JP4064581B2 - 蒸気冷却ガスタービン - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、蒸気冷却ガスタービンの冷却蒸気供給経路のシール構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
ガスタービンの高効率化のために、ガスタービンの燃焼ガスの膨張機入口温度は年々上昇を続けており、近時この温度を1500°Cとしたガスタービンが提案されている。こうした高温の燃焼ガスからガスタービンの静翼および動翼を保護するために、従来の空気による冷却に代えて比較的低温の蒸気にて冷却する所謂蒸気冷却ガスタービンの開発が行われている。こうした蒸気冷却ガスタービンでは、蒸気は、例えば、蒸気源としてコンバインドサイクルの蒸気タービンからの抽気を用いることができ、特にガスタービンの動翼を冷却する冷却蒸気は、前記蒸気源からガスタービンのロータ尾端部からロータ内に形成された蒸気通路を経て、ロータディスクに取り付けられた各動翼に供給される。
【0003】
前記蒸気通路は、ロータ尾端部から軸方向に延びる複数の軸方向供給通路と、該軸方向供給通路に連通し各ロータディスクに取り付けられた動翼の各々に均等に蒸気を分配するために周方向に形成した蒸気供給室と、動翼からの蒸気を回収する回収通路から成る。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
蒸気冷却ガスタービンを用いる場合、上述したロータ内に形成した蒸気通路における漏洩を防止することが、蒸気ガスタービンプラントの効率を高める上で非常に重要となる。また、蒸気冷却ガスタービンにおいて、冷却蒸気が蒸気の供給、回収経路外に漏洩すると、休止時にガスタービンが冷え蒸気が凝縮する等他の問題を生じる。特に蒸気冷却ガスタービンでは、蒸気供給室内の蒸気圧力が比較的高く、また、許容できる蒸気の漏れ量も少ないために厳格な蒸気シールが必要となる。
【0005】
一方、蒸気供給室は、第1段動翼、つまり、ガスタービンの圧縮機に最も近い位置に配設され最も高温、高圧の燃焼ガスを受ける動翼に蒸気を分配、供給するための蒸気供給室を除いて、蒸気供給室はロータディスクの間に形成することができ、ロータディスク同士を気密に連結することにより蒸気の漏洩を防止することができる。然しながら、前記第1段動翼に冷却蒸気を供給する蒸気供給室は、第1段ロータディスク、つまり、圧縮機に対面するロータディスクの端面に形成されるために、特別の蒸気シール構造が必要となる。
【0006】
また、前記第1段動翼に冷却蒸気を分配、供給する蒸気供給室は、ガスタービンの中心部に配設されているために、その保守、修理を行うことが難しく、特に従来技術ではロータを個々のロータディスクに分解しなければならない問題もあった。
【0007】
本発明はこうした従来技術の問題を解決することを技術課題としており、ガスタービンのロータにおいて圧縮機に対面する端面に形成される蒸気供給室からの蒸気の漏洩を確実に防止する共に、前記蒸気供給室のシール構造の保守、修理を容易にした蒸気冷却ガスタービンを提供することを目的としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の本発明は、冷却蒸気供給源からガスタービンのロータに形成した蒸気通路、および、該蒸気通路に連通する蒸気供給室を介して動翼に冷却用蒸気を供給する蒸気冷却ガスタービンにおいて、
前記蒸気供給室は、前記ロータを形成する複数のロータディスクのうち圧縮機側に配設された第1段ロータディスクの圧縮機に対面する端面に形成された前記ロータの回転軸線を中心とする環状の凹所と、該凹所において前記圧縮機に対面する開口部を閉鎖する環状部材から成るシールディスクとにより形成されており、
前記ロータは、前記環状の凹所において前記圧縮機に対面する開口部の内周縁部に沿って配設された半径方向内側の面から半径方向外側へ突出する係止部を有し、前記シールディスクの内周面は、その断面において軸方向に二股に分岐した形状をなしており、前記圧縮機に対面する側に前押え部が形成され、後側に前記係止部に係合可能な内周面から半径方向内方へ突出する係合部を有して成り、
前記ロータの係止部および前記シールディスクの係合部は、周方向に周期的に繰り返す凹凸から成り、前記シールディスクの係合部の凸部を前記ロータの係止部の凹部に位置合わせして、前記シールディスクを軸方向に移動させ、前記係合部が前記係止部を越えた後に前記シールディスクを所定角度を以て回転させることにより両者が係合するようになっている蒸気冷却ガスタービンを要旨とする。
【0009】
請求項1に記載の本発明によれば、前記シールディスクを所定角度を以て回転させることによりシールディスクとロータとが係合、解除されるために、ロータディスクを分解することなく、つまり、スピンドルボルトを外すことなく、蒸気供給室のシール構造の保守、修理を容易に行うことが可能となる。
【0010】
好ましくは、前記ロータの前記環状の凹所において前記圧縮機に対面する開口部の外周縁部に沿ってシール面を設け、該凹所のシール面と緊密に接触可能なシール面を前記シールディスクの外周部に形成する。これにより、前記シールディスクを前記ロータに取り付けた後に前記ロータが回転したときに、前記シールディスクに作用する遠心力により前記シールディスクのシール面を前記開口部のシール面に押圧し、以て、両者間のシール性を高めることができる。
【0011】
前記シールディスクは、更に、前記シールディスクを回転させて、前記係合部を前記ロータの係止部に係合させたときに、前記前押え部は前記係合部と共に前記係止部を軸方向に挟持しており、前記前押え部と前記係止部の基端部に形成された環状溝の間に環状のシール部材を配設して、前記シールディスクを前記ロータに取り付けた後に前記ロータが回転したときに、前記シール部材に作用する遠心力により前記シール部材を前記前押え部および前記係止部とに押圧し、以て、前記前押え部と前記係止部の間のシール性を高める。
【0012】
前記シール部材を複数のシール小片から形成して、シール部材の取り外し、または、交換作業を容易にすることができる。また、前記シール小片の端部には、隣接するシール小片と相補形に組み合う欠切部を形成し、シール小片間のつなぎ目からの漏洩を防止することが好ましい。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面を参照して本発明の好ましい実施形態を説明する。
先ず、図1を参照すると、本発明を適用する蒸気冷却ガスタービンの第1段動翼100、つまり、最も高圧側の動翼を支持する第1段ロータディスク110の周縁部の部分断面図が示されている。図1において第1段ロータディスク110の右側に、より低圧の第2段、第3段、第4段動翼(図示せず)を支持する第2段、第3段、第4段ロータディスク(図示せず)が順次配設される。第1段ロータディスク110は、その周縁部に周方向に等間隔に形成されたスピンドルボルト孔112を有しており、第1から第4段ロータディスクを軸方向に並設し、スピンドルボルト孔112および第2から第4段ロータディスクの各々に形成されたこれに対応するスピンドルボルト(図示せず)にスピンドルボルト(図示せず)を挿通、締結することにより、複数段数の動翼を支持しながら一体的に回転するロータが形成される。
【0014】
第1段ロータディスク110において、スピンドルボルト孔112の半径方向外側の周縁部には、複数の蒸気流通孔114が周方向に等間隔に形成されており、第1から第4のロータディスクがスピンドルボルトにより締結されたときに、第1ロータディスク110の蒸気流通孔114、および、これに対応する第2から第4のロータディスクの蒸気流通孔(図示せず)に蒸気通路を形成する蒸気供給管路116が挿通される。図1において、蒸気流通孔114は、第1段ロータディスク110の圧縮機に対面する面(図1において左側)に形成された凹所より成る蒸気供給室118内に開口している。蒸気供給管路116は、蒸気供給室118内に開口し、留め具により第1ロータディスク110に固定される。蒸気供給室118の開口部には、半径方向外側の内面にシール面120が設けられ、かつ、半径方向内側の面から半径方向外方へ突出する係止部122が設けられており、該開口部は、後述する密封手段を形成するシールディスク10により密封、閉鎖される。
【0015】
第1段動翼100を冷却するための冷却蒸気が、例えば低圧蒸気タービン(図示せず)からの抽気管路等の冷却蒸気供給源から、蒸気供給管路116を介して蒸気供給室118へ供給され、ここから第1段ロータディスク110内に形成された蒸気通路(図示せず)内を流通して、第1段動翼100内に供給される。
【0016】
次に、図2から図5を参照してシールディスク10を説明する。
シールディスク10は環状の部材であり、半径方向外側の周縁部には、シールディスク10を第1段ロータディスク110に取付け、固定するためのボルト(図示せず)を挿通する複数のボルト挿通孔12が周方向に等間隔に形成され、かつ、ボルト挿通孔12の近傍の後面または内面には第1段ロータディスク110のシール面120に緊密に接触するシール面20が設けられている。一方、シールディスク10の内周面(図2において下側)は、その断面において軸方向に二股に分岐した形状をなしており、シールディスク10を第1段ロータディスク110に取り付けたときに前側、つまり、圧縮機に対面する側に前押え部14が形成され、後側に蒸気供給室118の係止部122と係合する係合部16が形成される。
【0017】
特に図3から図5を参照すると、シールディスク10の内周面には規則正しく形成された複数の凹凸部が形成されており、前記係合部16は、シールディスク10の内周面から半径方向内方へ突き出す凸部にて形成されている。一方、第1段ロータディスク10の蒸気供給室118の開口部にも、係合部16に対応させて形成された複数の凹凸部が設けられており、係止部122は、半径方向外方へ突き出す凸部にて形成されている。
【0018】
シールディスク10の取付けに際しては、係合部16の凸部18aおよび凹部18bが、各々、係止部122の凹部124bおよび凸部124aに重なるようにして、シールディスク10を第1段ロータディスク10に対して位置決めし、シールディスク10の前押え部14が、第1段ロータディスク10の係止部122に当接するまで、シールディスク10をガスタービンの中心軸線に沿って後方、すなわち、図1において右方へ移動させる(図参照)。次いで、シールディスク10を左右何れかの回転方向に回転させ、図5に示すように、係合部16と係止部122が重なり合う状態で、ボルト挿通孔12にボルトを通し、第1段ロータディスク10に形成された対応のボルト孔に締結する。これにより、シールディスク10が第1段ロータディスク110に固定される。このようにして、シールディスク10が第1段ロータディスク110に固定されると、シールディスク10と第1段ロータディスク110の間には、図5に示すように、係合部16および係止部122の凹部18b、124bにより形成される複数の開口部が出現する。
【0019】
本実施形態では、凹部18b、124bにより形成されるこの開口部からの冷却蒸気の漏洩は、図6、7に示すように、前押え部14と係止部122の基端部に形成された環状溝126の間に配設された環状のシール部材22により防止される。シール部材22は、連続する1本の環状部材にて形成することもできるが、シール部材22を容易に交換可能とするために、好ましくは、周方向に例えば2分割、3分割または4分割できる複数の円弧状のシール小片から形成される。シール部材22を複数の円弧状シール小片から形成する場合には、図8に示すように、2つのシール小片24、26の端部24a、26aを、各々の中心軸線を含む平面で半割に切り欠いて、対向するシール面24b、26bにおいて相補形に組み合う欠切部が形成されている。これにより、シール小片間の継ぎ目におけるシールが確実になる。
【0020】
以下、本発明実施形態の作用を説明する。
既述したように、シール部材22を第1段ロータディスク110の環状溝126内に収納した状態で、シールディスク10を、第1段ロータディスク110に取り付け固定する。ガスタービンが作動しロータが回転すると、シールディスク10に作用する遠心力により、シールディスク10のシール面20は、第1段ロータディスク110のシール面120に押圧され、両シール面20、120の間を流通する冷却蒸気の漏洩が防止される。同様に、ロータの回転によりシール部材22に作用する遠心力により、シール部材22は、環状溝126およびシールディスク10の前押え部14の各々の内面に押圧され、シールディスク10と第1段ロータディスク110の凹部18b、124bにより形成される複数の開口部を冷却蒸気が通過しても、前押え部14と係止部122の間からの冷却蒸気の漏洩が防止される。
【0021】
なお、図8ではシール部材22は、断面円形の円弧状シール小片24、26にて示されているが、本発明はこれに限定されず、シール部材22は図7に示すように、第1段ロータディスク110の係止部122の基端部に形成された環状溝126の形状に合わせて、断面が概ね五角形の複数のシール小片にて構成しても良い。要は、断面において、シールディスク10および第1段ロータディスク110に対して2点P1、P2で接触できる形状であればよい。
また、シール小片の端部の切欠は、図8では中心軸線を含む平面で切り欠くことに形成する旨説明したが、本発明はこれに限定されず、中心軸線を含まない平面で切り欠いてもよい。要は、隣接するシール小片が半径方向に部分的に重なり合う端部形状とすればよい。特に、図7に示すように、半径方向外方へ位置する側のシール小片の端部22bが小さく、反対に半径方向内方へ位置する側のシール小片の端部22aが大きくなるようにしてもよい。このように構成することにより、ガスタービンが回転するときに、半径方向内方へ位置する側のシール小片の端部22aに作用する遠心力により、半径方向外方へ位置する側のシール小片の端部22bが、環状溝126およびシールディスク10の前押え部14の各々の内面に押圧され、より一層シール効果を高めることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明実施形態による第1段ロータディスクの要部拡大断面図である。
【図2】 本発明実施形態によるシールディスクの断面図である。
【図3】 図2において矢視線III-IIIの方向に見たシールディスクの部分拡大端面図である。
【図4】 第1段ロータディスクの係止部と、シールディスクの係合部の部分拡大図であり、両者間の係合が解除された状態を示す図である。
【図5】 第1段ロータディスクの係止部と、シールディスクの係合部の部分拡大図であり、両者の係合状態を示す図である。
【図6】 図1においてAにて示す部分の拡大断面図である。
【図7】 図6においてBにて示す部分の拡大断面図である。
【図8】 シール部材を構成するシール小片の端部の拡大図である。
【符号の説明】
10…シールディスク
14…前押え部
16…係合部
20…シール面
100…動翼
110…第1段ロータディスク
114…蒸気流通孔
116…蒸気供給管路
118…蒸気供給室
120…シール面

Claims (5)

  1. 冷却蒸気供給源からガスタービンのロータに形成した蒸気通路、および、該蒸気通路に連通する蒸気供給室を介して動翼に冷却用蒸気を供給する蒸気冷却ガスタービンにおいて、
    前記蒸気供給室は、前記ロータを形成する複数のロータディスクのうち圧縮機側に配設された第1段ロータディスクの圧縮機に対面する端面に形成された前記ロータの回転軸線を中心とする環状の凹所と、該凹所において前記圧縮機に対面する開口部を閉鎖する環状部材から成るシールディスクとにより形成されており、
    前記ロータは、前記環状の凹所において前記圧縮機に対面する開口部の内周縁部に沿って配設された半径方向内側の面から半径方向外側へ突出する係止部を有し、前記シールディスクの内周面は、その断面において軸方向に二股に分岐した形状をなしており、前記圧縮機に対面する側に前押え部が形成され、後側に前記係止部に係合可能な内周面から半径方向内方へ突出する係合部を有して成り、
    前記ロータの係止部および前記シールディスクの係合部は、周方向に周期的に繰り返す凹凸から成り、前記シールディスクの係合部の凸部を前記ロータの係止部の凹部に位置合わせして、前記シールディスクを軸方向に移動させ、前記係合部が前記係止部を越えた後に前記シールディスクを所定角度を以て回転させることにより両者が係合するようになっている蒸気冷却ガスタービン。
  2. 前記ロータは、前記環状の凹所において前記圧縮機に対面する開口部の外周縁部に沿って設けられたシール面を有し、前記シールディスクが、その外周部に形成され前記凹所のシール面と緊密に接触可能なシール面を有して成り、
    前記シールディスクを前記ロータに取り付けた後に前記ロータが回転したときに、前記シールディスクに作用する遠心力により前記シールディスクのシール面を前記開口部のシール面に押圧し、以て、両者間のシール性を高めた請求項1に記載の蒸気冷却ガスタービン。
  3. 前記シールディスクは、更に、前記シールディスクを回転させて、前記係合部を前記ロータの係止部に係合させたときに、前記前押え部は前記係合部と共に前記係止部を軸方向に挟持しており、
    前記前押え部と前記係止部の基端部に形成された環状溝の間に環状のシール部材を配設して、前記シールディスクを前記ロータに取り付けた後に前記ロータが回転したときに、前記シール部材に作用する遠心力により前記シール部材を前記前押え部および前記係止部とに押圧し、以て、前記前押え部と前記係止部の間のシール性を高めた請求項1または2に記載の蒸気冷却ガスタービン。
  4. 前記シール部材が複数のシール小片から成る請求項3に記載の蒸気冷却ガスタービン。
  5. 前記シール小片の端部には、隣接するシール小片と相補形に組み合う欠切部が形成されている請求項4に記載の蒸気冷却ガスタービン。
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