地熱タービンは地下のマグマによって加熱された蒸気(地熱蒸気)を、井戸を掘削して地上に導き出し、この蒸気を直接タービンに導入して作動流体とし、回転動力を得るようにしたものである。地熱蒸気の持つエネルギは、地熱蒸気がノズル(静翼)と動翼とから構成されるタービン段落を通って膨張することにより速度エネルギに変換され、この速度をもった地熱蒸気が動翼に作用して動翼が植設されているタービンロータ軸を回転させる力を発生させる。
地熱蒸気は、地下水がマグマ等の地熱によって加熱されて発生する性質上、蒸気中に硫化水素、塩分などの腐食性成分や、シリカ、カルシウムなどのスケール成分、更には、砂、泥、酸化鉄などの固体粒子を含んでいる。また、地熱蒸気は飽和状態、あるいは飽和状態に近い状態にあるため、タービン内部では蒸気の湿り度が高く、地熱タービンとしては過酷な運用を強いられる状況にある。さらには、地熱蒸気中に含まれる化学成分の種類や濃度、地熱タービンに持ちこまれる固形物の大きさや量、そして地熱蒸気の蒸気状態等は、地熱タービンが設置される地熱地帯や井戸によって異なり、また同じ井戸でも経年的に大きく変化してゆくことが、地熱タービンの設計を一段と複雑なものにしている。
地熱蒸気中に硫化水素等の腐食性ガスが含まれていることは、材料の腐食のほか、動翼やノズルおよびロータ軸にとっては、応力腐食割れや腐食疲労に起因する経年的な劣化や損傷といった、地熱タービンの寿命を縮める要因を内在している。例えば、腐食疲労による損傷は、一般に環境、材料、応力の三要素が重畳した結果生ずるものであるが、動翼やノズルおよびロータ軸のように高速で回転するため必然的に高応力が生じるタービン部品にとっては、これら三要素の重畳を完全に避けることは困難となる。したがって、自ずと使用される材料や翼長には、実用面での制限があり、ひいては地熱タービンの出力にも一定の上限が設けられることになる。
地熱タービンでは、地熱固有の腐食環境に対する現実的な対策として、予め地熱蒸気中で各種材料の評価試験を行い、試験結果の評価の中から適切なものを選定すると同時に、各部の応力を通常の火力タービン等と比べて一段と低いレベルに設定するなど、環境の影響を少しでも小さくするための努力がなされている。
一方、地熱蒸気の高い湿り度と蒸気中の固体粒子の混入は、タービン各部の蒸気通路部やシール部のドレンエロージョンや固体粒子エロージョンを引き起こす可能性を秘めている。湿り蒸気や固体粒子は、地熱蒸気中に含まれる腐食性ガスの存在と相俟って、エロージョンとコロージョンの相乗作用を引き起こし、タービンの損傷を一段と加速する要因となる。このため、各タービン段落の出口にはドレンキャッチャを設け、水滴や固形粒子を蒸気通路部外に排出する構成にしており、また、最終段翼の先端部にはエロージョンシールドを貼り付けるなどの損傷防止対策が施されている。
実際の地熱タービンプラントでは地熱蒸気成分の経年変化による、より厳しい方向への変化等に対して、タービンの損傷防止対策を講じているにもかかわらず、各部の劣化が進行する例がみられる。従って、地熱タービンにとっては、タービンを構成する各要素の耐腐食および耐侵食特性を如何に向上させるかが重要な課題となっている。
地熱蒸気の持つ熱エネルギを効率的に地熱タービンの回転エネルギに変換するには、まず、作動蒸気を確実に地熱タービンのノズルと動翼に流す必要がある。タービンロータ軸は静止するケーシング内で回転するため、動翼先端部と静止側のノズルダイアフラム外輪との間、タービンロータ軸とノズルダイアフラム内輪との間には、それぞれ間隙が必要であるが、これら静止部と回転部の間隙を通して蒸気通路部を迂回する漏洩蒸気量を最少にすることが重要である。
動翼先端部の漏洩蒸気量を最少にするために、従来の地熱タービンにおいては、動翼先端部に装着されたシュラウドの半径方向外側に対向する静止部であるノズルダイアフラム外輪の庇部内周面に、シールフィンが配置されている。
このシールフィンは複数枚で構成されリングを形成している。リングは動翼シュラウド方向へ伸びて、シュラウドとの間の間隙を狭くしている。
タービンロータ軸部からの漏洩蒸気量を最少にするための蒸気漏洩防止(蒸気シール)構造も同様に、タービンロータ軸の半径方向外側に対向する静止部であるノズルダイアフラム内輪の内周側に設けられた複数のシールフィンが、半径方向内側へ伸びて、タービンロータ軸との間の間隙を狭くしている。ロータ軸のシール構造の場合には、タービンロータ軸に凹凸状の溝を設け、いわゆるラビリンスシール構造となし、蒸気漏洩防止効果を一層高める場合が多い。このラビリンスシール構造は、ロータ軸がケーシングを貫通する部分である、グランドパッキン部のシール構造でも同様にしている。
いずれにしても、これら蒸気シール構造が、地熱環境の中で劣化、損耗、あるいは脱落することなく、蒸気漏洩防止機能を発揮し続けることが、地熱タービンの効率を維持するための必須の条件となる。
一般に、地熱タービンには、図11に示すように、軸流タービンが採用されており、静翼であるノズル翼1と動翼2とを組み合せた多段のタービン翼構造に構成される。地熱タービンのタービン翼は、ノズル翼1のノズルから噴出した高速の蒸気によって励起される動翼2の振動を抑制するため、周方向の複数の翼2aをシュラウド3によって綴った群翼構造で構成される。この群翼構造は、地熱タービンの回転中の蒸気によって生じる振動による応力を許容レベル以下の抑制に効果的な役割りを果している。
群翼構造は、シュラウド3を貫通する孔に動翼2の各翼2aの翼頂部に一体に設けられたテノン4を嵌合させてかしめることで、動翼2を構成する複数の翼2aとシュラウド3とを結合して構成される。
ところが、動翼2の各翼頂部のテノン4の先端部がシュラウド3より上面(翼の外径側)に出ていると、地熱蒸気のドレンや固形粒子によって侵食され、動翼2の寿命が短くなる可能性がある。
動翼寿命を損なうのを避けるために、シュラウド3上面よりテノン4が突出しないように、かしめ部分が沈み込むように溝を設けてシュラウド表面を平らにし、加えてシュラウド3と対向するノズルダイアフラム外輪5の庇部5aに複数のシールフィン5bを設けて動翼頂部の蒸気漏洩防止構造とした例がある。そしてこのような動翼頂部の蒸気漏洩防止構造により、テノンの侵食に対する耐力を改善することができる。
また、地熱タービンのような厳しい腐食環境中で作動するタービン段落では、回転部である動翼やロータ材料は、腐食による疲労強度の大きな低下を伴う。ロータ材料等の疲労強度の低下は、動翼の振動に関わる寿命に直接の影響を及ぼすことになる。
上記のように、地熱タービンの動翼は、蒸気によって生じる振動応力を群翼構造により、低減させている。しかし、腐食環境下でタービン材料の疲労強度が大きく低下することにより、振動応力が十分にタービン材料の疲労限度以下に抑えきれない場合には、経年的な腐食疲労損傷のリスクは避け難い。このリスクを最少限に抑えるために、予め動翼の翼幅を広げた剛性の高い翼を用いる例があるが、この場合には翼の重量が増えるため、動翼植え込み部やホイール表面の応力を高めることとなり、結果として動翼植込み部等に応力腐食割れといった、別の面でのリスクを抱えることになる。
地熱タービンが低負荷で運転される場合には、最終段のタービン段落まわりの蒸気の流れは定格負荷状態とは異なり、大きな逆流域を伴った乱れた流れとなっている。
地熱タービンの最終段まわりの乱れた流れは翼に対する強い励振力として作用するため、最終段落では一般のタービン段落以上に効果的な制振構造が必要とされる。
このため、図12に示すように、動翼2の翼先端部のテノン4、シュラウド3に加えて、翼中間部にレーシングワイヤ6と呼ばれる連結部材を設ける場合が多い。このレーシングワイヤ6は、翼に貫通した孔にワイヤを通し、互いをロウ付けにより固着させる方式と、単にワイヤを孔に通すだけのルーズ結合方式とがある。一般には、翼の制振効果の観点からはルーズ結合方式の方が優れている。
また通常の火力タービンの最終段翼においては、ルーズ結合による優れた制振効果を翼先端部の連結にも取り入れて、図13に示すように、翼2a,2bとカバーピース7とを別体とする例がみられる。図13は菱形のカバーピース7の相対する側面から突出しているテノン4の片方7aを、翼先端に穿ったテノン孔に挿入してかしめ固定するとともに、他方のテノン7bを隣接する翼のテノン穴に通してルーズにかしめて、翼2a,2bとカバーピース7の微小な動きを許容している。このルーズ結合方式で全周の翼2a,2bをルーズに連結することにより、良好な制振効果が得られている。
しかしながら、地熱タービンのような厳しい腐食環境下では、翼に設けられたワイヤ孔、あるいはテノン孔まわりに堆積した腐食性成分が、応力腐食割れや腐食疲労損傷の引き金になり易く、このようなルーズ結合方式の連結構造を地熱タービンに採用するには難点がある。
地熱タービンの入口部のように翼長の短かいタービン段落では、動翼の振動疲労による損傷を避けるため、群翼の低次の固有振動数が、ノズルから流出する蒸気と共振することを避ける設計が行われている。ノズルから流出する蒸気による励振周波数としては、NPF(ノズル枚数とロータ軸回転数の積)があるが、共振を完全に避けるためには、このNPFを群翼構造が有する低次固有振動数の上に設定することとなる。これら翼長の短かいタービン段落では翼の固有振動数が高いため、NPFは必然的に高く設定することとなり、ノズル枚数が多くなるのが通常である。
ノズル枚数とノズルの大きさとは反比例の関係にあるため、これらのタービン段落のノズルは結果として小さくなる。翼長の短かいタービン段落にとってノズルが小さいことは、アスペクト比(翼長/翼幅)を大きくとれることとなり、性能的には好ましい面もあるが、一方では、固形粒子による損傷や侵食、腐食成分による劣化、あるいはスケールの堆積等、地熱タービン特有の劣化損傷に対しては弱点となるといった不都合がある。
本発明に係る地熱タービンの実施の形態について添付図面を参照して説明する。
図1は、本発明に係る地熱タービンに用いられる蒸気タービンとして代表的な軸流タービンを示すタービン段落の部分断面図である。
地熱タービン10ではタービンケーシング11内にタービン段落12が多段落構造にかつ同芯状に配設される。タービン段落12は、ノズルダイアフラム外輪17とこの外輪17の半径方向内方に位置するノズルダイアフラム内輪18との間に設けられたノズル19と、この下流側に対向して配置される動翼15とを組み合せて構成される。ノズルダイアフラム外輪17はタービンケーシング11の内面に形成される内周溝20に収容され、固定される。
ノズル19は蒸気通路部を構成する一方、ノズルダイアフラム外輪17とノズルダイアフラム内輪18との環状部に多数枚が列状に配列されて翼列を形成している。ノズルダイアフラム内輪18の内周側にはシールフィン取付部21が形成され、このシールフィン取付部21にリング状あるいはワッシャ状のシールフィン22が断面櫛歯状に複数条設けられ、パッキン部として構成される。
また、ノズルダイアフラム内輪18のシールフィン22に対向してタービンロータ軸26外表面に凹凸状溝27が形成される。凹凸状溝27はロータ軸26の全周に亘って形成され、周方向に延びる複数条の凸状部28と各凸状部28間に形成される凹状部29とから構成される。前記タービンロータの凹凸状溝27とノズルダイアフラム内輪18に形成されるシールフィン22とにより微小な間隙30が形成され、ラビリンス構造の蒸気シール部32が構成される。この蒸気シール部32により、蒸気の漏洩を防止するタービンロータ軸26の蒸気漏洩防止構造が得られる。
タービンロータ軸26の蒸気シール部32では、櫛歯状シールフィン22の先端はタービンロータ軸26の軸方向に沿ってジグザグ状に形成され、凹凸状溝27の凸状部28に対向するシールフィン22より、凹状部29に対向するシールフィン22がタービンロータ軸26側に突出している。これにより、ノズルダイアフラム内輪18のシールフィン取付部21とタービンロータ軸26との間に形成される間隙30は小さくすることができ、間隙30自体をジグザグ状に形成して流路を長くとり、ラビリンス構造の蒸気シール部32の流路抵抗を大きくとって蒸気漏洩を有効的に防止している。
また、タービンロータ軸26にはタービン段落12を構成する動翼15が静翼部14に対して下流側に対向して設けられる。動翼15はタービンロータ軸26のロータディスク35に翼列をなすように円周方向に沿って植設された多数の翼36を備え、各翼36の頂部側にシュラウド37が設けられる。シュラウド37は、複数枚、例えば数枚の翼36を結合して一体化し、群翼構造を構成している。
翼36の翼頂部側は、ノズルダイアフラム外輪17から下流側に延びる庇部38で覆われる。翼36は、蒸気通路部を構成する一方、ノズルダイアフラム外輪17の庇部38内で回転するため、翼36の頂部に位置するシュラウド37と、その半径方向外側に相対するノズルダイアフラム外輪17の庇部38との間には間隙40が存在する。
蒸気の一部は翼36を通らず、この間隙40を通して仕事をせずに若干の蒸気が漏洩する。この漏洩を防止する目的で、シュラウド37の外表面にノズルダイアフラム外輪17の庇部38に向って半径方向外側に延びる複数のシールフィン41を断面櫛歯状かつ周方向に沿って設け、シールフィン41の先端とノズルダイアフラム外輪17の庇部38内周面との間隙40を小さく保つ動翼頂部の蒸気シール部44を構成している。この蒸気シール部44は動翼先端部の蒸気漏洩防止構造を形成している。
蒸気の流れは、図1に矢印Aで示されているが、蒸気通路部を構成するノズル19は、翼36の上流側に位置して蒸気の流れを偏向し、翼36に回転力を与える役目を担っている。したがって、地熱タービンの効率を高めるためには、ノズル19を流出した蒸気を有効に動翼15に導く必要がある。
一方、地熱蒸気の中に水滴や地熱蒸気特有の固体粒子のような異物が含まれている。これら水滴あるいは固体粒子は蒸気に比べて比重が大きいため、ノズル19出口では蒸気の強い旋回流による遠心力効果によって外周へと押しやられる。その結果、ノズル出口直後の外周部、つまりノズルダイアフラム外輪17の庇部38の付け根部45付近には、これら異物が多く放出される。
このことから、図1に示す地熱タービン10では、ノズルダイアフラム外輪17の庇部38にシールフィンを形成することなく、シュラウド37外周面にシールフィン41を設け、ノズルダイアフラム外輪17の庇部38に対向させたものである。シールフィン41はシュラウド37の外周面側に、複数条例えば数条突設し、断面櫛歯状に形成している。なお、ノズルダイアフラム外輪17の庇部38の内周面にシールフィンを設け、このシールフィンをシュラウド37から半径方向外方に突出するシールフィン41と交互に配設し蒸気シール機能を向上させてもよい。
ノズルダイアフラム外輪17の庇部38とシュラウド37外表面のシールフィン41とにより小さな間隙40が形成され、動翼頂部の蒸気シール部44が構成され、この蒸気シール部44が動翼先端部の蒸気漏洩防止構造を形成している。またこのノズルダイアフラム外輪17の庇部内表面38aには、地熱蒸気中に含まれる腐食性成分によるコロージョンや、水滴や固体粒子によるエロージョンを防止するために、耐腐食性または耐侵食性材料による肉盛溶接、あるいはコーティングが施される。
耐侵食性材料、あるいは耐侵食溶接肉盛材料としては、コバルト(Co)を主成分とする合金、クロム(Cr)もしくはCrと鉄(Fe)またはCrとFeとニッケル(Ni)を主成分とする合金、チタン(Ti)を主成分とする合金が用いられる。耐侵食コーティング材料としては、Coを主成分とする合金、Crを主成分とする合金、Cr−Ni−Feを主成分とする合金、Crの化合物(たとえばクロムカーバイト)、Tiの化合物(たとえばチタンナイトライド)、タングステン(W)の化合物(例えばタングステンカーバイト)等が好適に用いられる。
また、耐腐食性材料あるいは耐腐食溶接肉盛材料としては、Crを主成分とする合金、Niを主成分とする合金、Cr−Ni−Feを主成分とする合金、Tiを主成分とする合金、Coを主成分とする合金が用いられる。耐腐食コーティング材料としては、Crを主成分とする合金、Niを主成分とする合金、Cr−Ni−Feを主成分とする合金、Tiを主成分とする合金、Coを主成分とする合金、Cr,W,Tiの化合物等が好適に用いられる。
さらに、WC,CrC,NbC,VC等の炭化物、TiB2等のほう化物を前記耐腐食性または耐侵食性材料と混合したサーメットとしてプラズマ粉体肉盛溶接や被覆アーク溶接等の溶接を適用した肉盛溶接およびこれらの金属材料ならびにサーメットを溶射粉末としてプラズマ溶射(APS)やガス炎溶射(HVOF、HP−HVOF)等の溶射材を用いて被膜形成を行なうようにしてもよい。
サーメットを形成する耐食、耐侵食性金属材料、炭化物およびほう化物粉末の粒径は20〜75μmが最も望ましい。75μmより粒子が大きいと溶射による粒子が粗くなるばかりか、すべての完全に溶けない粒子が生じる可能性があり、溶射部分の耐久性等に問題が生じる。一方、20μmより粒子が細かいと溶射条件の設定が難しくなり好ましくない。
このような構造の蒸気シール部44とすることにより、付け根部45に放出された異物は、蒸気の強い旋回流によってノズルダイアフラム外輪17の庇部38の内表面38aにへばりつきながら旋回することとなるが、庇部38の内表面38aには流れをせき止める障害物は何も無いため庇部38に滞留することはなく、水分や固体粒子等の異物は、庇部38の平滑な内表面38aに沿って旋回しつつ、スムーズにタービン段落出口47へと排出され、ドレンキャッチャに捕獲される。従って、ノズルダイアフラム外輪17の付け根部45が集中的にエロージョンの損傷を受けることがなくなる。また庇部38が損耗すると、シュラウド37外周面のシールフィン41の先端とノズルダイアフラム外輪17の庇部38との間隙が増大することとなって、経年的なタービン効率低下の要因となるが、庇部38の内表面38aに耐腐食性または耐侵食性材料による肉盛溶接あるいはコーティングを施すことにより、蒸気中に含まれる腐食性成分や固体粒子に対して有用である。そして、地熱タービン10の経年的な蒸気シール部44の損耗を防ぐことが可能となり、タービン効率を長期にわたって維持することができる。
なお、動翼15の翼頂部側シュラウドフィン41の先端とノズルダイアフラム外輪17の庇部38内表面38aとの間に環状の間隙40が形成されるが、この間隙40の寸法は従来と同程度であり、またノズルダイアフラム外輪17の庇部38に異物排出孔を必要としないため、その分、異物排出孔からタービン段落出口47に逃げる蒸気による損失がなく、その分だけタービン効率を高めることができる。
また、動翼先端部の蒸気漏洩防止構造では、ノズルダイアフラム外輪17の庇部38に流れる水分(ドレン)は、遠心力作用により水膜となって庇部38の内表面38aを覆うため、間隙40を水膜の厚さ分だけ実質的に狭める効果を有し、漏洩蒸気量をより一層減少させることができる。漏洩蒸気量の減少はその分だけタービン効率の向上に寄与することができる。
図2は、地熱タービンの動翼先端部の蒸気漏洩防止構造では、ノズルダイアフラム外輪17の庇部50を、ノズルダイアフラム外輪17とは別体構造の円筒部材で形成し、この円筒部材をボルト締め等の締結で取外し可能に組み付け、一体に組み立てて構成したものである。ノズルダイアフラム外輪17の庇部50は円筒状、スリーブリング状あるいはトーラス状に構成されている。
また、この庇部50は、耐侵食性または耐腐食性材料で製作される。耐侵食性あるいは耐腐食性に優れた材料で作ることにより、蒸気シール部44を構成する庇部50の内表面50aが水分や固体粒子によるエロージョンや腐食成分によるコロージョンで侵されるのを有効的に防止できる。
仮に、地熱タービン10が長期的な運用によって、庇部50が損傷を受けた場合にも、簡便に取り替えることが可能であり、タービン機器の保守性・メンテナンス性を向上させることができる。庇部50は単体で作られるために、庇部50の材料選択の自由度が大きく、地熱蒸気の条件により適宜最適な材料に変更することができ、図1に示された地熱タービン10と同等の効果を奏する。他の構成は、図1に示すものと異ならないので、具体的な説明を省略する。
図3は、地熱タービンの動翼先端部の蒸気漏洩防止構造の第2変形例を示すものである。
この変形例に示された動翼先端部の蒸気漏洩防止構造は、ノズルダイアフラム外輪17の庇部52をノズルダイアフラム外輪17と別体の円筒部材に構成するとともに、ノズルダイアフラム外輪17と庇部52との間に微小なスリット53を設け、このスリット53に水分や固体粒子等の異物を間隙40を通過させずにタービン段落出口47に排出する異物排出機能を持たせたものである。
ノズルダイアフラム外輪17にはスリット形成部54が形成されており、このスリット形成部54は、異物による損傷防止の目的で、その外表面に耐腐食性あるいは耐侵食性材料で溶接肉盛あるいはコーティングされている。この溶接肉盛あるいはコーティングはスリット形成部全面に形成する必要は必ずしもなく、部分的であってもよい。
このようなスリット53は地熱タービンプラントにおいて、地熱蒸気中に固体粒子等の不純物が多い場合、蒸気シール部44のシールフィン41や蒸気通路部を損傷から保護する上で有効である。ノズルダイアフラム外輪17の庇部52を耐侵食性あるいは耐腐食性の優れた材料で製作することは、図2の場合と同様であり、図2に示された地熱タービン10と同等の作用効果を奏する。
図4は、本発明に係る地熱タービンの第2実施形態を示す部分断面図である。
図4に示された地熱タービン10Aは、タービンロータ軸26の蒸気漏洩防止構造が図1に示される地熱タービン10と異なるが、他の構成は実質的に異ならないので同じ符号を付して説明を省略する。
図4に示されたタービンロータ軸26の蒸気漏洩防止構造では、ノズルダイアフラム内輪18の内周側にシールフィン取付部21が形成され、この取付部21にリング状あるいはワッシャ状のシールフィン22が断面櫛歯状にかつ周方向に複数条設けられる。
また、タービンのロータ軸26の表面に凹凸状溝60が全周に亘って形成される。凹凸状溝60は周方向に延びる複数条の凸状部61と各凸状部61間に形成される凹状部62が構成される。凸状部61は図4に示すように半径方向外方の先端に向って先細となるように、台形断面形状に形成される。凸状部61を台形断面形状とすることより凹状部62の断面も台形形状あるいは皿形状に形成される。また、この凹凸状溝60は、断面が台形あるいは半円形、弧状溝断面形状に構成してもよい。
ノズルダイアフラム内輪18の内周側に設けられたシールフィン22とタービンのロータ軸26外表面に形成される凹凸状溝60とにより、間隙30が形成され、ラビリンス構造の蒸気シール部63が構成される。この蒸気シール部63により、タービンロータ軸26の蒸気漏洩防止構造が形成され、間隙30を通る蒸気の漏洩を効果的に防止している。
蒸気シール部63の凹凸状溝60の表面は耐腐食性あるいは耐侵食性に優れた材料で覆設されている。凹凸状溝60の断面構造を台形状とすることで、蒸気シール部63の間隙30を吹き抜ける高速蒸気とこの高速蒸気に乗った水分や固体粒子等の異物の凸状部側面への衝突角度が小さくなる。そのため、凹凸状溝60の受ける衝突エネルギは従来のように直角で衝突する場合に比べて減少し、それだけ凹凸状溝60の損耗も低減される。また、凹凸状溝60を台形にすることによって、凸条部側面を含めた凹凸状溝60の表面全体にコーティング材料のスプレーによる塗布を効率よくスムーズに行なうことができる。
金属材料表面をコーティングするには、高温に加熱した塗布材料粒子を、高速で金属表面に吹き付けて溶着させる手法が一般にとられるが、良好な溶着条件を確保するには、金属表面とスプレーの角度を直角近傍に保つ必要がある。従来の凹凸状溝形状は、図11に示す通り、凸条部28の側面がロータ軸26に直角に立ち上がっているため、この条件を満たせず、良好なコーティングができなかったが、図4に示すロータ軸26の凹凸溝60は台形断面形状を有するために、良好なコーティングが可能となる。
この間隙30を通って、ノズル19をバイパスする漏洩蒸気が蒸気シール部63を吹き抜けるが、この漏洩蒸気はタービン段落12の仕事に寄与せず、タービン効率を低下させる要因となるため、蒸気シール部63にラビリンス構造を採用することにより、蒸気の漏洩を効果的に防止することができる。
第2実施形態の地熱タービン10Aは、タービンケーシング11内に配設され、ノズルダイアフラム外輪17とノズルダイアフラム内輪18とに挟持された静翼14と、この静翼14に下流側に対向して、タービンロータ軸26の円周方向に翼列をなすように植設された動翼15とからなるタービン段落を複数段に構成している。この地熱タービン10Aは、ノズルダイアフラム内輪18内周面からタービンロータ軸26に向って半径方向内側に凹凸状に突出するシールフィン22を設けるとともに、このシールフィン22と対向するタービンロータ軸26にその断面形状が台形もしくは半円形の凹凸状溝60をシールフィン22の凹凸に対応するように形成したものである。
なお、蒸気漏洩防止構造はロータ軸26とノズルダイアフラム内輪18との間の蒸気漏洩防止のみならず、タービンロータ軸26がタービンケーシング11を貫通するグランドパッキン部にも同様にして適用することができる。
また、図4に示された蒸気漏洩防止構造は、図1に示された地熱タービン10のタービン段落12に適用した例を示したが、この蒸気漏洩防止構造を図2および図3に示された動翼頂部の蒸気漏洩防止構造と組み合せてもよい。
図5は、本発明に係る地熱タービンの第2実施形態における変形例を示すものである。
この変形例は、地熱タービン10Aのタービンロータ軸の蒸気漏洩防止構造を図4に示された蒸気漏洩防止構造と異にするが、他の構成は実質的に異ならないので説明を省略する。
図5に示されたタービンロータ軸26の蒸気漏洩防止構造は、ノズルダイアフラム内輪18に着脱型シールフィン66をノズルダイアフラム内輪18とは別体に構成し、ボルト締め等の締結によりノズルダイアフラム内輪18に取外し可能に一体的に組み立てたものである。着脱型シールフィン66は、取付フランジ66aを備えて円筒状、トーラス状あるいはスリーブリング状に形成され、耐侵食性あるいは耐腐食性の優れた材料で製作される。
ノズルダイアフラム内輪18の内周側に別体の着脱型シールフィン66を取り付けた以外の構成は、図4に示されたタービンロータの蒸気漏洩防止構造と実質的に異ならない。
地熱タービン10Aでは、蒸気シール部63を通り抜ける蒸気中に水滴や固体粒子等の異物が含まれる。図11に示された従来のタービンロータの蒸気漏洩防止構造では、蒸気シール部の間隙を吹き抜ける蒸気中に含まれる水滴や固体粒子等の異物のロータ軸8の凹凸状溝8aの凸状部に衝突した後、遠心力作用で飛散し、ノズルダイアフラム内輪9の内表面9aに衝突し、ノズルダイアフラム内輪9の内周側を損傷させる。
ノズルダイアフラム内輪9の内周側にシールフィン9bが植設されているが、シールフィン9bの根元が損傷を受け、抉られるとシールフィン9bの脱落を招き、大きなタービン効率の低下を招く。
しかし、図5に示されるタービンロータ25の蒸気漏洩防止構造では、着脱型シールフィン66はノズルダイアフラム内輪18の内周側に取外し可能に取り付けられ、しかも、着脱型シールフィン66は耐侵食性あるいは耐腐食性の優れた材料で製作されている。したがって、着脱型シールフィン66は、その優れた材料特性により、シールフィン22を取り付けている内周面66bが水分や固体粒子によるエロージョンあるいは腐食成分によるコロージョンによって侵されることを防いでいる。
万一、地熱タービン10Aの長期的な運用によって蒸気シール部が損傷を受けた場合においても、着脱型シールフィン66を着脱することにより簡便に取り替えることが可能となり、タービン機器の保守性が向上する。着脱型シールフィン66は単体で作られるため材料の選択に自由度が多く、図4に示されるロータ軸26との組み合わせで、タービン軸の蒸気シール部63の長期信頼性が維持される。
また、図4および図5に示されたタービンロータ25のロータ軸26の漏洩蒸気防止構造では、ロータ軸26の外表面に、ロータ軸26の軸方向の平面断面が、台形断面形状の凹凸状溝60を形成した例を示したが、凹凸状溝60の断面形状を弧状、半円弧状、半長円形状、あるいは半楕円形状の凸状部と凹状部を組み合せた構成としてもよい。
ところで、地熱タービン10は、タービン入口部側の初段(第1段)、第2段あるいは第3段のタービン段落は、特に厳しい作動環境下にある。すなわち、第1には、地熱蒸気中に含まれる腐食成分の影響である。地熱蒸気中に含まれる腐食成分は、その温度環境が180〜200℃近傍で活性であるが、この温度環境が地熱タービン10の第1段〜第3段の作動条件とたまたま一致すると、タービン入口部のタービン段落は腐食を受け易い条件下にある。
第2には、固体粒子の影響である。一般に固体粒子等の不純物の地熱タービン10への侵入を防ぐために、タービン入口にはストレーナ(図示せず)を設置しているが、そのストレーナは通常、1インチに4〜5メッシュの網目を使用しており、大きな固体粒子の場合には地熱タービン10内に入り得ない。
しかし、地熱井戸の条件が悪くて多量の固体粒子が蒸気中に含有されている場合には、そのような細かなメッシュではすぐ目詰まりを起こしてしまうため、やむを得ず1インチに2メッシュのような網目のストレーナが用いられている。この粗い網目のストレーナを通り抜けた粗い粒子はタービン入口部側のタービン段落のノズル翼を直撃し、打痕とエロージョンによる損耗を与える。タービン入口側のタービン段落は厳しい腐食環境と重なるため損傷は一層ひどくなる。また、ストレーナが1インチに2メッシュ程度の網目では、最大12mm程度の固体粒子が侵入する可能性があり、スロート幅が5〜8mmの従来のノズル翼19では閉塞する恐れがある。
本発明に係る地熱タービンでは、少なくともタービン入口側のノズル翼70を、図6に示すように配列する。静翼71を構成するノズル翼70の各翼の翼幅を従来のノズル翼のサイズの倍以上の大きさに構成し、各翼間に形成されるノズル出口のスロート幅73を1/2インチ以上に設定する。
翼列を形成するノズル翼70の各翼を図6に示すように構成し、ノズル出口のスロート幅73を1/2インチ以上に設定すると、すなわち、ノズル翼70のスロート幅73をストレーナの網目の大きさ以上に設定することにより、ストレーナの網目をくぐり抜ける最大の固体粒子でも閉塞されることがなくなる。
一方、静翼71に、翼列ピッチが大きく、かつ翼幅の広い大きなノズル翼70を採用すると、ノズル枚数が少なくなるため、NRF(ノズル枚数とロータ軸回転数の積)と動翼の低次固有振動数との共振を避ける必要があるが、例えば、動翼先端のシュラウドを動翼と一体に削り出し、シュラウド側面を隣接翼のシュラウド側面と面圧をもって密着させ、全周翼一群構造とするスナッバ翼を動翼に採用しノズル翼70とを組み合せることによって、優れた振動減衰特性を有する。
図7は、ノズル翼の廻りを流れる蒸気流や固体粒子等の挙動説明図を示す。
地熱タービン10に案内される地熱蒸気は、ノズル翼70の翼列内を一点鎖線Bで示すように流れる。一方、蒸気に含まれる水滴や固体粒子等の異物は、その比重が大きいため、慣性力によって実線Cで示されるように流れ、ノズル翼70の翼前縁70aから翼腹側70bにかけて集中的に衝突し、この部位にエロージョンによる侵食を与える。
この流れの境界層は次第に発達し、背側後縁には行くほど厚く形成される。特に、境界層の低層部、すなわち翼面近傍部分では流体(蒸気)の粘性によりその流れは殆ど無く、その結果腐食部分を含む凝縮水に常に覆われた状態となる。一方、境界層上層部は蒸気流と同程度の流れを有するため、前記境界層低層部の流れの無い部分との相互作用により渦流が発生する。そして、この渦流により腐食成分と固体粒子との相互作用により、背側後縁はエロージョン、コロージョン等の損傷を受け易い状態に常に置かれることになる。
本発明ではこの点に着目し、図6に示された地熱タービン10のタービン入口側のタービン段落では、ノズル翼70の全面、あるいは少なくとも水滴や固体粒子の衝突によりエロージョン損傷を受け易いノズル翼70の翼前縁70aから翼腹側70bにかけて、また、流れの境界層76域で腐食成分の滞留によりコロージョン損傷を受け易いノズル翼背側後縁部70c、すなわち翼背側出口領域を、耐腐食性および耐侵食性に優れた材料でコーティングしている。ノズル翼70の表面を耐腐食性および耐侵食性に優れた材料で、少なくとも必要箇所をコーティングしたので、長期間にわたってノズル翼表面を、固体粒子と腐食成分の両者による攻撃から保護し、翼形状を維持する機能を有している。
従来に比べ倍以上の大きさを有する図6のノズル翼70は、たとえ翼表面にスケールが堆積しても、スケールによるスロート幅73の減少は小さいため、タービン飲込み蒸気量の減少も少ない。したがって、蒸気通路部へのスケールの堆積による経年的な出力の低下を小さく押さえることができ、安定した運転を長期間継続することが可能となる。従来技術においてみられるエロージョンやコロージョンの結果として生じるノズル翼表面の凹凸や翼形状の欠損は、信頼性のみならず、タービン効率面での大幅な低下をもたらすため、図6ないし図8に示すようにノズル翼70の翼表面に、効率劣化防止のためのコーティングを施すことはエネルギ資源保護に対する貢献が極めて大きい。
図9は、本発明に係る地熱タービンのさらに他の実施形態を示すものである。
図9は地熱タービンに組み込まれる各タービン段落のうち、長翼を有する後段側のタービン段落に適したものであり、タービン段落の動翼先端部の連結構造を示すものである。この動翼先端部の連結構造では、動翼80の互いに隣り合う各翼80a,80bの翼先端部81をカバーピース82で連結したものである。カバーピース82は菱形あるいは平行四辺形のブロック形状を有し、カバーピース82の一側面からテノン83が突出し、その反対側の側面にテノン孔84が対向して形成される。
カバーピース82の一側面から突出したテノン83は、動翼80aの翼先端部に穿設したテノン孔85に挿入され、テノン83の頭部をかしめることで固定される。あるいは、テノン83を翼80aの翼先端部のテノン孔85にタイトに挿入することで固定してもよい。
テノン83の頭部をかしめる場合には、かしめられたテノン頭部には、テノン孔85周縁部を完全に覆い塞ぐと同時に、カバーピース82の側面はテノン孔85の入口側平面部86と密着して、テノン孔85を密封し、テノン孔85内面への腐食性成分の侵入を防いでいる。テノン孔85とテノン83の頭部をタイトに挿入固定する場合にも、カバーピース82の側面はテノン孔85の入口側平面部86と密着しており、テノン孔85の孔内面への腐食成分侵入を防いでいる。
カバーピース82のテノン83を有する面と反対側の面に形成されるテノン孔84には、動翼80bの翼頂部81に形成されたテノン87がルーズに挿入される。
しかして、動翼80の各翼80a,80bをカバーピース82を介して順次結合することにより、動翼80はタービンロータ軸の周方向に植設された全ての翼80a,80bは互いにルーズに連結され、いわゆる全周翼一群ルーズ連結構造となる。この全周翼一群ルーズ連結構造により、動翼は振動に対して極めて良好なダンピング特性を有する。
カバーピース82の材料に、耐腐食性、耐侵食性の優れた材料を採用することにより、ルーズに組み立てられるテノン孔84内部の腐食を防止し、かつ水滴によるエロージョンの防止も行なうことができる。このような連結構造は、図12および図13に示された従来の連結構造における腐食環境下での問題点を克服した優れた技術となり、地熱タービンの安定した部分負荷運用が長期に亘って可能となる。
図10(A)および(B)は、動翼の連結構造の変形例を示すものである((A)はその鳥瞰図、(B)は翼先端上面より見た図)。
この変形例に示された動翼の連結構造も、互いに隣り合う動翼80の各翼80a,80bと、各翼80a,80bの翼先端部81を連結するカバーピース90で構成される。カバーピース90は菱形あるいは平行四辺形のブロック形状に形成され、カバーピース90の対向する両側の側面にテノン孔91,92が形成される。
一方、動翼80の各翼80a,80bの翼頂部81には、相対する側面86,87にテノン93,94が突設され、これらのテノン93,94をカバーピース90のテノン孔91,92にルーズに挿入させる。このように動翼80の各翼80a,80bの翼頂部81をカバーピース90を介して順次結合することにより、動翼80の周方向の全ての翼80a,80bは互いにルーズに連結され、いわゆる全周翼一群ルーズ連結構造の動翼80が構成される。
この全周翼一群ルーズ連結構造の動翼80により、振動に対して極めて良好なダンピング特性を有している。カバーピース90の材料には、耐腐食性、耐侵食性の優れた材料を採用して、ルーズに組み立てられるテノン孔91,92内部の腐食を防止し、かつ水滴によるエロージョンの防止をもしている。この動翼80の連結構造においても、図9に示される連結構造と同様、腐食環境下での問題点を克服した優れた技術となり、地熱タービンの安定した部分負荷運用が長期にわたって可能となる。
なお図9、図10において、「ルーズに」とは、互いに隣接する翼同士の振動等による動きは拘束しないが、テノン孔とテノンとはある程度接触し、その振動がこのテノンとテノン孔との摩擦により減衰する状態を言い、「タイトに」とは、テノン孔に挿入されたテノンが、翼の振動程度の力ではテノン孔からは抜け出ない、別の表現をするならば、翼とカバーピースとが一体となり振動する状態を言い、テノンをテノン孔から外すには相応の力が必要な状態を言う。
本発明に係る地熱タービンにおいては、蒸気中に腐食性成分や水分、固体粒子等の不純物が含まれ、厳しい環境下で運用されるが、タービン構成部品であるタービンロータ軸、静翼(ノズル)、動翼および静止部と回転部との間の各蒸気漏洩防止構造の耐腐食性、耐侵食性を改善し、経年劣化を大幅に低減し、高効率運転が可能となり、タービン機器の長寿命化を図ることができる。
また、ノズル等の静止部と動翼等の回転部との間に形成される蒸気漏洩防止構造により、地熱蒸気の不純物によって引き起こされる経年劣化を大幅に低減させ、損傷やトラブル、タービン効率の低下等を効果的に防ぐことができ、地熱タービンを長期に亘って安定的に運転でき、エネルギ資源の有効活用が図れ、電力の安定供給が図れる。
さらに、厳しい環境下で運用される地熱タービンのタービン構成機器の保守性、メンテナンス性を向上させることができ、タービン機器の保守点検、補修のための停止、トラブルによる緊急停止等の機会が減り、地熱タービンプラントの運用効率を向上させることができる。
また、地熱タービンの低負荷運転の信頼性が向上し、タービンプラントの運用のフレキシビリティが増加するので、プラントの効率的運用が図れ、地熱資源の節約とその有効活用が図れる。