JP4033063B2 - 転がり軸受 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、超臨界二酸化炭素あるいは液体二酸化炭素を搬送するポンプの羽根車の回転軸を回転可能に支持し、超臨界二酸化炭素あるいは液体二酸化炭素雰囲気中に配置される転がり軸受に関する。
【0002】
【従来の技術】
超臨界二酸化炭素あるいは液体二酸化炭素を搬送するポンプは、超臨界二酸化炭素あるいは液体二酸化炭素が優れた洗浄効果を有しているなどの点から、洗浄装置などに使用されている。従来、このポンプでは、軸受として、すべり軸受が使用されていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
すべり軸受は、頻繁にオン・オフが繰り返される洗浄装置の洗浄液搬送用ポンプのような使用条件では、直接接触による寿命低下の問題があり、長期間安定して使用することができないという問題があった。そこで、すべり軸受に代えて転がり軸受を使用することが考えられるが、超臨界二酸化炭素あるいは液体二酸化炭素雰囲気中に配置される転がり軸受では、粘度の低い超臨界二酸化炭素あるいは液体二酸化炭素が潤滑剤を兼ねることになるので、耐久性の低下を防ぐことが課題となる。
【0004】
この発明の目的は、超臨界二酸化炭素あるいは液体二酸化炭素を搬送するポンプの軸受として、すべり軸受に代えて使用可能な耐久性に優れた転がり軸受を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段および発明の効果】
この発明による転がり軸受は、外輪、内輪、これらの間に配置された複数の玉、および玉を保持する保持器を有しており、超臨界二酸化炭素あるいは液体二酸化炭素を搬送するポンプの羽根車の回転軸を回転可能に支持して超臨界二酸化炭素あるいは液体二酸化炭素雰囲気中に配置される転がり軸受であって、転がり軸受が斜接玉軸受であり、前記超臨界二酸化炭素あるいは液体二酸化炭素は、斜接玉軸受の潤滑剤として作用するものであって、玉、内輪および外輪がセラミックスで形成されており、内輪のスピンすべりによる摩耗を低減するべく内輪軌道溝の曲率半径が玉径の54%より大きくされていること特徴とするものである。
【0006】
公知の内輪軌道溝の曲率半径は、例えばJIS規格で規定されているように、52%程度とされている。
【0007】
流体(超臨界二酸化炭素あるいは液体二酸化炭素)雰囲気中で使用される転がり軸受では、特に高速回転領域において、摩耗が発生しやすく、この摩耗にはスピンすべりの寄与が大きいと考えられる。斜接玉軸受の玉は、普通は内輪か外輪のどちらかの軌道面ではほとんどすべりなしで転がり、他方の軌道面でスピンが発生する。また、斜接玉軸受では、内輪の軌道溝の曲率半径の方が外輪のそれよりも小さく、また、荷重が加わったときの接触楕円の長径が長い。そのため、内輪では玉のスピン運動は妨げられ(内輪案内)、外輪軌道で完全なスピン運動が出現する。しかしながら、高速回転(かつ荷重が小)になると、遠心力の効果が大きくなり、外輪案内となりやすい。
【0008】
この発明は、摩耗への寄与が大きいスピンすべりと内輪の軌道溝の曲率半径に着目して、スピンすべりによるPV値(軸受面圧Pとすべり速度Vの積)を小さくすることにより、摩耗の低減を可能とするもので、より具体的には、内輪の軌道溝の曲率半径を標準値より大きくして、玉と軌道溝との接触領域を小さくすることにより、PV値を小さくするものである。
【0009】
この発明の転がり軸受によると、玉、内輪および外輪がセラミックスで形成されているので、耐摩耗性が向上し、しかも、内輪軌道溝の曲率半径が玉径の54%より大きくされているので、内輪側の接触領域が小さくなり、この結果、PV値も小さくなり、より一層の摩耗の低減が可能となる。したがって、転がり軸受の耐久性の低下が防止され、この転がり軸受を使用する超臨界二酸化炭素あるいは液体二酸化炭素を搬送するポンプは、振動が大きくなって継続使用ができないという問題を生じない。
【0010】
なお、内輪軌道溝の曲率半径の上限は、特に限定されるものではないが、他の性能を考慮して玉径の60%程度とされる。また、外輪の軌道溝の曲率半径についても、特に限定されるものではなく、通常、玉径の50.5%以上でかつ60%以下程度とされる。
【0011】
上記発明において、好ましくは、ポンプがキャンドモータポンプで、回転軸がキャンドモータのロータとされる。具体的には、キャンドモータポンプは、超臨界二酸化炭素あるいは液体二酸化炭素の吸込口および吐出口を回転軸方向に直列配置した筒状ケーシングと、このケーシング内面に沿って配置される円筒状ステータと、ステータに相対回転可能に収容されるロータとを備え、ステータとロータとの対向面間が超臨界二酸化炭素あるいは液体二酸化炭素の経路とされており、転がり軸受の内輪がロータに、転がり軸受の外輪がステータに取り付けられる。
【0012】
本発明の転がり軸受は、汚染原因となる潤滑剤の使用が禁止されている半導体洗浄装置の洗浄液(溶媒)とされる超臨界二酸化炭素あるいは液体二酸化炭素の搬送用ポンプ用としてより好適である。超臨界二酸化炭素あるいは液体二酸化炭素は、純水に比べて、拡散性が強く、常圧で瞬時に蒸発し、レジスト倒壊が起こらずしかも付着痕跡が残らないなどの利点を有しており、より高い洗浄効果を得ることができる。この種の洗浄装置では、洗浄力をより高めるために、超臨界二酸化炭素あるいは液体二酸化炭素にふっ酸などが共溶媒として加えられる。
【0013】
転がり軸受を形成するセラミックスとしては、ジルコニア系、炭化ケイ素、アルミナおよび窒化ケイ素などが例示されるが、このうち、炭化ケイ素およびアルミナは、強度不足で摩耗粉が発生する懸念があり、また、ジルコニア系セラミックスは、温度等の雰囲気の変化により、相転移を起こしてく脆化する懸念があり、結局、機械的特性に優れ、かつ、化学的に安定な窒化ケイ素(Si3N4)またはサイアロンが最適である。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して、この発明の実施形態について説明する。以下の説明において、上下は、図の上下をいうものとする。
【0015】
図1に示すポンプ(1)は、超臨界二酸化炭素を搬送するキャンドモータポンプであり、ケーシング(2)と、ケーシング(2)内に配置された配置された円筒状ステータ(3)と、ステータ(3)の内側に相対回転可能に配置されたロータ(4)と、ロータ(4)の下端部に設けられた羽根車(5)とを備え、ステータ(3)とロータ(4)との対向面間(G)が被搬送超臨界二酸化炭素の経路とされている。
【0016】
ケーシング(2)は、円筒状の本体(2a)と、本体(2a)の下端部に設けられかつ羽根車(5)を収容するとともに超臨界二酸化炭素の吸込口(6)を有する吸込み部(2b)と、本体(2a)の上端部に設けられ超臨界二酸化炭素の吐出口(7)を有する吐出部(2c)とからなる。吸込口(6)および吐出口(7)は、回転軸方向に直列配置され、ステータ(3)は、本体(2a)内面に沿って配置されている。
【0017】
ケーシング(2)の吸込み部(2b)とロータ(4)下端部との間およびケーシング(2)の吐出部(2c)とロータ(4)上端部との間に、ロータ(4)を回転支持するこの発明の転がり軸受(11)(11)がそれぞれ配置されている。
【0018】
キャンドモータポンプ(1)は、洗浄装置に使用され、33.1℃以上でかつ72.5気圧以上とされた超臨界二酸化炭素洗浄液を揚液として、高速回転(回転速度:30000〜60000rpm)で使用される。吸込口(6)から導入された超臨界二酸化炭素洗浄液は、下部軸受(11)を通過して、ロータ(4)とステータ(3)との間の洗浄液経路(G)に流入し、上部軸受(11)を通過した後、吐出口(7)から送出される。
【0019】
上部および下部の軸受(11)は、斜接玉軸受であり、外輪、内輪、これらの間に配置された複数の玉、および玉を保持する保持器を有している。
【0020】
外輪、内輪および玉は、すべて窒化ケイ素製とされており、保持器は、スーパーエンジニアリングプラスチックのPEEK(polyether ether keton)製とされている。そして、内輪の軌道溝の曲率半径が玉径の54%より大きくなるように形成されている。
【0021】
内輪の軌道溝の曲率半径を玉径の54%より大きくしたことによる効果について、具体例として、内径がφ10の斜接玉軸受で計算した結果を以下に示す。
【0022】
すなわち、内輪軌道溝の曲率半径を玉径の52%から56%にすると、アキシャル荷重が50Nの場合には、PV値が747(MPa・m/s)から553(MPa・m/s)まで減少し、アキシャル荷重が100Nの場合には、PV値が935(MPa・m/s)から708(MPa・m/s)まで減少し、平均では、約3/4に減少する。こうして、PV値を小さくすることができ、これにより、摩耗を低減できることが分かる。
【0023】
上記効果は、内輪側での接触面積を小さくし、内輪側ですべりが生じた場合でも、そのPV値が小さくなるようにすることにより得られるもので、この観点からのより詳しい解析によると、PV値を効果的に小さくするには、内輪軌道溝の曲率半径を玉径の54%より大きくすることが好ましいことがわかる。内輪軌道溝の曲率半径の上限は他性能との関係から玉径の60%程度とされる。外輪軌道溝の曲率半径は、特に限定されず、玉径の50.5%以上でかつ60%以下であればよい。
【0024】
なお、上記実施形態において、外輪、内輪および玉をすべてサイアロン製としても、窒化ケイ素製の場合と同じ効果を得ることができる。また、超臨界二酸化炭素ポンプにつき例示したが、上記転がり軸受(11)は液体二酸化炭素ポンプにも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、この発明の転がり軸受が使用される一例としての超臨界二酸化炭素ポンプを示す縦断面図である。
【符号の説明】
(11) 転がり軸受
Claims (2)
- 外輪、内輪、これらの間に配置された複数の玉、および玉を保持する保持器を有しており、超臨界二酸化炭素あるいは液体二酸化炭素を搬送するポンプの羽根車の回転軸を回転可能に支持して超臨界二酸化炭素あるいは液体二酸化炭素雰囲気中に配置される転がり軸受であって、
転がり軸受が斜接玉軸受であり、前記超臨界二酸化炭素あるいは液体二酸化炭素は、斜接玉軸受の潤滑剤として作用するものであって、玉、内輪および外輪がセラミックスで形成されており、内輪のスピンすべりによる摩耗を低減するべく内輪軌道溝の曲率半径が玉径の54%より大きくされていること特徴とする転がり軸受。 - 前記セラミックスが窒化ケイ素製およびサイアロン製のいずれか一方であることを特徴とする請求項1に記載の転がり軸受。
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