JP4038155B2 - 止血パッド - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、止血パッドに関し、特に人工血管や動脈などに直接穿刺後の止血を行う止血パッドに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、医療において採血、点滴、輸血、人工透析などが幅広く行われているが、これらは皮膚表面より血管に注射針、カテーテル、医療用チューブなどを穿刺して行うものであり、抜針後には穿刺部から出血するので、脱脂綿やガーゼを当てて指で圧迫したり、粘着テープ、伸縮バンド、止血パッドなどで押圧したりして止血している。特に、透析患者の場合は、人工血管やシャント部、動脈に直接穿刺するため、血管内圧が高く、血流も多いので止血に30分〜1時間を要していた。
止血パッドとして、ディスポーザブルガーゼを円柱状に巻いた圧迫綿を使用した場合、ガーゼに血液が浸透してしまうので、止血に技術、時間を要していた。
また、市販品には断面が略円形状に形成された綿状の止血パッドがあるが、血液を浸透させることが前提であるため、止血に時間を要するだけでなく、圧迫時の安定性が悪く、袖口に引っ掛かって取れることがあった。
更に、平板状で薄く、軟らか過ぎるガーゼは血液を吸って出血が止まり難いだけでなく、穿刺部を圧迫することができず、再出血の可能性があり、面積が大き過ぎるものは、抜針時に穿刺部を確認し難かった。
【0003】
これらの問題点を解決するために、(特許文献1)には「基材の一面に設けた粘着剤層の上に、注射針等を刺した場合にできる血管の穿刺孔と皮膚表面の穿刺孔の双方を覆って押圧できるような大きさを有し、かつ厚みを持った硬目のパッドを定置し、これを穿刺部に貼り付けてパッドにより血管穿刺孔を適度に圧迫して止血し、また、皮膚表面穿刺孔からの出血もパッドに吸収するようにした止血用貼付材」が開示されている。
また、(特許文献2)には「熱接着性合成繊維を含有する不織布片の周縁部及び底部を熱融着させて硬化させると共に、上記底部の中央部分を上方に向って突出させ、血管に対する穿刺部に当接する上面を柔らかな球面状に成形した止血用パッド」が開示されている。
更に、(特許文献3)には「人体表面の穿刺部を圧迫する圧迫部の両面をそれぞれ球状凸面にし、碁石形状の圧迫部の外周につばを突出して、つば付き碁石形状にした止血パッド」が開示されている。
【0004】
【特許文献1】
特開平5−245173号公報
【特許文献2】
特開平11−169402号公報
【特許文献3】
特開2003−19159号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来の技術では、以下のような課題を有していた。
(1)(特許文献1)は、基材の一面に設けた粘着剤層の上に、注射針等を刺した場合にできる血管の穿刺孔と皮膚表面の穿刺孔を覆って押圧できるパッドを定置し、これを穿刺部に貼り付けてパッドにより血管穿刺孔を適度に圧迫して止血するものであるが、この場合、粘着剤層があるために止血用貼付材全体が大きくなり、穿刺孔の位置を確認しづらく、また、粘着剤層が皮膚に貼り付いてしまうと、位置をずらすことが困難であるという課題があった。特に、透析患者などの場合は、人工血管やシャント部、動脈に直接穿刺するため、血管内圧が高く、血流も多いので、抜針後、速やかに穿刺部を圧迫して止血する必要があり、このような構成では、作業性、信頼性に欠けるという課題があった。更に、パッドの表層が血液を早く吸収する層なので、出血量が多い場合には止血に時間を要し、信頼性、機能性に欠けるという課題があった。
(2)(特許文献2)では、皮膚表面に当たる柔らかな球面状部分と、硬い周縁部と、周縁部から次第に硬さが柔らかくなる底部を併せ持ち、また底部の中央部分を上方に突出させているので、硬さの調整や突出部を形成するために温度や圧力の管理が必要となって製造方法が複雑であり、更に成形品の周縁の不成形な部分は打ち抜き除去する必要があるので生産性に欠けるという課題があった。また、パッド部が熱接着性合成繊維を含有する不織布であるため、出血量が多い場合には止血に時間を要し、機能性、作業性に欠けるという課題があった。
(3)(特許文献3)は、止血パッドを外周に突出したつばを有する碁石形状とすることにより、球状凸面の中心部で人体表面の穿刺部を集中的に圧迫して止血効果を高め、下面の球状凸面の中心部のみが人体表面に当たり、揺れたり、転がろうとすると、外周に突出したつばの外周縁が人体表面に当たって揺れや転がりを止めるものであるが、圧迫時の安定性に欠け、包帯や粘着テープで押し付け難く、信頼性、作業性に欠けるという課題があった。また、ポリエステル不織布の芯体の両面にレーヨン不織布を積層した3層構造で親水性があるので、血液を吸収し易く、出血量が多い場合には止血に時間を要し、機能性、作業性に欠けるという課題があった。
【0006】
本発明は上記従来の課題を解決するもので、止血時間を短縮でき、作業性を向上して患者や作業者の負担を軽減できると共に、圧迫時の安定感を向上させることにより確実な止血を行って患者に安心感を与え、止血作業を容易にして作業者の負担を軽減することができ、信頼性、確実性、作業性に優れ、特に血液が固まり難い患者や出血量が多い透析患者などの止血に好適な止血パッドを提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために本発明の止血パッドは、以下の構成を有している。
本発明の請求項1に記載の止血パッドは、人工血管や血管に注射針等を直接穿刺した後の止血を行なう止血パッドであって、断面略楕円形に形成された透水性の楕円柱状体と、前記楕円柱状体の長軸側の表面の少なくとも止血面に被着された不透水性のフィルム又はシートで形成された針孔押さえ部と、を有し、前記針孔押さえ部の長手方向に平行及び/又は直交する幅が、前記楕円柱状体の長手方向に平行及び/又は直交する幅よりも小さく形成され、かつ前記楕円柱状体の長手方向に平行な幅が、人の人差し指乃至は親指とほぼ同等か、やや大き目の幅に形成されている構成を有している。
この構成により、以下のような作用を有する。
(1)略楕円形に形成され止血面が扁平状で丸味をおびていることにより、穿刺部を集中的に圧迫して止血効果を高めると共に、止血面が広く揺れや転がりが発生し難く安定しているので、着衣時に止血パッドが袖口に引っ掛かって取れるのを防止することができる。
(2)止血パッドが楕円柱状体で長軸側で止血しているため、テープなどにより腕等に固定しても動くことがなく、止血作業が容易で、安定した状態で穿刺部を圧迫することができるので、短時間で止血することができる。
(3)楕円柱状体が透水性を有することにより、溢れ出た血液を吸収し固化させるので、衣服などを汚すことがなく、短時間で止血することができる。
(4)針孔押さえ部が不透水性であることにより、血液を吸収しないので、穿刺部を押さえて密閉し、出血を抑えて短時間で止血することができる。
(5)針孔押さえ部の長手方向に平行及び/又は直交する幅が、楕円柱状体の長手方向に平行及び/又は直交する幅よりも小さく形成されることにより、溢れ出た血液を透水性の楕円柱状体で効果的に吸収し固化させることができ、止血を効率よく行うので衣服などの汚れを防止することができる。
(6)楕円柱状体の大きさが人差し指乃至は親指程度なので取り扱いが容易で、穿刺部が確認し易く、的を絞って穿刺部を圧迫し、止血を行うことができる。
【0008】
ここで、楕円柱状体の素材には透水性の不織布が好適に用いられる。不織布としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリビニルアルコール、ポリアミド等の単独繊維又はこれらを組み合わせて混繊したものが使用できる。これらを加熱圧縮成形することにより、透水性の楕円柱状体が得られる。
また、綿、レーヨン、ポリエステル、ナイロン、アクリル等を材料とした繊維の織物や編物からなるシート状のものを巻いて楕円柱状体を形成するようにしてもよいし、綿を楕円柱状に形成して表面をシート状の編物などで覆うようにしてもよい。
尚、楕円柱状体表面はガーゼやネットなどで覆うようにしてもよい。これにより、表面の毛羽立ちを防止して取り扱い性を向上することができる。
不透水性の針孔押さえ部には、ゴム製の他に例えばポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリエステル、ポリイミド、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール、ポリビニルエーテル、ポリアミド等の軟質性の合成樹脂又はこれらと紙との複合材である軟質性の合成紙のフィルムやシート等が好適に使用できる。これにより、針孔押さえ部が血液を吸収しないだけでなく、楕円柱状体の繊維が穿刺部に付着して残ることがないので、取り除き作業の手間を省くことができ、患者に苦痛を与えることもない。
楕円柱状体に針孔押さえ部を被着するためには熱溶着や澱粉糊を用いることが望ましい。これにより、人体に悪影響を与えることがない。
なお、止血パッドは直接、皮膚の穿刺部に触れるので、高圧蒸気滅菌やFDAで承認されているポリオキシエチレンソルビタントリステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート等の殺菌液で処理を行うことが好ましい。
針孔押さえ部の長手方向に平行及び直交する幅は、楕円柱状体の長手方向に平行及び直交する幅のそれぞれ約80%〜98%、好ましくは約85%〜95%に形成されることが望ましい。針孔押さえ部の幅が楕円柱状体の幅の85%より小さくなるにつれ、針孔押さえ部の面積が不足して穿刺部への位置合わせが困難になり、穿刺部を圧迫できずに止血時間が長くなる傾向があり、95%より大きくなるにつれて、溢れ出た血液を透水性の楕円柱状体で効果的に吸収し難く、衣服などが汚れ易くなるのでいずれも好ましくない。
楕円柱状体の長手方向の大きさが人差し指より小さいと指で摘み難く、穿刺部を確実に圧迫することが困難になる傾向があり、親指より大きいと、穿刺部が確認し難くなって的が絞り辛く、作業性が低下するので好ましくない。
より具体的には、楕円柱状体の長手方向に平行な幅は約20mm〜30mm、長手方向に直交する幅は約15mm〜20mm、厚さは約10mm〜16mmが好ましい。これにより、取り扱いが容易でテープなどによる固定も安定して作業性を向上させることができる。
【0010】
本発明の請求項2に記載の止血パッドは、請求項1に記載の止血パッドであって、前記楕円柱状体長手方向に平行な幅が前記楕円柱状体より小さく形成された前記針孔押さえ部が、前記楕円柱状体の前記止血面から延設して前記楕円柱状体の全周に被着されている構成を有している。
この構成により、請求項1の作用に加え、以下のような作用を有する。
(1)針孔押さえ部が楕円柱状体の全周に渡って被着されているので、裏表を気にする必要がなく、針孔押さえ部がめくれたり、剥がれたりすることもないので、確実かつ容易に止血作業を行うことができる。
(2)針孔押さえ部を楕円柱状体に被着する際の位置合わせが容易で生産性を向上させることができる。
ここで、針孔押さえ部は帯状に形成したものを楕円柱状体の外周に巻き付けるように被着してもよいし、予め環状に形成したものを楕円柱状体の外周に挿着するようにしてもよい。特に、予め環状に形成したものを挿着する場合、素材に伸縮性のあるものを使用すれば、接着などの工程が不要になり、容易に製造することができる。
帯状に形成した針孔押さえ部の幅は、楕円柱状体の軸方向長さの約70%〜90%に形成することが好ましい。楕円柱状体の軸方向長さに対する針孔押さえ部の幅の割合が70%より小さくなるにつれ、針孔押さえ部の面積が不足して穿刺部への位置合わせが困難になって、穿刺部を圧迫できずに止血時間が長くなり、90%より大きくなるにつれて、溢れ出た血液を透水性の楕円柱状体で効果的に吸収し難く、衣服などが汚れ易くなる傾向があるのでいずれも好ましくない。
【0012】
【発明の実施の形態】
(実施の形態1)
本発明の実施の形態1における止血パッドについて、以下図面を用いて説明する。
図1は本発明の実施の形態1における止血パッドの全体斜視図である。
図1中、10は本発明の実施の形態1における止血パッド、11は透水性の不織布などで長手方向に平行な幅及び長手方向に直交する幅(断面の長軸に平行な幅)が人差し指乃至は親指の大きさに形成された楕円柱状体、11aは楕円柱状体11の止血面、12はゴム製や軟質合成樹脂製のフィルムやシートなどで矩形状に形成され止血面11aに被着された不透水性の針孔押さえ部である。
透水性の楕円柱状体11は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリビニルアルコール、ポリアミド等の単独繊維又はこれらを組み合わせて混繊したものを素材とする透水性の不織布を加熱圧縮成形することにより看護士の人差し指乃至親指の大きさに形成されている。
不透水性の針孔押さえ部12は、ゴムやポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリエステル、ポリイミド、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール、ポリビニルエーテル、ポリアミド等の軟質合成樹脂のフィルムやシート又はこれらと紙との複合材である軟質合成紙で形成されている。これを楕円柱状体11の長手方向に平行及び直交する幅より小さい略矩形状にカットしたものを止血面11aに熱溶着や澱粉糊を用いて被着している。これにより、血液で濡れても針孔押さえ部12が外れたり、ズレたりするのを防止できる。
なお、楕円柱状体11の大きさが人差し指より小さいと指で摘み難く、穿刺部を確実に圧迫することが困難になる傾向があり、親指より大きいと、穿刺部が確認し難くなって的が絞り辛く、作業性が低下することがわかった。
具体的には、楕円柱状体の長手方向に平行な幅は約20mm〜30mm、長手方向に直交する幅は約15mm〜20mm、厚さは約10mm〜16mmが好適であることがわかった。掴み易く、押さえ易く、粘着テープで固定し易く作業性に優れているためである。
また、止血パッド10は高圧蒸気滅菌したものを用いた。
【0013】
以上のように構成された実施の形態1の止血パッド10について、以下その使用方法を説明する。
皮膚表面より血管に注射針、カテーテル、医療用チューブなどを穿刺した後に、穿刺部へ止血パッド10の止血面11aに被着された針孔押さえ部12を押し当てて指で圧迫し、必要に応じて粘着テープなどで固定して止血を行った。
【0014】
以上のように実施の形態1における止血パッドは構成されているので、以下の作用を有する。
(1)略楕円形に形成され止血面が扁平状で丸味をおびていることにより、穿刺部を集中的に圧迫して止血効果を高めると共に、止血面が広く揺れや転がりが発生し難く安定しているので、着衣時に止血パッドが袖口に引っ掛かって取れるのを防止することができる。
(2)止血パッドが楕円柱状体で長軸側で止血しているため、テープなどにより腕等に固定しても動くことがなく、止血作業が容易で、安定した状態で穿刺部を圧迫することができるので、短時間で止血することができる。
(3)楕円柱状体が透水性を有することにより、溢れ出た血液を吸収し固化させるので、衣服などを汚すことがなく、短時間で止血することができる。
(4)針孔押さえ部が不透水性であることにより、血液を吸収しないので、穿刺部を押さえて密閉し、出血を抑えて短時間で止血することができる。
(5)針孔押さえ部の長手方向に平行及び/又は直交する幅が、楕円柱状体の長手方向に平行及び/又は直交する幅よりも小さく形成されることにより、溢れ出た血液を透水性の楕円柱状体で効果的に吸収し固化させることができ、止血を効率よく行うので衣服などの汚れを防止することができる。
(6)楕円柱状体の大きさが人差し指乃至は親指程度なので取り扱いが容易で、穿刺部が確認し易く、的を絞って穿刺部を圧迫し、止血を行うことができる。
【0015】
(実施の形態2)
本発明の実施の形態2における止血パッドについて、以下図面を用いて説明する。
図2は本発明の実施の形態2における止血パッドの全体斜視図である。
図2中、20は本発明の実施の形態1における止血パッド、21は透水性の織布などで人差し指乃至は親指の大きさに形成された楕円柱状体、21aは楕円柱状体21の止血面、21bは楕円柱状体21の表面を覆って毛羽立ちを防止するレーヨンネットである。尚、実施の形態1と同様のものは同一の符号を付し説明を省略する。
透水性の楕円柱状体21は、綿、レーヨン、ポリエステル、ナイロン、アクリル等を材料とした繊維の織物や編物からなるシート状のものを巻いて形成している。この時、レーヨンネット21bを一緒に巻きこむことにより、楕円柱状体21表面の毛羽立ちを防止している。
これにより、楕円柱状体の繊維が穿刺部に付着して残ることがないので、取り除き作業の手間を省くことができ、患者に苦痛を与えることもない。
針孔押さえ部12は帯状に形成したものを楕円柱状体21の外周に巻き付けるように被着してもよいし、予め環状に形成したものを楕円柱状体21の外周に挿着するようにしてもよい。特に、予め環状に形成したものを挿着する場合、素材に伸縮性のあるものを使用すれば、接着などの工程が不要になり、容易に製造することができる。
【0016】
以上のように実施の形態2における止血パッドは構成されているので、実施の形態1に加え、以下の作用を有する。
(1)針孔押さえ部が楕円柱状体の全周に渡って被着されているので、裏表を気にする必要がなく、針孔押さえ部がめくれたり、剥がれたりすることもないので、確実かつ容易に止血作業を行うことができる。
(2)針孔押さえ部を楕円柱状体に被着する際の位置合わせが容易で生産性を向上させることができる。
(3)楕円柱状体の表面をガーゼで覆うことにより、楕円柱状体表面の毛羽立ちを防止しているので、楕円柱状体の繊維が穿刺部に付着して残ることがなく、取り除き作業の手間を省くことができ、患者に苦痛を与えることもない。
【0017】
【実施例】
以下、本発明の実施例を説明する。
(実施例1)
人工血管(6名)、上腕動脈の表在化(5名)、止血が困難な自己血管による内シャント(5名)の16名を対象に従来のディスポーザブルガーゼを用いた圧迫綿と作成した止血パッドで動・静脈側での止血時間を各6回測定した。また、取り扱い性、テープによる固定性、止血性を官能試験により5段階評価した。
止血パッドは、綿の両面にガーゼが積層されたシート状のリント布を幅2cm、長さ3cmとなるように略楕円柱状に巻き、その止血面にゴム性の手術用手袋を略矩形状にカットしたものを澱粉糊で貼付して作成し、高圧蒸気滅菌したものを使用した。
また、比較に用いた圧迫綿は、ディスポーザブルガーゼを直径1.5cm、長さ2cmの筒状に巻いた従来のものを使用した。
各条件における止血時間の測定結果の平均値を表1に示す。
【表1】
表1より、本実施例の止血パッドによる止血時間は従来のものに対し、人工血管で動脈側平均76秒、静脈側平均68秒、上腕動脈の表在化で平均10秒短縮できることが分かった。
また、ディスポーザブルガーゼを用いた従来の圧迫綿では5分以上要した自己血管でも、本実施例によれば動脈側平均190秒、静脈側平均89秒も短縮できることが分かった。
次に、取り扱い性、固定性、止血性の官能試験結果を表2に示す。
【表2】
表2より、本実施例の止血パッドの取り扱い性、固定性、止血性は、いずれも良好であり、全ての点において従来例よりも優れることが分かった。
【0018】
【発明の効果】
以上のように、本発明の止血パッドによれば、以下のような有利な効果が得られる。
請求項1に記載の発明によれば、以下のような効果を有する。
(1)略楕円形に形成され止血面が扁平状で丸味をおびていることにより、穿刺部を集中的に圧迫して止血効果を高めると共に、止血面が広く揺れや転がりが発生し難く安定し、着衣時に止血パッドが袖口に引っ掛かって取れるのを防止して患者の負担や不安を軽減することができる信頼性に優れる止血パッドを提供することができる。
(2)止血パッドが楕円柱状体で長軸側で止血しているため、テープなどにより腕等に固定しても動くことがなく、止血作業が容易で作業者の負担を軽減し、安定した状態で穿刺部を圧迫することができるので、短時間で止血して患者の負担や不安を軽減することができる作業性、安定性に優れる止血パッドを提供することができる。
(3)楕円柱状体が透水性を有することにより、溢れ出た血液を吸収し固化させるので、衣服などを汚すことがなく、短時間で止血することができる信頼性、確実性に優れる止血パッドを提供することができる。
(4)針孔押さえ部が不透水性であることにより、血液を吸収しないので、穿刺部を押さえて密閉し、出血を抑えて短時間で止血することができる信頼性、確実性に優れる止血パッドを提供することができる。
(5)針孔押さえ部の長手方向に平行及び/又は直交する幅が、楕円柱状体の長手方向に平行及び/又は直交する幅よりも小さく形成されることにより、溢れ出た血液を透水性の楕円柱状体で効果的に吸収し固化させることができ、止血を効率よく行うので衣服などの汚れを防止して患者の負担や不安を軽減することができる信頼性、確実性に優れる止血パッドを提供することができる。
(6)楕円柱状体の大きさが人差し指乃至は親指程度なので取り扱いが容易で、穿刺部が確認し易く、的を絞って穿刺部を圧迫し、止血を行うことができる作業性、信頼性、確実性に優れる止血パッドを提供することができる。
【0020】
請求項2に記載の発明によれば、請求項1の効果に加え、以下のような効果を有する。
(1)針孔押さえ部が楕円柱状体の全周に渡って被着されているので、裏表を気にする必要がなく、針孔押さえ部がめくれたり、剥がれたりすることもないので、確実かつ容易に止血作業を行うことができる作業性、信頼性、確実性に優れる止血パッドを提供することができる。
(2)針孔押さえ部を楕円柱状体に被着する際の位置合わせが容易で生産性に優れる止血パッドを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態1における止血パッドの全体斜視図
【図2】本発明の実施の形態2における止血パッドの全体斜視図
【符号の説明】
10 止血パッド
11 楕円柱状体
11a 止血面
12 針孔押さえ部
20 止血パッド
21 楕円柱状体
21a 止血面
21b ガーゼ
Claims (2)
- 人工血管や血管に注射針等を直接穿刺した後の止血を行なう止血パッドであって、断面略楕円形に形成された透水性の楕円柱状体と、前記楕円柱状体の長軸側の表面の少なくとも止血面に被着された不透水性のフィルム又はシートで形成された針孔押さえ部と、を有し、前記針孔押さえ部の長手方向に平行及び/又は直交する幅が、前記楕円柱状体の長手方向に平行及び/又は直交する幅よりも小さく形成され、かつ前記楕円柱状体の長手方向に平行な幅が、人の人差し指乃至は親指とほぼ同等か、やや大き目の幅に形成されていることを特徴とする止血パッド。
- 前記楕円柱状体長手方向に平行な幅が前記楕円柱状体より小さく形成された前記針孔押さえ部が、前記楕円柱状体の前記止血面から延設して前記楕円柱状体の全周に被着されていることを特徴とする請求項1に記載の止血パッド。
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