JP4036415B2 - ヒアルロニダーゼ阻害剤 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は白鶴霊芝の溶媒抽出物を用いる抗アレルギー剤、とくにアナフィラキシー型アレルギー(I型アレルギー)に有効な抗アレルギー剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
アナフィラキシー型アレルギーは花粉症に代表されるアレルギー反応であり、空気中の少量の花粉でも過敏症者は目の周囲が痒くなり、鼻水を出し、くしゃみをしたりし、ときには蕁麻疹や喘息まで起したりする。
このようなアナフィラキシー型アレルギーの免疫学的メカニズムは、主に免疫グロブリンEの抗原抗体反応により説明される。即ち、初期感作が成立した肥満細胞における抗原抗体反応および細胞外にあるカルシウムイオンの肥満細胞内流入が生じ、不活性型で存在しているヒアルロニダーゼ(Hyaluronidase)の活性化が生じて細胞のレスポンスが起こる。これにより細胞から顆粒が脱出し、顆粒中に含まれる化学伝達物質が遊離して痒み、湿疹等、前述のさまざまな症状が現れるのである。
【0003】
この免疫学的メカニズムの中でヒアルロニダーゼは重要な役割を果たす酵素である。この酵素を炎症性の細胞(白血球など)が多く持っており、とくに炎症部位では非常に高濃度になることが多く、細胞膜の構成成分であるヒアルロン酸を分解して炎症を増強するといわれている。このためヒアルロニダーゼ酵素を阻害すれば抗アレルギー効果が期待できるというので、これまでに様々な化合物がヒアルロニダーゼ阻害活性をテストされている(H.Kakegawa,N.Mitsuo他,Chem.Pharm.Bull.33[9]3738−3744(1983)、H.Kakegawa,H.Matsumoto他,Chem.Pharm.Bull.33[2]642−646(1985)、H.Kakegawa,N.Mitsuo他,Chem.Pharm.Bull.33[2]642−646(1985)、S.Yamamura,L.R.Simpol他,Phytochemistry.39[1]105−110(1995)、前田有美恵他,静岡県衛生環境センター報告[30]41−45(1987))。
【0004】
白鶴霊芝(Rhinacanthus nasuta(L.)Kurz)は、インド南部デカン高原の原産とされるリナカンサス属きつねのまご科に属する常緑小低木であり、その全草(リナカンツス草)は駆虫、消炎、皮膚真菌に対する抗菌作用のあることが知られ(原色牧野和漢薬草大図鑑、492頁、北隆館、1988年)、主に中国、台湾等において、また最近では日本国においても漢方薬として用いられている。その他、本出願人による以前の出願で、この白鶴霊芝に活性酸素消去能があること(特開平9−143091号、活性酸素消去能を有する組成物)および***促進作用があること(特開平9−169662号、***促進剤)を開示している。
しかしながら、この白鶴霊芝乃至白鶴霊芝の水および/または有機溶媒抽出物に抗アレルギー作用があることは知られていない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者等は、アナフィラキシー型アレルギーに有効な抗アレルギー効果を有する物質につき鋭意研究の結果、従来漢方薬、***促進剤および健康食品として使用されている白鶴霊芝の水および/または有機溶媒抽出物が有効であることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、白鶴霊芝の水および/または有機溶媒抽出物を主成分とすることを特徴とするヒアルロニダーゼ阻害剤である。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明に使用する白鶴霊芝は、市販されている葉、全草(地上部)、根あるいはこれらのものの混合物を使用すればよい。好ましくはこれらのものを天日乾燥および/またはドラム乾燥し、粉砕機にかけて12メッシュ以上、好ましくは20メッシュ以上に粉砕して用いる。
必要によりこの白鶴霊芝は、天日乾燥および/またはドラム乾燥したものを焙煎器により焙煎したものを用いてもよい。
【0008】
このようにして得られた白鶴霊芝を水および/または有機溶媒で抽出して本発明抗アレルギー剤である抽出物を得る。
【0009】
本発明において、抽出に使用する水には冷却水、常温水および熱水が包含される。この水は次に挙げる有機溶媒と混合して使用することもできる。
【0010】
本発明において、抽出に使用する有機溶媒としては、エタノール、メタノール、プロパノール、1,3−ブチレングリコール等のアルコール類、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、メチルエチルエーテル等のエーテル類、アセトン等のケトン類、ベンゼン等のフェノール類、ヘキサン、ヘプタン、流動パラフィン、スクワラン等の炭化水素類、その他が挙げられ、これらを単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
【0011】
得られる白鶴霊芝の水および/または有機溶媒抽出物は無臭乃至僅かな芳香、独特のコクのある味を帯びた透明で緑褐色乃至深い緑色の液体であり、これをそのまま使用してもよいが、好ましくは濾過、遠沈、その他の方法で精製し、必要によりさらに蒸留等の手段により適度に濃縮して用いる。またこの抽出液をさらに蒸留乾固、凍結乾燥等の手段で処理して得られる無臭乃至僅かな芳香、独特のコクのある味を帯びた透明で緑褐色乃至深い緑色の微粉末として用いることも可能である。
【0012】
次に本発明の実施例および試験例を挙げて説明するが、これらは本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【実施例】
実施例1
天日乾燥し、次いでドラム乾燥した白鶴霊芝の葉(大協物産有限会社販売、以下白鶴霊芝の購入先は同じ)1kgを粉砕機にて粉砕し、焙煎器にて焙煎後、さらに粉砕し、得られた粉砕物を篩にかけて12メッシュで分級して白鶴霊芝葉粉砕物約0.8kgを得た。
この白鶴霊芝葉粉砕物2.5gを熱水100mlに浸漬、濾過してジャスミン様の僅かな芳香、独特のコクのある味を帯びた緑褐色の透明な液状の抽出物を得た。
【0013】
実施例2
白鶴霊芝の全草粉砕物2.5gを水100mlに浸漬、濾過して僅かな芳香、独特のコクのある味を帯びた深い緑色の透明な液状の抽出物を得た。
【0014】
実施例3
白鶴霊芝の全草粉砕物2.5gをエタノール100mlに浸漬、濾過して僅かな芳香、独特のコクのある味を帯びた深い緑色の透明な液状の抽出物を得た。
【0015】
実施例4
白鶴霊芝の葉、茎および根の粉砕物2.5gを1,3−ブチレングリコール100mlに浸漬、濾過して僅かな芳香、独特のコクのある味を帯びた深い緑色の透明な液状の抽出物を得た。
【0016】
実施例5
天日乾燥し、次いでドラム乾燥した白鶴霊芝の葉および根の粉砕物3gを1:1エタノール水100mlに浸漬、濾過して僅かな芳香、独特のコクのある味を帯びた深い緑色の透明な液状の抽出物を得た。
【0017】
実施例6
白鶴霊芝葉粉砕物2.5gを熱水100mlに浸漬、濾過して僅かな芳香、独特のコクのある味を帯びた緑褐色の透明な液状の抽出物を得た。
【0018】
実施例7
エタノールの代わりにアセトンを使用する他は実施例3と同様に処理して、僅かな芳香を有し、独特のコクのある味を帯びた深い緑色の透明な液状の抽出物を得た。
【0019】
実施例8
エタノールの代わりにエーテルを使用する他は実施例3と同様に処理して、僅かな芳香を有し、独特のコクのある味を帯びた深い緑色の透明な液状の抽出物を得た。
【0020】
実施例9
エタノールの代わりにベンゼンを使用する他は実施例3と同様に処理して、僅かな芳香を有し、独特のコクのある味を帯びた深い緑色の透明な液状の抽出物を得た。
【0021】
実施例10
天日乾燥し、次いでドラム乾燥した白鶴霊芝全草および根1kgを粉砕機にて粉砕し、焙煎器にて焙煎後、さらに粉砕し、得られた粉砕物を篩にかけて12メッシュで分級して白鶴霊芝全草および根の粉砕物約0.8kgを得る他は、実施例1と同様に処理して僅かな芳香、独特のコクのある味を帯びた緑褐色の透明な液状の抽出物を得た。
【0022】
実施例11
実施例1と同様に処理して得られた抽出物1000mlを凍結乾燥して、僅かな芳香、独特のコクのある味を帯びた緑褐色の微粉末約10mgを得た。
【0023】
実施例12
実施例2と同様に処理して得られた抽出物1000mlを凍結乾燥して、僅かな芳香、独特のコクのある味を帯びた緑褐色の微粉末約10mgを得た。
【0024】
実施例13
実施例3と同様に処理して得られた抽出物1000mlを凍結乾燥して、僅かな芳香、独特のコクのある味を帯びた深い緑色の微粉末約10mgを得た。
【0025】
実施例14
実施例4と同様に処理して得られた抽出物1000mlを凍結乾燥して、僅かな芳香、独特のコクのある味を帯びた深い緑色の微粉末約10mgを得た。
【0026】
実施例15
実施例5と同様に処理して得られた抽出物1000mlを凍結乾燥して、僅かな芳香、独特のコクのある味を帯びた深い緑色の微粉末約10mgを得た。
【0027】
試験例1
実施例11と同様にして得られた白鶴霊芝葉熱水抽出物微粉末を用いてヒアルロニダーゼ阻害活性を試験した。試験は超純水に溶解した試料に、順に各々緩衝液に溶解しておいたヒアルロニダーゼ、活性化剤およびヒアルロン酸(基質)を混合し、分解されたヒアルロン酸量をモルガン−エルソン(Morgan−Elson)法にて測定することにより行い、対照溶液(コントロール)との比較で阻害率を産出した。
試験方法
(1)試料調製
1)白鶴霊芝
▲1▼白鶴霊芝熱水抽出物:白鶴霊芝葉熱水抽出物微粉末を超純水に溶解し1000ppmとする。
▲2▼白鶴霊芝熱水抽出物水画分:白鶴霊芝葉熱水抽出物微粉末をカラムクロマトグラフィー処理して得た水画分を超純水に溶解し1000ppmとする。
▲3▼白鶴霊芝熱水抽出物30%メタノール水画分:白鶴霊芝葉熱水抽出物微粉末をカラムクロマトグラフィー処理して得た30%メタノール水画分を超純水に溶解し1000、500、100ppmとする。
▲4▼対照溶液:超純水を使用する。
2)ヒアルロニダーゼ
ヒアルロニダーゼ溶液:ヒアルロニダーゼIV−S型(牛睾丸由来:SIGMA社製)を0.1M酢酸緩衝液(pH4.0)[以下、緩衝液という]に溶解し、最終酵素活性約150U/mlの緩衝液とする。
3)ヒアルロン酸
ヒアルロン酸カリウム溶液:ヒアルロン酸カリウム塩(雄鶏のとさか由来:和光純薬社製)を緩衝液に溶解し、最終酵素活性約0.4mg/mlの緩衝液とする。
4)活性化剤
カンパウンド48/80(SIGMA社製)、CaCl2およびNaClの濃度がそれぞれ0.5mg/ml、12.5mM、0.75Mとなるように緩衝液に溶解し、これらの混合液を使用直前に1/3に希釈する。
(2)試薬(Morgan−Elson法)
1)p−ジメチルアミノベンズアルデヒド(p−DABA)試薬:p−DABA(和光純薬社製)10gおよび10N塩酸溶液12.5mlに酢酸を加えて100mlにし、使用直前に酢酸で1/10に希釈する。
2)ホウ酸溶液:ホウ酸(和光純薬社製)4.95gに超純水50mlを加え、1N NaOH溶液でpH9.1に調製した後、超純水を加えて100mlとする。
(3)試験手順
試験は上記試料および試薬を用い、スクリュー蓋つき試験管をインキュベーション中は蓋を閉めるようにして使用して下記手順で実施した。なお、阻害率の算定は、分光光度計(日立製作所製 150−20形ダブルビーム分光光度計)を用いて585nmの吸光度(O.D.585)を測定し、次式により算定した。
阻害率(%)=[1−(C−D)/(A−B)]×100
[式中、A=対照溶液のO.D.585、B=対照溶液のブランクのO.D.585、C=試料溶液のO.D.585、D=試料溶液のブランクのO.D.585である。]
試験結果
試験の結果を表1に示すが、白鶴霊芝熱水抽出物は優れた抗アレルギー効果を示すことが明らかである。
【0028】
試験例2
試験例1において、白鶴霊芝葉熱水抽出物微粉末を用いる代わりに実施例15と同様に処理して得られた白鶴霊芝葉根1:1エタノール水抽出物微粉末の60%および30%メタノール水画分を使用する他は同様にしてヒアルロニダーゼ阻害活性を試験した。
結果を表2に示す。白鶴霊芝1:1エタノール水抽出物は優れた抗アレルギー効果を示すことが明らかである。
【0029】
【発明の効果】
本発明のヒアルロニダーゼ阻害剤は、アナフィラキシー型アレルギーに対して有効であり、花粉症や蕁麻疹、喘息の治療および予防効果が期待できる。さらに、本発明のヒアルロニダーゼ阻害剤は、天然物の水および/または有機溶媒抽出物であるから安全性が高く、長期連用しても人体に有害な作用を及ぼさない利益がある。
Claims (1)
- 白鶴霊芝の水および/または有機溶媒抽出物を主成分とすることを特徴とするヒアルロニダーゼ阻害剤。
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