数を表1に示す。また、比較のため、市販のTAC(トリアセチルセルロース)フィルム(LOFO High Tech Film社製 商品名TACPHAN、光弾性係数は正、固有複屈折は正)の光弾性係数を比較例4として示す。
本発明の未延伸フィルム(実施例1、3〜5)は、いずれも光弾性係数の絶対値が小さく、透明性も高かった。これに対して、従来位相差フィルムに利用されているポリカーボネートから得られた未延伸フィルム(比較例3)や、偏光板の保護フィルムとして利用されているTACフィルム(比較例4)は、光弾性係数の絶対値が非常に大きかった。また、樹脂(a)、樹脂(b)をそれぞれ単独で用いたフィルム(比較例1、2、9、12)は、両者を混合した実施例1、3〜5と比べて光弾性係数の絶対値が大きかった。
Figure 0004068120
[実施例2、および比較例5、6、7]
テクノベル製Tダイ装着押し出し機(KZW15TW−25MG−NH型/幅150mmTダイ装着/リップ厚0.5mm)を用いて、スクリュー回転数、押し出し機のシリンダー内樹脂温度、Tダイの温度を調整し押し出し成形をすることにより未延伸フィルムを得た。フィルムの流れ(押し出し方向)をMD方向、MD方向に垂直な方向をTD方向とした。
次に得られた未延伸フィルムの幅を50mmになるように切り出し、一軸延伸(チャック間:50mm、チャック移動速度:500mm/分)を引っ張り試験機を用いて行い、実施例2、比較例5〜7の一軸延伸フィルムを得た。
各一軸延伸フィルムの組成、押し出し成形条件、延伸条件、フィルム特性を表2に示す。また、比較のため、市販のTAC(トリアセチルセルロース)フィルム(LOFO High Tech Film社製 商品名TACPHAN、光弾性係数は10×10-12
Pa-1、固有複屈折は正)の光弾性係数を比較例4として示す。
本発明の一軸延伸フィルム(実施例2)は光弾性係数の絶対値が小さく、比較例の一軸延伸フィルム(比較例5〜6)は光弾性係数の絶対値が大きかった。
また、本発明の一軸延伸フィルム(実施例2)は位相差フイルムとして利用するのに十分な複屈折性を示し、Rthの値も負であった。
Figure 0004068120
[実施例6〜25、比較例13〜15]
表3に記載の組成の樹脂組成物を用い、プラスチック工学研究所製Tダイ装着押し出し機(BT−30−C−36−L型/幅400mmTダイ装着/リップ厚0.8mm)を用いて、スクリュー回転数、押し出し機のシリンダー内樹脂温度、Tダイの温度を調整し押し出し成形をすることにより未延伸フィルムを得た。
未延伸フィルムに対するフィルムの流れ(押し出し方向)(MD方向)一軸延伸は、市金工業社製、ロール式縦延伸機を用いて行った。目標とする設定延伸倍率にするために二つのロール(低速側ロール/高速側ロール)の回転速度を変えてロール間で連続的に延伸を行った。
引き続き得られた縦一軸延伸フィルムのMD方向に垂直な方向(TD方向)延伸は、市金工業社製テンター延伸機を用いて連続的に行った。目標とする設定延伸倍率にするために流れ速度2m/分で、テンターチャック間の距離を変えて延伸を行った。
各フィルムの組成、押し出し成形条件、延伸条件、フィルム特性を表3に示す。
実施例6〜25のフィルムは、いずれも光弾性係数の絶対値が小さく、全光線透過率が高く、延伸することにより高い複屈折性を示した(実施例7〜17、19〜25)。一方、樹脂(a)、樹脂(b)をそれぞれ単独で用いた比較例13〜15のフイルムは、両者を配合した実施例6〜25のフィルムと比べて光弾性係数の絶対値が大きかった。
そして、実施例6〜9、実施例12〜14、実施例15〜17、実施例18、19の結果より、フィルムの複屈折性(nx−ny)、Re、Rthの値は延伸条件によっても大きく変化することが確認できた。これにより、本発明においては、延伸条件を調整することにより、Re、Rthを制御できることが確認できた。
さらに、実施例20〜22と実施例23〜25の比較から、紫外線吸収剤を、樹脂(a)及び樹脂(b)合計100質量部に対して1質量部程度添加することにより、光弾性係数に大きな影響を与えることなく紫外線を遮蔽できることが確認できた。
Figure 0004068120
[実施例26〜30]
表4に記載の組成の樹脂組成物を用い、プラスチック工学研究所製Tダイ装着押し出し機(BT−30−C−36−L型/幅400mmTダイ装着/リップ厚0.8mm)を用いて、スクリュー回転数、押し出し機のシリンダー内樹脂温度、Tダイの温度を調整し押し出し成形をすることにより未延伸フィルムを得た。
次に、得られた未延伸フィルムを、その長さがテンター投入口のチャック間の距離1/2になるように切り出し、フィルムの流れ(押し出し方向)に垂直な方向(TD方向)一軸延伸を、市金工業社製テンター延伸機を用いて行った。目標とする設定延伸倍率にするために流れ速度2m/分で、テンターチャック間の距離を変えて延伸を行った。
各一軸延伸フィルムの組成、押し出し成形条件、延伸条件、フィルム特性を表4に示す。
実施例26〜30の一軸延伸フィルムは、いずれも、光弾性係数の絶対値が小さく、Nz値がゼロに近かった。
また、実施例27〜30の結果から、フィルムを構成する樹脂組成物中の樹脂(a)の配合量が増加するにつれ、フィルムの光弾性係数の値も増加することが確認できた。これにより、本発明においては樹脂(a)と樹脂(b)の配合量を調整することにより、樹脂組成物の光弾性係数を制御できることが確認できた。
Figure 0004068120
[実施例31〜41、比較例16]
(実施例31〜34、試験例1〜3の保護フィルムの製造)
表5に記載の組成の樹脂組成物を用い、実施例6〜25と同様にして二軸延伸を行い、実施例31〜34、試験例1〜3の偏光板保護フィルムを製造した。成形、延伸条件、フィルム厚み、Reを表5に示す。
Figure 0004068120
(トリアセチルセルロース系保護フィルム(TAC−1)の製造)
従来技術の偏光板保護フィルムの代表例としてトリアセチルセルロース系フィルムを以下の様にして製造した。
トリアセチルセルロース21質量部、トリフェニルホスフェート(可塑剤)2質量部およびビフェニルジフェニルホスフェート(可塑剤)1質量部を、メチレンクロライド62質量部、メタノール12質量部およびn−ブタノール2質量部に溶解してドープを調製した。ドープをエンドレスの金属支持体上に流延し、フィルムを支持体上に形成した。フィルム中の有機溶剤の量が60質量%になるまでフィルムを支持体上で乾燥し、フィルムを支持体から剥ぎ取った。
テンターを用いてフィルムの横方向の寸法を固定し、その状態で、フィルム中の有機溶剤の量が15質量%になるまで、3分間、フィルムを両面から乾燥した(一次乾燥)。フィルムを支持体から剥ぎ取ってから、フィルムの一次乾燥が終了するまでの間のフィルムの縦方向の寸法の伸び率は、4.5%であった。さらに、ローラーを用いてフィルム中の有機溶剤の量が0.5質量%になるまで、フィルムを乾燥した(二次乾燥)。得られたフィルムを巻き取り、最後に表面にケン化処理を施して厚さが80μmのトリアセチルセルロースフィルムを作製した。このフィルムの面内レタデーションは5nmであった。
(シクロオレフィン系保護フィルム(COP−1)の製造)
従来技術の偏光板保護フィルムの代表例として非晶性ポリオレフィン系樹脂であるシクロオレフィン系樹脂フィルムを以下の様にして製造した。
環状ポリオレフィンとしてエチレンとノルボルネンとの付加重合を行い、エチレン−ノルボルネンランダム共重合体(エチレン含量:65mol%、MFR:31g/10分、数平均分子量:68000)を製造した。ここで得た樹脂100質量部をシクロヘキサン80質量部、トルエン80質量部、キシレン80質量部の混合溶剤に溶解し、流延法により厚さ80μmのフィルムを作製した。このフィルムの面内レタデーションは6nmであった。
(偏光フィルムの製造)
ポリ酢酸ビニルをケン化後(ケン化度98モル%)、成形し、得られたポリビニルアルコールフィルム(厚さ75μm)を水1000質量部、ヨウ素7質量部、ヨウ化カリウム105質量部からなる水溶液に5分間浸漬し、フィルムにヨウ素を吸着させた。次いでこのフィルムを40℃の4質量%ホウ酸水溶液中で、5倍に縦方向一軸延伸をした後、緊張状態のまま乾燥して偏光フィルムを得た。
(実施例35〜41、比較例16の偏光板の製造)
接着剤としてポリビニルアルコール系樹脂の10%水溶液を用いて、偏光フィルムの両面に実施例31〜34、試験例1〜3の保護フィルムを表6に示す組み合わせで貼り合わせ、偏光板を得た。
実施例35〜41、比較例16の偏光板の反り、偏光度保持率を表6に示す。
表6より、保護フィルムとして、本発明の光学補償フィルムを用いた偏光板は、反りが少なく、高温多湿時の耐久性にも優れることが確認できた。
Figure 0004068120
に、本発明の光学補償フィルム液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ、フィールドエミッションディスプレイ、リアプロジェクションテレビ等のディスプレイに用いられる偏光板保護フィルムや、1/4波長板、1/2波長板等の位相差板、視野角制御フィルム等の液晶光学補償フィルムとして好適に用いることができる。
とりわけ、本発明の光学補償フィルムは、厚み方向レタデーションが負の値であることが望まれるIPSモードの液晶表示装置用位相差フイルムとして好適に用いることができる。

Claims (12)

  1. 23℃における未延伸時の光弾性係数が正でかつ固有複屈折が負であり、アクリロニトリル含量が1〜40質量%であるスチレン−アクリロニトリル共重合体、メタクリル酸含量が0.1〜50質量%であるスチレン−メタクリル酸共重合体及び無水マレイン酸含量が、0.1〜50質量%であるスチレン無水マレイン酸共重合体からなる群から選択されるスチレン系樹脂(a)と、
    23℃における未延伸時の光弾性係数が負でかつ固有複屈折が負であるアクリル系樹脂(b)を含む樹脂組成物からなる光学補償フィルムであって、
    前記樹脂組成物中の樹脂(a)、樹脂(b)の含有量の合計が80質量%以上であり、
    前記樹脂組成物中の樹脂(a)と樹脂(b)の質量比((a)/(b))が、20/80〜80/20である光学補償フィルム。
  2. 前記樹脂組成物100質量部に対して、紫外線吸収剤(c)を0.1〜10質量部含む請求項1に記載の光学補償フィルム。
  3. 23℃における光弾性係数が、−4×10-12〜4×10-12Pa-1である請求項1又は2に記載の光学補償フィルム。
  4. 23℃における光弾性係数が、−4×10-12〜4×10-12Pa-1であり、かつ380nmにおける分光透過率が5%以下である請求項3に記載の光学補償フィルム。
  5. 押し出し成形により成形されたフィルムである請求項1〜4いずれか1項に記載の光学補償フィルム。
  6. キャスト成形により成形されたフィルムである請求項1〜4いずれか1項に記載の光学補償フィルム。
  7. 請求項1〜6のいずれか1項に記載の光学補償フィルムを用いた位相差フィルム。
  8. 厚み方向レタデーション(Rth)の値が、−300〜−1nmである請求項7に記載の位相差フィルム。
  9. 面内レタデーション(Re)と厚み方向レタデーション(Rth)の比(Re/Rth)の絶対値が、3以下である請求項7または8に記載の位相差フィルム。
  10. z係数が、−5〜0である請求項7〜9のいずれか1項に記載の位相差フィルム。
  11. 請求項1〜6のいずれか1項に記載の光学補償フィルムを用いた偏光板保護フィルム。
  12. 偏光フィルムの一方の面に請求項11に記載の保護フィルムであってReが10nm以上の保護フィルムを積層し、他方の面にアクリル系樹脂からなりReが10nm以下の保護フィルムを積層した偏光板。
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