JP4033423B2 - 光重合性樹脂組成物及び積層体 - Google Patents
光重合性樹脂組成物及び積層体 Download PDFInfo
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Description
【発明が属する技術分野】
本発明は、プリント配線板の製造や、ICチップ搭載用リードフレーム(以下単にリードフレームという)製造、メタルマスク製造などの金属箔精密加工に好適な、アルカリ性水溶液によって現像可能な光重合性樹脂組成物及びこれを用いた光重合性樹脂積層体に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、プリント配線板の製造には光重合性樹脂層を支持フィルムで挟んだ構造のいわゆるドライフィルムレジスト(以下単にDFRという)が広く使用されている。
プリント配線板の製造工程において、フォトレジストに対する特に重要な要求特性の一つは、フォトレジストがめっき液やエッチング液等の液体に浸食されず、フォトレジストに被覆された金属基材面を十分に保護できることである。例えば、ハイスロー半田めっき時に生じる硬化レジストの剥離は、硬化レジストと銅面間へのめっき液のしみこみとなって回路部以外にも半田がめっきされ、配線間の短絡、配線幅の拡大、配線周辺部の形状の乱れ等につながり問題となっていた。
【0003】
これらの問題は、硬化レジストと銅面との密着力不足によるものであり、これを解決するために、密着促進剤に関する研究開発が盛んに行われている。このような研究開発の成果として、例えば、ベンゾトリアゾール、ベンズイミダゾール等の複素環式窒素含有化合物を光重合性樹脂組成物に添加する事等が提案されている。
【0004】
しかしながら、これらの化合物を使用した場合、ハイスロー半田めっき時のめっき液のしみこみは改善されるものの、銅面との密着力は完全でなく電流効率の低い金めっきに対してはきわめて容易に硬化レジストが剥離し、配線間の短絡、配線幅の拡大など重大な欠陥が発生する。特に、炭酸ナトリウム水溶液等の薬液によって現像可能なアルカリ現像性光重合性樹脂またはDFRでは、金めっき液に耐え得るものの実用化は困難であった。
【0005】
一方、リードフレーム、メタルマスク等の金属箔精密加工の方法としては、金型を用いて打ち抜くスタンピング法と、光重合性樹脂を用いて写真法で像を形成した後エッチング加工するエッチング法の2つに大別される。
ところが近年の半導体素子の軽薄短小化、少量多品種化の傾向下においては、スタンピング法では少量多品種化に伴う金型代の高騰、配線の高密度化に対応できない、小型化に伴う狭小品の製造ができない等の制約があり、軽薄短小化、少量多品種化にはエッチング法の方が有利である。
【0006】
このようなエッチング法に用いられる光重合性樹脂としては、従来、合成コロイドや天然コロイドなどの水溶性高分子(PVA、カゼイン等)に感光基として重クロム酸塩を添加した液状レジストが用いられてきた。この液状レジストは、塗工用設備投資が大きい、均一塗工が難しい、感度が低い、また工程中に発生するクロム廃液の処理が必要である、等の問題点を有していた。これらの問題点を解決するために、近年金属箔基材精密加工用フォトレジストとして、DFRを用いることが提案されている。
【0007】
しかしながら、従来のアルカリ現像型DFRは、プリント配線板に代表される銅系の下地金属では良好な画像形成が可能であるものの、下地金属が42アロイ(鉄−ニッケル合金)に代表されるような鉄系金属箔基材を用いてパターニングした場合、現像時に硬化レジストの蛇行・剥がれ等が発生したり、エッチング時にはレジスト下部までエッチングされてしまい、製品の歩留まりが低下するという問題を起こしていた。また、高温エッチング時(60℃以上)には、フォトレジストの基材との密着性だけでなく耐薬品性が十分でないために極めて容易に硬化レジストの剥離・浮きが発生していた。この結果、画像パターン間の短絡・画像パターン幅の減少など重大な欠陥を引き起こしていた。特に炭酸ナトリウム等の薬液によって現像可能なアルカリ現像性光重合性樹脂またはDFRでは、42アロイに代表される鉄系金属箔基材を用いた精密加工において、高温エッチング時に発生するエッチング液のしみこみに耐え得るものは実用化されていなかった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記課題を克服し、プリント配線板の製造や、ICチップ搭載用リードフレーム製造、メタルマスク製造などの金属箔精密加工に好適な、アルカリ性水溶液によって現像可能な光重合性樹脂組成物及びこれを用いた光重合性樹脂積層体を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、驚くべき事に、下記化合物を必須成分とする光重合性樹脂組成物を用いることで上記課題を解決できることを見い出し、本発明を完成するに至った。即ち本願は、以下の発明を提供する。
(1)(a)カルボキシル基含有量が酸当量で100〜600、重量平均分子量が2万〜50万の熱可塑性重合体、20〜90重量%、(b)シクロヘキセンオキサイドアクリル酸エステル、シクロヘキセンオキサイドメタアクリル酸エステル、及び、シクロヘキセンオキサイドコハク酸変性アクリル酸エステルからなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物3〜50重量%、及び(c)光重合開始剤、0.01〜20重量%を含有する光重合性樹脂組成物。
【0011】
ここで、上記(a)成分の熱可塑性重合体は、i)3〜15個の炭素原子を有するα、β−不飽和カルボキシル基含有モノマーの一種以上の化合物と、ii)x)アルキル基が1〜6個の炭素原子を有するアルキル(メタ)アクリレート、y)ヒドロキシルアルキル基が2〜6個の炭素原子を有するヒドロキシル(メタ)アクリレート、及びz)下記一般式(II)で表されるスチレン型化合物またはその環置換誘導体からなる群から選ばれる一種以上の化合物とを共重合したものであることが好ましい。
【0012】
【化4】
【0013】
また、以下の(2)は、本願発明の好ましい実施態様である。
(2)支持体上に上記(1)記載の光重合性樹脂組成物からなる層を設けた光重合性樹脂積層体。
なお、ここで各成分の重量%は、各成分が組成中に含まれる比率を示すものである。以下、本発明の光重合性樹脂組成物を構成する各成分について詳細に説明する。
【0014】
本発明のドライフィルム用の光重合性樹脂組成物は、各成分を常法にしたがって混合することにより得ることができる。
まず、本発明の光重合性樹脂組成物を構成する必須成分であるバインダー用熱可塑性重合体(a)は、該光重合性樹脂物質中に20〜90重量%、好ましくは40〜60重量%含有される。含有量が20重量%未満の場合には、成膜性の悪化や、テンティング膜強度の低下、コールドフロー現象(DFRをロール状態で保存する際に、端面から光重合性樹脂層がはみ出す現象)を起こす恐れがある。一方、70重量%を越える場合には、光硬化膜が脆くなり基材との密着性が損なわれ十分な耐エッチング性や画像形成性が得られなくなる。
【0015】
また、バインダー用熱可塑性重合体(a)の重量平均分子量は1万〜50万であり、好ましくは2万〜25万のものが望ましい。重量平均分子量が1万未満のものは、コールドフロー現象を起こす恐れがある。一方、重量平均分子量が50万を越える場合には、未露光部分のアルカリ現像性が低下して現像できなくなるか、または現像時間が極めて長くなり画像形成性の悪化を引き起こす。
【0016】
特に、(a)カルボキシル基含有熱可塑性重合体の成分として、i)3〜15個の炭素原子を有するα、β−不飽和カルボキシル基含有モノマーの一種以上の化合物と、ii)x)アルキル基が1〜6個の炭素原子を有するアルキル(メタ)アクリレート、y)ヒドロキシルアルキル基が2〜6個の炭素原子を有するヒドロキシル(メタ)アクリレート、及びz)前記一般式(II)で表されるスチレン型化合物またはその環置換誘導体からなる群から選ばれる一種以上の化合物とを共重合してなる、バインダー用熱可塑性重合体、20〜90重量%を用いることにより、めっき耐性、エッチング耐性、密着性、解像性等、更に良好な特性を得ることが出来る。
【0017】
このようなバインダー用熱可塑性重合体を得るためには、下記2つの重合性物質群の適量を共重合させることにより達成される。第一の重合性物質は、3〜15個の炭素原子を有するα、β−不飽和カルボキシル基含有モノマーの一種以上の化合物からなる。不飽和カルボキシル基含有モノマーとしては、好ましくはアクリル酸およびメタクリル酸があり、その他ケイ皮酸、クロトン酸、ソルビン酸、イタコン酸、プロピオール酸、マレイン酸およびフマル酸が挙げられる。また、これらの半エステル類または無水物も使用可能である。
【0018】
第二の重合性物質は、x)炭素数1〜6個のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート、y)ヒドロキシルアルキル基が2〜6個の炭素原子を有するヒドロキシル(メタ)アクリレート、及びz)前記一般式(II)で表されるスチレン型化合物またはその環置換誘導体よりなる群から選ばれる一種以上からなる。
【0019】
炭素数1〜6個の炭素原子を有するアルキル基としては、アルキル(メタ)アクリレート、またはヒドロキシルアルキル基が2〜6個の炭素原子を有するヒドロキシル(メタ)アクリレートとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、iso−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシルエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシルプロピル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0020】
一般式(II)で表されるスチレン型化合物は、ベンゼン環がニトロ基、ニトリル基、アルコキシル基、アシル基、スルホン基、ヒドロキシル基、またはハロゲン等の官能基で置換されていても良く、好ましくは水素、メチル基またはt−ブチル基等の単一アルキル基である。これらの置換基はベンゼン環に1〜5個存在しても良い。
【0021】
一般式(II)で表されるスチレン型化合物としては、スチレン、α−メチルスチレン、P−メチルスチレン、P−クロロスチレン等が挙げられるが、特にスチレン、P−メチルスチレンが好適である。
【0022】
本発明の光重合性樹脂組成物は、前記一般式(I)で表される化合物(b)を規定量配合することにより、金めっき耐性や42アロイに代表される鉄系金属箔基材を用いた精密加工におけるエッチング耐性が飛躍的に向上する。一般式(I)で表される化合物としては、シクロヘキセンオキサイドアクリル酸エステル、シクロヘキセンオキサイドメタアクリル酸エステル、シクロヘキセンオキサイドコハク酸変性アクリル酸エステルが挙げられる。特に好ましい例としては、シクロヘキセンオキサイドアクリル酸エステル、シクロヘキセンオキサイドコハク酸変性アクリル酸エステルが挙げられる。また、これらの化合物は、単独で用いても、二種類以上を併用してもよい。
【0023】
本発明の光重合性樹脂組成物に含有される一般式(I)で表される化合物の量は、3〜50重量%である。該化合物の添加量が50重量%以上では光重合性組成物の感度が低くなったり、十分な光硬化反応が得られずアルカリ現像液時にレジストラインが流れやすくなり、回路パターン形成に支障を及ぼす恐れがある。また、3重量%未満では、該化合物の添加効果が得られず、十分なエッチング耐性やめっき耐性を発揮できない恐れがある。
【0024】
また、本発明では、光重合性ビニルモノマーを併用することは、好ましい実施態様である。このような光重合性ビニルモノマーの例としては、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−シクロヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、またポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等のポリオキシアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、2−ジ(p−ヒドロキシフェニル)プロパンジ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ポリオキシプロピルトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ポリオキシエチルトリメチロールプロパントリアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテルトリ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジグ リシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、2,2−ビス(4−メタクリロキシペンタエトキシフェニル)プロパン、ウレタン基を含有する多官能(メタ)アクリレート等がある。また、これら光重合性モノマーの特に好ましい例としては、下記一般式(III)または且つ、一般式(IV)で示される化合物が挙げられる。
【0025】
【化5】
【0026】
【化6】
【0027】
これらのモノマーは一種類でも、二種類以上を併用することも出来る。好ましい使用量は5〜60重量%であり、さらに好ましくは30〜55重量%である。この量が5重量%未満では、感度、膜強度の点で充分ではなく、この量が60重量%を越えるとコールドフローの発生が著しくなるため好ましくない。
本発明の光重合性樹脂組成物には(c)成分の光重合開始剤を必須成分として含んでいる。このような光重合開始剤としては、各種の活性光線、例えば紫外線などにより活性化され重合を開始する公知のあらゆる化合物が用いられる。このような化合物としては、例えば、2−エチルアントラキノン、オクタエチルアントラキノン、1,2−ベンズアントラキノン、2,3−ベンズアントラキノン、2−フェニルアントラキノン、2,3−ジフェニルアントラキノン、1−クロロアントラキノン、2−クロロアントラキノン、2−メチルアントラキノン、1,4−ナフトキノン、9,10−フェナントラキノン、2−メチル−1,4−ナフトキノン、9,10−フェナントラキノン、2−メチル−1,4−ナフトキノン、2,3−ジメチルアントラキノン、3−クロロ−2−メチルアントラキノンなどのキノン類、ベンゾフェノンミヒラーズケトン[4,4´−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン]、4,4´−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノンなどの芳香族ケトン類、ベンゾイン、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインフェニルエーテル、メチルベンゾイン、エチルベンゾインなどのベンゾインエーテル類、ベンジルジメチルケタール、ベンジルジエチルケタールなどのジアルキルケタール類、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾリル二量体等のビイミダゾール化合物、9−フェニルアクリジン等のアクリジン類、ジエチルチオキサントン、クロルチオキサントン等のチオキサントン類、ジメチルアミノ安息香酸エチル等のジアルキルアミノ安息香酸エステル類、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−o−ベンゾイルオキシム、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム等のオキシムエステル類等がある。これらの光重合開始剤はそれぞれ単独で用いても、併用して用いても構わない。
【0028】
光重合開始剤の特に好ましい例としては、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾリル二量体、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジ(m−メトキシフェニル)イミダゾール二量体、2−(o−フルオロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、等が挙げられる。また、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾリル二量体およびジエチルチオキサントン、クロルチオキサントン等のチオキサントン類、ジメチルアミノ安息香酸エチル等のジアルキルアミノ安息香酸エステル類、ベンゾフェノン、4,4´−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4´−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノンの組み合わせを選ぶこともできる。
【0029】
本発明の光重合性樹脂組成物に含有される光重合開始剤の量は、0.01〜20重量%である。光重合開始剤の量が20重量%以上では光重合性組成物の活性吸収率が高くなり、光重合性樹脂積層体として用いた時光重合性樹脂層の底の部分の重合による硬化が不十分になる。またこの量が0.01重量%未満では充分な感度が出なくなる。
【0030】
本発明の光重合性樹脂組成物には、染料、顔料等の着色物質が含まれていてもよい。このような着色物質としては、例えばフクシン、フタロシアニングリーン、オーラミン塩基、カルコキシドグリーンS、パラマジェンタ、クリスタルバイオレット、メチルオレンジ、ナイルブルー2B、ビクトリアブルー、マラカイトグリーン、ベイシックブルー20、ダイヤモンドグリーン等が挙げられる。
【0031】
また、本発明の光重合性樹脂組成物には、光照射により発色する発色系染料が含まれていてもよい。このような発色系染料としては、例えば、トリス(4−ジメチルアミノ−2−メチルフェニル)メタン[ロイコクリスタルバイオレット]、トリス(4−ジメチルアミノ−2−メチルフェニル)メタン[ロイコマラカイトグリーン]等が挙げられる。また、ビイミダゾール化合物とロイコ染料との組み合わせや、トリアジン化合物とロイコ染料との組み合わせが有用である。このようなトリアジン化合物としては、2、4、6−トリス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−メトキシフェニル)−4、6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジンが挙げられる。
【0032】
本発明の光重合性樹脂組成物は、金属基材面、例えば銅、銅系合金、ニッケル、クロム、鉄、ステンレス等の鉄系合金の上に液状レジストとして塗布して乾燥し、保護フィルムを被覆して用いるか、該光重合性樹脂層と該光重合性樹脂層を支持する支持層とからなる光重合性樹脂フィルムとして使用する事が好ましい。保護フィルム、支持層としては、活性光を透過する透明なものが望ましい。
【0033】
活性光を透過する支持層としては、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、塩化ビニル共重合体フィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、塩化ビニリデン共重合フィルム、ポリメタクリル酸メチル共重合体フィルム、ポリスチレンフィルム、ポリアクリロニトリルフィルム、スチレン共重合体フィルム、ポリアミドフィルム、セルロース誘導体フィルムなどが挙げられる。これらのフィルムは必要に応じ延伸されたものも使用可能である。厚みは薄い方が画像形成性、経済性の面で有利であるが、強度を維持する必要等から10〜30μmのものが一般的である。
【0034】
支持層と積層した光重合性樹脂層の反対側の表面に、必要に応じて保護層を積層する。この保護層の重要な特性は、光重合性樹脂層との密着力において、支持層よりも保護層との方が充分小さく、それにより容易に剥離できることが要求される。このような保護層の材料としては、例えばポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム等がある。また、特開昭59−202457号公報に示された剥離性の優れたフィルムを用いることもできる。
【0035】
光重合性樹脂層の厚みは用途において異なるが、プリント配線板、及び金属加工基板作製用には5〜100μm、好ましくは10〜80μmであり、この厚みが薄いほど解像度は向上する。また厚いほど膜強度が向上する。
次に、本発明の光重合性樹脂積層体を用いたプリント配線板及び金属箔精密加工工程を簡単に述べる。まず、ラミネーターを用い、保護層がある場合は、保護層を剥離した後、光重合性樹脂層を金属表面に加熱圧着し積層する。この時の加熱温度は一般的に40〜160℃である。また、圧着は二回以上行うことにより密着性・耐エッチング性が向上する。この時、圧着は二連のロールを備えた二段式ラミネーターを使用しても良いし、何回か繰り返してロールに通し圧着しても良い(二段式ラミネーターについては、特公平2−61024号参照)。次に必要ならば支持層を剥離しマスクフィルムを通して活性光により画像露光する。次に、露光後光重合性樹脂層上に支持層がある場合には必要に応じてこれを除き、続いてアルカリ水溶液の現像液を用いて未露光部を現像除去する。アルカリ水溶液としては、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等の水溶液を用いる。これらは光重合性樹脂層の特性に合わせて選択されるが、0.5%〜3%の炭酸ナリウム水溶液が一般的である。
【0036】
このようにして得られた基板は、場合によっては100〜300℃の加熱工程に供することもできる。このような加熱工程を経ることにより、更に耐エッチング性を向上することができる。次に現像により露出した金属面をエッチング法等、既知の方法を用いて金属の画像パターンを形成する。その後、硬化レジスト画像は、一般的に現像で用いたアルカリ水溶液よりも更に強いアルカリ性水溶液により剥離される。剥離用のアルカリ水溶液についても特に制限はないが、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムの水溶液が一般的に用いられる。さらに現像液や剥離液に少量の水溶性溶媒を加える事は可能である。
【0037】
【実施例】
以下、実施例に基づいて本発明を具体的に説明する。
<合成例1>
窒素導入口、撹拌羽根及び温度計を備えた1000ccの四つ口フラスコに、窒素雰囲気下でメチルエチルケトン300g及びメタクリル酸メチル270重量部、メタクリル酸90重量部、アクリル酸n−ブチル40重量部入れ、撹拌しながら湯浴の温度を70℃に上げた。次いで、アゾビスイソブチロニトリル2gを30gのメチルエチルケトンに溶解して添加し、6時間重合した。さらにアゾビスイソブチロニトリル3gを30gのメチルエチルケトンに溶解し、1時間置きに2回にわけて添加した後、フラスコ内の温度を溶剤の沸点まで上昇させてその温度で2時間重合した。重合終了後、メチルエチルケトン240gを添加して重合反応物をフラスコから取り出してバインダー樹脂溶液A(重量平均分子量9.2万、固形分42%)を得た。
【0038】
<合成例2>
メタクリル酸メチル270重量部、メタクリル酸90重量部、アクリル酸n−ブチル40重量部入れ、次いで、アゾビスイソブチロニトリル3.2gを30gのメチルエチルケトンに溶解して添加する以外は合成例1と同様にしてバインダー樹脂溶液B(重量平均分子量5.9万、固形分41%)を得た。
【0039】
<合成例3>
メタクリル酸メチル160重量部、メタクリル酸100重量部、スチレン100重量部、アクリロニトリル40重量部、とし、合成例1と同様にしてバインダー樹脂溶液C(重量平均分子量4.7万、固形分41%)を得た。
<合成例4>
メタクリル酸100重量部、メタクリル酸メチル200重量部、スチレン60重量部、アクリル酸メチル40重量部とし、合成例1と同様にしてバインダー樹脂溶液D(重量平均分子量6.6万、固形分41%)を得た。
【0040】
【実施例1〜6、比較例1〜4】
(a)成分として以下表1に示すバインダー樹脂を用い、(a)〜(c)及びd1〜d3の各成分を固形分の重量比で表1に示す量とし、これに4、4’−ジエチルアミノベンゾフェノン0.2重量部、マラカイトグリーン0.05重量部、ロイコクリスタルバイオレット1重量部、メチルエチルケトン10重量部を配合して光重合性樹脂組成物溶液を得た。
【0041】
【表1】
【0042】
b1:シクロヘキセンオキサイドアクリル酸エステル
b2:シクロヘキセンオキサイドコハク酸変性アクリル酸エステル
c1:ベンゾフェノン
c2:2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾリル二量体
c3:トリブロモメチルフェニルスルフォン
d1:ヘキサメチレンジイソシアネートとオリゴプロピレングリコールモノメタクリレート(日本油脂(株)製:ブレンマーPP−1000)との反応物
d2:ノナエチレングリコールジメタクリレート
d3:トリメチロールプロパントリアクリレート
次いでこの光重合性樹脂組成物溶液を厚さ20μmのポリエチレンテレフタレートフィルムにバーコーターを用いて均一塗布した。これを90℃の乾燥機中で3分間乾燥して光重合性樹脂層の厚さが30μmの光重合性樹脂積層体を得た。その後、光重合性樹脂層のポリエチレンテレフタレートフィルムを積層していない表面上に、30μmのポリエチレンフィルムを張り合わせて積層フィルム−1を作成した。
【0043】
得られた積層フィルム−1を、厚さ35μmの銅張り積層板の銅面に光重合性樹脂積層体が面するようにポリエチレンフィルムを剥がしながら105℃でラミネートし、光重合性樹脂積層板−1を作成した。次いでポリエチレンテレフタレートフィルム側上に解像度マスクフィルム(ストライプ状)を置き、超高圧水銀ランプ(オーク製作所製:HMW−201KB)により70mJ/cm2で光重合性樹脂層を露光した。続いて、ポリエチレンテレフタレートフィルムを除去した後、1%炭酸ナトリウム水溶液(30℃)を約45秒スプレーして未露光部分を溶解除去し、光硬化樹脂をパターニングした。そして、パターニングした光硬化樹脂膜をめっきレジストとしてニッケルめっきを5μm施した後に金めっき(電解中性金めっき、無電解中性金めっき)を2μmの厚さになるように行った。次いで3%苛性ソーダ水溶液(温度50℃)を用いて光硬化樹脂膜を剥離し、評価用サンプルを得た。
【0044】
こうして作成されたサンプルを用いて、実施例及び比較例における(1)感度、(2)金めっき液のしみこみの状態を次のように評価した。
(1)感度
透明から黒色に27段階に明度が変化している27段ステップタブレット[旭化成(株)製:光学濃度D=0.50〜1.80、△D=0.05]を用いて、現像後に金属箔基板が露出した時に対応する段数を求めた。この数値は、通常10〜14段が望ましい。この数値が15段以上だとカブリが発生して解像度が低下する。一方、この数値が9段以下では光硬化反応が不十分となり鮮明なパターンが得られなくなったり、レジストラインの密着性が低下したりする。
(2)金めっき液のしみこみの状態
光学顕微鏡により、金めっきのしみこみ幅を測定した。エッチング液のしみ込み幅が5μm未満を○と判定した。
【0045】
こうして判定された結果を、表2に示す。
【0046】
【表2】
【0047】
【実施例7〜12、比較例5〜8】
表1に従って配合して得た光重合性樹脂組成物溶液を、光重合層の厚さが20μmの光重合性樹脂積層体とした以外は実施例1〜6と同様にして積層フィルム−2を作成し、それぞれ実施例7〜12とした。
次いで得られた積層フィルム−2を、厚さ150μmの42アロイ合金基材上に光重合性樹脂積層体が面するようにポリエチレンフィルムを剥がしながら105℃でラミネートし、光重合性樹脂積層板−2を作成した。次いでポリエチレンテレフタレートフィルム側上に解像度マスクフィルム(ストライプ状)を置き、超高圧水銀ランプ(オーク製作所製:HMW−201KB)により70mJ/cm2で光重合性樹脂層を露光した。続いて、ポリエチレンテレフタレートフィルムを除去した後、1%炭酸ナトリウム水溶液(30℃)を約35秒スプレーして未露光部分を溶解除去し、光硬化樹脂をパターニングした。そして、パターニングした光硬化樹脂膜をエッチングレジストとして塩化第二鉄溶液(50ボーメ・液温70℃・5分)で光硬化樹脂が積層された面から42アロイ合金基材をエッチングし、次いで3%苛性ソーダ水溶液(温度50℃)を用いて光硬化樹脂膜を剥離し、評価用サンプルを得た。
【0048】
こうして作成されたサンプルを用いて、実施例及び比較例における(1)感度、(2)エッチング液のしみこみの状態を次のように評価した。結果を表3に示す。
(1)感度
透明から黒色に27段階に明度が変化している27段ステップタブレット[旭化成(株)製:光学濃度D=0.50〜1.80、△D=0.05]を用いて、現像後に金属箔基板が露出した時に対応する段数を求めた。
(2)エッチング液のしみこみの状態
光学顕微鏡により、エッチング液のしみこみ幅を測定した。エッチング液のしみ込み幅が5μm未満を○と判定した。
【0049】
【表3】
【0050】
【実施例13】
<42アロイ基材でのリードフレームの作成>
厚さ150μmの42アロイ合金基材に、実施例7〜12で作成した積層フィルム−2を用いて、その光重合性樹脂層が42アロイ合金基材に面するように105℃で両面をラミネートした。次に、光重合性樹脂積層体のポリエチレンテレフタレートフィルム上にリードフレームパターン(208ピン)を有するネガフィルムマスクを両面から上下一致するように重ね、真空にして両者を密着させ、露光量70mJ/cm2で露光した。その後ポリエチレンテレフタレートフィルムを剥離除去して、現像液として1%炭酸ナトリウム水溶液(液温30℃)を用いて現像し、リードフレームパターンを形成した。
【0051】
次に、塩化第二鉄溶液(47ボーメ・液温70℃)をエッチング液として使用し、両面からエッチングが基材を貫通するまでエッチングを行った。次いで、剥離液として3%苛性ソーダ(液温50℃)を用いて光重合性樹脂層を除去して目的のリードフレームを得た。
得られたリードフレームを電子顕微鏡により目視観察したところ、実施例7〜12に示した光重合性樹脂層と42アロイ合金基材との密着性は良好であり、得られたリードフレームパターンのエッジ部はエッチング液の浸食もなく非常にシャープであった。
【0052】
【比較例9】
比較例5〜8で作成したドライフィルムレジストを使用する以外は、実施例13を繰り返してリードフレームを作成した。得られたリードフレームを電子顕微鏡により目視観察したところ、インナーリード部分のレジストラインの欠落・浮きの発生と共に、光重合性樹脂層と42アロイ合金基材との界面から過度のエッチング液の浸食が観察された。
【発明の効果】
本発明によれば、プリント配線板の製造や、ICチップ搭載用リードフレーム製造、メタルマスク製造などの金属箔精密加工に好適な、アルカリ性水溶液によって現像可能で、特にエッチング耐性、密着性に優れた光重合性樹脂組成物及びこれを用いた光重合性樹脂積層体が提供される。
Claims (2)
- (a)カルボキシル基含有量が酸当量で100〜600、重量平均分子量が2万〜50万の熱可塑性重合体、20〜90重量%、(b)シクロヘキセンオキサイドアクリル酸エステル、シクロヘキセンオキサイドメタアクリル酸エステル、及び、シクロヘキセンオキサイドコハク酸変性アクリル酸エステルからなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物3〜50重量%、及び(c)光重合開始剤、0.01〜20重量%を含有する光重合性樹脂組成物。
- 支持体上に請求項1に記載の光重合性樹脂組成物からなる層を設けた光重合性樹脂積層体。
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