JP4067039B2 - 周期分極反転構造の形成方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば擬似位相整合方式の第二高調波発生デバイスに適した光導波路素子の製造に利用できる、周期分極反転構造の形成に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
光情報処理技術全般において、高密度光記録を実現するためには、波長400−430nm程度の青色光を,30mW以上の出力で安定的に発振する青色光レーザーが要望されており、開発競争が行われている。青色光光源としては、赤色光を基本波として発振するレーザーと、疑似位相整合方式の第二高調波発生素子とを組み合わせた光導波路型の波長変換素子が期待されている。
【0003】
このような素子を製造するためには、所定の周期を有する周期分極反転構造を素子内に形成することが必要である。この方法としては、いわゆる電圧印加法が知られている。図17は、電圧印加法によって、強誘電体単結晶基板4内に周期分極反転構造を形成するプロセスを模式的に示す斜視図である。
【0004】
この方法においては、強誘電体単結晶からなるオフカット基板4を使用する。基板4の表面4aに第一の電極30および第三の電極31を形成し、裏面4bに第二の電極(一様電極)8Aを形成する。第一の電極30は、複数の周期的に配列された細長い電極片2と、多数の電極片を接続する細長い給電電極1とからなる。第三の電極31は細長い対向電極片5からなっており、対向電極片5は、電極片2の先端に対向するように設けられている。
【0005】
この基板を構成する強誘電体単結晶の分極方向Bは、主面4a、4bに対して所定角度、例えば5°傾斜しているので、オフカット基板と呼ばれている。最初に基板4の全体を15Bの方向に分極させておく。そして、例えば電極30と31との間にV1の電圧を印加し、電極30と電極8Aとの間にV2の電圧を印加すると、各電極片2の先端から分極反転部33が矢印Bと平行に徐々に進展する。分極反転部33における分極方向15Aは、15Bとは正反対になる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者は、電圧印加法によって、例えばニオブ酸リチウムやタンタル酸リチウム単結晶基板に周期分極反転構造を形成しようと試みてきた。しかし、この過程で、電極片の先端から十分な深さの分極反転部を形成できるようなパルス電圧を印加すると、強誘電体単結晶基板(あるいはウエハー)にダメージが発生することがあった。このダメージは、例えば図16に丸印中に示すようなダメージである。こうした強誘電体単結晶のダメージは、素子特性や他のプロセスに悪影響を及ぼす。具体的には、第二高調波発生素子(SHG素子)を作製すると、第二高調波出力の低下および歩留りの低下が生ずる。また、光導波路を加工によって形成した後には、KOHなどによってエッチング洗浄を行う。この際、ダメージ個所からKOHエッチャントがしみ込み、アンダークラッドであるSiO2層を侵食することがあった。
【0007】
本発明の課題は、強誘電体単結晶基板の一表面上に設けられた第一の電極と、この第一の電極と対向するように基板に設けられた第二の電極との間に電圧を印加することにより、強誘電体単結晶基板内に周期分極反転構造を形成するのに際して、電圧印加の際に強誘電体単結晶にダメージが発生するのを抑制することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
以下、各態様の発明について、図面を参照しつつ順次説明する。
【0009】
第一の態様に係る発明は、強誘電体単結晶基板の一表面上に設けられた第一の電極と、この第一の電極と対向するように基板に設けられた第二の電極との間に電圧を印加することにより、基板内に周期分極反転構造を形成する方法であって、
第一の電極が、周期的に配列された複数の電極片からなる電極片配列体、電極片に対して給電するための給電電極、および給電電極に対して接続されているプロービングパッドを備えており、給電電極のプロービングパッドとは反対側の終端部に電極片の幅よりも大きい幅を有する拡幅片部を備えていることを特徴とする。
【0010】
この態様において好ましくは、拡幅片部の末端のコーナー部の輪郭が湾曲している。
【0011】
最初に、本発明者は、図15に示すような設計の電極を用い、電圧印加法によって周期分極反転構造を形成した。ここで、強誘電体単結晶基板の裏面側の第二の電極は、裏面全体に設けられた一様電極8Aである(図17参照)。第一の電極30および第三の電極31の平面的パターンを図15に示す。第一の電極30においては、複数列、例えば3列の細長い給電電極1A、1B、1Cの各終端部が、共通のプロービングパッド6に対して接続されている。各給電電極1A、1B、1Cには、それぞれ多数の細長い電極片2が形成されている。これらの電極片2は、目的とする周期分極反転構造の周期に合わせて一定周期で形成されており、給電電極の長手方向へと向かって多数配列されており、これによって電極片配列体32を構成している。32aは、電極片配列体32の一方の終端部であり、32bは、電極片配列体32の他方の終端部である。
【0012】
第三の電極31は、複数列、例えば4列の対向電極片5A、5B、5C、5Dと、これらの対向電極片に接続されている共通の給電電極10とを備えている。各対向電極片5A、5B、5Cは、それぞれ、各電極片配列体32と所定間隔をおいて対向している。対向電極片5Dは給電電極1Cと対向している。
【0013】
本発明者は、第三の電極31を浮動状態とし、第一の電極と第二の電極との間に数kVのパルス状の電圧を印加し、周期分極反転構造の形成を試みた。ところが、強誘電体単結晶内にダメージが発生することがあった。例えば図16に示すように、電極片配列体32のプロービングパッド6と反対側の終端部32b付近、給電電極1A、1B、1Cのプロービングパッド6側と反対側の終端部1bにおいて、ウエハーにダメージが生じることがあった。
【0014】
なお、図16においては、電極片配列体の終端部32b付近の写真を示す。この写真を撮影する際には、周期分極反転構造を形成した後に、フッ硝酸によってウエハーの表面をエッチングし、電極30、31を取り除いてある。また、強誘電体単結晶は、MgOが5%添加されたLiNbO3である。この写真において、丸印の黒く観察されているところがダメージである。
【0015】
第一の態様においては、例えば図1に示すように、第一の電極において、周期的に配列された複数の電極片2からなる電極片配列体32、電極片2に対して給電するための給電電極1、および給電電極1に対して接続されているプロービングパッドを設ける。この際、給電電極1のプロービングパッドとは反対側の終端部1bに、電極片2の幅aよりも大きい幅bを有する拡幅片部7を設ける。好ましくは、拡幅片部のコーナー部7a、7bの輪郭を湾曲させ、角をとった。
【0016】
このような形状とすることで、電圧印加の際に、電極片配列体32の終端部32bおよび給電電極1の終端部1b付近における電荷の集中が緩和され、ダメージを回避することが可能となった。
【0017】
図2には、図16と同様の写真を示す。ここで、図1に示すような形態の第一の電極を使用しており、強誘電体単結晶は、MgOが5%添加されたLiNbO3である。図16において観察された黒いダメージが生じていないことを確認できる。なお、この実施例においては、各電極片2の幅aを0.3μmとし、周期Λを2.8μmとし、長さを100μmとした。また、拡幅片部7の幅bを50μmとした。コーナー部7a、7bの輪郭は、長径100μm、短径50μmの楕円状とした。拡幅片部7の長さは100μmであり、電極片2の長さと同じである。
【0018】
第一の態様の発明においては、拡幅片部7の幅bと電極片2の幅aとの比率b/aは、ダメージ防止という観点からは30以上であることが好ましく、100以上であることが更に好ましい。b/aの上限は特にないが、拡幅片部7の幅をある程度以上大きくしても、ダメージ防止の効果への寄与は少なく、かえって材料の無駄が生ずるので、この観点からはb/aは1000以下であることが好ましい。
【0019】
コーナー部7a、7bの輪郭の形態は、湾曲していれば特に限定されない。しかし、真円形、楕円形、レーストラック形状、放物線、正弦曲線(余弦曲線)であることが好ましい。また、この輪郭の曲率半径は、2〜50μmとすることが好ましい。
【0020】
第二の態様に係る発明は、強誘電体単結晶基板の一表面上に設けられた第一の電極と、この第一の電極と対向するように基板に設けられた第二の電極との間に電圧を印加することにより、基板内に周期分極反転構造を形成する方法であって、
第一の電極が、周期的に配列された複数の電極片からなる電極片配列体、電極片に対して給電するための給電電極、および給電電極に対して接続されているプロービングパッドを備えており、給電電極のプロービングパッドとは反対側の終端部の外側に、給電電極と接続されていない浮動電極を備えていることを特徴とする。
【0021】
好適な実施形態においては、複数の浮動電極が、電極片の配列方向に向かって配列されている。
【0022】
図3は、この実施形態において、給電電極1のプロービングパッドとは反対側の終端部1bおよびその周辺の平面的パターンを示す。本例においては、電極片配列体32の終端部32bの外側に、給電電極1に対して接続されていない細長い浮動電極3A〜3Fが形成され、配列されている。各浮動電極は細長いストライプ状である。そして、複数の浮動電極3A、3Fが、電極片2の配列方向Aに向かって配列されている。
【0023】
このようなパターンであっても、給電電極の終端部1bおよび電極片配列体32の終端部32bの周辺の電気抵抗が大きくなり、電荷の集中が緩和され、ダメージを回避することが可能となった。
【0024】
図4には、図16と同様の写真を示す。ここで、図3に示すような形態の第一の電極を使用しており、強誘電体単結晶は、MgOが5%添加されたLiNbO3である。図16において観察された黒いダメージが生じていないことを確認できる。なお、この実施例においては、各電極片2の幅aを0.3μmとし、周期Λを2.8μmとし、長さを100μmとした。また、浮動電極3A〜3Fの幅を0.3μmとし、周期を2.8μmとした。浮動電極3Aの長さdmを150μmとし、最も外側の浮動電極3Fの長さdeを50μmとした。ただし、浮動電極3Aから最も外側の浮動電極3Fまでの合計距離は100μmであり、従って浮動電極の本数は6本ではないことを注意する。
【0025】
第二の態様の発明においては、浮動電極の長さdが、給電電極に最も近い浮動電極3Aから末端の浮動電極3Fへと向かって小さくなっていることが好ましい。これによって、末端の浮動電極3Fに近づくのにつれて電気抵抗が増大し、電荷の局部的な集中を抑制するのに効果的である。
【0026】
この場合には、給電電極1に最も近い浮動電極3Aの長さdmと、末端の浮動電極3Fの長さdeとの比率dm/deは、電荷の局部的な集中を抑制するという観点からは1.2以上であることが好ましく、3.0以上であることが更に好ましい。
【0027】
また、好適な実施形態においては、複数の浮動電極の各端部を結ぶ仮想線が、給電電極に最も近い浮動電極から最も遠い浮動電極へと向かって湾曲している。例えば、図5に示す例では、浮動電極3A〜3Gの各端部を結ぶ仮想線35が、給電電極1に最も近い浮動電極3Aから末端の浮動電極3Gへと向かって湾曲している。この湾曲形状は特に限定されない。しかし、真円形、楕円形、レーストラック形状、放物線、正弦曲線(余弦曲線)であることが好ましい。この場合には、浮動電極における電気抵抗値が末端の浮動電極へと向かって段階的に増大するので、電荷の局部的な集中を抑制するという観点からは一層好ましい。
【0028】
また、好適な実施形態においては、複数の浮動電極の幅が、給電電極に最も近い浮動電極から末端の浮動電極へと向かって小さくなっている。この場合にも、浮動電極における電気抵抗値が末端の浮動電極へと向かって増大するので、電荷の局部的な集中を抑制するという観点から好ましい。例えば、図6に示す例においては、浮動電極の幅eが、給電電極1に最も近い浮動電極から末端の浮動電極へと向かって小さくなっている。
【0029】
本実施形態においては、給電電極1に最も近い浮動電極3Aの幅emと、末端の浮動電極3Gの幅eeとの比率em/eeは、電荷の局部的な集中を抑制するという観点からは1.5以上であることが好ましく、3.0以上であることが更に好ましい。
【0030】
また、好適な実施形態においては、隣接する浮動電極の間隔が、給電電極に最も近い浮動電極から最も遠い浮動電極へと向かって大きくなっている。この場合にも、浮動電極における電気抵抗値が末端の浮動電極へと向かって増大するので、電荷の局部的な集中を抑制するという観点から好ましい。例えば、図7に示す例においては、隣接する浮動電極の間隔fが、給電電極に最も近い浮動電極から末端の浮動電極へと向かって大きくなっている。
【0031】
本実施形態においては、給電電極1に最も近い浮動電極3Aと隣接の浮動電極3Bとの間隔fmと、末端の浮動電極3Eと隣接の浮動電極3Dとの間隔feとの比率fm/feは、電荷の局部的な集中を抑制するという観点からは1.2以上であることが好ましく、2以上であることが更に好ましい。
【0032】
本発明外の参考態様では、強誘電体単結晶基板の一表面上に設けられた第一の電極と、基板の裏面上に設けられた第二の電極との間に電圧を印加することにより、基板内に周期分極反転構造を形成する。第一の電極が、周期的に配列された複数の電極片からなる電極片配列体、電極片に対して給電するための給電電極、および給電電極に対して接続されているプロービングパッドを備えており、一表面に第一の電極と第二の電極とを投影したときに、第二の電極の少なくとも一方の終端部が電極片配列体の終端の内側に配置されていることを特徴とする。
【0033】
図8、図9を参照しつつ、本態様の発明について更に説明する。本例では、強誘電体単結晶からなるオフカット基板4を使用する。基板4の表面4aに第一の電極30および第三の電極31を形成し、裏面4bに第二の電極(一様電極)8を形成する。第一の電極30は、複数の周期的に配列された細長い電極片2と、多数の電極片を接続する細長い給電電極1と、給電電極1の終端部に接続されたプロービングパッド6とを備えている。第三の電極は細長い対向電極片5からなっており,対向電極片5は、電極片2の先端に対向するように設けられている。
【0034】
ここで、裏面上の第二の電極8の形態を図9に点線で示す。そして、第一の電極および第二の電極を共通の平面4aに投影すると、第二の電極8の終端部8a、8bが、電極片配列体32の終端部32a、32bの内側に配置されている。なお、この要件は、第二の電極8の終端部8aで満足されているか、あるいは、終端部8bで満足されていれば良い。
【0035】
このように構成することで、表面電極30と裏面電極8との間で電圧を印加したときに、電極片配列体32の終端部32a、32bにおいて裏面の電極8との重複がないので、終端部32a、32bに電荷が集中しにくく、ダメージを回避することが可能である。
【0036】
終端部32aと8aとの間隔、あるいは、終端部32bと8bとの間隔gは、終端部における電荷の集中を抑制し、ダメージを防止するという観点からは、0.6mm以上が好ましく、1.0mm以上が更に好ましい。
【0037】
本発明外の他の参考態様では、強誘電体単結晶基板の一表面上に設けられた第一の電極と、基板の裏面上に設けられた第二の電極との間に電圧を印加することにより、基板内に周期分極反転構造を形成する。第一の電極が、周期的に配列された複数の電極片からなる電極片配列体、電極片に対して給電するための給電電極、および給電電極に対して接続されているプロービングパッドを備えており、一表面に第三の電極が設けられており、この第三の電極が、電極片配列体と対向する対向電極片を備えており、対向電極片の少なくとも一方の終端が電極片配列体の終端の内側に配置されている。
【0038】
この態様において好ましくは、第三の電極が、対向電極片に接続されている導電性接続部を備えている。
【0039】
このような構成することで、電極片配列体の終端部およびその周辺における電荷の集中を抑制でき、これによって強誘電体単結晶のダメージを防止できる。
【0040】
図10は、この態様の実施例の電極パターンを示す。第一の電極30が、周期的に配列された複数の電極片2からなる電極片配列体32、電極片2に対して給電するための給電電極1A、1B、および給電電極1A、1Bに対して接続されているプロービングパッド6を備えている。また、第三の電極31が、電極片配列体32と対向する対向電極片5A、5Bと、対向電極片に接続されている導電性接続部10を備えている。対向電極片5A、5Bの少なくとも一方の終端部5aが電極片配列体32の終端部32aの内側に配置されている。これによって、電極片配列体32の終端部32aにおいて電荷が集中しにくく、ダメージを回避することが可能である。
【0041】
終端部32aと5aとの間隔hは、終端部における電荷の集中を抑制し、ダメージを防止するという観点からは、0.6mm以上が好ましく、1.0mm以上が更に好ましい。
【0042】
本態様の好適な実施形態においては、対向電極片の両方の終端部が、それぞれ、電極片配列体の両方の終端の内側に配置されている。
【0043】
図11はこの実施形態に係るものである。第一の電極30が、周期的に配列された複数の電極片2からなる電極片配列体32、電極片2に対して給電するための給電電極1A、1B、給電電極1A、1Bに対して接続されている一方のプロービングパッド6A、および、給電電極1A、1Bに対して接続されている他方のプロービングパッド6Bを備えている。また、対向電極片5A、5Bが、それぞれ各電極片配列体32に対向するように設けられている。対向電極片5Aと5Bとに電力を供給する共通の導電性接続部は存在しない。こうした構成によれば、電極片配列体32の終端部32a、32bにおいて電荷が集中しにくく、ダメージを回避することが可能である。
【0044】
終端部32a、32bと5a、5bとの間隔hは、終端部における電荷の集中を抑制し、ダメージを防止するという観点からは、0.6mm以上が好ましく、1.0mm以上が更に好ましい。
【0045】
本態様においては、対向電極片に対しても電圧を印加することができるが、対向電極片を浮動状態とすることが特に好ましい。
【0046】
本発明外の参考態様に係る発明は、強誘電体単結晶基板の一表面上に設けられた第一の電極と、基板の裏面上に設けられた第二の電極との間に電圧を印加することにより、基板内に周期分極反転構造を形成する方法であって、
第一の電極が、周期的に配列された複数の電極片からなる電極片配列体、電極片に対して給電するための給電電極、給電電極の一方の終端に対して接続されている一方のプロービングパッド、および給電電極の他方の終端に対して接続されている他方のプロービングパッドを備えており、一表面に第三の電極が設けられており、この第三の電極が、電極片配列体と対向する対向電極片を備えており、この対向電極片が、一方のプロービングパッドと他方のプロービングパッドとの間に設置されている。本態様の発明の実例は図11に示した。
【0047】
本態様において好ましくは、対向電極片の少なくとも一方の終端が電極片配列体の終端の内側に配置されている。特に好ましくは、対向電極片の両方の終端が、それぞれ、電極片配列体の両方の終端の内側にそれぞれ配置されている。
【0048】
本発明外の更に他の態様に係る発明は、強誘電体単結晶基板の一表面上に設けられた第一の電極と、この第一の電極と対向するように基板に設けられた第二の電極との間に電圧を印加することにより、基板内に周期分極反転構造を形成する方法であって、
第一の電極が、周期的に配列された複数の電極片からなる電極片配列体、電極片に対して給電するための給電電極、および給電電極に対して接続されているプロービングパッドを備えており、電極片配列体の少なくとも一方の終端部において、電極片の長さが、末端の電極片へと向かって小さくなっている。
【0049】
この発明も、電極片配列体の少なくとも一方の終端部における電荷の集中を抑制し、強誘電体単結晶のダメージを防止する上で有効である。
【0050】
図12はこの態様の実例を示す。第一の電極30は、周期的に配列された複数の電極片2からなる電極片配列体32、電極片2に対して給電するための給電電極1、および給電電極1に対して接続されているプロービングパッド6を備えている。電極片配列体32の少なくとも一方の終端部32aにおいて、電極片2Cの長さが、末端の電極片2Dへと向かって小さくなっている。
【0051】
本態様においては、プロービングパッドから十分に離れた電極片の高さjmと、プロービングパッド6に最も近い電極片2Dの高さjeとの比率jm/jeは、電荷の局部的な集中を抑制するという観点からは5以上であることが好ましく、10以上であることが更に好ましい。
【0052】
好ましくは、終端部において、複数の電極片2Cの各端部を結ぶ仮想線11が、末端の電極片2Dへと向かって湾曲している。この設計は、終端部における電荷の集中を抑制する上で一層効果的である。この湾曲形状は、特に限定されない。しかし、真円形、楕円形、レーストラック形状、放物線、正弦曲線(余弦曲線)であることが好ましい。また、この仮想線の湾曲の曲率半径は、10〜100μmとすることが好ましい。
【0053】
本発明外の更に他の態様に係る発明は、強誘電体単結晶基板の一表面上に設けられた第一の電極と、この第一の電極と対向するように基板上に設けられた第二の電極との間に電圧を印加することにより、基板内に周期分極反転構造を形成する方法であって、
第一の電極が、周期的に配列された複数の電極片からなる電極片配列体、電極片に対して給電するための給電電極、および給電電極に対して接続されているプロービングパッドを備えており、プロービングパッドの末端のコーナー部の輪郭が湾曲していることを特徴とする。これによって、プロービングパッドの末端のコーナー部における電荷の集中を抑制し、強誘電体単結晶のダメージを防止するのに有効である。
【0054】
図13の例においては、プロービングパッド6Cの各コーナー部6a、6bの輪郭が湾曲している。この湾曲形状は、特に限定されない。しかし、真円形、楕円形、レーストラック形状、放物線、正弦曲線(余弦曲線)であることが好ましい。また、この湾曲の曲率半径は、20〜200μmとすることが好ましい。
【0055】
図14には、図16と同様の写真を示す。ここで、図13に示すような形態の第一の電極を使用しており、強誘電体単結晶は、MgO5%ドープしたニオブ酸リチウム単結晶である。図16において観察された黒いダメージが生じていないことを確認できる。なお、この実施例においては、各電極片2の幅aを0.3μmとし、周期Λを2.8μmとし、長さを100μmとした。また、プロービングパッド6Cのコーナー部6a、6bの曲率半径Rを100μmとした。
【0056】
上記した第一〜第二の各態様に係る発明は、互いに任意に組み合わせることが可能であり、これによって、第一の電極の全体にわたって、強誘電体単結晶のダメージを一層効果的に抑制できる。
【0057】
更に、本発明は、前記のいずれかの方法によって形成されたことを特徴とする、周期分極反転構造に係るものであり、またこのような周期分極反転構造を有する光導波路素子に関するものである。このような周期分極反転構造は、ダメージが少なく、あるいはダメージが防止されているので、光損失が少ない良好なものである。
【0058】
この光導波路素子の用途は限定されないが、疑似位相整合方式の波長変換素子として利用可能である。このような素子は、波長変換の際の変換効率が高いものである。以下、好適な波長変換素子の概略を述べる。
【0059】
例えば図17に示すようにして、電圧印加法によって、強誘電体単結晶基板4内に分極反転部33を形成する。この際、強誘電体単結晶の種類は限定されない。しかし、ニオブ酸リチウム(LiNbO3)、タンタル酸リチウム(LiTaO3)、ニオブ酸リチウム−タンタル酸リチウム固溶体、K3Li2Nb5O15の各単結晶が特に好ましい。
【0060】
強誘電体単結晶中には、三次元光導波路の耐光損傷性を更に向上させるために、マグネシウム(Mg)、亜鉛(Zn)、スカンジウム(Sc)及びインジウム(In)からなる群より選ばれる1種以上の金属元素を含有させることができ、マグネシウムが特に好ましい。
【0061】
分極反転特性(条件)が明確であるとの観点からは、ニオブ酸リチウム単結晶、ニオブ酸リチウムータンタル酸リチウム固溶体単結晶、又はこれらにマグネシウムを添加したものが特に好ましい。
【0062】
強誘電体単結晶中には、ドープ成分として、希土類元素を含有させることができる。この希土類元素は、レーザー発振用の添加元素として作用する。この希土類元素としては、特にNd、Er、Tm、Ho、Dy、Prが好ましい。
【0063】
周期分極反転構造を形成するためのマスクパターンを形成する材質としては、レジスト、SiO2、Ta等を例示できる。マスクパターンを形成する方法としては、フォトリソグラフィー法を例示できる。
【0064】
電圧印加法において使用する電極の材質としては、Al、Au、Ag、Cr、Cu、Ni、Ni-Cr、Pd、Taが好ましい。
【0065】
次いで、図18に示すように、周期分極反転構造20に沿って、光導波路21を基板内に形成できる。この形成方法は特に限定されないが、チタン内拡散法、プロトン交換法が好ましい。
【0066】
他の方法においては、図19に示すように、基板4の表面4aに、固定用基板23を接合層22を介して接合する。好ましくは、この前に基板4から第一の電極、第二の電極、第三の電極を除去しておく。また、接合前に基板4の接合面側にSiO2を成膜しておいてもよい。SiO2を成膜することで、接合材の光吸収を低減することができ、光導波路の低損失化が行える。図19の段階では、基板4の表面4aの近傍に周期分極反転構造20が形成されている。
【0067】
次いで、図20に示すように、基板4の裏面4b側を研削加工し、基板4Aを薄くする。この段階では、光を厚さ方向に閉じ込め得る寸法まで基板4Aを薄くすることは困難である。このため、図21に示すように、リッジ型の光導波路24を残して基板4Aを加工し、除去する。この段階では、非常に薄い平板部26が残る。26aは加工面である。この加工の際に光導波路24の厚さを調節する。こうした加工は、例えばダイシング加工装置やレーザー加工装置によって可能であるが、ダイシング加工のような機械的加工が好ましい。
【0068】
上記の実施形態においては、基板4を接合層22によって固定用基板23に対して接着している。この場合には、接合層の屈折率は基板4の屈折率よりも低いことが好ましく、また接合層が非晶質であることが好ましい。接合層の屈折率と基板4の屈折率との屈折率差は、5%以上であることが好ましく、10%以上であることが更に好ましい。
【0069】
接合層22の材質は、有機樹脂やガラス(特に好ましくは低融点ガラス)が好ましい。有機樹脂としては、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、シリコーン樹脂等を例示できる。ガラスとしては、酸化珪素を主成分とする低融点ガラスが好ましい。
【0070】
固定用基板23の材質は特に限定されず、所定の構造強度を有していればよい。ただし、光導波路と熱膨張係数等の物性値が近い方が好ましく、ニオブ酸リチウム(LiNbO3)、タンタル酸リチウム(LiTaO3)、ニオブ酸リチウム−タンタル酸リチウム固溶体、K3Li2Nb5O15の各単結晶が特に好ましい。
【0071】
また、高調波発生装置は、少なくとも前記波長変換素子と、この波長変換素子に対して励起光を入力する入力手段とを備えていれば成立する。こうした入力手段としては、例えば半導体レーザーがあるが、限定はされない。
【0072】
本発明の素子を第二高調波発生装置として使用した場合には、高調波の波長は330−1600nmが好ましく、400−430nmが特に好ましい。
【0073】
上記の各例においては、強誘電体単結晶基板を、例えば5°オフカット基板としたが、このオフカット角度は特に限定されない。特に好ましくは、オフカット角度は1°以上であり、あるいは、20°以下である。
【0074】
また、いわゆるXカット基板、Yカット基板、Zカット基板を使用可能である。Xカット基板やYカット基板を使用する場合には、図17に示すように、第二の電極を裏面4bに設けず、一表面4a上に設け、第一の電極と第二の電極との間に電圧を印加することができる。この場合には、第三の電極31はなくともよいが、浮動電極として残しておいても良い。また、Zカット基板を使用する場合には、第二の電極を裏面4b上に設け、第一の電極と第二の電極との間に電圧を印加することができる。この場合には、第三の電極31は必ずしも必要ないが、浮動電極として残しておいても良い。
【0075】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明は、強誘電体単結晶基板の一表面上に設けられた第一の電極と、この第一の電極と対向するように基板に設けられた第二の電極との間に電圧を印加することにより、基板内に周期分極反転構造を形成するのに際して、電圧印加の際に強誘電体単結晶にダメージが発生するのを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第一の電極のパターンの一例を示しており、電極片配列体32の終端部32b側に、電極片2よりも幅の大きい拡幅片部7が設けられている。
【図2】図1の電極を使用して形成した周期分極反転構造について、エッチング後の外観を示す写真である。
【図3】第一の電極のパターンの一例を示しており、電極片配列体32の終端部32bから外側に、複数の浮動電極3A〜3Fが配列されている。
【図4】図3の電極を使用して形成した周期分極反転構造について、エッチング後の外観を示す写真である。
【図5】第一の電極のパターンの一例を示しており、電極片配列体32の周期分極反転構造32bから外側に複数の浮動電極3A〜3Gが配列されており、各浮動電極の端部を結ぶ仮想線35が湾曲している。
【図6】第一の電極のパターンの一例を示しており、電極片配列体32の周期分極反転構造32bから外側に複数の浮動電極3A〜3Gが配列されており、各浮動電極の幅が末端の浮動電極3Gへと向かって狭くなっている。
【図7】第一の電極のパターンの一例を示しており、電極片配列体32の終端部32bから外側に複数の浮動電極3A〜3Eが配列されており、各浮動電極間の間隔fが末端の浮動電極3Eへと向かって狭くなっている。
【図8】第一の電極、第二の電極、第三の電極のパターン例を示す斜視図である。
【図9】図8に示した第一の電極30および第二の電極31の平面的パターンと、第三の電極8の平面的パターンとを対比して示す。
【図10】第一の電極30および第二の電極31のパターンを示しており、対向電極片5A、5Bの一方の終端部5aが、電極片配列体32の終端部32aに比べて内側に位置している。
【図11】第一の電極30および第二の電極31のパターンを示しており、対向電極片5A、5Bの両方の終端部5a、5bが、それぞれ、電極片配列体32の終端部32a、32bに比べて内側に位置している。
【図12】第一の電極30のパターンを示しており、電極片配列体32の終端部32aにおいて電極片2Cの幅が小さくなっている。
【図13】第一の電極30のパターンを示しており、プロービングパッド6Cのコーナー部6a、6bの輪郭が湾曲している。
【図14】図13の電極を使用して形成した周期分極反転構造について、エッチング後の外観を示す写真である。
【図15】参考例の第一の電極30および第三の電極31のパターンを示す。
【図16】図15の電極を使用して形成した周期分極反転構造について、エッチング後の外観を示す写真である。
【図17】強誘電体単結晶基板4内に周期分極反転構造を形成するために、電圧印加法を実施している状態を模式的に示す。
【図18】基板4内に形成された光導波路21のパターンを示す。
【図19】周期分極反転構造20の形成された基板4と固定用基板23との接合体を示す。
【図20】図19の基板4を研削加工した後の状態を示す。
【図21】図20の基板4Aを更に加工し、リッジ構造の光導波路24を形成した状態を示す。
【符号の説明】
1 給電電極 1a、1b 給電電極の終端部 2電極片 2A、2B、2C、2D 終端部の電極片 3A、3B、3C、3D、3E、3F、3G 浮動電極 4、4A 強誘電体単結晶基板 4a 基板4の一表面 4b 基板4の裏面 5、5A、5B 対向電極片 6 プロービングパッド 6A 一方のプロービングパッド 6B 他方のプロービングパッド 6C コーナー部が湾曲しているプロービングパッド 6a、6b 湾曲したコーナー部 7 拡幅片部 7a、7b 拡幅片部7のコーナー部
8、8A 第二の電極 10 対向電極片の導電性接続部 11 電極片の端部を結ぶ仮想線 15A、15B 分極方向 30第一の電極 31 第三の電極 32 電極片配列体 32a 電極片配列体32のプロービングパッド側の終端部 32b 電極片配列体32のプロービングパッドとは反対側の終端部 33 分極反転部 35 浮動電極の端部を結ぶ仮想線
Claims (9)
- 強誘電体単結晶基板の一表面上に設けられた第一の電極と、この第一の電極と対向するように前記強誘電体単結晶基板に設けられた第二の電極との間に電圧を印加することにより、前記強誘電体単結晶基板内に周期分極反転構造を形成する方法であって、
前記第一の電極が、周期的に配列された複数の電極片からなる電極片配列体、前記電極片に対して給電するための給電電極、および前記給電電極に対して接続されているプロービングパッドを備えており、前記給電電極の前記プロービングパッドとは反対側の終端部に前記電極片の幅よりも大きい幅を有する拡幅片部を備えていることを特徴とする、周期分極反転構造の形成方法。 - 前記拡幅片部の末端のコーナー部の輪郭が湾曲していることを特徴とする、請求項1記載の方法。
- 強誘電体単結晶基板の一表面上に設けられた第一の電極と、この第一の電極と対向するように前記強誘電体単結晶基板に設けられた第二の電極との間に電圧を印加することにより、前記強誘電体単結晶基板内に周期分極反転構造を形成する方法であって、
前記第一の電極が、周期的に配列された複数の電極片からなる電極片配列体、前記電極片に対して給電するための給電電極、および前記給電電極に対して接続されているプロービングパッドを備えており、前記給電電極の前記プロービングパッドとは反対側の終端部の外側に、前記給電電極と接続されていない浮動電極を備えていることを特徴とする、周期分極反転構造の形成方法。 - 複数の前記浮動電極が、前記電極片の配列方向に向かって配列されていることを特徴とする、請求項3記載の方法。
- 前記浮動電極がストライプ状をなしていることを特徴とする、請求項3または4記載の方法。
- 前記浮動電極の長さが、前記給電電極に最も近い前記浮動電極から最も外側の前記浮動電極へと向かって小さくなっていることを特徴とする、請求項5記載の方法。
- 複数の前記浮動電極の各端部を結ぶ仮想線が、前記給電電極に最も近い前記浮動電極から末端の前記浮動電極へと向かって湾曲していることを特徴とする、請求項5または6記載の方法。
- 複数の前記浮動電極の幅が、前記給電電極に最も近い前記浮動電極から最も外側の前記浮動電極へと向かって小さくなっていることを特徴とする、請求項5または6記載の方法。
- 隣接する前記浮動電極の間隔が、前記給電電極に最も近い前記浮動電極から最も外側の前記浮動電極へと向かって大きくなっていることを特徴とする、請求項5または6記載の方法。
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