JP4048350B2 - 自動変速機 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車等の車両の自動変速機の技術分野に属し、特に、効果的にコンパクトに形成しながら、しかも変速の多段化が可能である自動変速機の技術分野に属するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、自動車に用いられている自動変速機においては、複数の回転要素を有するプラネタリギヤユニットおよびこれらの複数の回転要素をそれぞれ係合または係止させるクラッチやブレーキからなる複数の摩擦係合要素を有する自動変速機構を備えた自動変速機が種々開発されている。この自動変速機は、摩擦係合要素の係合および非係合を適宜制御してプラネタリギヤユニットの複数の回転要素の回転をそれぞれ制御することにより、自動変速制御を行うようになっている。
【0003】
ところで、近年、自動車においては、燃費の向上、高出力、高効率、並びに高静粛性がますます強く求められており、これにともない、自動変速機においては変速の多段化が求められている。
【0004】
また、自動変速機が収容されるエンジンルームは限られた狭い空間であり、この空間内に、自動変速機の他にエンジンを始め、種々の装置や部品が多く収容されているが、更に近年の技術開発により新たな部品等も収容されてきているため、できるだけこれらの装置や部品をそれらの性能を低下することなく、コンパクトに形成することが望まれている。このようなことから、自動変速機も可能な限りコンパクト化を図ることが、ますます厳しく求められている。
【0005】
そこで、前述のプラネタリギヤユニットおよび複数の摩擦係合要素を備えた自動変速機における変速の多段化およびコンパクト化に応えるために、1つの共通のロングピニオンにそれぞれのショートピニオンが噛合する2つのプラネタリギヤからなるプラネタリギヤユニットを備えた自動変速機が、ドイツ国特許出願公開第3822319号明細書により提案されている。
【0006】
図3に示すように、この自動変速機においては、自動変速機構が入力側(エンジン側;図3において左側)と反対側に配置された第1プラネタリギヤPG1と入力側に配置された第2プラネタリギヤPG2とを有している。第1プラネタリギヤPG1は、回転軸cに連結された第1サンギヤS1、この第1サンギヤS1に噛合するロングピニオンLPとこのロングピニオンLPに噛合する第1ショートピニオンP1とを回転自在に支持するキャリヤCR、および第1ショートピニオンP1に噛合しかつ出力軸fに連結された第1リングギヤR1から、ダブルピニオンのプラネタリギヤとして構成されている。
【0007】
また、第2プラネタリギヤPG2は、回転軸eに連結された第2サンギヤS2、この第2サンギヤS2に噛合する第2ショートピニオンP2とこの第2ショートピニオンP2に噛合するロングピニオンLPとを回転自在に支持するキャリヤCR、およびロングピニオンLPに噛合する第2リングギヤR2から、ダブルピニオンのプラネタリギヤとして構成されている。
【0008】
その場合、ロングピニオンLPおよびキャリヤCRがそれぞれ第1および第2プラネタリギヤPG1,PG2において共通とされ、また、回転軸dがこの共通のキャリヤCRに連結されている。
更に、回転軸e、キャリヤCRおよび第2リングギヤR2がそれぞれブレーキD,E,Fに連結されている。
【0009】
一方、自動変速機の入力軸bが3つのクラッチA,B,Cを介してそれぞれ回転軸c,d,eに選択的に連結されるようになっている。その場合、クラッチAで入力軸bが回転軸cに連結されると、エンジンの駆動軸aからトルクコンバータを介して入力軸bに伝達された入力はクラッチAおよび回転軸cを介して第1サンギヤS1に伝達される。また、クラッチBで入力軸bが回転軸dに連結されると、入力軸bの入力はクラッチBおよび回転軸dを介してキャリヤCRに伝達される。更に、クラッチCで入力軸bが回転軸eに連結されると、入力軸bの入力はクラッチCおよび回転軸eを介して第2サンギヤS2に伝達される。
【0010】
そして、第1サンギヤS1、キャリヤおよび第2サンギヤS2に伝達された入力は、それぞれ、ブレーキD,E,Fを適宜作動制御することにより多段変速されて第1リングギヤRr1を介して出力軸fに伝達され、この出力軸fから出力される。
【0011】
この自動変速機によれば、1つの共通のロングピニオンLPと、このロングピニオンLPにそれそれ噛合する2つのショートピニオンP1,P2からなる2ダブル(W−W)ピニオンを有するプラネタリギヤユニットを採用しているので、自動変速機の軸方向の長さを短縮することができるとともに、前進6速を達成でき、変速の多段化が可能となる。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、前述の公開明細書の自動変速機においては、軸方向の長さの短縮化および変速の多段化を図ることができるが、2ダブル(W−W)ピニオンを有するプラネタリギヤユニットを採用していることから、径方向の寸法がどうしても大きくなってしまう。
【0013】
また、変速の多段化をより効果的に行うことに相俟って、より一層のスムーズな変速を行うことが求められるが、そのためにはギヤ比の設定をより柔軟にかつきめ細かく設定することが求められる。しかし、前述の従来技術では、単に2ダブル(W−W)ピニオンを有するプラネタリギヤユニットを採用しているだけであるので、ギヤ比の設定をより柔軟にかつきめ細かく設定することは難しい。
【0014】
更に、従来技術では、第2ショートピニオンP2の環状配置の内側に、第2サンギヤS2および2つの回転軸c,dが配置されるようになるが、このように第2ショートピニオンの環状配置の内側に多数の部材が配置されると、第2ショートピニオンP2の環状配置の径が大きくならざるを得ない。このことからも、径方向の寸法が大きくなってしまう。
【0015】
このため、軸方向長さの短縮化および変速の多段化を可能とするこのような従来の自動変速機においては、この部分での径方向のコンパクト化が阻害されているばかりでなく、およびギヤ比の高設定自由度化に限度がある。これにもかかわらず、前述のように自動変速機において、近年ますます強く求められているこのような軸方向長さの短縮化および変速の多段化の要求に応えつつ、自動変速機全体の可能な限りのコンパクト化、特に径方向のコンパクト化およびギヤ比の高設定自由度を図ることはきわめて重要な課題となっている。
【0016】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、軸方向のコンパクト化および変速の多段化を可能にしつつ、径方向のコンパクト化およびギヤ比の高設定自由度をより一層効果的に図ることのできる自動変速機を提供することである。
【0017】
【課題を解決するための手段】
前述の課題を解決するために、請求項1に係る発明の自動変速機は、第1サンギヤ、この第1サンギヤに噛合するロングピニオン、このロングピニオンに噛合する第1ショートピニオン、この第1ショートピニオンに噛合する第1リングギヤ、および前記ロングピニオンと前記第1ショートピニオンとを回転自在に支持する第1キャリヤからなる第1プラネタリギヤと、第2サンギヤ、この第2サンギヤに噛合する第2ショートピニオン、この第2ショートピニオンに噛合する前記ロングピニオン、前記ロングピニオンに噛合する第2リングギヤ、および前記ロングピニオンと前記第2ショートピニオンを回転自在に支持する第2キャリヤからなる第2プラネタリギヤとからなり、前記第1および第2キャリヤが一体にされて共通キャリヤを構成するプラネタリギヤユニットと、入力トルクが伝達される入力軸と、前記第1リングギヤに連結した出力軸と、前記入力軸と前記第1サンギヤとを係脱する前進低速段用クラッチと、前記入力軸と前記第2サンギヤとを係脱する後進低速段用クラッチと、前記入力軸と前記共通キャリヤとを係脱する前進高速段用クラッチと、前記第2サンギヤの回転を停止するブレーキと、前記共通キャリヤの回転を停止するブレーキと、前記第2リングギヤの回転を停止するブレーキと、を備えた自動変速機において、前記第2プラネタリギヤが前記第1プラネタリギヤより入力側に配置され、前記入力軸が入力側の第1入力軸と、一端が前記第1入力軸の一端に回転方向に連結されてこの第1入力軸と一体回転し、前記プラネタリギヤユニットの内周に配設された第2入力軸とからなり、前記前進低速段用クラッチが前記プラネタリギヤユニットよりエンジン側の入力側に配置されるとともに、前記第1入力軸と前記第1サンギヤとを係脱し、前記後進低速段用クラッチが前記プラネタリギヤユニットよりエンジン側の入力側に配置されるとともに、前記第1入力軸と前記第2サンギヤとを係脱し、前記前進高速段用クラッチが前記プラネタリギヤユニットよりエンジン側の入力側と反対側に配置されるとともに、前記第2入力軸と前記共通キャリヤとを係脱し、前記第2入力軸の径が前記第1入力軸の径より小さく設定されていることを特徴としている。
【0018】
また、請求項2の発明は、前記第2ショートピニオンが所定数環状に配置されており、前記前進低速段用クラッチと前記第1サンギヤとを連結する第1中空軸が前記第2ショートピニオンの環状配置の内側に配設されていることを特徴としている。
【0020】
【作用および発明の効果】
このように構成された請求項1および2に係る発明の自動変速機においては、前進および後進低速段用クラッチが第1入力軸に設けられるとともに、前進高速段用クラッチが、一端が第1入力軸の一端に回転方向に連結された第2入力軸に設けられる。この第2入力軸は、プラネタリギヤユニットの内周に配設されるが、前述の両低速段用クラッチが比較的高トルクを受け持つクラッチであるのに対して、前進高速段用クラッチは比較的低トルクを受け持つクラッチであるので、第1入力軸の負荷トルクに比べて、第2入力軸の負荷トルクが低トルクになる。したがって、負荷トルクが比較的大きい第1入力軸の径を確保しつつ、第2入力軸の径を第1入力軸の径より小さく設定することが可能となる。
【0021】
その結果、入力軸の強度を確保しつつ、プラネタリギヤの径を小さくでき、自動変速機の径方向のコンパクト化を図ることができる。また、第2入力軸の径を小さくすることが可能となることでギヤの径をより広範囲に形成できることから、所望のギヤ比を柔軟にかつよりきめ細かく設定でき、ギヤ比の高設定自由度化を図ることができる。
【0022】
このようにして、前述の従来技術のように自動変速機の軸方向のコンパクト化および変速の多段化を可能にしつつ、径方向のコンパクト化およびギヤ比の高設定自由度化をより一層効果的に図ることができるようになる。
なお、ギヤ比の高設定自由度化は、自動変速機の径方向のコンパクト化がそれほど求められないような場合には、自動変速機の径方向の大きさを従来と同じ程度に抑制しつつ、ギヤ比の設定の自由度をより一層高めることができる。
【0023】
また、第1入力軸と第1サンギヤとを係脱する前進低速段用クラッチと、第1入力軸と第2サンギヤとを係脱する後進低速段用クラッチと、第2入力軸と共通キャリヤとを係脱する前進高速段用クラッチと、第2サンギヤの回転を停止するブレーキと、共通キャリヤの回転を停止するブレーキと、第2リングギヤの回転を停止するブレーキとを適切に組合せるとともに、第1リングギヤから出力することで、変速の多段化、ギヤ比の高設定自由度およびコンパクト化を最適に図ることができる。
【0024】
特に、請求項2の発明によれば、第2ショートピニオンの環状配置の内側に、第2サンギヤ、第1中空軸、および第2入力軸が配置されるようになるが、このように第2ショートピニオンの環状配置の内側に多数の部材が配置されても、径方向のコンパクト化をより顕著に図ることができる。
【0025】
【発明の実施の形態】
以下、図面を用いて本発明の実施の形態を説明する。図1は、本発明の自動変速機の実施の形態の一例を示す断面図、図2はこの例の自動変速機を説明し、(a)はスケルトン図、(b)は速度線図、(c)は各要素の各レンジでの作動状態を示す図である。なお、図2(c)において、○は係合を表し、×は非係合を表し、その場合、( )はエンジンブレーキ作動時を示している。また、速度線図は単に模式的に記載しているだけでギヤ比に対応したスケールで記載しているものではない。
【0026】
図1および図2(a)に示すように、本例の自動変速機Aは、エンジン回転軸1に整列する第1軸の入力軸2、およびこの入力軸2に同軸に配置された出力軸3を有している。入力軸2上にはロックアップクラッチ(L/C)4を有するトルクコンバータ(T/C)5および自動変速機構6が配設されている。
【0027】
入力軸2は第1入力軸(インプットシャフト)2aと第2入力軸(インターミディエイトシャフト)2bとからなっており、入力トルクを伝達する。すなわち、第1入力軸2aはその前端側(図において左端側)がトルクコンバータ(T/C)5の出力側に連結されるとともに、ロックアップクラッチ(L/C)4によりエンジンの回転軸1に直結可能とされている。また、第2入力軸2bはその前端側が第1入力軸2aの後端側に回転方向に連結されていて、第1および第2入力軸2a,2bは互いに一体に回転するようになっている。ここで、第2入力軸は2bは後述するプラネタリギヤユニット9の内周に配設される。
【0028】
その場合、第2入力軸2bの径d2は第1入力軸2aの径d1よりも小さく設定されている(d2<d1)。また、第2入力軸2bは第1入力軸2aに嵌合することで回転方向に連結することができ、また、1つの軸部材を第1入力軸2aと第2入力軸2bとを削り出しで一体に形成することもできる。
【0029】
自動変速機構6は遊星歯車機構(P/G)を備えており、この遊星歯車機構(P/G)は2つのダブルピニオン型の第1および第2プラネタリギヤ7,8とを組み合わせたラビニヨタイプのプラネタリギヤユニット9から構成されている。その場合、第2プラネタリギヤ8が第1プラネタリギヤ7よりも入力側であるエンジン側{つまり、図1および図2(a)において左側}に配置されている。
【0030】
第1プラネタリギヤ7は、第1サンギヤS1と、この第1サンギヤS1に噛合する段付のロングピニオンLPの大径部LP1と、第1リングギヤR1と、ロングピニオンLPの大径部LP1および第1リングギヤR1にともに噛合する第1ショートピニオンP1と、段付のロングピニオンLPおよび第1ショートピニオンP1をともに回転自在に支持する第1キャリヤCR1とを有している。
【0031】
また、第2プラネタリギヤ8は、第2サンギヤS2と、第2サンギヤS2に噛合する第2ショートピニオンP2と、第2リングギヤR2と、これらの第2ショートピニオンP2および第2リングギヤR2にともに噛合する段付のロングピニオンLPの小径部LP2と、ロングピニオンLPおよび第2ショートピニオンP2をともに回転自在に支持する第2キャリヤCR2とを有している。すなわち、ロングピニオンLPは第1および第2プラネタリギヤ7,8において1つの共通ロングピニオンを構成している。
【0032】
第1ショートピニオンP1はロングピニオンLPの大径部LP1の外周回りに所定数環状に配置され、また、第2ショートピニオンP2も第2サンギヤS2の外周回りに所定数環状に配置されている。また、ロングピニオンLPは大径部LP1と小径部LP2とが一体にされて第1および第2プラネタリギヤ7,8に共通の1つのピニオンとして構成されている。更に、ロングピニオンLPおよび第1ショートピニオンP1を回転自在に支持する第1キャリヤCR1と、ロングピニオンLPおよび第2ショートピニオンP2を回転自在に支持する第2キャリヤCR2とが両プラネタリギヤ7,8の1つの共通キャリヤCRとして一体に構成されている。
【0033】
更に、第1サンギヤS1は第2入力軸2bの外周に相対回転自在に支持される第1中空軸10の後端側{つまり、図1および図2(a)図において右側}に一体に設けられているとともに、第2サンギヤS2は第1中空軸10の外周に支持される第2中空軸11の後端側に一体に設けられている。
【0034】
そして、第1入力軸2aと第1中空軸10すなわち第1サンギヤS1とがC1クラッチ(C-1)を介して連結可能とされており、また第1入力軸2aと第2中空軸11すなわち第2サンギヤS2とがC3クラッチ(C-3)を介して連結可能されている。
【0035】
また、第2サンギヤS2がB0ブレーキ(B-0)により自動変速機Aのケース12に係止可能にされている。更に、第2リングギヤR2がB1ブレーキ(B-1)により自動変速機Aのケース12に係止可能にされているとともに、その一方向回転時に、F1ワンウェイクラッチ(F-1)およびこのF1ワンウェイクラッチ(F-1)に直列的に配設されたB2ブレーキ(B-2)によりケース12に係止されるようになっている。
【0036】
更に、共通キャリヤCRがC2クラッチ(C-2)を介して第2入力軸2bに連結可能とされているとともに、B3ブレーキ(B-3)によりケース12に係止可能にされており、しかもその一方向回転時に、B3ブレーキ(B-3)に並列的に配設されたF2ワンウェイクラッチ(F-2)によりケース12に係止されるようになっている。そして、第1プラネタリギヤ7の第1リングギヤR1が出力軸3に連結されており、この出力軸3は自動変速機構6の出力部材となっている。
【0037】
このように、ラビニヨタイプのプラネタリギヤユニット9は、1つの共通のロングピニオンLPと、このロングピニオンLPにそれそれ噛合する2つのショートピニオンP1,P2からなる2ダブル(W−W)ピニオンを有するプラネタリギヤ機構を構成している。
そして、歯数比λ1(=S1/R1)、λ2(=S2/R2)、λ3(=S1/R2)を適宜設定することで、適正なギヤ比幅およびギヤ比ステップを得ている。
【0038】
次に、このように構成された自動変速機Aにおける自動変速機構6の動作について、図2(b)および(c)に示す速度線図および作動表に沿って説明する。
前進1速(1ST)においては、C1クラッチ(C-1)が係合されるとともに、F2ワンウェイクラッチ(F-2)が係合される。この状態では、第1入力軸2aの回転がC1クラッチ(C-1)および第1中空軸10を介して第1サンギヤS1に伝達されるとともに、更に第1サンギヤS1からロングピニオンLPに伝達される。すると、ロングピニオンLPは第2サンギヤS2を空転させながら第1サンギヤS1つまり入力軸2と逆方向に回転する。また、ロングピニオンLPの回転により、共通キャリヤCRが入力軸2と逆方向に回転しようとするが、F2ワンウェイクラッチ(F-2)が共通キャリヤCRをその逆方向回転に対してケース12に係止させるので、共通キャリヤCRは回転を阻止される。また。同時にロングピニオンLPの回転が第1ショートピニオンP1を介して第1リングギヤR1に伝達され、この第1リングギヤR1が第1サンギヤS1と同方向につまり前進方向に大きく減速回転される。この第1リングギヤR1の回転が出力軸3に伝達され、入力軸2の回転が減速されて所定のギヤ比{例えば図2(c)に示すように3.129}の正回転が出力軸3から出力される。これにより、前進1速(1ST)が達成される。なお、エンジンブレーキ時は、B3ブレーキ(B-3)が係合して共通キャリヤCRを固定して、前進1速(1ST)の状態が維持される。
【0039】
前進2速(2ND)においては、1速の状態からC1クラッチ(C-1)の係合状態が保持される。また、B2ブレーキ(B-2)が係合されるとともに、F1ワンウェイクラッチ(F-1)が係合される。この状態では、前述の1速と同様に第1入力軸2aの回転が、C1クラッチ(C-1)、第1中空軸10および第1サンギヤS1を介してロングピニオンLPに伝達され、ロングピニオンLPが入力軸2と逆方向に回転する。このロングピニオンLPの逆回転により、第2リングギヤR2がロングピニオンLPと同方向に回転しようとするが、B2ブレーキ(B-2)が係合されているとともに、F1ワンウェイクラッチ(F-1)がこの方向の回転に対して係合するので、第2リングギヤR2は回転を阻止される。このため、共通キャリヤCRが入力軸2と同方向に回転するとともに、第1リングギヤR1も第1サンギヤS1と同方向に回転する。この第1リングギヤR1の回転が出力軸3に伝達され、第1入力軸2aの回転が1速よりは小さく減速されて所定のギヤ比{例えば図2(c)に示すように2.065}の正回転が出力軸3から出力される。これにより、前進2速(2ND)が達成される。なお、エンジンブレーキ時は、B1ブレーキ(B-1)が係合して第2リングギヤR2を固定して、前進2速(2ND)の状態が維持される。
【0040】
前進3速(3RD)においては、2速の状態からC1クラッチ(C-1)の係合状態が保持されるが、B2ブレーキ(B-2)の係合が解除される。更に、B0ブレーキ(B-0)が係合される。この状態では、前述の1速と同様に第1入力軸2aの回転がC1クラッチ(C-1)、第1中空軸10および第1サンギヤS1を介してロングピニオンLPに伝達され、ロングピニオンLPが第1サンギヤS1と逆方向に回転する。このロングピニオンLPの回転により、第2ショートピニオンP2が第1サンギヤS1と同方向に回転し、更に、第2サンギヤS2が第1サンギヤS1と逆方向に回転しようとする。このとき、B0ブレーキ(B-0)の係合により、第2サンギヤS2の回転が阻止されるので、第2ショートピニオンP2が第2サンギヤS2のまわりに公転し、その結果共通キャリヤCRが第1サンギヤS1と逆方向に回転する。
【0041】
一方、ロングピニオンLPの回転により、第1ショートピニオンP1が第1サンギヤS1と同方向に回転するが、この第1ショートピニオンP1の回転は共通キャリヤCRの回転により更に加速される。このため、第1リングギヤR1も第1サンギヤS1と同方向に加速されて回転する。前述と同様に、この第1リングギヤR1の回転が出力軸3に伝達され、第1入力軸2aの回転が減速されて所定のギヤ比{例えば図2(c)に示すように1.540}の正回転が出力軸3から出力される。これにより、前進3速(3RD)が達成される。
【0042】
前進4速(4TH)においては、3速の状態からC1クラッチ(C-1)の係合状態が保持されるが、B0ブレーキ(B-0)の係合が解除される。更に、C2クラッチ(C-2)が係合される。この状態では、前述の1速と同様に第1入力軸2aの回転がC1クラッチ(C-1)、第1中空軸10および第1サンギヤS1を介してロングピニオンLPに伝達されるが、この第1入力軸2aの回転は第2入力軸2bおよびC2クラッチ(C-2)を介して共通キャリヤCRに伝達される。このため、第1サンギヤS1と共通キャリヤCRとが同方向に一体に回転するので、ロングピニオンLPおよび第1ショートピニオンP1がともに共通キャリヤCR、第1サンギヤS1および入力軸2と一体的に回転するが、それぞれ自転はしない。このとき、ロングピニオンLPが入力軸2まわりに回転しかつ自転をしないことから、第2サンギヤS2が同方向にロングピニオンLPと一体に回転するとともに、第1リングギヤR1も第1ショートピニオンP1およびロングピニオンLPと一体に同方向に回転する。すなわち、第1リングギヤR1は入力軸2と一体に直結回転する。この第1リングギヤR1の回転が出力軸3に伝達され、ギヤ比の1.000の入力軸2と同速の正回転が出力軸3から出力される。これにより、前進4速(4TH)が達成される。
【0043】
前進5速(5TH)においては、4速の状態からC2クラッチ(C-2)の係合状態が保持されるが、C1クラッチ(C-1)の係合が解除される。更に、B0ブレーキ(B-0)が係合される。この状態では、第1入力軸2aの回転が第2入力軸2bおよびC2クラッチ(C-2)を介して共通キャリヤCRに伝達されるが、第1サンギヤS1が第1入力軸2aから遮断されるので、第1入力軸2aの回転は第1サンギヤS1には伝達されない。
【0044】
すると、共通キャリヤCRが入力軸2と一体に回転するとともに、この共通キャリヤCRの回転により、ロングピニオンLPおよび第1ショートピニオンP1がともに入力軸2まわりに回転する。このとき、ロングピニオンLPの入力軸2まわりの回転により、第2ショートピニオンP2を介して第2サンギヤS2が回転しようとするが、B0ブレーキ(B-0)が係合しているので、第2サンギヤS2は回転しない。すると、第2ショートピニオンP2が第2サンギヤS2の周りを入力軸2と同方向に公転する。この第2ショートピニオンP2の公転により第2ショートピニオンP2が自転するが、このとき第1サンギヤS1が第1入力軸2aから遮断されてフリーとなっているので、ロングピニオンLPおよび第1ショートピニオンP1がともに自転し、第1サンギヤS1が空転する。
【0045】
したがって、第1ショートピニオンP1の入力軸2まわりの回転および自転により、第1リングギヤR1が入力軸2より高速度で入力軸2と同方向つまり前進方向に回転する。この第1リングギヤR1の回転が出力軸3に伝達され、所定のギヤ比{例えば図2(c)に示すように0.746}で入力軸2の回転をオーバードライブした正回転が出力軸3から出力される。これにより、入力軸2の回転より速い高速回転の前進5速(5TH)が達成される。
【0046】
前進6速(6TH)においては、5速の状態からC2クラッチ(C-2)の係合状態が保持されるが、B0ブレーキ(B-0)の係合が解除される。更に、B1ブレーキ(B-1)が係合される。この状態では、5速と同様に第1入力軸2aの回転が第2入力軸2bおよびC2クラッチ(C-2)を介して共通キャリヤCRに伝達されるが、第1サンギヤS1が第1入力軸2aから遮断されるので、第1入力軸2aの回転は第1サンギヤS1には伝達されない。
【0047】
すると、共通キャリヤCRが入力軸2と一体に回転するとともに、この共通キャリヤCRの回転により、ロングピニオンLPおよび第1ショートピニオンP1がともに入力軸2まわりに回転する。このとき、B1ブレーキ(B-1)が係合しているので、第2リングギヤR2は回転しない。すると、ロングピニオンLPの入力軸2まわりの回転により、ロングピニオンLPが第2リングギヤR2の内歯に沿って自転しながら、入力軸2まわりに回転(公転)する。また、B0ブレーキ(B-0)が係合していないので、第2サンギヤS2および第2ショートピニオンP2が空転する。このロングピニオンLPの自転で第1ショートピニオンP1の自転が速められる。
【0048】
したがって、第1ショートピニオンP1の入力軸2まわりの回転および自転により、第1リングギヤR1が入力軸2より高速度で入力軸2と同方向つまり前進方向に回転する。この第1リングギヤR1の回転が出力軸3に伝達され、所定のギヤ比{例えば図2(c)に示すように0.500}で入力軸2の回転をオーバードライブしかつ5速より高速の正回転が出力軸3から出力される。これにより、5速より速い高速回転の前進6速(6TH)が達成される。
【0049】
後進速(Rev)では、C3クラッチ(C-3)が係合されるとともに、B3ブレーキ(B-3)がともに係合される。この状態では、共通キャリヤCRがB3ブレーキB3の係合により固定されている。また、第1入力軸2aの回転がC3クラッチ(C-3)を介して第2サンギヤS2に伝達され、第2サンギヤS2が第1入力軸2aと同方向に回転する。この第2サンギヤS2の回転により、第2ショートピニオンP2を介してロングピニオンLPが第1入力軸2aと同方向に回転するとともに、共通キャリヤCRが回転しないので、第1ショートピニオンP1を介してリングギヤR1が第1入力軸2aと逆方向に減速回転する。このリングギヤR1の逆回転が出力軸3に伝達され、第1入力軸2aの回転が減速されて所定のギヤ比{例えば図2(c)に示すように2.939}の逆回転が出力軸3から出力される。このときの減速される。これにより、後進速(Rev)が達成される。
【0050】
ところで前述の説明から明らかなように、この例の自動変速機Aによれば、第2プラネタリギヤ8が第1プラネタリギヤ7より入力側に配置されていることから、第2ショートピニオンP2の環状配置の内側に、第2サンギヤS2、この第2サンギヤS2の内周側に第1中空軸10、およびこの第1中空軸10の内周側に第2入力軸2bが配置されるようになる。したがって、第2ショートピニオンP2の環状配置の内側に、多数の部材が配置されている。
【0051】
また、少なくとも前進発進時を含む前進の低速段(1〜3速)で係合するC1クラッチ(C-1)と、後進段(低速段)で係合するC3クラッチ(C-3)とがプラネタリギヤユニット9よりエンジン側につまり入力側に配置されている。これらのクラッチ(C-1),(C-3)は発進段を含む低速段で係合することから、いずれも比較的高トルクを受け持つクラッチであり、それらのクラッチドラムおよび油圧サーボがともに第1入力軸2aに支持されている。
【0052】
その場合、第1入力軸2aの径d1が第2入力軸2bの径d2より大きく設定されているが、第1入力軸2aの伝達トルクは高トルクであるから、第1入力軸2aはその径d1が大径に設定されることで高トルクをクラッチ(C-1),(C-3)に確実に伝達するようになる。
【0053】
また、前進の高速段(4〜6速)で係合するC2クラッチ(C-2)がプラネタリギヤユニット9よりエンジンからの入力側と反対側につまり出力側に配置されている。このクラッチ(C-2)は高速段で係合することから比較的低トルクを受け持つクラッチであり、そのクラッチドラムおよび油圧サーボが第2入力軸2bに支持されている。
【0054】
これにより、第2入力軸2bの負荷トルクが低トルクになるようにしているので、負荷トルクが大きくなるC1クラッチ(C-1)やC3クラッチ(C-3)をプラネタリギヤユニット9の後方側(出力側)に配置する場合に比べて、この例のように第2入力軸2bの径d2を第1入力軸2aの径d1より小さく設定することができる。しかも、第2入力軸2bはその径d2が小径に設定されてもトルクをクラッチ(C-2)に確実に伝達することができるようになる。
【0055】
そして、第2入力軸2bの径d2が小径に設定されることで、この第2入力軸2bの外周側に第2入力軸2bと同軸状に設けられる第1中空軸10の径、第1中空軸10の外周側に第1中空軸10と同軸状に設けられる第2中空軸11の径、第2サンギヤS2の径および第2ショートピニオンの環状配置の径も小径に設定することが可能となる。
【0056】
したがって、前述のように環状に配置された第2ショートピニオンP2の内側に、第2入力軸2b、第1中空軸10、および第2サンギヤS2が配置されても、自動変速機Aのこの部分での径方向のコンパクト化がより効果的に図ることができる。その結果、自動変速機全体の径方向のコンパクト化およびギヤ比の高設定自由度化が可能となる。
【0057】
更に、第2プラネタリギヤを第1プラネタリギヤより入力側に配置し、第1リングギヤR1から出力するようにしているが、その場合、第1リングギヤR1とロングピニオンLPとの間に第1ショートピニオンP1を介在させているので、第1リングギヤR1の径を大きくでき、より大きな出力が得られるようになる。また、第1リングギヤR1の径を大きくできるため、この内部に高速段用クラッチ(C−2)を配置するためのスペースを十分確保することができる。
【0058】
更に、前述の例の自動変速機のように、ラビニヨ型のプラネタリギヤユニット9、各クラッチ(C-1),(C-2),(C-3)および各ブレーキ(B-0),(B-1),(B-2),(B-3)とを適切に組合せるとともに、第1リングギヤR1から出力することで、変速の多段化、ギヤ比の高設定自由度およびコンパクト化を最適に図ることができる。
【0059】
特に、この例の自動変速機Aでは、ロングピニオンLPの入力側、つまり第2プラネタリギヤ8の第2ショートピニオンP2が噛合する部分が小径部LP2に設定しているので、この部分を径方向に更に効果的にコンパクトにできるとともに、ギヤ比の設定自由度を更に高めることができる。
なお、ロングピニオンLPは必ずしも段付に形成する必要はなく、前述の独国公開明細書に開示されている自動変速機と同様に第1および第2プラネタリギヤ7,8のいずれにおいても同径に設定することもできる。
【0060】
また、ロングピニオンLPに噛合する第1サンギヤS1を前進低速段用ックラッチであるC1クラッチ(C-1)に連結し、第2ショートピニオンP2に噛合するため、第1サンギヤS1よりも小径となる第2サンギヤS2を後進段用クラッチであるC3クラッチ(C-3)に連結していることから、この小径の第2サンギヤS2は入力トルクによる負荷が第1サンギヤS1に比べて大きいが、後進段用クラッチは使用頻度が低いので、このような負荷を受けても第2サンギヤS2の耐久性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明にかかる自動変速機の実施の形態の一例を示す断面図である。
【図2】 図1に示す例の自動変速機を説明し、(a)はスケルトン図、(b)は速度線図、(c)は各要素の各レンジでの作動状態を示す図である。
【図3】 従来の1つのロングピニオンと2つのショートピニオンとからなる2プラネタリギヤの自動変速機を模式的に示すスケルトン図である。
【符号の説明】
1…エンジン回転軸、2…入力軸、2a…第1入力軸、2b…第2入力軸、3…出力軸、4…ロックアップクラッチ(L/C)、5…トルクコンバータ(T/C)、6…自動変速機構、7…第1プラネタリギヤ、8…第2プラネタリギヤ、9…プラネタリギヤユニット、10…第1中空軸、11…第2中空軸、12…ケース、S1…第1サンギヤ、S2…第2サンギヤ、P1…第1ショートピニオン、P2…第2ショートピニオン、LP…ロングピニオン(共通ロングピニオン)、LP1…大径部(ロングピニオン)、LP2…小径部(ロングピニオン)、R1…第1リングギヤ、R2…第2リングギヤ、CR…共通キャリヤ、CR1…第1キャリヤ、CR2…第2キャリヤ、C-1…C1クラッチ(前進発進段および前進低速段用クラッチ)、C-2…C2クラッチ(前進高速段用クラッチ)、C-3…C3クラッチ(後進段用クラッチ;低速段用クラッチ)、B-0…B0ブレーキ、B-1…B1ブレーキ、B-2…B-2ブレーキ、B-3…B3ブレーキ、F-1…F1ワンウェイクラッチ、F-2…F2ワンウェイクラッチ
Claims (2)
- 第1サンギヤ、この第1サンギヤに噛合するロングピニオン、このロングピニオンに噛合する第1ショートピニオン、この第1ショートピニオンに噛合する第1リングギヤ、および前記ロングピニオンと前記第1ショートピニオンとを回転自在に支持する第1キャリヤからなる第1プラネタリギヤと、第2サンギヤ、この第2サンギヤに噛合する第2ショートピニオン、この第2ショートピニオンに噛合する前記ロングピニオン、前記ロングピニオンに噛合する第2リングギヤ、および前記ロングピニオンと前記第2ショートピニオンを回転自在に支持する第2キャリヤからなる第2プラネタリギヤとからなり、前記第1および第2キャリヤが一体にされて共通キャリヤを構成するプラネタリギヤユニットと、
入力トルクが伝達される入力軸と、前記第1リングギヤに連結した出力軸と、
前記入力軸と前記第1サンギヤとを係脱する前進低速段用クラッチと、前記入力軸と前記第2サンギヤとを係脱する後進低速段用クラッチと、前記入力軸と前記共通キャリヤとを係脱する前進高速段用クラッチと、
前記第2サンギヤの回転を停止するブレーキと、前記共通キャリヤの回転を停止するブレーキと、前記第2リングギヤの回転を停止するブレーキと、を備えた自動変速機において、
前記第2プラネタリギヤが前記第1プラネタリギヤより入力側に配置され、
前記入力軸は入力側の第1入力軸と、一端が前記第1入力軸の一端に回転方向に連結されてこの第1入力軸と一体回転し、前記プラネタリギヤユニットの内周に配設された第2入力軸とからなり、
前記前進低速段用クラッチが前記プラネタリギヤユニットよりエンジン側の入力側に配置されるとともに、前記第1入力軸と前記第1サンギヤとを係脱し、
前記後進低速段用クラッチが前記プラネタリギヤユニットよりエンジン側の入力側に配置されるとともに、前記第1入力軸と前記第2サンギヤとを係脱し、
前記前進高速段用クラッチが前記プラネタリギヤユニットよりエンジン側の入力側と反対側に配置されるとともに、前記第2入力軸と前記共通キャリヤとを係脱し、
前記第2入力軸の径が前記第1入力軸の径より小さく設定されていることを特徴とする自動変速機。 - 前記第2ショートピニオンが所定数環状に配置されており、
前記前進低速段用クラッチと前記第1サンギヤとを連結する第1中空軸および前記第2サンギヤが前記第2ショートピニオンの環状配置の内側に配設されていることを特徴とする請求項1記載の自動変速機。
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