JP4058311B2 - グランドパッキン材料およびグランドパッキン - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、グランドパッキンの製造に用いられるグランドパッキン材料と、このグランドパッキン材料によって製造されたグランドパッキンに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、グランドパッキンの製造に用いられるグランドパッキン材料として、図19および図20に示すものが知られている。図19のグランドパッキン材料50は、膨張黒鉛テープ51を長手方向に折りたたんで形成した紐状体52を、ステンレス、インコネル、モネルなどの金属線の編組体よりなる補強材53で被覆した外補強構造のもので(例えば、特許文献1参照)、図20のグランドパッキン材料50は、膨張黒鉛テープ51の紐状体52を前記金属線の編組体よりなる補強材53で被覆した外補強構造のものを、長手方向にV字状に折りたたんだものである(例えば、特許文献2参照。)。
グランドパッキン材料50には、前記金属線の編組体よりなる補強材53によって高い引張り強さが付与されるので、編組またはひねり加工することができる。したがって、このグランドパッキン材料50を複数本集束して、編組またはひねり加工することによりグラントパッキンを製造することできる。たとえば、グランドパッキン材料50を8本集束して8打角編みすることで、図21(a),(b)に示すように編組したグラントパッキン54を製造することができ、また、グランドパッキン材料50を6本集束してひねり加工することで、図22(a),(b)に示すようにひねり加工したグラントパッキン54を製造することができる。
【0003】
図21および図22のグラントパッキン54には、膨張黒鉛テープ51によってパッキンとして不可欠な耐熱性、圧縮性、復元性などの封止上好ましい特性が付与されるので、高い封止性を有して流体機器の軸封部を封止することができる。
【0004】
【特許文献1】
特公平6−27546号公報
【特許文献2】
特許第2583176号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、前記従来の外補強構造のグランドパッキン材料50で製造されたグラントパッキン54では、金属線の編組体よりなる補強材53が回転または軸方向に摺動するポンプ軸や弁棒などの流体機器の部材、つまり相手側部材に摺接して、相手側部材に傷を付け易い問題があるとともに、補強材53の摺動抵抗が大きいので、相手側部材の回転性能または軸方向の摺動性能を低下させる問題もある。
【0006】
これらの問題を解決するために、膨張黒鉛テープ51の紐状体52を被覆する外補強材として、炭素繊維を採用したグランドパッキン材料50によってグラントパッキン54を製造し、このグラントパッキン54で流体機器の軸封部を封止することにより、相手側部材に傷を付けず、摺動抵抗が小さく抑えられて相手側部材の回転性能や軸方向の摺動性能を向上させ、さらに耐熱性を高めたい要望がある。
【0007】
しかし、炭素繊維は、金属線と異なり、膨張黒鉛テープ51を外補強するためのニット編みまたはその他の編組をしようとすると、靭性が低いので折損する。このため、炭素繊維の外補強構造のグランドパッキン材料50を得ることができなかった。
【0008】
本発明は、炭素繊維の外補強を可能にした外補強構造のグランドパッキン材料およびこのグランドパッキン材料を用いて製造されたグランドパッキンを提供することを目的としている。
【0009】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するために、請求項1に記載の発明に係るグランドパッキン材料は、炭素繊維束を幅広く薄い状態にした多数本の炭素繊維よりなる補強材を帯状膨張黒鉛の少なくとも片面に設けた基材が、前記補強材を外側にしてかつ該補強材が内部に巻き込まれるように撚られており、この撚られた補強材には炭素繊維束中の炭素繊維間に形成されかつ膨張黒鉛を臨ませる多数の開口が備えられていて、これら開口が備えられた補強材上に膨張黒鉛粉末を重ねて圧縮成形することで前記開口に膨張黒鉛を臨ませるようにしたことを特徴としている。
【0010】
請求項2に記載の発明に係るグランドパッキン材料は、炭素繊維束を幅広く薄い状態にした多数本の炭素繊維よりなる補強材を帯状膨張黒鉛の少なくとも片面に設けた基材が、前記補強材を外側にしてかつ該補強材が内部に巻き込まれるように巻かれており、この巻かれた補強材には炭素繊維束中の炭素繊維間に形成されかつ膨張黒鉛を臨ませる多数の開口が備えられていて、これら開口が備えられた補強材上に膨張黒鉛粉末を重ねて圧縮成形 することで前記開口に膨張黒鉛を臨ませるようにしたことを特徴としている。
【0011】
請求項3に記載の発明に係るグランドパッキン材料は、炭素繊維束を幅広く薄い状態にした多数本の炭素繊維よりなる補強材を帯状膨張黒鉛の少なくとも片面に設けた基材が、前記補強材を外側にしてかつ該補強材が内部に巻き込まれるように巻かれて撚られており、この巻かれて撚られた補強材には炭素繊維束中の炭素繊維間に形成されかつ膨張黒鉛を臨ませる多数の開口が備えられていて、これら開口が備えられた補強材上に膨張黒鉛粉末を重ねて圧縮成形することで前記開口に膨張黒鉛を臨ませるようにしたことを特徴としている。
【0012】
請求項4に記載の発明のように、炭素繊維の折り曲げ部が表面に露出していることが好ましい。
【0013】
請求項5に記載の発明のように、帯状膨張黒鉛の片面に炭素繊維束を幅広く薄い状態にした多数本の炭素繊維よりなる補強材を設けることが好ましい。
【0014】
請求項6に記載の発明のように、帯状膨張黒鉛の両面に炭素繊維束を幅広く薄い状態にした多数本の炭素繊維よりなる補強材を設けてもよい。
【0015】
請求項7に記載の発明に係るグランドパッキンは、請求項1,2,3,4,5,6のいずれかに記載のグランドパッキン材料を複数本用いて編組していることを特徴としている。
【0016】
請求項8に記載の発明にに係るグランドパッキンは、請求項1,2,3,4,5,6のいずれかに記載のグランドパッキン材料を複数本用いてひねり加工していることを特徴としている。
【0017】
請求項1に記載の発明によれば、炭素繊維は、撚りをかけても折損し難い特性を有しているので、炭素繊維束を幅広く薄い状態にした多数本の炭素繊維よりなる補強材は折損されることなく帯状膨張黒鉛を外補強することができる。
また、補強材上に膨張黒鉛粉末を重ねて圧縮成形することで帯状膨張黒鉛が補強材に備えられた多数の開口に臨んで前記補強材に係合するアンカー作用によって、帯状膨張黒鉛と補強材との結合力が高められるので、接着剤の使用量を零に制限しても、グランドパッキンを製造するための編組時またはひねり加工時に補強材が帯状膨張黒鉛と分離し難くなり外補強効果を有効に発揮することができる。
さらに、接着剤の使用量を零に制限できることで、接着剤硬化による帯状膨張黒鉛の特性(親和性、圧縮復元性など)の低下を抑制することができる。
また、グランドパッキン材料の内部に補強材が巻き込まれていることにより、圧縮または圧力がかかった場合にサンドイッチ構造となるので、膨張黒鉛粒子の移動が抑止され、すなわち膨張黒鉛粒子のはみだし量が抑えられ、シール面圧の低下を防止して、耐圧性能を向上させ、相手側部材への圧接力を高めることで、シール性も向上させることができる。
【0018】
請求項2に記載の発明によれば、炭素繊維は、巻いても折損し難い特性を有しているので、炭素繊維束を幅広く薄い状態にした多数本の炭素繊維よりなる補強材は折損されることなく帯状膨張黒鉛を外補強することができる。
また、補強材上に膨張黒鉛粉末を重ねて圧縮成形することで帯状膨張黒鉛が補強材に備えられた多数の開口に臨んで前記補強材に係合するアンカー作用によって、帯状膨張黒鉛と補強材との結合力が高められるので、接着剤の使用量を零に制限しても、グランドパッキンを製造するための編組時またはひねり加工時に補強材が帯状膨張黒鉛と分離し難くなり外補強効果を有効に発揮することができる。
さらに、接着剤の使用量を零に制限できることで、接着剤硬化による帯状膨張黒鉛の特性(親和性、圧縮復元性など)の低下を抑制することができる。
また、グランドパッキン材料の内部に補強材が巻き込まれていることにより、圧縮または圧力がかかった場合にサンドイッチ構造となるので、膨張黒鉛粒子の移動が抑止され、すなわち膨張黒鉛粒子のはみだし量が抑えられ、シール面圧の低下を防止して、耐圧性能を向上させ、相手側部材への圧接力を高めることで、シール性も向上させることができる。
【0019】
請求項3に記載の発明によれば、炭素繊維は、巻いて撚りをかけても折損し難い特性を有しているので、炭素繊維束を幅広く薄い状態にした多数本の炭素繊維よりなる補強材は折損されることなく帯状膨張黒鉛を外補強することができる。
また、補強材上に膨張黒鉛粉末を重ねて圧縮成形することで帯状膨張黒鉛が補強材に備えられた多数の開口に臨んで前記補強材に係合するアンカー作用によって、帯状膨張黒鉛と補強材との結合力が高められるので、接着剤の使用量を零に制限しても、グランドパッキンを製造するための編組時またはひねり加工時に補強材が帯状膨張黒鉛と分離し難くなり外補強効果を有効に発揮することができる。
さらに、接着剤の使用量を零に制限できることで、接着剤硬化による帯状膨張黒鉛の特性(親和性、圧縮復元性など)の低下を抑制することができる。
また、グランドパッキン材料の内部に補強材が巻き込まれていることにより、圧縮または圧力がかかった場合にサンドイッチ構造となるので、膨張黒鉛粒子の移動が抑止され、すなわち膨張黒鉛粒子のはみだし量が抑えられ、シール面圧の低下を防止して、耐圧性能を向上させ、相手側部材への圧接力を高めることで、シール性も向上させることができる。
【0020】
請求項4に記載の発明によれば、炭素繊維よりなる補強材の折り曲げ部が表面に露出していることにより、グランドパッキンを製造するための編組時またはひねり加工時に前記表面に露出している折り曲げ部が互いにからみあって、グランドパッキン材料の相対すべりを抑え、グランドパッキンの保形性を高めることができる。なお、炭素繊維は撚りをかけられることで折り曲げ部が発生し、この折り曲げ部が表面に露出する。
【0021】
請求項5に記載の発明のように、帯状膨張黒鉛の片面に炭素繊維束を幅広く薄い状態にした多数本の炭素繊維よりなる補強材を設けても、外補強効果を有効に発揮することができる。
【0022】
請求項6に記載の発明のように、帯状膨張黒鉛の両面に炭素繊維束を幅広く薄い状態にした多数本の炭素繊維よりなる補強材を設けることで、補強材を内部に巻き込む巻き込み量が多くなって、内補強することができるので、グランドパッキン材料の引張強度がより向上する。また、内部への巻き込み量が多くなることで、より相手側部材への圧接力を高めることができる。
【0023】
請求項7に記載の発明によれば、前記のグランドパッキン材料を複数本用いて編組しているグランドパッキンであるので、金属線と比較して相手側部材に大きな傷を付けない。また、摺動抵抗が小さいために相手側部材の回転性能または軸方向の摺動性能を向上させることができるとともに、優れた耐熱性を得ることができる。また、前記したとおり、グランドパッキン材料の相対すべりが抑えられることでグランドパッキンの保形性が高められることと、圧接力が高められることにより、シール性を向上させることができる。さらに、高熱条件下で使用しても、接着剤の焼失によるシール性の低下が生じることはない。
【0024】
請求項8に記載の発明によれば、前記のグランドパッキン材料を複数本用いてひねり加工しているグランドパッキンであるので、金属線と比較して相手側部材に大きな傷を付けない。また、摺動抵抗が小さいために相手側部材の回転性能または軸方向の摺動性能を向上させることができるとともに、優れた耐熱性を得ることができる。また、前記したとおり、グランドパッキン材料の相対すべりが抑えられることでグランドパッキンの保形性が高められることと、接圧力が高められることにより、シール性を向上させることができる。さらに、高熱条件下で使用しても、接着剤の焼失によるシール性の低下が生じることはない。
【0025】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好適な実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、請求項1に記載の発明に係るグランドパッキン材料の実施の形態を示す斜視図であり、この図において、グランドパッキン材料1は、極細で長尺の多数本の炭素繊維2よりなる補強材20を帯状膨張黒鉛3の片面に設け、このようにした基材4を前記炭素繊維2よりなる補強材20が外向きになるように端から長手方向に順次に撚りをかけて、補強材20で帯状膨張黒鉛3を被覆し、この撚られた補強材20に備えられている図2,図3に示す多数の開口20Aに帯状膨張黒鉛3を臨ませるようにして、炭素繊維2の一部と帯状膨張黒鉛3の幅方向の一端部5(図1参照)をのり巻き状にグランドパッキン材料1の内部に巻き込んで、領域Lで示すように、帯状膨張黒鉛3の間に炭素繊維2の一部を介在させた外補強構造に構成されている。なお、前記多数の開口20Aは、極細で長尺の多数本の炭素繊維2よりなる補強材20の多数の部位で隣接し合う炭素繊維2同士を離間させるように少し押し拡げて、撚る前に予め局部的な裂け目を形成することによって備える。
【0026】
炭素繊維2は、撚りをかけても折損し難い特性を有しているので、炭素繊維2よりなる補強材20は折損されることなく帯状膨張黒鉛3を被覆した外補強構造のグランドパッキン材料1を得ることができる。また、帯状膨張黒鉛3が炭素繊維2よりなる補強材20に備えられた多数の開口20Aに臨んで補強材20に係合するアンカー作用によって、帯状膨張黒鉛3と補強材20との結合力が高められるので接着剤の使用を省略できる。つまり、接着剤を使用しなくても、グランドパッキンを製造するための編組時またはひねり加工時に補強材20が帯状膨張黒鉛3と分離し難くなり外補強効果を有効に発揮することができる。さらに、接着剤の使用を省略することで、接着剤硬化による帯状膨張黒鉛3の特性(親和性、圧縮復元性など)の低下を抑制することができる。また、炭素繊維2の一部と帯状膨張黒鉛3の幅方向の一端部5がのり巻き状にグランドパッキン材料1の内部に巻き込まれているので、圧縮または圧力がかかった場合にサンドイッチ構造となることにより、膨張黒鉛粒子の移動が抑止され、すなわち膨張黒鉛粒子のはみだし量が抑えられ、シール面圧の低下を防止して、耐圧性能を向上させ、相手側部材への圧接力を高めることで、シール性も向上させることができる。
【0027】
図4は、請求項2に記載の発明に係るグランドパッキン材料の実施の形態を示す斜視図であり、この図において、グランドパッキン材料1は、極細で長尺の多数本の炭素繊維2よりなる補強材20を帯状膨張黒鉛3の片面に設け、このようにした基材4を前記炭素繊維2よりなる補強材20を外向きにして、かつ該補強材20の一部と帯状膨張黒鉛3の幅方向の一端部5をのり巻き状にグランドパッキン材料1の内部に巻き込んで、補強材20で帯状膨張黒鉛3を被覆し、この巻かれた補強材20に備えられている図2,図3に示す多数の開口20Aに帯状膨張黒鉛3を臨ませるようにして、炭素繊維2の一部と帯状膨張黒鉛3の幅方向の一端部5をのり巻き状にグランドパッキン材料1の内部に巻き込んで、領域Lで示すように、帯状膨張黒鉛3の間に炭素繊維2の一部を介在させた外補強構造に構成されている。なお、前記多数の開口20Aは、極細で長尺の多数本の炭素繊維2よりなる補強材20の多数の部位で隣接し合う炭素繊維2同士を離間させるように少し押し拡げて、巻く前に予め局部的な裂け目を形成することによって備える。
【0028】
炭素繊維2は、巻いても折損しないので、炭素繊維2よりなる補強材20は折損されることなく帯状膨張黒鉛2を被覆した外補強構造のグランドパッキン材料1を得ることができる。また、帯状膨張黒鉛3が炭素繊維2よりなる補強材20に備えられた多数の開口20Aに臨んで補強材20に係合するアンカー作用によって、帯状膨張黒鉛3と補強材20との結合力が高められるので接着剤の使用を省略できる。つまり、接着剤を使用しなくても、グランドパッキンを製造するための編組時またはひねり加工時に補強材20が帯状膨張黒鉛3と分離し難くなり外補強効果を有効に発揮することができる。さらに、接着剤の使用を省略することで、接着剤硬化による帯状膨張黒鉛3の特性(親和性、圧縮復元性など)の低下を抑制することができる。また、炭素繊維2の一部と帯状膨張黒鉛3の幅方向の一端部5がのり巻き状にグランドパッキン材料1の内部に巻き込まれているので、圧縮または圧力がかかった場合にサンドイッチ構造となることにより、膨張黒鉛粒子の移動が抑止され、すなわち膨張黒鉛粒子のはみだし量が抑えられ、シール面圧の低下を防止して、耐圧性能を向上させ、相手側部材への圧接力を高めることで、シール性も向上させることができる。
【0029】
請求項3に記載の発明に係るグランドパッキン材料のように、炭素繊維2の一部と帯状膨張黒鉛3の幅方向の一端部5がのり巻き状にグランドパッキン材料1の内部に巻き込まれるように巻かれて撚られている外補強構造であっても、図1の請求項1または図4の請求項2の発明に係るグランドパッキン材料1と同様の作用・効果を奏することができる。このように構成されたグランドパッキン材料1の外観は図1と略同じであるので図示は省略する。
【0030】
一方、炭素繊維2は、図1に示す請求項1または請求項3に記載のグランドパッキン材料1のように撚られることで、図5に示すように、炭素繊維2の折り曲げ部2aがランダムに表面に露出する。このため、後述するグランドパッキンを製造するための編組時またはひねり加工時に前記ランダムに表面に露出している炭素繊維2の折り曲げ部2a同士が互いにからみあって、グランドパッキン材料1の相対すべりを抑え、グランドパッキンの保形性を高めることができる。
【0031】
グランドパッキン材料1は、たとえば、以下の手順によって構成することができる。
【0032】
まず、図6に示すように、1本の直径が7μmの炭素繊維2を12000本集束したマルチフィラメント糸を使用して、幅W=4.00mm、厚さT=0.20mmの偏平状に集束した炭素繊維束2Aを設ける。
【0033】
この炭素繊維束2Aを幅方向に拡展して、図7に示す幅W1=25.00mm、厚さT1=0.03mmの展延シート2Bを形成する。
【0034】
図8に示す幅W1=25.00mm、厚さT1=0.03mmの展延シート2Bに膨張黒鉛粉末3Aを重ねて、これを圧縮成形することで、図9に示すように、幅W2=25.00mm、厚さT2=0.25mmに圧縮された帯状膨張黒鉛3の片面に展延シート2Bを設けて基材4を形成する。
【0035】
なお、図10に示すように、帯状膨張黒鉛3の上面に帯状膨張黒鉛3よりも幅狭の展延シート2Bを重ねて基材4を形成してもよい。また、図11に示すように、帯状膨張黒鉛3の上面に帯状膨張黒鉛3よりも幅広の展延シート2Bを重ねて基材4を形成してもよい。
【0036】
このように、帯状膨張黒鉛3の上面に前記展延シート2Bを重ね、炭素繊維2よりなる補強材20を帯状膨張黒鉛3の片面に設けた基材4を形成し、この時に、補強材20の多数の部位で隣接し合う炭素繊維2同士を離間させるように少し押し拡げて、予め局部的な裂け目を形成することによって多数の開口20Aを備わせて、ここに帯状膨張黒鉛3を臨ませることによって、アンカー作用が生じることになる。
【0037】
炭素繊維2としては、1本の直径が3μm〜15μmのものが好ましい。直径が3μm未満であると撚りをかける時に折損するおそれがあり、直径が15μmを超えると撚りをかけ難くなる。ただし、炭素繊維2の直径が小さいほどシール性がよくなるので、5μm〜9μmの範囲が最適である。
【0038】
また、展延シート2Bの厚さT1(炭素繊維層の厚さT1)は、10μm〜300μmの範囲が好ましい。さらに好ましくは30μm〜100μmの範囲である。厚さT1が10μm未満であると、外補強効果が低下し、しかも均一なシート製作が難しい。また、厚さT1が300μmを超えると、外補強効果を高めることができる反面撚りをかけ難くなり、しかも、補強材部分からの漏れが発生する。
【0039】
図12に示すように、帯状膨張黒鉛3の両面に展延シート2Bを重ねて基材4を形成し、この基材4に撚りをかけるかまたは巻いて撚りをかけることにより、図13(a)のグランドパッキン材料1を構成するか、基材4をのり巻き状に巻き込んで図13(b)のグランドパッキン材料1を構成することで、炭素繊維2を内部に巻き込む巻き込み量が多くなって内補強することができるので、グランドパッキン材料1の引張強度がより向上する。また、内部への巻き込み量が多くなることで、より相手側部材への接圧力を高めることができる。
【0040】
なお、図14に示すように、帯状膨張黒鉛3の両面に帯状膨張黒鉛3よりも幅狭の展延シート2B,2Bを重ねて基材4を形成してもよい。また、図15に示すように、帯状膨張黒鉛3の両面に帯状膨張黒鉛3よりも幅広の展延シート2B,2Bを重ねて基材4を形成してもよい。さらに、図16に示すように、幅広の展延シート2Bの両面に幅狭の帯状膨張黒鉛3を重ねて基材4を形成してもよい。
【0041】
以上説明した実施の形態のグランドパッキン材料1を複数本用意し、これら複数本を編組機により集束して編組することで、たとえば、図17のような紐状のグランドパッキン8を製造することができる。なお、図17では、8本のグランドパッキン材料1を集束して、8打角編みしたグランドパッキン8を示している。
【0042】
前記のグランドパッキン材料1を複数本用いて編組しているグランドパッキン8であるので、金属線と比較して相手側部材に大きな傷を付けない。また、摺動抵抗が小さいために相手側部材の回転性能または軸方向の摺動性能を向上させることができるとともに、優れた耐熱性を得ることができる。さらに、前記した撚られることで、炭素繊維2の折り曲げ部2aがランダムに表面に露出しているグランドパッキン材料1でグランドパッキン8を編組した場合には、編組時に炭素繊維2の折り曲げ部2aが互いにからみあって、グランドパッキン材料1の相対すべりを抑え、グランドパッキン8の保形性を高めることができる。また、のり巻き状に巻かれているグランドパッキン材料1では、その表面に炭素繊維2の折り曲げ部2aが露出しないものの、編組時において炭素繊維2の折り曲げ部2aが表面に露出して互いにからみあうことになるので、グランドパッキン材料1の相対すべりを抑え、グランドパッキン8の保形性を高めることができる。しかも圧接力が高められることにより、シール性を向上させることができる。さらに、高熱条件下で使用しても、接着剤の焼失によるシール性の低下が生じることはないので、このことによっても優れたシール性を得ることができる。
【0043】
一方、前記のグランドパッキン材料1を複数本用意し、これら複数本を集束してひねり加工することで、たとえば、図18のような紐状のグランドパッキン8を製造することができる。なお、図18では、6本のグランドパッキン材料1を集束してひねり加工を施しながらロール成形を行なったものである。このように、ひねり加工されたグランドパッキン8であってもよい。また、前記した撚られることで、炭素繊維2の折り曲げ部2aがランダムに表面に露出しているグランドパッキン材料1でグランドパッキン8をひねり加工した場合には、ひねり加工時に炭素繊維2の折り曲げ部2aが互いにからみあって、グランドパッキン材料1の相対すべりを抑え、グランドパッキン8の保形性を高めることができる。また、のり巻き状に巻かれているグランドパッキン材料1では、その表面に炭素繊維2の折り曲げ部2aが露出しないものの、ひねり加工時において炭素繊維2の折り曲げ部2aが表面に露出して互いにからみあうことになるので、グランドパッキン材料1の相対すべりを抑え、グランドパッキン8の保形性を高めることができる。しかも圧接力が高められることにより、シール性を向上させることができる。さらに、高熱条件下で使用しても、接着剤の焼失によるシール性の低下が生じることはないので、このことによっても優れたシール性を得ることができる。
【0044】
【発明の効果】
以上説明したように、グランドパッキン材料およびグランドパッキンは構成されているので、以下のような格別の効果を奏する。
【0045】
請求項1、請求項2または請求項3に記載の発明によれば、帯状膨張黒鉛を炭素繊維で外補強した外補強構造のグランドパッキン材料を得ることができる。また、補強材上に膨張黒鉛粉末を重ねて圧縮成形することで帯状膨張黒鉛が炭素繊維よりなる補強材に備えられた多数の開口に臨んで前記補強材に係合するアンカー作用によって、帯状膨張黒鉛と補強材との結合力が高められるので、接着剤の使用量を零に制限しても、グランドパッキンを製造するための編組時またはひねり加工時に補強材が帯状膨張黒鉛と分離し難くなり外補強効果を有効に発揮することができる。さらに、接着剤の使用量を零に制限できることで、接着剤硬化による帯状膨張黒鉛の特性(親和性、圧縮復元性など)の低下を抑制することができる。また、グランドパッキン材料の内部に補強材が巻き込まれていることにより、圧縮または圧力がかかった場合にサンドイッチ構造となるので、膨張黒鉛粒子の移動が抑止され、すなわち膨張黒鉛粒子のはみだし量が抑えられ、シール面圧の低下を防止して、耐圧性能を向上させ、相手側部材への圧接力を高めることで、シール性も向上させることができる。
【0046】
請求項4に記載の発明によれば、表面に露出している炭素繊維の折り曲げ部がグランドパッキンを製造するための編組時またはひねり加工時に互いにからみあって、グランドパッキン材料の相対すべりを抑え、グランドパッキンの保形性を高めることができる。
【0047】
請求項5に記載の発明によれば、帯状膨張黒鉛と炭素繊維よりなる補強材の両者を分離させることなく撚りをかけるかまたはのり巻き状に巻くかあるいは巻いて撚りをかけて、炭素繊維を内部に巻き込んだ外補強構造のグランドパッキン材料を容易に得ることができる。
【0048】
請求項6に記載の発明によれば、帯状膨張黒鉛と炭素繊維よりなる補強材の両者を分離させることなく撚りをかけるかまたはのり巻き状に巻くかあるいは巻いて撚りをかけて、炭素繊維を内部に巻き込んだグランドパッキン材料を容易に得ることができるとともに、補強材を内部に巻き込む巻き込み量が多くなって、内補強することができるので、グランドパッキン材料の引張強度がより向上する。また、内部への巻き込み量が多くなることで、より相手側部材への圧接力を高めることができる。
【0049】
請求項7または請求項8に記載の発明によれば、前記のグランドパッキン材料を複数本用いて編組またはひねり加工しているので、金属線と比較して相手側部材に大きな傷を付けない。また、摺動抵抗が小さいために相手側部材の回転性能または軸方向の摺動性能を向上させることができるとともに、優れた耐熱性を得ることができる。さらに、表面に露出している炭素繊維の折り曲げ部または編組時やひねり加工時に表面に露出する折り曲げ部がグランドパッキンを製造するための編組時またはひねり加工時に互いにからみあって、グランドパッキン材料の相対すべりを抑え、グランドパッキンの保形性を高めることと、接圧力が高められることにより、シール性を向上させることができる。さらに、高熱条件下で使用しても、接着剤の焼失によるシール性の低下が生じることはない。
【図面の簡単な説明】
【図1】 請求項1に記載の発明に係るグランドパッキン材料の実施の形態を示す斜視図である。
【図2】 炭素繊維よりなる補強材の多数の開口に帯状膨張黒煙が臨んでいる状態の一例を拡大して部分的に示す平面図である。
【図3】 図2のA−A線断面図である。
【図4】 請求項2に記載の発明に係るグランドパッキン材料の実施の形態を示す斜視図である。
【図5】 炭素繊維の折り曲げ部の拡大説明図である。
【図6】 炭素繊維束の一例を示す斜視図である。
【図7】 展延シートの一例を示す斜視図である。
【図8】 展延シートに膨張黒鉛粉末を重ねた状態を示す断面図である。
【図9】 基材の一例を示す断面図である。
【図10】 図9に示す基材の第1変形例を示す断面図である。
【図11】 図9に示す基材の第2変形例を示す断面図である。
【図12】 基材の他の実施の形態を示す断面図である。
【図13】 請求項6に記載のグランドパッキン材料の実施の形態を示す斜視図である。
【図14】 図12に示す基材の第1変形例を示す断面図である。
【図15】 図12に示す基材の第2変形例を示す断面図である。
【図16】 図10に示す基材の変形例を示す断面図である。
【図17】 請求項7に記載の発明に係るグランドパッキンの実施の形態を示す斜視図である。
【図18】 請求項8に記載の発明に係るグランドパッキンの実施の形態を示す斜視図である。
【図19】 従来のグランドパッキン材料の一例を示す斜視図である。
【図20】 従来のグランドパッキン材料の他の例を示す斜視図である。
【図21】 従来のグランドパッキンの一例を示す斜視図である。
【図22】 従来のグランドパッキンの他の例を示す斜視図である。
【符号の説明】
1 グランドパッキン材料
2 炭素繊維
2a 炭素繊維の折り曲げ部
3 帯状膨張黒鉛
4 基材
8 グランドパッキン
20 補強材
20A 多数の開口
Claims (8)
- 炭素繊維束を幅広く薄い状態にした多数本の炭素繊維よりなる補強材を帯状膨張黒鉛の少なくとも片面に設けた基材が、前記補強材を外側にしてかつ該補強材が内部に巻き込まれるように撚られており、この撚られた補強材には炭素繊維束中の炭素繊維間に形成されかつ膨張黒鉛を臨ませる多数の開口が備えられていて、これら開口が備えられた補強材上に膨張黒鉛粉末を重ねて圧縮成形することで前記開口に膨張黒鉛を臨ませるようにしたことを特徴とするグランドパッキン材料。
- 炭素繊維束を幅広く薄い状態にした多数本の炭素繊維よりなる補強材を帯状膨張黒鉛の少なくとも片面に設けた基材が、前記補強材を外側にしてかつ該補強材が内部に巻き込まれるように巻かれており、この巻かれた補強材には炭素繊維束中の炭素繊維間に形成されかつ膨張黒鉛を臨ませる多数の開口が備えられていて、これら開口が備えられた補強材上に膨張黒鉛粉末を重ねて圧縮成形することで前記開口に膨張黒鉛を臨ませるようにしたことを特徴とするグランドパッキン材料。
- 炭素繊維束を幅広く薄い状態にした多数本の炭素繊維よりなる補強材を帯状膨張黒鉛の少なくとも片面に設けた基材が、前記補強材を外側にしてかつ該補強材が内部に巻き込まれるように巻かれて撚られており、この巻かれて撚られた補強材には炭素繊維束中の炭素繊維間に形成されかつ膨張黒鉛を臨ませる多数の開口が備えられていて、これら開口が備えられた補強材上に膨張黒鉛粉末を重ねて圧縮成形することで前記開口に膨張黒鉛を臨ませるようにしたことを特徴とするグランドパッキン材料。
- 炭素繊維の折り曲げ部が表面に露出している請求項1または請求項3のいずれかに記載のグランドパッキン材料。
- 帯状膨張黒鉛の片面に炭素繊維束を幅広く薄い状態にした多数本の炭素繊維よりなる補強材を設けた請求項1、請求項2、請求項3または請求項4のいずれかに記載のグランドパッキン材料。
- 帯状膨張黒鉛の両面に炭素繊維束を幅広く薄い状態にした多数本の炭素繊維よりなる補強材を設けた請求項1、請求項2、請求項3、請求項4のいずれかに記載のグランドパッキン材料。
- 請求項1,2,3,4,5,6のいずれかに記載のグランドパッキン材料を複数本用いて編組していることを特徴とするグランドパッキン。
- 請求項1,2,3,4,5,6のいずれかに記載のグランドパッキン材料を複数本用いてひねり加工していることを特徴とするグランドパッキン。
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