JP4034555B2 - 光硬化性熱硬化性導電組成物及びそれを用いた導電回路の形成方法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、フォトリソグラフィー技術によって塗膜のパターンを形成したのち熱硬化工程を経て精細にパターン化した導電回路を形成するのに有効な光硬化性熱硬化性導電組成物について提案する。
【0002】
【従来の技術】
有機バインダーに導電性粉末を混合した非感光性の導電ペーストを用い、基材上に導電回路パターンを形成する方法として、従来、スクリーン印刷等の印刷技術を利用したパターン形成方法が広く用いられている。
しかしながら、スクリーン印刷では、工業的に安定して100μm以下の線幅を有する導電回路パターンを形成することは難しい。
【0003】
また一方で、感光性の導電ペーストを用い、フォトリソグラフィー技術を利用して基材上に導体回路パターンを形成する方法が考えられる。
しかしながら、かかる感光性の導電ペーストを用いるパターン形成方法では、通常、500℃以上の温度で焼成を行うことにより、ペースト中の有機成分を除去すると同時にガラスフリットを溶融させて、導電回路層の導電性と密着性を確保している。そのため、かかる方法では、熱に弱い基材上での適用が難しく、特に、酸化しやすい金属等を含むペーストでは、希ガス中で焼成を行う必要性があった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
そこで本発明は、従来技術が抱える上記問題を解消するためになされたものであり、その主たる目的は、焼成することなく導電性と密着性を確保し得る微細な導電回路パターン形成のための導電組成物を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、導電性と密着性が共に優れる微細な導電回路パターンを複雑な工程を経ることなく容易に形成し得る方法を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
発明者は、上記目的の実現に向け鋭意研究した結果、感光性の導電組成物にエポキシ化合物などの熱硬化成分を配合し、かつ導電性粉末の配合量を溶剤を除く組成物中に70〜90質量%の割合とすることにより、以外にもこれを焼成することなく熱硬化することにより、基材との密着性と導電性が共に優れる微細な導電回路パターンが得られることを見出し、以下に示す本発明を完成するに至ったのである。
すなわち、本発明のアルカリ現像型の光硬化性熱硬化性組成物は、(A)導電性粉末、(B)カルボキシル基含有感光性樹脂および/またはカルボキシル基含有樹脂、(C)光重合性モノマー、(D)光重合開始剤、(E)熱硬化性樹脂、および(F)溶剤を含有する組成物であって、前記導電性粉末(A)が、溶剤を除く組成物中に70〜90質量%の割合で配合され、且つ前記カルボキシル基含有感光性樹脂および/またはカルボキシル基含有樹脂(B)の重量平均分子量が1,000〜100,000、酸価が20〜250mgKOH/gであることを特徴とする。
好適な態様において、前記熱硬化性樹脂(E)はエポキシ樹脂であることが好ましい。このような本発明の光硬化性熱硬化性導電組成物は、ペースト状形態であってもよく、また予めフィルム状に製膜したドライフィルムの形態であってもよい。
【0006】
また、本発明にかかる導電回路パターンの形成方法は、基材上に、光硬化性熱硬化性導電組成物を用いて塗膜のパターンを露光現像により形成し、その後、80℃〜300℃で熱硬化することを特徴とする。
さらに本発明によれば、このような光硬化性熱硬化性導電組成物から形成されてなる導電回路が提供される。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明の光硬化性熱硬化性導電組成物は、エポキシ化合物等の熱硬化成分を含み、かつ導電性粉末の配合量を、溶剤を除く組成物中に70〜90質量%の割合とした点に最大の特徴がある。
これにより、熱硬化成分の熱硬化により基材との密着性が良好となる。しかも理由は明らかではないが、熱硬化成分の熱硬化により塗膜パターンの抵抗値が下がり、導電性粉末の配合量を、溶剤を除く組成物中に70〜90質量%の割合と規定することにより、導体回路として充分な導電性を有するものとなる。
従って、本発明によれば、焼成することなく導電性と密着性を確保し得る微細な導電回路パターンを形成することができ、熱に弱い基材上での適用が可能となる。
【0008】
以下、本発明にかかる光硬化性熱硬化性導電組成物の成分組成について説明する。
まず、導電性粉末(A)は、組成物において導電性を付与するものであればいかなるものでも用いることができる。このような導電性粉末としては、AgやAu、Pt、Pd、Ni、Cu、Al、Sn、Pb、Zn、Fe、Ir、Os、Rh、W、Mo、Ru等の単体とその合金の他、その酸化物、酸化錫(SnO2)、酸化インジウム(In2O3)、ITO(Indium Tin Oxide)などを用いることができる。導電性粉末の形状としては、球状、フレーク状、デントライト状など種々のものを用いることができ、特に光特性や分散性を考慮すると球状のものを用いるのが好ましい。
【0009】
このような導電性粉末は、その平均粒径が0.05〜10μm、好ましくは0.1〜5μmであることが好ましい。この理由は、平均粒径が0.05μm未満では、光の透過性が悪くなりパターン形成が困難になる。一方、平均粒径が10μmを超えると、ラインの直線性が得られなくなるからである。
このような導電性粉末の配合量は、溶剤を除く組成物中に70〜90質量%の割合とする。導電性粉末の配合量が上記範囲よりも少ない場合、導電回路パターンの充分な導電性が得られず、一方、上記範囲を超えて多量になると、基材との密着性が悪くなるので好ましくない。
【0010】
有機バインダー(B)としては、カルボキシル基を有する樹脂、具体的にはそれ自体がエチレン性不飽和二重結合を有するカルボキシル基含有感光性樹脂及びエチレン性不飽和二重結合を有さないカルボキシル基含有樹脂のいずれも使用可能である。好適に使用できる樹脂(オリゴマー及びポリマーのいずれでもよい)としては、以下のようなものが挙げられる。
(1)(a)不飽和カルボン酸と(b)不飽和二重結合を有する化合物を共重合させることによって得られるカルボキシル基含有樹脂
(2)(a)不飽和カルボン酸と(b)不飽和二重結合を有する化合物の共重合体にエチレン性不飽和基をペンダントとして付加させることによって得られるカルボキシル基含有感光性樹脂
(3)(c)エポキシ基と不飽和二重結合を有する化合物と(b)不飽和二重結合を有する化合物の共重合体に、(a)飽和又は不飽和カルボン酸を反応させ、生成した2級の水酸基に(d)多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシル基含有樹脂
(4)(e)不飽和二重結合を有する酸無水物と(b)不飽和二重結合を有する化合物の共重合体に、(f)水酸基を有する化合物を反応させて得られるカルボキシル基含有樹脂
(5)(e)不飽和二重結合を有する酸無水物と(b)不飽和二重結合を有する化合物の共重合体に、(f)水酸基と不飽和二重結合を有する化合物を反応させて得られるカルボキシル基含有感光性樹脂
(6)(g)エポキシ化合物と(h)不飽和モノカルボン酸を反応させ、生成した2級の水酸基に(d)多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシル基含有感光性樹脂
(7)(b)不飽和二重結合を有する化合物とグリシジル(メタ)アクリレートの共重合体のエポキシ基に、(i)1分子中に1つのカルボキシル基を有し、エチレン性不飽和結合を持たない有機酸を反応させ、生成した2級の水酸基に(d)多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシル基含有樹脂
(8)(j)水酸基含有ポリマーに(d)多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシル基含有樹脂
(9)(j)水酸基含有ポリマーに(d)多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシル基含有樹脂に、(c)エポキシ基と不飽和二重結合を有する化合物をさらに反応させて得られるカルボキシル基含有感光性樹脂
【0011】
前記したようなカルボキシル基含有感光性樹脂及びカルボキシル基含有樹脂は、単独で又は混合して用いてもよいが、いずれの場合でもこれらは合計で組成物全量の5〜20質量%の割合で配合することが好ましい。これらの樹脂の配合量が上記範囲よりも少な過ぎる場合、形成する皮膜中の上記樹脂の分布が不均一になり易く、充分な光硬化性及び光硬化深度が得られ難く、選択的露光、現像によるパターニングが困難となる。一方、上記範囲よりも多過ぎると、良好な導電性が得られなくなるので好ましくない。
【0012】
また、上記カルボキシル基含有感光性樹脂及びカルボキシル基含有樹脂としては、それぞれ重量平均分子量1,000〜100,000、好ましくは5,000〜70,000、及び酸価20〜250mgKOH/g、好ましくは40〜200mgKOH/gを有し、かつ、カルボキシル基含有感光性樹脂の場合、その二重結合当量が350〜2,000、好ましくは400〜1,500のものを好適に用いることができる。上記樹脂の分子量が1,000より低い場合、現像時の導電性皮膜の密着性に悪影響を与え、一方、100,000よりも高い場合、現像不良を生じ易いので好ましくない。また、酸価が20mgKOH/gより低い場合、アルカリ水溶液に対する溶解性が不充分で現像不良を生じ易く、一方、250mgKOH/gより高い場合、現像時に導電性皮膜の密着性の劣化や光硬化部(露光部)の溶解が生じるので好ましくない。さらに、カルボキシル基含有感光性樹脂の場合、感光性樹脂の二重結合当量が350よりも小さいと、保存安定性が悪くなり、一方、2,000よりも大きいと、現像時の作業余裕度が狭くまた光硬化時に高露光量を必要とするので好ましくない。
【0013】
光重合性モノマー(C)としては、例えば、2−ヒドロキシエチルアクリレート,2−ヒドロキシプロピルアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリウレタンジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、トリメチロールプロパンエチレンオキサイド変性トリアクリレート、トリメチロールプロパンプロピレンオキサイド変性トリアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート及び上記アクリレートに対応する各メタクリレート類;フタル酸、アジピン酸、マレイン酸、イタコン酸、コハク酸、トリメリット酸、テレフタル酸等の多塩基酸とヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとのモノ−、ジ−、トリ−又はそれ以上のポリエステルなどが挙げられるが、特定のものに限定されるものではなく、またこれらを単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの光重合性モノマーの中でも、1分子中に2個以上のアクリロイル基又はメタクリロイル基を有する多官能モノマーが好ましい。なお、これらの光重合性モノマーは、組成物の光硬化性の促進及び現像性を向上させるために用いられる。
【0014】
このような光重合性モノマー(C)の配合量は、前記有機バインダー(カルボキシル基含有感光性樹脂及び/又はカルボキシル基含有樹脂)100質量部当り20〜100質量部が適当である。光重合性モノマーの配合量が上記範囲よりも少ない場合、組成物の充分な光硬化性が得られ難くなり、一方、上記範囲を超えて多量になると、皮膜の深部に比べて表面部の光硬化が早くなるため硬化むらを生じ易くなる。
【0015】
前記光重合開始剤(D)としては、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル等のベンゾインとベンゾインアルキルエーテル類;アセトフェノン、2,2−ジメトキシー2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシー2−フェニルアセトフェノン、1,1−ジクロロアセトフェノン等のアセトフェノン類;2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1等のアミノアセトフェノン類;2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−t−ブチルアントラキノン、1−クロロアントラキノン等のアントラキノン類;2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン等のチオキサントン類;アセトフェノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタール等のケタール類;ベンゾフェノン等のベンゾフェノン類;又はキサントン類;(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−ペンチルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、エチル−2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルフォスフィネイト等のフォスフィンオキサイド類;各種パーオキサイド類などが挙げられ、これら公知慣用の光重合開始剤を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの光重合開始剤の配合割合は、前記有機バインダー(カルボキシル基含有感光性樹脂及び/又はカルボキシル基含有樹脂)100質量部当り1〜30質量部が適当であり、好ましくは、5〜20重量部である。
【0016】
また、上記のような光重合開始剤(D)は、N,N−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、N,N−ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエステル、ペンチル−4−ジメチルアミノベンゾエート、トリエチルアミン、トリエタノールアミン等の三級アミン類のような光増感剤の1種あるいは2種以上と組み合わせて用いることができる。
さらに、より深い光硬化深度を要求される場合、必要に応じて、可視領域でラジカル重合を開始するチバ・スペシャルティー・ケミカルズ社製イルガキュア784等のチタノセン系光重合開始剤、ロイコ染料等を硬化助剤として組み合わせて用いることができる。
【0017】
前記熱硬化性樹脂(E)としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、アルキッド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、及びそれらの変性樹脂が挙げられ、これらを単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができるが、これらに限定されるものではない。その他、分子中に少なくとも2個のオキセタニル基を有するオキセタン化合物なども用いることができる。
【0018】
これらの熱硬化性樹脂のなかでも、特にエポキシ樹脂を好適に用いることができ、例えば、ビスフェノールA型、水添ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ビスフェノールS型、フェノールノボラック型、クレゾールノボラック型、ビスフェノールAのノボラック型、ビフェノール型、ビキシレノール型、トリスフェノールメタン型、N−グリシジル型、αートリグリシジルイソシアネート、βートリグリシジルイソシアヌレート、脂環式など、公知慣用のエポキシ樹脂が挙げられるが、特定のものに限定されるものではなく、またこれらを単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
これらの熱硬化性樹脂(E)の配合割合は、前記有機バインダー100質量部当り1〜100質量部が適当であり、好ましくは、5〜40重量部である。
【0019】
前記有機溶剤(F)としては、例えば、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等の酢酸エステル類;エタノール、プロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール類;オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素類;石油エーテル、石油ナフサ、水添石油ナフサ、ソルベントナフサ等の石油系溶剤などが挙げられる。これらの有機溶剤は、単独で又は2種類以上の混合物として使用することができる。なお、有機溶剤の配合量は、塗布方法に応じた任意の量とすることができる。
【0020】
本発明の光硬化性熱硬化性導電組成物は、上記成分以外に、エポキシ樹脂等の熱硬化触媒を配合することが好ましい。熱硬化触媒としては、例えば、イミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、4−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−(2−シアノエチル)−2−エチル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾール誘導体;2−エチルイミダゾリンなどのイミダゾリン誘導体;ジシアンジアミド、ベンジルジメチルアミン、4−(ジメチルアミノ)−N,N−ジメチルベンジルアミン、4−メトキシ−N,N−ジメチルベンジルアミン、4−メチル−N,N−ジメチルベンジルアミン等のアミン化合物、アジピン酸ヒドラジド、セバシン酸ヒドラジド等のヒドラジン化合物;トリフェニルホスフィン等のリン化合物などが挙げられるが、これらに限られるものではなく、熱硬化性樹脂の硬化反応を促進するものであればよく、単独で又は2種以上を混合して使用してもかまわない。
また、密着性付与剤としても機能するグアナミン、アセトグアナミン、ベンゾグアナミン、メラミン、2,4−ジアミノ−6−メタクリロイルオキシエチル−S−トリアジン、2−ビニル−2,4−ジアミノ−S−トリアジン、2−ビニル−4,6−ジアミノ−S−トリアジン・イソシアヌル酸付加物、2,4−ジアミノ−6−メタクリロイルオキシエチル−S−トリアジン・イソシアヌル酸付加物等のS−トリアジン誘導体を用いることもでき、好ましくはこれら密着性付与剤としても機能する化合物を前記熱硬化触媒と併用する。
【0021】
本発明の光硬化性熱硬化性導電組成物は、さらに必要に応じて、プリント配線板の回路、即ち銅の酸化防止の目的で、アデニン、ビニルトリアジン、ジシアンジアミド、オルソトリルビグアニド、メラミン等の化合物を配合することができる。
また、密着性、硬度、はんだ耐熱性等の特性を上げる目的で、必要に応じて、硫酸バリウム、チタン酸バリウム、酸化ケイ素粉、無定形シリカ、タルク、クレー、カオリン、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、ガラス繊維、炭素繊維、雲母粉などの公知慣用の無機フィラーや、シリコンパウダー、ナイロンパウダー、ウレタンパウダーなどの有機フィラーを配合できる。
【0022】
さらに、必要に応じて、フタロシアニン・ブルー、フタロシアニン・グリーン、アイオジン・グリーン、ジスアゾイエロー、クリスタルバイオレット、酸化チタン、カーボンブラック、ナフタレンブラックなどの公知慣用の着色剤(顔料や染料)、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、tert−ブチルカテコール、ピロガロール、フェノチアジンなどの公知慣用の熱重合禁止剤、アスベスト、微粉シリカ、有機ベントナイト、モンモリロナイトなどの公知慣用の増粘剤、シリコーン系、フッ素系、高分子系などの消泡剤及び/又はレベリング剤、イミダゾール系、チアゾール系、トリアゾール系、シランカップリング剤などの公知慣用の密着性付与剤、分散助剤、難燃剤のような添加剤類を配合することができる。
【0023】
次に、本発明にかかる導電回路の形成方法は、光硬化性熱硬化性導電組成物のパターンを、500℃以上の温度で焼成することなく、好ましくは80℃以上300℃以下の温度で熱硬化する点に特徴がある。
このような本発明の導体回路パターンの形成方法によれば、500℃以上の温度で焼成する必要がないので、熱に弱い基材上でのパターン形成が容易となり、また、酸化しやすい金属等を含むペーストにおいても、希ガス中で焼成を行う必要がないという利点がある。
【0024】
また、本発明によれば、組成物中に含まれるエポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂を熱硬化するので、熱硬化が進むにしたがい金属粉末の鎖状連結が密になると共に基材との密着性が向上するため、導電性と密着性が共に優れた導体回路パターンを得ることができる。
【0025】
以下、本発明の導電回路の形成方法について説明する。
(1)まず、基材上に、本発明の光硬化性熱硬化性導電組成物を塗布し、乾燥する。
ここで、基材としては、特定のものに限定されるものではないが、例えば、ガラス基板やセラミック基板、ポリイミド基板、BT(ビスマレイミドトリアジン)基板、ガラスエポキシ基板、ガラスポリイミド基板、フェノール基板、紙フェノールなどの基板を用いることができる。
【0026】
本発明の光硬化性熱硬化性導電組成物に関し、上述した各必須成分、ならびに任意成分との混練分散は、三本ロールやブレンダー等の機械が用いられる。
こうして分散された光硬化性熱硬化性導電組成物は、スクリーン印刷法、バーコーター、ブレードコーターなど適宜の塗布方法で基材上に塗布し、次いで指触乾燥性を得るために熱風循環式乾燥炉、遠赤外線乾燥炉等で例えば約60〜120℃で5〜40分程度乾燥させて有機溶剤を蒸発させ、タックフリーの塗膜を得る。
なお、組成物を予めフィルム状に成膜することもでき、この場合には基材上にフィルムをラミネートすればよい。
【0027】
(2)次に、パターン露光して現像する。
露光工程としては、所定の露光パターンを有するネガマスクを用いた接触露光又は非接触露光が可能である。露光光源としては、ハロゲンランプ、高圧水銀灯、レーザー光、メタルハライドランプ、ブラックランプ、無電極ランプなどが使用される。露光量としては50〜1000mJ/cm2程度が好ましい。
【0028】
現像工程としてはスプレー法、浸漬法等が用いられる。現像液としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、珪酸ナトリウムなどの金属アルカリ水溶液や、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどのアミン水溶液、特に約1.5重量%以下の濃度の希アルカリ水溶液が好適に用いられるが、組成物中のカルボキシル基含有樹脂のカルボキシル基がケン化され、未硬化部(未露光部)が除去されればよく、上記のような現像液に限定されるものではない。また、現像後に不要な現像液の除去のため、水洗や酸中和を行うことが好ましい。
【0029】
(3)そして、得られた光硬化性熱硬化性導電組成物のパターン塗膜を加熱硬化して、導電性と密着性が共に優れた導電回路パターンを形成する。
熱硬化工程においては、例えば、現像後の基板を80〜300℃、好ましくは約120〜200℃の温度で加熱処理を行い、所望の導体パターンを形成する。
【0030】
【実施例】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明が下記実施例に限定されるものでないことはもとよりである。なお、以下において「部」は、特に断りのない限りすべて質量部であるものとする。
(合成例1)
温度計、攪拌機、滴下ロート、及び還流冷却器を備えたフラスコに、メチルメタクリレートとメタクリル酸を0.87:0.13のモル比で仕込み、溶媒としてジプロピレングリコールモノメチルエーテル、触媒としてアゾビスイソブチロニトリルを入れ、窒素雰囲気下、80℃で2〜6時間攪拌し、有機バインダーAを含む樹脂溶液を得た。この有機バインダーAは、重量平均分子量が約10,000、酸価が74mgKOH/gであった。
なお、得られた共重合樹脂の重量平均分子量の測定は、島津製作所製ポンプLC−6ADと昭和電工製カラムShodex(登録商標)KF−804、KF−803、KF−802を三本つないだ高速液体クロマトグラフィーにより測定した。
【0031】
このようにして得られた有機バインダーAを用い、以下に示す組成比にて配合し、攪拌機により攪拌後、3本ロールミルにより練肉してペースト化を行い、光硬化性熱硬化性導電組成物を得た。
【0032】
【0033】
【0034】
【0035】
このようにして得られた組成物例1〜2、比較組成物例1の各光硬化性熱硬化性導電組成物について、解像性、比抵抗値、密着性を評価した。その評価方法は以下のとおりである。
試験片作成:
ガラス基板上に、評価用の各光硬化性熱硬化性導電組成物導電組成物を200メッシュのポリエステルスクリーンを用いて全面に塗布し、次いで、熱風循環式乾燥炉にて90℃で20分間乾燥して指触乾燥性の良好な被膜を形成した。その後、光源としてメタルハライドランプを用い、ネガマスクを介して、組成物上の積算光量が300mJ/cm2となるようにパターン露光した後、液温30℃の0.5wt%Na2CO3水溶液を用いて現像を行い、水洗した。最後に、150℃×30分で熱硬化し、導電回路を形成した試験片を作成した。
【0036】
解像性:上記方法によって作成した試験片の最小ライン幅を評価した。
比抵抗値:上記方法によって4mm×10cmのパターンを形成し、抵抗値と膜厚を測定して比抵抗値を算出した。
密着性:クロスカットした後、セロテープピーリングを行い、パターンの剥離がないかどうかで評価した。評価基準は以下のとおりである。
○:パターン剥離無し
△:一部にパターン剥離有り
×:全体にパターン剥離有り
【0037】
これらの評価結果を表1に示す。
【表1】
【0038】
この表1に示す結果から明らかなように、本発明の光硬化性熱硬化性導電組成物によれば、導電性と密着性が共に優れる微細な導電回路を容易に形成できることが確認できた。
【0039】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、導電性と密着性が共に優れる微細な導電回路を複雑な工程を経ることなく容易に形成し得る方法と、かかる方法に好適に用いられる光硬化性熱硬化性導電組成物を提供することができる。
Claims (4)
- (A)導電性粉末、(B)カルボキシル基含有感光性樹脂および/またはカルボキシル基含有樹脂、(C)光重合性モノマー、(D)光重合開始剤、(E)熱硬化性樹脂、および(F)溶剤を含有する組成物であって、前記導電性粉末(A)が、溶剤を除く組成物中に70〜90質量%の割合で配合され、且つ前記カルボキシル基含有感光性樹脂および/またはカルボキシル基含有樹脂(B)の重量平均分子量が1,000〜100,000、酸価が20〜250mgKOH/gであることを特徴とする導電回路形成用のアルカリ現像型の光硬化性熱硬化性導電組成物。
- 前記熱硬化性樹脂(E)がエポキシ樹脂であることを特徴とする請求項1に記載の導電組成物。
- 請求項1又は2に記載の光硬化性熱硬化性導電組成物を用いて塗膜のパターンを露光現像により形成し、その後、80℃〜300℃で熱硬化することを特徴とする導電回路の形成方法。
- 請求項1又は2に記載の光硬化性熱硬化性導電組成物を用いて形成した導電回路。
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