JP4044198B2 - レジンアート造形体の製造方法とこれに使用するカラーリキッド - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、アクリル性合成樹脂の粉末と即硬化性常温重合レジン液とを主原料とするレジンアート造形体の製造方法に関し、詳しくは合成樹脂の粉末(通常、粉状重合したポリメチルメタクリレート)と液体(通常、メチルメタクリレート)の両者を混合し、ペースト状ないし餅状になったカラー固溶体(カラーミックスチュア)に造形を施し、硬化(固化)させてレジンアート造形体を製造する方法とこれに使用するカラーリキッドに関するものである。
【0002】
一般に「アートフラワー」なる名称で呼ばれている造花も、前記レジンアート造形体の一種であり、アートフラワーひとつを取り上げてみても、実に多種のものがあって、その大きさあるいは製造方法なども非常に多岐に亙っている。この発明は、特にアクリル性合成樹脂の粉末を主原料の一つとするレジンアート造形体の製造方法に関するものであり、しかもその大きさに関しては、非常に小規模のものに限られるものであって、いわゆるネイルアクセサリーとしての分野に応用が可能な造形体の製造方法に関するものである。
【0003】
本明細書でレジンとは、歯科用レジン(歯科治療材料としてのレジン)で、その基材はポリメチルメタクリレートである。また、本明細書において、特に固溶体とは、アクリル性合成樹脂の粉末を主原料とする比較的流動性に乏しいペースト状ないし餅状になったものであって、放置すれば時間の経過とともに益々流動性が失われる組成をそなえるものを称する。さらに、ネイルプレートとは、ネイルアクセサリーの主体を構成する部材であって、人体の爪に匹敵する大きさをそなえ、その上面に花などの装飾を施してこれを人体の爪に重ねて止着することにより、指先を飾る装飾品として使用するものを称する。さらに、レジンアート造形体とは、アクリル性合成樹脂の粉末を主原料として創作された美感を有する造形体を称するものとする。
【0004】
【従来の技術】
この発明の対象とするレジンアート造形体の製造方法は、前記のように、いわゆるネイルアクセサリーとしての分野に多用されるアートフラワーなどの製造方法として行われているが、たとえばアートフラワーの製造方法について、従来技術の例をあげると、つぎに述べる工程からなる方法が先行技術に係る方法として行われている。
【0005】
その先行技術の製造方法とは、つぎに示す工程を、つぎに示す順序にしたがって実施するものであって、
(a) アクリル性合成樹脂の粉末と即硬化性常温重合レジン液とを重合させることによって、硬化が進行状態にある固溶体を生成する工程、
(b) 前記硬化が進行状態にある固溶体の上下両面を光沢紙で包み、両面から薄板状に押し伸ばしたのち光沢紙を剥がす工程、
(c) 前記硬化が進行状態にある薄板状の固溶体に対し、工具を用いてアートフラワーの形成ならびにカラーペインティングする工程、
よりなるものである。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、前記の先行技術による製造方法では、製品の色調に関する仕上げが、製品の外形が完成した後にその表面に筆によって塗り付けることにより行われるので、当然の事ながら、明度、色彩度、あるいは色目などの点において精彩に欠けるばかりでなく、製品細部の隅々にまで及ぶ着色がきわめて困難であり、色が鮮明で魅力に富んだ光沢のある色彩の作品を作り出すことができなかった。
【0007】
この発明は、上述の従来技術の不具合点に鑑みてなされたもので、従来例に見られる明度、色彩度ならびに色目などに関する精彩の欠如が全く感じられず,新鮮で迫力ある色彩感覚が得られ、また着色を製品の細部にまで容易に行き亙らせることができて、しかも細かい細工の実施が可能なレジンアート造形体の製造方法を提供することを目的としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記の課題解決のために、この発明に係るレジンアート造形体の製造方法においては、アクリル性合成樹脂の粉末と即硬化性常温重合レジン液とを主原料とするレジンアート造形体の製造方法であって、▲1▼無色または白色のアクリル性合成樹脂の粉末に適量の顔料を加えてブレンドすることにより、カラーパウダーを生成する工程、▲2▼前記生成したカラーパウダーに対し即硬化性常温重合レジン液をあるいは無色または白色のアクリル性合成樹脂の粉末に対しカラーの即硬化性常温重合レジン液を重合させることによって、硬化が進行状態にあるカラー固溶体を生成する工程、▲3▼前記硬化が進行状態にあるカラー固溶体の上下両面を透明な非反応性光沢紙で包み、薄板状に押し伸ばしたのち、前記光沢紙を剥がす工程、▲4▼前記硬化が進行状態にある薄板状の前記カラー固溶体に対し、造形工具を用いて造形体を形成する工程とのそれぞれを含んで前記の順序にしたがって製造される。
【0009】
以上のように構成されるレジンアート造形体の製造方法によって、レジンアート造形体を製造するには、まず無色または白色のアクリル性合成樹脂の粉末に適量の色顔料を加えてブレンドすることによって有色のカラーパウダーを生成し、つぎにアクリル性合成樹脂の粉末と即硬化性常温重合レジン液とを重合させることによって、硬化が進行状態にあるカラー固溶体を生成し、 つぎに前記硬化が進行状態にあるカラー固溶体の上下両面を光沢紙で包み、薄板状に押し伸ばしたのちに光沢紙を剥がす。これによってカラー固溶体の表面は光沢のある平滑面となる。つぎに、このように薄くて光沢のある固溶体に対し、造形工具を用いて例えばアートフラワーの形成、特にその花びらの造形、あるいは各花びらの姿態の形成などを、前記工程の順序にしたがって実施する。
【0010】
【発明の実施の形態】
この発明に係るレジンアート造形体の製造方法について、実施の形態を図面に基づいて以下に詳しく説明する。
【0011】
図1はこの発明に係るレジンアート造形体の一例として製作されたレジンアートフラワーの装着状態を示す斜視図であり、図2はそのレジンアートフラワーの拡大図である。1はアートフラワー、2はアートフラワー1を構成する花びら、3は同じく葉で、これらはいずれも硬化が進行中の球状のカラー固溶体Aを、図4に示すように、上下2枚の定形のセロハン紙S・Sの間に挟み込んだ状態で、造形工具(例えば、歯科用インプリメントやピンセット)11・12を用いてセロハン紙Sの上から薄板状に伸ばして形成したものを、互いに結合し、組み合わせてレジンアートフラワーFとして完成したものである。
【0012】
つぎに、以上の構成をそなえる前記レジンアートフラワーの製造方法の一例として、カラーパウダーを即硬化性常温重合レジン液と重合させることにより生成したカラー固溶体を素材として使用する製造方法を取り上げ、使用される材料,造形工具等について具体例を上げて説明する。
【0013】
本製造方法に使用される材料の一例をつぎに示す。
【0014】
a)無色(透明)または白色のアクリル性合成樹脂の粉末
b)色顔料
c)即硬化性常温重合レジン液
また、使用される工具等は、つぎの通りである。
【0015】
d)スポイド
e)ダッペンプレート(容器)15
f)ダッペングラス16
g)筆17
h)セロハン紙S
i)造形工具(インプラメント11、ヘラ状器具)
j)ピンセット12
k)油性カラーインク
【0016】
これらを使用して行われる製造過程の一例について、順を追って列記すると次の通りである。図3〜図4に示すように、
(1) ダッペンプレート15の複数の収容部15aに無色または白色のアクリル性合成樹脂の粉末(ノンカラーパウダーともいう)Bを取り出し、それらのノンカラーパウダーBに適量の色顔料を加えてブレンドすることにより、カラーパウダーCを生成する(図3(a))。
【0017】
(2) ダッペングラス16に適量注入した透明な即硬化性常温重合レジン液Rに対し、適量の油性カラーインク(図示せず)を色と濃度を見ながらスポイドを使って容器中で注入してブレンドすることにより、硬化が進行状態にあるカラーリキッドを生成する(図示を省略)。
【0018】
(3) ブレンドしてできたカラーリキッドの必要量を、複数のダッペングラスに移し入れる(図示を省略)。
【0019】
(4) ダッペングラス16中のカラーリキッドを筆17によってその筆先に受け取り、用意された無色または白色のアクリル性合成樹脂粉末B又はカラーパウダーCにその筆先を浸してカラーミックスチュア(カラー固溶体)Aを作成する(図3(b))。このときのノンカラーパウダーB又はカラーパウダーC:カラーリキッドの割合はほぼ1:1にするとよい。
(4')あるいは、カラーパウダーCに即硬化性常温重合レジン液Rを付けた筆先を浸してカラーミックスチュア(カラー固溶体)Aを作成する(図3(b))。このときのカラーパウダーC:即硬化性常温重合レジン液Rの割合もほぼ1:1にするとよい。
【0020】
(5) このカラーミックスチュアAを光沢紙、たとえばセロハン紙S・Sの間に挟み、造形工具11を使ってその上から押し伸ばして薄板体を形成する(図4(a))。力の入れ加減によって薄板状のカラーミックスチュアAの厚さを自由に調節し、所望の厚さならびに所望の形に仕上げることができる。ここで光沢紙Sを使用するのは、カラーミックスチュアAの表面に光沢のある艶を出させるためである。なお、セロハン紙Sはティシュペーパー等の上に載せ、セロハン紙Sが自由に湾曲する状態でカラーミックスチュアAに造形を施すのが望ましい。
【0021】
(6) 前記硬化が進行状態にあるカラーミックスチュアAをセロハン紙S間から取り出し、ペーパーシートの上に置き造形工具11・12を用いて形を整えたのち、カラーミックスチュアAが完全に硬化せず、柔軟性を有する状態で、カラーミックスチュアAを手に持ちかえて造形工具11・12でレジンアートフラワーFの各部の作成、ならびに必要に応じ、カラーリキッドによる補足的ペインティングを施す(図4(b))。
【0022】
(7) 以上の要領を繰り返して複数の部材、たとえば花の場合は複数の花びら、つぼみ、あるいは葉などを作成し、これらを手際よく組み合わせることにより、一枝の花であるレジンアートフラワーFを作成することができる(図4(c))。
【0023】
(8) 出来上がったレジンアートフラワーFに対し、さらに所望のカラーリキッドを筆によって直接塗布し、あるいは濃淡、ぼかし、陰影などを適宜に加筆することによって、奥行のあるレジンアートフラワーを製造することができる。
【0024】
ところで、ノンカラーパウダーBに対しカラーリキッドを加えると、比較的淡色のカラーミックスチュアAが作成される一方、カラーパウダーCに対しカラーリキッドを加えると、鮮やかな濃色のカラーミックスチュアAが作成される。光沢紙はセロハン紙Sに限定するものではないが、例えばアクリル系などのレジン液と反応したり溶融したりするおそれのある光沢紙は不適格である。
【0025】
図5および図6は異なる実施例を示し、これは前記製造方法によって製作したレジンアートフラワーを中核として作成された異なる態様のレジンアート造形体で、いわゆる水中花式のアートフラワーと称せられるものである。図4,図5において、レジンアートフラワー4は、ネイルプレート5と、その上に止着されるレジンアートフラワー完成品6と、これをネイルプレート5の上に密着状態に取り付けている樹脂部7とによって構成される。
【0026】
つぎに前記のレジンアートフラワー4を製造する方法について具体的に説明する。まず、前記の方法により製造されたレジンアートフラワーの完成品6を、アクリル性合成樹脂の粉末と即硬化性常温重合レジン液との重合により生成された前記硬化が進行状態にある固溶体を用いて、ネイルプレート5の上の所望位置に止着する。止着されるレジンアートフラワーの完成品6は、1個または複数個とされるが、花の大きさはできるだけ小型に作成した方が美的感覚のすぐれた作品ができる。止着した花の上から少量づつの透明体の薄層を、間に空気が混入しないように十分注意しながら静かに筆で塗り重ねて行く。この作業の間に空気の混入があると、気泡のために全体の透明感が失われ、芸術品としての価値が大きく失われる。カラーリキッドの塗り重ね作業は、樹脂部7がネイルプレート5の上でアートフラワー完成品6を密着状態に取り付け、全体が丘陵型に丸みをもった状態になるまで行われる。このようにして、ネイルプレート5上の全面に亙り、止着されたレジンアートフラワーの完成品6を外部から透視できる樹脂部7を形成させることができる。この結果、製造されたレジンアートフラワー4は、ネイルプレート5上のあらゆる方向から内部のレジンアートフラワー完成品6を、透明度の高い樹脂部7を透過して眺めることができ、さながら水中花を見る感じのする作品として完成される。
【0027】
【発明の効果】
以上説明したことから明らかなように、この発明に係るレジンアート造形体の製造方法には、つぎのようなすぐれた効果がある。
【0028】
(1) 先行技術による製造方法では、製品の外形が無色あるいは白色の状態で完成した後、その表面に筆によって色付けを行っていたので、当然の事ながら、明度、色彩度、あるいは色目などの点で精彩に欠け、また製品細部の隅々までの着色がきわめて困難で、そのため鮮明で魅力に富んだ光沢ある色彩の作品を作り出すことができなかった。
【0029】
これに対し、この発明方法では、固溶体の生成に当たり、無色又は白色のアクリル性合成樹脂の粉末(ノンカラーパウダー)に当初から適量の色顔料をブレンドしてカラーパウダーを生成し、このカラーパウダーに即硬化性常温重合レジン液あるいはカラーパウダー又はノンカラーパウダーにカラーリキッドを重合させて、硬化が進行状態にあるカラー固溶体を生成することにより、当初からカラー固溶体を製品の基調とすることとしたので、製品の色調が先行方法のものにくらべてきわめて新鮮で迫力ある色彩感覚に溢れるものとすることができた。
【0030】
(2) 製品の造形(外形)が完成した後、その表面に筆によって色付けを行っていた従来方法に比べ、この発明方法では製品の素材そのものが顔料によって着色されているので、製品の細部にまできわめて容易に色彩を行き亙らせることができ、また細かい細工を自由に行うことができるようになった。
【0031】
(3) 構成素材が硬化の十分に進行していない初期を選んで、工具による加工を行うなどのタイミングの選択を自由に行うことができるので、素材が柔軟性をそなえている状態の加工も要求に応じて簡単容易に行うことができ、表面の光沢の取得も簡単容易である。
【0032】
(4) 請求項2記載のカラーリキッドは即硬化性常温重合レジン液に油性のカラーインクを適量ブレンドしたものであるから、単に無色透明な即硬化性常温重合レジン液を使用するのに比べて、一層鮮やかな色彩をもつレジン造形体が得られ、幅広い美観を醸し出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の一実施例に係るアートフラワーの装着状態を示す斜視図である。
【図2】図1のアートフラワーの拡大図である。
【図3】図3・図4は本発明の一実施例に係る製造方法を順に示すもので、図3(a)・図3(b)は斜視図である。
【図4】本発明の一実施例に係る製造方法を順に示すもので、図4(a)・図4(b)・図4(c)はそれぞれ斜視図である。
【図5】この発明に係るアートフラワーの異なる実施例の装着状態における平面図である。
【図6】図5のアートフラワーの拡大図である。
【符号の説明】
1・4・F アートフラワー
2 花びら
3 葉
5 ネイルプレート
6 アートフラワー完成品
7 樹脂部
A カラーミックスチュア(カラー固溶体)
B 無色または白色のアクリル性合成樹脂の粉末(ノンカラーパウダー)
C カラーパウダー
R 即硬化性常温重合レジン液
S セロハン紙(透明な光沢紙)
Claims (2)
- アクリル性合成樹脂の粉末と即硬化性常温重合レジン液とを主原料とするレジンアート造形体の製造方法であって、
▲1▼ 無色または白色のアクリル性合成樹脂の粉末に適量の顔料を加えてブレンドすることにより、カラーパウダーを生成する工程、
▲2▼ 前記生成したカラーパウダーに対し即硬化性常温重合レジン液をあるいは無色または白色のアクリル性合成樹脂の粉末に対しカラーの即硬化性常温重合レジン液を重合させることによって、硬化が進行状態にあるカラー固溶体を生成する工程、
▲3▼ 前記硬化が進行状態にあるカラー固溶体の上下両面を透明な非反応性光沢紙で包み、薄板状に押し伸ばしたのち、前記光沢紙を剥がす工程、
▲4▼ 前記硬化が進行状態にある薄板状の前記カラー固溶体に対し、造形工具を用いて造形体を形成する工程、
のそれぞれを含んで前記の順序にしたがって製造されることを特徴とするレジンアート造形体の製造方法。 - 即硬化性常温重合レジン液に対し、適量の油性カラーインクを均一に混合して撹拌してなる請求項1記載のレジンアート造形体の製造方法に使用するカラーリキッド。
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