JP4035754B2 - ビスフェノールaハプテン化合物、ハイブリドーマ、有機溶媒耐性を有する抗ビスフェノールa抗体及びそれらを用いたビスフェノールaの測定方法 - Google Patents
ビスフェノールaハプテン化合物、ハイブリドーマ、有機溶媒耐性を有する抗ビスフェノールa抗体及びそれらを用いたビスフェノールaの測定方法 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ビスフェノールAのハプテン化合物、ハイブリドーマ、ビスフェノールAを特異的に認識するモノクローナル抗体及びそれらを用いたビスフェノールAの免疫学的測定方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ビスフェノールAは耐熱性食器やほ乳ビンに使われているポリカーボネート樹脂の原料や安定化剤、酸化防止剤として使用され、また缶詰の内側のコーティングに使用されるエポキシ樹脂や歯科治療に使用されているコンポジットレジンやシーラントの原料としても使用されている。ビスフェノールAは年間約30万トン程度生産されているが、発ガン性等の毒性が低いことからこれまではあまり問題とされていなかった。しかしながら、近年ある種の化合物が人や野生動物の内分泌機能を撹乱する作用を持つという、いわゆる「内分泌撹乱物質」がグローバルな環境問題としてクローズアップされ、ビスフェノールAもエストロジェン活性を有する内分泌撹乱物質の一つである疑いがあることが判明したことから、大きな注目を集めるようになった。特に、乳がん細胞を用いた実験では数ppb程度のごく微量な量でエストロジェンと同様な作用を発揮することが確認されており、マウスに対するビスフェノールA投与実験でも、***運動性低下等といった生殖機能異常が報告されている。また、環境庁が実施した化学物質の環境中の安全性調査においても、ビスフェノールAが大都市周辺の河川や港湾の水質や底質等から検出されたことから、ビスフェノールAによる汚染が広範囲に広がっていることが明らかとなり、環境中の暴露量を把握することが急務となっている。
【0003】
ビスフェノールA等の内分泌撹乱物質の測定は高い精度の分析値が求められ、抽出、濃縮、精製といった各種のクロマトグラフィーや高価な質量分析装置等の機器を用いる公定分析法に従って行われている。これらの分析法は高感度で、構造の類似する複数の化合物を一度に同定、定量できる多成分分析が可能であるが、環境試料からの目的物質の抽出、分離、精製が煩雑で、化合物によっては誘導体化が必要といった問題があり、従って高価な機器に対する多大な設備投資や、分析技術者の習熟、その他分析に時間がかかるといった問題を抱えているのが現状である。このため精度が高くかつ簡便な測定方法の開発が望まれており、このような問題を解決すべく、抗体を用いた免疫測定法による環境汚染物質の検出技術が注目されつつある。
【0004】
この免疫測定法は1980年代に米国において地下水や河川水の除草剤の分析に適用され、近年、カナダ、ヨーロッパ並びに我が国においても免疫測定法を用いた環境汚染物質の開発が行われている。免疫測定法とは、抗体が抗原を特異的に認識する能力を用いて微量の抗原を検出する方法であり、抗体の抗原に対する高い親和性と高い特異性により抗原を高感度に測定することができる。また測定方法が簡易で迅速に結果が得られる、多検体、多成分の同時測定が可能である、測定目的に適した検出感度、測定レンジを有する、測定試料の精製が不要である、測定に要するコストが低いといった種々のメリットを持ち、医学、生化学、薬学、農学など広い分野で利用されている。免疫測定法において測定対象物質を検出するには、抗体または抗原を標識する必要があるが、その標識方法としては酵素を用いる方法、放射性物質を用いる方法、蛍光物質を用いる方法、金属原子を用いる方法などが挙げられる。中でも、酵素を用いた酵素免疫測定法(EIA)は臨床検査や生化学分野での生体試料中の目的成分の定量に応用されている。EIA法は、抗原抗体反応の形式により、競合法と非競合法に大別できる。非競合法は複数の抗原結合部位を持つ多価抗原に適用でき、蛋白質など高分子の抗原や抗体の測定が可能であるが、ビスフェノールAのような低分子化合物は競合法によって測定する。
【0005】
EIA法においては、抗原に対していかに特異性が高く、かつ親和性の高い抗体が得られるか重要であるが、ビスフェノールAは低分子化合物であるため、通常それ自体では抗体産生を誘導する能力を持たない。そこで、抗体産生誘導能のある高分子化合物と結合させることにより、ビスフェノールAと特異的に反応する抗体産生を誘導することが可能となる。このような低分子化合物の物質をハプテンと呼び、ハプテン分子に対し特異的な抗体を産生させるためには、BSA(牛血清アルブミン)、OVA(卵製アルブミン)、KLH(スガシガイヘモシアニン)といった免疫原性を有する高分子化合物にビスフェノールA分子を導入することが必要となる。
【0006】
抗ハプテン抗体の性能はハプテン抗原の作製方法に大きく影響され、ハプテン分子の設計が抗体の特異性と親和性を決定する。ビスフェノールAに対する抗体を得るためにも、このようなハプテン設計は重要な要因であるが、これまでに作製されたハプテン抗原によって得られた抗体とビスフェノールA以外の関連物質との交差反応性が高いという問題点があった。また環境試料を測定する際には、測定感度を上げるために有機溶媒を用いた固相抽出を行う場合があるが、固相抽出を行った場合、抽出後の試料には有機溶媒が混入してしまうため、有機溶媒に耐性を有する抗体が望まれていた。しかしながら、これまでに得られたモノクローナル抗体は有機溶媒に対する耐性が低く、試料中に有機溶媒が混入すると著しく抗原結合活性が低下する場合が多かった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、ビスフェノールAを高感度に測定するために、交差反応性が低くかつ有機溶媒に対して耐性を有する抗体とその抗体を産生するハイブリドーマ、及びその製造法を提供することを目的とする。さらに本発明は、ビスフェノールAと高感度かつ特異的に反応する抗体を得るためのビスフェノールA誘導体とその製造法を提供することを目的し、当該化合物はビスフェノールAと特異的に反応するための抗体を産生するハイブリドーマを作製する際の免疫原及びビスフェノールAを競合的に測定する際の標識抗原となる。
【0008】
【発明を解決するための手段】
本発明者らは、上記事情に鑑み、ビスフェノールAを高感度で測定でき、かつ有機溶媒に耐性を有する抗体を開発すべく鋭意検討した結果、ビスフェノールAに特定の長さを有するスペーサー化合物を導入したハプテン抗原で免疫を行うことにより、前記化合物に高感度かつ特異的に反応する抗体が得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
すなわち、本発明は以下のような構成からなる。
(1)40%濃度以下の有機溶媒を含む水溶液中において50%以上の抗原結合能を保持することが可能なビスフェノールAに特異的に反応するモノクローナル抗体。
(2)受託番号が、FERM BP−7146、FERM BP−7147、及びFERM BP−7148よりなる群から選ばれたいずれかであるハイブリドーマにより産生される(1)記載のモノクローナル抗体。
(3)受託番号が、FERM BP−7146、FERM BP−7147、及びFERM BP−7148よりなる群から選ばれたいずれかであるハイブリドーマであり、(1)記載のモノクローナル抗体を産生することを特徴とするハイブリドーマ。
(4)以下の式(I) で表される構造(式中、nは1〜10の整数を示す)で表される構造を有することを特徴とするハプテン化合物。
【化2】
(5)(4)記載のハプテン化合物に高分子化合物をキャリアー化合物として結合させることにより得られることを特徴とする免疫抗原。
(6)高分子化合物が蛋白質である(5)記載の免疫抗原。
(7)(4)記載のハプテン化合物に標識物質を結合させることにより得られることを特徴とする標識抗原。
(8)標識物質が酵素である(7)記載の標識抗原。
(9)(4)記載のハプテン化合物のカルボキシル基末端を活性化し、高分子化合物と結合させることを特徴とする免疫抗原及び標識抗原の製造方法。
(10)(5)または(6)に記載の免疫抗原を動物に免疫することにより得られる(1)記載のモノクローナル抗体の製造方法。
(11)(1)記載のモノクローナル抗体と請求項7記載の標識抗原を用いることを特徴とするビスフェノールAの測定方法。
(12)測定対象物をメタノールを溶媒に用いた固相抽出法にて予め濃縮を行う(11)記載のビスフェノールAの測定方法。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明のモノクローナル抗体は、ビスフェノールAの末端に特定の長さを有するスペーサー化合物を導入したハプテン化合物に高分子化合物を結合せしめ、本複合体を免疫原としてマウス等に免疫した後、免疫したマウスの脾臓細胞とミエローマ細胞を融合させハイブリドーマ細胞を調製し、該ハイブリドーマ細胞から免疫原と結合する抗体を産生する細胞を単離し、さらに該ハイブリドーマが生産するモノクローナル抗体を精製することにより得ることができるものである。
【0011】
本発明のハプテン化合物は、以下の式(I)により表される化合物であり、ビスフェノールAの末端の水酸基にカルボキシル基を有するスぺーサーを結合させることにより得られる。式(I)中、nは1〜10の整数を示す。更に該ハプテン化合物のカルボキシル基をイミドエステル化等で活性化し、高分子化合物と結合させることにより、免疫用抗原及びビスフェノールAを競合的に測定する際の標識抗原とすることができる。
【0012】
【化3】
【0013】
以下に、本発明のハプテン化合物、ハイブリドーマ、モノクローナル抗体の作製、及びビスフェノールAの免疫化学的測定法について説明する。
【0014】
ビスフェノールAハプテン化合物の作製
本発明の式(I)で示されるハプテン化合物は公知の方法により作製することができる。例えば、ビスフェノールAの片側の水酸基とスぺーサーとなるハロゲン化アルキルエステルとを有機溶媒中にて反応させ、エステル部分をアルカリ等の塩基によって加水分解することにより得ることができる。該スぺーサーの長さは特に限定されるものではないが、該ハプテン化合物にキャリアーとなる高分子化合物を結合させ免疫原とする場合、抗体はキャリアーとの結合部位より離れた部分を認識する場合が多く、ある程度の長さを有することが望ましい。しかし、長すぎる場合スぺーサー部分を認識する抗体が得られる場合もあることから、スぺーサー長としては炭素数で1〜10、好ましくは3〜6、さらに好ましい炭素数は5である。例えば、スぺーサーとしては3−ブロモプロピオン酸メチル、3−ブロモプロピオン酸エチル、γ−ブロモ酪酸エチル、5−ブロモ吉草酸エチル、6−ブロモヘキサン酸エチルなどのハロゲン化アルキルエステルが挙げられるが、特に好ましいスぺーサー化合物は、炭素数5の6−ブロモヘキサン酸エチルである。
【0015】
反応時のビスフェノールAとハロゲン化アルキルのモル比は1:1〜1:0.5が好ましく、特に等モルで反応させるのが好ましい。反応に使用する溶媒としては、DMSO、DME、DMF、THF、ヘキサン、酢酸エチル、ジクロロメタン等の有機溶媒が挙げられるが、特に限定されるものではない。また、塩基としてはナトリウムアミド、炭酸カリウム、トリエチルアミン、水酸化ナトリウム、酸化バリウム、酸化銀、水素化ナトリウム等を用いることができる。反応温度は0〜90℃、好ましくは室温ないしは90℃、更に好ましくは80〜85℃で、反応時間は0.5〜6時間、好ましくは1〜3時間の間で攪拌しながら行うことが望ましい。得られた化合物は、必要に応じてシリカゲルカラムクロマトグラフィーや再結晶等の精製操作によって高純度化し、ハプテン化合物とすることができる。
【0016】
免疫用抗原の作製
上述のハプテン化合物はそれ自身免疫原性を持たないため、単独で免疫しても目的とする抗体が得られない場合が多い。そこで免疫原性を有する高分子化合物をキャリアー化合物として結合させ複合体とすることにより免疫原とすることができる。
【0017】
該キャリアー化合物として用いられる高分子化合物は、1万以上の分子量であることが望ましく、例えばヘモシアニン、卵白アルブミン、牛血清アルブミン、ウサギ血清アルブミン等の蛋白質、MAPレジン、ポリアミド、ポリアクロレイン等の合成高分子、デキストラン、アガロース等の多糖、不活化した細菌等が挙げられる。なかでも、スガシガイヘモシアニン及び牛血清アルブミンが、操作性、免疫原性の点で好ましい。
【0018】
ハプテン化合物とキャリアー化合物との結合は、ハプテン化合物のカルボキシル基と高分子担体上の反応性官能基とを反応させればよく、方法は特に限定されないが、公知の方法として混合酸無水物法や活性エステル法等が挙げられる。混合酸無水物法は、ハプテン化合物のカルボキシル基をクロル炭酸ブチル、クロロ炭酸エチル等のクロロアルキルホルメートと反応させ、活性のある混合酸無水物に誘導した後、高分子担体上のアミノ基中に反応させアミド結合を生成する方法である。これに対し活性エステル法は、ハプテン化合物のカルボキシル基をカルボジイミド型縮合剤を使用して、活性エステル型に変換してから高分子担体のアミノ基に反応させる方法である。いずれの方法でもハプテン化合物を結合させることができるが、混合酸無水物法の場合、ビスフェノールAの水酸基とも反応する場合があり、水酸基を保護しておく必要があるのに対し、活性エステル法は水酸基と反応せず、また得られたイミドエステルの安定性も高く、乾燥した状態で長期間、冷凍庫中で保存することができることから特に好ましい。
【0019】
活性エステル法はハプテン化合物と活性エステル類で最も水溶性の高いN−ヒドロキシスクシンイミドとを有機溶媒中でジシクロヘキシルカルボジイミドや水溶性カルボジイミド等のカップリング剤の存在下にて反応させ、カルボキシル基をイミドエステル化することにより行う。反応時のハプテン化合物とN−ヒドロキシスクシンイミドのモル比は1:1〜1:5の範囲が好ましく、特に好ましくは1:1である。反応温度は0〜40℃、好ましくは10〜20℃である。反応時間は2〜10時間、好ましくは5時間である。また反応時の有機溶媒としてはDMSO、DME、DMF、THF、ヘキサン、酢酸エチル等の有機溶媒が挙げられるが、特に限定されるものではない。得られたイミドエステル化ハプテン化合物は、必要に応じてシリカゲルカラムクロマトグラフィーや再結晶等の精製操作によって高純度化する。
【0020】
得られたイミドエステル化ハプテン化合物とキャリアーとの結合は、通常含水有機溶媒中で行う。まずイミドエステル化ハプテンをメタノール、DMSO有機溶媒に溶解する。同様に牛血清アルブミン、スガシガイヘモシアニン等の担体をリン酸緩衝液、生理食塩水等のアミノ基を含有しない緩衝液に溶解し、イミドエステル化ハプテン溶液中に緩衝液に溶解した担体溶液を徐々に添加し、反応を行う。反応溶液中の有機溶媒濃度は5〜80%、好ましくは20〜50%である。緩衝液はアミノ基を含まないものであれば特に限定されず、緩衝液濃度は、10〜500mmol、好ましくは50〜100mmol、また緩衝液のpHは5〜10の間であればよく、好ましくは6〜8の間である。イミドエステル化ハプテンとキャリアーのモル比は200:1〜10:1の範囲が好ましく、特に好ましくは100:1〜50:1の間である。反応温度は0〜50℃の間で行うことが好ましく、特に好ましくは20〜30℃である。反応時間は1〜24時間の間で行えばよく、好ましくは5〜15時間の間である。このようにして得られた免疫用抗原は、必要に応じてゲルろ過、透析等により緩衝液に置換し精製する。
【0021】
ハイブリドーマ及びモノクローナル抗体の作製
上記の方法により得られた免疫原を用い、公知の方法によりモノクローナル抗体を作製することができる。以下に例を示すが、方法は特に限定されるものではない。
【0022】
本発明で使用されるような可溶性物質を抗原として免疫する際は、通常アジュバンドとともにエマルジョン状態にする。アジュバンドとしてはフロインド・アジュバンド、ミョウバン及び百日咳死菌体が用いられる。
【0023】
免疫する動物としては、通常BALB/cマウスを用いるが、F1マウスやハムスター等を用いても良い。1匹のマウスに免疫する抗原量としては、30〜50μg/回でよく、生理食塩水で100〜500μg/mlになるように調製した免疫用抗原と完全フロインドアジュバンドを2本の注射器等を用いて等量ずつ混合してエマルジョンを作製し、0.1〜0.2ml/匹ずつ注射する。エマルジョンの投与は注射する部位によって、(1)腹腔内注射(ip)、(2)皮下注射(sc)、静脈内注射(iv)、筋肉内注射(im)などがあるが、腹腔内注射及び皮下注射が望ましい。1〜2週間おきに数回免疫する。免疫したマウスは数日後採血し、十分に抗体価が上昇した3〜4日前には、同量の抗原を静脈内または腹腔内に注射する。
【0024】
細胞融合に用いられるミエローマ細胞には、マウス、ラット由来のものがあるが、多くの場合Balb/cマウス由来のNS−1、P3U1、SP2、X63.6.5.3の骨髄腫細胞が用いられる。
【0025】
細胞の融合法としてはHVJウイルスや電気パルスを利用する方法があるが、現在では細胞毒性も比較的少なく、融合操作の簡便なポリエチレングリコール(PEG)法が用いられている。一般によく用いられるPEGの平均分子量は1000〜6000で、30〜50%(v/v)濃度で使用する。
【0026】
摘出した脾臓より回収した脾細胞は、無血清培地でよく洗浄した後、対数増殖期にあるミエローマ細胞と混合し、細胞融合を行う。ミエローマ細胞と脾細胞の混合比は1:10〜1:1の範囲であればよく、混合した脾細胞とミエローマ細胞を遠心してペレットにし、PEG溶液を加え、攪拌と振とうによって融合させる。融合後、遠心洗浄してHAT添加増殖培地に移し、96穴培養プレートにて培養する。HAT培地はサルベージ回路をもたないミエローマ細胞は生存できず、脾細胞と融合したハイブリドーマのみが生育する。融合して数日後よりコロニーが形成し始めるため、コロニーの増殖が認められたウエルの培養上清を採取し、抗原であるビスフェノールAとの反応性をELISA法により確認し、目的の抗体産生の有無でスクリーニングを行う。スクリーニングは、50%有機溶媒(例えば、メタノール)中で抗原抗体反応を行い、抗原結合活性を有するクローンを取得し、さらに該有機溶媒中での反応性評価を行いクローンの選抜を行う。この際、キャリアー担体由来の抗体を排除するため、スクリーニング用抗原は免疫用抗原として使用したハプテン複合体とは別の担体で複合体を作製し、スクリーニング用抗原とする。例えば免疫用抗原を牛血清アルブミンで作製した場合、スクリーニング用抗原は卵白アルブミンやスガシガイヘモシアニンで作製する。スクリーニング後、抗体産生が確認されたウエルを選び、限界希釈法にてクローニングを行い、単一の抗体産生ハイブリドーマを得る。
【0027】
本発明のハイブリドーマは、有機溶媒耐性を有しかつビスフェノールAを特異的に認識するモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマであれば特に限定されないが、例えば、工業技術院生命工学研究所に寄託された、受託番号FERMBP−7146(識別表示 BPA3B9)、FERM BP−7147(識別表示 BPA17B4)、FERM BP−7148(識別表示 BPA10E5)などのハイブリドーマが挙げられる。
【0028】
樹立したクローンからモノクローナル抗体を調製するには、ハイブリドーマ細胞をプレートやフラスコで培養し、その培養上清を取得することにより得られるが、炭酸ガス培養器に収納できる簡易フォローファイバー型培養装置でも培養することができる。更にハイブリドーマ細胞をプリスタン前投与マウスの腹腔内に移植し増殖させ、移植後10〜14日で腹腔に溜まった腹水を回収することによっても得ることができる。
【0029】
このようにして得られた培養液及び腹水は、イオン交換クロマトグラフィーや疎水クロマトグラフィー、またプロテインAもしくはプロテインGを固定化したアフィニティークロマトグラフィーにより必要に応じて精製し、モノクローナル標品とすることができる。こうして得られたモノクローナル抗体は、40%濃度の有機溶媒を含む水溶液中において80%以上の抗原結合能を保持するものであり、実施例に記載された方法により性能評価を実施した。ここで、有機溶媒とは、メタノール、エタノール、アセトン、DMF、DMSO、アセトニトリルなどを指すものであるが、特に限定はされない。
【0030】
抗ビスフェノールAモノクローナル抗体を用いたビスフェノールA測定法
本発明によって得られた抗ビスフェノールA抗体を用いて、ビスフェノールAの測定を行うことができる。免疫測定法には競合型測定法、非競合型測定法、均質法等があるが、ビスフェノールAは低分子化合物であるため、競合法により行う。競合法には主にマイクロプレートのウエル、チューブ、磁性粒子等に抗原を固定化する間接競合法と、ウエルやチューブに抗体を固定化する直接競合法がある。
【0031】
間接競合法では、ウエルに固定化する抗原として免疫原に用いた抗原もしくは他の担体とハプテン化合物の複合体を用いる。まずハプテン複合体をマイクロプレート等のウエルに固相化する。次いでウエルに抗原が結合していない部分を牛血清アルブミン、カゼイン等の市販のブロッキング剤でブロックする。このウエルに検体と一次抗体である抗ビスフェノールA抗体を加えて、検体と固相化抗原を抗体に対して競合反応させる。固相化抗原と結合しなかった抗体を洗浄除去後、同ウエルに二次抗体としてヤギ抗マウス免疫グロブリン抗体をペルオキシダーゼ(PEO)やアルカリフォスファターゼ(ALP)等の酵素で標識した酵素標識抗体を加えて、固相化抗原と結合した一次抗体と結合させる。緩衝液で数回洗浄した後、酵素基質を加えて発色した酵素反応生成物の吸光度を測定する。
【0032】
酵素にペルオキシダーゼを用いる場合は、基質に過酸化水素、発色剤にo−フェニレンジアミンやテトラメチルベンジジンを使用する。アルカリフォスファターゼでは基質にp−ニトロフェニルリン酸が一般的に用いられる。また基質の反応生成物が蛍光であったり、酵素標識抗原に酵素の代わりに、蛍光物質を標識して用いる場合には蛍光測定器で測定する。これに化学発光物質を用いると化学発光測定器での測定が可能となり、より感度のよい測定法となる。
【0033】
直接競合法は、ウエルに抗体を固相化してブロッキングした後、別途調製したハプテン化合物と酵素を結合した酵素標識抗原と検体を加え、固相抗体と検体及び酵素標識抗体とを競合反応させる。抗体と結合しなかった標識抗原を洗浄除去し、酵素基質を加えて反応生成物の吸光度を測定する。この方法でも標識物質を変えることにより、より感度の高い測定法を構築することができる。
【0034】
競合測定法に使用する酵素標識抗原は、免疫抗原と同様の方法で作製することができる。すなわち免疫抗原作製時に用いた牛血清アルブミン等のキャリアー担体の代わりに、ペルオキダーゼやアルカリフォスファターゼ等の酵素を使用することにより標識抗原を得ることができる。また上述のように、ローダミン等の蛍光物質や化学発光物質で標識体を作製することもできる。
【0035】
競合測定法の場合、得られた標識抗原が検体よりも抗体と強い親和性を有する場合、検体と標識抗原との競合反応が起こりにくくなる。その結果測定感度が低くなる場合があり、標識抗原の作製方法によって測定感度は左右される。一般に標識抗原の親和力が小さいほど感度としては高くなる傾向があり、標識酵素に導入されるハプテン化合物数の量に応じて親和性は変化する。このため、標識抗原作製時の標識用酵素とハプテン化合物の反応モル比は1:1〜1:50で行うことが好ましく、更に好ましくは1:10〜1:20である。
【0036】
上述の測定方法において、検体を添加しない反応溶液の吸光度に対し、検体を添加した反応溶液の吸光度の減少を阻害率として測定する。その際、既知濃度のビスフェノールA標準溶液より検量線を作成し、得られた検量線からビスフェノールA濃度を算出することができる。なお、この測定を行う前に、測定対象物を予めメタノールを溶媒として用いた固相抽出法により濃縮を行っておくことも好ましい。
【0037】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0038】
実施例1 ビスフェノールAハプテン化合物の合成
ビスフェノールA (1) 51g(224mmol)と、5−ブロモヘキサン酸エチルエステル 50g(224mmol)をジメチルホルムアミド500mlに溶解し、炭酸カリウム46g(336mmol)を加えて80〜85℃で2時間反応させた。反応液は水にクエンチ後、酢酸エチルで抽出し、水で洗浄を行った後、シリカゲルカラム(酢酸エチル:ヘキサン=1:6)で精製し、ビスフェノールモノヘキサン酸エチルエステル (2)を 37g(収率44.7%)得た。次いで、得られたビスフェノールモノヘキサン酸エチルエステル(2) 37gを70%エタノール水溶液220mlに溶解し、85%水酸化カリウム溶液を13.2g(200mmol)加えた後、75〜80℃で1時間攪拌した。反応混合物を水にクエンチした後、6規定の塩酸でpHを1に調整し、酢酸エチルで抽出し、温水で洗浄後、クロロホルムで再結晶を行い、ビスフェノールAハプテン(3)を26.1g(収率76.3%)得た。以下に反応スキームを示す。
【0039】
【化4】
【0040】
実施例2 免疫用抗原の作製
実施例1により作製したビスフェノールAハプテン化合物を用い、活性エステル法により免疫用抗原を作製した。以下に反応スキームを示す。まず、実施例1で得られたハプテン化合物(3)30.8g(90mmol)をジメチルホルムアミド300mlに溶解し、N−ヒドロキシスクシンイミド10.4g(90mmol)とジシクロヘキシルカルボジイミド18.6g(90mmol)を加えて、室温で5時間攪拌した。反応混合物を氷水にクエンチ後、酢酸エチルで抽出を行い、温水で洗浄後、シリカゲルカラム(酢酸エチル:ヘキサン=1:5)で精製し、イミドエステル化ビスフェノールAハプテン(4)を10.0g(収率24.7%)得た。
【0041】
【化5】
【0042】
得られたイミドエステル化ハプテンとキャリアー担体である牛血清アルブミンとの結合は以下の方法により実施した。まず牛血清アルブミン0.2g(3.02μmol)を100mmolのホウ酸緩衝液(pH8.0) 10mlに溶解した後、5mlの無水DMFを添加しキャリアー蛋白質溶液とした。次いで本溶液中に5mlのDMFに溶解したイミドエステル化ビスフェノールA 68mg(0.154mmol)を徐々に添加し、25℃で18時間攪拌し反応を行った。反応終了後、モノエタノールアミン2.5mlを添加し、25℃で2時間攪拌を行い残存する活性エステルをブロックした後、PBSに対して透析を行い、ビスフェノールA−BSA複合体を得た。ビスフェノールA−BSA複合体に導入されたハプテン数は、TNBS法によりアミノ基の定量を行うことにより算出したところ40個であった。
【0043】
実施例3 動物への免疫
実施例2で作製した免疫用抗原2mgを1mlのPBSに溶解し、等量の完全アジュバントと混和し1mg/ml濃度のエマルジョン溶液を作製した。このエマルジョン溶液を6匹のBalb/cマウスに一匹に対し総量0.1mlになるよう各々2箇所に腹腔内投与した。同様の操作で2週間おきに3回追加免疫を行った。各回の免疫一週間後に採血を行い、血液を室温1時間放置後、血餅を分離し抗血清を得た。
【0044】
実施例4 抗体価の測定
実施例2に記載した免疫用抗原の作製法と同様に牛血清アルブミンの代わりに、卵白アルブミンを用いて抗体価測定用の抗原を作製した。この抗原を0.1mg/mlになるようにPBSに溶解し96ウエルマイクロプレートに100μl/ウエルになるよう分注し、37℃、2時間インキュベートし固相化を行った。抗原溶液を除去後、0.05% Tween20を含むPBSにて3回洗浄し、5倍希釈のブロッキング溶液(ナカライテスク製)を300μlずつ分注し、4℃で一晩静置してブロッキングを行い、抗体価測定用プレートを作製した。
【0045】
このプレートにPBSで4倍希釈系列で希釈した抗血清を50μl/ウエル添加し、37℃、2時間反応させた。同プレートを、Tween20を0.05%含むPBSで3回洗浄した後、PBSで4000倍希釈したPEO標識抗マウスIgGウサギ抗体(ZYMED社製)を50μl/ウエル添加し、37℃、1時間反応させた。更にTween20を0.05%含むPBSで3回洗浄後、TMB Microwell Peroxidase Substrate(KPL社製)を50μl/ウエル添加し、遮光下、37℃で反応させた。20分後、0.5mol/Lの硫酸を100μl/ウエル添加して発色を停止し、450nmの吸光度を測定し抗体価を求めた。
【0046】
実施例5 ハイブリドーマ及び抗ビスフェノールAモノクローナル抗体の作製
抗体価が最も高かったマウスについて最終免疫として1mg/ml濃度の免疫用抗原100μlを腹腔内投与した。最終免疫の3日後、常法に従って無菌的に脾臓を摘出し、脾細胞を分散させて、RPMI1640培地にて3回洗浄し、脾細胞浮遊液を調製した。細胞数をカウントし、予め培養していたSp/2ミエローマ細胞と脾細胞が1:10の割合になるよう混合し、遠心後、上清を除去した。上清除去後、PEG溶液を0.5ml加え、細胞を攪拌し、更に2〜3分かけて徐々に25mlのRPMI1640培地を加え細胞融合を行った。次に遠心により上清を除去し、HAT培地を加えた後、細胞を浮遊させ、96穴培養プレートに撒種し37℃の炭酸ガス培養器内で培養を行った。
【0047】
培養開始後1週間目より、細胞の増殖の見られたウエルの培養上清を用いてスクリーニングを行った。スクリーニングは、卵白アルブミンを用いて作製した抗体価測定用の抗原を、0.1mg/mlになるようにPBSに溶解し96ウエルマイクロプレートに100μl/ウエルになるよう分注し、37℃、2時間インキュベートし固相化を行った。抗原溶液を除去後、0.05% Tweenを含むPBSにて3回洗浄し、5倍希釈のブロッキング溶液(ナカライテスク製)を300μlずつ分注し、4℃で一晩静置してブロッキングを行い、抗体価測定用プレートを作製した。得られたハイブリドーマの培養上清は等量のメタノールを添加しメタノール濃度50%になるよう調製した。このサンプルを、採取した培養上清を50μl/ウエルになるように上記抗体価測定用プレートに添加し、37℃、2時間反応させ、抗ビスフェノールA抗体を産生しているかどうか調べた。同プレートをTween20を0.05%含むPBSで3回洗浄した後、PBSで4000倍希釈したPEO標識抗マウスIgGウサギ抗体(ZYMED社製)を50μl/ウエル添加し、37℃、1時間反応させた。更にTween20を0.05%含むPBSで3回洗浄後、TMB Microwell Peroxidase Substrate(KPL社製)を50μl/ウエル添加し、遮光下37℃で反応させた。20分後、0.5mol/Lの硫酸を100μl/ウエル添加して発色を停止し、450nmの吸光度を測定し抗体結合活性を有するクローンを選抜した。高い抗体価が確認されたハイブリドーマについて、限界希釈法によるクローニングを3回行い、モノクローン化ハイブリドーマを得た。
【0048】
これらのハイブリドーマは0.5% ウルトラ-Low IgGウシ胎児血清含有Hybridoma-SFM(GIBCO BRL社製)中で炭酸ガス培養器内で37℃、1週間培養し培養上清を取得した。培養上清はプロテインAカラムでアフィニティー精製後、PBSに対して透析を行いモノクローナル抗体とした。得られたモノクローナル抗体を用いて以下の実施例に示す各種試験を行った。
【0049】
実施例6 各モノクローナル抗体の交差反応評価
各モノクローナル抗体のビスフェノールA関連化合物に対する交差反応性を間接競合法により検討した。検討に用いた化合物はビスフェノールA及びビスフェノールAの構造類似物質であるフェノール、p-tert-butyl phenolの3種類を選定した。まず各抗体を10〜100ng/mlの濃度範囲になるようにPBSで希釈し、この抗体溶液と0〜10μg/mlの間で希釈系列を作製した抗原溶液を等量混合し、ビスフェノールAハプテンを固相した抗体価測定用プレートに50μl/ウエルずつ分注して、37℃で2時間反応させた。検討に用いた抗原はビスフェノールAとその構造類似物質であるTween20を0.05%含むPBSで3回洗浄した後、PBSで4000倍希釈したPEO標識抗マウスIgGウサギ抗体(ZYMED社製)を50μl/ウエル添加し、37℃、1時間反応させた。更にTween20を0.05%含むPBSで3回洗浄後、TMB Microwell Peroxidase Substrate(KPL社製)を50μl/ウエル添加し、遮光下37℃で反応させた。20分後、0.5mol/Lの硫酸を100μl/ウエル添加して発色を停止し、450nmの吸光度を測定した。抗原を添加していないサンプルの吸光度を100%として、各抗原の阻害率を算出し交差反応性の評価を行った。その結果、ビスフェノールAと選択的反応し、他の構造類似物との反応性が低いクローンとして3B9、5G9、10E5、17B4、の4クローンを選定した。
【0050】
実施例7 各モノクローナル抗体の有機溶媒耐性評価及びハイブリドーマの選定有機溶媒を含有した条件で各モノクローナル抗体を反応させ、どの程度の有機溶媒中での反応性評価を行った。まず各抗体を10〜100ng/mlの濃度範囲になるようにPBSで希釈し、この抗体溶液と0〜100μg/mlの間で希釈系列を作製したメタノール水溶液を等量混合し、ビスフェノールAハプテンを固相した抗体価測定用プレートに50μl/ウエルずつ分注して、37℃で2時間反応させた。Tween20を0.05%含むPBSで3回洗浄した後、PBSで4000倍希釈したPEO標識抗マウスIgGウサギ抗体(ZYMED社製)を50μl/ウエル添加し、37℃、1時間反応させた。更にTween20を0.05%含むPBSで3回洗浄後、TMB Microwell Peroxidase Substrate(KPL社製)を50μl/ウエル添加し、遮光下37℃で反応させた。20分後0.5mol/Lの硫酸を100μl/ウエル添加して発色を停止し、450nmの吸光度を測定した。メタノールを含有していないサンプルの吸光度を100%として、各メタノール濃度での抗原結合活性を算出した。図1にその結果を示した。3B9、10E5、17B4の抗原結合活性は、40%メタノール濃度においても、それぞれ53%、82%、88%であり、いずれも50%以上の抗原結合活性を有していた。5G9については、40%メタノール共存下での抗原結合活性は1%であった。
【0051】
実施例8 各モノクローナル抗体のサブクラスの決定
各モノクローナル抗体のサブクラスはMouse MonoAB ID KIT(Zymed社製)を用いて決定した。タイピングした結果、5G9抗体のサブクラスはIgG2bであり、3B9抗体、10E4抗体、17B4抗体のサブクラスはいずれもIgG1であった。
【0052】
実施例9 メタノール存在下での直接競合法によるビスフェノールA量の測定
各モノクローナル抗体を用いて直接競合法によるビスフェノールA量測定を検討した。またこの測定系でのメタノールの影響も同時に検討した。結果をそれぞれ図2、図3、図4、図5に示した。
【0053】
直接競合法で使用したペルオキシダーゼ標識ビスフェノールAは以下の方法により作製した。まず西洋ワサビペルオキシダーゼ100mg(2.5μmol)を100mmolのリン酸緩衝液(pH8.0) 4mlに溶解した後、3mlの無水DMFを添加しペルオキシダーゼ溶液とした。次いで本溶液中に1mlのDMFに溶解したイミドエステル化ビスフェノールA 11mg(0.025mmol)を徐々に添加し、25℃で18時間攪拌し反応を行った。反応終了後、モノエタノールアミン2.5mlを添加し、25℃で2時間攪拌を行い残存する活性エステルをブロックした後、PBSに対して透析を行い、ペルオキシダーゼ標識ビスフェノールAを得た。
【0054】
直接競合法は以下の方法により行った。まず各抗ビスフェノールAモノクローナル抗体250μg/mlになるようにPBSに溶解し96ウエルマイクロプレートに100μl/ウエルになるよう分注し、37℃、2時間インキュベートし抗体の固相化を行った。抗体溶液を除去後、0.05% Tween20を含むPBSにて3回洗浄し、5倍希釈のブロッキング溶液(ナカライテスク製)を300μlずつ分注し、4℃で一晩静置してブロッキングを行い、抗体固相化プレートを作製した。
【0055】
次に上記のペルオキシダーゼ標識ビスフェノールAを5ng/mlになるようにPBSで希釈し、0.5mlずつ試験管に分注した。この標識抗原溶液に0〜60%濃度のメタノールを含むPBSで0〜10μg/mlの間で希釈系列を作製したビスフェノールA溶液を0.5ml添加し、この混合溶液を上記の抗体固相化プレートに50μl/ウエルずつ分注して、25℃で1時間反応させた。反応後、Tween20を0.05%含むPBSで3回洗浄し、TMB Microwell Peroxidase Substrate(KPL社製)を50μl/ウエル添加し、遮光下37℃で反応させた。20分後、0.5mol/Lの硫酸を100μl/ウエル添加して発色を停止し、450nmの吸光度を測定した。結果からもわかるように、実施例7で有機溶媒耐性の高かった3クローンについては、0〜40%濃度のメタノールを含有した状態で2〜50ng/mlの範囲でビスフェノールAの量を測定することができたが、3B9については、メタノール濃度が高くなるにつれ測定感度が大きく低下することがわかった。環境試料を測定する場合、固相抽出等の前処理工程により試料を濃縮するが、濃縮後はメタノール等の有機溶媒に置換されているため、有機溶媒に耐性を有することは大きなメリットであると言える。
【0056】
実施例10 メタノール存在下での直接競合法による交差反応性評価
有機溶媒耐性の高かった3クローンについて、50%メタノール存在下で直接競合法によるビスフェノールA及びビスフェノールA構造類似物の反応性を検討した。抗原はビスフェノールA及びビスフェノールAの構造類似物質であるフェノール、p-tert-butyl phenolの計3種類を用いた。抗原液はサンプル0〜50%濃度のメタノールを含むPBSで0〜10μg/mlの間で希釈系列を作製し、他は実施例9に記載の方法に従い、反応性の検討を行った。結果をそれぞれ図6、図7、図8に示した。3B9抗体、10E5抗体、17B4抗体のいずれも、ビスフェノールAの測定が可能な範囲では構造類似物であるフェノール、 p-tert-butyl phenolとはほとんど反応しなかった。
【0057】
【発明の効果】
上述したように、本発明のモノクローナル抗体は有機溶媒に対する耐性を有することから、有機溶媒存在下でも高感度でビスフェノールAを測定することができ、環境分析等に広く応用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】各モノクローナル抗体のメタノール耐性を示す図である。
【図2】3B9抗体を用いたメタノール存在下でのビスフェノールA測定を示す図である。
【図3】10E5抗体を用いたメタノール存在下でのビスフェノールA測定を示す図である。
【図4】17B4抗体を用いたメタノール存在下でのビスフェノールA測定を示す図である。
【図5】5G9抗体を用いたメタノール存在下でのビスフェノールA測定を示す図である。
【図6】3B9抗体のメタノール存在下での交差反応性を示す図である。
【図7】10E5抗体のメタノール存在下での交差反応性を示す図である。
【図8】17B4抗体のメタノール存在下での交差反応性を示す図である。
Claims (4)
- 受託番号が、FERM BP−7146、FERM BP−7147、及びFERM BP−7148よりなる群から選ばれたいずれかであるハイブリドーマにより産生される、40%濃度以下の有機溶媒を含む水溶液中において50%以上の抗原結合能を保持することが可能なビスフェノールAに特異的に反応するモノクローナル抗体。
- 受託番号が、FERM BP−7146、FERM BP−7147、及びFERM BP−7148よりなる群から選ばれたいずれかであるハイブリドーマであり、請求項1記載のモノクローナル抗体を産生することを特徴とするハイブリドーマ。
- 測定対象物をメタノールを溶媒に用いた固相抽出法にて予め濃縮を行う請求項3記載のビスフェノールAの測定方法。
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