JP4048567B2 - 長鎖カルボン酸乳酸エステル塩水溶液 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、安定な長鎖カルボン酸乳酸エステル塩水溶液及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
長鎖カルボン酸乳酸エステル塩は陰イオン性界面活性剤であり、食品や化粧品の乳化剤、洗浄剤を構成する界面活性剤などの用途に有用であることが知られている(米国特許第2,733,252号、特開昭64−6237号公報、特開平4−23900号公報参照)。長鎖カルボン酸乳酸エステル塩は他の乳化剤と比べて水溶液にした際に中性領域のpHで優れた界面活性能を示すという特徴があり、皮膚への刺激が低いことが要求される洗顔料用や、パン生地等の穀類粉の焼成食品用の乳化剤として使用されてきている。
【0003】
従来、長鎖カルボン酸乳酸エステル塩は、長鎖カルボン酸又は長鎖カルボン酸クロライド等の反応性誘導体と乳酸又は乳酸塩とを反応させて長鎖カルボン酸乳酸エステルを生成し、これと塩基性物質とを反応させ、反応混合物をそのまま水溶液等にし、乳化剤等の用途に供していた。これは、長鎖カルボン酸乳酸エステル塩の精製法として工業的に適用しうる方法が知られておらず、また長鎖カルボン酸乳酸エステル塩に及ぼす共存物の影響が十分に解明されていなかったため、精製品を用いようとする動機に乏しかったことによる。
【0004】
しかしながら、このような反応混合物の水溶液は水溶液のクラフト点が上昇するという問題があった。クラフト点は界面活性剤の界面活性能を左右する要因であり、クラフト点未満の温度では起泡力、乳化力などの界面活性能が充分に発揮されないのでクラフト点の上昇はつまり界面活性能の低下につながっている。さらにこのような水溶液は室温以上の比較的高温条件において長期間保存された場合に、水溶液の透明性が低下するばかりでなく、沈澱が生成して水溶液が不均一状態を呈するという問題があった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、クラフト点が比較的低く、かつ室温以上の温度における保存安定性に優れた長鎖カルボン酸乳酸エステル塩の水溶液及び該長鎖カルボン酸乳酸エステル塩の水溶液の製造方法を提供することにある。
【0006】
【発明を解決するための手段】
本発明は、上記目的を達成するためになされたものであり、その要旨は、純度80モル%以上の長鎖カルボン酸乳酸エステル塩を含有する長鎖カルボン酸乳酸エステル塩水溶液に存する。
以下、本発明につき詳細に説明する。
本発明における水溶液として供される長鎖カルボン酸乳酸エステル塩は長鎖カルボン酸乳酸エステルと塩基性物質とを反応させて得られるものであり、長鎖カルボン酸乳酸エステルとしては、下記に示す長鎖カルボン酸又は長鎖カルボン酸クロライド等の反応性誘導体と乳酸又は乳酸塩とを反応させることにより得られる。長鎖カルボン酸としては、炭素数8〜24、好ましくは10〜22のものが用いられる。長鎖カルボン酸は飽和でも不飽和でもよく、また直鎖状でも分岐鎖状でもよい。分岐鎖状の場合には、最長鎖の長さが炭素数8以上であるのが好ましい。また場合によっては水酸基を有するヒドロキシカルボン酸でもよい。これらの長鎖カルボン酸としては、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキン酸、ベヘン酸、オレイン酸、エルカ酸、エライジン酸、リシノレイン酸、2−ブチルオクタン酸、2−ヘキシルデカン酸、2−ヘキシルウンデカン酸、2−オクチルデカン酸、2−デシルテトラデカン酸、10−ヒドロキシオクタデカン酸、2−ヒドロキシデカン酸等があげられる。なかでもラウリン酸、ステアリン酸、カプリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、オレイン酸等が好ましい。これらの長鎖カルボン酸は任意の割合からなる2種以上の混合物として用いることもできる。しかし、純度80モル%以上の長鎖カルボン酸乳酸エステルを得るためには純度が70%以上、好ましくは80%以上、特に好ましくは95%以上の長鎖カルボン酸を用いる(本明細書において長鎖カルボン酸の純度とは、長鎖カルボン酸中において1種類の脂肪酸の占める重量%を意味する)。長鎖カルボン酸の純度が高いと、長鎖カルボン酸乳酸エステルの製造行程中の晶析行程が良好となる。
【0007】
乳酸としては、発酵法又は合成法のいずれで製造されたものでもよいが、純度のよい合成法によるもの(DL体)が好ましい。周知の如く、乳酸水溶液は濃縮すると乳酸が重合してポリ乳酸を生ずる。しかしポリ乳酸を含まない稀薄な乳酸水溶液を用いたのでは、無水状態にあるべき反応系に多量の水が持込まれることになり好ましくない。従って通常は若干のポリ乳酸を含む濃度85%程度の乳酸を用いるのが好ましい。
【0008】
乳酸と長鎖カルボン酸との仕込み比率は1:1(モル比)でもよいが、長鎖カルボン酸の反応率を高くするため、乳酸を過剰、たとえば1:1.2〜3.0(モル比)に仕込むのが好ましい。
反応は溶媒の存在下でも非存在下でも行なうことができる。溶媒を用いる場合には、反応原料及び生成物の双方に対して溶解性のあるピリジン等の塩基性溶媒を用いるのが好ましい。
【0009】
溶媒を用いない場合には、アルカリ金属の水酸化物や炭酸塩を触媒として、乳酸と長鎖カルボン酸とを長鎖カルボン酸の溶融状態で反応させる。
純度80モル%以上の長鎖カルボン酸乳酸エステルを得るには、反応混合物をpH5.0以下で水性溶媒と有機溶媒とで液液抽出して、長鎖カルボン酸乳酸エステルに富む有機溶媒相と乳酸に富む水性溶媒相とを生成させて両相を分離し、次いでこの有機溶媒相の長鎖カルボン酸乳酸エステルを共存する長鎖カルボン酸から晶析により分離することにより、あるいは、反応混合物にpHが3.0より低くなるまで酸水溶液を添加して長鎖カルボン酸乳酸エステルを油状物として析出させ、この油状物を分取して有機溶媒に溶解して溶液とし、この溶液から長鎖カルボン酸乳酸エステルを晶出させる方法によるのが好ましい。
【0010】
上述の反応混合物のpHを低くするために酸水溶液を添加する際、酸としては通常、塩酸又は硫酸を用いる。これにより反応混合物中のポリ乳酸が乳酸に分解する。なお反応に溶媒を用いた場合には、予じめ溶媒を留去しておいてもよい。酸水溶液の添加量は、酸水溶液を添加後の反応混合物に占める長鎖カルボン酸乳酸エステル、長鎖カルボン酸及び乳酸の合計量が3〜40(重量)%となるようにするのが好ましい。
【0011】
酸水溶液を添加した場合の反応混合物中の長鎖カルボン酸乳酸エステルの挙動は、反応混合物の組成にもよるが、一般にpHが3.0よりも低くなると、長鎖カルボン酸乳酸エステルが長鎖カルボン酸や乳酸の一部と共に油状物となって析出してくるので、長鎖カルボン酸乳酸エステルを油状物として析出させたい場合には、反応混合物のpHを1.5〜3.0に低下させる。pHを低下させ過ぎると長鎖カルボン酸乳酸エステルが分解するので、必要以上にpHを低下させるのは避けるべきである。
【0012】
長鎖カルボン酸乳酸エステルを有機溶媒で抽出する場合には、pHを5.0以下、好ましくは2.0〜4.0に低下させる。このとき油状物が析出しても、次の液−液抽出の障害とならない。pHの低下が不十分であると、反応混合物の液−液抽出における水相と有機相との分離が悪くなることがある。所定のpHとした反応混合物は、次いで有機溶媒で抽出して、乳酸を水相に、長鎖カルボン酸乳酸エステルを有機溶媒相に分配する。この際、反応混合物中の長鎖カルボン酸は概して有機溶媒相に分配される。
【0013】
抽出に用いる有機溶媒としては、水に難溶ないし不溶で、且つ長鎖カルボン酸乳酸エステルに大きな溶解力を示すものであれば、任意のものを用いることができる。例えばヘキサン、ヘプタン等の炭化水素、塩化メチル、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素、イソブチルアルコール等のアルコール、メチルエチルケトン等のケトン類、酢酸エチル等のエステルなどが挙げられる。これらのなかでは沸点が50℃以上で取扱いが容易なヘキサン、ヘプタン、イソブチルアルコール、クロロホルム等が好ましい。特に好ましいのはヘキサン又はクロロホルムである。
【0014】
液−液抽出は反応混合物を含む水相に対して通常0.2〜5容量倍、好ましくは0.3〜2容量倍の有機溶媒を用いて行なう。抽出温度は通常、室温〜60℃、好ましくは40〜60℃である。抽出操作は回分式又は連続式の各種の液−液抽出装置を用いて、常法に従って行なうことができる。
液−液抽出により得られた有機溶媒相からは分別晶析により長鎖カルボン酸乳酸エステルを回収する。また油状物として析出させた場合には、これを有機溶媒に溶解して、この溶液から分別晶析により長鎖カルボン酸乳酸エステルを回収する。なお、油状物中には乳酸が含まれているので、有機溶媒に溶解する前に水洗して乳酸を除去しておくのが好ましい。
【0015】
分別晶析に用いる有機溶媒は、前述の抽出操作に用いる有機溶媒と同じものを用いることができる。従って抽出により得た有機溶媒相から直接に長鎖カルボン酸乳酸エステルを晶出させてもよく、又は有機溶媒相から有機溶媒を留去し、残留物を新たな有機溶媒に溶解させ晶出させてもよい。晶出操作に供する有機溶媒溶液中の長鎖カルボン酸乳酸エステルの濃度は通常、5〜40(重量)%である。長鎖カルボン酸乳酸エステルの濃度が高過ぎると、晶出操作が困難となり、かつ得られる結晶の純度が低下する。好ましい濃度は5〜35(重量)%、特に5〜15(重量)%である。晶出操作は通常−20〜40℃で行なう。一般に長鎖カルボン酸の融点が高い場合には比較的高い温度で、融点が低い場合には比較的低い温度で行なうのが好ましい。
【0016】
晶出操作により取得される長鎖カルボン酸乳酸エステルの純度は通常80〜95モル%程度であり、20〜5モル%程度の長鎖カルボン酸が不純物として含まれている。この長鎖カルボン酸乳酸エステルを再度晶出操作にかけると、純度99%ないしはそれ以上の高純度の長鎖カルボン酸乳酸エステルが取得できる。
本発明は、純度80モル%以上の長鎖カルボン酸乳酸エステル塩の水溶液を提供するものであるが、該塩水溶液は上述した純度80モル%以上の長鎖カルボン酸乳酸エステルに水溶液中あるいは、エタノール等のアルコール水溶液中で塩基性物質をモル比(長鎖カルボン酸乳酸エステル/塩基性物質)1/0.9〜1/1.3で加えて、必要に応じて水を加えることにより得られる。純度80モル%以上の長鎖カルボン酸乳酸エステルを用いることにより長鎖カルボン酸乳酸エステル塩の水溶液は中性のpH領域において著しく優れた界面活性能を示す。塩基性物質としては、アルカリ金属若しくは、アルカリ土類金属の水酸化物又は炭酸塩、アンモニア、エタノールアミン等のアルカノールアミン、トリブチルアミン等の低級アルキルアミン等が挙げられる。
【0017】
本発明の長鎖カルボン酸乳酸エステル塩水溶液を食品用に用いる場合は、カルシウムの水酸化物又は塩を用いるのが好ましく、洗浄剤、化粧品等に用いる場合は、皮膚刺激の少ないカリウム、ナトリウム、トリエタノールアミン塩等を用いるのが好ましい。
塩基性物質は予め水または水溶性アルコールの溶液として添加するが、その濃度が極端に濃厚であると、局部的に塩基性物質過剰の状態を形成するので、塩基性物質濃度が50重量%以下、好ましくは10重量%以下の水溶液として用いるのが好ましい。又、長鎖カルボン酸乳酸エステルも、予め水または水溶性アルコールに分散又は溶解させてから塩基性物質と反応させるのが好ましい。
【0018】
長鎖カルボン酸乳酸エステルと塩基性物質とのモル比は等モル〜若干過剰モル、具体的には1/0.9〜1/1.3、好ましくは1/1〜1/1.2であり、モル比をこの範囲に保つことで、経時的な加水分解の抑制及びクラフト点の上昇の抑制、即ち界面活性能の低下を抑制することができる。塩基性物質のモル比が大きいと、長鎖カルボン酸乳酸エステル塩水溶液のクラフト点が上昇し透明性が低下したり石鹸等が沈澱生成のために常温で不均一状態を呈す。この原因としては、塩基性物質の増加によって長鎖カルボン酸乳酸エステルの加水分解が促進されて長鎖カルボン酸乳酸エステル塩が減少するので、長鎖カルボン酸塩(石鹸)及び乳酸比率が増加するためと考えられる。また、塩基性物質のモル比が小さい場合においても、水溶液のクラフト点は上昇する。
【0019】
これは、長鎖カルボン酸乳酸エステルの加水分解は低いが塩基性イオンが少ないために界面活性能が低下しているので、加水分解で生じた長鎖カルボン酸や乳酸が僅かであってもクラフト点が上昇するばかりでなく、乳化力、起泡力、洗浄力といった界面活性能が低下すると考えられる。
長鎖カルボン酸乳酸エステル塩水溶液の調製直後の加水分解を抑制するためには、先ずモル比を1/0.7よりも塩基性物質の少ない、好ましくは1/0.6〜1/0.5の範囲で40℃以上に加熱し反応を行い、次に反応温度を室温まで冷却し、当初の目的のモル比、例えば1/0.9〜1/1.3となるように残部の塩基性物質を添加し反応させるのがより好ましい。
本発明の長鎖カルボン酸乳酸エステル塩水溶液における長鎖カルボン酸乳酸エステル塩の濃度は任意であるが、界面活性剤水溶液として取り扱う点から0.01〜50重量%、好ましくは10〜40重量%、特に好ましくは15〜30重量%である。
【0020】
【実施例】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
なお、長鎖カルボン酸乳酸エステルと、加水分解によって生じる遊離カルボン酸の定量は下記の如く高速液体クロマトグラフィーにて行った。
【0021】
調製:サンプルをテトラヒドロフラン/水=20/1(体積)溶液に溶解する。希硫酸でpH3.0に調整した後、9−Anthryldiazomethan(ADAM、フナコシ(株)製品)のメタノール溶液を加える。室温で1時間暗所に保存して反応させる。
【0022】
上記分析を行うと、ADAMエステル化物は、長鎖カルボン酸乳酸エステル、長鎖カルボン酸の順に流出する。これらを絶体検量線法により定量した。
また、加水分解率R(モル%)は以下の式により算出した。
R(モル%)={(a−b)/(a−b+c)}×100
a:塩水溶液中の遊離カルボン酸量[モル]
b:用いた長鎖カルボン酸乳酸エステルに含有されていた遊離カルボン酸量(モル)
c:塩水溶液中の長鎖カルボン酸乳酸エステル(塩)量[モル]
クラフト点の測定は、K.Tsujii et al.,J.Phys.Chem.1980、84、pp2287に準拠し、1wt%水溶液を約0.3℃/分で昇温させていく際に、水溶液が完全に透明になる点をもって決定した。
【0023】
[実施例1]
ステアロイル乳酸エステル(純度99モル%以上、融点63℃)に、ステアロイル乳酸エステルとKOHのモル比が1/0.6になるように1N−KOH水溶液を添加し、60℃にて溶液が均一状態を呈するまで攪拌した。この水溶液を室温まで放冷し、室温にて更に1N−KOH水溶液を添加してモル比が1/1.0となるようにステアロイル乳酸エステルカリウム水溶液を調製した。これに水を加えてステアロイル乳酸エステルカリウム塩水溶液の濃度を20重量%とした。
これを40℃にて保存し、加水分解率測定、クラフト添測定および常温での水溶液外観評価を経日的に行った。その結果を表−1に示した。
【0024】
[実施例2]並びに[比較例1及び2]
ステアロイル乳酸エステルとKOHのモル比を1/1.2(実施例2)、1/0.8(比較例1)及び1/1.4(比較例2)とした以外は実施例1と同様に行い、結果を表−1に示した。
【0025】
[比較例3]
ステアロイル乳酸エステル(純度70モル%、不純物としてステアリン酸を30モル%を含む)に、該ステアロイル乳酸エステルとKOHのモル比が1/0.6になるように1N−KOH水溶液を添加し、70℃にて攪拌した。この水溶液を室温まで放冷し、室温にて更に1N−KOH水溶液を添加してモル比が1/1.0となるようにステアロイル乳酸エステルカリウム水溶液を調製した。これに水を加えてステアロイル乳酸エステルカリウム塩水溶液の濃度を20重量%とした。
これを40℃にて保存し、実施例1と同様の評価を行った。結果を表−1に示した。
【0026】
[実施例3]
ステアロイル乳酸エステル(純度99モル%以上、融点63℃)に、ステアロイル乳酸エステルとNaOHのモル比が1/0.6になるように1N−NaOH水溶液を添加し、60℃にて溶液が均一状態を呈するまで攪拌した。この水溶液を室温まで放冷し、室温にて更に1N−NaOH水溶液を添加してモル比が1/1.0となるようにステアロイル乳酸エステルナトリウム水溶液を調製した。これに水を加えてステアロイル乳酸エステルナトリウム塩水溶液の濃度を20重量%とした。
これを40℃にて保存し、加水分解率測定、クラフト添測定および常温での水溶液外観評価を経日的に行った。その結果を表−2に示した。
【0027】
[実施例4]並びに[比較例4及び5]
ステアロイル乳酸エステルとNaOHのモル比を1/1.2(実施例4)、1/0.8(比較例4)、1/1.4(比較例5)とした以外は実施例3と同様に行い、結果を表−2に示した。
【0028】
[比較例6]
ステアロイル乳酸エステル(純度70モル%、不純物としてステアリン酸を30モル%を含む)にステアロイル乳酸エステルと塩基性物質のモル比を1/0.6になるように1N−NaOH水溶液を添加し、70℃にて攪拌した。この水溶液を室温まで放冷し、室温にて更に1N−NaOH水溶液を添加してモル比が1/1.0となるようにステアロイル乳酸エステルナトリウム水溶液を調製した。これに水を加えてステアロイル乳酸エステルナトリウム塩水溶液の濃度を20重量%とした。
これを40℃にて保存し、実施例1と同様の評価を行った。結果を表−2に示した。
【0029】
[実施例5]
ラウロイル乳酸エステル(純度99モル%以上、融点36℃)に対して、ラウロイル乳酸エステルとKOHのモル比を1/0.6になるように1N−KOH水溶液を添加し、30℃にて溶液が均一状態を呈するまで攪拌した。この水溶液を室温まで放冷し、室温にて更に1N−KOH水溶液を添加してモル比が1/1.0となるようにラウロイル乳酸エステルカリウム水溶液を調製した。これに水を加えてラウロイル乳酸エステルカリウム塩水溶液の濃度を20重量%とした。
これを40℃にて保存し、加水分解率測定、クラフト添測定および常温での水溶液外観評価を経日的に行った。その結果を表−3に示した。
【0030】
[実施例6]並びに[比較例7及び8]
ステアロイル乳酸エステルとKOHのモル比を1/1.2(実施例6)、1/0.8(比較例7)、1/1.4(比較例8)とした以外は実施例5と同様に行い、結果を表−3に示した。
[比較例9]
ラウロイル乳酸エステル(純度70モル%、不純物としてステアリン酸を30モル%を含む)にラウロイル乳酸エステルとKOHのモル比を1/0.6になるように1N−KOH水溶液を添加し、40℃にて攪拌した。この水溶液を室温まで放冷し、室温にて更に1N−KOH水溶液を添加してモル比が1/1.0となるようにラウロイル乳酸エステルナトリウム水溶液を調製した。これに水を加えてラウロイル乳酸エステルナトリウム塩水溶液の濃度を20重量%とした。
これを40℃にて保存し、実施例1と同様の評価を行った。結果を表−3に示した。
【0031】
【表1】
【0032】
【表2】
【0033】
【表3】
【0034】
【発明の効果】
本発明の長鎖カルボン酸乳酸エステル塩水溶液は、クラフト点が低く、界面活性能において優れており、また長期間の保存においても水溶液が均一で透明であり、界面活性能が低下しないという良好な結果を与え、乳化剤として極めて優れている。また、本発明の方法に従って製造することにより、クラフト点が低く保存安定性に優れた長鎖カルボン酸乳酸エステル塩水溶液を工業的に適用しうる比較的簡単な操作で得ることができる。
Claims (8)
- 炭素数8〜24の長鎖カルボン酸乳酸エステルと塩基性物質との塩の水溶液であって、長鎖カルボン酸乳酸エステルを形成している長鎖カルボン酸と長鎖カルボン酸乳酸エステルを形成していない長鎖カルボン酸との合計に占める該エステルを形成している長鎖カルボン酸のモル%が80%以上であり、且つ長鎖カルボン酸乳酸エステル(塩基性物質と塩を形成しているものを含む)と塩基性物質(長鎖カルボン酸乳酸エステルと塩を形成しているものを含む)とのモル比が1:0.9〜1:1.3であることを特徴とする長鎖カルボン酸乳酸エステル塩水溶液。
- 長鎖カルボン酸乳酸エステル(塩基性物質と塩を形成しているものを含む)と塩基性物質(長鎖カルボン酸乳酸エステルと塩を形成しているものを含む)とのモル比が1:1〜1:1.2であることを特徴とする請求項1記載の長鎖カルボン酸乳酸エステル塩水溶液。
- 長鎖カルボン酸が炭素数10〜22のものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の長鎖カルボン酸乳酸エステル塩水溶液。
- 塩基性物質が、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物又は炭酸塩、アンモニア、アルカノールアミン及び低級アルキルアミンより成る群から選ばれたものであることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の長鎖カルボン酸乳酸エステル塩水溶液。
- 長鎖カルボン酸乳酸エステル塩の濃度が0.01〜50重量%であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の長鎖カルボン酸乳酸エステル塩水溶液。
- 長鎖カルボン酸乳酸エステル塩の濃度が15〜30重量%であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の長鎖カルボン酸乳酸エステル塩水溶液。
- 炭素数8〜24の長鎖カルボン酸であって純度が80%以上のもの(ここに純度とは長鎖カルボン酸中において1種類の長鎖カルボン酸の占める重量%を意味する)又はその反応性誘導体と、乳酸又はその塩とを、モル比で1:1.2〜1:3.0で反応させ、生成した反応混合物から乳酸とエステルを形成している長鎖カルボン酸と乳酸とエステルを形成していない長鎖カルボン酸との合計に占める該エステルを形成している長鎖カルボン酸のモル%が80%以上である長鎖カルボン酸乳酸エステルを取得し、これと塩基性物質とを1:0.9〜1:1.3のモル比で反応させることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の長鎖カルボン酸乳酸エステル塩水溶液の製造方法。
- 炭素数8〜24の長鎖カルボン酸又はその反応性誘導体と乳酸又はその塩とを反応させて得られた長鎖カルボン酸乳酸エステルであって、乳酸とエステルを形成している長鎖カルボン酸と乳酸とエステルを形成していない長鎖カルボン酸との合計に占めるエステルを形成している長鎖カルボン酸のモル%が80%以上である長鎖カルボン酸乳酸エステルと塩基性物質とを、モル比で1:0.5〜1:0.7、且つ温度40℃以上で反応させ、反応液を冷却したのちこれに更に塩基性物質を長鎖カルボン酸乳酸エステル(塩基性物質と塩を形成しているものを含む)と塩基性物質(長鎖カルボン酸乳酸エステルと塩を形成しているものを含む)との最終的なモル比が1:0.9〜1:1.3となるように反応させることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の長鎖カルボン酸乳酸エステル塩水溶液の製造方法。
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