JP4034474B2 - ポリオレフィン系樹脂組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、フィルムやシートに加工した場合に耐候剤のブリードアウトによる透明性の低下及び長期耐候性能の低下がなく、かつ耐傷性及び耐折り曲げ白化性に優れたポリオレフィン系樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂を主成分とする樹脂材料は、その加工性、機械的強度、引張特性、ヒートシール性、リサイクル性等の優れた物性により、フィルムやシートに成形して農業用フィルムや土木用フィルム等の種々の分野において多く用いられている。このようなフィルムやシートは、その苛酷な使用環境のため、空気中の酸素の存在下、太陽光中の紫外線により劣化して強伸度が低下し破損しやすいことから、高い耐候安定性(耐候性)が求められている。また、用途によっては高い透明性、耐傷性、及び耐折り曲げ白化性(折り曲げたときに曲げ部分が白化しにくい性質)が求められる。
【0003】
耐候性については、通常ポリオレフィン系樹脂に各種の耐候性安定剤が配合されるが、耐候性をさらに改良し、フィルムやシートの劣化を防止してより長寿命で性能の良いフィルムやシートを得るために、従来より種々の開発がなされてきており、特に、ヒンダードアミン系の光安定剤や紫外線吸収剤を配合することが広く行われている。
【0004】
ポリオレフィン系樹脂材料に配合される耐候性安定剤を大別すると、紫外線吸収剤と光安定剤とに分けられる。紫外線吸収剤については、従来はニッケル系化合物が中心であったが、近年、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系等の紫外線吸収剤が開発され、種々の用途へ展開されている。
【0005】
また、光安定剤については立体障害性(ヒンダード)アミン系化合物が開発されており、これらはその優れた性能から、現在の耐候性安定剤の主流となっている。これら耐候性安定剤は単独または併用して用いられるが、特にフィルムやシートが他の基材との積層体であったり、内包するものを光劣化から保護する必要の有る場合には、光安定剤と紫外線吸収剤を必ず併用する必要がある。
【0006】
しかしながら、上記紫外線吸収剤及び光安定剤は、ポリオレフィン系樹脂材料に使用した場合にブリードアウトしやすいという欠点があった。このため、いずれも長期間使用すると樹脂中から表面へブリードアウトし、フィルムやシートの表面から洗い流される等の事情により当初の配合濃度よりも低い濃度となり、結果として満足な長期耐候性能が得られないという問題が生じ、従って、長期耐候性能が必要な場合は高濃度の光安定剤や紫外線吸収剤を予め配合しておく必要があった。
【0007】
また、フィルムやシートの表面にブリードアウトした紫外線吸収剤や光安定剤により、フィルムやシートが白く濁るなど透明性が損なわれる問題もあった。特に、他のポリオレフィン系基材フィルムやシートと積層されて使用される場合においては、添加剤のブリードアウトにより基材との界面接着強度が落ちる、ということが問題となっていた。さらに、従来のポリオレフィン系樹脂材料では、充分な耐傷性を得ようとすると添加剤のブリードアウトを引き起こしやすく、かつ耐折り曲げ白化性とのバランスが取りにくいという問題もあった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上述した状況に鑑みなされたものであって、フィルムやシートに加工した際に耐候剤が表面へブリードアウトしにくく、透明性が損なわれず、また長期使用しても耐候剤濃度が変化せず長期耐候性能に優れ、かつ耐傷性及び耐折り曲げ白化性にも優れた樹脂組成物を提供することを課題とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、鋭意検討を行った結果、ポリオレフィン系樹脂に特定の光安定剤と必要に応じ特定の紫外線吸収剤を配合することにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成した。
【0010】
すなわち、本発明は、230℃におけるMFRが0.5〜30g/10分、NMR法によるエチレン含有量が1〜6重量%のエチレン・プロピレンランダム共重合体;90〜98重量%と、エチレン(A)と下記式(1)で示される環状アミノビニル化合物(B)との共重合体(以下、「エチレン・環状アミノビニル化合物共重合体」という場合がある);2〜10重量%とを含有してなるポリオレフィン系樹脂組成物(以下、「組成物I」とする)を提供する。
【0011】
【化4】
【0012】
(式中、R1及びR2は、それぞれ独立して水素原子又はメチル基を表し、R3は水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表す。)
【0013】
また、本発明は、230℃におけるMFRが0.5〜30g/10分、NMR法によるエチレン含有量が1〜6重量%のエチレン・プロピレンランダム共重合体;75〜96重量%、190℃におけるMFRが1〜10g/10分の低密度ポリエチレン;2〜15重量%、及びエチレン(A)と下記式(1)で示される環状アミノビニル化合物(B)との共重合体;2〜10重量%を含有してなるポリオレフィン系樹脂組成物(以下、「組成物II」とする)を提供する。
【0014】
【化5】
【0015】
(式中、R1及びR2は、それぞれ独立して水素原子又はメチル基を表し、R3は水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表す。)
【0019】
本発明では、特定組成のポリオレフィン系樹脂に特定構造のヒンダードアミン系光安定剤を配合することにより、フィルムまたはシートに加工したときに表面に光安定剤がブリードアウトしにくく、且つ高い耐傷性及び耐折り曲げ白化性を得ることができる。また、さらに特定構造の紫外線吸収剤を併用することにより、表面へのブリードアウトを抑制したまま、耐候性をさらに高めることができる。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
1.ポリオレフィン系樹脂組成物
本発明のポリオレフィン系樹脂組成物のうち、組成物Iは、エチレン・プロピレンランダム共重合体とエチレン・環状アミノビニル化合物共重合体とを含有してなるものであり、組成物IIはこれにさらに低密度ポリエチレンを含有してなるものである。すなわち、組成物Iにおけるエチレン・プロピレンランダム共重合体は、必要に応じてその一部を低密度ポリエチレンに置き換えることができる。
【0021】
(1)エチレン・プロピレンランダム共重合体
本発明で用いられるエチレン・プロピレンランダム共重合体は、NMR法によるエチレン含有量が1〜6重量%、好ましくは1〜4重量%、より好ましくは2〜3重量%である。エチレン含有量が上記範囲未満では、耐折り曲げ白化性が低下するので好ましくなく、上記範囲を超えると耐傷性が劣るので好ましくない。
【0022】
また、該ランダム共重合体のMFR(メルトフローレート;JIS−K6758(230℃、2.16kg荷重)に準拠して測定した値)は0.5〜30g/10分、好ましくは0.5〜10g/10分である。MFRが上記範囲未満では成形加工性が劣るので好ましくなく、上記範囲を超えると材料強度や耐候性が低下する傾向にあるので好ましくない。
【0023】
また、該ランダム共重合体の密度(JIS−K6758(23℃)に準拠して測定した値)は特に限定されないが、好ましくは0.900〜0.905g/cm3、より好ましくは0.901〜0.904g/cm3である。密度がこの範囲内であれば耐折り曲げ白化性と耐傷性のバランスに優れるという利点がある。
【0024】
かかるエチレン・プロピレンランダム共重合体の製造方法は特に限定されず、従来公知の方法で製造されたものを使用することができ、また市販されている種々のものを使用することができる。
【0025】
(2)低密度ポリエチレン
本発明で用いられる低密度ポリエチレンは、MFR(JIS−K6760(190℃、2.16kg荷重)に準拠して測定した値)が1〜10g/10分、好ましくは3〜8g/10分である。MFRが上記範囲未満では低密度ポリエチレンの分散性が悪くなるので好ましくなく、上記範囲を超えると成形加工性が劣るので好ましくない。
【0026】
また、前記低密度ポリエチレンの密度(JIS−K6760(23℃)に準拠して測定した値)は格別制限されるものではないが、0.930g/cm3以下のものが好ましい。
【0027】
かかる低密度ポリエチレンの製造方法は特に限定されず、従来公知の方法で製造されたものを使用することができ、また市販されている種々のものを使用することができる。
【0028】
(3)エチレン・環状アミノビニル化合物共重合体
本発明で用いられる光安定剤は、エチレン(A)と下記式(1)で示される環状アミノビニル化合物(B)との共重合体(エチレン・環状アミノビニル化合物共重合体)である。
【0029】
【化7】
【0030】
上記式(1)中、R1及びR2は、それぞれ独立して水素原子又はメチル基を表し、R3は水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表す。好ましくは、R1及びR2はそれぞれメチル基であり、R3は水素原子である。
【0031】
式(1)で表されるビニル化合物(B)は公知であり、公知の方法、例えば特公昭47−8539号、特開昭48−65180号公報等に記載された方法にて合成することができる。
【0032】
式(1)で表されるビニル化合物の代表例としては、4−アクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−アクリロイルオキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、4−アクリロイルオキシ−1−エチル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−アクリロイルオキシ−1−プロピル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−アクリロイルオキシ−1−ブチル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−メタクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−メタクリロイルオキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、4−メタクリロイルオキシ−1−エチル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−メタクリロイルオキシ−1−ブチル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−クロトノイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−クロトノイルオキシ−1−プロピル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン等を挙げることができる。
【0033】
前記エチレン・環状アミノビニル化合物共重合体の好ましいものとしては、そのエチレン(A)と環状アミノビニル化合物(B)との和に対する該(B)の割合が、0.0005〜0.85モル%、より好ましくは0.001〜0.55モル%であるものが挙げられる。すなわち、本共重合体の好ましいものは、側鎖にヒンダードアミン基を有するビニルモノマー(環状アミノビニル化合物(B))の含有量が少ない割に高い光安定性を有するものである。環状アミノビニル化合物(B)の濃度は0.0005モル%で充分に光安定化効果を発揮し、一方、0.85モル%を超えると実質的に不経済となる傾向にある。
【0034】
また、前記エチレン・環状アミノビニル化合物共重合体は、該共重合体中に(B)が2個以上連続せず、孤立して存在する割合が(B)の総量に対して83%以上、好ましくは90%以上であるものが好ましい。
【0035】
環状アミノビニル化合物(B)の存在確認は、特開平4−80215号公報に記載されている通り、次のようにして行われる。13C−NMR(例えば日本電子製JNM−GSX270 Spectrometer)にて、公知の方法(例えば、化学同人発行「機器分析のてびき(1)」53〜56頁(1985)参照)に従い、文献記載のポリアクリル酸エチル(朝倉書店発行「高分子分析ハンドブック」969頁(1985)参照)及びエチレン−アクリル酸ヒドロキシエチル共重合体(Eur. Poly. J. 25巻、4号、411〜418頁(1989)参照)の化学シフトを用いて、TMS基準における32.9ppmのピークを孤立したビニルモノマー(B)の分岐点からα位にあるメチレン基によるものとし、35.7ppmのピークを連続した二つのビニルモノマー(B)の分岐点に挟まれたメチレン基によるものと帰属した。これら二つのシグナルを用いて、エチレン(A)とビニルモノマー(B)との共重合体においてビニルモノマー(B)が孤立して存在する割合を、下記計算式によって算出することができる。
【0036】
【数1】
【0037】
上記により見積もった側鎖にヒンダードアミン基を有するビニルモノマーが2個以上連続せず、孤立して存在する割合が、共重合体中のビニルモノマー(B)の総量に対して83%以上であることが好ましい。側鎖にヒンダードアミン基を有するビニルモノマーが2個以上連続せず、孤立して存在する割合が83%未満であると、側鎖にヒンダードアミン基を有するビニルモノマーの含量が少ない割に高い光安定性を有するという特徴が発揮されない場合がある。
【0038】
前記エチレン・環状アミノビニル化合物共重合体のMFR(JIS−K6760(190℃、2.16kg荷重)に準拠して測定した値)は、0.1〜200g/10分、好ましくは0.5〜20g/10分、より好ましくは1〜5g/10分である。MFRが上記範囲未満では、ポリオレフィン系樹脂とのなじみが悪く、ブレンドした場合、フィッシュアイやブツなどフィルム用途での可視欠点の原因となる。一方、MFRが上記範囲を超えると、分子量が大きい共重合体といえども拡散透失によるブリード、ブルーム現象が生起したり、ポリオレフィン系樹脂とブレンドした場合、得られる樹脂組成物の強度低下の原因となる。
【0039】
さらに、前記エチレン・環状アミノビニル化合物共重合体は、GPCを用い、単分散ポリスチレンにて検量線を作成し決定した、重量平均分子量と数平均分子量との比をもって表示されるMw/Mn(Q値)は3〜120の範囲にあることが望ましい。特に好ましい範囲は5〜20である。
【0040】
前記エチレン・環状アミノビニル化合物共重合体は、所要単量体を共重合条件に付すことによって製造されるが、高圧法低密度ポリエチレン製造装置での製造が可能である。通常はラジカル重合で製造され、使用される触媒は遊離基発生開始剤、例えばジアルキルパーオキサイド、ジアシルパーオキサイド類、パーオキシエステル類、ケトンパーオキサイド類、パーオキシケタール類、ハイドロパーオキサイド類、アゾ化合物等が有用である。重合装置はエチレンの高圧ラジカル重合法で一般的に用いられている連続攪拌式槽型反応器又は連続式管型反応器等を使用することができる。重合圧力は1000〜5000kg/cm2程度、重合温度は100〜400℃程度である。
【0041】
(4)組成比
本発明の組成物I中における前記エチレン・プロピレンランダム共重合体の含有割合は90〜98重量%、好ましくは94〜97重量%であり、前記エチレン・環状アミノビニル化合物共重合体の含有割合は2〜10重量%、好ましくは3〜6重量%である。
【0042】
前記エチレン・プロピレンランダム共重合体の含有割合が上記範囲未満であり前記エチレン・環状アミノビニル化合物共重合体の含有割合が上記範囲を超える場合は、経済性の点で好ましくない。一方、前記エチレン・プロピレンランダム共重合体の含有割合が上記範囲を超え前記エチレン・環状アミノビニル化合物共重合体の含有割合が上記範囲未満の場合は耐候性が劣るので好ましくない。
【0043】
本発明の組成物II中における前記エチレン・プロピレンランダム共重合体の含有割合は75〜96重量%、好ましくは84〜94重量%である。前記低密度ポリエチレンの含有割合は2〜15重量%、好ましくは3〜10重量%である。前記エチレン・環状アミノビニル化合物共重合体の含有割合は2〜10重量%、好ましくは3〜6重量%である。
【0044】
前記エチレン・プロピレンランダム共重合体の含有割合が上記範囲未満では、耐傷性が劣るので好ましくなく、上記範囲を超えると耐折り曲げ白化性が劣るので好ましくない。前記低密度ポリエチレンの含有割合が上記範囲未満では、成形加工性が劣るので好ましくなく、上記範囲を超えると透明性が低下するので好ましくない。前記エチレン・環状アミノビニル化合物共重合体の含有割合が上記範囲未満では、耐候性が劣るので好ましくなく、上記範囲を超えると経済性の点で好ましくない。
【0045】
(5)その他の配合成分
本発明のポリオレフィン系樹脂組成物には、上述した紫外線吸収剤及び光安定剤に加えて、他の付加的成分を、本発明の効果を著しく損なわない範囲で配合することができる。このような任意成分としては、通常のポリオレフィン樹脂材料に使用される酸化防止剤、結晶核剤、透明化剤、滑剤、アンチブロッキング剤、帯電防止剤、防曇剤、中和剤、金属不活性剤、着色剤、分散剤、過酸化物、充填剤、蛍光増白剤を挙げることができる。
【0046】
2.ポリオレフィン系樹脂材料
前記ポリオレフィン系樹脂組成物には、さらに特定構造の紫外線吸収剤を配合することができる。本発明のポリオレフィン系樹脂材料は、前記ポリオレフィン系樹脂組成物に、さらにトリアリールトリアジン型紫外線吸収剤を配合してなるものである。
【0047】
(1)トリアリールトリアジン型紫外線吸収剤
本発明で用いられる紫外線吸収剤は、下記式(2)で表されるトリアリールトリアジン型紫外線吸収剤である。
【0048】
【化8】
【0049】
ここで、式(2)中、R4〜R8はそれぞれ独立して炭素数1〜10のアルキル基を表す。より好ましくは、R4は炭素数6〜10のアルキル基、特に好ましくはオクチル基であり、R5〜R8は炭素数1〜2のアルキル基、特に好ましくはメチル基である。
【0050】
かかる特定構造の紫外線吸収剤は、従来ポリオレフィン系樹脂には使用されていなかったが、本発明ではこれをポリオレフィン系樹脂に配合することにより、ポリオレフィン系樹脂に一般的に使用されているベンゾトリアゾール系やベンゾフェノン系の紫外線吸収剤を用いた場合に比べて、格段にブリードアウトが抑制されることを見出したものである。
【0051】
上記式(1)において、R4の炭素数が上記範囲未満ではブリードアウトしやすくなるので好ましくなく、上記範囲を超えると耐候性が劣るので好ましくない。R5〜R8の炭素数が上記範囲未満ではブリードアウトしやすくなるので好ましくなく、上記範囲を超えると耐候性が劣るので好ましくない。
【0052】
上記式(2)で表されるトリアリールトリアジン系紫外線吸収剤の入手方法は特に限定されず、市販のものを使用することができる。
【0053】
(2)配合割合
本発明のポリオレフィン系樹脂材料における上記式(2)で表されるトリアリールトリアジン型紫外線吸収剤の含有量は、前記ポリオレフィン系樹脂組成物(組成物I又はII)100重量部に対し0.1〜1重量部、好ましくは0.3〜0.7重量部である。含有量が上記範囲未満では耐候性が劣るので好ましくなく、上記範囲を超えると色相、経済性の点で好ましくない。
【0054】
3.調製方法
本発明のポリオレフィン系樹脂組成物又はポリオレフィン系樹脂材料は、上記必須成分と必要に応じて配合される付加的成分とを混合し、溶融混練することにより得られる。
【0055】
溶融混練については、例えば粉末状、ペレット状等の形状の各成分を一軸又は二軸の押出機、バンバリーミキサー、ニーダーブレンダー、ブラベンダープラストグラフ、小型バッチミキサー、連続ミキサー、ミキシングロール等の混練機を使用して行う。混練温度は、一般に180〜270℃で行われる。また、混練機は上述したものを二種以上を組み合わせることもできる。
【0056】
4.用途
本発明のポリオレフィン系樹脂組成物は、耐候性安定剤が樹脂表面にブリードアウトしにくいため、長期耐候性に優れ、しかも透明性及び耐傷性に優れており、良好な表面外観を有している。よって、フィルムやシートに成形して農業用フィルムや土木用フィルム等として好適に用いることができる。また、本発明のポリオレフィン系樹脂材料は、特定の光安定剤と紫外線吸収剤とを組み合わせることにより、ブリードアウトを抑制したままさらに格段に耐候性を高めることができる。
【0057】
よって、特にフィルム又はシートに加工して他の基材との積層体や、種々の物質を収容する包装材料とした場合、該フィルム又はシートそれ自身の劣化が防止されるだけではなく、該フィルム又はシートを透過する光により該基材や内包物が劣化するのを有効に防止することができるので、かかる用途において本発明の効果が特に発揮される。また、他の基材との積層体とした場合には、ブリードアウトが抑えられ該基材との接着性が低下しないので好ましい。
【0058】
【実施例】
以下に本発明を実施例を用いて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。なお、実施例における樹脂組成物の特性評価方法及び実施例で使用した樹脂は次の通りである。
【0059】
1.評価方法
(1)耐候性1:樹脂組成物を原料として作成したシートをサンシャインウェザーメーター(槽内ブラックパネル温度63℃、JIS−B7753)で照射し、目視観察により、前記シート表面において該表面積の50%に亀裂が発生するまでの時間を測定した。
【0060】
(2)耐候性2:樹脂組成物を原料として作成したシートを(1)と同様にサンシャインウェザーメータで照射し、2000時間後のシートのUV吸光度をUV分光光度計(島津製作所(株)社製UV1600PC)にて500〜250nmの範囲で測定し、以下の評価基準にて○〜×にて評価した。なお、本試験は紫外線吸収剤の配合による吸光度の減衰への影響をみるものであり、紫外線吸収剤を配合した例に適用した。
○:最大吸光度が照射前と比べて95%以上
△:最大吸光度が照射前と比べて70〜95%未満
×:最大吸光度が照射前と比べて70%未満
【0061】
(3)透明性:樹脂組成物を原料として作成したシートを(1)と同様にサンシャインウェザーメーターで照射し、2000時間後のシートをプラスチックの光学的特性試験方法(JIS−K7105 ヘーズ A法)にてヘーズを測定し、以下の評価基準にて○〜×にて評価した。
○:照射前からのヘーズの変化が3%未満
△:照射前からのヘーズの変化が3〜5%未満。
×:照射前からのヘーズの変化が5%以上。
【0062】
(4)耐折り曲げ白化性:樹脂組成物を原料として射出成型機にて220℃で1mm厚の射出シートを作成し、得られた射出シートをダートドロップインパクトテスターに設置し、高さ110cmから重量1400gの荷重を落下させ、落下前の射出シートのヘーズと落下後、荷重によって白化した射出シートのヘーズとを測定し、その差を以下の基準で○〜×にて評価した。
○:荷重落下によるヘーズ悪化が0%以上〜8%未満
△:荷重落下によるヘーズ悪化が8%以上〜15%未満
×:荷重落下によるヘーズ悪化が15%以上
【0063】
(5)耐傷性:樹脂組成物を原料として作成したシートを摩耗堅牢度試験機に設置し、500gの荷重を掛けた20mm×20mmの#400番サンドペーパーで、15cm/秒の速度で100回こすり、摩耗後のシートの重量と摩耗前のシートの重量を測定し、その差を以下の基準で○〜×にて評価した。
○:摩耗による重量減少が0g以上〜0.8g未満
△:摩耗による重量減少が0.8g以上〜1.5g未満
×:摩耗による重量減少が1.5g以上
【0064】
2.試料
▲1▼ポリプロピレン樹脂A:日本ポリケム(株)製「ノバテックPP・FG3D」(ノバテックは登録商標。以下同様)
MFR=7g/10分(230℃、JIS−K6758)
密度=0.901g/cm3(JIS−K6758)
エチレン含量=2.2重量%(NMR法)
融点=154℃
【0065】
▲2▼ポリプロピレン樹脂B:日本ポリケム(株)製「ノバテックPP・FY4」
MFR=5g/10分(230℃、JIS−K6758)
密度=0.906g/cm3(JIS−K6758)
エチレン含量=0重量%(NMR法)
融点=165℃
【0066】
▲3▼ ポリプロピレン樹脂C:日本ポリケム(株)製「ノバテックPP・MG05BS」
MFR=45g/10分(230℃、JIS−K6758)
密度=0.902g/10g/cm3(JIS−K6758)
エチレン含量=1.3重量%(NMR法)
融点=155℃
【0067】
▲4▼低密度ポリエチレン:日本ポリケム(株)製「ノバテックLD・LC600A」
MFR=7g/10分(190℃、JIS−K6760)
密度=0.919g/cm3(JIS−K6760)
融点=107℃
【0068】
▲5▼エチレン・環状アミノビニル共重合体:日本ポリケム(株)製「ノバテックLD・XJ100H」
MFR=3g/10分(190℃、JIS−K6760)
密度=0.931g/cm3(JIS−K6760)
環状アミノビニル化合物含量=5.1重量%(0.7モル%)
孤立して存在する環状アミノビニル化合物の割合=90モル%
融点=111℃
【0069】
▲6▼トリアリールトリアジン型紫外線吸収剤:上記式(2)のR4がオクチル基、R5〜R8がメチル基であるトリアリールトリアジン化合物
【0070】
【実施例1】
ポリプロピレン樹脂A96重量%とエチレン・環状アミノビニル化合物共重合体4重量%(日本ポリケム(株)製「ノバテックLD・XJ100H」)、及び0.5重量部のフェノール系安定剤(テトラキス[メチレン−3−(3’、5’−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキフェニル)プロピオネート]メタン)をブレンダーでよく混合した後、溶融押出してペレット化し、得られたペレットを口径が65mmの押出機に装着したTダイから、樹脂温度250℃、幅600mm、肉厚80μmで溶融押出ししてシートを作成した。また、上記ペレットを射出成型機にて220℃で1mmシートを作成した。得られたシートについて上記方法で耐候性1、透明性、耐折り曲げ白化性、及び耐傷性を評価した。評価の結果は表1に示す通りである。
【0071】
【実施例2】
ポリプロピレン樹脂A92重量%、低密度ポリエチレン(日本ポリケム(株)製「ノバテックLD・LC600A」)4重量%、及び実施例1と同じエチレン・環状アミノビニル化合物共重合体4重量%、並びにこれらの合計100重量部に対し実施例1と同じフェノール系安定剤0.5重量部をブレンダーでよく混合した後、実施例1と同様にしてシートを作成した。得られたシートについて上記方法で耐候性1、透明性、耐折り曲げ白化性、及び耐傷性を評価した。評価の結果は表1に示す通りである。
【0072】
【実施例3】
ポリプロピレン樹脂A92重量%、実施例1と同じ低密度ポリエチレン4重量%、及び実施例1と同じエチレン・環状アミノビニル化合物共重合体4重量%、並びにこれらの合計100重量部に対し実施例と同じトリアリールトリアジン型紫外線吸収剤0.5重量部と、実施例1と同じフェノール系安定剤0.5重量部とをブレンダーでよく混合した後、実施例1と同様にしてシートを作成した。得られたシートについて上記方法で耐候性1、耐候性2、透明性、耐折り曲げ白化性、及び耐傷性を評価した。評価の結果は表1に示す通りである。
【0073】
【比較例1】
ポリプロピレン樹脂B92重量%、実施例1と同じ低密度ポリエチレン4重量%、エチレン・環状アミノビニル化合物共重合体4重量%、トリアリールトリアジン型紫外線吸収剤0.5重量部、及びフェノール系安定剤0.5重量部をブレンダーでよく混合した後、実施例1と同様にしてシートを作成した。得られたシートについて上記方法で耐候性1、耐候性2、透明性、耐折り曲げ白化性、及び耐傷性を評価した。評価の結果は表1に示す通りである。
【0074】
【比較例2】
ポリプロピレン樹脂C92重量%、実施例1と同じ低密度ポリエチレン4重量%、エチレン・環状アミノビニル化合物共重合体4重量%、トリアリールトリアジン型紫外線吸収剤0.5重量部、及びフェノール系安定剤0.5重量部をブレンダーでよく混合した後、実施例1と同様にしてシートを作成した。得られたシートについて上記方法で耐候性1、耐候性2、透明性、耐折り曲げ白化性、及び耐傷性を評価した。評価の結果は表1に示す通りである。
【0075】
【比較例3】
ポリプロピレン樹脂A99重量%、実施例1と同じエチレン・環状アミノビニル化合物共重合体1重量%、及びフェノール系安定剤0.5重量部をブレンダーでよく混合した後、実施例1と同様にしてシートを作成した。得られたシートについて上記方法で耐候性1、透明性、耐折り曲げ白化性、及び耐傷性を評価した。評価の結果は表1に示す通りである。
【0076】
【比較例4】
基本配合は実施例3と同じとし、エチレン・環状アミノビニル化合物共重合体の代わりにヒンダードアミン型光安定剤ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート0.5重量部を使用し、他は実施例1と同様に行ってシートを作成した。得られたシートについて、上記方法にて耐候性1、耐候性2、透明性、耐折り曲げ白化性、及び耐傷性を評価した。評価の結果は表1に示す通りである。
【0077】
【表1】
【0078】
【発明の効果】
本発明のポリオレフィン系樹脂組成物又はポリオレフィン系樹脂材料は、フィルムやシートに加工した際に耐候安定剤が表面へブリードアウトしにくいため、長期使用しても耐候安定剤の濃度が変化せず長期耐候性に優れ、透明性も損なわれない。また、耐傷性、耐折り曲げ白化性にも優れ、良好な表面外観を有している。よって、フィルムやシートに成形して農業用フィルムや土木用フィルム等として好適に用いることができる。また、他の基材との積層体とした場合、ブリードアウトが抑えられ該基材との接着性が低下しない。
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