JP4053799B2 - ポリオール、その製造方法、当該ポリオールから得られるポリウレタン樹脂または発泡体 - Google Patents
ポリオール、その製造方法、当該ポリオールから得られるポリウレタン樹脂または発泡体 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリオール、その製造方法、ポリウレタン樹脂、ポリウレタン発泡体(ポリウレタンフォーム)に関する。詳しくは、生分解性を有するポリオール、その製造方法、ポリウレタン樹脂、ポリウレタンフォーム、その用途に関する。
【0002】
【発明の技術的背景】
近年、プラスチック廃棄物による環境汚染が世界的な問題となっている。この問題の最大の原因は廃棄物の大部分を占めるポリスチレン、塩化ビニル、ポリプロピレン等のプラスチックが生分解性をもたない為、埋め立て処理されても土中にそのまま残存することにある。また、焼却するにしても、一般的にプラスチック類は燃焼熱量が大きく、燃焼ガスによる大気汚染の原因ともなる為、通常の焼却設備だけで対応することは困難である。また、リサイクルは徐々に普及しつつあるものの、そもそもリサイクルに対して不適当なプラスチック利用分野もかなりの部分を占めている。この様な現状から、自然環境下で分解可能な生分解性プラスチックの開発が行われている。既に、数多くの生分解性樹脂が知られており、代表的にはポリグリコール酸やポリ乳酸、ポリヒドロキシ酪酸、ポリヒドロキシ吉草酸、ポリカプロラクトンのようなポリヒドロキシカルボン酸類や、多価アルコール類と多塩基酸類を重合して得られるポリブチレンサクシネート、ポリブチレンアジペート等の脂肪族ポリエステル類がよく知られている。また、ポリサクシンイミドのようなポリアミノ酸類や、糖蜜やセルロース及びセルロース変性体、キチン、キトサン等の糖類及びそれらの変性体、ゼラチンやセリシン、リグニン等の蛋白質類変性体由来の樹脂、或いは植物油等由来の天然高分子類等の利用も検討されつつある。
【0003】
しかしながら、前記生分解性樹脂は、従来の樹脂が使用される多くの用途に対して、物理的性質、機械的性質、あるいは化学的性質において、従来の樹脂の代替物として未だ不十分である。中でも特にポリ乳酸は、無色透明である唯一の生分解性樹脂であり、引張り強度が強く優れているものの、弾性や伸びに乏しく、脆いという欠点があった。また、製造に大きな負荷がかかるものも数多くあることから、様々な工夫が行われてきた。
【0004】
特開平11-255801号公報においては、セルロース誘導体から直接生分解性樹脂をうる方法が知られている。しかし、これらの樹脂体は、硬質ウレタンフォームや軟質ウレタンフォームの様に、自在に構造を制御しながら成形する用途に用いるのは困難であった。
このため、硬質ポリウレタンフォームや軟質ポリウレタンフォーム等の原料に用いて得られた樹脂が生分解性を有する樹脂原料が望まれていた。
【0005】
また、従来、ポリウレタンフォームに生分解性を付与させるために、ポリオール化合物の一部あるいは全部を生分解性高分子物質に代え、発泡剤の存在下でイソシアネート化合物と反応させる試みが提案されている。例えば、ポリオール化合物にセルロース等の多糖粉末を混合し、イソシアネート化合物と反応させる方法(特開平7−82336号公報)、リグノセルロース物質または殿粉とポリオール化合物を反応させて液化した後、イソシアネート化合物と反応させる方法(特開平4−106128号公報、特開平7−10985号公報、特開平7−11032号公報、特開平6−136168号公報)、リグノセルロース物質をフエノール化合物等を含んだ溶液に溶解液化した後、イソシアネート化合物と反応させる方法(特開昭63−17961号公報)、ポリオール化合物にセリシン等のタンパク質を混合し、イソシアネート化合物と反応させる方法(中村邦雄ら、繊維学会誌、Vol.51,No.3,P111−117(1995))などが知られている。
【0006】
しかしながら、いずれの方法においてもポリオール化合物の調製及び取扱いが煩雑であり、ポリウレタン樹脂、フォームを成形する上で、樹脂原料として調製/取扱いの簡便な常温で液状また室温〜80℃程度の温度で溶融するものが望まれていた。
【0007】
【発明の目的】
本発明は、従来技術の問題点に鑑み、従来の生分解性樹脂に比べて、物性が改善され、分解性を有するポリウレタン樹脂またはフォーム、それらの製造方法及びそれらを製造しうるポリオールを提供することを目的としている。また、自然環境に放出された場合に従来技術に比較して安全であり、更には、反応時の負荷が小さく、分解性、すなわち、加水分解性及び生分解性を有する樹脂、発泡体及びその成形品、これらを与えるポリオールを提供することを目的としている。
【0008】
【発明の概要】
本発明者らは、上記問題を解決すべく鋭意研究し、本発明のラクチド誘導体は、ラクチド類およびラクトン類の群から選ばれる少なくとも1種の化合物をアルキルグルコシド存在下、必要に応じて触媒、溶剤等を用いて開環重合して得られうるポリオールを用いてポリウレタン樹脂およびフォームを製造することにより上記課題を解決することを見出し発明を完成するに至った。
【0009】
即ち本発明は以下の発明を含んでいる。
本発明に係るポリオールは、ラクチド類、ラクタム類およびラクトン類の群から選ばれる少なくとも1種の化合物を、アルキルグルコシド存在下、開環重合して得られることを特徴としている。
また、本発明に係るポリオールは、ラクチド類から選ばれる少なくとも1種の化合物とラクタム類および/またはラクトン類の群から選ばれる少なくとも1種の化合物とをアルキルグルコシド存在下、開環重合して得られるものでもよい。
【0010】
本発明に係るポリオールの製造方法は、ラクチド類、ラクタム類およびラクトン類の群から選ばれる少なくとも1種の化合物をアルキルグルコシド存在下、開環重合して製造することを特徴としている。
また、本発明に係るポリオールの製造方法は、ラクタム類およびラクトン類の群から選ばれる少なくとも1種の化合物と、ラクチド類の群から選ばれる少なくとも1種の化合物の混合物をアルキルグルコシド存在下、開環重合して製造することを特徴としている。
【0011】
本発明に係るポリオールは、下記一般式(1)および/または(2)
【0012】
【化3】
【0013】
で表されることを特徴としている:ただし、式(1)および/または(2)中、R1は炭素数1以上18以下のアルキル基であり、R2〜R4及びR6のうち少なくとも1種がラクチド類由来の繰り返し単位、ラクトン類由来の繰り返し単位およびラクタム類由来の繰り返し単位から選ばれる少なくとも1種の繰り返し単位を含有し、R5が炭素数1以上18以下のアルキレン基を表す。
【0014】
前記R2〜R4及びR6のうち少なくとも1種はラクチド類由来の繰り返し単位を含有することが好ましい。
前記R2〜R4及びR6のうち少なくとも1種はラクトン類由来の繰り返し単位を含有するものでもよい。
前記R2〜R4及びR6のうち少なくとも1種はラクタム類由来の繰り返し単位を含有するものでもよい。
【0015】
前記R2〜R4及びR6のうち少なくとも1種は該置換基中にラクチド類由来の繰り返し単位並びにラクトン類および/またはラクタム類由来の繰り返し単位を含有することが好ましい。
前記R2〜R4及びR6のうち少なくとも1種はラクチド類由来の繰り返し単位を含有し、少なくとも1種はラクトン類および/またはラクタム類由来の繰り返し単位を含有するものでもよい。
【0016】
本発明に係るポリウレタン樹脂は、ラクチド類、ラクタム類およびラクトン類の群から選ばれる少なくとも1種の化合物をアルキルグルコシド存在下、開環重合して得られるポリオールと、ポリイソシアネートとを反応させて得られることを特徴としている。
本発明に係るポリウレタン樹脂は、ラクチド類から選ばれる少なくとも1種の化合物とラクタム類および/またはラクトン類の群から選ばれる少なくとも1種の化合物とをアルキルグルコシド存在下、開環重合して得られうるポリオールと、ポリイソシアネートとを反応させて得られることを特徴としている。
【0017】
本発明に係るポリウレタン発泡体は、ラクチド類、ラクタム類およびラクトン類の群から選ばれる少なくとも1種の化合物をアルキルグルコシド存在下、開環重合して得られるポリオールと、ポリイソシアネートとを反応、発泡させて得られることを特徴としている。
本発明に係るポリウレタン発泡体は、ラクチド類から選ばれる少なくとも1種の化合物とラクタム類および/またはラクトン類の群から選ばれる少なくとも1種の化合物とをアルキルグルコシド存在下、開環重合して得られうるポリオールと、ポリイソシアネートとを反応、発泡させて得られることを特徴としている。
【0018】
【発明の具体的説明】
本発明のポリオールは、ラクチド類、ラクタム類およびラクトン類の群から選ばれる少なくとも1種の化合物をアルキルグルコシド存在下、必要に応じて触媒、溶剤等を用いて開環重合して得られうる。以下まずこれらの成分について説明する。
【0019】
[ポリオール]
本発明の生分解性を有するポリオールは、ラクチド類、ラクタム類およびラクトン類の群から選ばれる少なくとも1種の化合物をアルキルグルコシド存在下、開環重合して得られうるポリオールである。
分子中の水酸基に特に限定はないが通常、2ヶ以上4ヶ以下であるが、アルキルグリコシドの水酸基をアセチル基などで置換したジオール、トリオール等として、開環重合することにより一分子中により多くの水酸基を有するポリオールとしてもよい。
【0020】
平均分子量に特に限定はないが、通常100以上1,0000以下であり、200以上7,000以下が好ましく、200以上5,000以下が特に好ましい。
水酸基価に特に限定はないが通常10mgKOH/g以上1,000mgKOH/g以下であり、20mgKOH/g以上900mgKOH/g以下が好ましく、20mgKOH/g以上850mgKOH/g以下が特に好ましい。
【0021】
一分子中にラクチド類、ラクタム類およびラクトン類のいずれか由来の骨格が好ましくは32質量%以上98質量%以下、さらに好ましくは38質量%以上98質量%以下、特に好ましくは38質量%以上88質量%以下が更に好ましい。特にラクチド類由来の骨格とラクタム類及び/又はラクトン類由来の骨格が含有されていることが好ましく、そのモル比は10/90〜90/10が好ましく、20/80〜50/50が更に好ましく、20/80〜 30/70が特に好ましい。
【0022】
このようなポリオールは、下記一般式(1)および/または(2)
【0023】
【化4】
【0024】
で表されるポリオールである。
ただし、前記式(1)および/または(2)中、R1は好ましくは炭素数1以上18以下、さらに好ましくは炭素数1以上12以下、特に好ましくは1以上8以下のアルキル基であることが望ましい。
また、R2〜R4及びR6のうち少なくとも1種がラクチド類由来の繰り返し単位、ラクトン類由来の繰り返し単位およびラクタム類由来の繰り返し単位から選ばれる少なくとも1種の繰り返し単位を含有している。
【0025】
すなわち、R2〜R4及びR6は、好ましくは、少なくとも1種はラクチド類由来の繰り返し単位を含有することが望ましい。
また、前記R2〜R4及びR6は、好ましくは、少なくとも1種はラクトン類由来の繰り返し単位を含有してもよい。
さらに、前記R2〜R4及びR6は、好ましくは、少なくとも1種はラクタム類由来の繰り返し単位を含有してもよい。
【0026】
このうち、前記R2〜R4及びR6のうち少なくとも1種がこの置換基中にラクチド類由来の繰り返し単位並びにラクトン類および/またはラクタム類由来の繰り返し単位を含有することが望ましい。
さらに、前記R2〜R4及びR6のうち少なくとも1種がラクチド類由来の繰り返し単位を含有し、少なくとも1種がラクトン類および/またはラクタム類由来の繰り返し単位を含有してもよい。このうち、少なくとも1種がラクチド類由来の繰り返し単位により構成され、少なくとも1種がラクトン類および/またはラクタム類由来の繰り返し単位により構成されていることが望ましい。
【0027】
前記式(1)または(2)中、R5は炭素数1以上18以下、好ましくは炭素数12以下、さらに好ましくは8以下のアルキレン基が望ましい。
前記式(1)(α誘導体)で表されるポリオールと、前記式(2)(β誘導体)で表されるポリオールとはα体、β体の異性体同士であり、本発明では、それぞれ単独でまたは複数を併用して用いることができる。
【0028】
<アルキルグルコシド類>本発明に用いられるアルキルグルコシド類は、下記一般式(1a)(α誘導体)および/または(2a)(β誘導体)
【0029】
【化5】
【0030】
で表されるポリオールである。
R1は炭素数1以上18以下のアルキル基が好ましく、炭素数12以下のアルキル基が更に好ましく、炭素数8以下が特に好ましい。
R5は炭素数1以上18以下のアルキレン基が好ましく、炭素数12以下のアルキレン基が更に好ましく、炭素数8以下が特に好ましい。
【0031】
R2'〜R4'及びR6'は、少なくともいずれか2つが水素原子であり、水素原子と異なるものは、アルキルグリコシドの水酸基がアセチル基などで置換されていてもよい。
これらの化合物の中で特にメチル−α−D−グルコシド、メチル−β−D−グルコシドから得られるラクチド誘導体が常温で液状又は室温〜80℃の温度で溶融できるので好ましい。
【0032】
<ラクチド類、ラクタム類、ラクトン類>
本発明で用いることのできるラクチド類、ラクタム類、ラクトン類は、具体的には、下記の結合を有するラクチド類、ラクタム類、ラクトン類であることが望ましい。
【0033】
【化6】
【0034】
なお、Rm、Rn、Rx、Ryはアルキレン基等を表す。
以下に具体的に説明する。
(ラクチド類)
本発明で用いられるラクチド類としては、具体的には、脂肪族ヒドロキシカルボン酸の2分子環状エステルであることが望ましい。より具体的には、乳酸の2分子環状エステルであるラクチド類、すなわちL−ラクチド、D−ラクチド、D,L−ラクチド、MESO−ラクチド;グリコール酸の2分子環状エステルであるグリコリド;エチルグリコール酸の2分子環状エステルであるジエチルグリコリド;ジメチルグリコール酸等の2分子環状エステルであるジメチルグリコリド、α,α−ジメチルグリコリド等が挙げられる。
【0035】
このなかでもグリコリド、L−ラクチドが好ましい。
(ラクタム類)
本発明に用いられるラクタム類としては環内に -CONH- 基を持ち、アミド窒素の他に環内ヘテロ原子を持たない単環式化合物で生分解性を有するものが挙げられる。具体的には、例えばペンタノ-4-ラクタム 、4-ペンタンラクタム、5-メチル-2-ピロリドン、5-メチル-2-ピロリジノン 、ヘキサノ-6-ラクタム、6-ヘキサンラクタム 、ε-カプロラクタム、アゼパン-2-オン、ヘキサヒドロ-2H-アゼピン-2-オン等が挙げられる。
【0036】
このなかでもε-カプロラクタムが、好ましい。
(ラクトン類)
本発明に用いるラクトン類としては、ヒドロキシカルボン酸から誘導され,環内に -CO-O- 基を持つ単環式化合物であり、生分解性を有するものが望ましい。具体的には、例えばβ―プロピオンラクトン、δ―バレロラクトン、ドデカノラクトン、β−プロピオラクトン、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、ε―カプロラクトン、α、α―ジメチルーβ―プロピオラクトン、βエチルーδ―バレロラクトン、αメチルーε―カプロラクトン、β―メチルーε―カプロラクトン、γ―メチルーε―カプロラクトン、3,3,5―トリメチルーε―カプロラクトン3,5,5−トリメチルーε―カプロラクトン、エナントラクトン、ペンタノ-4-ラクトン、5-メチルテトラヒドロフラン-2-オン、ジヒドロ-5-メチル-2(3H)-フラノン、4-ペンタノリド、フェナントレン-1,10:9,8-ジカルボラクトン、フェナントロ[1,10-bc:9,8-b'c']ジフラン-2,10-ジオン、1,10:9,8-フェナントレンビスカルボラクトン、2H-クロメン-2-オン、2H-1-ベンゾピラン-2-オン、クマリン、D-グルコノ-1,5-ラクトン、D-グルコン酸 δ-ラクトン、β-D-グルコフラヌロノ-6,3-ラクトン、β-D-グルコフラヌロン酸 γ-ラクトン、 L-マンナロ-1,4:6,3-ジラクトン 、L-マンナル酸 ジ-γ-ラクトン等が挙げられる。このなかでもβ―プロピオンラクトン、γ−ブチロラクトン、δ−バレロラクトン、ε―カプロラクトンが、好ましい。
【0037】
<触媒>
本発明のポリオールの製造反応において用いる触媒としては、通常環状エステルの開環反応に用いられる触媒であればいずれでも用いることができる。
例えば、ナトリウムやカリウムなどのアルカリ金属及びそのアルコキシドなど誘導体;トリエチルアルミニウムで代表されるアルキルアルミニウム及びその誘導体、チタン酸テトラブチル等のアルコキシチタン化合物、2−エチルヘキサン酸すず等のオクチル酸スズ、ジブチルスズラウレート等の有機金属化合物;塩化スズなどの金属ハロゲン化物等が挙げられる。
この中でも 2−エチルヘキサン酸すず、二塩化すずが、取扱い上安全性が高く、収率の点からも好ましい。
【0038】
<溶剤>
本発明のポリオールの製造には必要に応じて溶剤を用いることができる。原料であるアルキルグルコシド類、ラクチド類、ラクタム類、ラクトン類を溶解するものであればいずれでも用いることができる。
例えば、メタノール、エタノール、プロパノールのような低分子アルコール、およびアセトンのようなケトン、およびこれらの混合物が挙げられる。さらに、ポリオール類を用いることもできる。溶剤を用いる場合は、ポリウレタンの原料となる活性水素化合物をもちいることが好ましい。特に、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、これらからえられうるポリマーポリオール等をもちいることが好ましく、生分解性を有する活性水素化合物を用いることが特に好ましい。
【0039】
<その他添加剤>
本発明のポリオールの製造では、必要に応じて開環重合時または開環重合終了後、酸化防止剤、着色抑制剤等の安定剤、ウレタン化触媒、可塑剤、充填剤、滑剤、耐電防止剤等の添加剤をポリオールに添加することができる。
<開環重合の条件>
本発明のポリオールは、ラクチド類、ラクタム類、ラクトン類の群から選ばれる少なくとも1種の化合物をアルキルグルコシド、必要に応じて触媒、溶剤、その他添加剤の存在下、開環重合することによって得ることができる。
【0040】
製造されたポリオールを液状にするにはラクチド類とラクタム類及び/又はラクトン類とを共存させて開環重合するか、ラクチド類又はラクタム類及び/若しくはラクトン類のいずれかを開環重合し、他方を開環重合することが好ましい。開環重合に際してはラクチド類、ラクタム類、ラクトン類の必要量を予め添加しておき、開環重合しても、それぞれを分割し、適宜順番を決めて添加してもよい。また開環重合開始時にはそれらのいずれかを開環重合し、一定時間経過後多の化合物を添加してもよい。
【0041】
ポリオールを製造する時には触媒を添加することが好ましい。
重合温度に特に限定はないが通常、0℃〜300℃であり、好ましくは40℃〜200℃で、特に好ましくは50〜150℃である。
反応圧力にも特に限定はないが通常、1〜10kg/cm2G、好ましくは1〜5kg/cm2Gである。
【0042】
反応時間にも特に限定はないが通常3時間以下好ましくは1時間以下、更に好ましくは40分以下である。
反応装置もいずれの反応装置を用いてもよいが、通常の攪拌翼を有する反応器、必要に応じてスタティックミキサーを有する管型反応器、単軸または2軸等の複数軸の押出機やニーダ等をもちいることができ、反応もバッチ、セミバッチ、連続のいずれの方法またはそれらを組み合わせてもよい。
【0043】
また、本発明のポリオールを得るに際して用いる原料および窒素、反応器等については十分に乾燥させておくことが望ましい。
[ポリウレタン樹脂、発泡体]
本発明で得られるポリウレタン樹脂、発泡体は本願発明のポリオールとポリイソシアネート化合物、必要に応じて他の活性水素化合物、触媒、発泡剤、架橋剤、硬化促進剤、光安定剤、可塑剤、酸化防止剤、熱安定化剤、充填剤、着色防止剤、顔料。その他添加剤等の共存下反応させることにより製造することができる。
【0044】
本発明のポリウレタン樹脂、発泡体またその成形物は加水分解性を有するので、所望の目的に使用済み後、酸又はアルカリ水溶液中で加水分解することができ、また自然環境下で微生物の作用により生分解される。
生分解性を有するポリウレタン樹脂、発泡体とは、加水分解性と生分解性を有するものである。
【0045】
すなわち、本発明のポリウレタン樹脂は、酸又はアルカリの存在下に加水分解する分解性を有するばかりでなく、自然環境下において微生物の加水分解酵素により加水分解する、いわゆる生分解性を有する。したがって、本発明のポリウレタン樹脂は、所望の目的、例えば、成形品として使用した後に、加水分解して破棄又はリサイクル使用が可能であったリ、また、例え、自然環境に放棄されることがあったとしても地球環境を損なうことのない、生分解性を有するポリウレタン樹脂である。このような分解性を有するだけではなく、樹脂として、良好な強度、伸びや弾性を有する。生分解性樹脂樹脂としての指標としては、 自然環境下でのフィールド・テスト、実験室内で微生物を使用する方法、および特定酵素・微生物を用いる方法に大分される。既に発効中の試験方法を含め、(1)フィールド・テスト(2)特定酵素・微生物法(3)活性汚泥法を含む好気的水系試験、(4)好気的コンポスト法(5)好気的土壌系試験(6)嫌気的試験法が挙げられる。
【0046】
本発明から得られたサンプルに関しては、好気的水系試験方法として、国際規格FDIS14851の中で、自然環境下での分解を反映する標準試験法として採用されている閉鎖系酸素消費量測定装置を用いて判断することができる。その他の方法として、ISO/FDIS14852として採用された、土壌懸濁液、コンポスト懸濁液を用いて、二酸化炭素発生量を測定する方法も有効である。FDIS14851と14852の試験期間は、フラットに達するまで、最大6ヶ月であり、終了時の対象物質の分解度60%以上で試験は、有効とされる。
【0047】
<その他活性水素化合物>
本発明においては、本発明のポリオールの他に必要に応じて通常のポリウレタン樹脂、発泡体の製造に用いられる活性水素化合物を用いることができる。活性水素化合物としてはアミン化合物のごとく窒素原子上に活性水素を有する化合物やポリオール化合物のごとく酸素原子上に活性水素を有する化合物をもちいることができる。
【0048】
窒素原子上に活性水素原子を有する活性水素化合物の具体例としては、例えばメチルアミン、エチルアミン、ノルマル-プロピルアミン、イソプロピルアミン、ノルマル-ブチルアミン、イソブチルアミン、sec-ブチルアミン、tert-ブチルアミン、シクロヘキシルアミン、ベンジルアミン、β-フェニルエチルアミン、アニリン、o-トルイジン、m-トルイジンまたはp-トルイジン等の炭素数1ないし20個の脂肪族または芳香族一級アミン類であり、ジメチルアミン、メチルエチルアミン、ジエチルアミン、ジ-ノルマル-プロピルアミン、エチル-ノルマル-ブチルアミン、メチル-sec-ブチルアミン、ジペンチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、n-メチルアニリンまたはジフェニルアミン等の炭素数2ないし20個の脂肪族または芳香族二級アミン類であり、エチレンジアミン、ジ(2-アミノエチル)アミン、ヘキサメチレンジアミン、4,4'-ジアミノジフェニルメタン、トリ(2-アミノエチル)アミン、n,n'-ジメチルエチレンジアミン、n,n'-ジエチルエチレンジアミンまたはジ(2-メチルアミノエチル)アミン等の炭素数2ないし20個の2ないし3個の一級もしくは二級アミノ基を有する多価アミン類であり、ピロリジン、ピペリジン、モルホリンまたは1,2,3,4-テトラヒドロキノリン等の炭素数4ないし20個の飽和環状二級アミン類であり、3-ピロリン、ピロール、インドール、カルバゾール、イミダゾール、ピラゾールまたはプリン等の炭素数4ないし20個の不飽和環状二級アミン類であり、ピペラジン、ピラジンまたは1,4,7-トリアザシクロノナン等の炭素数4ないし20個の2ないし3個の二級アミノ基を含む環状の多価アミン類であり、アセトアミド、プロピオンアミド、n-メチルプロピオンアミド、n-メチル安息香酸アミドまたはn-エチルステアリン酸アミド等の炭素数2ないし20個の無置換またはn-一置換の酸アミド類であり、2-ピロリドンまたはε-カプロラクタム等の5ないし7員環の環状アミド類であり、こはく酸イミド、マレイン酸イミドまたはフタルイミド等の炭素数4ないし10個のジカルボン酸のイミド類である。
【0049】
本願発明の方法における活性水素化合物のうち、酸素原子上に活性水素原子を有する活性水素化合物としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ジグリセリン、ペンタエリスリトールまたはジペンタエリスリトール等の炭素数2ないし20個の2ないし8個の水酸基を有する多価アルコール類であり、グルコース、ソルビトール、デキストロース、フラクトースまたはシュクロース等の糖類またはその誘導体であり、フェノール、2-ナフトール、2,6-ジヒドロキシナフタレンまたはビスフェノールA等の炭素数6ないし20個の1ないし3個の水酸基を有する芳香族化合物類であり、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシドまたはそれらのコポリマー等であって2ないし8個の末端を有しその末端に1ないし8個の水酸基を有するポリアルキレンオキシド類である。
【0050】
また、上記活性水素化合物やカルボン酸等の開始剤とエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等のアルキレンオキサイドを付加重合して得られたポリオキシアルキレンポリエーテルやテレフタル酸等から得られるポリエステルポリオール等を挙げることができる。
このなかでも自身が生分解性を有する化合物が好ましく、例えば糖類等が挙げられる。より具体的に糖類とは、単糖類、二糖類、オリゴ糖、多糖類、及び/又はそれらの誘導体、変性体を指し、例えば単糖類の具体例としては、エリトロース、トレオース、リボース、アラビノース、キシロース、リキソース、アロース、アルトロース、グルコース、マンノース、グロース、イドース、ガラクトース、タロース、フルクトース、グルコピラノース、グルコフラノース、ガラクトフラノース、アラビノピラノース、フルクトピラノース、2−デオキシリボース、キシルロース、リブロース、セドヘプツロース、ラムノース、フコース、グルコサミン、ガラクトサミン 等が挙げられる。これらは光学異性体の存在比を問わず、これらの1種又は2種以上からなる二糖類、多糖類であってもよく、エノール化体、酸化体、還元体、グリコシド等の変性体であってもよく、また、それらの混合物や糖蜜であってもよい。本発明で使用される糖類には、もちろんこれらが長鎖を形成したセルロース、硝酸セルロース、酢酸セルロース、エチルセルロース、セルロイド、ビスコースレーヨン、再生セルロース、セロファン、キュプラ、銅アンモニアレーヨン、キュプロファン、ベンベルグ、ヘミセルロース、澱粉、アラビアゴム、グアーガム、ローカストビーンガム、アカシアガム、キチン、キトサン等やその変性体でもよく、ポリオールとして使用しうる糖類であれば特に限定されるものではない。
【0051】
<ポリイソシアネート化合物>
本願発明に用いられるイソシアネート化合物としては、ポリウレタンの製造に用いるものであれば用いることができる。これらのイソシアネートは、単独でも複数を併用してもよく、それらのヌレート変性、プレポリマー変性、ウレトジオン変性等の変性をした変性体を用いてもよく、複数のポリイソシアネートや変性体をそれぞれ併用してもよい。
【0052】
脂肪族ポリイソシアネート化合物としては、1、6−ジイソシアナトヘキサン(HDI)等をあげることができる。
脂環族ポリイソシアネート化合物としては、2、5−または2、6−ビスイソシアナトメチル−ビシクロ[2、2、1]ヘプタン(NBDI)、3、3、5−トリメチル−1−イソシアナト−5−イソシアナトメチルシクロヘキサン(IPDI)、1、6−ビスイソシアナトメチルシクロヘキサン(H6−XDI)、1、6−ジイソシアナトヘキサン(HDI)、ビス(4、4’イソシアナトシクロヘキシル)メタン(H12−MDI)をあげることができる。
【0053】
芳香族に少なくとも2ヶのイソシアネート基が直接結合する化合物としては、具体的に、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアナート(4,4’−MDI)、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアナート(2,4’−MDI)、2,4−トルエンジイソシアナート(2,4−TDI)、2,6−トルエンジイソシアナート(2,6−TDI)およびこれらの2量体、3量体または多量体、あるいはそれらの混合物である粗製TDI、粗製MDIと称されるもの、並びにこれらの混合物が挙げられる。
【0054】
芳香族基に直接結合しない少なくとも2個のNCO基を有するイソシアネート化合物としては、1、6−ビスイソシアナトメチルベンゼン(XDI)等をあげることができる。
このなかでも生分解性の向上及び/又は透明性の向上の為には脂肪族ポリイソシアネート化合物、脂環族ポリイソシアネート化合物が好ましく、多環式脂環族がさらに好ましく、2、5−および2、6−ビスイソシアナトメチル−ビシクロ[2、2、1]ヘプタン(NBDI)(a−1)、NBDIから得られる変性体(a−2)を少なくとも20質量%含むことが特に好ましい。(a−1)/(a−2)の好ましい混合質量比率は99/1〜60/40である。
【0055】
多環式ポリイソシアネートとしては下記式(3)〜(8)で表されるようなノルボルナン環を有する多環式ポリイソシアネートが好ましく、そのなかでも下記式(3)で表されるものが好ましい。
【0056】
【化7】
【0057】
前記式(3)で表されるイソシアネートは、NBDIのイソシアナトメチル基の2,5−置換体と2,6−置換体のそれぞれ単独又は混合物を表すものである。
NBDIの変性体としては、例えば、式(4)で表されるNBDIのイソシアヌレート体、またはそのブロック体が挙げられる。
【0058】
【化8】
【0059】
また下記式(5)で表されるNBDIのウレトジオン体、又はそのブロック体、
【0060】
【化9】
【0061】
下記式(6)で表されるNBDIのビュレット体、又はそのブロック体、
【0062】
【化10】
【0063】
下記式(7)で表されるNBDIのトリメチロールプロパンアダクト体、又はそのブロック体、
【0064】
【化11】
【0065】
下記一般式(8)で表されるNBDIのポリカルボジイミド体(Zは1以上の整数)
【0066】
【化12】
【0067】
などが挙げられる。これらは、合成又は入手の容易さから好ましいが、これらに限定されるものではなく、また、NBDI及び/又はその変性体の2種以上を併用してもよい。
<触媒>
触媒としては、通常ウレタン発泡に用いられる公知の触媒すべてを使用することができる。
【0068】
例えば、トリメチルアミノエチルピペラジン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、N−メチルモルフォリン、N−エチルモルフォリン、トリエチレンジアミン、テトラメチルヘキサメチレンジアミン、ジメチルシクロヘキシルアミン、ジアゾビシクロウンデセン、1,3,5−トリス(ジメチルアミノプロピル)ヘキサヒドロ−s−トリアジン等のトリアジン類、2−エチルアジリジン等のアジリジン類等のアミン系化合物、3級アミンのカルボン酸塩等の4級アンモニウム化合物、アリルグリシジルエーテル、ポリアルキレングリコールジグリシジルエーテル、スチレンオキサイド等のアルカリ金属塩、ナフテン酸鉛、オクチル酸鉛等の鉛化合物、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジラウレート等の錫化合物、ナトリウムメトキシド等のアルコラート化合物、カリウムフェノキシド等のフェノラート化合物、塩化鉄、塩化亜鉛、臭化亜鉛、塩化錫等の金属ハロゲン化物、アセチルアセトン金属塩等の金属錯化合物等を挙げることができる。
【0069】
これらの触媒は、単独または、2種以上併用して用いることができ、その使用量は、ポリオール100質量部に対して、0.001〜15.0質量部が適当である。
<発泡剤>
本発明において、ポリウレタンフォームを製造する際には発泡剤を用いることができ、このような発泡剤としてはウレタンの発泡体の製造に供することができるものであれば、水、二酸化炭素、炭化水素類、ハイドロクロロフロロカーボン類、ハイドロフロロカーボン類、ハイドロフロロエーテル類いずれを用いても良いが、水、二酸化炭素などの環境負荷の少ない発泡剤を使用することが好ましい。
【0070】
水はポリイソシアナートと反応して二酸化炭素を発生することにより発泡剤として使用され、ポリオール100質量部に対して、0.5質量部〜10質量部が好ましく、さらに好ましくは2質量部〜8質量部が適当である。
これら発泡剤は、単独で使用してもよいが、複数を併用して用いてもよい。例えば水と二酸化炭素、水とメタン、エタン、プロパン、ペンタン、イソペンタン、シクロペンタン等低沸点炭化水素類、水とハロゲン化炭化水素等を併用することができる。
【0071】
<架橋剤>
ポリウレタン樹脂、フォームの製造においては、架橋剤は特に使用しなくてもよいが、使用する場合には水酸基価200〜1800mgKOH/gの化合物が用いられる。
例えばグリセリン等の脂肪族多価アルコール類、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン類等が用いられる。また水酸基価200〜1800mgKOH/gのポリオキシアルキレンポリオールが用いられる他、従来公知の架橋剤が0.5部〜10部の間で任意の量使用できる。
【0072】
<整泡剤>
ポリウレタン樹脂、フォームの製造には、整泡剤を用いることもできる。整泡剤としては、従来公知の含珪素有機系の界面活性剤が用いられる。例えば、日本ユニカ−(株)製のSZ−1127、SZ−1142、SZ−1605、SZ−1642、SZ−1649、SZ−1655、L−580、L−5740、L−5420、L−5421等、東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製のSF−2961、SF−2962、SF−2969、SF−2935F、SF−2938F、SF−2940F、SF−2945F、SF−2908、SRX−294A、SRX−274C、SH−190、SH−192、SH−193等、信越化学工業(株)製のF−327、F−345、F−305、X−20−1328等が適当である。これらの整泡剤の使用量は、ポリオールと有機ポリイソシアネートの総和100質量部に対して0.01〜10質量部である。
【0073】
<ポリウレタン樹脂、発泡体製造用溶媒>
ポリウレタン樹脂、フォームの製造に必要には応じて溶媒を使用することができ、使用できる溶媒としては、例えば、水、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、ジクロロエタン、トリクロロエタン、トリクロロエチレン、テトラクロロエタン、テトラクロロエチレン、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミドゾリジノン、ジメチルスルホキシド、スルホラン等が挙げられるが特に制限はない。
【0074】
<樹脂の製造条件>
本願発明においては、反応温度は使用する前記ポリオールや生成するポリウレタン樹脂の種類にも依存する為、特に限定されないが、通常無溶媒下では溶融条件下で行うので、60〜250℃の温度域で反応が行われる。また、溶媒存在下では通常室温〜溶媒の沸点の領域で反応が行われる。本発明においては、ポリオールとNBDIを反応させて、実質的にポリマー鎖末端がイソシアネート基であるプレポリマーを調製した後に、更に反応を行って分解性を有するポリウレタン樹脂とすることもできる。例えば、直鎖状の脂肪族ポリエステルポリオールとNBDIを反応させ、実質的にイソシアネート基末端としてから、水の存在下にウレタン発泡体としたり、カルボジイミド化触媒の存在下に生分解性ポリカルボジイミドとしたりすることもできる。発泡体とすることによりの分解性または生分解性を有する発泡ポリウレタンを得ることができる。
【0075】
<ポリウレタン樹脂>
以上のようにして得られる本発明のポリウレタン樹脂あるいはポリウレタンフォームは、前記ポリオールとNBDIとの反応により生成するウレタン結合以外にも、例えば、ウレア結合やアミド結合、カルボジイミド結合、アロファネート結合、ビュレット結合、イソシアヌレート結合、ウレトンイミン結合、イミド結合等を樹脂構造中に有していてもよいが、特に限定されるものではない。これらの結合は、使用するNBDI及び/又はその変性体の種類や、前記ポリオールが有する官能基の種類、或いは反応条件等により任意に選択することができる。例えば、イソシアヌレート結合を有する分解性及び生分解性を有するポリウレタン樹脂を得る為には、NBDIのイソシアヌレート体を原料として使用したり、或いは予めポリオールとNBDIとを反応させて末端官能基をイソシアネート基とした後にイソシアヌレート化触媒の存在下に反応させることによりイソシアヌレート結合を有する分解性及び生分解性ポリウレタン樹脂とすることもできる。特に本発明において、得られる分解性を有するポリウレタン樹脂は、生分解性樹脂として、従来の生分解性樹脂にはない硬さを備えているにもかかわらず、同時に弾性や柔軟性にも優れており、また、カルボジイミド結合やイミド結合等のような特定の結合様式においては耐熱性、耐薬品性を付与することから分解性及び生分解性樹脂として新たな用途の開発を図ることもできる。
【0076】
<ポリウレタン樹脂製造用硬化促進剤>
ポリウレタン樹脂をバインダーとして用いる場合、硬化促進剤をポリウレタン樹脂の製造に用いることができる。このようなポリウレタン樹脂としては、ポリウレタンバインダーの硬化を促進するものであればいずれでもよく特に限定はない。
【0077】
好ましくは、アミン又はポリオールの少なくとも一方と、触媒を含有し、その使用量が前記ウレタンプレポリマー100質量部に対し、5〜50質量部である。又アミンとポリオールからなり、その当量比(アミン/ポリオール)が0/10を越え9/1以下であることが好ましく、アミン又はポリオールの少なくとも一方またはその混合物を主成分とすることが更に好ましい。9/1以下で反応が早く、可使時間を十分確保することができる。又他に触媒を必須とし、必要に応じて着色剤、可塑剤、溶剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、無機充填剤等を使用してもよい。触媒はその反応活性によりおのおの添加量の最適値が異なるが、目安として硬化促進剤100質量部中に0.01〜10質量部が好ましい。特に10質量部以下で反応が早すぎ、可使時間が短くなることを避けることができる。更に硬化促進剤に含まれる触媒が、鉛化合物を含むことが特に好ましい。又触媒として錫化合物を併用してもよい。
【0078】
<用途>
本発明のポリウレタン樹脂は、生分解性樹脂として、強靭でありながら、同時に弾性や柔軟性を備えているので、様々な用途に使用することができる。従って、本発明のポリウレタン樹脂は、ポリマーフィルムやポリマーシート、チューブ、ポリウレタンフォーム、繊維としての一般的加工により得られる用途の他に、例えば、短繊維、長繊維、不織布、多孔性基材、排便袋、ゴミ袋、土嚢、保温ケース、食品トレー、ラップフィルム、箸、スプーン、フォーク、コップ、スポンジ、ボトル、吸水シート、保湿シート、農業用マルチングフィルム、ディスクケース用基材、ポリマーステープル、カード基材、ブリスターパック、たばこ煙用フィルター、紙等のコーティング剤、ラミネート、涙道せき止め用ロッド、紙力剤、感熱紙や感圧紙用のマイクロカプセル、医薬用マイクロカプセル、徐放製剤、肥料や土壌改良剤用マイクロカプセル、縫合糸、縫合糸クリップ、注射筒、使い捨て衣料、外科用器具、複合半透膜、骨折等治療用支持体または骨接合材、移植用装具または移植片、釣り糸、魚網、疑似餌、骨壷、ネイルポリッシャー、浴用軽石、園芸用器材、防臭剤マイクロカプセル又は容器及び包装、芳香剤マイクロカプセル又は容器及び包装、ラベル用収縮フィルム、接着剤、ホットメルト接着剤、回収古紙収納容器、梱包用バンド、接着テープ、緩衝材、コイン包装用フィルム、塗装用マスキングフィルム、眼鏡フレーム等に使用することができる。このような用途に本発明のポリウレタン樹脂の有する分解性、特に、生分解性と樹脂としての優れた物性を活かして広く適用できる。
【0079】
本発明においては、特に脂肪族ヒドロキシカルボン酸とNBDIとの反応で得られる生分解性を有するポリウレタン樹脂は、その強靭さと透明性から、包装材料としてポリマーフィルム、ポリマーシート、ディスクケース基材、カード基材の材料として優れている。また、本発明のポリウレタン樹脂は、繊維にした場合のしなやかな質感のため服飾繊維や不織布としての利用に適している。
【0080】
ポリマーフィルムやポリマーシート、ディスクケース用基材或いはカード基材等の成形物を製造するにあたっては、その方法としては、例えば、溶液キャスト法、カレンダー法等が挙げられる。溶液キャスト法で行う場合は、溶媒として例えば、クロロホルム、塩化メチレン、ベンゼン、アセトニトリル、アセトン、トルエン、キシレン、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、1−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等を用いて溶液とした後、平滑な面上にキャストし、溶媒を除去することにより行われるが、使用される溶剤は特に限定されるものではない。
【0081】
また、溶融押し出し成形をする場合には、公知のTダイ法、インフレーション法等が適用される。押し出し温度は、製造する樹脂の種類によって溶融温度が異なるので特に限定されないが、通常100〜280℃の温度範囲である。成形温度が低いと、成形安定性が得難く、また過負荷に陥り易い。逆に成形温度が高いと、ポリマーが分解する場合があり、分子量低下、強度低下、着色等を起こすことがある。
【0082】
本発明に係るポリマーフィルムやポリマーシート等は、未延伸のものでも延伸されたものでもよいが、剛度、成形加工性、機械強度、硬さ、衝撃強度、寸法安定性、耐折り曲げ性等の向上の為には得られたフィルム又はシート等を一軸延伸又は二軸延伸することが好ましい。一軸延伸する場合には、縦方向又は横方向に通常1.1〜5倍延伸する。二軸延伸の場合は、一軸目の延伸と二軸目の延伸を逐次行っても、同時に行ってもよい。延伸温度は、用いるポリウレタン樹脂の構造・構成により異なる為、特に制限はないが、ポリマーのTg(ガラス転移温度)乃至(Tg+50℃)の範囲が好ましい。この温度範囲よりも高温になると、延伸による強度向上が認められない場合が有る。また、得られる成形物は成形後に、Tg以上融点未満の温度で熱処理を行ってもよい。熱処理時間は通常1秒〜30分間である。
【0083】
【発明の効果】
本発明に係るポリウレタン樹脂、ポリウレタンフォームは、生分解性を有するとともに、優れた機械物性を有し、原料となるポリオールの取り扱いが簡便である。このようなポリウレタン樹脂は、自然環境に放出された場合に従来技術に比較して安全である。
【0084】
【実施例】
以下に本願発明の実施例を示し、本発明の態様を明らかにするが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
<ポリオールの合成例原料>
ポリオールの合成に下記化合物を用いた。
・ε-カプロラクトン(ダイセル化学工業(株)製)
・メチル-α-D-グルコシド(ナカライテスク製)
・2-エチルヘキサン酸すず(II)(SnEht2、和光純薬工業(株)製)
・L-ラクチド(ピューラック社製)
(ε-カプロラクトンの蒸留)
ナシ形フラスコに、順にクライゼン形連結管、リービッヒ冷却管、三足蒸留分岐管、ナス形フラスコを連結し、また、三足蒸留分岐管は真空一定装置へと連結した。クライゼン管にはキャピラリー、温度計をセットした。
【0085】
あらかじめ120℃に設定したオイルバス中に未精製ε-カプロラクトンの入ったナシ形フラスコを沈め、ナシ形フラスコ内の圧力を徐々に11〜12mmHgへと減圧した。蒸気温度が一定となったところで、蒸気温度97〜102℃のものを本留分として回収した。本留分の入ったナス形フラスコに乾燥窒素を大量に吹き込んで窒素置換し密栓をして、使用するまで4℃の冷蔵庫内で保管した。
【0086】
(ポリオールの調製)
気乾状態のメチル-α-D-グルコシドを質量既知の200ml容四つ口フラスコに秤り取り、12時間以上60℃で真空乾燥し室温まで冷却後、絶乾メチル-α-D-グルコシドの質量を測定し、その絶乾質量に対して1〜20倍の質量の精製したε-カプロラクトン及び/あるいはL-ラクチドを秤り入れた。
【0087】
撹拌機を取り付け、あらかじめ150℃に設定しておいたオイルバス中に沈め、乾燥窒素気流下で30分間撹拌した。ただし、L-ラクチドを含むものは、L-ラクチドが粉体であるためL-ラクチドが溶解してから攪拌を開始した。その後、2-エチルヘキサン酸すず(II)を、メチル-α-D-グルコシドとε-カプロラクトン及び/あるいはL-ラクチドの合計質量に対して1/300の質量比で加え、150分反応させた。
【0088】
反応時間経過後、直ちにフラスコをオイルバスから引き上げて反応を停止させ、サンプル管にフラスコの内容物を移し、乾燥窒素を大量に吹き込んで窒素置換し、4℃の冷蔵庫内で保管した。
<水酸基価の同定方法>
実施例で製造したポリオールの水酸基価を下記の通り測定した。測定に用いた化合物は下記の通りである。
・無水フタル酸(特級、ナカライテスク製)
・イミダゾール(特級、ナカライテスク製)
・1規定水酸化ナトリウム水溶液(容量分析用、ナカライテスク製)
・1,4-ジオキサン(特級、ナカライテスク製)
(水酸基価の測定)
実施例から得られたポリオールを用いて、ポリウレタン発泡体を調製する際に用いるイソシアネート質量を算出するため、水酸基価の測定を行った。測定方法は、以下の通りである。
【0089】
ビーカーに得られたポリオール約1gを精秤し、フタル化剤25mlを正確に加えた。フタル化剤は、無水フタル酸150gを1,4-ジオキサン1000mlに十分溶解させた後、イミダゾール24.2gを加えて溶解させたものを用いた。
ガラス製沸騰石を2個程度入れラップで中央がくぼむようにしてふたをし、110〜130℃のホットプレート上において、沸騰を開始してからさらに20分間煮沸させてフタル化反応を行った。その後、水浴中で室温まで冷却してから、1,4-ジオキサン50ml、脱イオン水25mlを加えてよく撹拌した。
【0090】
内容物が完全に溶解したところで、京都電子工業(株)製、電位差自動滴定装置AT−510を用いて1規定水酸化ナトリウム水溶液をビュレットから滴下し、pHメーターによるpH8.5〜12の変曲点で終点判断する滴定を行った。また、フタル化剤のみを煮沸したブランクの滴定も併せて行い、以下の計算式にしたがって水酸基価を求めた。なお、測定は1つのサンプルにつき2回ずつ行い、その平均値をデータとして用いた。
【0091】
【数1】
【0092】
<分子量分布の同定例>
実施例から得られたポリオールを用いて、以下の手順でゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による分子量分布の測定を行った。
0.05gの資料を秤り取り、溶媒としてテトラヒドロフランを10ml加えて試料が溶解するまで静置し、東ソー(株)製ゲルパーミエーションクロマトグラフHLC8020を用いて、分子量分布の測定を行った。なお、測定条件は以下のとおりである。
・カラム:TSKgel G2000HHR及びTSKgel G1000HHRを二本連結して使用。
(カラムサイズ:7.8mmID×300mm;排除限界:TSKgel G2000HHR:1×104、TSKgel G1000HHR:1×103)
・流速:1ml/min
・移動相:テトラヒドロフラン[安定剤含有](液体クロマトグラフィー用)
・試料濃度:0.5%(W/V)
・試料注入量:100μl
・カラム温度:40℃
・検出器:RI
・標準較正試料:ポリエチレングリコール
<示差走査熱量計(DSC)による熱分析例>
DSC測定は、セイコー電子工業(株)製、DSC6200/EXSTAR6000を使用した。図1のプログラムにしたがって、昇温にともなう吸発熱を測定した。測定条件は以下の通りである。ガラス転移温度(Tg)は、DSCサーモグラムのベースラインシフトの中間点、融点(Tm)は、吸熱および発熱ピークの頂点の温度とした。
【0093】
試料質量:約10mg パン:アルミニウム密閉パン
雰囲気ガス:窒素 ガス流量:40ml/min
【0094】
【実施例1】
200ml容の四つ口フラスコに60℃で12時間以上真空乾燥させたメチル-α-D-グルコシド(MG)42.03g、及びε-カプロラクトン(CL)84.10gを仕込み、150℃に設定したオイルバスにつけ、30分間、150rpmで攪拌した。その後、2-エチルヘキサン酸すず(II)を0.500g加え、150分間150℃、150rpmで反応を行い、ポリオールを調製した。このポリオールの水酸基価は409.93mgKOH/gであり、数平均分子量は404、質量平均分子量は523であった。
【0095】
【実施例2】
気乾状態のメチル-α-D-グルコシドを200ml容の四つ口フラスコに20.17g秤り取り、12時間60℃で真空乾燥を行った。これを室温まで冷却して、絶乾質量を量ったところ20.15gであった。この絶乾メチル-α-D-グルコシドに、精製したε-カプロラクトンを80.63g加え、150℃に設定したオイルバス中、150rpmで30分間攪拌した。その後、2-エチルヘキサン酸すず(II)を0.375g加え、150分間150℃、150rpmで反応を行い、ポリオールを調製した。このポリオールの水酸基価は234.83mgKOH/gであり、数平均分子量は353、質量平均分子量は767であった。
【0096】
<ポリオール調製時の経過観察/MG−CL>
メチル-α-D-グルコシドの水酸基を開始点として、ε-カプロラクトンを単一で開環重合させたポリオール調製時の場合の反応経過は以下のようであった。
メチル-α-D-グルコシド/ε-カプロラクトンの液比が1/2より大きい場合は、反応前の攪拌の段階でメチル-α-D-グルコシドがε-カプロラクトンに溶解した。触媒を加えると液比1/2の場合もメチル-α-D-グルコシドがε-カプロラクトンに溶解し、すべての反応物が琥珀色に呈色した。反応が進むにしたがって、液比が高い場合は、やや白濁してきた。反応後は、液比が1/1から1/3の場合は、常温で琥珀色の液体のままであったが、他のものは白濁して固化した。特に、液比が5以上の場合は、非常に凝固性が高かった。しかし、系の温度を60℃以上に昇温した場合、液状化した。
【0097】
<分子量特性/MG−CL>
メチル-α-D-グルコシドの水酸基を開始点として、ε-カプロラクトンを単一で開環重合させたポリオールの分子量特性を以下に示した。
GPC測定によって得られた重量平均分子量(Mw)を表1に示す。
【0098】
【表1】
【0099】
ε-カプロラクトン/メチル-α-D-グルコシドの比率、すなわち、液比が大きくなるにつれて分子量が大きくなることが明らかとなった。それらに対応した分子量分布曲線を横軸に保持時間をとった形で図2〜4に示した。
曲線のプロフィールから、ε-カプロラクトンの比率が大きくなるにつれ、個々に分離されていた低分子量物のピークが消失し、単一のピークに近づいていくということが示された。
【0100】
すなわち、メチル-α-D-グルコシド/ε-カプロラクトンの液比が1/2と小さく、メチル-α-D-グルコシドに導入された鎖の長さも平均値として小さい場合、クロマトグラムに微細なピーク集団が認められた。これは、低分子量物の場合、メチル-α-D-グルコシドに導入されるε-カプロラクトンの数が、1つ違うだけでも分子の慣性半径サイズに与えられる影響が大きく、それぞれがはっきりと分離されたピークとして示されたものと言える。メチル-α-D-グルコシド/ε-カプロラクトンの液比が1/5(図3)、さらには、1/20(図4)と大きくなるにつれ、得られるポリオールは高分子量化するため、導入されるε-カプロラクトンモノマー数の増減に対して、分子の慣性半径の違いが僅少となる。従って、いくら理論段数の高いカラムを用いたとしてもGPCのカーブとして個々に分離しきれなくなる。結果として、クロマトグラム上で分離されて現れていた低分子量区分が消失して行き、シングルピークに近付いて行く、ということが、図2〜4の比較からわかる。
【0101】
なお、上記の議論は、ここで行った開環重合は、メチル-α-D-グルコシドの水酸基と2-エチルヘキサン酸すず(II)の両者が、触媒系を形成して進むものであり、反応系に水が存在しない場合、選択的にメチル-α-D-グルコシドの水酸基を起点とした開環重合のみが進行し、ホモポリマーを生じない、という前提で行ったものである。
【0102】
<熱的特性/MG−CL>
メチル-α-D-グルコシドの水酸基を開始点として、ε-カプロラクトンを単一で開環重合させたポリオールの熱的特性を以下に示した。
図5にMGにCLのみを重合させたポリオールのDSC測定結果を示した。また、表1にこれらのTgおよびTmを示した。これらの結果から、メチル-α-D-グルコシド/ε-カプロラクトンの液比が1/2、1/5の場合と1/10、1/15、1/20の場合とでは、熱的な性質が大きく異なることが理解できる。液比が1/2の場合は、Tgは観測できるものの、結晶状態であることを示す融解ピークは見られない。液比が1/5の場合においてもほとんど融解ピークは認められない。
【0103】
一方、液比が1/10を越えると45℃から50℃あたりに2つの融解ピークが見られた。融解ピークの温度は、液比の増加とともに上昇し、また液比が高くなるにしたがって2つのピークのうち、温度の低いものが見られなくなった。一方、Tgはだんだん低くなっていった。これらのうち、融解ピークはCLの溶融に対応していることが確認できる。これらの結果から、液比が1/2および1/5のも場合は、MGに導入されるCL鎖長が短く、その凝集結晶化は起こらず、これらに由来する融解ピークが現れないものと言える。
【0104】
一方、液比が1/10以上のものは導入CL鎖長が充分大きく、結晶化が起こると言える。この考えは、液比が高くなるとTgやTmがポリカプロラクトン(PCL)(Tg:−60℃付近、Tm:60℃付近)に近づいていくことからも理解できる。
融解ピークが2つ現れたことについては、以下のように考えた。GPCの測定結果からは、液比が1/10以上になると分子量分布をもったほぼ単一のピークが現れた。したがって、分子量に幅のある集合体が生成していると言える。一方、溶融ピークが2つ現れる事から、2通りの異なる結晶構造が生成物の中に存在すると考えられる。しかも、低温側のピークは液比がより大きくなると弱くなり、液比1/20ではショルダーとなることから、導入鎖が長くなると低温側のピークをもたらす区分が相対的に少量になると言える。それが低温側であることから、凝集状態が他者に比べて緩んだ結晶区分の溶融に基づくものと考えられる。こう考えると、導入されるCL鎖のうちMGに近接して存在している区分は、MGにより離れて存在している区分に比べ、結晶化が妨げられた状態になっていること、その量は、当然、導入鎖長が長くなる程、相対的に少なくなりピークとして弱く現れるものと推察できる。
【0105】
【実施例3】
200ml容の四つ口フラスコに60℃で12時間以上真空乾燥させたメチル-α-D-グルコシド20.56g、及びL-ラクチド(LACD)102.56gを仕込み、150℃に設定したオイルバスに30分間つけてL-ラクチドを溶解させた。その後、2-エチルヘキサン酸すず(II)を0.489g加え、150分間150℃、150rpmで反応を行い、ポリオールを調製した。このポリオールの水酸基価は未測定ながら、数平均分子量は480、質量平均分子量は798であった。
【0106】
<ポリオール調製時の経過観察/MG−LACD>
メチル-α-D-グルコシドの水酸基を開始点として、L-ラクチドを単一で開環重合させたポリオール調製時の場合の反応経過は以下のようであった。
メチル-α-D-グルコシド/L-ラクチドの液比が1/2の場合と1/5の場合について示した。触媒添加前は、150℃加温下でもメチル-α-D-グルコシドはL-ラクチドに完全に溶解していなかったが、触媒添加後、溶液が琥珀色になるにつれて溶解した。どちらの液比の場合も反応中の粘度上昇は大きく、反応後、生成物は常温では琥珀色のまま固まった。しかし、系の温度を60℃以上に昇温した場合、液状化した。
【0107】
<分子量特性/MG−LACD>
メチル-α-D-グルコシドの水酸基を開始点として、L-ラクチドを単一で開環重合させたポリオールの分子量特性を以下に示した。
MGの水酸基へLACDのみを開環重合させた生成物についての分子量分布を図6と図7に示した。
【0108】
この図には、メチル-α-D-グルコシド/L-ラクチドの液比が1/2のものと1/5のものが示されているが、この2種からだけでも液比が上がると、前出のMGとCLの反応同様、分子量分布は単一のピークに近づいていくことが認められ、それらの場合と同様な考察ができる。MGとCLのみの場合と比較するとピークの***の液比依存性がよりシャープであると言える。液比の増加と共に、単一ピーク化が急激に進む。この結果はLACDを用いた場合の方が、反応が進みやすいことを示しており、モノマー種以外CLの場合と同一の反応条件をとった場合でも、より分離し難い慣性半径サイズが近接している分子種を生じているものと考えられる。
【0109】
【実施例4】
200ml容の四つ口フラスコに60℃で12時間以上真空乾燥させたメチル-α-D-グルコシド20.46g、L-ラクチド25.25g、及びε-カプロラクトン77.69gを仕込み、150℃に設定したオイルバス中、150rpmで30分間攪拌した。その後、2-エチルヘキサン酸すず(II)を0.49g加え、150分間150℃、150rpmで反応を行い、ポリオールを調製した。このポリオールの水酸基価は224.06mgKOH/gであり、数平均分子量は257、質量平均分子量は888であった。
【0110】
<ポリオール調製時の経過観察/MG−CL/LACD>
メチル-α-D-グルコシドの水酸基を開始点として、ε-カプロラクトン及びL-ラクチド混合物を開環共重合させたポリオール調製時の場合の反応経過は以下のようであった。
これらの場合も、メチル-α-D-グルコシド/(ε-カプロラクトン及びL-ラクチド混合物)の液比が1/2の場合と1/5の場合を示した。なお、ε-カプロラクトンとL-ラクチドの比率は、モル比で50:50、70:30、及び80:20の例について記述した。これらはメチル-α-D-グルコシドにL-ラクチドをグラフト重合させたものと同様に、反応中に琥珀色に呈色した。常温まで冷却したところ、ε-カプロラクトンとL-ラクチドのモル比率が50:50の場合は、液比が1/2の場合及び1/5の場合ともに固化したが、ε-カプロラクトンとL-ラクチドのモル比率が70:30、80:20の場合は、液状になった。特に、ε-カプロラクトンとL-ラクチドのモル比率が80:20の場合は、前述の実施例の中で最も粘度が低いものとなった。
【0111】
さらにL-ラクチドの割合が高くなると、粘度が上昇し、常温で固化が認められるようになる。つまり、ε-カプロラクトンとL-ラクチドのモル比率が70:30、80:20の場合は、調製したポリオールが低粘度で、室温で他の試薬との適切な混合が可能であり、フォーム調製用ポリオールとして好適で有ると言える。
【0112】
<分子量特性/MG−CL/LACD>
メチル-α-D-グルコシドの水酸基を開始点として、ε-カプロラクトン及びL-ラクチド混合物を開環共重合させたポリオールの分子量特性を以下に示した。
MGとCL/LACD混合物との質量比が1/5の場合、生成物の分子量分布のプロフィールを図8に示した。
【0113】
液比が充分大きいため、この系においてもMGとCLあるいはLACDを単独で用いた場合とほぼ同様に、そのプロフィールは単一のピークとして現れている。LACD及びCLのモノマーのピークは小さいので、これらはともに反応によってほとんど消費されていると考えられる。これまでの場合と同様に、MGとCL/LACD混合物との液比が1/5のため、MGの水酸基を開始点として重合するCL/LACDコポリマーの鎖長は充分大きく、形態は多様化しているが、慣性半径サイズが近接しているため区別し難くなった生成物がまとまって単一ピーク状に出ているものと言える。
【0114】
<熱的特性/MG−LACD又はMG−CL/LACD>
メチル-α-D-グルコシドの水酸基を開始点として、L−ラクチドを単一で開環重合させたポリオールまたは、ε-カプロラクトン及びL-ラクチド混合物を開環共重合させたポリオールの熱的特性を以下に示した。
図9にMG−LACDポリオールについてのDSC測定結果を示した。今回は、First Heatingのデータがないため、これだけのデータで詳しく述べることは難しい。ポリラクチド(PLA)のTgが約65℃であり、融点が約172℃であることを考え合わせると、LACDのMGへの導入量が少ないため、融解ピークは現れず、Tgも50℃以下と、低温側に現れている。
【0115】
図10は、すべて液比が1/5である場合のDSC測定結果を比較したものであり、導入鎖構成モノマーの異なるものが比較されている。CLとLACDが共重合している場合は、仕込みのCL/LACDモル比率が50/50の結果である。図10からは、この共重合系のTgがCL鎖のみが導入された生成物とLACDのみが導入された生成物、それぞれのTgのちょうど中間値となっていることが確認できた。
【0116】
<NMR測定結果からの分子構造解析例>
図4に示したGPCチャート上に現れるピークがほぼ単一であったMG/CL比が1/20の条件で調製された生成物をNMR測定に供し、得られたNMRスペクトルを図11に、帰属表を表2に示した。
CL由来の1Hのピークは大きく現れており、MG由来のピークは小さく現れている。ここからも液比1/20で調製した生成物はCL鎖が大変リッチに導入されていることが確認できる。
【0117】
【表2】
【0118】
<ポリウレタン発泡体の調製>
発泡体を調製するために必要な配合物としては、メチル-α-D-グルコシドの水酸基を開始点とした各種開環重合ポリオール組成物(MG−CL、MG−LACD、MG−CL/LACDを総じてROP−MGと表記する)と、ポリイソシアネートのほか、酸性の各ROP−MGを中和するための水酸化ナトリウム、−NCOと反応して二酸化炭素を排出する発泡剤としての水、発泡及びウレタン/ウレア結合反応を促進するための発泡触媒、各成分間の混合性と泡の安定化を促す整泡剤などがある。これらのうち、ポリイソシアネートの使用量は、系中の水の量とROP−MG中の水酸基含有量から化学量論的に算出した。ポリイソシアネートの使用量を決定する式を以下に示した。
【0119】
【数2】
【0120】
ここで、Wwaterは加えた水の質量であり、Xpolは、加えたポリオールの質量、OHvpol はポリオールの水酸基価、E%は、所望の[NCO]/[OH]当量比%、NCO%は、用いるポリイソシアネート類のNCO%であり、適用するポリイソシアネート類の必要量をYNCOとして算出した。なお、実際にポリウレタンフォームを調製する際には、ポリイソシアネート同士が自己付加することも考慮に入れ、−OH基と等量の−NCO基より多くの−NCO基を含むポリイソシアネート類を加えて反応させた。本実施例では、E%を110%として、10%過剰の−NCO基を所望の[NCO]/[OH]当量比%とした。このE%を通常慣用的にイソシアネートインデックスという。つまり、イソシアネートインデックス110で発泡体を調製したことになる。
【0121】
<発泡操作例>
・蒸留水(発泡剤として作用する)
・ジブチルチンジラウレート(DBTDL)(反応触媒)
・テトラメチルヘキサメチレンジアミン(TMHDA)(反応触媒)
・整泡剤(SH−193、X−20−1328)
・ポリメリックジフェニルメタンジイソシアネート M−200(MDI)
(三井武田ケミカル(株)製)
調製したメチル−α−D−グルコシド(MG)由来のポリオールを紙製カップに所定量はかり取り、それに所定量の蒸留水、発泡触媒、整泡剤を加え、薬さじを用いてよく混ぜ合わせた。その後、所定量のMDIをすばやく秤り取って加え、15秒間、約15000rpmで撹拌した。
【0122】
撹拌後、この混合物を200×200×200(mm)の上部が開いている木箱に入れ、その後静置してオープンモールドフォームを得た。ライズタイム(撹拌の開始から発泡の停止までの時間)を測定した。調製した発泡体の圧縮試験をJIS規格(K7220)に従って測定した。試験に用いた発泡体は50×50×50(mm)の立方体とし、ロードセルの圧縮速度は5(mm/min)とした。本実施例では、発泡体の圧縮強度、または10%変形時応力、および弾性率を測定した。
【0123】
また、生分解性試験に供する発泡体を得るため、上記の手順と同様の操作を行い、攪拌後すばやく約75×160×80(mm)の蓋のついた型に入れ、上部から圧力をかけて24時間放置してクローズドモールドフォームを得た。これを20×20×20(mm)の大きさに切り出して、生分解性試験の試料とした。なお、発泡体調製時の添加物組成について、MDIの量についてはの前述の(1)式から算出し、触媒や整泡剤、蒸留水の量については実際に発泡を試みながら調節した。
【0124】
【実施例5】
MG−CL(比1/4)ポリオール60gに触媒TMHDA0.72g、蒸留水3.60g、整泡剤X−20−1328を2.40g加え、薬さじを用いてよく混ぜ合わせた。これらにMDIを175gすばやく加え、15秒間、約15000rpmで攪拌した。これをすばやく200×200×200(mm)の上部が開いた木箱に入れフリー発泡させた。このポリウレタンフォームの密度は56.85kg/m3、圧縮強度は244.6kPa(⊥)、109.6kPa(//)、弾性率は5011kPa(⊥)、2753kPa(//)であった。
【0125】
【実施例6】
MG−CL(比1/2)ポリオール70gに触媒TMHDA0.50g、蒸留水4.20g、整泡剤−20−1328を2.80g加え、薬さじを用いてよく混ぜ合わせた。これらにMDIを133.2gすばやく加え、15秒間、約15000rpmで攪拌した。これをすばやく200×200×200(mm)の上部が開いた木箱に入れフリー発泡させた。このポリウレタンフォームの密度は29.06kg/m3、圧縮強度は159.7kPa(⊥)、92.84kPa(//)、弾性率は7583kPa(⊥)、1592kPa(//)であった。
【0126】
【実施例7】
MG−CL/LACD(比1/5(CL/LACD=75.5/24.5))ポリオール61gに触媒TMHDA0.70g、蒸留水2.95g、整泡剤−20−1328を3.45g加え、薬さじを用いてよく混ぜ合わせた。これらにMDIを96.0gすばやく加え、15秒間、約15000rpmで攪拌した。これをすばやく200×200×200(mm)の上部が開いた木箱に入れフリー発泡させた。このポリウレタンフォームの密度は36.66kg/m3、圧縮強度は267.5kPa(⊥)、108.6kPa(//)、弾性率は11200kPa(⊥)、2222kPa(//)であった。
【0127】
<土中埋設試験例>
得られた発泡体(クローズドモールドフォーム)から約20×20×20(mm)の立方体試料を3つずつ得た。また、対照試料としてポリカプロラクトン(PCL)、ポリプロピレン(PP)の熱圧成形シートから長さ約80mm、幅約5mm、厚さ約0.4mmの短冊状の試片を3本ずつ切り出した。これらを温度20℃、相対湿度60%の恒温恒湿室内で48時間以上調湿した後、試料の幅、高さ、奥行きおよび質量を測定した。
【0128】
図12に示すように、上述のようにして調製した試片のうち、発泡体は土中に等間隔になるように並べ、また、PCLとPPのシートはポリエチレン製ネット(40mesh)で作製した皿の上に等間隔になるように並べ、41cm×32cm×14cmのポリプロピレン製バット中の土壌(見かけの体積配合比;培養土:腐葉土:バーミキュライト=8:1:1)に、試料の下部が深さ4cmのところにくるように埋設した。
【0129】
このようにして調製した生分解性試験槽を、土壌の含水率を50%に調節し、温度30℃、相対湿度80%に調整された(株)日本医科器械製作所製恒温恒湿室NK式LP−IH中に静置した。この試験槽に、1週間ごとに含水率が50%になるように、土壌に水道水を散布して、所定期間試験を行った。試験期間終了後、土中より掘り出し、水道水で洗浄し、さらに蒸留水で洗浄して恒温恒湿室にて48時間以上調湿後、質量を測定し、他の試験に供した。
【0130】
MG−CLポリオールのMG/CL比を様々変化させ、実施例8を参照に、得られたクローズドフォームを用いて土中埋設試験を行った。現在、試料を埋設してから半年近くが経過している。本願で開示できるのは3ヶ月経過時に土中より掘り出したものまでである。1〜3ヶ月間土中に埋設していたものと埋設していないものを比較すると、外見上は特に変わっているようには見受けられない。
【0131】
表3に埋設した試料の質量減少を示したが、PCLを除き、質量が増加している。
これは、以下のように考えられる。PCLは環境中で易分解性であるとされており、1ヶ月の段階で少しではあるが分解が始まっており、3ヶ月目ぐらいから生分解が加速していると思われる。ただし、それは外見では判断できない程度の軽微なものである。
【0132】
一方、他のものは質量が増加している。このうち、PPについては非常にわずかな差であり、誤差もしくは汚れが取りきれていないということが考えられる。3種の発泡体はすべて質量が増加しているが、これは土中埋設の際についた汚れが取りきれていないということと、発泡体を分解する微生物が付着したことによるものであるということの2通りの可能性が考えられる。今後掘り出される試験体の観察を続けることにより判断できるであろう。また、微生物がフォーム表面に付着しているならば、走査型電子顕微鏡(SEM)を使うことによってフォーム表面の構造の変化として観察が可能であろう。
【0133】
<吸水試験例>
調製した発泡体の吸水試験を以下の要領で行った。約20×20×20(mm)の気乾状態のポリウレタンフォームを3つずつ取り出し、これらの質量(W1)を測定し、これを60℃に設定した送風乾燥器中で24時間乾燥させた。乾燥後のフォームの質量(W2)を測定し、これを2000ml容のビーカーに重りをつけて沈めた。沈めてから24時間後、フォームを取り出し、表面の水分を軽くふき取って、質量(W3)を測定した。さらに、これを60℃に設定した送風乾燥器で24時間乾燥させ、質量(W4)を測定した。これら結果から次式を用いて吸水率、および水への溶出率を決定した。
【0134】
【数3】
【0135】
ポリウレタンフォームはその用途に応じて、要求される吸水性に違いがある。そこで、調製したポリオールの吸水性を測定した。また、同時に水への溶出量も測定した。その結果も表3に示した。調製されたフォームは水をはじき、ほとんど吸水性がないように見えたにもかかわらず、吸水率は見た目の印象以上に大きな値となった。
【0136】
一方、溶出成分は僅少である。ポリオールが低分子であり、未反応のものは水中へ溶出することが考えられたが、この結果から未反応のポリオールはほとんどなく、大部分がイソシアネートと結合していると思われる。なお、MG/CL液比が1/20で調製されたポリオールを用いた発泡体が、溶出率が一番高いという結果は、フォーム調製の際、収縮が起こりがちであるという事実からも理解できるものである。収縮が起こるのは、フォームのセルの形成が不十分である、すなわち、未反応物の存在を示唆している。それらが溶出してきたということは十分考えられる。この場合、フォーム調製時の条件を工夫することにより、より高反応率の発泡体を調製でき、溶出成分をより少なくすることができる。
【0137】
【表3】
【0138】
<閉鎖系酸素消費量の測定例>
OECD302Cに準じて、基礎培養液に試料濃度30ppm(W/V)、標準活性汚泥100ppm(W/V)[9.55×107cells/mL]を添加し、pH7.0となるように活性汚泥懸濁液を調製した。それを用いて、25℃での生物化学的酸素要求量を104日間に渡って測定した。試料が完全に酸化されるのに必要な理論酸素消費量に対する実測の酸素消費量の割合により、生分解度を決定し、生分解性を評価した。
【0139】
土中埋設試験を行った試料のうち、MG/CL=1/2と1/5のポリオールを用いた発泡体については、閉鎖系酸素消費量の測定も行った。
試験期間104日間での分解度は、それぞれ41.4%、15.6%であった(表4、図13)。試料は、いずれの場合も疎水性が強く、試験開始後数日間は液面にサンプルが浮いた状態であった。装置の都合上、104日間で試験を打ち切ったが、MG/CL=1/2を用いた発泡体試料は、引き続いての分解度の上昇が見こまれる。対応する規格JIS K6950では、プラトーに達するまで最大180日間の試験期間が許され、その時までに60%の分解度を示した場合、生分解性材料として有効であるとされている。
【0140】
その意味では、MG/CL=1/2を用いた発泡体試料は、3次元硬化プラスチックであるにもかかわらず、ある程度の生分解性に達しており、興味深い。
なお、本実施例の結果から、用いたポリオールの平均分子量が大きいほど、すなわち、MGに導入されたCLの割合が高いほど、生分解度は小さくなると推察される。これは、PCL鎖の凝集構造が強まるため、微生物の攻撃が行われがたくなるためであると考えられる。
【0141】
その意味では、例えば、CL/LACDランダム共重合体鎖をMGに導入することで凝集構造の形成を抑制する事ができ、より高い生分解度をもつフォームを調製することは充分期待できる。事実、ポリオール段階において、CL単独でのMGの導入ではポリオールがMG/CL比1/5においては、室温において固化してしまったが、共重合体の導入により室温で固化せず、低粘度のものが得られている。
【0142】
【表4】
【0143】
<ポリウレタンフォームの機械物性>
本発明の実施例5、6において、得られたポリウレタンフォームはMGにCLのみを重合させたポリオール、およびMGにCLとLACDをランダム共重合させたポリオールから得られた2つの系のポリウレタンフォームである。
MGにLACD鎖だけを導入したものは、常温で固化してしまっており、昇温した場合、減粘化されたが、容易な条件下では、発泡体の調製が困難であった。このことはMGとLACDからなるポリオールのTgが50℃付近と高いことによっても理解できる。
【0144】
ポリオールを調製する際のMDIの量は計算で求め、水の量は物性に大きな影響を与えるものであるが、本願実施例では、ポリオール質量の6%とした。しかし、触媒の濃度によって反応速度が大きく変化し、これが物性にも大きな影響を与えている。
本願実施例に示した発泡体の調製方法では、ライズタイムが早いもので40秒程度、遅いものでは130秒程度となったため、同様な処方でも物性に大きな差が出たと考えられる。特にCL鎖のみを導入したポリオールから調製したポリウレタンフォームのうちいくつかは物性試験をするための調湿期間に大きく収縮してしまった。従って、圧縮試験に供することができなかった。圧縮試験が可能であった発泡体の試験結果を以下の表5に示した。
【0145】
【表5】
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は示差走査熱量計による吸発熱を示す概略図である。
【図2】 図2はグラフト化されたメチルグルコースのGPCクロマトグラムを示す。
【図3】 図3はグラフト化されたメチルグルコースのGPCクロマトグラムを示す。
【図4】 図4はグラフト化されたメチルグルコースのGPCクロマトグラムを示す。
【図5】 図5はグラフト化されたメチルグルコースのDSCサーモグラムを示す。
【図6】 図6はグラフト化されたメチルグルコースのGPCクロマトグラムを示す。
【図7】 図7はグラフト化されたメチルグルコースのGPCクロマトグラムを示す。
【図8】 図8はグラフト化されたメチルグルコースのGPCクロマトグラムを示す。
【図9】 図9はグラフト化されたメチルグルコースのDSCサーモグラムを示す。
【図10】 図10はグラフト化されたメチルグルコースのDSCサーモグラムを示す。
【図11】 図11はグラフト化されたメチルグルコースの1H−NMR測定チャートを示す。
【図12】 図12は土中埋設生分解性試験装置の概略図である。
【図13】 図13はポリウレタンフォームの生分解性特性を示す図である。
Claims (7)
- 前記R2〜R4及びR6のうち少なくとも1種が該置換基中にラクチド類由来の繰り返し単位並びにラクトン類由来の繰り返し単位を含有することを特徴とする請求項1に記載のポリオール。
- ラクチド類から選ばれる少なくとも1種の化合物とラクトン類から選ばれる少なくとも1種の化合物とを、前記式(1a)および/または(2a)で表されるアルキルグルコシド存在下、開環重合して得られることを特徴とする請求項3に記載のポリオール。
- ラクチド類の化合物、またはラクチド類およびラクトン類の化合物をアルキルグルコシド存在下、開環重合して製造することを特徴とするポリオールの製造方法。
- 請求項1〜4のいずれかに記載のポリオールと、ポリイソシアネートとを反応させて得られることを特徴とするポリウレタン樹脂。
- 請求項1〜4のいずれかに記載のポリオールと、ポリイソシアネートとを反応、発泡させて得られることを特徴とするポリウレタン発泡体。
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