(実施の形態1)
以下、本発明の実施の形態1を図面を用いて説明する。
図1は本発明の実施の形態1における積層型セラミックチップインダクタの構造を示す分解斜視図である。
なお、以下図面は都合上1個片分の積層型セラミックチップインダクタのみを図示するが、実際の製造工程では、平面上に複数個同時に形成されており、積層後個片に分割するものとする。
図1において1,3,6はシート状磁性体層である。2,5は所望のパターンを有するレジスト膜を形成した後メッキにより導体パターンを形成する電鋳法で形成され、それぞれシート状磁性体層1,6に転写される巻回コイル状メッキ導体である。4は巻回コイル状メッキ導体2,5を互いに接続するための貫通孔である。
以上のように構成された積層型セラミックチップインダクタの製造方法を以下に示す。
まず初めに、電鋳法による転写用の巻回コイル状メッキ導体2,5の作製法を図2を用いて説明する。
図2に示すように、ベースステンレス板8全面に導電性を有する離型処理層として、ストライクAgメッキを施すことにより、厚み0.1μm以下のAg離型層9を得る。
ここで、ストライクAgメッキとしては、ごく一般的なアルカリシアン系のAgメッキ浴を用いることができる。アルカリシアン系のAgメッキ浴の一例として(表1)にメッキ浴の構成を例示する。
(表1)のAgメッキ浴の場合で、5〜20秒程度で、約0.1μmのAg離型層9を得ることができる。
ところで、Ag離型層9が離型性を有するのは、Agとの密着性が乏しいベースステンレス板8上に、Ag膜をストライク(高速)メッキするので、Ag膜の膜中に歪みが多く発生し、Ag膜がベースステンレス板8と強固に密着できないためと考えられる。
またAg離型層9とベースステンレス板8の、より最適な離型性を得るため、ベースステンレス板8の表面を表面粗さ(Ra)が約0.05μm〜約1μmの範囲に調整する(粗す)ことが望ましい。
表面を粗す方法として、酸処理やブラスト処理等を用いることができる。
表面粗さ(Ra)が約0.05μm以下の場合、Ag離型層9とベースステンレス板8の密着性が不十分になり、以降の工程の途中でAg離型層9が剥離する場合があり、また表面粗さ(Ra)が約1μm以上の場合、Ag離型層9とベースステンレス板8の密着性が良すぎて、Ag離型層9の磁性体層への転写が良好に行えなかったり、メッキレジストパターン11の解像度が低下する場合がある。
一方、ベースステンレス板8の表面を適度に粗すことにより、次工程で形成されるメッキレジストパターン11の密着性を向上させる効果や、メッキレジストパターン11の剥離工程におけるAg離型層9の離型防止効果が向上するという副次的効果も生じる。
なお、Ag離型層9は、銀鏡反応を利用して形成することもできる。
更にベース金属板としては、ステンレス以外の材料を用いて導電性を有するように離型処理することも可能である。主な使用可能材料とその離型処理方法を(表2)に列挙する。
また、ベース金属板以外に銅箔をラミネートしたプログラム基板やペットフィルム等に導電性を付与することにより、同様の効果を持たせることも可能であるが、金属板の方が、わざわざ導電性を付与する必要も無く効率的である。
特にステンレス板は、化学的に安定で、かつ表面にクロム系の酸化膜を有するため、離型性も良く、最も容易に用いることが可能である。
このように、Ag離型層9を形成した後、Ag離型層9上にドライフィルムレジストをラミネートし、予備乾燥後、2.0×1.25mm2サイズの平面内に幅70μm、約2.5ターンの巻回コイル状メッキ導体形成用のフォトマスクを用いて露光・現像し、厚みT=55μmのメッキレジストパターン11を形成する。
フォトレジストとしては、各種メッキレジスト(液状、ペースト状、ドライフィルム)が利用できる。ドライフィルムに関しては、レジスト厚みが一定であり、導体膜の厚みを比較的精度良くコントロールできるが、レジスト感度の程度から、導体パターン精度幅が約50μm以上のパターン形成用に用いるのが好ましい。
液状フォトレジストの場合、数ミクロン幅の導体パターン精度を得ることも可能である。
最も一般的なペースト状フォトレジストの場合で、40μm程度の導体幅と30〜40μm程度の厚みの導体パターンを得ることができる。
この場合、例えば2.0×1.25mm2サイズの平面内に5ターン程度の巻回導体パターンを、1.6×0.8mm2サイズの平面内に3ターン程度のパターンを容易に形成できる。
また、それぞれのレジストの特性に応じて、レジスト膜のコーティング方法も、印刷、スピンコート、ロールコート、ディップ、ラミネート等の方法を選択することができる。
露光は、平行光のUV露光器で行い、露光時間、光量等の条件は、各種レジストの特性に合わせれば良い。
さらに、現像は各種レジストの専用の現像液を用いれば良い。
また必要により、現像後UV光の再露光や、ポストキュアを行い、レジスト膜の耐薬品性を向上させることもできる。
次に、メッキレジストパターン11を形成した後、Agの電気メッキ浴に浸漬し、必要な厚みtの転写用のAg導体パターン10を形成する。本実施例ではt=約50μmとなるように形成した。
この工程における最も注意すべき点は、一般的なアルカリ性のAgメッキ浴を用いないということである。
何故なら、アルカリ浴の場合、メッキレジスト膜の剥離液として機能するため、前工程でパターン作製したメッキレジストパターン11が破壊されてしまうためである。
従って、弱アルカリ性(中性)あるいは酸性のAgメッキ浴を用いる必要がある。弱アルカリ性(中性)のメッキ浴としては(表3)に示すようなものを用いることができる。
pH調整はアンモニアとクエン酸で行うが、種々の実験の結果、pHが8.5を越えるとほとんどのメッキレジストが剥離する。
従って、pHを少なくとも8.5以下に設定することが望ましい。
その他酸性のメッキ浴として、(表4)に示すようなものを用いることができる。
このような(表4)に示すAgメッキ浴は、酸性のため、メッキレジストの剥離は見られなかった。さらに界面活性剤(メチルイミダゾールチオール、フルフラール、ロート油等)の添加により、Ag光沢を増し表面をさらに平滑にすることもできた。
本実施例では、(表3)に示す弱アルカリ(中性)浴を用いた。pHは7.3とした。
但し、メッキ処理における電流密度は1A/dm2程度とした。
これは、高速にメッキを行うため、電流密度を大きくすると、Ag導体パターン10に歪みが大きく生じ、パターンを転写する以前にAg膜が剥離してしまう場合があるからである。
なお、本実施例においては、厚み約50μmのAg導体パターン10を得るのに約260分のメッキ時間を要した。
ところで、Ag離型層9は、ストライクAgメッキ浴(アルカリ性)で形成されたが、上記に示したような弱アルカリ性(中性)または酸性浴中で、最初の数分間のみ電流密度を大きくし、Ag膜の歪みを大きくすることでベースステンレス板8との界面付近のAg膜に離型性を付与することも可能である。
この場合、図3に示すような構成となり、わざわざAg離型層9を設ける必要は無い。
次に、メッキレジストパターン11を剥離し、図4に示すような構造を得る。
メッキレジストパターン11の剥離液もメッキレジスト膜専用のものを用いれば良いが、通常はNaOHの約5%溶液(液温約40℃)に浸漬すれば約1分程度で剥離することができる。
メッキレジストパターン11の剥離終了後、約0.1μmのAg離型層9を希硝酸(5%)を用いて、ソフトエッチング(エッチング時間は数秒)することにより、図5に示すように独立した巻回コイル状のAg導体パターン10をベースステンレス板上に得る。このAg導体パターン10が図1に示す約2.5ターンの巻回コイル状メッキ導体2,5となるのである。
Ag離型層9のソフトエッチャントとしては、前述の希硝酸以外に、無水クロム酸の硫酸浴や塩化第2鉄の塩酸浴等も使用できる。
なお、エッチング時間にして、わずか数秒のソフトエッチング程度で、巻回コイル状メッキ導体パターンの下に位置するAg離型層がエッチングされ巻回コイル状メッキ導体パターンが剥離することはない。
次に、シート状磁性体層1,3,6の形成方法について述べる。
まず、ブチラール、アクリル、エチルセルロース等の樹脂をイソプロピルアルコール、ブタノール等の低沸点アルコールまたはトルエン、キシレン等の溶剤とジブチルフタレート等の可塑剤に溶解させたビヒクルとNi・Zn・Cu系のフェライト粉末(平均粒径0.5〜2.0μm)とを混練してなるペースト(スラリー)状フェライトをドクターブレード法でペットフィルム上に形成し、80〜100℃程度で粘着性を少し残した状態になるまで乾燥させる。
各シート状磁性体層1,3,6の厚みとしては、シート状磁性体層1,6は厚み0.3〜0.5mm程度になるように形成し、シート状磁性体層3は、厚さ20〜100μm程度に形成した後、パンチング等により、0.15〜0.3mm角程度の貫通孔4を貫通させる。
次に、各巻回コイル状メッキ導体2,5と各シート状磁性体層1,3,6を転写積層する転写工程について説明する。
まず、ペットフィルム上に形成されたシート状磁性体層1に、すでに形成済みの巻回コイル状メッキ導体2を押し当て転写する(必要により、加圧、加熱しても良い)。あるいは、シート状磁性体層1を一旦ペットフィルムから離型し、シート状磁性体層1の粘着性を有する可塑剤面側(ペットフィルムと接していた面側)に巻回コイル状メッキ導体2を押し当て転写しても良い。
このとき巻回コイル状メッキ導体2は、ベースステンレス板8と程良い離型性を有しており、一方シート状磁性体層1に対しては程良い粘着性があり、またコイル状メッキ導体2が、転写プロセスの過程でシート状磁性体層1の圧縮変形により食い込むため、シート状磁性体層1をベースステンレス板8から、引き剥がすことにより、巻回コイル状メッキ導体2は容易にシート状磁性体層1に転写される。
また、このときシート状磁性体層1のシート強度が不足している場合には、シート状磁性体層1の上に粘着性シートを張り付けることにより、シート状磁性体層の強度不足を補うこともできる。
さらに同様のプロセスにより、巻回コイル状メッキ導体5をシート状磁性体層6に転写する。
さらにこうして得た2つの巻回コイル状メッキ導体2,5を転写したシート状磁性体層1,6の間にシート状磁性体層3を配置し、貫通孔4を通じて2つの巻回コイル状メッキ導体2,5が互いに接続されるように積層し、加熱(60〜120℃)・加圧(20〜500kg/cm2)することで層間の接続を完全にする。
ただし、2つの巻回コイル状メッキ導体2,5の、電気的接合は厚膜導体を介した方がよりオーミックな接続が得られる場合が多いため、図13に示すように、好ましくは、シート状磁性体層3の貫通孔4には、予め印刷厚膜導体7を印刷し充填するか、あるいは、貫通孔4と略同じ大きさのバンプ状のメッキ導体7を転写した方が望ましい。
以上のプロセスにおいては、製造上の効率を向上させるため同時に複数の積層型セラミックチップインダクタを得るため、一枚のシートに複数の導体パターンが形成されるのが一般的である。従って、シートを各個片に切断した後、850〜950℃、1〜2時間程度で焼成する。また、焼結後に切断しても良い。
最後に、切断した個片の相対する外片部に内部の巻回コイル状メッキ導体と電気的に接続されるように、銀合金系の取り出し電極を形成し、600〜850℃程度で、焼結させることにより、図6に示す外部電極12を形成する。さらに必要により、外部電極12上にNi、ハンダ等のメッキを施すものである。
このようなプロセスにより、外形2.0×1.25mm、厚み0.8mmの積層型セラミックチップインダクタを得た。内部導体は約2.5ターンの巻回コイル状メッキ導体2および5の2層構造となっており、合計5ターンの巻回コイル状メッキ導体線路を有しているため、周波数100MHzでのインピーダンス値は、約700Ω得ることができた。
直流抵抗値は、Ag導体厚みが約50μmあるため、極めて小さく約0.12Ωにすることができた。
また、本実施例による、積層セラミックチップインダクタを切断して観察したところ、Ag導体と磁性体層の界面に特には隙間のようなものは観察されなかった。
これは、本発明による電鋳法により形成された巻回コイル状メッキ導体は、焼成による収縮率が40〜60%である厚膜導体で形成される場合と異なり、焼成による収縮が比較的小さい(5〜10%)ため、Ag導体の周りに磁性体(焼結収縮率5〜20%)が緻密に焼結したためと考えられる。
また、巻回コイル状メッキ導体が金属箔の場合には、金属箔がメッキ膜と比較して緻密であるので、熱膨張し、ほとんど収縮しないため、磁性体の焼結収縮との収縮率の相違によるクラックを生じる場合があるが、本実施例による電鋳法により形成された巻回コイル状メッキ導体の場合はクラックを生じることは少ない。
(実施の形態2)
以下、本発明の実施の形態2を図面を用いて、説明する。
図7は本発明の実施の形態2における積層型セラミックチップインダクタの構造を示す分解斜視図である。
図7において13,18はシート状磁性体層、15は貫通孔16を形成したシート状磁性体層である。14は電鋳法で形成された転写用の巻回コイル状メッキ導体、17は貫通孔16を形成したシート状磁性体層に印刷された厚膜導体である。電鋳法で形成された転写用の巻回コイル状メッキ導体14と印刷された厚膜導体17は、貫通孔16を介して互いに接続する。
以上のように構成された積層型セラミックチップインダクタの製造方法を以下に示す。
まず初めに、転写用の巻回コイル状メッキ導体14の作製は、実施の形態1と同様の電鋳法により行うことができる。
本実施例では、1.6×0.8mm2サイズの平面内に幅約40μm、厚さ35μmのパターンルールで約3.5ターンのパターンを得た。
なお、使用したレジストは、印刷可能な高感度ペースト状レジストである。
次にシート状磁性体層13,15,18の形成方法について述べる。
ブチラール、アクリル、エチルセルロース等の樹脂をターピネオール等の高沸点の溶剤とジブチルフタレート等の可塑剤に溶解させたビヒクルとNi・Zn・Cu系のフェライト粉末(平均粒径0.5〜2.0μm)とを混練してなるペースト状フェライトをメタルマスクを用いて印刷でペットフィルム上に形成する。その後、80〜100℃程度で乾燥させ(必要により印刷・乾燥を数回繰り返し)、厚み0.3〜0.5mm程度になるように形成されたシート状磁性体層13,18を得る。
あるいは、上記の方法以外に、50〜100μm程度に印刷・乾燥されたシート状磁性体層を数枚積層することにより各シート状磁性体層13,18を得ることもできる。
なお、シート状磁性体層15については、スクリーン印刷にてペットフィルム上に貫通孔16を有するパターンを形成し、厚みは40〜100μm程度になるように調整する。
まずペットフィルム上に形成されたシート状磁性体層13に、すでに形成済みの巻回コイル状メッキ導体14を押し当て転写する。加圧条件は20〜100kg/cm2、加熱条件は60〜120℃の範囲から選ばれるのが好ましい。
このとき巻回コイル状メッキ導体14は、ベースステンレス板と程良い離型性を有しているとともに、シート状磁性体層13に対しては程良い粘着性がある。さらに巻回コイル状メッキ導体14は、パターン幅が40μmと比較的狭いため、シート状磁性体層13に多少食い込む効果も有るので、巻回コイル状メッキ導体14は容易にシート状磁性体層13に転写される。
なお、実施例1と同様にシート状磁性体層13の可塑剤面側に巻回コイル状メッキ導体14を押し当てることにより転写することもできる。
続いて、貫通孔16を有するシート状磁性体層15に厚膜導体17を印刷する。
さらに、こうして得た巻回コイル状メッキ導体14を転写したシート状磁性体層13と厚膜導体17が印刷されたシート状磁性体層15を重ね、貫通孔16を介して、巻回コイル状メッキ導体14と厚膜導体17が互いに接続されるように積層し、さらにその上部にシート状磁性体層18を積層し、加熱・加圧し、一体積層体とする。
以上のプロセスにおいては、製造上の効率を向上させるため同時に複数の積層型セラミックチップインダクタを得るため、一枚のシートに複数の導体パターンが形成する。従って、シートを各個片に切断した後、850〜950℃、1〜2時間程度で焼成する。
最後に切断した個片の相対する両端部に内部の巻回コイル状メッキ導体と接続するように、取り出し電極を形成し、600〜850℃程度で、焼結させることにより、図6に示す外部電極12を形成する。さらに必要により、外部電極12上にNi、ハンダ等のメッキを施すものである。
このようなプロセスにより、外形1.6×0.8mm2、厚み0.8mmの積層型セラミックチップインダクタを得た。内部導体は約3.5ターンの巻回コイル状メッキ導体14と貫通孔を介して接続される直線状の厚膜導体17の、2層構造となっており、合計3.5ターンの巻回コイル状メッキ導体線路を有しているため、100MHzにおけるインピーダンスは、約300Ωとして得ることができた。
直流抵抗値は、Ag導体厚みが約35μmあるため、約0.19Ωにすることができた。
なお、本実施例では、転写用の巻回コイル状メッキ導体14と厚膜導体17の2つの導体のみからなっているが、必要により複数の転写用の巻回コイル状メッキ導体14と複数の厚膜導体17とを交互に接続しても構わない。
また本実施例のように、厚膜導体と巻回コイル状メッキ導体とを組み合わせることにより、巻回コイル状メッキ導体同士を接続する場合に比べ更に接続信頼性が増すものである。
これは、厚膜導体が積層時に変形しやすいため、巻回コイル状メッキ導体との密着性が高まった状態で焼結されるためであると推定される。
(実施の形態3)
以下、本発明の実施の形態3を図面を用いて、説明する。
図8は本発明の実施の形態3における積層型セラミックチップインダクタ構造を示す分解斜視図である。
図8において19,24はシート状磁性体層、21は貫通孔22を有するシート状磁性体層である。20,23は電鋳法で形成された転写用の巻回コイル状メッキ導体である。25はシート状磁性体層21に形成された貫通孔22を充填するように印刷された厚膜導体である。電鋳法で形成された転写用の巻回コイル状メッキ導体20,23と印刷された厚膜導体25は、貫通孔22を介して互いに接続する。
以上のように構成された積層型セラミックチップインダクタの製造方法を以下に示す。
まず初めに、電鋳法による転写用の巻回コイル状メッキ導体20,23の作製法は、実施の形態1と同様の電鋳法により行うことができる。
本実施例では、1.6×0.8mm2サイズの平面内に幅約40μm、厚さ35μmのパターンルールで、転写用の巻回コイル状メッキ導体20は、約3.5ターン、転写用の巻回コイル状メッキ導体23として約2.5ターンのパターンを得た。
なお、使用したレジストは、印刷可能な高感度ペースト状レジストである。
次にシート状磁性体層19,21,24の形成方法について述べる。
ブチラール、アクリル、エチルセルロース等の樹脂をターピネオール等の高沸点の溶剤とジブチルフタレート等の可塑剤に溶解させたビヒクルとNi・Zn・Cu系のフェライト粉末(平均粒径0.5〜2.0μm)とを混練してなるペースト状フェライトをメタルマスクを用いて印刷でペットフィルム上に形成し、80〜100℃程度で粘着性を少し残した状態になるまで乾燥させ、厚み0.3〜0.5mm程度になるように形成されたシート状磁性体層19,24を得る。シート状磁性体層21は、スクリーン印刷にてペットフィルム上に貫通孔22を有するパターンを形成し、厚みは40〜100μm程度になるように調整する。
さらに貫通孔22に厚膜導体が充填されるように、厚膜導体25を印刷する。
次にペットフィルム上に形成されたシート状磁性体層19に、すでに形成済みの転写用の巻回コイル状メッキ導体20を押し当て転写する(必要により、加圧、加熱する)。
同様に、転写用の巻回コイル状メッキ導体23もシート状磁性体層24に転写する。
このとき、シート状磁性体層24の代わりにシート状磁性体層21に転写しても構わない。
さらにこうして得た巻回コイル状メッキ導体20が転写されたシート状磁性体層19と巻回コイル状メッキ導体23が転写されたシート状磁性体層24の間に貫通孔22を有するシート状磁性体層21を配置し、貫通孔22に充填された厚膜導体25を介して、転写用の巻回コイル状メッキ導体20と23とが互いに接続するよう積層し、加熱・加圧し、一体積層体とする。
以上のプロセスにおいては、製造上の効率を向上させるため同時に複数の積層型セラミックチップインダクタを得るため、一枚のシートに複数の導体パターンが形成されるのが一般的である。従って、シートを各個片に切断し、その後、850〜1000℃、1〜2時間程度で焼成する。
最後に、切断した個片の相対する両端部に内部の巻回コイル状メッキ導体と接続するように、取り出し電極を形成し、600〜850℃程度で焼結させることにより、図6に示す外部電極12を形成する。さらに、必要により外部電極12上にNi、ハンダ等のメッキを施すものである。
このようなプロセスにより、外形1.6×0.8mm2、厚み0.8mmの積層型セラミックチップインダクタを得た。内部導体は導体幅約40μm、約3.5ターンの巻回コイル状メッキ導体20と、貫通孔を介して接続される約2.5ターンの巻回コイル状メッキ導体23との2層構造となっており、合計6ターンの巻回コイル状メッキ導体線路を有しているため、100MHzにおいてインピーダンスは、約1000Ω得ることができた。
直流抵抗値は、巻回コイル状メッキ導体の厚みが約35μmあるため、約0.32Ωにすることができた。
(実施の形態4)
以下、本発明の実施の形態4を図面を用いて説明する。
図9は本発明の実施の形態4における積層型セラミックチップインダクタの構造を示す分解斜視図である。
図9において26,31はシート状磁性体層、28は貫通孔29を有するシート状磁性体層、27,30は電鋳法で形成された転写用の巻回コイル状メッキ導体である。
電鋳法で形成された転写用の巻回コイル状メッキ導体27,30は、貫通孔29を介して互いに接続する。
以上のように構成された積層型セラミックチップインダクタの製造方法は、実施の形態1と同じであるので省略する。
本実施例により、外形2.0×1.25mm2、厚み0.8mmの積層型セラミックチップインダクタを得た。内部導体は導体幅約40μm、約5.5ターンの巻回コイル状メッキ導体27と貫通孔29を介して接続される約2.5ターンの巻回コイル状メッキ導体30の2層構造となっており、合計8ターンの巻回コイル状メッキ導体線路を有しているため、100MHzにおけるインピーダンスは、約1400Ω得ることができた。
直流抵抗値は、巻回コイル状メッキ導体厚みが約35μmであるため、約0.47Ωにすることができた。
(実施の形態5)
以下、本発明の実施の形態5を図面を用いて、説明する。
本実施例における積層型セラミックチップインダクタは実施の形態2と同じ構造を有しているので、図7を用いて説明する。
図7において13,18はシート状磁性体層、15は貫通孔16を有するシート状磁性体層、14は電鋳法で形成された転写用の巻回コイル状メッキ導体、17は貫通孔16を有するシート状磁性体層に印刷された厚膜導体で、電鋳法で形成された転写用の巻回コイル状メッキ導体14と印刷された厚膜導体17とは、貫通孔16を介して互いに接続する。
以上のように構成された積層型セラミックチップインダクタの製造方法を以下に示す。
まず、実施の形態2と同様に、1.6×0.8mm2サイズの平面内に幅約40μm、厚さ35μmのパターンルールで約3.5ターンのパターンの転写用の巻回コイル状メッキ導体14を得た。
次に図10を用いて、シート状磁性体層13の形成方法について述べる。
ブチラール、アクリル、エチルセルロース等の樹脂をターピネオール等の高沸点の溶剤とジブチルフタレート等の可塑剤に溶解させたビヒクルとNi・Zn・Cu系のフェライト粉末(平均粒径0.5〜2.0μm)とを混練してなるペースト状フェライトをメタルマスクを用いてAg導体パターン34の形成されているベースステンレス板32上に印刷し、80〜100℃程度で乾燥させ(必要により、印刷・乾燥を繰り返し)、厚み0.3〜0.5mm程度になるようにシート状磁性体層33を形成する。
次にこのシート状磁性体層33の上層から熱離型性シート35を粘着させ(必要により加熱、加圧しても良い)、この熱離型性シート35とともに、Ag導体パターン34とシート状磁性体層33を同時にベースステンレス板32から離型する。
このようにして巻回コイル状メッキ導体14がシート状磁性体層13上に形成されたグリーンシートを得ることができる。
また、必要により、シート状磁性体層33を印刷形成する前に、Ag導体パターン34が形成されたベースステンレス板32上に実施例1で図2に示すようなAg離型層9を設けることもできる。
このようなAg離型層により、シート状磁性体層33とベースステンレス板32との離型性をより良くすることができる。なお、Ag離型層としては液状のフッ素系カップリング剤(パーフルオロデシルトリエトキシシラン等)をディップコートし、200℃程度で乾燥形成できる。離型層の厚みは0.1μm程度が好適である。
一方、シート状磁性体層15は、スクリーン印刷にてペットフィルム上に貫通孔16を有するパターンに形成される。厚みは40〜100μm程度になるように調整され、このシートを巻回コイル状メッキ導体14上に積層する。
積層時の加圧条件は20〜500kg/cm2、加熱条件は80〜120℃の範囲から選ばれるのが好ましい。
本実施例においては、巻回コイル状メッキ導体14は、シート状磁性体層13に食い込んでおり、凹凸が少ないため、シート状磁性体層15はシート状磁性体層13上に容易に転写される。
次にシート状磁性体層15上に貫通孔16を介して巻回コイル状メッキ導体14と接続するように厚膜導体17が印刷される。
さらにその上部にシート状磁性体層18を積層し、加熱・加圧し、一体積層体とする。この場合シート状磁性体層18を直接印刷積層しても構わない。
残りの工程(グリーンシートの切断、焼成、端面電極形成等)は、実施の形態2と全く同様である。
また本実施例における積層型セラミックチップインダクタの電気特性も実施の形態2と等価である。
(実施の形態6)
以下、本発明の実施の形態6を図面を用いて、説明する。
本実施例は実施の形態2及び5と同じ構造を有しており、図7及び図11を用いて説明する。
図7において13,18はシート状磁性体層、15は貫通孔16を有したシート状磁性体層である。14は電鋳法で形成された転写用の巻回コイル状メッキ導体、17は貫通孔16を有するシート状磁性体層に印刷された厚膜導体である。電鋳法で形成された転写用の巻回コイル状メッキ導体14と印刷された厚膜導体17とは、貫通孔16を介して互いに接続する。
以上のように構成された積層型セラミックチップインダクタの製造方法において、転写用の巻回コイル状メッキ導体14をシート状磁性体層13に転写する工程を図11を用いて以下に示す。
実施の形態2と同様に、1.6×0.8mm2サイズの平面内に幅約40μm、厚さ35μmのパターンルールで約3.5ターンのAg導体パターン38(転写用の巻回コイル状メッキ導体14と一致する)をベースステンレス板36上に得た。Ag導体パターン38とベースステンレス板36の間には導電性のAg離型層(ストライクAgメッキ層)37が形成される(図11(a))。
次にAg導体パターン38の上部から加熱発泡することにより、ベースステンレス板36からの熱離型性を有する発泡シート39を貼り付ける(必要により、加熱、加圧しても良い)(図11(b))。
発泡シート39は、粘着力が強いので、発泡シート39をベースステンレス板36から引き剥がすと、Ag導体パターン38及びAg離型層37が発泡シート39に転写される(図11(c))。
予め、ペットフィルム等に印刷等の技法で形成されたシート状磁性体層40(厚み50μm〜500μm)を、発泡シート39上に転写されているAg導体パターン38上のAg離型層37の上部に積層する。この場合、シート状磁性体層40の可塑剤面側をAg離型層37に接するように積層し、シート状磁性体層40の総厚が0.3〜0.5mm程度になるまで積層を繰り返す(図11(d))。
勿論、必要により、積層時に加圧・加熱を適当な条件で行っても良い。
次に、前記シート状磁性体層40、Ag導体パターン38、Ag離型層37、発泡シート39からなる一体物を約120℃、10分加熱し、発泡シート39を発泡離型させることにより、Ag導体パターン38(図7の巻回コイル状メッキ導体14に相当)と一体化したシート状磁性体層40(図7のシート状磁性体層13に相当)を得ることができる(図11(e))。
次に図7に示すように貫通孔16を有するシート状磁性体層15を巻回コイル状メッキ導体14上に積層または印刷技法を用いて形成し、さらにシート状磁性体層15上に貫通孔16を介して巻回コイル状メッキ導体14と接続するように厚膜導体17を積層または印刷する。
さらにその上部にシート状磁性体層18を積層し、加熱・加圧し、一体積層体とする。この場合シート状磁性体層18も直接印刷積層しても構わない。
残りの工程(グリーンシートの切断、焼成、端面電極形成等)は、実施例2と全く同様である。
また本実施例における積層型セラミックチップインダクタの電気特性も実施の形態2と等価であった。
なお、本実施例では蛇行したコイル状メッキ導体を用いたが、直線上の導体パターンを組合わせてコイルを形成しても良い。
(実施の形態7)
以下、本発明の応用例として実施の形態7を図面を用いて、説明する。
図12は本発明の実施の形態7における積層型セラミックチップインダクタの構造を示す分解斜視図である。
図12において41,43はシート状磁性体層、42は電鋳法で形成された転写用の蛇行型コイル状メッキ導体である。
電鋳法で形成された転写用の蛇行型コイル状メッキ導体42は積層型セラミックチップインダクタのチップの両端部に引き出されるように配置される。
以上のように構成された積層型セラミックチップインダクタの製造方法は、実施の形態1と同様であるので省略する。
本実施例により、外形2.0×1.25mm2、厚み0.8mmの積層型セラミックチップインダクタを得た。内部導体は導体幅約50μm、蛇行したコイル状メッキ導体が磁性体層の長手方向を貫通する構造となっており、100MHzにおけるインピーダンスは、約120Ω得ることができた。
直流抵抗値は、蛇行型コイル状メッキ導体42の厚みが約35μmで、約0.08Ωにすることができた。
本実施例では蛇行したコイル状メッキ導体を用いたが、直線状のメッキ導体パターンを用いることも可能である。
以上の7つの実施例において、転写用の各巻回あるいは蛇行型コイル状メッキ導体として、すべてAgを用いたが、価格的なこと、固有抵抗値、耐酸化性を考慮しなければ、Au,Pt,Pd,Cu,Ni等、及びその合金も適宜使用することができる。
また、積層体はすべて、Ni・Zn・Cu系磁性体からなる例のみ列挙したが、その他Ni・Zn系、Mn・Zn系等の磁性体や各種低誘電率の絶縁材料等を用いて、空心コイル特性を有する積層型セラミックチップインダクタを形成することも可能であることは言うまでもない。
(比較例)
次に、上記各実施例に対する比較例を図面を用いて、説明する。
図14は上記比較例における積層型セラミックチップインダクタの製造方法を示す斜視図である。
図14において101,111はシート状磁性体層、102,104,106,108,110は、約半ターンの巻回コイル状メッキ導体を形成するための厚膜導体層である。
103,105,107,109は前記約半ターンの厚膜導体を積層するための絶縁層の役割を行うシート状磁性体層であって、約半ターンの導体層の縁端部のみ導体が露出されるように配置、積層されるものである。
以上のように構成された積層型セラミックチップインダクタの製造方法を以下に示す。
まず初めに、図14(a)に示すように、フェライトペーストを矩形に印刷し、シート101を得る。次に、シート101上に導電ペーストを約1/2ターン印刷し、導体線路102を形成する(図14(b))。
さらに、導体線路102の一部を隠すように、フェライトペーストを印刷することにより、シート103を形成する(図14(c))。
そして、導体線路102端部に接続されるように、Ag導電ペーストを印刷することにより、約1/2ターンの厚膜導体層104を形成する(図14(d))。
以下同様に、図14(e)〜(k)に示すように印刷積層し、高温焼結し、合計2.5ターンの巻回コイル状メッキ導体線路を有するセラミック積層体を得る。
本比較例では、1.6×0.8mmサイズの平面内に幅約150μm、印刷乾燥厚さ12μmのパターンルールで導体パターンを得た。
内部導体は2.5ターンの巻回コイル状メッキ導体を有しているため、100MHzにおけるインピーダンスは、約150Ω得ることができた。
直流抵抗値は、焼結後の巻回コイル状メッキ導体厚みが約8μmとなり、約0.16Ωであった。
本比較例では計11層もの積層構造でありながら、巻回コイル状メッキ導体は2.5ターンしか得られず、このため積層数の割りには、インピーダンスが小さく、また導体抵抗値もインピーダンス値に対して大きい。
また工程が煩雑で、各導体層間での接続信頼性にも乏しい。
ところで本比較例においても、各厚膜導体層を本実施例における電鋳法によるメッキ導体パターンを転写することにより形成して、導体抵抗値を下げることは可能であるが、積層数の低減、インピーダンス値の増加等の効果は期待できるものではない。
(実施の形態8)
以下、本発明の実施の形態8を図面を用いて、説明する。
図15は本発明の実施の形態8における積層型セラミックチップインダクタの構造を示す分解斜視図である。
図15において、201,206はシート状磁性体層、203は略中心部に貫通孔207を形成したシート状磁性体層、202,205は電鋳法により蛇行状に形成された転写用巻回コイル状メッキ導体、204はシート状磁性体層203の貫通孔207内に電鋳法で形成されたバンプ状メッキ導体で、電鋳法で形成された転写用の巻回コイル状メッキ導体202,205は貫通孔207に転写されたバンプ状メッキ導体204を介して電気的に接続されている。
以上のように構成された積層型セラミックチップインダクタについて、以下にその製造方法を示す。まず、電鋳法による転写用の巻回コイル状メッキ導体202,205及び前記巻回コイル状メッキ導体202,205をそれぞれ接続するバンプ状メッキ導体204の作製法を図16を用いて説明する。図16(a)に示すようにベースステンレス板210上に液状レジストをスクリーン印刷し、約100℃で乾燥させ約25μmのレジスト膜211を得る。次に、レジスト膜211を所定の条件で平行光露光し、炭酸ソーダ水溶液を用いて直ちに現像を行う。次に、現像後、十分水洗し、さらにH2SO45%溶液に0.5〜1mm浸漬させて酸活性処理し、大和化成製のシアンを含有しない中性タイプのストライク銀メッキを行い銀離型層212を得る。このストライク銀メッキの時間は、約1分(電流密度0.3A/dm2)でメッキ膜厚約0.1μmである。
次に、市販のシアンを含有しないAgメッキ液(大和化成)を使用し、pHは約1.0で酸性浴で、電流密度1A/dm2で約20分のメッキ条件で、約20μmの厚みのAgメッキ膜213を作製する。
なお、本実施例で用いたシアンを含有しない銀メッキ液は毒性が全くなく、作業安全性、排液の処理の簡便化が図れ、作業効率の向上と製造コストの低減を可能とするものである。
次に、図16(b)に示すように、NaOH5%溶液に浸漬することでレジスト膜211を剥離した。以上の方法で、1608サイズで巾35μm、スペース25μm、厚み20μm、約2.5ターン相当の巻回コイル状メッキ導体202,205とシート状磁性体層203の貫通孔207の直径が0.1の貫通孔充てん用バンプ状Agメッキパターン204を設けるものである。
次にシート状磁性体層201,203,206の形成方法について述べる。
まず、Ni・Zn・Cu系フェライトの高温仮焼粉(800〜1100℃)とブチラール、アクリル、エチルセルロース等の樹脂とトルエン、キシレン等の低沸点溶媒とジブチルフタレート等の可塑剤及び少量の添加剤とをポット混合して得られるスラリーをドクターブレード装置で成膜し、約100μm及び40μmのグリーンシートを得る。
さらに約100μmのグリーンシートを4枚ラミネートし、約400μmのグリーンシート201,206を得る。一方、40μmのグリーンシートにパンチャー(金型ピンを用いて機械的に穴を開ける装置)を用いて直径0.1の貫通孔を開孔したグリーンシート203を作製する。
このようにして得られた、グリーンシート201,206を巻回コイル状メッキ導体202,205にそれぞれ熱プレスし、グリーンシート201,206をベースステンレス板より離形することで巻回コイル状メッキ導体の転写されたシート状磁性体層201,206を得る。また、同様にバンプ状Agメッキパターン204を直径0.1の貫通孔を有するグリーンシート203を位置合わせのうえ転写することにより、バンプ状Agメッキパターンの転写されたシート状磁性体層203を得る。
この時熱転写条件は100℃、70kg/cm2、5secであり、図17(a)に示すように、各グリーンシートにメッキ導体が食い込むように転写される。
このようにして得たシート状磁性体層201,203,206をそれぞれが電気的に接続され、1つのコイルとして形成されるように位置合わせのされるように順次積層してこの積層体を900〜920℃で焼成し、外形サイズ1.6×0.8厚み約0.8の積層体を得る。
なお一般にフェライト粉末は焼結緻密性を増すため、700〜800℃で仮焼された、フェライト微粉末(0.2〜1.0μm)を用い、焼結過程に於いて15〜20%程度収縮させるのが普通であるが、本実施例では800〜1100℃の高温仮焼粉(1〜3μm)を用い焼結収縮を2〜10%程に抑制した。これは、Agメッキ導体が、焼結過程で、わずかしか収縮しないため、極力収縮率をマッチングさせ焼結後の内部歪を減少させるためである。
但し、一般に粉体の仮焼温度を上げていくと、収縮率は低下するが、反面磁気特性を劣化させる。従って、磁気特性の劣化を極力おさえる添加剤を加えることが重要である。
研究の結果、収縮率を維持したまま磁気特性劣化を抑制する添加剤としてオクチル酸鉛等の有機鉛化合物を微量(フェライトの0.1〜1.0%)添加することが有効であることを見い出した。
これは有機鉛化合物はフェライトスラリー中に極めて良く分散するため、フェライト粉末の粒界に焼成過程で熱分解した原子状の原子金属Pbまたは原子状のPbOが効率良く効果的に溶け込み焼結性を向上させるためと考えられる。
一方PbO等の粉末は比重が重いため、スラリー中でフェライトと分離しやすく、分散性が悪い。更にフェライト粉反応性も、有機鉛化合物の熱分解により生じた物質(原子状の金属鉛または原子状のPbO)より劣る。従って、PbO等の酸化物粉末の添加はあまり効果はない。
また、高温化燃料のかわりに無収縮フェライトを導入することも有効である。
これは、Ni・Zn・CuフェライトのFe2O3となる部分Fe2O3をあらかじめ減らして仮焼した粉体を作製しておき、別途金属Fe粉及び未反応のNiO,ZnO,CuOを加えることで焼結過程で、金属Fe粉がFe2O3と酸化され膨張する割合といわゆる一般の焼結収縮の割合を調節することにより、焼結収縮を無くしたものである。具体例は(表5)に述べる。
(表5)に示すように低収縮フェライト粉または無収縮フェライト粉を用いて、チップビーズを作製することも容易である。
さらに最終工程として、チップのバリ取りや外部電極形成及び外部電極メッキ(Ni、ハンダ)を行うことにより、チップビーズが完成する。なお、電気特性は使用する材料により多少異なるため(表6)に示す。なお焼結温度は910℃で、1時間keepした場合のデータを示すものとする。